(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のタイヤ用フィラーは、シリカ粒子と、そのシリカ粒子の凝集を抑制する凝集抑制剤とを含有している。
【0017】
シリカ粒子は、シリカ(二酸化珪素、SiO
2)からなる一次粒子である。
【0018】
シリカ粒子は、詳しくは後述するが、例えば、ケイ酸ナトリウム水溶液を、硫酸などの酸で中和することにより得ることができる。
【0019】
シリカ粒子の体積平均一次粒子径(測定:透過型電子顕微鏡)は、例えば、5nm以上、好ましくは、20nm以上であり、例えば、100nm以下、好ましくは、50nm以下である。
【0020】
また、シリカ粒子のBET比表面積(ISO5794/1に準拠して測定する)は、例えば、40m
2/g以上、好ましくは、80m
2/g以上、より好ましくは、120m
2/g以上であり、例えば、350m
2/g以下である。BET表面積が上記範囲であれば、タイヤ用ゴム組成物(後述)における分散性を十分に確保することができる。
【0021】
これらシリカ粒子は、単独使用することができ、また、体積平均一次粒子径やBET表面積の異なるシリカ粒子を併用することもできる。
【0022】
凝集抑制剤は、リン酸塩およびその誘導体、アミノアルコール、カチオン性界面活性剤、水溶性アミノシラン、窒素含有複素環系化合物、非イオン性界面活性剤、第3級アミン化合物、ポリビニルアルコール、非亜鉛せっけん、飽和脂肪酸エステルおよびグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種を含有している。
【0023】
リン酸塩およびその誘導体としては、例えば、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムなどの縮合リン酸塩、例えば、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、亜リン酸水素二ナトリウム、二リン酸二水素二ナトリウムなどのリン酸塩、例えば、ジブチルホスフェートなどのリン酸エステルなどが挙げられる。
【0024】
これらリン酸塩およびその誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0025】
リン酸塩およびその誘導体として、分散性の観点から、好ましくは、縮合リン酸塩が挙げられ、より好ましくは、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムが挙げられる。
【0026】
アミノアルコールとしては、例えば、エタノールアミン(モノエタノールアミン、2−アミノエタノール)、プロパノールアミン(モノプロパノールアミン、3−アミノ−1−プロパノール)、1−アミノ−2−プロパノール、ブタノールアミン(モノブタノールアミン、4−アミノ−1−ブタノール)、2−アミノ−1−ブタノール、ペンタノールアミン(モノペンタノールアミン、5−アミノ−1−ペンタノール)、ヘキサノールアミン(モノヘキサノールアミン、6−アミノ−1−ヘキサノール)、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールなどの1級アミノアルコール、例えば、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−n−プロピルエタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N−t−ブチルエタノールアミン、N−ペンチルエタノールアミン、N−ヘキシルエタノールアミン、N−ヘプチルエタノールアミン、N−オクチルエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、N−(β−アミノエチル)プロパノールアミン、ジエタノールアミン、2−(イソプロピルアミノ)エタノール、2−(t−ブトキシカルボニルアミノ)−1−エタノール、2−(t−ブチルアミノ)エタノールなどの2級アミノアルコール、例えば、N−(β−アミノエチル)イソプロパノールアミン、N−(3−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンなどの1級および2級アミノアルコール、例えば、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、N−エチル−N,N−ジエタノールアミン、N−n−ブチル−N,N−ジエタノールアミン、N−t−ブチル−N,N−ジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N、N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N、N−ジエチルプロパノールアミン、N、N−ジエチルイソプロパノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン(別名2−(ジブチルアミノ)エタノール)、2−[[2−(ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ]エタノール、N−エチル−N−(2−ヒドロキシエチル)ニトロソアミン、N,N,N’−トリメチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)ビス(2−アミノエチル)エーテル、2−[2−(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール、2−(ジイソプロピルアミノ)エタノール、トリエタノールアミンなどの3級アミノアルコールなどが挙げられる。
【0027】
これらアミノアルコールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0028】
アミノアルコールとして、分散性の観点から、好ましくは、1級アミノアルコール、2級アミノアルコールが挙げられ、より好ましくは、2級アミノアルコールが挙げられ、さらに好ましくは、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミンが挙げられ、とりわけ好ましくは、N−n−ブチルエタノールアミンが挙げられる。
【0029】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、カチオン性界面活性剤モノマー、カチオン性界面活性剤ポリマーなどが挙げられ、分散性の観点から、好ましくは、カチオン性界面活性剤モノマーが挙げられる。カチオン性界面活性剤モノマーとして、具体的には、例えば、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジ長鎖アルキル(炭素数4〜20のアルキル)型アンモニウムクロライドなどが挙げられる。
【0030】
これらカチオン界面活性剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0031】
カチオン性界面活性剤として、分散性の観点から、好ましくは、ジ長鎖アルキル(炭素数4〜20のアルキル)型アンモニウムクロライドが挙げられる。
【0032】
水溶性アミノシランとしては、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0033】
また、水溶性アミノシランは、市販品としても入手することができる。そのような市販品としては、例えば、A−1100(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、A−1110(3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、A−1122およびA−1120(N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、A−2120(N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン)、Y−9669(3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン)(いずれも、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製)などが挙げられる。
【0034】
これら水溶性アミノシランは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0035】
水溶性アミノシランとして、分散性の観点から、好ましくは、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0036】
窒素含有複素環系化合物としては、例えば、1−ヒドロキシエチル−2−メチルイミダゾリン、1−ヒドロキシエチル−2−プロピルイミダゾリン、1−ヒドロキシエチル−2−ヘプチルイミダゾリン、1−ヒドロキシエチル−2−ノニルイミダゾリン、1−ヒドロキシエチル−2−ウンデシルイミダゾリン、1−ヒドロキシプロピル−2−メチルイミダゾリン、1−ヒドロキシプロピル−2−プロピルイミダゾリン、1−ヒドロキシプロピル−2−ヘプチルイミダゾリン、1−ヒドロキシプロピル−2−ノニルイミダゾリン、1−ヒドロキシプロピル−2−ウンデシルイミダゾリン、1−ヒドロキシブチル−2−ウンデシルイミダゾリン、トール油脂肪酸イミダゾリンなどのイミダゾリンおよびその誘導体、例えば、イミダゾール、4−エチルアミノイミダゾール、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2ジメチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどのイミダゾールおよびその誘導体、例えば、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどのイミダゾリニウムベタイン系化合物などが挙げられる。
【0037】
これら窒素含有複素環系化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0038】
窒素含有複素環系化合物として、分散性の観点から、好ましくは、イミダゾリン誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾリニウムベタイン系化合物が挙げられ、より好ましくは、トール油脂肪酸イミダゾリン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインが挙げられる。
【0039】
非イオン性界面活性剤(ノニオン性界面活性剤)としては、例えば、アルキルアルカノールアミン、アルキルアルカノールアミドなどが挙げられる。
【0040】
アルキルアルカノールアミンとしては、ポリオキシエチレン基を有するアルキルアルカノールアミンが挙げられ、具体的には、例えば、ポリオキシエチレンオクチルアミン、ポリオキシエチレンデシルアミン、ポリオキシエチレンドデシルアミン、ポリオキシエチレンドデシルアミン、ポリオキシエチレンテトラデシルアミン、ポリオキシエチレンヘキサデシルアミン、ポリオキシエチレンオクタデシルアミン(ポリオキシエチレンステアリルアミン)、ポリオキシエチレンオクタデセニルアミンなどが挙げられる。
【0041】
これらアルキルアルカノールアミンは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0042】
アルキルアルカノールアミンとして、分散性の観点から、好ましくは、アルキルアルカノールアミンが挙げられ、より好ましくは、ポリオキシエチレンオクタデシルアミン(ポリオキシエチレンステアリルアミン)が挙げられる。
【0043】
アルキルアルカノールアミドとしては、例えば、オクタン酸モノエタノールアミド、オクタン酸モノイソプロパンプロパノールアミド、ポリオキシエチレンオクタン酸モノエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、ラウリン酸モノイソプロパノールアミド、ステアリン酸モノエタノールアミド、オレイン酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレンラウリン酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸N−メチルエタノールアミドなどのモノアルカノールアミド、例えば、オクタン酸ジエタノールアミド、オクタン酸ジイソプロパノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンラウリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンオレイン酸ジエタノールアミドなどのジアルカノールアミドなどが挙げられる。
【0044】
これらアルキルアルカノールアミドは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0045】
アルキルアルカノールアミドとして、好ましくは、モノアルカノールアミド、ジアルカノールアミドが挙げられ、より好ましくは、ヤシ油脂肪酸N−メチルエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミドなどが挙げられる。
【0046】
また、非イオン性界面活性剤において、ポリオキシエチレンの平均付加モル数は、例えば、1以上、好ましくは、2以上であり、例えば、40以下、好ましくは、30以下である。
【0047】
これら非イオン性界面活性剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0048】
非イオン性界面活性剤として、分散性の観点から、好ましくは、アルキルアルカノールアミンが挙げられる。
【0049】
第3級アミン化合物としては、例えば、トリオクチルアミン、トリラウリルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジラウリルモノメチルアミン、ジメチルオクタデシルアミン(ジメチルステアリルアミン)、ジメチルオクタデセニルアミン、ジメチルヘキサデセニルアミンなどが挙げられる。
【0050】
これら第3級アミン化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0051】
第3級アミン化合物として、好ましくは、ジメチルオクタデシルアミン(ジメチルステアリルアミン)が挙げられる。
【0052】
ポリビニルアルコールとしては、特に制限されず、例えば、ケン化度30〜99のポリビニルアルコールが挙げられ、好ましくは、ケン化度80〜95のポリビニルアルコールが挙げられる。
【0053】
非亜鉛せっけんとしては、例えば、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸カルシウム、リシノール酸バリウム、オクチル酸カルシウムなどが挙げられる。
【0054】
これら非亜鉛せっけんは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0055】
飽和脂肪酸エステルとしては、公知の飽和脂肪酸エステルが挙げられる。
【0056】
これら飽和脂肪酸エステルは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0057】
また、飽和脂肪酸エステルは、好ましくは、上記の非亜鉛せっけんと混合して用いられる。
【0058】
そのような場合、飽和脂肪酸エステルと、非亜鉛せっけんとの混合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0059】
グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライドなどが挙げられる。
【0060】
これらグリセリン脂肪酸エステルは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0061】
凝集抑制剤は、好ましくは、リン酸塩およびその誘導体、アミノアルコール、カチオン性界面活性剤、水溶性アミノシラン、窒素含有複素環系化合物、非イオン性界面活性剤、第3級アミン化合物、ポリビニルアルコール、非亜鉛せっけんと飽和脂肪酸エステルとの混合物、または、グリセリン脂肪酸エステルのいずれか一種からなる。
【0062】
凝集抑制剤は、分散性の観点から、より好ましくは、リン酸塩およびその誘導体、アミノアルコール、カチオン性界面活性剤、水溶性アミノシラン、窒素含有複素環系化合物、非イオン性界面活性剤、または、第3級アミン化合物のいずれか一種からなる。
【0063】
また、さらに好ましくは、リン酸塩およびその誘導体、アミノアルコール、カチオン性界面活性剤、水溶性アミノシラン、窒素含有複素環系化合物、または、非イオン性界面活性剤のいずれか一種からなる。さらに好ましくは、リン酸塩およびその誘導体、アミノアルコール、カチオン性界面活性剤、水溶性アミノシラン、または、窒素含有複素環系化合物のいずれか一種からなる。さらに好ましくは、リン酸塩およびその誘導体、アミノアルコール、カチオン性界面活性剤、または、水溶性アミノシランのいずれか一種からなる。さらに好ましくは、リン酸塩およびその誘導体、アミノアルコール、または、カチオン性界面活性剤のいずれか一種からなる。さらに好ましくは、リン酸塩およびその誘導体、または、アミノアルコールからなる。とりわけ好ましくは、リン酸塩およびその誘導体からなる。
【0064】
また、凝集抑制剤として、分散性の観点から、好ましくは、懸濁安定性を有する化合物(すなわち、懸濁安定剤)が挙げられ、そのような化合物として、リン酸塩およびその誘導体、ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0065】
そして、このようなタイヤ用フィラーは、例えば、以下の方法により得られる。
【0066】
すなわち、この方法では、まず、シリカスラリーに、上記した凝集抑制剤を添加する(添加工程)。
【0067】
シリカスラリーとしては、ケイ酸ナトリウム水溶液から得られ、一度も乾燥されていないシリカ粒子(シリカの一次粒子)を含むシリカスラリーが用いられる。このようなシリカスラリーは、例えば、ケイ酸ナトリウム水溶液に酸を添加し、中和することにより、得ることができる。
【0068】
ケイ酸ナトリウム水溶液は、特に制限されず、公知の方法により得ることができる。
【0069】
ケイ酸ナトリウム水溶液の濃度は、SiO
2基準で、例えば、1g/L以上、好ましくは、5g/L以上であり、例えば、250g/L以下、好ましくは、100g/L以下である。
【0070】
酸としては、例えば、塩酸、リン酸、硫酸などの無機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、安息香酸などの有機酸などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。酸として、好ましくは、無機酸、より好ましくは、硫酸が挙げられる。
【0071】
酸の添加割合は、特に制限されないが、例えば、酸を添加した後のpHが所定範囲となるように、調整される。具体的には、酸を添加した後のpHは、例えば、2以上、好ましくは、3以上であり、例えば、7以下、好ましくは、6.5以下である。
【0072】
また、添加方法は、特に制限されず、一括添加でもよく、分割添加でもよい。
【0073】
これにより、シリカ粒子を含むシリカスラリーが得られる。
【0074】
また、必要により、シリカスラリーに水を添加し、濃度を調整することができる。
【0075】
シリカスラリーのシリカ濃度(固形分濃度)は、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上であり、例えば、30質量%以下、好ましくは、25質量%以下である。
【0076】
凝集抑制剤の添加割合は、固形分基準で、例えば、シリカスラリー中のシリカ粒子100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.2質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは、10質量部以下である。
【0077】
また、凝集抑制剤の添加方法は、特に制限されず、一括添加でもよく、分割添加でもよい。
【0078】
凝集抑制剤がシリカスラリーに添加されると、シリカスラリー中において、凝集抑制剤がシリカ粒子の表面に吸着され、その結果、シリカ粒子(一次粒子)が凝集抑制剤に付着および/または被覆される。これにより、シリカ粒子の凝集が抑制される。すなわち、凝集抑制剤は、分散剤として作用する。このような凝集抑制剤は、本発明に含まれる。
【0079】
次いで、この方法では、上記の添加工程の後、シリカスラリーを乾燥させる(乾燥工程)。
【0080】
乾燥方法は、特に制限されず、例えば、真空乾燥法、真空撹拌乾燥法、噴霧乾燥法などが挙げられ、好ましくは、噴霧乾燥法が挙げられる。
【0081】
噴霧乾燥法における乾燥条件は、例えば、噴霧乾燥機の入口温度が、例えば、100℃以上、好ましくは、200℃以上であり、例えば、1000℃以下、好ましくは、720℃以下である。また、出口温度が、例えば、50℃以上、好ましくは、90℃以上であり、例えば、700℃以下、好ましくは、250℃以下である。
【0082】
そして、これにより、シリカ粒子と、凝集抑制剤とを含むタイヤ用フィラーが得られる。
【0083】
上記のタイヤ用フィラーの製造方法、および、そのタイヤ用フィラーの製造方法に用いられる凝集抑制剤によれば、タイヤ用フィラーを、簡易に製造することができる。
【0084】
より具体的には、例えば、凝集抑制剤の添加前に、シリカ粒子が乾燥されると、シリカ粒子が凝集し、二次粒子を形成する場合がある。そのような場合、得られたシリカの二次粒子を再度水分散させ、得られたシリカスラリーに上記の凝集抑制剤を添加しても、シリカの一次粒子の表面には凝集抑制剤が吸着されず、シリカの二次粒子の表面に凝集抑制剤が吸着される。その結果、得られるシリカ粒子(二次粒子)は、シリカの一次粒子の表面に凝集抑制剤が吸着される場合に比べ、分散性に劣る。
【0085】
一方、上記の方法では、一度も乾燥されていないシリカ粒子を含むシリカスラリーに、凝集抑制剤を添加する。そのため、シリカの一次粒子の表面に凝集抑制剤が吸着され、シリカの一次粒子が、凝集抑制剤に付着および/または被覆される。すなわち、凝集抑制剤は、シリカ粒子の表面全体、または、シリカ粒子の表面の一部に付着するように、複数のシリカ粒子の間に充填配置される。その結果、上記の方法では、分散性に優れる上記のタイヤ用フィラーが、簡易に製造される。
【0086】
そして、このようなタイヤ用フィラーでは、上記したように、シリカ粒子が特定の凝集抑制剤に付着および/または被覆されているため、シリカ粒子の凝集が抑制されている。そのため、タイヤ用フィラーは、分散性に優れており、低燃費性に優れるタイヤ(後述)を得ることができる。
【0087】
すなわち、タイヤ用フィラーは、タイヤ用ゴム組成物およびタイヤの製造に用いられる。
【0088】
より具体的には、本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記のタイヤ用フィラーとゴム成分とを含有している。
【0089】
ゴム成分としては、特に制限されないが、例えば、ジエン系ゴムが挙げられる。
【0090】
ジエン系ゴムとしては、特に制限されないが、例えば、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。
【0091】
これらゴム成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0092】
得られる成形物の強度や耐摩耗性の向上を図る観点から、ゴム成分として、好ましくは、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)が挙げられ、より好ましくは、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびブタジエンゴム(BR)の併用が挙げられる。
【0093】
スチレンブタジエンゴム(SBR)およびブタジエンゴム(BR)を併用する場合、それらの併用割合は、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびブタジエンゴム(BR)の総量100質量部に対して、スチレンブタジエンゴム(SBR)が、例えば、40質量部以上、好ましくは、60質量部以上であり、例えば、95質量部以下、好ましくは、85質量部以下である。また、ブタジエンゴム(BR)が、例えば、5質量部以上、好ましくは、15質量部以上であり、例えば、60質量部以下、好ましくは、40質量部以下である。
【0094】
スチレンブタジエンゴム(SBR)およびブタジエンゴム(BR)の併用割合が上記範囲であれば、得られる成形物の強度や耐摩耗性の向上を図ることができる。
【0095】
タイヤ用ゴム組成物において、タイヤ用フィラーとゴム成分との配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定されるが、例えば、タイヤ用フィラーが、ゴム成分100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、10質量部以上であり、例えば、140質量部以下、好ましくは、120質量部以下である。
【0096】
また、タイヤ用ゴム組成物は、その他のフィラー(上記のタイヤ用フィラーを除くフィラー)を含有することができる。
【0097】
その他のフィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸およびその塩類、クレー、タルク、雲母粉、ベントナイト、アルミナ、アルミニウムシリケート、アセチレンブラック、アルミニウム粉などの無機フィラー、例えば、コルクなどの有機フィラーなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0098】
その他のフィラーが配合される場合、その配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定されるが、例えば、ゴム成分100質量部に対して、その他のフィラーが、例えば、1質量部以上、好ましくは、10質量部以上であり、例えば、140質量部以下、好ましくは、120質量部以下である。
【0099】
また、タイヤ用ゴム組成物は、好ましくは、加硫剤を含有する。
【0101】
硫黄としては、特に制限されないが、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などが挙げられる。
【0102】
これら加硫剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0103】
加硫剤の配合割合は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、例えば、5質量部以下、好ましくは、3質量部以下である。
【0104】
また、タイヤ用ゴム組成物は、好ましくは、加硫促進剤を含有する。
【0105】
加硫促進剤としては、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸など、さらには、スルフェンアミド系加硫促進剤〔N‐tert‐ブチル‐2‐ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N‐シクロヘキシル‐2‐ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N‐ジシクロヘキシル‐2‐ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)、N,N‐ジイソプロピル‐2‐ベンゾチアゾールスルフェンアミドなど〕、グアニジン系加硫促進剤(ジフェニルグアニジン(DPG)、ジオルトトリグアニジン、トリフェニルグアニジン、オルトトリルビグアニド、ジフェニルグアニジンフタレートなど)などが挙げられる。
【0106】
これら加硫促進剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0107】
加硫促進剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0108】
さらに、このようなタイヤ用ゴム組成物には、必要により、例えば、劣化防止剤(例えば、オゾン劣化防止剤、熱劣化防止剤、酸化劣化防止剤)、亀裂防止剤、シランカップリング剤、加硫促進剤、さらには、加硫助剤、加硫遅延剤、加硫活性化剤、可塑剤、軟化剤(処理蒸留芳香族系留出物(TDAE)など)、老化防止剤など、公知の各種添加剤を、適宜の割合で配合することができる。
【0109】
また、これら添加剤は、例えば、上記各成分の少なくともいずれかに予め配合してもよく、また、それらの混合時において同時に配合してもよい。
【0110】
そして、タイヤ用ゴム組成物は、上記の各成分を混合することにより、得ることができる。
【0111】
混合方法としては、特に制限されず、例えば、ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの公知のゴム用混練機械を使用することができる。また、混合条件は、特に制限されず、使用される装置などに応じて、適宜設定される。
【0112】
そして、このようなタイヤ用ゴム組成物は、上記のタイヤ用フィラーが含まれているため、低燃費性に優れるタイヤを得ることができる。
【0113】
そして、上記のタイヤ用ゴム組成物は、低燃費性の車両のタイヤの製造において、好適に用いられる。
【0114】
上記のタイヤ用ゴム組成物を用いてタイヤを製造する方法としては、特に制限されず、公知の加硫成形法を採用することができる。
【0115】
すなわち、例えば、タイヤ用ゴム組成物を、未加硫状態でタイヤの形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて、他のタイヤ部材(例えば、サイドウォール部、ショルダー部、ビート部、インナーライナーなど)の部材と貼り合わせて、未加硫タイヤを形成する。次いで、この未加硫タイヤを、加硫機中にて、加熱加圧し、加硫する。
【0116】
そして、このようにして得られたタイヤは、上記のタイヤ用フィラーが含まれているため、低燃費性に優れる。
【0117】
そのため、例えば、自動車、二輪車、鉄道車両(例えば、モノレールなど)などの各種車両のタイヤや、例えば、航空機のタイヤなどとして、好適に用いられる。
【実施例】
【0118】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0119】
実施例1
温度調節機付きの1m
3の反応容器に、ケイ酸ナトリウム水溶液(SiO
2濃度:10g/L、モル比:SiO
2/Na
2O=3.43)230Lを投入し、90℃に昇温した。
【0120】
次いで、22%硫酸73Lと、ケイ酸ナトリウム水溶液(SiO
2濃度:90g/L、モル比:SiO
2/Na
2O=3.43)440Lを同時に120分かけて投入した。10分間熟成後、22%硫酸16Lを15分かけて投入した。上記反応中は、反応液温度を90℃に保持し、反応液を常時撹拌した。これにより、pH3.3のシリカスラリーを得た。
【0121】
次いで、シリカスラリーを乾燥させることなく、シリカスラリーに、凝集抑制剤としてのヘキサメタリン酸ナトリウムを添加した。凝集抑制剤の添加量は、シリカスラリー中のシリカ粒子100質量部に対して、凝集抑制剤の固形分を5質量部とした。
【0122】
次いで、シリカスラリーを550rpmで2分間、回転攪拌機(日立製)で撹拌混合し、その後、噴霧乾燥機を用いて、入口温度250℃、出口温度110℃で乾燥させた。
【0123】
これにより、シリカ粒子および凝集抑制剤を含有するタイヤ用フィラーを得た。
【0124】
また、得られたタイヤ用フィラーを用いて、表1に示す処方で各成分を配合および混練し、タイヤ用ゴム組成物を得た。
【0125】
そして、得られたタイヤ用ゴム組成物を、厚み2mmのシート型に注入し、170℃で12分加硫させることにより、成形品を得た。
【0126】
実施例2〜14および比較例1〜2
凝集抑制剤を、表2に示す種類に変更した以外は、実施例1と同じ方法で、タイヤ用フィラーを得た。なお、比較例1では、凝集抑制剤を用いることなく、タイヤ用フィラーを得た。
【0127】
また、得られたタイヤ用フィラーを用いて、実施例1と同じ方法で、タイヤ用ゴム組成物および成形品を得た。
【0128】
なお、実施例9を除く各実施例および各比較例において、凝集抑制剤としては市販品を用いた。また、実施例9では、凝集抑制剤として、N−オクチルエタノールアミンを以下の方法で製造した。
【0129】
すなわち、モノエタノールアミン6.11g(0.10mol)および1−ブロモオクタン7.72g(0.04mol)を200mL四つ口フラスコに混合し、N,N−ジメチルホルムアミド(溶媒、DMF)32.27gに溶解させ、90℃で8時間加熱および攪拌した。その後、得られた混合物から、DMF(溶媒)と、未反応のモノエタノールアミンとを、ロータリーエバポレーターで除去した。これにより、N−オクチルエタノールアミンを得た。
【0130】
評価
<低燃費性>
粘弾性測定装置(装置名EPLEXOR500N、GABO社製)により、以下の条件でtanδを測定した。
・測定条件
測定モード:ひずみ分散
静的負荷:10%ひずみ
動的負荷:±0.1%〜±10%以上
周波数:10Hz
温度:60℃
そして、凝集抑制剤を添加しなかった場合(比較例1)の値を100とし、tanδを指数表示した。その結果を、表2に併せて示す。
【0131】
なお、tanδの指数表示の値が小さいほど、低燃費性に優れると判断した。
【0132】
<崩壊性評価>
タイヤ用フィラー0.6gに対し、水を19.4g加え、3%の懸濁液を調製し、1時間静置した。
【0133】
その後、超音波ホモジナイザー(BRANSON社製 SONIFIER250A)を用いて、出力150Wで10分間超音波処理した。
【0134】
その後、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、SALD−7100)を用いて、以下の測定条件で、懸濁液の粒度分布を測定し、wk率(=1μm以上の粒径のピークトップ頻度/1μm以下の粒径ピークトップ頻度)を求めた。
【0135】
これにより、タイヤ用フィラーの崩壊性を評価した。その結果を、表3に示す。なお、wk率の値が低いほど、そのタイヤ用フィラーが崩壊しやすいことを示す。
・測定条件
屈折率:1.60−0.10i
ポンプスピード:8
装置内蔵超音波処理時間:2分
【0136】
【表1】
【0137】
なお、表中の略号の詳細を下記する。
【0138】
SBR:スチレンブタジエンゴム、SL−563、JSR社製
BR:ポリブタジエンゴム、JSR BR−51、JSR社製
オゾノン6C:オゾン劣化防止剤、精工化学社製
ノンフレックスRD:熱・酸化劣化防止剤、精工化学社製
サンタイト:表面亀裂防止剤、精工化学社製
亜鉛華:酸化亜鉛(加硫促進剤)、ハクスイテック社製
ステアリン酸つばき、加硫促進剤、日油社製
Si75:シランカップリング剤、エボニック社製
TDAE:Treated Distilled Aromatic Extracts(処理蒸留芳香族抽出物)、軟化剤、新日本石油社製
硫黄:分散性粉末硫黄、ヤブ商店
サンセラーD、加硫促進剤、三新化学
サンセラーCM−G:加硫促進剤、三新化学
【0139】
【表2】
【0140】
なお、表中の略号の詳細を下記する。
【0141】
PEG600:ポリエチレングリコール、数平均分子量600、和光純薬社製
アミノアルコールEA:N−(β−アミノエチル)エタノールアミン(2級アミノアルコール)、日本乳化剤製
アミノアルコールMBD:N−n−ブチル−N,N−ジエタノールアミン(3級アミノアルコール)、日本乳化剤製
アミノアルコールDEA:ジエタノールアミン(2級アミノアルコール)、日本乳化剤製
アミノアルコールTEA:トリエタノールアミン(3級アミノアルコール)、日本乳化剤製
アミノアルコールAEE:2−(2−アミノエトキシ)エタノール(1級アミノアルコール)、日本乳化剤製
アミノアルコールMBM:N−n−ブチルエタノールアミン(2級アミノアルコール)、日本乳化剤製
アミノアルコールMOM:N−オクチルエタノールアミン(2級アミノアルコール
)
A1120:N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製
アンヒトール20YB:2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、花王ケミカル製
キュアゾール2E4MZ:2−エチル−4−メチルイミダゾール、四国化成製
ハートールM33:トール油脂肪酸イミダゾリン、ハリマ化成
製
【0142】
【表3】
【0143】
表3から、実施例1のタイヤ用フィラーの崩壊性(タイヤ用フィラーの集合体(二次粒子)の崩壊性)が、比較例1のタイヤ用フィラーの崩壊性に比べて高いことが分かる。
【0144】
これは、実施例1のタイヤ用フィラーでは、シリカ粒子(一次粒子)の近傍に凝集抑制剤が存在するため、凝集抑制剤の凝集抑制効果が、シリカ粒子(一次粒子)の近傍で発揮される。その結果、タイヤ用フィラーの集合体(二次粒子)が、崩壊し易くなっていると考えられる。この結果から、実施例1のタイヤ用フィラーにおいては、シリカ粒子(一次粒子)は、凝集抑制剤により被覆されていると考えられる。