(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6937123
(24)【登録日】2021年9月1日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】電気機器システムおよび電気機器システムのメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
H02B 3/00 20060101AFI20210909BHJP
H02B 11/12 20060101ALI20210909BHJP
H02B 1/30 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
H02B3/00 Z
H02B11/12 J
H02B3/00 K
H02B1/30 F
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-10367(P2017-10367)
(22)【出願日】2017年1月24日
(65)【公開番号】特開2018-121415(P2018-121415A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年11月11日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】野田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】赤澤 賢二
(72)【発明者】
【氏名】中山 崇嗣
【審査官】
北岡 信恭
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭48−044835(JP,Y1)
【文献】
特開平05−056521(JP,A)
【文献】
実開昭58−124002(JP,U)
【文献】
特開2010−220422(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/128144(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 3/00
H02B 11/12
H02B 1/30
H02B 1/20− 1/22
H02B 1/40− 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源側に設けられた第1の端子と、
前記第1の端子に電気的に接続された第2の端子と、
負荷側に設けられた第3の端子と、前記第3の端子に電気的に接続された第4の端子と、
前記第1の端子および前記第3の端子に接続されるメンテナンスの対象となる第1の電気機器と、
を有し、
メンテナンス時には、第2の電気機器が前記第2の端子および前記第4の端子に接続され、 前記第2の電気機器が前記第2の端子および前記第4の端子に接続されている間に、前記第1の電気機器が前記第1の端子および前記第2の端子に接続または離脱され、
第1の面と背面が対向するように配置された第2の面とを有する配線盤を備え、
前記第1の端子および前記第3の端子は前記第1の面に設けられ、
前記第2の端子および前記第4の端子は前記第2の面に設けられ、
前記第1の電気機器を設置する収納盤には、前記第1の電気機器を載置する載置台が固定され、
前記第1の電気機器の載置台には、当該第1の電気機器が前記第1の端子および前記第2の端子に対して接続または離脱するように移動可能なスペースが設けられ、
前記収納盤の内部に、離脱方向に移動した前記第1の電気機器を配置可能なスペースが設けられた、
電気機器システム。
【請求項2】
前記配線盤の前記第2の面は、着脱可能な載置台の着脱部を有し、前記第2の電気機器が前記着脱部に配置された載置台に載置される、請求項1記載の電気機器システム。
【請求項3】
前記第1の電気機器は、収納盤に収納されており、メンテナンス時には、前記第1の電気機器とともに前記収納盤が着脱される、請求項1または2記載の電気機器システム。
【請求項4】
前記第1の電気機器は、開閉器、遮断器、断路器、計器用変圧器変流器のうち少なくとも1つである請求項1乃至3のいずれか1項記載の電気機器システム。
【請求項5】
電源側に設けられた第1の端子と、
前記第1の端子に電気的に接続された第2の端子と、
負荷側に設けられた第3の端子と、
前記第3の端子に電気的に接続された第4の端子と、
前記第1の端子および前記第3の端子に接続されるメンテナンスの対象となる第1の電気機器と、
を有し、
第1の面と背面が対向するように配置された第2の面とを有する配線盤を備え、
前記第1の端子および前記第3の端子を前記第1の面に設け、
前記第2の端子および前記第4の端子を前記第2の面に設け、
前記第1の電気機器を設置する収納盤に、前記第1の電気機器を載置する載置台を固定し、
前記第1の電気機器の載置台には、当該第1の電気機器が前記第1の端子および前記第2の端子に対して接続または離脱するように移動可能なスペースを設け、前記収納盤の内部に、離脱方向に移動した前記第1の電気機器を配置可能なスペースを設けた、電気機器システムにおいて、
メンテナンス時には、第2の電気機器を前記第2の端子および前記第4の端子に接続し、
前記第2の電気機器が前記第2の端子および前記第4の端子に接続されている間に、離脱方向に移動した前記第1の電気機器を前記収納盤の内部のスペースに配置し、前記第1の電気機器を当該第1の電気機器の載置台に移動させて前記第1の端子および前記第2の端子に接続または離脱する、
電気機器システムのメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、電力系統の保護管理を行う電気機器システムおよび電気機器システムのメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電された電力を供給する電力系統には、送電所や変電所などに電力保護管理用の設備が設けられる。電力保護管理用の設備には、開閉器、遮断器、断路器、計器用変圧器変流器等の複数の電気機器が設けられている。これらの電気機器は、電気機器に電力を供給する電力供給線および電気機器と負荷とを接続する電力供給線に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−25799公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のような電気機器は、メンテナンス時に電気機器に電力を供給する電力供給線および電気機器と負荷とを接続する電力供給線から離脱される。このようなメンテナンス時の電気機器の離脱は、負荷への電力供給が中断され停電状態となる、または仮設給電による高額な配線が必要となるといった不都合があった。
【0005】
また仮設給電の場合、開閉器、遮断器、断路器、計器用変圧器変流器等の電気機器を介さずに負荷へ電力供給が行われる場合があり、メンテナンス中の電力保護管理が行われにくいといった不都合もあった。
【0006】
本実施形態は、メンテナンス時に停電が発生せず、電力保護管理が継続して行われる電気機器システムおよび電気機器システムのメンテナンス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の電気機器システムは次のような特徴を有することを特徴とする。
(1)電気機器に電力を供給する第1の電力供給線。
(2)前記第1の電力供給線に接続された第1の端子および第2の端子。
(3)前記電気機器と負荷とを接続する第2の電力供給線。
(4)前記第2の電力供給線に接続された第3の端子および第4の端子。
(5)前記第1の端子および前記第3の端子に接続された常設用の第1の電気機器。
(6)第1の面と背面が対向するように配置された第2の面とを有する配線盤を備える。
(7)第1の端子および第3の端子を第1の面に設ける。
(8)第2の端子および第4の端子を第2の面に設ける。
(9)第1の電気機器を設置する収納盤に、第1の電気機器の載置台を固定する。
(10)第1の電気機器の載置台には、第1の電気機器が第1の端子および第2の端子に対して接続または離脱するように移動可能なスペースを設ける。
(11)
収納盤の内部に、離脱方向に移動した第1の電気機器を配置可能なスペースを設ける。
(12)メンテナンス時には、仮設用の第2の電気機器が前記第2の端子および前記第4の端子に接続され、前記第2の電気機器が前記第2の端子および第4の端子に接続されている間に、
離脱方向に移動した第1の電気機器を収納盤の内部のスペースに配置し、前記第1の電気機器が前記第1の端子および前記第2の端子に接続または離脱される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態にかかる電気機器システムを示す図
【
図2】第1実施形態の電気機器システムの着脱手順を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1.第1実施形態]
[1−1.構成]
図1を参照して本実施形態の一例としての電気機器システムについて説明する。
【0010】
電気機器システムは、配線盤1、電力供給線2、電力供給線2に接続された端子2Aおよび端子2B、電力供給線3、電力供給線3に接続された端子3Aおよび端子3B、常設用の電気機器4、収納盤5を有する。電気機器6および載置台7は、メンテナンス時に使用される。
【0011】
電力供給線2が請求項中の第1の電力供給線に、端子2Aおよび端子2Bがそれぞれ請求項中の第1の端子および第2の端子に、電力供給線3が請求項中の第2の電力供給線に、端子3Aおよび端子3Bがそれぞれ第3の端子および第4の端子に、常設用の電気機器4が請求項中の第1の電気機器に相当する。
【0012】
電力供給線2は、電気機器4へ電力を供給するための給電線である。電力供給線2は、分岐点2Cにて分岐し、端子2Aおよび端子2Bに接続される。電力供給線3は、電気機器4から負荷へ電力を供給するための給電線である。電力供給線3は、分岐点3Cにて分岐し、端子3Aおよび端子3Bに接続される。
【0013】
配線盤1は、電力供給線2および3を内蔵し、電気機器4を電力供給線2および3に接続するために設けられた配電用の機器である。配線盤1は、金属板または樹脂盤により形成された直方体状の形状をした機器であり、送変電所の電力管理室の床面に設置される。配線盤1は、電力管理室の床面に略垂直に立ち上がった第1の面11および、第2の面12を有する。第1の面11および第2の面12は相互に背面が対向するように配置される。
【0014】
第1の面11は、表面に電力供給線2に接続された端子2Aおよび電力供給線3に接続された端子3Aを有する。第2の面12は、第1の面11に対抗するよう配置され、表面に電力供給線2に接続された端子2Bおよび電力供給線3に接続された端子3Bを有する。第2の面12は、後述する仮設用の電気機器6を載置するための載置台7を取り付けるための着脱部13を有する。
【0015】
端子2A,2Bおよび端子3A,3Bは、銅等の金属により構成された、電力を通電するため接続部材である。端子2Aおよび2Bは電源側に設けられた端子である。端子2Aと端子2Bは、床面から同じ高さに、互いに電力供給線2との接続部分が対向するように配線盤1の第1の面11に配置される。
【0016】
端子3Aおよび3Bは負荷側に設けられた端子である。端子3Aと端子3Bは、床面から同じ高さに、互いに電力供給線3との接続部分が対向するように配線盤1の第2の面12に配置される。
【0017】
端子2Aおよび端子3Aは、電気機器4に接続される。端子2Bおよび端子3Bは、電気機器4のメンテナンス時に、後述する仮設用の電気機器6に接続される。なお、仮設用の電気機器6が、請求項中の第2の電気機器に相当する。
【0018】
電気機器4は、電力供給線2と電力供給線3との間を接続または遮断する開閉器である。電気機器4は、配線盤1の第1の面11に配置された端子2Aおよび端子3Aに接続される。電気機器4は、収納盤5内に設置された状態で、配線盤1に近接して配置される。電気機器4は、メンテナンスの対象となる電気機器である。
【0019】
電気機器6は、開閉器であり機能は電気機器4と同等である。電気機器6は、電気機器4のメンテナンス時に配線盤1の第2の面12に配置された端子2Bおよび端子3Bに接続される。電気機器6は、電気機器4のメンテナンス時に、後述する載置台7に載置された状態で、配線盤1に近接して配置される。
【0020】
載置台7は、金属、樹脂または木製の板形状の仮設の棚である。載置台7は、電気機器6が載置される。載置台7は、配線盤1の第2の面12に設けられた着脱部13に着脱される。載置台7は、電気機器4のメンテナンス時に、電気機器6を載置した状態で、配線盤1の第2の面12に設けられた着脱部13に取付けられ、電気機器4のメンテナンス終了時に、電気機器6とともに取外される。
【0021】
[1−2.作用]
次に、本実施形態の電気機器システムの作用を、
図2に示すメンテナンス方法の手順に基づき説明する。電気機器システムのメンテナンスは送変電所の作業者により行われる。
【0022】
[A.初期状態]
最初に、本実施形態の電気機器システムが通常運転されている初期状態について説明する。通常運転時に、電気機器4は、
図2(A)に示すように収納盤5内に設置された状態で、配線盤1に近接して配置され、配線盤1の第1の面11に配置された端子2Aおよび端子3Aに電気的に接続されている。
【0023】
電気機器4は、作業者の操作により電力供給線2と電力供給線3との間の電力を導通または遮断する。電気機器4が導通状態のとき、電力供給線2に供給された電力は、電力供給線3を介し負荷に供給される。電気機器4が遮断状態のとき、電力供給線2に供給された電力は、遮断され負荷に供給されない。
【0024】
[B.載置台7の取付け]
電気機器4のメンテナンスを開始するにあたり、まず、
図2(B)に示すように配線盤1の第2の面12に設けられた着脱部13に載置台7を取り付ける。載置台7は面12に設けられた着脱部13にフック状の部材にて引っ掛けられることにより固定される。載置台7には、仮設用の電気機器6が載置される。
【0025】
[C.電気機器6の接続]
次に、
図2(C)に示すように載置台7に載置された仮設用の電気機器6を移動させ、電気機器6を第2の面12に配置された端子2Bおよび端子3Bに電気的に接続する。電気機器6の底部には移動用の車輪が配置されており、電気機器6は作業者によりこの車輪を用いて移動させられる。このとき、電気機器6の導通または遮断状態を電気機器4と同じ状態にし、かつ電気機器6を動作可能状態としておく。この段階で、電力供給線2と電力供給線3に接続された電気機器4に、電気的に並列に電気機器6が接続された状態となる。
【0026】
[D.電気機器4の離脱およびメンテナンス]
次に、
図2(D)に示すように収納盤5内に載置された電気機器4を移動させ、電気機器4を第1の面11に配置された端子2Aおよび端子3Aから電気的に取外す。電気機器4の底部には移動用の車輪が配置されており、電気機器4は作業者によりこの車輪を用いて移動させられる。電気機器4は、端子2Aおよび端子3Aから電気的に取外されるが、端子2Bおよび端子3Bに接続された電気機器6が、電気機器4に代わり通常運転時の電気機器4と同様の動作を行う。電気機器4は、端子2Aおよび端子3Aから電気的に取外されメンテナンスされる。
【0027】
[E.電気機器4の接続]
次に、
図2の(D)の逆の手順で、メンテナンスを終了した電気機器4を移動させ、第1の面11に配置された端子2Aおよび端子3Aに電気的に接続する。
【0028】
[F.電気機器6の離脱]
次に、
図2の(C)の逆の手順で、電気機器6を第2の面12に配置された端子2Bおよび端子3Bから電気的に取外す。
【0029】
[G.電気機器4の接続]
次に、
図2の(B)の逆の手順で、載置台7を面12に設けられた着脱部13から取外す。
以上で、一連のメンテナンス作業は終了となる。
【0030】
[1−3.効果]
(1)本実施形態によれば、第1の電気機器4と並列に第2の電気機器6が接続される第2の端子2Bおよび第4の端子3Bを有するので、メンテナンス時に、仮設用の第2の電気機器6が第2の端子2Bおよび第4の端子3Bに接続されることにより、第1の電気機器4のメンテナンス時に停電が発生しない電気機器システムおよび電気機器システムのメンテナンス方法を提供することができる。
【0031】
(2)本実施形態によれば、第1の電気機器4と並列に第2の電気機器6が接続される第2の端子2Bおよび第4の端子3Bを有するので、メンテナンス時に、仮設用の第2の電気機器6が接続されることにより、電力保護管理が継続して行われる電気機器システムおよび電気機器システムのメンテナンス方法を提供することができる。
【0032】
(3)本実施形態によれば、電気機器4は、端子2Aおよび端子3Aから電気的に取外されるが、端子2Bおよび端子3Bに接続された電気機器6が、電気機器4に代わり通常運転時の電気機器4と同様の動作を行う。
【0033】
[2.他の実施形態]
本発明の変形例を含めた実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。以下は、その一例である。
【0034】
(1)上記実施形態では、電気機器4および6は、開閉器としたが遮断器、断路器、計器用変圧器変流器であってもよい。
【0035】
(2)上記実施形態では、電気機器4のみを移動して、端子2Aおよび端子3Aから電気的に取外しメンテナンスを行うものとしたが、収納盤5とともに電気機器4を移動させ、端子2Aおよび端子3Aから電気的に取外しメンテナンスを行うようにしてもよい。
【0036】
(3)上記実施形態では、電気機器4を取外し、メンテナンスを行い、メンテナンス後に同じ電気機器4を配線盤1に接続するようにしたが、代替の電気機器を接続するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1・・・配線盤1
2,3・・・電力供給線2
2A,2B,3A,3B・・・端子
2C,3C・・・分岐点
4,6・・・電気機器
5・・・収納盤
7・・・載置台
11・・・第1の面
12・・・第2の面
13・・・着脱部