【実施例】
【0017】
〔試験例1〕臨床試験(フェブキソスタットとイノシンの併用投与)
1.各種測定方法
(1)臨床検査
下記項目以外は定法により測定した。
(2)血清尿酸値
臨床化学自動分析装置はアークレイ株式会社製の乾式臨床化学分析測定ユニットを用い、血清尿酸値の測定はウリカーゼーペルオキシダーゼ法を用いた。
(3)尿中尿酸濃度/クレアチニン濃度
尿中尿酸濃度は尿量により変化するため、尿中クレアチニン濃度で除した、尿中尿酸/クレアチニンの値を用い、尿中尿酸量を評価した。尿酸値の測定方法は血清尿酸値と同じ。
(4)血液中プリン体濃度
末梢血中の各種プリン体の測定は、文献によった。簡単に述べると、末梢血をEDTA採血し、500μL+500μL ice cold 8%PCAと混合し、直ちに5秒Vortex、12,000 x gで4℃で10分間遠心、上清を−80度で保存した。サンプルが集まった状態で、溶解し、溶解液650μLに40μLの2MK
2CO
3in6MKOHを加え、PCAの沈殿と中性化を同時に行った。これを、12,000x gで摂氏4度で10分間遠心後、上清40μLに移動相160μLを加えHPLCにかけた。HPLCの条件も下記文献によった。プリン体の量は全血1L中に含まれるモル量で表した。
文献
Coolen EJ, Arts IC, Swennen EL, Bast A, Stuart MA, Dagnelie PC. Simultaneous determination of adenosine triphosphate and its metabolites in human whole blood by RP-HPLC and UV-detection. J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci. 2008 Mar 15;864(1-2):43-51.
(5)尿中プリン体濃度
上記(4)と同じ方法によりプリン体濃度を測定した。
【0018】
2.投与試験
(1)投与対象
日本人の健康成人男性16名を、I期は1名、第II期は15名をA群〜E群に各群3名ずつに分けて下記投与試験を行った。
(2)投与内容及び投与スケジュール
(2−1)第I期
1名に対し、フェブキソスタット20mgとイノシン500mg、1日2回の同時投与を14日間行い、安全性を確認した。
(2)第II期
第I期終了後、下記に示す内容で、各群3名に投与を行った。
A群 フェブキソスタット20mg、1日2回、14日間
B群 イノシン500mg、1日2回、14日間
C群 フェブキソスタット20mgとイノシン500mg、1日2回、14日間
D群 フェブキソスタット20mgとイノシン1000mg、1日2回、14日間
E群 フェブキソスタット30mg、1日2回、14日間
【0019】
3.結果
3−1.第I期
(1)有害事象
(1−1)身体所見等
被検者は自覚所見、及び身体所見で有害事象はなかった。
(1−2)臨床検査
8日目のASTが49U/L(基準値10〜40)と異常値を示したが、15日目に29U/Lと基準値に復した。8日目のクレアチニンが1.09mg/dL(基準値0.61〜1.04)と異常値を示したが、15日目に0.98mg/dLと基準値に復した。8日目の血糖値が66mg/dL、15日目が67mg/dL(基準値70〜109)と異常値を示した。
(2)血清尿酸値の変化
血清尿酸値は、1日目4.9mg/dL、8日目2.5mg/dL、15日目2.9mg/dLであった。フェブキソスタット40mg、イノシン1gの服用により、平均2.2mg/dL低下したことになる。
【0020】
3−2.第II期
(1)有害事象
(1−1)身体所見
年齢、身長、体重、BMI、最高血圧、最低血圧、脈拍、体温に群間の著明な差はなかった。最高血圧、最低血圧、脈拍、体温も、被検者1名において脈拍数の著明な増加が見られた以外は、著明な変化は見られなかった。
(1−2)各検査値の有害事象(尿酸値を除く)
総蛋白、アルブミン、総ビリルビン、AST、ALT、AL−P、LD、γ−GT、総コレステロ−ル、中性脂肪、HDLコレステロ−ル、LDLコレステロール定量、尿酸、尿素窒素、クレアチニン、ナトリウム、クロ−ル、カリウム、カルシウム、血糖検査、HbA1c(NGSP)、白血球数WBC、赤血球数RBC、血色素量Hb、ヘマトクリツトHt、血小板数PLT、BASO、EOSINO、NEUTRO、LYMPH、MONOについて測定した。
特に各群の背景に差は見られなかった。また、血清尿酸値以外は特に著明な変化は認められなかった。
【0021】
(2)血清尿酸値の変化
図1にA〜Eの群ごとのグラフを示す。イノシンのみを投与したB群では血清尿酸値の著増が見られた(最高8.1mg/dL)。A、C〜E群では血清尿酸値の低下が見られた。フェブキソスタット40mg/日投与例では血清尿酸値が2mg/dL未満に低下した例は無かったが、フェブキソスタット60mg/日投与群であるE群では血清尿酸値が2mg/dL未満になる例が見られた。
フェブキソスタット40mg/dLの投与により、血清尿酸値は2.53mg/dL低下したが(A群)、同時にイノシンを1日1g投与した例では2.23mg/dL低下(C群)、1日2g投与した例では1.47mg/dL低下(D群)した。
フェブキソスタット60mg/dLの投与により、血清尿酸値は3.93mg/dL低下した(E群)。一日1gのイノシンにより血清尿酸値は平均2.57mg/dL上昇した(B群)。これをフェブキソスタット投与下におけるイノシンの血清尿酸値増加効果から検討すると、フェブキソスタット40mg/日の下ではイノシン1g/日投与により血清尿酸値は0.3mg/dL、2g/日投与により血清尿酸値は1.06mg/dL増加したことになる。前述のように、フェブキソスタット非投与下では1g/日のイノシン投与により血清尿酸値は2.57mg/dL増加したのでフェブキソスタット投与下ではイノシンによる血清尿酸上昇作用が大幅に抑制されることになる。
【0022】
(3)尿中尿酸濃度/クレアチニン濃度
各群ごとの尿中尿酸濃度/クレアチニン濃度の第0週から第2週までの変化を
図2に示した。尿中尿酸/クレアチニンはB群のみがイノシン投与により著明に増加した。A、C−G群はすべて尿中尿酸/クレアチニンが低下した。これらの尿中尿酸濃度/クレアチニン濃度の変化は、血清尿酸値の変化のパターンとほぼ同じであった。
【0023】
(4)血液中プリン体濃度
各群ごとの血液中のプリン体の濃度の第0週から第2週までの変化を
図3〜4に示した。
図3はA〜E群ごとの血液中ATP/ADPの濃度を示す。A、B群はATP濃度は変化なし、C、D群ではATPが上昇した事を示唆している。E群は一定の傾向が見られない。即ち、フェブキソスタット、イノシン単独投与ではATPの上昇は見られないが、併用例、特にフェブキソスタット40mg/日、イノシン1〜2g/日の例ではATPの上昇が見られた。それらの量を超えたフェブキソスタット、イノシンの併用では一定の傾向が見られなかった。
図4はA〜E群ごとの血液中ヒポキサンチン(Hx)とキサンチン(X)の濃度を示す。フェブキソスタット40mg/日のみの投与群(A群)ではHx濃度は不変であるが、Xは著明に増加した。イノシン1g/日のみの投与群(B群)ではHx、Xともに不変であった。なお、血液中イノシン濃度も測定したが、イノシン単独投与群を含め、イノシンの濃度の上昇は見られなかった(A−E群)。これはイノシンをHxに変換する酵素、Purine nucleoside phosphorylase(PNP)の濃度が血液中で極めて高く、イノシンは速やかにHxに分解され、更にはHx、Xへと分解されると考えられる。フェブキソスタット40mg/日にイノシンを1〜2g/日併用した例ではHxとXの両方の著明な上昇が認められた。即ち、フェブキソスタット単独でもイノシン単独でも見られなかった「血液中のHxの上昇」という効果が併用により見られた(
図4)。
フェブキソスタット60mg/日の単独投与例ではXの上昇とともにHxの軽微な上昇が見られた(
図4E)。
【0024】
(5)尿中プリン体濃度
各群ごとの尿中イノシン、Hx、X、尿酸の濃度の第0週から第2週までの変化を
図5に示す。尿中Hxはフェブキソスタット単独投与例では中程度の上昇を示すが、フェブキソスタットとイノシンの併用例では著明な上昇を示した。イノシン単独使用例ではHxとXの上昇は認められなかった。Xの濃度はフェブキソスタットの単独投与例でも著明に上昇したが、フェブキソスタットとイノシンの併用例では更に著明に上昇した。
尿中Xの各群での最大の濃度は、A群556.0、B群61.9、C群2023.3、D群1474.8、E群867.7μMであった。即ち、フェブキソスタット40mgとイノシン1、2gを併用した例では、フェブキソスタット40mg単独投与群に比較して最大尿中X濃度が3.64、2.65倍であった。
【0025】
4.試験例4の考察
(1)フェブキソスタットとイノシンの併用は、2週間連続服用試験において、フェブキソスタット40mg/日、イノシン2g/日以下の用量で安全であった。また、これらの併用群で血液中ATPの増加が見られたが、それ以外の単独投与群ではそのような変化は観察されなかった。
(2)フェブキソスタット単独投与では血清尿酸値の著減、イノシンの単独投与では血清尿酸値の著増が見られ、併用療法では中程度の低下が見られた。
(3)どの群でもイノシンの増加は見られず、PNPによりHxに代謝されたと考えられた。
(4)イノシンの単独投与群では血液中も尿中もHxもXも増加せず、尿酸に変化したと考えられた。
(5)フェブキソスタット単独投与群ではXが中程度増加したが、Hxは血液中、尿中を含め軽度−中程度増加した。
(6)フェブキソスタットとイノシンの併用ではHx、Xが血液中、尿中ともに著明に増加した。血液中のHxの増加がATPの増加の原因であると考えられる。
(7)上記臨床試験により、イノシン、フェブキソスタットの単独投与では不可能な薬理作用がこれらの併用により認められた。本発明は、これまでには存在しなかった新規の薬理作用である血液中ヒポキサンチンとATPの増強を可能にするものである。
【0026】
〔試験例2〕臨床試験(2)
上記試験例1により、フェブキソスタットとイノシンの併用により単独投与には認められないほどのATP増強作用が認められた。そこで、フェブキソスタットと同じキサンチンオキシダーゼ/キサンチンデヒドロゲナーゼ阻害剤であるアロプリノール、トピロキソスタットについても同様の作用効果があるか確認するための試験を行った。
1.投与試験
(1)投与対象
日本人の健康成人男性15名を5名ずつ、グループA,B,Cに分けて下記投与試験を行った。
(2)投与内容及び投与スケジュール
グループA
アロプリノール100mgとイノシン500mgを1日2回、14日間
グループB
トピロキソスタット80mgとイノシン500mgを1日2回、14日間
グループC
フェブキソスタット20mgとイノシン500mgを1日2回、14日間
【0027】
2.結果
(1)血清尿酸値の変化
グループA〜Cの試験開始前、試験終了後の血清尿酸値の平均値を下記表1に示す。
いずれのグループにおいても本発明のATP増強剤の投与により血清尿酸値は低下した。
【0028】
【表1】
【0029】
(2)ヒポキサンチン濃度
グループA〜Cの試験開始前、試験終了後のヒポキサンチン濃度の平均値を下記表2に示す。いずれのグループにおいても本発明のATP増強剤の投与により血液中ヒポキサンチンは大幅に増加した。
【0030】
【表2】
【0031】
(3)ATP濃度
グループA〜Cの試験開始前、試験終了後の血液中ATP濃度の平均値を下記表3に示す。いずれのグループにおいても本発明のATP増強剤の投与により血液中ATPは増加した。
【0032】
【表3】
【0033】
3.考察
フェブキソスタットとイノシンの併用、トピロキソスタットとイノシンの併用、及び、アロプリノールとイノシンの併用により、血液中ヒポキサンチンの増加、ATPの増加が確認された。これらはすべて、フェブキソスタット、トピロキソスタット、アロプリノールがキサンチンオキシダーゼ/キサンチンデヒドロゲナーゼを抑制し、そこにイノシンがプリンヌクレオシドホスホリラーゼにより分解されて出来たヒポキサンチンが体内に蓄積することにより、細胞内ATPが増加したと考えられる。このようなヒポキサンチンとATPの増加は、イノシンからの供給と、キサンチンオキシダーゼ/キサンチンデヒドロゲナーゼの抑制の両方が同時に起きたときのみ起こる現象である。
なぜなら、ヒポキサンチンとATPの増加はキサンチンオキシダーゼ/キサンチンデヒドロゲナーゼ阻害剤単独の投与、あるいはイノシン単独の投与では起きなかったからである(試験例1)。すなわち、試験例1では、フェブキソスタット、イノシンのそれぞれの単独投与ではヒポキサンチンの増加も、ATPの増加も起きなかったが(
図4A、B、
図3A、B)、これらを併用投与したときは、ヒポキサンチンとATPの増加が起きたのである(
図4C、D、
図3C、D)。
従って、ヒポキサンチン及びATPの増加は、キサンチンオキシダーゼ/キサンチンデヒドロゲナーゼ阻害剤とイノシンを併用投与したときのみに起きる現象であるといえる。
【0034】
〔製剤例1〕合剤の例
1錠あたり下記を含む経口投与用の合剤(錠剤タイプ)を製造した。
アロプリノール 100mg
イノシン 0.5g
アルファ化デンプン(崩壊バンダー) 70mg
ケイ化微結晶セルロース(充填剤) 32.656mg
クロスカルメロースナトリウム(崩壊剤) 10mg
ステアリン酸マグネシウム(潤滑剤) 0.8mg
【0035】
〔製剤例2〕キット剤の例
アロプリノールを含む下記A.の組成の錠剤とイノシンを含む下記Bの組成の医薬を製造し、それぞれ混ざらないように区切った同一袋に入れ、1回分を調整した。これを2回分すなわち1日分を同一の箱に梱包しキット剤を製造した。
A.アロプリノール錠
アロプリノール 100mg
アルファ化デンプン(崩壊バンダー) 70mg
ケイ化微結晶セルロース(充填剤) 32.656mg
クロスカルメロースナトリウム(崩壊剤) 10mg
ステアリン酸マグネシウム(潤滑剤) 0.8mg
B.イノシン
イノシン 0.5g
【0036】
〔製剤例3〕合剤の例
1錠あたり下記を含む経口投与用の合剤(錠剤タイプ)を製造した。
トピロキソスタット 80mg
イノシン 0.5g
アルファ化デンプン(崩壊バンダー) 70mg
ケイ化微結晶セルロース(充填剤) 32.656mg
クロスカルメロースナトリウム(崩壊剤) 10mg
ステアリン酸マグネシウム(潤滑剤) 0.8mg
【0037】
〔製剤例4〕キット剤の例
トピロキソスタットを含む下記A.の組成の錠剤とイノシンを含む下記Bの組成の医薬を製造し、それぞれ混ざらないように区切った同一袋に入れ、1回分を調整した。これを2回分すなわち1日分を同一の箱に梱包しキット剤を製造した。
A.トピロキソスタット錠
トピロキソスタット 80mg
アルファ化デンプン(崩壊バンダー) 70mg
ケイ化微結晶セルロース(充填剤) 32.656mg
クロスカルメロースナトリウム(崩壊剤) 10mg
ステアリン酸マグネシウム(潤滑剤) 0.8mg
B.イノシン
イノシン 0.5g
【0038】
〔製剤例5〕合剤の例
1錠あたり下記を含む経口投与用の合剤(錠剤タイプ)を製造した。
フェブキソスタット 20mg
イノシン 0.5g
アルファ化デンプン(崩壊バンダー) 70mg
ケイ化微結晶セルロース(充填剤) 32.656mg
クロスカルメロースナトリウム(崩壊剤) 10mg
ステアリン酸マグネシウム(潤滑剤) 0.8mg
【0039】
〔製剤例6〕キット剤の例
フェブキソスタットを含む下記A.の組成の錠剤とイノシンを含む下記Bの組成の医薬を製造し、それぞれ混ざらないように区切った同一袋に入れ、1回分を調整した。これを2回分すなわち1日分を同一の箱に梱包しキット剤を製造した。
A.フェブキソスタット錠
フェブキソスタット 20mg
アルファ化デンプン(崩壊バンダー) 70mg
ケイ化微結晶セルロース(充填剤) 32.656mg
クロスカルメロースナトリウム(崩壊剤) 10mg
ステアリン酸マグネシウム(潤滑剤) 0.8mg
B.イノシン
イノシン 0.5g