(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
体内を撮像する撮像素子を備えた電子内視鏡及び体内を照明する光源の動作を制御する内視鏡制御装置の制御部に、撮像画像の目標輝度を受け付け、撮像画像の輝度を取得し、受け付けた前記目標輝度が所定の輝度範囲の下限側である場合、撮像画像の輝度が前記目標輝度より大きく(又は小さく)、取得した輝度及び受け付けた前記目標輝度の差分量が前記目標輝度に応じた特定の範囲内にあるとき、前記光源の光量、又は前記撮像素子の感度若しくは電子シャッタ速度の制御量の絶対値を減少(又は増加)させる処理を実行させる制御プログラムであって、
前記目標輝度が小さい程、減少し、前記目標輝度が所定の輝度範囲の下限側で1未満の値である減少制御係数と、前記特定の範囲を規定する減少制御閾値とを記憶する記憶部を備えた前記内視鏡制御装置に、撮像画像の輝度が前記目標輝度より大きい場合、前記差分量に前記減少制御係数を乗じて得た値の絶対値が前記減少制御閾値の絶対値を超えるとき、前記差分量に前記減少制御係数を乗じて得た値に基づいて、前記光量、前記感度又は前記電子シャッタ速度を制御する処理を実行させる制御プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその実施形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る電子内視鏡装置1の一構成例を示すブロック図である。電子内視鏡装置1は、電子内視鏡10と、光源装置25を内蔵した内視鏡制御装置20とを備える。
【0011】
<電子内視鏡の構成>
電子内視鏡10は、患者の体内に挿入される可撓性の挿入管10aを備える。挿入管10aの一端部には硬質樹脂製の先端部10bが設けられている。挿入管10aと先端部10bとの連結箇所は、挿入管10aの他端部に設けられた図示しない手元操作部の操作によって湾曲自在に構成されている。手元操作部にはユニバーサルチューブの一端部が接続され、ユニバーサルチューブの他端部には、電子内視鏡10と、内視鏡装置とを接続するためのコネクタ部10cが設けられている。
【0012】
このように構成された電子内視鏡10のユニバーサルチューブ及び挿入管10aの内部には、内視鏡制御装置20から出力される照明光をコネクタ部10cから先端部10bへ導くライトガイド11が挿通されている。ライトガイド11は、例えば光ファイバの束で構成されている。
【0013】
電子内視鏡10の先端部10bには、照明レンズ12及び対物レンズ13が設けられており、先端部10bの内部には撮像素子14及びアナログフロントエンド15が収納されている。照明レンズ12は、ライトガイド11の出口端から出射される照明光を集光し、体内の被写体へ出射する。対物レンズ13は、照明された被写体から反射される反射光を集光し、撮像素子14に結像させる。撮像素子14は、受光面に結ぶ光学像を電気信号に変換して出力するCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、CCD(Charge Coupled Device)等である。アナログフロントエンド15は、撮像素子14から出力された電気信号を増幅し、A/D変換し、撮像素子14の各画素の輝度を示す画像信号を出力する。
【0014】
電子内視鏡10のコネクタ部10cには、内視鏡制御装置20の制御命令に従って撮像素子14を駆動する内視鏡駆動部16が設けられている。内視鏡駆動部16は、コネクタ部10cを介して後述する内視鏡制御装置20の制御部21、タイミングコントローラ23及び信号処理回路24に接続される。また、内視鏡駆動部16は、ユニバーサルチューブ及び挿入管10aの内部を挿通する制御線及び信号線によって、撮像素子14及びアナログフロントエンド15に接続されている。内視鏡駆動部16は、タイミングコントローラ23から出力されるクロックパルスに同期したタイミングで撮像素子14を駆動し、画像信号を信号処理回路24へ出力する。また、内視鏡駆動部16は、制御部21から出力される制御命令に従って、撮像素子14の感度、電子シャッタ速度等を設定する。感度は、例えば撮像素子14から出力される電気信号の増幅率である。電子シャッタ速度は、例えば撮像に係る露光時間である。撮像素子14は、内視鏡駆動部16にて設定された電子シャッタ速度、増幅率等に従って動作する。
【0015】
<内視鏡制御装置の構成>
内視鏡制御装置20は、電子内視鏡装置1の各構成部の動作を制御する制御部21を備え、制御部21には記憶部22、タイミングコントローラ23、信号処理回路24、光源装置25及び操作パネル26が接続されている。
【0016】
制御部21は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有するマイコンである。制御部21は、記憶部22が記憶する後述の制御プログラム22aを実行し、電子内視鏡10及び内視鏡制御装置20の各構成部へ制御命令を出力することによって、各部の動作を制御する。
なお、マイコンは制御部21の一構成であり、DSP(Digital Signal Processor)で制御部21を構成しても良い。また、汎用マイコン及びDSPの組み合わせで制御部21を構成しても良い。
【0017】
記憶部22は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部22は、制御部21が電子内視鏡装置1の各構成部の動作を制御することにより、信号処理回路24、光源装置25、電子内視鏡10の動作、特に光源装置25の光量、撮像素子14の感度、電子シャッタ速度等を制御する処理を実行するための制御プログラム22aを記憶している。また、記憶部22は、照明光の光量を制御するための増加制御閾値a、減少制御閾値b、増加制御係数g1及び減少制御係数g2を記憶する。制御部21は、照明光の光量を制御するための制御量を当該閾値及び係数を用いて増減させる。制御量は正負の値を取り、正の制御量は照明光の光量を増大させる方向に作用し、負の制御量は照明光の光量を減少させる方向に作用するものとする。
増加制御閾値aは、制御量が正である場合、過小となった調光に係る制御量の絶対値を増加させるか否か(
図6A参照:目標輝度が下限側に設定された場合)、又は過大となった調光に係る制御量の絶対値を減少させるか否か(目標輝度が上限側に設定された場合)を判定するための閾値である。
減少制御閾値bは、制御量が負である場合、過大となった調光に係る制御量の絶対値を減少させるか否か(
図5A参照:目標輝度が下限側に設定された場合)、又は過小となった調光に係る制御量の絶対値を増加させるか否か(目標輝度が上限側に設定された場合)を判定するための閾値である。増加制御閾値a及び減少制御閾値bは定数である。
増加制御係数g1は、正の値を取る差分量ないし制御量の絶対値を増加させるための係数(
図6A参照:目標輝度が下限側に設定された場合)、又は当該絶対値を減少させるための係数(目標輝度が上限側に設定された場合)である。
減少制御係数g2は、負の値を取る差分量ないし制御量の絶対値を減少させるための係数(
図5A参照:目標輝度が下限側に設定された場合)、又は当該絶対値を増加させるための係数(目標輝度が上限側に設定された場合)である。
また、増加制御係数g1は、撮像画像の輝度及び目標輝度の差分量と、増加制御閾値aとの関係を、目標輝度の大きさによって補正するための係数でもある。同様に、減少制御係数g2は、撮像画像の輝度及び目標輝度の差分量と、減少制御閾値bとの関係を、目標輝度の大きさによって補正するための係数でもある。増加制御係数g1及び減少制御係数g2は、例えば目標輝度に係る関数であり、正の値を取る。
増加制御閾値a、減少制御閾値b及び増加制御係数g1、減少制御係数g2の詳細は後述する。
【0018】
タイミングコントローラ23は、画像信号等、各種信号の処理タイミングを調整するクロックパルスを内視鏡制御装置20の各構成部及び電子内視鏡10へ出力する。
【0019】
信号処理回路24は、例えばDSPであり、電子内視鏡10から出力された画像信号を入力する。信号処理回路24は、入力した画像信号に対してγ補正、補間処理等の各種画像処理、各種文字及び画像の重畳処理等を実行し、所定の規格に準拠した映像信号に変換して外部モニタAへ出力する。外部モニタAは、内視鏡制御装置20から出力された映像信号に基づいて、電子内視鏡10で撮像された画像を表示する液晶モニタ、有機ELディスプレイモニタ、プラズマディスプレイモニタ、CRTモニタ等である。
また、信号処理回路24は、電子内視鏡10へ供給する光量等を制御するための情報として、撮像画像の輝度を示す輝度情報を制御部21へ出力する。当該輝度は、撮像画像を構成する各画素の輝度を代表する値である。例えば、輝度情報は、撮像画像を構成する各画素の輝度の平均値を示す情報である。なお、平均する画素は撮像画像を構成する画素の一部であっても良いし、全部であっても良い。また、各画素の輝度の平均値は、各画素の輝度に重み付けを行って平均化したものであっても良い。輝度の平均値は、撮像画像の輝度を代表する値の一例であり、撮像画像の明るさを示すことができる情報であれば、その内容は特に限定されるものでは無い。
【0020】
光源装置25は、光源25a、集光レンズ25b、光源駆動部25c、絞り25d、モータ25e及びモータ駆動部25fを備える。
【0021】
光源25aは、例えばキセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ等の高輝度ランプであり、少なくとも可視光領域を含む照射光を放射する。
【0022】
光源駆動部25cは、光源25aの点灯を始動させるイグナイタ、ランプ点灯後の電流制御を行う安定化電源装置等を備える。光源駆動部25cは、制御部21から出力される制御命令に従って光源25aを点灯及び消灯させる。
【0023】
集光レンズ25bは、光源25aから放射された照射光を集光し、絞り25dを介してライトガイド11の入口端へ導く光学素子である。
【0024】
絞り25dは、光源25aからライトガイド11へ至る光路上に配置され、光源25aからライトガイド11へ入射する光量を調整する遮蔽体である。遮蔽体は、例えば板状であり、照射光の遮蔽面積が変化するように回転軸によって回転可能に支持されている。回転軸は、図示しない歯車機構等を介してモータ25eに接続されている。
【0025】
モータ25eは、正回転又は逆回転することによって遮蔽板を回転させることができ、光源25aから電子内視鏡10へ供給される照射光の光量を増減させる。つまり、モータ25eは、絞り25dの開度を変化させる動力源である。
【0026】
モータ駆動部25fは、制御部21から出力される絞り25dの制御量に応じてモータ25eを正回転又は逆回転させる。つまり、モータ駆動部25fは、制御量の大きさに応じて照射光が増減するように、モータ25eを回転させる。
【0027】
操作パネル26は、内視鏡制御装置20の筐体正面に設けられた各種操作ボタン、タッチパネル式GUI(Graphical User Interface)等を備える。術者は、操作パネル26を操作することによって、撮像画像の目標輝度を、所定の輝度範囲内で任意に設定することができる。例えば輝度範囲が8ビットで表される場合、0〜255の輝度範囲内で目標輝度を設定することができる。以下、上記輝度範囲を適宜、所定輝度範囲と呼ぶ。制御部21は、操作パネル26を介して目標輝度を受け付け、受け付けた目標輝度を記憶部22に記憶させる。操作パネル26は、撮像画像の目標輝度を受け付ける受付部の一例である。
【0028】
<調光等制御>
図2は、実施形態1に係る調光等制御のフローチャートである。電子内視鏡装置1を用いて消化管、体腔等の撮像が行われているとき、制御部21は以下の処理を繰り返し実行することによって、照明光の調光制御を行う。例えば、撮像画像1フレーム毎に、調光制御処理を実行する。調光制御を適切に行うことによって、所要の目標輝度を有する撮像画像を外部モニタAへ出力することが可能になる。
また、制御部21は、調光制御と同様にして、撮像素子14の感度、電子シャッタ速度を増減させることもできる。以下では、主に調光制御を抑制及び促進させる処理を説明するが、撮像素子14の感度、電子シャッタ速度の調整制御も同様である。
【0029】
まず、制御部21は、信号処理回路24から出力される輝度情報を取得し(ステップS11)、撮像画像の輝度と、記憶部22が記憶する目標輝度との差分量を算出する(ステップS12)。ステップS12で算出する差分量は1フレームの撮像画像における輝度と、目標輝度との差分である。ここでは、目標輝度から撮像画像の輝度を減算して得た値を差分量とする。
そして、制御部21は、差分量が正であるか否かを判定する(ステップS13)。差分量が正であると判定した場合(ステップS13:YES)、制御部21は、記憶部22が記憶する増加制御係数g1を差分量に乗算する(ステップS14)。差分量が正で無いと判定した場合(ステップS13:NO)、制御部21は、記憶部22が記憶する減少制御係数g2を差分量に乗算する(ステップS15)。
【0030】
図3は、差分量の増減処理を示す模式図である。
図3A及び
図3Bの横軸は時間を示す。
図3Aの縦軸は差分量を示し、
図3Bの縦軸は増加制御係数g1又は減少制御係数g2を差分量に乗算して得られた値を示している。
増加制御係数g1は、目標輝度が小さい程、増加する係数であって、上記所定輝度範囲の下限側で1より大きな値となり、目標輝度が所定の輝度範囲の上限側で1未満となる係数である(
図10参照)。目標輝度が上記所定輝度範囲の中央値であるとき、増加制御係数g1は「1」となる。
減少制御係数g2は、目標輝度が小さい程、減少する係数であって、目標輝度が上記所定輝度範囲の下限側で1未満の値となり、目標輝度が所定の輝度範囲の上限側で1より大きな値となる係数である(
図9参照)。目標輝度が上記所定輝度範囲の中央値であるとき、減少制御係数g2は「1」となる。
【0031】
目標輝度として上記所定輝度範囲の下限側の値が設定されている場合、
図3A及び
図3Bに示すように、正の差分量は増加制御係数g1が乗算されることによって、当該差分量の絶対値は増加し、負の差分量は減少制御係数g2が乗算されることによって、当該差分量の絶対値は減少している。
【0032】
ここでは、適切な調光制御を実現するために差分量の増減処理が必要か否かを判定すること無く、全ての差分量に対して一律に増加制御係数g1又は減少制御係数g2の乗算を行っている。
一般的に当該要否判定を行うための閾値は、目標輝度の値によって変動するものであるところ、ステップS14及びステップS15の処理は、定数である増加制御閾値a及び減少制御閾値bを用いて当該要否判定を行うことを可能にするための処理である。
いわば、差分量の大きさを、定数である増加制御閾値a及び減少制御閾値bの大きさに合わせるための処理である。
【0033】
次いで、制御部21は、ステップS14で調整された差分量が増加制御閾値a未満であるか否かを判定する(ステップS16)。当該差分量が増加制御閾値a未満であると判定した場合(ステップS16:YES)、当該差分量を増加制御係数g1で除する(ステップS17)。つまり、差分量をステップS14処理前の差分量の値に戻す。当該差分量が増加制御閾値a未満で無いと判定した場合(ステップS16:NO)、制御部21は、ステップS17の処理を実行せず、処理をステップS20へ進める。
【0034】
同様に、ステップS15の処理を終えた制御部21は、ステップS15で調整された差分量が減少制御閾値b未満であるか否かを判定する(ステップS18)。当該差分量が減少制御閾値b未満で無いと判定した場合(ステップS18:NO)、当該差分量を減少制御係数g2で除する(ステップS19)。つまり、差分量をステップS15処理前の差分量の値に戻す。当該差分量が減少制御閾値b未満であると判定した場合(ステップS18::YES)、制御部21はステップS19の処理を実行せず、処理をステップS20へ進める。
【0035】
図4は、差分量の増減要否判定及び増減取り消し処理を示す模式図である。
図4A〜
図4Cの横軸は時間を示す。
図4Aは、ステップS14及びステップS15の処理で増減した差分量をタイミングチャートで示している。
図4Bは、差分量の絶対値を増加させるべき範囲、及び差分量の絶対値を減少させるべき範囲を、タイミングチャート上にハッチングで示している。
図4Cは、増減処理の要否判定に基づいて、一部の差分量に対して増減処理の取り消しが行われた後の差分量をタイミングチャートで示している。
【0036】
図4B中、ハッチングで示すように、制御部21は、増減処理後の正の差分量が増加制御閾値aより大きい場合、つまり正の差分量の絶対値が増加制御閾値aの絶対値より大きい場合は、差分量を増加させる処理を実行すべきであると判定する。また、制御部21は、増減処理後の負の差分量が減少制御閾値b未満である場合、つまり負の差分量の絶対値が減少制御閾値bの絶対値より大きい場合、差分量を減少させる処理を実行すべきであると判定する。
そして制御部21は、
図4Cに示すように、減少制御閾値bと、増加制御閾値aとの間にある差分量については、ステップS14又はステップS15の増加処理又は減少処理の取り消しを行い、元の差分量に戻す。一方、増加制御閾値aより大きな差分量、及び減少制御閾値b未満の差分量については、増減処理が保持されたままとなる。つまり、その絶対値が増加制御閾値aの絶対値又は減少制御閾値bの絶対値を超える差分量については、増減処理が保持されたままとなる。
【0037】
ステップS17又はステップS19の処理を終えた制御部21は、ステップS13〜ステップS19の処理によって増減処理が施された差分量に基づいて、照明光の光量を制御するための制御量を算出する(ステップS20)。制御部21は、例えば、PI制御、PD制御、PID制御にて、撮像画像の輝度を目標輝度に近づけるようにモータ駆動部25fを動作させる制御量を算出する。そして、制御部21は、算出して得た制御量をモータ駆動部25fへ出力(ステップS21)。当該制御量をモータ25eへ出力することによって、照明光の調光制御が行われる。
【0038】
このように目標輝度に応じて補正された差分量の絶対値が増加制御閾値a及び減少制御閾値bの絶対値を超えないときは、従来と同様の制御によって調光制御が行われる。例えば、内壁面が一様で湾曲していない食道部等を観察する場合、側面鏡による平坦で均一な消化管内壁を観察する場合等がこのような状況となる。
一方、目標輝度に応じて補正された差分量の絶対値が増加制御閾値a及び減少制御閾値bの絶対値を超えて変動すると、増加制御係数g1及び減少制御係数g2が差分量に乗算され、増減処理が施された差分量に基づく制御量が出力される。この場合、調光制御が促進され又は抑制される。補正後の差分量の絶対値が増加制御閾値a及び減少制御閾値bの絶対値を超えるということは、現状の撮像画像の輝度が目標輝度から乖離していることを意味し、制御量を増減させても制御安定性上、差し障りのない状況が多い。例えば、狭い食道部で比較的絞られた撮像状態から、噴門を通過して急に広い領域の胃角へ侵入した場合等、絞り25dを一気に開きたいような場合がこの状況に相当する。
【0039】
図5は、調光制御の抑制効果を示す模式図である。
図5Aは、制御量の抑制効果を示すタイミングチャート、
図5Bは撮像画像の輝度の変化を示すタイミングチャートである。上記所定輝度範囲の下限側の値が目標輝度として設定された場合、目標輝度に対して撮像画像の輝度が過大になる傾向があり、絞り25dの制御量は
図5A中、破線で示すように負側に過大となることがある。この場合、
図5B中、破線で示すようにハンチング等が発生するおそれがある。
しかし、本実施形態1によれば、
図3Aに示すように負側に大きく振れた差分量に対して減少制御係数g2を乗算することによって、
図4Cに示すように、差分量の絶対値を減少させ、結果として
図5Aに示すように過大となった調光制御を抑制することができる。過大となる調光制御を抑制することによって、
図5B中、実線で示すように、画像輝度の変化速度を抑え、ハンチングの発生を防ぐことができる。
【0040】
図6は、調光制御の促進効果を示す模式図である。
図6Aは、制御量の抑制効果を示すタイミングチャート、
図6Bは撮像画像の輝度の変化を示すタイミングチャートである。上記所定輝度範囲の下限側の値が目標輝度として設定された場合、撮像画像の輝度が目標輝度未満にあるとき、外部モニタAに映し出される撮像画像が暗くても、目標輝度に対して撮像画像の輝度が過小になる傾向があり、絞り25dの制御量は
図6A中、破線で示すように正側に小さいままであることがある。この場合、
図6B中、破線で示すように、調光制御が遅々として進まないおそれがある。
しかし、本実施形態1によれば、
図3Aに示すように正側にある程度の大きさを有する差分量に対して増加制御係数g1を乗算することによって、
図4Cに示すように、差分量の絶対値を増加させ、結果として
図6Aに示すように過小となった調光制御を促進させることができる。調光制御を促進させることによって、
図6B中、実線で示すように、画像輝度の変化速度を加速させ、撮像画像の輝度を速やかに目標輝度へ調光することができる。
【0041】
以上の説明は、上記所定輝度範囲の下限側の値が目標輝度として設定された場合を主に説明したが、上記所定輝度の上限側の値が設定された場合の処理内容も同様である。この場合、増加制御係数g1は1未満(
図10参照)、減少制御係数g2は1より大きな値となり(
図9参照)、目標輝度が下限側に設定されたときの処理と対称的な処理となる。つまり、目標輝度が上限側に設定された場合、撮像画像の輝度と目標輝度との差分量は正側に過大となる傾向があるため、制御部21は正側に過大な差分量の絶対値は適宜減少させ、調光制御を抑制する。逆に、負側の差分量は過小となる傾向があるため、制御部21は負側に過小な差分量の絶対値を適宜増加させ、調光制御を促進させる。
【0042】
また、上記説明では主に、差分量に基づいて照明光の光量を制御する例を説明したが、ステップS20及びステップS21の処理によって、撮像素子14の感度又は電子シャッタ速度を制御しても良い。つまり、制御部21は、撮像画像の輝度が目標輝度よりも大きい場合、撮像素子14の感度が低く、電子シャッタ速度が速くなるように制御する。また、撮像画像の輝度が目標輝度よりも小さい場合、撮像素子14の感度が高く、また電子シャッタ速度が遅くなるように制御する。なお、言うまでも無く、記憶部22は、撮像素子14の感度又は電子シャッタ速度を制御するための増加制御閾値a、減少制御閾値b、増加制御係数g1及び減少制御係数g2を記憶する。
なお、電子シャッタ速度を遅くする際、撮像画像のフレームレートを下げても良い。
【0043】
<閾値及び係数の決定方法>
まず、増加制御係数g1及び減少制御係数g2の決定方法を説明する。
図7は、目標輝度として中央値が設定されたときの最大制御量を特定する方法を示す模式図である。横軸は時間、
図7Aの縦軸は撮像画像の輝度、
図7Bの縦軸は照明光の光量に係る制御量を示す。
まず、調光チューニングが仕上がった内視鏡制御装置20を用意し、上記所定輝度範囲の中央値を目標輝度として設定する。輝度範囲が8ビットで表される場合、所定輝度範囲は0〜255であり、中央値127を目標輝度として設定する。そして、
図7A及び
図7Bに示すように、撮像画像の輝度が最大となる完全なハレーション状態を引き起こす被写体を電子内視鏡10で撮像し、その時に観測可能な最大制御量Pmaxを特定する。最大制御量Pmaxは、制御量の絶対値であり、正の値である。
【0044】
図8は、任意の値が設定されたときの最大制御量を特定する方法を示す模式図である。次に、目標輝度の値として、所定輝度範囲内の任意の値を設定する。例えば、
図8中、レベル[2]で表される下限側の値を目標輝度として設定する。そして、上記同様の手順で、
図8A及び
図8Bに示すように、撮像画像の輝度を最大にする被写体を電子内視鏡10で撮像し、その時に観測可能な最大制御量Pmax[2]を特定する。最大制御量Pmax[2]は、制御量の絶対値であり、正の値である。そして、目標輝度がレベル[2]のときの減少制御係数g2を、Pmax/Pmax[2]とする。
以下、同様にして、目標輝度の値として他の任意の値、例えば
図8中、レベル[3]、レベル[4]、レベル[5]等で表される値を設定し、同様にして最大制御量Pmax[n]を特定する。最大制御量Pmax[n]は、制御量の絶対値であり、正の値である。nは整数である。そして、目標輝度のレベル[n]に対応する減少制御係数g2を、Pmax/Pmax[n]とする。
次いで、複数の目標輝度の値、即ちレベル[n]と、Pmax/Pmax[n]とに基づいて、目標輝度の値と、減少制御係数g2との関係を示す近似線を求める。
【0045】
図9は、目標輝度及び減少制御係数g2の関係を示すグラフである。横軸は目標輝度、縦軸は減少制御係数g2である。
図9に示すように減少制御係数g2は、増加関数であり、目標輝度が所定輝度範囲の中央値であるとき「1」、目標輝度が下限側であるとき1未満、上限側であるとき1以上の値となる。
以上の手順で求められた目標輝度の関数である減少制御係数g2を記憶部22に記憶させる。なお、減少制御係数g2の表現態様は特に限定されるものでは無く、記憶部22は、関数を規定する係数として記憶しても良いし、配列等のテーブルとして記憶しても良いし、制御プログラム22aに組み込んでも良い。
【0046】
増加制御係数g1も同様にして特定することができる。例えば、上記所定輝度範囲の中央値を目標輝度として設定し、撮像画像の輝度が最小となる完全な遮蔽状態とし、その時に観測可能な最大制御量Pmaxを特定する。次に、目標輝度の値として任意の値を設定し、その時の最大制御量を特定する。複数の目標輝度の値、即ちレベル[n]と、Pmax/Pmax[n]とに基づいて、目標輝度の値と、増加制御係数g1との関係を示す近似線を求める事ができる。増加制御係数g1も、減少制御係数g2と同様にして記憶部22に記憶させる。
【0047】
図10は、目標輝度及び増加制御係数g1の関係を示すグラフである。横軸は目標輝度、縦軸は増加制御係数g1である。
図10に示すように増加制御係数g1は、減少関数であり、目標輝度が上記所定輝度範囲の中央値であるとき「1」、目標輝度が下限側であるとき1より大きく、上限側であるとき1未満となる。
【0048】
なお、
図9及び
図10では近似性の一例として一次直線を示したが、近似線は1次直線に限定されるものでは無い。
【0049】
次に、増加制御閾値a及び減少制御閾値bの決定方法を説明する。
図11は、増加制御閾値a及び減少制御閾値bの決定方法を示す模式図である。まず、調光チューニングが仕上がった内視鏡制御装置20を用意し、
図11Aに示すように、上記所定輝度範囲の中央値を目標輝度として設定する。上記同様、輝度範囲が0〜255であれば、127の値を目標輝度として設定する。
そして、実際に観察するシチュエーションで撮像を行い、撮像中の調光に係る制御量又は差分量の変動を記録する。例えば、食道、腸管等の消化管のように、調光制御が安定するようなシチュエーションで撮影を行うと良い。
図11Bは、上記シチュエーションで撮影されたときの差分量の変化を示すタイミングチャートである。
差分量の記録を終えたら、上記シチュエーションで変動する差分量が超えないような正側の閾値を、増加制御閾値aとして特定し、負側の閾値を減少制御閾値bとして特定する。なお、実験結果に対して、差分量が超えない限界の値を増加制御閾値a及び減少制御閾値bとして設定しても良いが、必要に応じて20%〜50%のマージンをもって各閾値を設定しても良い。ただし増加制御閾値a及び減少制御閾値bは、最大制御量Pmaxを超えるような値に設定してはならない。
以上の通り求められた増加制御閾値a及び減少制御閾値bを記憶部22に記憶させる。
【0050】
なお、このように求められた増加制御閾値a及び減少制御閾値bは、目標輝度として上記中央値が設定された場合に機能する閾値である。目標輝度として他の値が設定された場合、差分量の変動幅が変化し、閾値も変化する。そこで、本実施形態1では各目標輝度に対応する閾値を用意する代わりに、目標輝度に応じて差分量を補正することによって対応している。具体的には、内視鏡制御装置20は、差分量と増加制御閾値a及び減少制御閾値bとの比較処理に先立って、ステップS14及びステップS15で差分量に増加制御係数g1又は減少制御係数g2を乗算することによって、差分量と閾値との大小関係を先に補正し、そして、補正後の差分量と、増加制御閾値a及び減少制御閾値bとの比較処理をステップS17及びステップS19で行っている。
【0051】
以上の通り、本実施形態1に係る電子内視鏡装置1、内視鏡制御装置20及び制御プログラム22aによれば、上記所定輝度範囲の中央値から離れた値が目標輝度として設定された場合であっても、過大又は過小となった調光等の制御量を適宜抑制し又は促進させることができる。
【0052】
具体的には、上記所定輝度範囲の下限側の値が目標輝度として設定された場合、撮像画像の輝度が目標輝度よりも大きく、調光制御量が過大となったときであっても、調光制御を抑制し、ハンチング等の不具合を防ぐことができ、適切な調光制御を行うことができる。
【0053】
また、上記所定輝度範囲の下限側の値が目標輝度として設定された場合、撮像画像の輝度が目標輝度よりも小さく撮像画像が暗い状態にあるにも拘わらず調光制御量が過小となった場合であっても、調光制御を促進させ、撮像画像の輝度を速やかに目標輝度へ調光することができる。つまり、撮像画像の輝度が目標輝度に収束するまでの時間を短縮することができる。
【0054】
更に、撮像素子14の感度及び電子シャッタ速度を制御する際も同様にして制御量を抑制及び促進させることができ、目標輝度の設定値に拘わらず、撮像素子14の感度及び電子シャッタ速度の適切な制御が可能になる。
【0055】
(実施形態2)
実施形態2に係る電子内視鏡装置1、内視鏡制御装置20及び制御プログラム22aは、制御部21の処理手順のみが実施形態1と異なるため、以下では主にかかる相違点について説明する。その他の構成及び作用効果は実施形態1と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0056】
図12は、実施形態2に係る調光等制御のフローチャートである。まず、制御部21は、実施形態1のステップS11〜ステップS13と同様の処理をステップS211〜ステップS213にて実行し、輝度情報の取得、差分量の算出、差分量の正負判定を行う。差分量が正であると判定した場合(ステップS213:YES)、制御部21は、増加制御閾値aを増加制御係数g1で除算する(ステップS214)。差分量が正で無いと判定した場合(ステップS213:NO)、制御部21は、減少制御閾値bに、減少制御係数g2で除算する(ステップS215)。
【0057】
ステップS214の処理を終えた制御部21は、取得した差分量が補正後の増加制御閾値a未満であるか否かを判定する(ステップS216)。当該差分量が増加制御閾値a未満で無いと判定した場合(ステップS216:NO)、制御部21は、差分量に増加制御係数g1を乗算する(ステップS217)。当該差分量が増加制御閾値a未満であると判定した場合(ステップS216:YES)、制御部21は、ステップS217の処理を実行せず、処理をステップS220へ進める。
【0058】
同様に、ステップS215の処理を終えた制御部21は、取得した差分量が補正後の減少制御閾値b未満であるか否かを判定する(ステップS218)。当該差分量が減少制御閾値b未満であると判定した場合(ステップS218:YES)、制御部21は、差分量に減少制御係数g2を乗算する(ステップS219)。当該差分量が減少制御閾値b未満でないと判定した場合(ステップS218:NO)、制御部21は、ステップS219の処理を実行せず、処理をステップS220へ進める。
【0059】
ステップS217又はステップS219の処理を終えた制御部21は、ステップS13〜ステップS19の処理によって増減処理が施された差分量に基づいて、光量を制御するための制御量を算出し(ステップS220)、算出して得た制御量をモータ駆動部25fへ出力する(ステップS221)。当該制御量をモータ25eへ出力することによって、調光制御が行われる。
【0060】
図13は、実施形態2に係る差分量の増減処理を示す模式図である。横軸は時間である。
図13Aは、増加制御閾値a及び減少制御閾値bの補正方法を示し、
図13Bの縦軸は差分量を示す。
ステップS214及びステップS215の処理によって、
図13Aに示すように目標輝度が中央値であるときに機能する増加制御閾値a及び減少制御閾値bは、現在設定されている目標輝度で機能する閾値に補正される。
そして、制御部21は、
図13Bに示すように、補正後の増加制御閾値a及び減少制御閾値bと、差分量とを比較し、差分量が増加制御閾値aを超えている場合、差分量を増加させ、差分量が減少制御閾値bを下回っている場合、差分量を減少させる。つまり、差分量が正の場合、当該差分量の絶対値が増加制御閾値aの絶対値を超えているとき、差分量を増加させる。差分量が負の場合、当該差分量の絶対値が減少制御閾値bの絶対値を超えているとき、差分量を減少させる。
【0061】
以上の通り、本実施形態2では、増加制御閾値a及び減少制御閾値bに対応する閾値を用意する代わりに、目標輝度に応じて各閾値を補正することによって対応することができる。実施形態2に係る電子内視鏡装置1、内視鏡制御装置20及び制御プログラム22aの主たる作用及び効果は実施形態1と同様である。
【0062】
なお、実施の形態1,2では制御プログラム22aが内視鏡制御装置20の記憶部22に記憶されている態様を説明したが、本実施形態1及び2に係る制御プログラム22a、増加制御閾値a、減少制御閾値b及び増加制御係数g1、減少制御係数g2は、図示しない記録媒体にコンピュータ読み取り可能に記録された態様でも良い。記憶部22は、図示しない読出装置によって記録媒体から読み出された制御プログラム22aを記憶する。記録媒体はCD(Compact Disc)−ROM、DVD(Digital Versatile Disc)−ROM、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)等の光ディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク等の磁気ディスク、磁気光ディスク、半導体メモリ等である。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部コンピュータから本実施形態1に係る制御プログラム22aをダウンロードし、記憶部22に記憶させても良い。
【0063】
また、差分量が増加制御閾値aより大きい場合、又は差分量が減少制御閾値b未満である場合に制御量を増減させる例を説明したが、制御量を増減させる処理を要する範囲の決定方法はこれに限定されるものでは無い。差分量が、目標輝度に応じて決定される特定の範囲内にあるか否かに応じて、差分量を増減させるか否かを判定するように構成しても良い。
【0064】
更に、増加制御係数g1及び減少制御係数g2が目標輝度に応じて、それぞれ減少及び増加する例を説明したが、乗除演算を逆に設定することによって、増減特性を逆にすることも可能であり、実体的に本発明と同様の効果が得られる範囲において、各種係数、閾値及び演算方法を適宜変形しても良い。
【0065】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。