特許第6937160号(P6937160)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6937160
(24)【登録日】2021年9月1日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】繊維複合樹脂成形部品
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20210909BHJP
   B29C 70/58 20060101ALI20210909BHJP
   B29C 70/10 20060101ALI20210909BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20210909BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
   C08J5/04CES
   B29C70/58
   B29C70/10
   C08L101/00
   C08K7/02
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-90922(P2017-90922)
(22)【出願日】2017年5月1日
(65)【公開番号】特開2018-188531(P2018-188531A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2020年3月3日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、環境省、平成28年度セルロースナノファイバー製品製造工程の低炭素化対策の立案事業委託業務 (セルロースナノファイバー製品製造工程におけるCO2排出削減に関する技術開発)、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】名木野 俊文
(72)【発明者】
【氏名】浜辺 理史
【審査官】 松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−143440(JP,A)
【文献】 特開2018−115254(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/047412(WO,A1)
【文献】 特表2017−516926(JP,A)
【文献】 特開昭50−160564(JP,A)
【文献】 特表2009−516032(JP,A)
【文献】 特開2010−196211(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2018/0201770(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0065975(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第108329583(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第107073753(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第101365569(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B29B 11/16
B29B 15/08 − 15/14
C08J 5/04 − 5/10
C08J 5/24
C08K 3/00 − 13/08
C08L 1/00 − 101/14
D01F 11/00 − 13/04
B29B 7/00 − 11/14
B29B 13/00 − 15/06
B29C 31/00 − 31/10
B29C 37/00 − 37/04
B29C 71/00 − 71/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤樹脂に繊維状フィラーを含有した繊維複合樹脂によって樹脂成形された成形部品であって、
前記繊維複合樹脂として、繊維長方向の端部に解繊された解繊部位が形成された前記繊維状フィラーを、主剤樹脂に混合して樹脂成形されており、
前記繊維複合樹脂の物理特性が、
前記繊維複合樹脂から厚み1〜2mmで切り出した第1板状試験片を−10℃で3時間保持した後、250gの重錘を落下させたときに破壊されなかった最大高さH、
前記主剤樹脂のみの樹脂から厚み1〜2mmで切り出した第2板状試験片を−10℃で3時間保持した後、250gの重錘を落下させたときに破壊されなかった最大高さHoとすると
Ho×0.4 ≦H ≦ Ho
を満たし、かつ、前記繊維複合樹脂の成型部品のシャルピー衝撃強度S(JIS K 7111)、前記主剤樹脂のみの樹脂成型部品のシャルピー衝撃強度Soとすると
So×0.4 ≦S ≦ So
を満たすものである、繊維複合樹脂成形部品。
【請求項2】
前記繊維状フィラー解繊部位におけるメジアン繊維径は0.1μm以上2μm以下であり、
前記繊維状フィラーの非解繊部位におけるメジアン繊維径は、5μm以上30μm以下であることを特徴とする、
請求項1に記載の繊維複合樹脂成形部品。
【請求項3】
主剤樹脂に繊維状フィラーを含有した繊維複合樹脂によって樹脂成形された成形部品であって、
前記繊維複合樹脂として、解繊されていない非解繊部位と、繊維長方向の端部に解繊された解繊部位とを併せ持った前記繊維状フィラーを、主剤樹脂に混合したものを使用して樹脂成形したものであり、
前記繊維状フィラー解繊部位におけるメジアン繊維径は0.1μm以上2μm以下であり、
前記繊維状フィラーの非解繊部位におけるメジアン繊維径は、5μm以上30μm以下であることを特徴とする、繊維複合樹脂成形部品
【請求項4】
前記繊維状フィラーがセルロース類の天然繊維からなる繊維であることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の繊維複合樹脂成形部品。
【請求項5】
前記主剤樹脂がオレフィン系樹脂であることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の繊維複合樹脂成形部品。
【請求項6】
主剤樹脂に繊維状フィラーを含有した繊維複合樹脂によって樹脂成形された成形部品であって、
前記繊維状フィラーの解繊部位におけるメジアン繊維径は0.1μm以上2μm以下であり、かつ、解繊されていない非解繊部位におけるメジアン繊維径は、5μm以上30μm以下であって、前記成形部品に面方向に衝撃力が加わった際に発生する複数のクレーズ状欠陥同士のつながりによる割れを解繊部位により防止し、前記成形部品に一方向に衝撃力が加わった際に発生するクラック状欠陥を解繊されていない非解繊部位により防止する、繊維複合樹脂成形部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維状フィラーを含有した繊維複合樹脂を用いた繊維複合樹脂成形部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP),ポリスチレン(PS),ポリ塩化ビニル(PVC)等のいわゆる「汎用プラスチック」は、非常に安価であるだけでなく、成形が容易で、金属またはセラミックスに比べて重さが数分の一と軽量である。そのため、汎用プラスチックは、袋,各種包装,各種容器,シート類等の多様な生活用品の材料として、また、自動車部品,電気部品等の工業部品,及び日用品,雑貨用品等の材料として、よく利用されている。
【0003】
しかしながら、汎用プラスチックは機械的強度が不十分であること等の欠点を有している。そのため、汎用プラスチックは、自動車等の機械製品,及び電気・電子・情報製品をはじめとする各種工業製品に用いられる材料に対して要求される十分な特性を有しておらず、その適用範囲が制限されているのが現状である。
【0004】
一方、ポリカーボネート,フッ素樹脂,アクリル樹脂,ポリアミド等のいわゆる「エンジニアリングプラスチック」は、機械的特性に優れており、自動車等の機械製品,及び電気・電子・情報製品をはじめとする各種工業製品に用いられている。しかし、エンジニアリングプラスチックは、高価であり、モノマーリサイクルが難しく、環境負荷が大きいといった課題を有している。
【0005】
そこで、汎用プラスチックの材料特性(機械的強度等)を大幅に改善することが要望されている。汎用プラスチックを強化する目的で、繊維状フィラーである天然繊維やガラス繊維、炭素繊維などを汎用プラスチックの樹脂中に分散させることにより、その汎用プラスチックの機械的強度を向上させる技術が知られている。中でもセルロースなどの有機繊維状フィラーは、安価であり、かつ廃棄時の環境性にも優れていることから、強化用繊維として注目視されている。
【0006】
汎用プラスチックの機械的強度を改善するために、各社検討を進めており、特許文献1では、最大繊維径が100nm以下、アスペクト比が2000以上のセルロース繊維を添加し、弾性率、および寸法安定性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5577176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら特許文献1では、最大繊維径も100nm以下、かつ繊維径に対する繊維長の比であるアスペクト比が2000以上の繊維を添加した場合には、成形時に射出される溶融状態の主剤樹脂の流れ方向に繊維状フィラーが配向しやすいため、その流れ方向に対する一方向衝撃強度(シャルピー衝撃強度など)はある程度高くできるが、その流れ方向と直行する方向の衝撃強度が弱くなり、特に面衝撃強度(重錘落下衝撃強度など)が低下する課題がある。
【0009】
本発明の繊維複合樹脂成形部品は、上記従来の課題を解決するものであって、高弾性率および面方向衝撃と一方向衝撃の両方に対する高耐衝撃性を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明の繊維複合樹脂成形部品は、主剤樹脂に繊維状フィラーを含有した繊維複合樹脂によって樹脂成形された成形部品であって、前記繊維複合樹脂として、繊維長方向の端部に解繊された解繊部位が形成された前記繊維状フィラーを、主剤樹脂に混合して樹脂成形されており、前記繊維複合樹脂の物理特性が、前記繊維複合樹脂から厚み1〜2mmで切り出した第1板状試験片を−10℃で3時間保持した後、250gの重錘を落下させたときに破壊されなかった最大高さH、前記主剤樹脂のみの樹脂から厚み1〜2mmで切り出した第2板状試験片を−10℃で3時間保持した後、250gの重錘を落下させたときに破壊されなかった最大高さHoとするとHo×0.4 ≦ H≦ Hoを満たし、かつ、前記繊維複合樹脂の成型部品のシャルピー衝撃強度S(JIS K 7111)、前記主剤樹脂のみの樹脂成型部品のシャルピー衝撃強度Soとすると So×0.4 ≦ S≦ Soを満たすものである、ことを特徴とする。
【0011】
また、請求項2記載の発明の繊維複合樹脂成形部品は、前記繊維状フィラー解繊部位におけるメジアン繊維径は0.1μm以上2μm以下であり、前記繊維状フィラーの非解繊部位におけるメジアン繊維径は、5μm以上30μm以下であることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3記載の発明の繊維複合樹脂成形部品は、主剤樹脂に繊維状フィラーを含有した繊維複合樹脂によって樹脂成形された成形部品であって、前記繊維複合樹脂として、解繊されていない非解繊部位と、繊維長方向の端部に解繊された解繊部位とを併せ持った前記繊維状フィラーを、主剤樹脂に混合したものを使用して樹脂成形したものであり、前記繊維状フィラー解繊部位におけるメジアン繊維径は0.1μm以上2μm以下であり、前記繊維状フィラーの非解繊部位におけるメジアン繊維径は、5μm以上30μm以下であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項4記載の発明の繊維複合樹脂成形部品は、前記繊維状フィラーがセルロース類の天然繊維からなる繊維であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項5記載の発明の繊維複合樹脂成形部品は、前記主剤樹脂がオレフィン系樹脂であることを特徴とする。
【0015】
また、請求項6記載の発明の繊維複合樹脂成形部品は、主剤樹脂に繊維状フィラーを含有した繊維複合樹脂によって樹脂成形された成形部品であって、前記繊維状フィラーの解繊部位におけるメジアン繊維径は0.1μm以上2μm以下であり、かつ、解繊されていない非解繊部位におけるメジアン繊維径は、5μm以上30μm以下であって、前記成形部品に面方向に衝撃力が加わった際に発生する複数のクレーズ状欠陥同士のつながりによる割れを解繊部位により防止し、前記成形部品に一方向に衝撃力が加わった際に発生するクラック状欠陥を解繊されていない非解繊部位により防止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
この構成によると、繊維複合樹脂として、繊維長方向の端部に解繊された解繊部位が形成された前記繊維状フィラーを、主剤樹脂に混合して樹脂成形されており、前記繊維複合樹脂の物理特性が、Ho×0.4 ≦H ≦ Hoを満たし、かつ、So×0.4 ≦ S≦ Soを満たすものであるため、高弾性率および面方向衝撃と一方向衝撃の両方に対する高耐衝撃性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態における繊維複合樹脂成形部品の(a)断面模式図と、(b)面方向衝撃が加わった際の断面模式図と、(c)一方向衝撃が加わった際の断面模式図
図2】繊維状フィラー分散状態の違いによる影響を説明する(a)断面模式図と、(b)面方向衝撃の影響を説明する断面模式図と、(c)一方向衝撃の影響を説明する断面模式図
図3】繊維状フィラー分散状態の違いによる影響を説明する(a)断面模式図と、面方向衝撃の影響を説明する(b)断面模式図と、一方向衝撃の影響を説明する(c)断面模式図
図4】本実施の形態における繊維複合樹脂成形部品の製造プロセスを説明するフロー図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の繊維複合樹脂成形部品について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
本発明の実施の形態における繊維複合樹脂成形部品は、主剤樹脂と、繊維状フィラーと、分散剤とを含有する溶融混練物からなるものである。繊維複合樹脂成形部品は、図1(a)の断面模式図に示すように、主剤樹脂1中に繊維状フィラー2が分散されている。また、繊維状フィラー2は、特定の割合で炭化されている。
【0020】
主剤樹脂1は、良好な成形性を確保するために、熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂(環状オレフィン系樹脂を含む),スチレン系樹脂,(メタ)アクリル系樹脂,有機酸ビニルエステル系樹脂またはその誘導体,ビニルエーテル系樹脂,ハロゲン含有樹脂,ポリカーボネート系樹脂,ポリエステル系樹脂,ポリアミド系樹脂,熱可塑性ポリウレタン樹脂,ポリスルホン系樹脂(ポリエーテルスルホン,ポリスルホンなど),ポリフェニレンエーテル系樹脂(2,6−キシレノールの重合体など),セルロース誘導体(セルロースエステル類,セルロースカーバメート類,セルロースエーテル類など),シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど),ゴムまたはエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエン系ゴム,スチレン−ブタジエン共重合体,アクリロニトリル−ブタジエン共重合体,アクリルゴム,ウレタンゴム,シリコーンゴムなど)などが挙げられる。上記の樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用されてもよい。なお、主剤樹脂1は熱可塑性を有していれば上記の材料に限定されるものではない。
【0021】
これらの熱可塑性樹脂のうち、主剤樹脂1は、比較的低融点であるオレフィン系樹脂であることが好ましい。オレフィン系樹脂としては、オレフィン系単量体の単独重合体の他、オレフィン系単量体の共重合体や、オレフィン系単量体と他の共重合性単量体との共重合体が含まれる。オレフィン系単量体としては、例えば、鎖状オレフィン類(エチレン、プロピレン,1−ブテン,イソブテン,1−ペンテン,4−メチル−1−ペンテン,1−オクテンなどのα−C2−20オレフィンなど),環状オレフィン類などが挙げられる。これらのオレフィン系単量体は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用されてもよい。上記オレフィン系単量体のうち、エチレン,プロピレンなどの鎖状オレフィン類が好ましい。他の共重合性単量体としては、例えば、酢酸ビニル,プロピオン酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステル;(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート,グリシジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル系単量体;マレイン酸,フマル酸,無水マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸またはその無水物;カルボン酸のビニルエステル(例えば、酢酸ビニル,プロピオン酸ビニルなど);ノルボルネン,シクロペンタジエンなどの環状オレフィン;およびブタジエン,イソプレンなどのジエン類などが挙げられる。これらの共重合性単量体は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用されてもよい。オレフィン系樹脂の具体例としては、ポリエチレン(低密度、中密度、高密度または線状低密度ポリエチレンなど),ポリプロピレン,エチレン−プロピレン共重合体,エチレン−プロピレン−ブテン−1などの三元共重合体などの鎖状オレフィン類(特にα−C2−4オレフィン)の共重合体などが挙げられる。
【0022】
次に分散剤について説明する。
【0023】
繊維状フィラー2と主剤樹脂1との接着性、あるいは主剤樹脂1中の繊維状フィラー2の分散性を向上させるなどの目的で、分散剤を含有する。分散剤としては、各種のチタネート系カップリング剤,シランカップリング剤,不飽和カルボン酸,マレイン酸,無水マレイン酸,またはその無水物をグラフトした変性ポリオレフィン,脂肪酸,脂肪酸金属塩,脂肪酸エステルなどが挙げられる。上記シランカップリング剤は、不飽和炭化水素系やエポキシ系のものが好ましい。分散剤の表面は、熱硬化性もしくは熱可塑性のポリマー成分で処理され変性処理されても問題ない。本実施の形態における繊維複合樹脂成形部品における分散剤の含有量は、0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0024】
分散剤の含有量が、0.01質量%未満であると、分散不良が発生し、一方、分散剤の含有量が20質量%を超えると、繊維複合樹脂成形部品の強度が低下する。分散剤は、主剤樹脂1と繊維状フィラー2の組み合わせにより適切に選択され、分散剤が必要ない組み合わせの場合は添加しなくてもよい。
【0025】
次に繊維状フィラー2について説明する。
【0026】
繊維状フィラー2は、機械的特性の向上や、線膨張係数の低下による寸法安定性の向上などを主要な目的として用いられる。この目的のため、繊維状フィラー2は主剤樹脂1よりも弾性率が高いことが好ましく、具体的にはパルプ,セルロースナノファイバー,リグノセルロース,リグノセルロースナノファイバー,綿,絹,羊毛あるいは麻等の天然繊維,ジュート繊維,レーヨンあるいはキュプラなどの再生繊維,アセテート,プロミックスなどの半合成繊維,ポリエステル,ポリアクリロニトリル,ポリアミド,アラミド,ポリオレフィンなどの合成繊維やカーボンファイバー(炭素繊維),カーボンナノチューブ,さらにはそれらの表面及び末端に化学修飾した変性繊維などが挙げられる。また更に、これらの中で、入手性、弾性率の高さ、線膨張係数の低さや環境性の観点から、セルロース類の天然繊維が特に好ましい。
【0027】
繊維状フィラー2の含有量は、1質量%以上80質量%以下であることが好ましく、5質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。繊維状フィラー2の含有量が、1質量%未満であると、繊維複合樹脂成形部品は、機械的強度を確保することができず、また、繊維状フィラー2の含有量が80質量%を超えると、溶融分散混練時および射出成形時の溶融粘度が上がるために、主剤樹脂1中の繊維状フィラー2の分散性が低下し、また、得られた繊維複合樹脂成形部品は、外観不良が発生するなどの問題がある。
【0028】
図1(a)に示すように繊維状フィラー2は、繊維1本内で、繊維長方向の端部が部分的に解繊されている解繊部位3を有している。繊維長方向の中央には解繊されていない非解繊部位4を有している。
【0029】
図2(a)と図3(a)は比較例を示す。
【0030】
図2(a)の場合は、繊維状フィラー2が十分に解繊されておらず、非解繊部位4の繊維径が太く、解繊部位3が存在しない状態を示している。図3(a)の場合は、繊維状フィラー2が強力に解繊され、非解繊部位4が明確に存在せず、解繊部位3のみが短繊維の形で分散されている状態を示している。
【0031】
最適な繊維状フィラー2の状態については、本願発明者による実験やシミュレーション結果から、解繊部位3のメジアン繊維径は0.1μm以上2μm以下、かつ、非解繊部位4のメジアン繊維径は5μm以上30μm以下であることが好ましいことが確認されている。
【0032】
ここで、図1(b),図2(b),図3(b)には、それぞれの繊維状フィラー2の分散状態の違いによる重錘落下衝撃のような面方向に衝撃が加わった際の断面模式図を示している。5は、面方向に加わった衝撃力を示している。6は、この面衝撃力5によって解繊部位3の先端に発生したクレーズ状欠陥を示している。
【0033】
本実施の形態を示す図1(b)に示すように、このクレーズ状欠陥6は、解繊部位3のメジアン繊維径が0.1μm以上2μm以下であれば、発生したクレーズ状欠陥6のサイズを非常に小さく抑えられることで、クレーズ状欠陥6同士が連続的につながり巨大化することが少なくなり、更に、衝撃力の伝播を分散できる効果によって、クレーズ状欠陥6が起点となる割れが発生しにくくなる。
【0034】
逆に、図2(b)の比較例のように解繊部位3が明確に存在しない場合には、非解繊部位4の繊維近傍に巨大なクレーズ状欠陥6が多く発生してしまい、クレーズ状欠陥6同士が連続的につながりやすくなるため、そのクレーズ状欠陥6が起点となって割れが発生しやすくなる。この現象は、解繊部位3のメジアン繊維径が0.1μmよりも小さい場合にも解繊部位3の先端ではなく、非解繊部位4の近傍に巨大なクレーズ状欠陥6が発生しやすくなることを確認している。また、解繊部位3のメジアン繊維径が2μmより大きくなった場合には、解繊部位3によるクレーズ状欠陥6の巨大化抑制効果が発現しにくくなり、クレーズ状欠陥6が起点となる割れが発生しやすくなる。
【0035】
図3(b)の比較例の場合には、図1(b)と同様にクレーズ状欠陥6自体は非常に小さいが、均一分散している、もしくは、凝集塊の状態で存在する確率が高まることにより、結果的にクレーズ状欠陥6同士が連続的につながり、そのクレーズ状欠陥6が起点となって割れが発生しやすくなる。
【0036】
また、図1(c),図2(c),図3(c)には、それぞれの繊維状フィラー2の分散状態の違いによるシャルピー衝撃試験(JIS K7111)のような一方向に大きな衝撃が加わった際の断面模式図を示している。7は、一方向に加わった衝撃力を示しており、8は、一方向衝撃力7よって発生したクラック状欠陥を示している。
【0037】
本実施の形態を示す図1(c)においては、解繊されていない部位4のメジアン繊維径が5μm以上30μm以下であれば、一方向衝撃力7を非解繊部位4で緩和できるため、クラック状欠陥8の進展を大幅に抑制できている。
【0038】
図2(c)の比較例のように解繊部位3が明確にない場合であっても、非解繊部位4が十分に太い場合には同様の効果で抑制できる。
【0039】
図3(c)の比較例のように、非解繊部位4が明確に存在しない、またはメジアン繊維径が5μmより小さくなると、一方向衝撃力7が加わった際にその衝撃により切断されてしまい衝撃を緩和することができず、クラック状欠陥8の進展を抑制することができないため割れが発生しやすくなる。逆に、非解繊部位4のメジアン繊維径が30μmより大きくなると、非解繊部位4の近傍に巨大なクレーズ状欠陥6が成形された時点で発生してしまい、更に、面方向、一方向のどちらの衝撃力に対してもクレーズ状欠陥6同士が連続的につながりやすくなるため、そのクレーズ状欠陥6が起点となって割れが発生しやすくなる。
【0040】
また、これら繊維状フィラー2は、主剤樹脂1との接着性あるいは繊維複合樹脂成形部品中での分散性を向上させるなどの目的で、各種のチタネート系カップリング剤、シランカップリング剤、不飽和カルボン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、またはその無水物をグラフトした変性ポリオレフィン、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステルなどによって表面処理したものを用いてもよい。あるいは熱硬化性もしくは熱可塑性のポリマー成分で表面処理されたものでも問題ない。
【0041】
次に製造方法について記載する。
【0042】
図4は、本実施の形態における繊維複合樹脂成形部品の製造プロセスを例示するフロー図である。
【0043】
まず、溶融混練処理装置内に、主剤樹脂、繊維状フィラーおよび、必要に応じて分散剤が投入され、溶融混練処理装置内で溶融混練される。これにより、主剤樹脂が溶融し、溶融された主剤樹脂に、繊維状フィラーと分散剤が分散される。また同時に装置の剪断作用により、繊維状フィラーの凝集塊の解繊が促進され、繊維状フィラーを主剤樹脂中に細かく分散させることができる。
【0044】
従来、繊維状フィラーとしては、湿式分散などの前処理により、事前に繊維を解繊したものが使用されていた。しかし、湿式分散で用いられる溶媒中で事前に繊維状フィラーを解繊すると、溶融した主剤樹脂中で解繊されるよりも解繊されやすいため、端部のみ解繊することが難しく、繊維状フィラー全体が解繊された状態となってしまう。また前処理を合わせることで工程が増え、生産性が悪くなるといった課題があった。
【0045】
これに対して、本実施の形態における繊維複合樹脂成形部品の製造プロセスでは、繊維状フィラーの解繊処理、変性処理を目的とした湿式分散による前処理を行わずに、主剤樹脂や分散剤などと一緒に溶融混練処理(全乾式工法)を行う。この工法では、繊維状フィラーの湿式分散処理を行わないことにより、繊維状フィラーを上記のように端部のみ部分的に解繊することができ、また工程数も少なく、生産性を向上させることができる。
【0046】
溶融混練装置から押し出された繊維複合樹脂成形部品は、ペレタイザー等の切断工程を経て、ペレット形状に作製される。ペレット化の方式として、樹脂溶融後すぐに行う方式としては、空中ホットカット方式,水中ホットカット方式,ストランドカット方式などがあり、あるいは、一度成形部品やシートを成形したあとで、粉砕、切断することによる粉砕方式などもある。
【0047】
このペレットを射出成形することにより、繊維複合樹脂成形部品を作製することができる。この繊維複合樹脂成形部品は、上記のように、複合された繊維状フィラーが、解繊されていない太繊維部と繊維長方向の端部が部分的に解繊されている細繊維部を持つ構造を有するため、一方向衝撃を解繊されていない太繊維部で耐久し、解繊されている細繊維部で面衝撃によるクラック状欠陥の進展を抑制でき、耐衝撃性と弾性率の両方を高めた繊維複合樹脂成形部品を得ることができる。
【0048】
以下、発明者らが行った実験における各実施例および各比較例について説明する。
【0049】
(実施例1)
以下の製造方法によってパルプ分散ポリプロピレンペレットを製造し、そのペレットを用いて射出成形部品を製造した。
【0050】
主剤樹脂としてのポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製 商品名:J108M)と、繊維状フィラーとしての綿状針葉樹パルプ(三菱製紙株式会社製 商品名:NBKP Celgar)と、分散剤として無水マレイン酸(三洋化成工業株式会社製 商品名:ユーメックス)とを重量比で85:15:5となるよう秤量し、ドライブレンドした。その後、二軸混練機(株式会社クリモト鉄工所製 S−1KRCニーダ スクリュー径φ25mm、L/D10.2)にて溶融混練分散した。二軸混練機のスクリュー構成を変えることでせん断力を変えることができ、実施例1では中せん断タイプの仕様とした上で、混練部温度180℃、押出速度を0.5kg/hに設定した。更に、この条件での溶融混練分散処理を10回繰り返し、長時間処理を実施した。樹脂溶融物をホットカットし、パルプ分散ポリプロピレンペレットを作製した。
【0051】
作製したパルプ分散ポリプロピレンペレットを用いて射出成形機(日本製鋼所製 180AD)により繊維複合樹脂成形部品の試験片を作製した。試験片の作製条件は、樹脂温度190℃、金型温度60℃、射出速度60mm/s、保圧80Paとした。ペレットは、ホッパーを介して成形機のスクリューへ噛み込んでいくが、その際の侵入性を時間当たりのペレット減少量で測定しており、一定であることを確認した。試験片の形状は、下記に述べる評価項目によって変更し、弾性率測定用に1号サイズのダンベルを作製し、重錘落下衝撃試験用に50mm角、厚さ1.2mmの平板を作製した。得られた試験片を以下の方法により評価を行った。
− 非解繊部位4のメジアン繊維径および、解繊部位3のメジアン繊維径 −
得られた繊維複合樹脂成形部品をキシレン溶媒に浸漬して、ポリプロピレンを溶解させ、残ったパルプ繊維についてSEM観察を実施した。具体的には、SEM(PHENOM-World社製 走査型電子顕微鏡 Phenom G2pro)を用いて、代表的な繊維を約100本計測した。繊維径測定結果からメジアン繊維径を算出した結果、解繊されていない部位のメジアン繊維径は5.2μmとなり、繊維長方向の端部には解繊部位がみられ、解繊部位のメジアン繊維径は0.7μmであった。
【0052】
− 繊維複合樹脂成形部品の弾性率 −
得られた1号ダンベル形状の試験片を用いて、引張試験(AND社製 RTF−1310)を実施した。ここで、弾性率の評価方法として、その数値が主剤樹脂の弾性率よりも低いものを×とし、それよりも高いものを○と判定した。主剤樹脂単体の弾性率は1.3GPaで、同試験片の弾性率は2.1GPaとなり1.62倍のため、その評価は〇であった。
【0053】
− 繊維複合樹脂成形部品の重錘落下衝撃試験 −
得られた平板形状の試験片(繊維複合樹脂から厚み1〜2mmで切り出した板状試験片)を用いて、重錘落下衝撃試験を実施した。具体的には、恒温槽(エスペック社製、商品名:PDR−3KP)内に静置して、−10℃で3時間保持した。その後、恒温槽から試験片を素早く取り出し、種々の高さから、250gの重錘を落下させたときに試験片が破壊されなかった最大高さ:Hを測定した。この重錘落下衝撃試験では、最大高さの数値が大きいほど試験片の面衝撃性が高いことを示す。ここで、面衝撃性の評価方法として、その最大高さの数値が主剤樹脂の破壊されなかった最大高さの0.4倍未満であれば、面衝撃性が低いとして×と評価し、0.4倍以上1.0倍以下であれば、面衝撃性が高いとして○と評価した。主剤樹脂のみの試験片が破壊されなかった最大高さ:Hoは200cmで、同試験片の最大高さは190cmとなり0.95倍のため、その評価は○であった。
【0054】
− 繊維複合樹脂成形部品のシャルピー衝撃試験 −
得られた1号ダンベル形状の試験片を用いて、予めノッチを入れ、シャルピー衝撃試験JIS K7111(東洋精機製作所製 DIGITAL IMPACT TESTER)を行った。このシャルピー衝撃試験では、衝撃強度が高いほど試験片の一方向衝撃性が高いことを示す。ここで、一方向衝撃性の評価方法として、そのシャルピー衝撃強度が主剤樹脂のみのシャルピー衝撃強度の0.4倍未満であれば、一方向衝撃性が低いとして×と評価し、0.4倍以上1.0倍以下であれば、一方向衝撃性が高いとして○と評価した。主剤樹脂の試験片のシャルピー衝撃強度は7.8kJ/mで、同試験片のシャルピー衝撃強度は3.3kJ/mとなり0.42倍のため、その評価は○であった。
【0055】
(実施例2)
実施例2では、溶融混練分散処理を3回繰り返すことに短縮した以外の条件は実施例1と同様にパルプ分散ポリプロピレンペレット、ならびに成形部品を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0056】
(比較例1)
比較例1では、スクリュー構成および他の条件は実施例1と同様にポリプロピレンペレット単体で成形部品を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0057】
(比較例2)
比較例2では、スクリュー構成を高せん断タイプに変更し、スクリュー構成以外の条件は実施例1と同様にパルプ分散ポリプロピレンペレット、ならびに成形部品を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0058】
(比較例3)
比較例3では、スクリュー構成を比較例2と同様の高せん断タイプに変更し、更に、このスクリュー構成での溶融混練分散を3回処理に短縮した。それ以外の条件は実施例1と同様にパルプ分散ポリプロピレンペレット、ならびに成形部品を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0059】
(比較例4)
比較例4ではスクリュー構成を比較例2と同様の高せん断タイプに変更し、更に、このスクリュー構成での溶融混練分散を1回処理に短縮した。それ以外の条件は実施例1と同様にパルプ分散ポリプロピレンペレット、ならびに成形部品を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0060】
(比較例5)
比較例5では、スクリューの構成を低せん断タイプに変更し、スクリュー構成以外の条件は実施例1と同様にパルプ分散ポリプロピレンペレット、ならびに成形部品を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0061】
(比較例6)
比較例6では、繊維状フィラーとしての綿状針葉樹パルプを市販のガラス繊維へと変更し、繊維状フィラー種類以外の条件は実施例1と同様にパルプ分散ポリプロピレンペレット、ならびに成形部品を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0062】
実施例1,2および各比較例1〜6における測定結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
この表1から明らかなように、比較例1に示す繊維状フィラーを含まない主剤樹脂単体の弾性率に対して、繊維状フィラーを添加したそれ以外の条件では、弾性率が高くなり機械的強度を改善できている。そして、繊維状フィラーを添加して、解繊されていない部位のメジアン繊維径が5μm以上30μm以下、かつ解繊部位のメジアン繊維径が0.1μm以上2μm以下の解繊状態を実現できている実施例1,2に関しては、重錘落下衝撃試験による面衝撃強度が比較例1と比べて、0.4倍以上1.0倍以下となっており、かつ、シャルピー衝撃試験による一方向衝撃強度が比較例1と比べて、0.4倍以上1.0倍以下を満たし、通常の使用環境に対する耐衝撃性を確保できていることを確認した。それに対して、スクリュー構成を高せん断タイプに変更した比較例2では、せん断がかかり過ぎたために、解繊部位のメジアン繊維径が0.07μmまで細くなり、解繊されていない部位のメジアン繊維径としても0.9μmと細く、繊維長としても短くなりすぎた結果として繊維のアスペクト比(繊維長÷繊維径で示す指数)が小さくなった影響により、面衝撃強度および、一方向衝撃強度共に、比較例1と比べて0.4倍未満となってしまい通常の使用環境に対する耐衝撃性を確保できない結果となった。
【0065】
比較例2と同様にスクリュー構成を高せん断タイプに変更して、更に溶融混練分散処理回数を3回まで減らして短時間処理へ変更した比較例3では、解繊部位のメジアン繊維径は0.8μmと細い状態まで解繊されているため、面衝撃が加わった際には、通常の使用環境に対する耐衝撃性を確保できていることを確認したが、解繊されていない部位のメジアン繊維径が4.1μmと細く解繊されすぎているため、一方向衝撃強度に対しては、クラック状欠陥の進展を抑制することができず、比較例1と比べて0.4倍未満となってしまい通常の使用環境に対する耐衝撃性を確保できない結果となった。
【0066】
比較例3の条件から更に溶融混練分散処理回数を1回まで減らして短時間処理へ変更した比較例4では、解繊されていない部位(不十分なほぐれ部分含む)のメジアン繊維径が35.0μmと太くなっており、解繊部位は十分解繊されているにも関わらず、成形された時点から解繊されていない部位の近傍に巨大なクレーズ状欠陥が発生してしまい、更に、面方向、一方向のどちらの衝撃力に対してもクレーズ状欠陥同士が連続的につながりやすくなるため、そのクレーズ状欠陥が起点となって割れが発生しやすくなることにより、比較例1と比べて面衝撃強度および一方向衝撃強度が0.4倍未満となってしまい通常の使用環境に対する耐衝撃性を確保できない結果となった。
【0067】
スクリュー構成を低せん断タイプに変更した比較例5では、解繊されていない部位のメジアン繊維径は25.2μmまで細くできているが、低せん断であるために解繊部位のメジアン繊維径が2.2μmと解繊が不十分な状態となってしまい、解繊部位の先端に発生したクレーズ状の欠陥同士が連続的につながりやすくなることにより、比較例1と比べて面衝撃強度が0.4倍未満となってしまい通常の使用環境に対する耐衝撃性を確保できない結果となった。
【0068】
繊維状フィラーをガラス繊維へと変更した比較例6では、ガラスの弾性率が68GPaと主剤樹脂のポリプロピレンの1.5GPaと比べて非常に高いことから、一方向衝撃に対する耐衝撃性としては比較例1よりも高い強度を示しているが、繊維方向による異方性が強く発生してしまうことで、多方向から加わる面衝撃強度に対しては0.4倍未満となってしまう結果となった。更に、ガラス繊維の場合には、繊維状フィラーの端部に明確な解繊部位が存在しないため、解繊されていない部位の繊維近傍に巨大なクレーズ状欠陥が多く発生してしまい、クレーズ状欠陥同士が連続的につながりやすくなることにより、比較例1と比べて面衝撃強度が更に低くなる結果となっている。
【0069】
以上の評価から、繊維複合樹脂成形部品中に添加されている繊維状フィラーは、繊維1本内で、解繊されていない太繊維部と繊維長方向の端部が部分的に解繊されている細繊維部を持つ構造を有するため、一方向衝撃を解繊されていない太繊維部で耐久し、解繊されている細繊維部で面衝撃によるクラック状欠陥の進展を抑制でき、面衝撃強度と一方向衝撃強度を両立できる繊維複合樹脂成形部品を提供できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は主剤樹脂の特性を向上させることができるので、エンジニアリングプラスチックの代替物、または金属材料の代替物として利用され得る。従って、エンジニアリングプラスチック製または金属製の各種工業製品、または生活用品の製造コストを大幅に削減し得る。さらには家電筐体、建材、自動車部材への利用が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 主剤樹脂
2 繊維状フィラー
3 解繊部位
4 非解繊部位
5 面方向に加わった衝撃力
6 クレーズ状欠陥
7 一方向に加わった衝撃力
8 クラック状欠陥
図1
図2
図3
図4