特許第6937164号(P6937164)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6937164
(24)【登録日】2021年9月1日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】重量物搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B61B 13/00 20060101AFI20210909BHJP
【FI】
   B61B13/00 D
   B61B13/00 R
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-109949(P2017-109949)
(22)【出願日】2017年6月2日
(65)【公開番号】特開2018-202999(P2018-202999A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000178011
【氏名又は名称】山九株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】浜田 実
(72)【発明者】
【氏名】落合 康雄
【審査官】 久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−124353(JP,A)
【文献】 特開2010−221949(JP,A)
【文献】 米国特許第06477963(US,B1)
【文献】 特開2012−171544(JP,A)
【文献】 実開昭58−029560(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量物を載置する載置台及び該載置台の四隅部に設けられそれぞれが方向転換可能な走行手段を備える台車と、
予め設定した複数の搬送ルートに沿って設置され、前記台車を前記搬送ルートに沿って走行可能とするガイドレールと、
前記台車の前記各走行手段から前記台車の幅方向中央側に突出して設けられ、前記ガイドレールの外側面に当接して前記ガイドレールに沿うように前記各走行手段を方向転換させる進行方向転換部と、
前記搬送ルートの起点側及び終点側のいずれか一方又は双方と前記台車との間を連結し、該台車を前記搬送ルートに沿って移動させる牽引手段とを有し、
一部が並行に配置された複数の前記搬送ルート上で隣り合う前記ガイドレールの間隔が、前記台車の幅の1/2よりも広く、該台車の幅よりも狭いことを特徴とする重量物搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載の重量物搬送装置において、前記台車の前方及び後方で左右の前記走行手段同士をそれぞれ連結して、連結された左右の該走行手段の方向転換を同調させる前後2箇所の走行手段連結部を有することを特徴とする重量物搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の重量物搬送装置において、前記各進行方向転換部は、前記ガイドレールの外側面に当接する1つの進行方向転換用ローラを有することを特徴とする重量物搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量物を載置し搬送(運搬)する台車を備えた重量物搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
数トン程度の重量物を搬送する方法の一つとして、人が手で押す台車を用いる方法がある。例えば、高炉に用いるステーブクーラの交換作業を行う場合、重量物であるステーブクーラを台車で搬送するが、短時間で所定の数のステーブクーラを交換しなければならない。しかし、高炉に設けられたステーブクーラの搬入、搬出用の開口部は必要最低限の数と寸法になっているため、搬送途中に方向転換やルートの選択が必要であり、特に、開口部の近辺は狭隘で暗く、作業員が輻輳すると危険である。
そこで、例えば、特許文献1には、重量物を載置する載置台の四隅部にそれぞれの向きが独立して任意に調整可能な車輪が設けられた台車と、予め設定した搬送ルートに沿って設置され台車を搬送ルートに沿って走行可能とするガイドレールと、台車の幅方向両側に位置するように搬送ルートに沿って設置され各車輪の向きを台車の進行方向に合わせると共に搬送ルートから台車が逸脱することを防止する補助レールと、台車に設けられ台車を搬送ルートに沿って移動させる牽引手段とを有する重量物の搬送装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−124353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、搬送ルートの両側に補助レールが必要であるため、部品点数が増え、量産性、施工性に欠けるという問題がある。また、搬送ルートが分岐している場合、その分岐点では切替え作業が必要となり、一方のルートのガイドレール及び補助レールの一部を撤去し、他方のルートに接続するためのガイドレール及び補助レールを設置しなければならず、手間がかかり、作業性に欠けるという問題がある。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、構成を簡素化し、部品点数を低減することができると共に、搬送ルートの切替え作業を省略若しくは軽減し、手間をかけずに重量物の搬出入作業を行うことが可能で、作業者の負担を軽減することができる量産性、作業性、省力性、省スペース性に優れた重量物搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う本発明に係る重量物搬送装置は、重量物を載置する載置台及び該載置台の四隅部に設けられそれぞれが方向転換可能な走行手段を備える台車と、
予め設定した複数の搬送ルートに沿って設置され、前記台車を前記搬送ルートに沿って走行可能とするガイドレールと、
前記台車の前記各走行手段から前記台車の幅方向中央側に突出して設けられ、前記ガイドレールの外側面に当接して前記ガイドレールに沿うように前記各走行手段を方向転換させる進行方向転換部と、
前記搬送ルートの起点側及び終点側のいずれか一方又は双方と前記台車との間を連結し、該台車を前記搬送ルートに沿って移動させる牽引手段とを有し、
一部が並行に配置された複数の前記搬送ルート上で隣り合う前記ガイドレールの間隔が、前記台車の幅の1/2よりも広く、該台車の幅よりも狭い
これにより、ガイドレールのみで台車を確実に案内し、搬送ルートから逸脱させることなく、搬送ルートに沿って走行させることができ、搬送ルートが湾曲している場合でも、進行方向転換部によって各走行手段を方向転換させることが可能で、従来のように台車の幅方向両側に搬送ルートに沿って補助レールを設置する必要がなく、部品点数及び搬送ルートの設置面積を低減することができ、低コストで量産性に優れる。
走行手段を方向転換させる進行方向転換部が、台車の各走行手段から台車の幅方向中央側に突出して設けられるので、台車の外側に突起物がなく、取り扱い性が向上すると共に、台車の幅及び台車を走行させるための搬送ルートの幅を低減することができ、コンパクト性にも優れる。
牽引手段によって台車を搬送ルートに沿って移動させることができるので、人手で台車を押して移動させたり、方向転換させたりする必要がなく、狭隘な場所や暗い場所でも重量物の搬出入作業をスムーズに行うこと可能で、作業効率を高めることができ、安全性、省力性に優れる。
走行床の幅方向中央部にガイドレールのみが設けられた構成とすることにより、複数の搬送ルートを近接して配置することができ、省スペース性に優れる。よって、1つの搬送ルートを主ルートとし、そこから複数の副ルートを分岐させて、1箇所の起点側又は終点側と、複数個所の終点側又は起点側との間で重量物を搬送する代わりに、複数の搬送ルートの起点側又は終点側を近接させ、搬送ルートの一部を並行に配置して、各搬送ルートを通して複数個所の終点側又は起点側との間で重量物を搬送することができるので、搬送ルートに分岐点を設ける必要がなく、副ルートの切替え作業が不要となり、作業効率を向上させることができる。
【0006】
ここで、牽引手段は、台車を牽引して搬送ルートに沿って移動させることができるものであればよいが、ワイヤやチェーン等の連結部材をウインチやチェーン巻取り機等の巻取り機により巻取るものが好適に用いられる。
このとき、巻取り機をガイドレールの起点側及び終点側に一台ずつ設置固定し、各巻取り機から引き出された連結部材の先端部をそれぞれ台車の前方側及び後方側に接続固定した場合や、巻取り機を台車の前方側及び後方側に一台ずつ設置固定し、各巻き取り機から引き出された連結部材の先端部をガイドレールの起点側及び終点側に固定した場合は、台車を搬送ルートに沿って往復移動させることができるので、一つの搬送ルートで搬出及び搬入の作業を行うことができ、省力性、省スペース性に優れる。
但し、場合によっては、一台の巻取り機をガイドレールの起点側及び終点側のいずれか一方に設置固定し、連結部材の先端部を台車側に接続固定してもよいし、一台の巻取り機を台車側に設置固定し、連結部材の先端部をガイドレールの起点側及び終点側のいずれか一方に固定してもよい。
なお、巻取り機を台車に設置する場合、載置台に載置される重量物と巻取り機が干渉しないように載置台の前端側や後端側に巻取り機を取り付けることが好ましい。特に、巻取り機が載置台の上面より上方に突出しないように取り付けた場合、重量物の積み降ろしが容易になると共に、底面が載置台の上面よりも大きな重量物でも搬送することができ、取り扱い性に優れる。
また、複数の搬送ルートの一部が並行に配置される場合に、並行に配置された搬送ルート上で隣り合うガイドレールの間隔が台車の幅よりも広ければ、並行に配置された搬送ルート上を台車が同時に通過しても、台車同士が接触することはないが、隣り合うガイドレールの間隔が台車の幅よりも狭くても、台車の幅の1/2よりも広ければ、台車が隣り合うガイドレールと干渉することはない。よって、複数の搬送ルート上を移動する台車が、並行に配置された区間を通過するタイミングをずらす、つまり、並行に配置された搬送ルート上を同時に通過させないようにすることにより、複数の搬送ルートのいずれかを選択して有効に利用することが可能であり、搬送ルートの設置面積を大幅に低減することができる。
【0007】
本発明に係る重量物搬送装置において、前記台車の前方及び後方で左右の前記走行手段同士をそれぞれ連結して、連結された左右の該走行手段の方向転換を同調させる前後2箇所の走行手段連結部を有するのが好ましい。
搬送ルートがカーブする領域においては、左右の走行手段のうち、カーブの内側(右カーブの場合は右側、左カーブの場合は左側)に位置する走行手段の進行方向転換部がガイドレールの外側面に当接して走行手段がガイドレールに沿うように方向転換する。よって、台車の前方及び後方で左右の走行手段同士をそれぞれ走行手段連結部で連結しておけば、搬送ルートが左右どちらにカーブしていても、カーブの内側に位置する走行手段が進行方向転換部の作用によって方向転換した際に、カーブの外側に位置する走行手段が同調して方向転換するので、台車を搬送ルートに沿うように移動させることができ、搬送ルートの設置の自在性、走行の安定性に優れる。
左右の走行手段の方向転換を同調させる走行手段連結部が前後2箇所に設けられているので、台車の進行方向が前後入れ替わっても、進行方向側の走行手段連結部でスムーズに方向転換を行うことができ、台車を搬送ルートに沿って前後動させることができる。
【0008】
ここで、走行手段連結部は左右の走行手段の方向転換が同調するように走行手段同士を連結するものであればよい。なお、走行手段連結部の断面形状や大きさは適宜、選択することができ、十分な剛性を有していれば、板状でもパイプ状(中空状)でもよい。
【0009】
本発明に係る重量物搬送装置において、前記各進行方向転換部は、前記ガイドレールの外側面に当接する1つの進行方向転換用ローラを有することが好ましい。
各進行方向転換部において、ガイドレールの外側面に当接する進行方向転換用ローラが、ガイドレールの長手方向に沿って複数配置されている場合、搬送ルートのカーブの曲率により、走行手段の方向転換が妨げられるおそれがある。しかし、各進行方向転換部が進行方向転換用ローラを1つ有する場合は、進行方向転換用ローラによって走行手段の方向転換が妨げられることはなく、スムーズな方向転換が可能となり、走行の安定性を向上させることができる。
【0010】
【0011】
本発明に係る重量物搬送装置において、前記搬送ルートが、主ルートと、該主ルートから分岐する複数の副ルートを有しているのが好ましい。
これにより、1箇所の起点側又は終点側と、複数個所の終点側又は起点側との間で重量物を搬送することができ、独立した複数の搬送ルートを設置するよりも設置面積を低減することができ、省スペース性、設置自在性に優れる。なお、主ルートから複数の副ルートが分岐しているので、台車がどの副ルートを走行するかによって、分岐点でガイドレールの切替え作業が必要となるが、従来のような補助レールがなく、一部のガイドレールのみの撤去と設置だけで簡単に切替え作業を行うことが可能であり、手間を削減することができ、作業性、省力性に優れる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る重量物搬送装置は、構成を簡素化して部品点数を低減し、搬送ルートの切替え作業を省略若しくは軽減して手間をかけずに重量物の搬出入作業を行うことができ、作業者の負担を軽減して量産性、作業性、省力性、省スペース性の向上を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施の形態に係る重量物搬送装置の要部平面図である。
図2】同重量物搬送装置の要部正面図である。
図3】同重量物搬送装置の要部側面図である。
図4】同重量物搬送装置の使用状態の説明図である。
図5】同重量物搬送装置を高炉の設置物の取替え作業に適用した場合の説明図である。
図6】変形例に係る搬送ルートの設置状況の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1図5に示すように、本発明の一実施の形態に係る重量物搬送装置10は、高炉11における重量物の一例である設置物(ここでは、ステーブクーラ)を載置して搬送する台車12と、予め設定した搬送ルート13、13a、13b、13cに沿って設置されたガイドレール14、14a、14b、14cと、台車12を搬送ルート13、13a、13b、13cに沿って移動させる牽引手段15とを有している。なお、搬送ルート13、13aには、その一部が並行に配置された並行部16、16aが形成され、搬送ルート13b、13cには、その一部が並行に配置された並行部17、17aが形成されている。
以下、台車12の前後方向を台車12の進行方向とし、台車12の幅方向を台車12の進行方向に直交する方向として、詳しく説明する。
【0015】
図5に示すように、重量物搬送装置10の設置場所は、高炉11の周囲に設置された作業床18、19上である。
この作業床18、19の高さ位置は、高炉11の所定高さ位置に設置されたデッキ20と略同程度である。なお、デッキ20は、使用済みの設置物(以下、使用済み設置物ともいう)の高炉11炉内からの搬出と、未使用(新品)の設置物(以下、未使用設置物ともいう)の高炉11炉内への搬入とを行う、搬出入口21の前方(炉外側)に設置されている。この搬出入口21は、高炉11に複数(ここでは4箇所)設けられている。
【0016】
図1図3に示すように、作業床18上には、鉄製の板(走行床の一例)22が取付け固定され、その板22上に、ガイドレール14が、搬送ルート13に沿って設置されている。
ガイドレール14は、図1図5に示すように、台車12を搬送ルート13に沿って走行可能とするものである。このガイドレール14は、断面凹状に形成されており、平面視して台車12の幅方向中央部(台車12の下方)に設置されるものである。
なお、作業床18上には、図5に示すように、搬送ルート13a、ガイドレール14aも設置されているが、搬送ルート13、ガイドレール14と同様の構成であるため、説明を省略する。
また、作業床19上にも、作業床18と同様に鉄製の板22が取付け固定され、その板22上に、ガイドレール14b、14cが、搬送ルート13b、13cに沿って設置されているが、いずれも搬送ルート13、ガイドレール14と同様の構成であるため、説明を省略する。
図5において、各搬送ルート13、13a、13b、13cは、主に、使用済み設置物を各搬出入口21から作業床18、19外へ搬出し、未使用設置物を作業床18、19外から各搬出入口21へ搬入するためのルートである。
以下、本実施の形態では、各搬送ルート13、13a、13b、13cの搬出入口21側を起点側とし、反対側を終点側として説明する。
【0017】
図1図4に示すように、上記した板22上を走行する台車12は、重量物を載置する載置台24と、その四隅部に設けられた走行手段25とを備えている。
載置台24は、平面視して矩形状のものであり、例えば、複数のアングル等を用いて構成されている。また、各走行手段25は、二個の鉄製のローラ(車輪の一例)26と、このローラ26が設けられた1本のシャフト27と、このシャフト27の両側を回転自在に支持する支持枠28と、支持枠28の上部に回転自在に設けられたターンテーブル29とで構成されている。
走行手段25のターンテーブル29の上面が、載置台24の底面に取付けられているため、各走行手段25はターンテーブル29の回転軸を中心に容易に方向転換してローラ26を進行方向に向けることができる。なお、走行手段25は方向転換機能を有していればよく、載置台24の四隅部に設けることを原則とするが、その構成は特に限定されるものではない。例えば、各走行手段25において、1本のシャフト27に設けられるローラ26の数を増減させてもよいし、ローラ26が設けられた複数本のシャフト27を支持枠28に並列に取り付けてもよい。
また、載置台24には、台車12の前後方向両端部であって、台車12の幅方向中央部位置に、左右一対の中央ガイド部30が取付け固定されている。各中央ガイド部30には、回転軸が鉛直方向となるようにガイドローラ31が取り付けられており、中央ガイド部30のガイドローラ31により、ガイドレール14の両外側面を幅方向外側から挟み込むように配置されている。ガイドローラ31としては、カムフォロア(内部にニードルベアリングが組込まれたシャフト付きベアリング、以下同様)が好適に用いられる。
【0018】
各走行手段25の支持枠28には、台車12の幅方向中央側に進行方向転換部32が設けられている。この進行方向転換部32は、各走行手段25の支持枠28から台車12の幅方向中央側に突出させたアーム部33と、カムフォロア等で構成されアーム部33の先端部に取り付けられた1つの進行方向転換用ローラ34を有している。進行方向転換用ローラ34は、回転軸が鉛直方向となるように取り付けられており、この進行方向転換用ローラ34がガイドレール14の外側面に当接することにより、各走行手段25をガイドレール14に沿うように方向転換させることができる。
また、台車12の前方及び後方で左右の走行手段25同士は、それぞれ板状の走行手段連結部35で連結されている。左右の走行手段25の支持枠28に設けた連結用アーム36に対し、走行手段連結部35の両端部を軸支部37で回動自在に軸支することにより、連結された左右の走行手段25の方向転換を同調させることができる。
【0019】
例えば、図4に示すように、台車12の進行方向に対し、搬送ルート13が右カーブする領域においては、左右の走行手段25のうち、カーブの内側(右側)に位置する走行手段25の進行方向転換部32がガイドレール14の右側の外側面に当接して、右の走行手段25がガイドレール14に沿うように方向転換する。このとき、左右の走行手段25が走行手段連結部35で連結されているので、カーブの外側(左側)に位置する走行手段25が同調して方向転換し、該走行手段25の進行方向転換部32もガイドレール14の左側の外側面に当接した状態で、台車12をガイドレール14に沿うように移動させることができる。
鉄製の板22と鉄製のローラ26が接触する場合、摩擦係数を小さくできるので、ローラ26の回転方向と、台車12が実際に走行する方向(進行方向)とが、厳密に一致していなくても、台車12をガイドレール14に沿うように走行させることが可能である。
なお、本実施の形態では、各走行手段25の連結用アーム36の突出方向を台車12の前方向又は後ろ方向としたが、連結用アーム36の長さや突出方向(台車12の前後方向に対する傾斜角度)は、左右の走行手段25がスムーズに同調して方向転換できる範囲で、適宜、選択することができる。
【0020】
図1図5に示すように、台車12の前後には、牽引手段15が取付けられている。各牽引手段15は、ワイヤ(連結部材の一例)38と、このワイヤ38の巻取り巻戻しを行う電動ウインチ(巻取り機の一例)39で構成されている。各ワイヤ38の先端部は、台車12の前後方向両端部にそれぞれ連結され、電動ウインチ39が、搬送ルート13の起点側と終点側の双方に設置されている。
これにより、搬送ルート13の起点側及び終点側に設置された電動ウインチ39を選択的に駆動してワイヤ38を巻取ることで、台車12を牽引して移動させることができる。このとき、ワイヤ38が、断面凹状となったガイドレール14の凹部40内に配置されているため、搬送ルート13がカーブしている場合でも、ワイヤ38の巻取り時にかかる牽引力で台車12が浮き上がって傾くことを防止でき、台車12を搬送ルート13に沿うようにワイヤ38の巻取りを行う電動ウインチ39側へ引き寄せることができる。
【0021】
なお、本実施の形態では、電動ウインチ39を搬送ルート13の起点側と終点側の双方に設置しているが、場合によっては、起点側と終点側のいずれか一方のみに設置することもできる。また、電動ウインチ39を台車12に取付け固定し、ワイヤ38の先端部を搬送ルート13の起点側及び/又は終点側に取付け固定することもできる。
重量物搬送装置10を以上の構成とすることで、構造を簡素化でき、台車12の車高を低くして重量物の積み降ろし作業を容易に行うことができると共に、搬送能力も向上できる(搬送可能な重量も重くできる)。なお、台車12の車高(板22の表面から載置台24の上面までの高さ)は、特に限定されるものではないが、例えば、30cm以下、更には20cm以下にすることができる。
【0022】
続いて、本発明の一実施の形態に係る重量物搬送装置10を用いた重量物の搬送方法について、図5を参照しながら説明する。
図5において、各搬出入口21を起点として搬送ルート13、13a、13b、13cが設定されているが、搬送ルート13、13aの並行部16、16aにおいて隣り合うガイドレール14とガイドレール14aとの間隔、及び、搬送ルート13b、13cの並行部17、17aにおいて隣り合うガイドレール14bとガイドレール14cとの間隔は、台車12の幅の1/2よりも広く、台車12の幅よりも狭く形成して、設置面積を低減している。これにより、台車12は搬送ルート13、13aの並行部16、16a及び、搬送ルート13b、13cの並行部17、17aではすれ違いや追越しができないので、例えば、搬送ルート13、13bの起点側、及び、搬送ルート13a、13cの終点側にそれぞれ台車12を設置し、搬送ルート13、13aの並行部16、16a及び、搬送ルート13b、13cの並行部17、17aでは、それぞれ台車12が交互に走行するようにする。
【0023】
例えば、搬送ルート13上を走行する台車12が、起点側となる高炉11の搬出入口21側に位置し、搬送ルート13a上を走行する台車12が、終点側に位置する場合、まず、搬送ルート13aの終点側に位置する台車12の載置台24上にステーブクーラ等の未使用設置物を載せ、起点側の電動ウインチ39で牽引し、デッキ20で未使用設置物を降ろし、搬出入口21から高炉11への設置作業を行う。このとき、搬送ルート13の起点側に位置する台車12の載置台24上には、高炉11から取外したステーブクーラ等の使用済み設置物を載せ、終点側の電動ウインチ39で牽引するが、搬送ルート13a上を走行する台車12が並行部16aを通過した後、搬送ルート13上を走行する台車12を並行部16に進入させ、終点側で使用済み設置物を降ろす。
次に、搬送ルート13の終点側で使用済み設置物を降ろした台車12の載置台24上に未使用設置物を載せ、起点側の電動ウインチ39で牽引し、デッキ20で未使用設置物を降ろし、搬出入口21から高炉11への設置作業を行う。このとき、搬送ルート13aの起点側で未使用設置物を降ろした台車12の載置台24上に、高炉11から取外した使用済み設置物を載せ、終点側の電動ウインチ39で牽引するが、搬送ルート13上を走行する台車12が並行部16を通過した後、搬送ルート13a上を走行する台車12を並行部16aに進入させ、起点側で使用済み設置物を降ろす。
以上と同様の動作を作業床19上の搬送ルート13b、13cで並行して行うことにより、短時間で効率的に重量物の搬出入作業を行うことができる。
【0024】
次に、搬送ルートの変形例について説明する。
図5では、搬送ルート13、13a、13b、13cが全長にわたって独立しており、一部の並行部16、16a、及び、並行部17、17aでは、ガイドレール14、14a、及び、ガイドレール14b、14cが隣り合って配置されていた。
しかし、十分な設置スペースを確保することができず、二本の搬送ルート(ガイドレール)を並列に設置することが困難な場合があるので、その場合は、図6に示すように、搬送ルート41を一本の主ルート42から二本の副ルート42a、42bを分岐させる構成とすることができる。主ルート42上にはガイドレール43が設置され、副ルート42a、42b上にはそれぞれガイドレール43a、43bが設置されている。また、主ルート42と、副ルート42a、42bとの間の分岐部44には、主ルート42と副ルート42aを接続する分岐レール45a又は主ルート42と副ルート42bを接続する分岐レール45bのいずれか一方が設置される。
つまり、台車12が副ルート42aを走行する場合は、分岐レール45aを設置して分岐レール45bを撤去し、台車12が副ルート42bを走行する場合は、分岐レール45bを設置して分岐レール45aを撤去する。
このように、台車12が副ルート42a、42bのいずれを走行するかによって、分岐部44で分岐レール45a及び分岐レール45bの一方を設置し他方を撤去する作業(切替え作業)が必要となるが、搬送ルート41における主ルート42を一本のみとして設置スペースを削減することができ、一部のガイドレールのみの撤去と設置だけで切替え作業を行うことが可能であり、作業者の負担を最小限に留めることができる。
【0025】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
例えば、前記実施の形態においては、重量物搬送装置の搬送対象となる重量物を高炉の設置物とした場合について説明したが、重量物(重量が、例えば、数トンから数十トン程度)であれば、これに限定されるものではない。従って、搬送対象となる重量物に応じて、重量物搬送装置の設置場所も適宜選定できる。
また、前記実施の形態においては、隣り合う二本の搬送ルートの一部が並行となるように設置された場合について説明したが、搬送ルートの数や配置等は、使用用途に応じて、適宜、変更できる。
例えば、搬送ルートは一本のみでもよいし、カーブのない真っ直ぐな搬送ルートとしてもよい。なお、カーブのない真っ直ぐな搬送ルートの場合、走行手段の方向転換は不要であるが、進行方向転換部を有することにより、走行中に外力が加わっても、台車が傾くことがなく、ガイドレールからの逸脱を効果的に防止できる。
また、前記実施の形態においては、断面凹状のガイドレールを用いたが、例えば、二本のI型鋼を間隔を空けて並列に配置してガイドレールとしてもよく、その場合、左右のI型鋼は連結されていなくてもよい。なお、牽引手段の連結部材として、ワイヤの代わりにチェーンを用いてもよい。
【0026】
また、前記実施の形態においては、車輪を構成するローラを鉄製としたが、重量物搬送装置の使用環境(床面の状況)によっては、例えば、ウレタン製やナイロン製の車輪を使用することもできる。
さらに、前記実施の形態においては、一本の搬送ルート毎に一台の台車を使用した場合について説明したが、一本の搬送ルートに対して複数台の台車を使用することもできる。この場合、複数台の台車を連結して使用してもよい。なお、複数台の台車を使用する場合、各台車の構造(例えば、載置台の幅や長さ)は同一でも、異なっていてもよい。
また、前記変形例においては、一本の主ルートから二本の副ルートを分岐させた場合について説明したが、一本の主ルートから三本以上の副ルートを分岐させてもよいし、副ルートからさらにルートを分岐させてもよい。
【符号の説明】
【0027】
10:重量物搬送装置、11:高炉、12:台車、13、13a、13b、13c:搬送ルート、14、14a、14b、14c:ガイドレール、15:牽引手段、16、16a、17、17a:並行部、18、19:作業床、20:デッキ、21:搬出入口、22:板(走行床)、24:載置台、25:走行手段、26:ローラ(車輪)、27:シャフト、28:支持枠、29:ターンテーブル、30:中央ガイド部、31:ガイドローラ、32:進行方向転換部、33:アーム部、34:進行方向転換用ローラ、35:走行手段連結部、36:連結用アーム、37:軸支部、38:ワイヤ(連結部材)、39:電動ウインチ(巻取り機)、40:凹部、41:搬送ルート、42:主ルート、42a、42b:副ルート、43、43a、43b:ガイドレール、44:分岐部、45a、45b:分岐レール
図1
図2
図3
図4
図5
図6