特許第6937166号(P6937166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6937166
(24)【登録日】2021年9月1日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】回転電機ユニット
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/00 20060101AFI20210909BHJP
   H02K 11/33 20160101ALI20210909BHJP
   H02K 5/00 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
   B60K1/00
   H02K11/33
   H02K5/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-111873(P2017-111873)
(22)【出願日】2017年6月6日
(65)【公開番号】特開2018-203115(P2018-203115A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】城ノ戸 拓真
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠一
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−134988(JP,A)
【文献】 特開2013−150472(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0083505(US,A1)
【文献】 特開平7−231672(JP,A)
【文献】 特開2016−78713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00
H02K 11/33
H02K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられる回転電機ユニットであって、
回転電機と、
前記回転電機の筐体の端面に配置され、前記回転電機を制御する制御装置と、
一端に開口を備え内部に前記制御装置を収容する収容部が設けられるブラケットと、を有し、
前記ブラケットは、一端の前記開口が前記回転電機の筐体の端面と接触するように固定されるとともに、他端が前記車両のフレームに固定される、回転電機ユニット。
【請求項2】
車両に設けられる回転電機ユニットであって、
回転電機と、
前記回転電機の筐体の端面に配置され、前記回転電機を制御する制御装置と、
一端に開口を備え内部に前記制御装置を収容する収容部が設けられるブラケットと、
前記回転電機の筐体の端面に固定する固定部材と、を有し、
前記ブラケットは、一端の前記開口が前記回転電機の筐体の端面固定されるとともに、他端が前記車両のフレームに固定され
前記固定部材における前記回転電機と固定される側の反対側の面には、前記制御装置、及び、前記ブラケットが固定される、回転電機ユニット。
【請求項3】
請求項に記載の回転電機ユニットであって、
前記ブラケットの収容部は、矩形の底面と前記底面に対して垂直に設けられる4つの側面とを有し、前記車両の上下方向に設けられる側面は、前記車両の前後方向に設けられる側面よりも厚く構成される、回転電機ユニット。
【請求項4】
請求項またはに記載の回転電機ユニットであって、
前記ブラケットは、前記収容部の端部から前記車両の側方に向かって延設される板状のマウント部を有し、
前記マウント部は、前記車両の側方の端部に、前記車両のフレームに固定するための締結穴と、前記締結穴の近傍に設けられる溝と、を有する回転電機ユニット。
【請求項5】
請求項に記載の回転電機ユニットであって、
前記溝は、前記締結穴に対して、前記車両の後方、かつ、前記フレームに向かう側方に設けられる、回転電機ユニット。
【請求項6】
請求項またはに記載の回転電機ユニットであって、
前記溝は、前記マウント部の上面側に設けられる、回転電機ユニット。
【請求項7】
請求項に記載の回転電機ユニットであって、
前記ブラケットは、前記固定部材を介して、前記筐体にボルトを用いて固定される、回転電機ユニット。
【請求項8】
請求項または7に記載の回転電機ユニットあって、
前記固定部材は、前記回転電機と前記制御装置との配線が設けられる接続部を有する、回転電機ユニット。
【請求項9】
請求項7または8に記載の回転電機ユニットあって、
前記制御装置を収容し前記ブラケットと前記固定部材とが一体となった制御ユニットが、前記筐体に固定される、回転電機ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータ(回転電機)により駆動する車両においては、配線長を短くするために、モータの軸方向の端面にモータの制御装置を設けることが多い。一般にモータの筐体は制御装置よりも剛性が高いため、車両のフレームに固定されたブラケットをモータの筐体に固定することにより、モータの固定が行われている。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−96761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術においては、モータの端面に固定される制御装置の上方をまたぐようにブラケットが設けられるので、制御装置の上方にブラケットを配置するスペースが必要になってしまう。このように、上方にブラケットを配置するための空間が必要になってしまうと、車両内におけるモータなどのレイアウトの自由度が低下するという課題がある。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するために発明されたもので、車両内におけるレイアウトの自由度を高める回転電機システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の回転電機システムは、車両に設けられる回転電機ユニットであって、回転電機と、回転電機の筐体の端面に配置され、回転電機を制御する制御装置と、一端に開口を備え内部に制御装置を収容する収容部が設けられるブラケットと、を有する。ブラケットは、一端の開口が回転電機の筐体の端面と接触するように固定されるとともに、他端が車両のフレームに固定される。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態によれば、車両内におけるレイアウトの自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態のモータユニットの断面斜視図である。
図2図2は、図1のA−Aにおけるモータユニットの軸方向の断面図である。
図3図3は、図2のB−Bにおけるモータユニットの径方向の断面図である。
図4図4は、ブラケットの上面図である。
図5図5は、図4のC−Cにおけるブラケットの断面図である。
図6図6は、変形例のモータユニットの軸方向の断面図である。
図7図7は、第2実施形態のモータユニットの断面斜視図である。
図8図8は、図7のA−Aにおけるモータユニットの軸方向の断面図である。
図9図9は、変形例のモータユニットの軸方向の断面図である。
図10図10は、第3実施形態のモータユニットの軸方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態におけるモータ(回転電機)システムについて説明する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のモータユニット100の断面斜視図である。この図においては、モータユニット100は、図左手前が車両前方となるように車両に設けられている。図上方は車両上方に対応し、図の左奥と右手前との方向は、車両側方に対応する。
【0011】
モータユニット100は、モータ1と、制御装置2と、強電系接続部3と、ブラケット4と、を有する。
【0012】
モータ1は、円筒状に構成され内部にモータ本体を備えるモータ筐体11を有している。モータ筐体11には、図右側部の端面に制御装置2を固定する固定部12が設けられている。なお、固定部12は、モータ筐体11と一体となって構成されている。
【0013】
固定部12は、図右側部に開口を有する箱状の部材であり、矩形の底面12Aと、底面12Aに対して垂直に設けられる4つの側面12Bとにより構成される。すなわち、4つの側面12Bは、図右側方に向かうように延在しており、図右側方に開く開口を構成する。底面12Aは、図左側方の面においてモータ筐体11と一体となって構成されるとともに、図右側方の面に制御装置2が固定される。
【0014】
なお、車両上方の側面12Bにはケーブル孔(不図示)が設けられており、ケーブル孔を介して配置される強電系接続部3を介して、モータ1と制御装置2とが配線される。
【0015】
制御装置2は、例えば、インバータやチャージャなどであり、モータ1とは強電系接続部3を介して設けられる配線によって接続される。強電系接続部3の配線長を短くするために、制御装置2はモータ1と隣接して配置されることが望ましい。そのため、制御装置2は、モータ1の固定部12の底面12Aに固定されている。
【0016】
ここで、一般に、モータ筐体11には、モータ1の回転軸が設けられる図左側部に、必要トルクを得るための減速機(不図示)等が設けられている。そのため、制御装置2は、モータ1の回転軸が設けられていないモータ筐体11の図右側部に配置されることが多い。さらに、モータ筐体11の端面に制御装置2を固定することで、モータ1と制御装置2との配線長を短くすることができる。
【0017】
制御装置2は、冷却部21を有している。ここで、モータ1は液冷機構を備えており、モータ筐体11の中には、冷媒の流入路13Aと流出路13Bとが設けられている。固定部12の底面12Aには軸方向に2つの流入孔と流出孔とが設けられており、冷却部21は、流入孔を介して流入路13Aと、流出孔を介して流出路13Bと接続される。このように構成することで、冷却部21に冷媒が流れ込むようになり、制御装置2を冷却することができる。
【0018】
ブラケット4は、図左側部の一端に開口を備え、制御装置2を収容する箱状の収容部41と、収容部41の図左側部の開口の近傍に設けられるフランジ42と、収容部41の図右側部に隣接して設けられるマウント部43とにより構成される。なお、説明の便宜上、収容部41、フランジ42、及び、マウント部43を異なる構成として説明するが、これらの構成が一体となって、ブラケット4が構成されている。
【0019】
収容部41は、図左側部に開口を備える箱状の部材であり、底面41Aと4つの側面41Bとにより構成される。すなわち、底面41Aに図左側方に延在するように側面41Bが設けられることで、モータ1に向かう方向である図左側部に開口が設けられる。このようにして、収容部41には、底面41Aと4つの側面41Bとによってスペースが形成され、このスペースに制御装置2が配置されることになる。
【0020】
フランジ42は、側面41Bよりも幅広に構成される部材であって、側面41Bにおける図左側方の端部に設けられている。フランジ42は、車両側方に向かって設けられる貫通孔を有する。この貫通孔を通るように設けられるボルト44によって、フランジ42は固定部12の側面12Bに固定される。なお、フランジ42の側面は、固定部12の側面12Bと接触し一体となって面を構成する。
【0021】
制御装置2は、多くの電子部品を有するので、水や埃と触れることは好ましくない。そのため、アルミ等の金属により構成されるケースで覆われ、気密の取れた場所に配置されるのが好ましい。本実施形態においては、固定部12と収容部41とによって構成される気密のとれた空間に、制御装置2が配置されることになる。なお、制御装置2は、固定部12の図右側方の端面に固定されており、フランジ42及び収容部41には接触しないように配置されている。
【0022】
マウント部43は、収容部41の図右側方の端面から図右側方に延設する板状部材である。マウント部43には、車両上下方に貫通する延在するインシュレータ締結孔45が設けられている。また、マウント部43には、車両の後方かつ図左側方の領域に溝46が設けられている。溝46の詳細な構成は、後に、図4及び図5を用いて説明する。さらに、マウント部43は、収容部41の底面41Aの図右側方の端面に設けられる支持部47によって支持されている。なお、マウント部43は、収容部41の車両上部ではなく、車両下部から図右側方に延設されてもよい。
【0023】
図2は、図1のA−Aにおけるモータユニット100の断面図である。この図においては、図上方は車両上方を示し、図左右方向が車両側方を示している。
【0024】
モータ1の固定部12の側面12Bと、ブラケット4のフランジ42とが、ボルト44によって締結される。これにより、固定部12の底面12A及び側面12Bと、フランジ42の内面と、収容部41の底面41A及び側面41Bとによりスペースが構成され、このスペースに制御装置2が配置される。
【0025】
また、図右側方においては、車両のフレーム5の上面に、振動を吸収するために設けられるインシュレータ6を介して、ブラケット4のマウント部43が配置されている。そして、インシュレータ締結孔45に挿入されるネジ7が、フレーム5に設けられるネジ孔と螺合することで、ブラケット4がフレーム5に固定される。このように、ブラケット4がフレーム5に固定されることで、モータユニット100を車両に搭載することができる。
【0026】
なお、本実施形態においては、マウント部43は、収容部41の底面41Aの上部に設けられたがこれに限らない。マウント部43は、底面41Aの下部に設けられてもよい。
【0027】
図3は、図2のモータユニット100のB−B断面図である。この図においては、図上方が車両上方を示し、図左方は車両前方を示している。
【0028】
モータ筐体11には、図手前方向に向かう順に設けられた固定部12及びフランジ42が、ボルト44を用いて固定されている。なお以下においては、説明の便宜上、収容部41の4つの側面41Bについては、それぞれ、車両上方にある側面41Bを板部41B−1、車両後方にある側面41Bを板部41B−2、車両下方にある側面41Bを板部41B−3、及び、車両前方にある側面41Bを板部41B−4と称するものとする
【0029】
ここで、車両の前後方向に配置され上下方向に延在する板部41B−2、41B−4の幅L1は、車両の上下方向に配置され前後方向に延在する板部41B−1、41B−3の幅L2よりも、幅広に構成されている。
【0030】
車両上下方向に配置される板部41B−1、41B−3は、主に、ブラケット4に車両前後方向に加わる荷重を支持する。車両前後方向に配置される板部41B−2、41B−4は、主に、ブラケット4に車両上下方向に加わる荷重を支持する。そのため、板部41B−2、41B−4を板部41B−1、41B−3よりも幅広に構成することで、上下方向に加わる荷重に起因するブラケット4の曲げを抑制することができる。
【0031】
なお、本実施形態では、板部41B−2、41B−4の剛性を高めるために、板部41B−1、41B−3より肉厚に構成する例について説明したがこれに限らない。板部41B−2、41B−4にのみリブを成型したり、板部41B−2、41B−4を硬い材料を用いて成型したりすることで、板部41B−2、41B−4の剛性を高めてもよい。
【0032】
次に、マウント部43に設けられる溝46について、図4及び図5を用いて説明する。
【0033】
図4は、マウント部43の車両上方からの上面図である。図左右方向は車両の側方を示し、図下方は車両前方を示すものとする。
【0034】
溝46は、マウント部43を上面から見た場合に、インシュレータ締結孔45を基準にして、車両後方、かつ、モータ1からフレーム5へと向かう図右側方に相当する車両外側方向の領域に設けられている。
【0035】
例えば、車両の衝突時などに、モータユニット100に異常な荷重が加わってしまうと、ブラケット4が破損してしまうおそれがあるが、制御装置2を収容する収容部41が破損することは、制御装置2が露出してしまうので好ましくない。本実施形態では、マウント部43に溝46が設けられることで、収容部41の損傷が抑制され、制御装置2が露出してしまうのを抑制することができる。以下、この理由について詳細に説明する。
【0036】
モータ1は比較的重量が重いため、モータユニット100の重心はインシュレータ締結孔45よりも図左側方向の車両内側に位置する。そのため、衝突時には、インシュレータ締結孔45において車両の内側方向に荷重が加わることになる。同時に、車両には進行方向である車両前方に向かって運動エネルギーが発生しているので、衝突時には、インシュレータ締結孔45において車両の前側に荷重が加わることになる。すなわち、衝突時には、インシュレータ締結孔45において車両の前方にも荷重が加わることになる。
【0037】
すなわち、衝突時には、インシュレータ締結孔45には車両の内側かつ前方に荷重が加わることになる。インシュレータ締結孔45には、加わる加重と反対方向に応力が発生するので、応力は車両の外側方向かつ後方に向かって発生することになる。マウント部43は溝46が構成された車両の外側方向かつ後方が脆弱であり、この脆弱な部分に比較的大きな応力が発生するので、マウント部43は溝46の近傍にて破断しやすい。このようにして、衝突時にはマウント部43において破断しやすくなるので、収容部41が破損してしまい制御装置2が露出してしまうおそれを低減することができる。
【0038】
図5は、図4のC−Cにおけるブラケットの断面図である。図左右方向は車両の側方を示し、図上方は車両上方を示すものとする。
【0039】
溝46は、車両上下方向においては、マウント部43の上面から車両下方に向かって形成されている。なお、溝46は、マウント部43の下面まで貫通していない。
【0040】
車両の重量に起因する位置エネルギーは車両下方に向かって発生しているので、衝突時には、インシュレータ締結孔45において車両の下方に荷重が加わることになる。そのため、加わる加重に対する応力は、車両の上側に向かって発生することになる。
【0041】
マウント部43において溝46を車両上側に設けることにより、衝突時には、溝46により脆弱になったマウント部43の上側において比較的大きな応力が発生するので、マウント部43は溝46の近傍にて破断しやすくなる。このように、収容部41と比較して溝46が設けられたマウント部43が破断しやすくなるので、制御装置2を覆う収容部41の破断を抑制できる。そのため、収容部41が破損して制御装置2が露出してしまうおそれを低減することができる。
【0042】
なお、本実施形態においては、溝46を、マウント部43において、インシュレータ締結孔45に対して車両後方かつ図左側方の領域、かつ、車両上方に設ける例を示したがこれに限らない。溝46は、マウント部43においてインシュレータ締結孔45の近傍に設けられていれば、収容部41の破断が抑制されるので制御装置2の露出を抑制できる。したがって、溝46は、インシュレータ締結孔45に対して車両前方、図右側方、及び、車両下方などに設けられてもよい。
【0043】
図6は、第1実施形態の変形例のモータユニット100の断面図である。
【0044】
この変形例によれば、モータ1は固定部12を有さず、制御装置2はモータ筐体11の端面に直接固定されるとともに、ブラケット4のフランジ42はモータ筐体11に固定される。このように構成されても、モータ筐体11の端面と、フランジ42及び収容部41の内面とにより構成されるスペースに、制御装置2を配置することができる。
【0045】
第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0046】
第1実施形態のモータユニット100は、モータ1と、モータ筐体11の端面に配置されるモータ1の制御装置2と、一端に開口を備える収容部41を有するブラケット4と、を有する。ブラケット4は、一端の開口がモータ筐体11の端面と接触するように固定され、他端が車両のフレーム5と固定される。
【0047】
仮に、制御装置2のケースをモータ筐体11に取り付けるとともに、モータ筐体11とブラケット4とをボルトで締結する場合には、制御装置2の上方にブラケット4が位置してしまうので、モータユニット100には制御装置2の上部にブラケット4のスペースが必要になる。本実施形態においては、制御装置2をまたぐようにブラケット4が設けられず、モータ筐体11の端面にブラケット4が固定されるので、モータユニット100の上部のスペースが広くなり、車両設計の自由度を向上させることができる。
【0048】
また、ブラケット4は板状に構成されているので固有振動が発生するおそれが高い。仮に、制御装置2をまたぐようにモータ筐体11とフレーム5とをブラケット4により固定すると、ブラケット4の板状部分は車両の側面方向(軸方向)に長くなり、固有振動が発生しやすくなる。これに対して、本実施形態においては、板状に構成されるマウント部43においてのみ固有振動が発生する、すなわち、収容部41とフレーム5との間のみが板状に構成されるので、固有振動の発生を抑制できる。このように、固有振動の発生箇所を短くできるので、車両騒音を低減することができる。さらに、マウント部43を車両側方に短く構成することにより、マウント部43の剛性を向上させることができる。
【0049】
また、一般に、制御装置2を覆うケースは薄肉で成型される。仮に、制御装置2のケースをモータ筐体11に取り付けるとともに、制御装置2のケースとブラケット4とをボルトで締結してしまうと、走行時に発生するトルク反力や路面の凹凸に起因する荷重が加わるので、ボルトの締結部において応力が発生し、金属疲労により破損するおそれがある。しかしながら、本実施形態では、ブラケット4と制御装置2のケースとが一体に成型されているので、応力が分散され、応力集中に起因する金属疲労による破損を抑制することができる。
【0050】
第1実施形態のモータユニット100は、ブラケット4の収容部41は、断面が矩形であり、車両の前後方向に配置され上下方向に延在する板部41B−2、41B−4の幅L1は、車両の上下方向に配置され前後方向に延在する板部41B−1、41B−3の幅L2よりも、幅広に構成されている。
【0051】
車両の走行状態においては、不整地路面の凹凸や、整地路面であってもマンホールや高速道路のつなぎ目、もしくは道路脇の縁石に乗り上げる等、車両には上下方向の荷重が頻繁に発生する。そのため、ブラケット4は、車両の前後方向よりも上下方向に曲がらないように構成する必要がある。なお、車両の軽量化を図るためには、ブラケット4において必要以上の剛性が発生しないことが好ましい。
【0052】
車両の上下方向に配置される板部41B−1、41B−3は、主に、その厚さ方向である車両の前後方向に働く荷重を支持する。車両の前後方向に配置される板部41B−2、41B−4は、主に、車両の上下方向に働く荷重を支持する。そこで、板部41B−2、41B−4を板部41B−1、41B−3よりも幅広に構成することで、上下方向の荷重に起因するブラケット4の曲げを抑制することができるので、走行時に主に上下方向に加わる制御装置2への負荷を低減することができる。
【0053】
第1実施形態のモータユニット100によれば、ブラケット4は、マウント部43において車両のフレーム5との固定に用いられインシュレータ締結孔45の近傍に設けられる溝46を有する。
【0054】
例えば、車両が走行中に他の車と衝突してしまう場合などには、衝突などによって異常な荷重が加わると、ブラケット4が破損してしまうおそれがある。しかしながら、制御装置2を収容する収容部41が破損してしまうと、制御装置2が露出してしまうことになるので好ましくない。しかしながら、本実施形態においては、マウント部43のインシュレータ締結孔45の近傍に、溝46が設けられることになり脆弱になっている。そのため、ブラケット4に異常な荷重が加わる場合には、マウント部43の脆弱なインシュレータ締結孔45の近傍が破損するので、収容部41が損傷して制御装置2が露出することが抑制される。
【0055】
第1実施形態によれば、溝46は、マウント部43を上方から見た場合に、インシュレータ締結孔45に対して、車両の後方、かつ、フレーム5に向かう車両の外側に設けられている。
【0056】
モータ1は比較的重量が重いため、モータユニット100の重心はマウント部43のインシュレータ締結孔45よりも車両内側に位置する。そのため、衝突時には、インシュレータ締結孔45において車両の内側に荷重が加わる。さらに、車両には進行方向である車両前方に向かって運動エネルギーが発生しているので、衝突時には、インシュレータ締結孔45において車両の前方に荷重が加わる。したがって、衝突時には、インシュレータ締結孔45において、車両の内側かつ前方に荷重が加わることになる。
【0057】
インシュレータ締結孔45においては、加重と反対方向に応力が発生するので、応力は車両の外側かつ後方に向かって発生することになる。マウント部43は溝46が設けられた車両の外側かつ後方が脆弱であるため、この脆弱なマウント部43は溝46の近傍に比較的大きな応力が発生し、破断しやすい。そのため、ブラケット4に異常な荷重が加わる場合には、マウント部43の脆弱なインシュレータ締結孔45の近傍が破損するので、収容部41が損傷して制御装置2が露出することが抑制される。
【0058】
なお、車両が後方から別の車両に衝突される場合には、車両の後方に向かって荷重が加わる。また、モータユニット100の重心は車両内側に位置するので、衝突時には車両の内側に荷重が加わる。そのため、衝突時には、荷重は車両の内側かつ後方に加わるので、応力は車両の外側かつ前側に向かって発生する。マウント部43には車両の内側かつ前方には溝46が設けられていないので、ブラケット4は破損しにくく、衝突後であっても車両は自走できることになる。
【0059】
第1実施形態によれば、マウント部43において溝46は車両の上方に設けられている。
【0060】
ここで、車両の重量に起因する位置エネルギーは車両下方に向かって発生している。そのため、インシュレータ締結孔45において車両下方に荷重が加わることになり、この加重に対する応力は車両の上側に向かって発生することになる。マウント部43において溝46を車両上側に設けることにより、衝突時には溝46を設けることにより脆弱になったマウント部43の上側において、比較的大きな応力が発生して破断しやくなる。そのため、収容部41が破損して制御装置2が露出してしまうおそれを低減することができる。
【0061】
(第2実施形態)
第1実施形態においては、ブラケット4の収容部41が、モータ1の一部である固定部12に固定される例について説明した。第2実施形態においては、ブラケット4の収容部41が、モータ1とは別に設けられる固定部材に固定される例について説明する。
【0062】
図7は、第2実施形態のモータユニット100の断面斜視図である。
【0063】
第2実施形態のモータユニット100は、図1に示された第1実施形態のモータユニット100と比較すると、ブラケット4の収容部41は、モータ1の固定部12ではなく、モータ1とは異なる固定部材8に固定される点が異なる。
【0064】
固定部材8は、第1実施形態の固定部12と同様に、一面に開口を備える箱状の部材であり、底面8Aと4つの側面8Bとにより構成される。底面8Aは、図左側部の一面がモータ筐体11と固定されるとともに、図右側部にある他の面に制御装置2が固定される。4つの側面8Bは、軸方向、すなわち、車両左側方に向かうように延在する。なお、固定部材8は、金属や樹脂により構成され、比較的剛性が高いことが望ましい。
【0065】
図8は、図7のモータユニット100のA−A断面図である。
【0066】
この図に示されるように、ブラケット4のフランジ42は、ボルト44を用いて固定部材8に固定される。これにより、固定部材8の底面8A及び側面8Bと、フランジ42と、収容部41の底面41A及び側面41Bとにより、制御装置2が配置される空間が設けられることになる。
【0067】
図9は、第2実施形態の変形例のモータユニット100の断面図である。
【0068】
この変形例によれば、固定部材8は底面8Aのみで構成されており側面8Bを有さず、箱状に構成されていない。このような場合には、制御装置2は、板状の固定部材8に固定されるとともに、ブラケット4のフランジ42は、固定部材8に固定されることになる。このように構成されても、モータ筐体11と収容部41及びフランジ42とによりスペースを構成することができるので、このスペースに制御装置2を配置することができる。
【0069】
第2実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0070】
第2実施形態のモータユニット100によれば、固定部材8をさらに有し、固定部材8は、車両の図左側方の一面においてモータ筐体11の端面に固定され、図右側方の他の面において制御装置2及びブラケット4を固定する。
【0071】
ここで、制御装置2は電子部品であるとともに、流入路13A及び流出路13Bと接続される冷却部21などが設けられているので、振動や負荷が加わるのを抑制することが好ましい。本実施形態のようにモータ1とブラケット4との間に固定部材8が設けられることにより、モータ1と固定部材8との固定面、及び、固定部材8とブラケット4との固定面のそれぞれにおいて、走行時に発生するトルク反力や路面凹凸に起因する荷重が減衰することになるので、制御装置2に加わる振動や負荷を抑制することができる。
【0072】
第2実施形態のモータユニット100によれば、制御装置2を固定した固定部材8とブラケット4とを用いて一体化した後に、一体化した固定部材8とブラケット4とを、ボルト44を用いてモータ筐体11に固定する。
【0073】
ここで、固定部材8及びブラケット4は、比較的剛性の高いモータ筐体11に固定することで、ブラケット4の変形を最小限に抑え、制御装置2へ加わる負荷を低減することができる。さらに、ボルト44のみで、ブラケット4、固定部材8、及び、モータ筐体11を共締めすることにより、固定部材8を用いてもボルト44の数が増加しないので、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0074】
第2実施形態のモータユニット100によれば、固定部材8と接続され、モータ1と制御装置2とを配線するコネクタである強電系接続部3をさらに有する。
【0075】
ここで、強電系の接続は、制御装置2にておける固定端子と、モータ1のバスバーとを接続することにより行われる。しかしながら、両者の接続は強固にされるので、車両の上下方向において大きな荷重が加わってしまうと、接続部が変形してしまい損傷するおそれがある。固定部材8は、剛性の高いモータ筐体11と結合されているので変形しにくく、強電系の配線を行うコネクタである強電系接続部3を固定部材8に設けることで、接続部の変形や損傷を抑制することができる。
【0076】
(第3実施形態)
第2実施形態においては、ブラケット4が固定部材8を介してモータ筐体11に固定する場合に、ボルト44をフランジ42側から貫通する例について説明した。本実施形態においては、さらに、固定部材8からフランジ42側に向けてもボルトで固定する例について説明する。
【0077】
図10は、第3実施形態のモータユニット100の断面図である。
【0078】
この図によれば、図9に示した第2実施形態の変形例のモータユニット100と比較すると、さらに、固定部材8からブラケット4のフランジ42へと貫通するボルト48が設けられている。このような構成である場合には、モータユニット100は以下のように製造される。
【0079】
まず、制御装置2を固定部材8に固定する。そして、収容部41に制御装置2が収容されるようにブラケット4を固定部材8に固定し、ボルト48を固定部材8の側からフランジ42へと向かって貫通させて、ボルト48とフランジ42とを螺合させる。このようにすることで、固定部材8とブラケット4とが一体となって制御装置2が収容された制御ユニットが構成される。
【0080】
そして、この制御ユニットをモータ筐体11の端面に配置し、ボルト44をフランジ42側から固定部材8を介してモータ筐体11へと向かって貫通させて、ボルト44とモータ筐体11とを螺合させる。このようにすることで、モータユニット100が構成される。
【0081】
第3実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0082】
第3実施形態のモータユニット100によれば、ブラケット4と固定部材8とが一体となったユニットを、モータ筐体11に固定する。
【0083】
このように構成されることにより、例えば、制御装置2が故障して交換が必要になった場合には、制御装置2とブラケット4と固定部材8とが一体となった制御ユニットを交換すれば良いので、メンテナンスが容易となる。制御装置2は、車両走行時だけでなく製造時においても、水や埃などがかかってはいけない。また、あらかじめ、クリーンルームなどを備える工場で制御ユニットを組み立てておくことで、その後に、車両の組み立て工場や修理工場等などの一般的に微小な埃などの異物が混入しやすい環境では、制御ユニットをモータ筐体11に固定だけすればよい。したがって、制御装置2の固定は防塵性が高い場所で容易に行うことができるので、異物と接触することを抑制でき、制御装置2の故障などが抑制される。
【0084】
なお、各実施形態においては、モータ1は電動モータである例を用いて説明したが、これに限らない。例えば、モータ1の替わりに、外力により駆動することで発電するジェネレータとして構成されてもよい。
【0085】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。また、上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 モータ
2 制御装置
3 強電系接続部
4 ブラケット
7 ネジ
8 固定部材
41 収容部
42 フランジ
43 マウント部
44 ボルト
46 溝
100 モータユニット
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
図9
図10