(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記絶縁層を形成する工程は、前記第2金属層の形成において前記第2金属層の端が前記第1金属層の前記端から3μm以上離れて形成されるように前記第1金属層の前記端を覆う前記絶縁層を形成する、請求項13または14記載の電子部品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0023】
図1(a)は、実施例1に係るコイル部品100の断面図、
図1(b)は、コイル部品100の上面図、
図1(c)は、コイル部品100の下面図である。
図1(a)から
図1(c)のように、実施例1のコイル部品100は、絶縁体部10、コイル素子32、第1金属層(下面電極40)、第3金属層(めっき層60)、及び第2金属層(めっき層62)を備える。第1金属層は、必ずしも絶縁体部の下面のみにあるわけではないが通常の部品と回路基板の接合は部品の下面であることが多いから、以下の説明では下面電極40と記載する。同様に第2金属層、第3金属層についても、必ずしもめっきによって形成された層ではなく、塗布やスパッタ等でも形成できるが、めっきによる形成が一般的であることから、以下の説明では各々めっき層62、めっき層60と記載する。
【0024】
絶縁体部10は、上面12と、下面14と、1対の端面16と、1対の側面18と、を有し、X軸方向に幅方向、Y軸方向に長さ方向、Z軸方向に高さ方向の各辺を有する直方体形状をしている。下面14は実装面であり、上面12は下面14に対向する面である。端面16は上面12及び下面14の1対の辺(例えば短辺)に接続された面であり、側面18は上面12及び下面14の1対の辺(例えば長辺)に接続された面である。絶縁体部10は、例えばガラスを主成分とした絶縁材料又はフェライトなどの磁性体材料で形成されている。絶縁体部10は、例えば幅寸法が0.05mm〜0.3mm、長さ寸法が0.1mm〜0.6mm、高さ寸法が0.05mm〜0.5mmである。なお、絶縁体部10は、完全な直方体形状に限られず、例えば各頂点が丸みを帯びている場合、各稜(各面の境界部のこと)が丸みを帯びている場合、又は各面が曲面を有している場合などでもよい。
【0025】
コイル素子32は、絶縁体部10の内部に設けられている。コイル素子32は、絶縁体部10の内部に設けられた導体30がスパイラル状に繋がることで形成されている。コイル素子32は、所定の周回単位を有すると共に周回単位によって規定される面と略直交するコイル軸を有する。導体30は、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、銀、白金、又はパラジウムなどの金属材料、又はこれらを含む合金金属材料で形成されている。
【0026】
下面電極40は、絶縁体部10の下面14に端面16側に寄って設けられている。絶縁体部10に下面電極40に接する外部電極50が設けられている。ここで、
図2(a)及び
図2(b)を用いて、外部電極50について説明する。
図2(a)及び
図2(b)は、外部電極50を説明する斜視図である。
図2(a)は、絶縁体部10の上面12側から見た斜視図、
図2(b)は、下面14側から見た斜視図である。
図2(a)及び
図2(b)のように、外部電極50は、絶縁体部10の上面12に設けられた上部52と、下面14に設けられて下面電極40に接する下部54と、端面16に設けられた端部56と、側面18に設けられた側部58と、を含む。
【0027】
図1(a)から
図1(c)のように、外部電極50は絶縁体部10の内部に設けられた引出導体34を介して導体30に接続されている。したがって、下面電極40及び外部電極50はコイル素子32に電気的に接続されている。引出導体34は、例えば導体30と同じ材料で形成されている。下面電極40及び外部電極50は、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、銀、白金、又はパラジウムなどの金属材料、又はこれらを含む合金金属材料で形成されている。下面電極40と外部電極50は、同じ金属材料で形成されていてもよいし、異なる金属材料で形成されていてもよい。
【0028】
下面電極40の端42と絶縁体部10の下面14のうちの下面電極40が設けられていない領域とを覆う絶縁層70が設けられている。絶縁層70は、1対の下面電極40の一方から他方にかけて絶縁体部10の下面14を覆って延在している。絶縁層70は、例えばガラスを主成分とした絶縁材料やフェライトなどの磁性体材料や樹脂材料で形成されていて、めっき層62よりも半田濡れ性が低い。絶縁層70は、絶縁体部10と同じ材料で形成されていてもよいし、異なる材料で形成されていてもよい。
【0029】
めっき層60は、下面電極40及び外部電極50を覆って設けられている。めっき層60は、絶縁体部10の下面14における端68が絶縁層70の端72に接していて、下面電極40の端42近傍には設けられていない。めっき層62は、めっき層60を覆って設けられている。めっき層60は、めっき層62よりも高融点金属で構成され且つ半田濡れ性が低い。めっき層60は例えばニッケルめっき層であり、めっき層62は例えば錫めっき層である。めっき層60は、めっき層62の表面に接合する半田に下面電極40及び外部電極50が拡散することを抑制するために設けられている。
【0030】
絶縁体部10の下面14におけるめっき層62の端64は、下面電極40の端42から離れていて、下面電極40に重なっている。めっき層62の端64と下面電極40の端42との間隔Xは、例えば3μm以上となっている。また、めっき層62は絶縁層70の端72を覆って形成されている。すなわち、絶縁層70の端72は下面電極40とめっき層62との間に挟まれていて、めっき層62の端64は絶縁層70を介して下面電極40に重なっている。
【0031】
図3、
図4(a)から
図4(c)、
図5(a)、及び
図5(b)は、実施例1に係るコイル部品100の製造方法を示す図である。コイル部品100は、絶縁性材料からなるグリーンシートを積層する工程を含んで形成される。グリーンシートは、絶縁体部10を構成する絶縁層の前駆体であり、例えばガラスなどを主原料とする絶縁性材料スラリーをドクターブレード法などによりフィルム上に塗布することで形成される。なお、絶縁性材料として、ガラスを主成分とした材料の他、フェライトなどを用いた磁性体を用いてもよい。グリーンシートの厚みは特に限定はなく、例えば5μm〜60μmであり、一例として20μmである。
【0032】
図3のように、複数のグリーンシートG1〜G9を準備する。グリーンシートG1の表面に印刷法(例えばスクリーン印刷法)を用いて導電性材料を印刷することで下面電極40を形成する。次いで、グリーンシートG1の表面に印刷法を用いて絶縁材料を印刷することで下面電極40の一方から他方にかけてグリーンシートG1の表面を覆って延在する絶縁層70を形成する。絶縁層70は、例えば後述するめっき層62の形成においてめっき層62の端64が下面電極40の端42から3μm以上離れて形成されるように、下面電極40の端42を覆って形成する。
【0033】
グリーンシートG4、G5の所定の位置にレーザ加工などによってスルーホールを形成する。次いで、グリーンシートG4〜G6に印刷法を用いて導電性材料を印刷することで導体30、引出導体34、及びビアホール導体36の前駆体を形成する。これらは焼成されることで導体30、引出導体34、及びビアホール導体36となる。
【0034】
グリーンシートG1〜G9を所定の順序で積層し、積層方向に圧力を加えてグリーンシートG1〜G9を圧着する。そして、圧着したグリーンシートG1〜G9をチップ単位に切断した後、所定温度(例えば700℃〜900℃程度)にて焼成を行って、絶縁体部10を形成する。
【0035】
図4(a)のように、絶縁体部10の一方の端面16側を電極ペースト90に浸して電極ペースト90を塗布した後、塗布した電極ペースト90を乾燥させる。
図4(b)のように、絶縁体部10の他方の端面16側を電極ペースト90に浸して電極ペースト90を塗布した後、塗布した電極ペースト90を乾燥させる。その後、所定温度(例えば500℃〜700℃)で焼付けを行う。これにより、
図4(c)のように、絶縁体部10に下面電極40に接する外部電極50が形成される。外部電極50は引出導体34を介して導体30に接続される。したがって、下面電極40及び外部電極50はコイル素子32に電気的に接続される。
【0036】
図5(a)のように、バレル92内に絶縁体部10を投入し、バレルめっき法を用いて絶縁体部10にめっき処理を施す。これにより、
図5(b)のように、下面電極40及び外部電極50を覆うめっき層60と、めっき層60を覆うめっき層62が形成される。めっき層60は、絶縁層70をマスクとしためっき処理によって形成されるため、端68が絶縁層70の端72に接して形成される。めっき層62も絶縁層70をマスクとしためっき処理によって形成されるが、めっき層62はめっき層60を覆って形成されるため、端64は絶縁層70に重なって形成される。また、上述したように、絶縁層70はめっき層62の端64が下面電極40の端42から3μm以上離れて形成されるように下面電極40の端42を覆って形成されるため、めっき層62の端64と下面電極40の端42との間隔Xは3μm以上となる。
【0037】
図6は、比較例1に係るコイル部品1000の断面図である。
図6のように、比較例1のコイル部品1000では、絶縁体部10の表面に設けられた外部電極50によって下面電極40が形成されている。めっき層60は、外部電極50全体を覆って形成されている。すなわち、下面電極40の端42はめっき層60で覆われている。めっき層62は、めっき層60全体を覆って形成されている。したがって、めっき層62の端64は下面電極40の端42近傍で絶縁体部10の下面14に位置している。
【0038】
比較例1のコイル部品1000を回路基板に実装するためにめっき層62を回路基板に半田接合すると、半田は絶縁体部10の下面14におけるめっき層62全体にわたって濡れ広がる。実装後において、コイル部品1000は回路基板の湾曲などによって応力を受けることがあるが、この応力は回路基板に半田接合しているめっき層62の端64近傍に集中し易い。めっき層62の端64は下面電極40の端42近傍で絶縁体部10の下面14に位置して形成されていることから、下面電極40の端42近傍で絶縁体部10にクラック94が発生することがある。
【0039】
一方、実施例1によれば、
図1(a)のように、めっき層62の端64は、下面電極40の端42から離れて下面電極40に重なって設けられている。めっき層62の端64はめっき層62よりも半田濡れ性が低い絶縁層70に接しているため、半田はめっき層62から絶縁層70に向かって広がらず、その結果、応力はめっき層62の端64近傍に集中する。しかし、めっき層62の端64は下面電極40に重なって設けられているため、応力は絶縁体部10よりも硬度が小さく且つ展延性が高い下面電極40で吸収されるようになり、絶縁体部10への影響が抑制される。したがって、絶縁体部10に比較例1のクラック94のようなクラックが発生することを抑制できる。
【0040】
また、実施例1によれば、
図1(a)のように、めっき層62の端64は絶縁層70を介して下面電極40に重なっている。めっき層62の端64が絶縁層70に重なっていることで、めっき層62に印加された応力を絶縁層70に分散させることができる。このため、絶縁体部10にクラックが発生することを抑制できる。また、絶縁層70は下面電極40の一方から他方にかけて絶縁体部10の下面14を覆って延在しているため、絶縁層70に分散した応力が絶縁体部10の一部に集中することが抑制される。したがって、この点からも、絶縁体部10にクラックが発生することを抑制できる。
【0041】
めっき層62の端64は、下面電極40の端42から3μm以上離れていることが好ましい。このことを、発明者が行った実験に基づいて説明する。発明者は、めっき層62の端64と下面電極40の端42との間隔Xの長さを変えた複数の試料を作製して、たわみ試験を行った。たわみ試験は、試料を実装基板の上面に半田を用いて実装し、実装基板の下面から力を加えて実装基板をたわませ、そのときに試料にクラックが発生するか否かを試験することで行った。たわみ試験を行った試料の大きさは、幅が0.2mm、長さが0.4mm、高さが0.2mmである。また、絶縁体部10はガラスを主成分とした絶縁材料で形成し、下面電極40は銀を主成分とする金属材料で形成し、めっき層60はニッケルめっき層とし、めっき層62は錫めっき層とした。
【0042】
表1は、実装基板のたわみ量を3mmにした場合での試験結果を示している。なお、表1において、間隔Xが正の場合は、
図1(a)のように、下面電極40の端42がめっき層62の端64よりも突き出ている場合であり、間隔Xが負の場合は、反対に、めっき層62の端64が下面電極40の端42よりも突き出ている場合である。
【表1】
【0043】
表1のように、めっき層62の端64と下面電極40の端42との間隔Xが−10μmの場合では30チップ中17チップで絶縁体部10にクラック94が発生した。間隔Xが−5μmの場合では30チップ中15チップでクラック94が発生し、間隔Xが0μmの場合では30チップ中5チップでクラック94が発生し、間隔Xが2μmの場合では30チップ中1チップでクラック94が発生した。一方、間隔Xが3μm、5μm、10μm、15μmでは、30チップ全てで絶縁体部10にクラックが発生しなかった。
【0044】
間隔Xが3μm、5μm、10μm、15μmのときにクラックが発生しなかったのは上述した理由によるものと考えられる。すなわち、めっき層62の端64が下面電極40に重なって位置しているため、めっき層62の端64にたわみによる応力が集中しても、この応力は絶縁体部10よりも硬度が小さく且つ展延性が高い下面電極40で吸収されて絶縁体部10への影響が抑えられる。これにより、絶縁体部10にクラックが発生することが抑制されたものと考えられる。また、間隔Xが2μmのときにクラック94が発生したのは、めっき層62の端64が下面電極40の端42近傍に位置するため、めっき層62の端64に集中した応力が下面電極40の端42まで影響を及ぼし、その結果、絶縁体部10にクラック94が発生したものと考えられる。なお、試料の大きさや、各構成部の材料及び厚さなどを変えた場合でも同様の結果が得られると考えられる。また、絶縁体部10と下面電極40の硬度は、例えばビッカース硬度やマクロビッカース硬度で測定することができ、また、その他の測定法で測定することもできる。
【0045】
この実験結果から、絶縁体部10にクラックが発生することを効果的に抑制する点から、めっき層62の端64が下面電極40の端42から3μm以上離れて設けられることが好ましい。
【0046】
絶縁体部10にクラックが発生することを抑制する点からは、めっき層62の端64と下面電極40の端42との間隔Xは、5μm以上の場合が好ましく、10μm以上の場合がより好ましく、15μm以上の場合がさらに好ましい。一方、めっき層62が回路基板に接合する接合面積が小さくなることを抑制する点からは、めっき層62の端64と下面電極40の端42との間隔Xは、15μm以下の場合が好ましく、10μm以下の場合がより好ましく、5μm以下の場合がさらに好ましい。
【0047】
また、実施例1によれば、
図3及び
図4(a)から
図4(c)で説明したように、絶縁体部10の内部にコイル素子32を形成し、絶縁体部10の下面14にコイル素子32に電気的に接続された下面電極40を形成する。絶縁体部10の下面14に下面電極40の端42を覆う絶縁層70を形成する。
図5(a)及び
図5(b)で説明したように、絶縁層70をマスクに、下面電極40を覆うめっき層60と、めっき層60を覆うめっき層62と、を形成する。このような製造方法で形成されたコイル部品100は、めっき層62に応力が印加されて端64近傍に応力が集中した場合でも、この応力は下面電極40で吸収されるようになるため、絶縁体部10にクラックが発生することを抑制できる。
【0048】
また、
図3で説明したように、絶縁層70を形成する際には、めっき層62の端64が下面電極40の端42から3μm以上離れて形成されるように下面電極40の端42を覆う絶縁層70を形成することが好ましい。これにより、表1で説明したように、絶縁体部10にクラックが発生することを効果的に抑制できる。
【0049】
図7(a)から
図7(c)は、実施例1の変形例1に係るコイル部品110から変形例3に係るコイル部品130の下面図である。
図7(a)の変形例1のコイル部品110のように、絶縁体部10の下面14に設けられた絶縁層70は、1対の下面電極40の一方から他方にかけて延在してなく途中で途切れていてもよい。
図7(b)の変形例2のコイル部品120及び
図7(c)の変形例3のコイル部品130のように、下面電極40の端42の形状は、絶縁体部10の下面14を平面視したときに、直線形状である場合に限らず曲線形状である場合でもよい。下面電極40の端42が曲線形状をしている場合は、直線形状をしている場合に比べて長くなるため、応力が分散し易くなる。下面電極40の端42が曲線形状をしている場合、最も突き出た先端部分に応力が集中し易くなるため、めっき層62の端64と下面電極40の端42との間隔Xは、下面電極40の最も突き出た先端部分とそれに対応するめっき層62の端64との間隔となる。
【実施例2】
【0050】
図8(a)は、実施例2に係るコイル部品200の断面図、
図8(b)は、コイル部品200の上面図、
図8(c)は、コイル部品200の下面図である。
図8(a)から
図8(c)のように、実施例2のコイル部品200では、絶縁体部10の下面14に絶縁層70が設けられていない。下面電極40は、めっき層62よりも高融点金属で構成され且つ半田濡れ性が低く、例えばニッケルで形成されている。言い換えると、めっき層62は、下面電極40よりも低融点金属で構成され且つ半田濡れ性が高い。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0051】
図9(a)及び
図9(b)は、実施例2に係るコイル部品200の製造方法を示す図である。まず、実施例1の
図3、
図4(a)から
図4(c)、
図5(a)、及び
図5(b)で説明した製造工程を実施する。これにより、
図9(a)のように、絶縁体部10の下面14において、下面電極40の端42を覆う絶縁層70が形成されると共に、絶縁層70の外側にめっき層62が形成される。
図9(b)のように、絶縁層70を剥離する。これにより、実施例2のコイル部品200が形成される。
【0052】
実施例2によれば、下面電極40の端42はめっき層60で覆われてなく、下面電極40はめっき層62よりも高融点金属で構成され且つ半田濡れ性が低くなっている。下面電極40の半田濡れ性がめっき層62よりも低いことで、めっき層62が半田接合された場合でも、半田はめっき層62から下面電極40に向かって濡れ広がり難い。したがって、めっき層62に応力が印加された場合には、応力は下面電極40に重なって設けられためっき層62の端64近傍に集中するようになる。このため、めっき層62の端64に集中した応力は下面電極40で吸収されるようになり、絶縁体部10にクラックが発生することを抑制できる。また、コイル部品200を回路基板に実装した場合、絶縁体部10がめっき層60の厚さ分だけ回路基板から離間されるので、絶縁体部10の下面14への洗浄性が向上し、半田フラッシュによるモールド樹脂へのクラックの発生を抑制できる。また、絶縁体部10の下面14側にモールド樹脂が入り込み易くなる。
【0053】
なお、実施例2では、下面電極40がニッケルで形成されている場合を例に示したが、めっき層62よりも高融点金属で構成され且つ半田濡れ性が低ければ、その他の金属で形成されている場合でもよい。
【実施例3】
【0054】
図10(a)は、実施例3に係るコイル部品300の断面図、
図10(b)は、コイル部品300の上面図、
図10(c)は、コイル部品300の下面図である。
図10(a)から
図10(c)のように、実施例3のコイル部品300では、絶縁体部10の下面14に絶縁層70が設けられてなく、めっき層60は下面電極40の端42を含む全体を覆っている。その他の構成は実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0055】
図11、
図12(a)から
図12(c)、
図13(a)、及び
図13(b)は、実施例3に係るコイル部品300の製造方法を示す図である。
図11のように、複数のグリーンシートG1〜G9を準備する。実施例1の
図3と異なる点は、グリーンシートG1の表面に下面電極40を形成するだけで、絶縁層70は形成していない点である。この点以外は、実施例1の
図3で説明した処理と同じ処理を行う。
【0056】
次いで、実施例1の
図4(a)及び
図4(b)で説明した処理を行い、
図12(a)のように、絶縁体部10に下面電極40に接する外部電極50を形成する。次いで、実施例1の
図5(a)で説明したバレルめっき法を用いて絶縁体部10にめっき処理を施し、
図12(b)のように、下面電極40及び外部電極50を覆うめっき層60を形成する。次いで、
図12(c)のように、絶縁体部10の下面14に、下面電極40の端42を覆うようにめっき層60を覆う絶縁層96を塗布によって形成する。絶縁層96は、例えばレジスト膜である。絶縁層96は、例えば後述するめっき層62の形成においてめっき層62の端64が下面電極40の端42から3μm以上離れて形成されるように、めっき層60を覆って形成される。
【0057】
絶縁層96を形成した後、実施例1の
図5(a)で説明したバレルめっき法を用いて絶縁体部10にめっき処理を施し、
図13(a)のように、めっき層60を覆うめっき層62を形成する。次いで、
図13(b)のように、絶縁層96を剥離する。めっき層62の形成においてマスクとして用いた絶縁層96は、めっき層62の端64が下面電極40の端42から3μm以上離れて形成されるようにめっき層60を覆って形成されているため、
図10(a)のように、めっき層62の端64と下面電極40の端42との間隔Xは3μm以上となる。
【0058】
実施例3によれば、めっき層60は下面電極40の端42を含む全体を覆って設けられている。めっき層60はめっき層62よりも高融点金属で構成され且つ半田濡れ性が低いため、めっき層62が半田接合された場合でも、半田はめっき層62からめっき層60に向かって濡れ広がり難い。したがって、実施例2と同様に、絶縁体部10にクラックが発生することを抑制できる。
【0059】
また、実施例3によれば、
図11及び
図12(a)で説明したように、絶縁体部10の内部にコイル素子32を形成し、絶縁体部10の下面14にコイル素子32に電気的に接続された下面電極40を形成する。
図12(b)で説明したように、下面電極40を覆うめっき層60を形成する。
図12(c)で説明したように、絶縁体部10の下面14に下面電極40の端42を覆うようにめっき層60を覆う絶縁層96を形成する。
図13(a)で説明したように、絶縁層96をマスクに、めっき層60を覆うめっき層62を形成する。このような製造方法で形成されたコイル部品300は、絶縁体部10にクラックが発生することを抑制できる。また、絶縁層96をマスクとしてめっき層62を形成するため、めっき層62の端64が直線状に形成され易く、回路基板に実装するときのセルフアライメント効果が大きくなる。また、1対のめっき層62の端64の長さを同程度に調整し易いため、マンハッタン現象を抑制することができる。
【0060】
また、
図12(c)で説明したように、絶縁層96を形成する際には、めっき層62の端64が下面電極40の端42から3μm以上離れて形成されるようにめっき層60を覆う絶縁層96を形成することが好ましい。これにより、表1で説明したように、絶縁体部10にクラックが発生することを効果的に抑制できる。
【0061】
なお、めっき層60はニッケルめっき層である場合に限られず、めっき層62よりも高融点金属で構成され且つ半田濡れ性が低ければ、その他の金属めっき層であってもよく、めっきによらない金属層であってもよい。
【実施例4】
【0062】
図14(a)は、実施例4に係るコイル部品400の断面図、
図14(b)は、コイル部品400の上面図、
図14(c)は、コイル部品400の下面図である。
図14(a)から
図14(c)のように、実施例4のコイル部品400では、絶縁体部10の上面12に外部電極50に接した上面電極44(第4金属層)が設けられている。絶縁層74が、絶縁体部10の上面12に設けられていて、上面電極44の端46を覆っている。めっき層60は、下面電極40、上面電極44、及び外部電極50を覆って設けられている。めっき層62は、上面電極44を覆って設けられていて、絶縁体部10の上面12における端66が上面電極44に重なって設けられている。例えば、めっき層62の端66と上面電極44の端46との間隔Yは3μm以上となっている。その他の構成は実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0063】
図15は、実施例4に係るコイル部品400の製造方法を示す図である。
図15のように、複数のグリーンシートG1〜G9を準備する。実施例1の
図3と異なる点は、グリーンシートG9の表面に、印刷法によって、上面電極44と上面電極44の端46を覆う絶縁層74とを形成する点である。例えば、絶縁層74は、例えば後述するめっき層62の形成においてめっき層62の端66が上面電極44の端46から3μm以上離れて形成されるように、上面電極44の端46を覆って形成される。この点以外は、実施例1の
図3で説明した処理と同じ処理を行う。
【0064】
次いで、実施例1の
図4(a)及び
図4(b)で説明した処理を行い、絶縁体部10に下面電極40及び上面電極44に接する外部電極50を形成する。次いで、実施例1の
図5(a)で説明したバレルめっき法を用いて絶縁体部10にめっき処理を施し、めっき層60とめっき層62を形成する。これにより、
図14(a)から
図14(c)のように、絶縁体部10の下面14におけるめっき層62の端64は下面電極40に重なって設けられ、絶縁体部10の上面12における端66は上面電極44に重なって設けられる。例えば、めっき層62の端64が下面電極40の端42から3μm以上離れて形成され、端66が上面電極44の端46から3μm以上離れて形成される。
【0065】
実施例4によれば、絶縁体部10の上面12にコイル素子32に電気的に接続された上面電極44が設けられている。めっき層62は、下面電極40と上面電極44を覆って設けられている。めっき層62は、端64が下面電極40に重なって設けられ且つ端66が上面電極44に重なって設けられている。これにより、絶縁体部10の下面14側を回路基板に実装する場合に限らず、上面12側を回路基板に実装する場合でも、絶縁体部10にクラックが発生することを抑制できる。
【0066】
絶縁体部10にクラックが発生することを効果的に抑制するために、めっき層62の端66は、上面電極44の端46から3μm以上離れて設けられることが好ましい。
【0067】
なお、絶縁体部10の側面18に外部電極50によって形成された側面電極に対しても、絶縁体部10の側面18におけるめっき層62の端を側面電極に重なるように設けてもよく、この場合、側面電極の端から3μm以上離れて設けることが好ましい。これにより、側面18側を回路基板に実装する場合でも、絶縁体部10にクラックが発生することを抑制できる。すなわち、絶縁体部10の上面12、下面14、端面16、及び側面18の少なくとも1つの面において、めっき層62の端をこの面に設けられた電極に重なるように設けてもよく、電極の端から3μm以上離れて設けるようにすることが好ましい。
【実施例5】
【0068】
図16(a)は、実施例5に係るコイル部品500の断面図、
図16(b)は、コイル部品500の上面図、
図16(c)は、コイル部品500の下面図である。
図16(a)から
図16(c)のように、実施例5のコイル部品500では、絶縁体部10に外部電極50が設けられていない。導体30は、絶縁体部10を高さ方向(Z軸方向)に延在する引出導体34を介して下面電極40に接続されている。その他の構成は実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0069】
図17は、実施例5に係るコイル部品500の製造方法を示す図である。
図17のように、複数のグリーンシートG1〜G9を準備する。実施例1の
図3と異なる点は、グリーンシートG2〜G5にスルーホール導体である引出導体34を形成する点である。この点以外は、実施例1の
図3で説明した処理と同じ処理を行う。次いで、実施例1の
図5(a)で説明したバレルめっき法を用いて絶縁体部10にめっき処理を施し、めっき層60とめっき層62を形成する。
【0070】
実施例5のように、絶縁体部10の下面14にのみ下面電極40が設けられ、その他の面には電極が設けられていない場合でもよい。
【実施例6】
【0071】
図18は、実施例6に係るコイル部品600の断面図である。
図18のように、実施例6のコイル部品600では、めっき層60が設けられてなく、めっき層62は下面電極40に接して設けられている。下面電極40は、めっき層62よりも高融点金属で構成され且つ半田濡れ性が低く、例えばニッケルで形成されている。その他の構成は実施例5と同じであるため説明を省略する。
【0072】
実施例6のコイル部品600は、実施例5のコイル部品500の製造方法においてめっき層60を形成しない点以外は同じ処理によって形成できる。すなわち、
図17で説明した方法と同じ方法によって、絶縁体部10の内部にコイル素子32を形成し、絶縁体部10の下面14にコイル素子32に電気的に接続された下面電極40を形成する。絶縁体部10の下面14に下面電極40の端42を覆う絶縁層70を形成する。そして、
図5(a)で説明したバレルめっき法を用いて、絶縁層70をマスクに、下面電極40を覆うめっき層62を形成する。
【0073】
実施例1から実施例5では、下面電極40とめっき層62の間に、下面電極40を覆ってめっき層62よりも高融点金属で構成され且つ半田濡れ性の低いめっき層60が設けられ、めっき層62はめっき層60を介して下面電極40を覆っている場合を例に示した。しかしながら、実施例6のように、下面電極40がめっき層62よりも高融点金属で構成され且つ半田濡れ性が低い(すなわち、めっき層62が下面電極40よりも低融点金属で構成され且つ半田濡れ性が高い)場合には、めっき層60が設けられてなく、めっき層62は下面電極40を直接覆っていてもよい。なお、実施例6において、絶縁層70が設けられていない場合でもよい。
【実施例7】
【0074】
図19は、実施例7に係るコイル部品700の断面図である。
図19のように、実施例7のコイル部品700では、絶縁体部10の表面に設けられた外部電極50によって下面電極40が形成されている。その他の構成は実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0075】
実施例1のように外部電極50とは別に下面電極40が設けられていてもよいし、実施例7のように外部電極50によって下面電極40が形成されていてもよい。
【実施例8】
【0076】
図20は、実施例8に係るコンデンサ部品800の断面図である。
図20のように、実施例8のコンデンサ部品800では、絶縁体部10の内部に設けられた導体30によってコンデンサ素子38が形成されている。コンデンサ部品800では、絶縁体部10は、例えばチタン酸バリウム(BaTiO
3)、チタン酸カルシウム(CaTiO
3)、又はチタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)などで形成されている。導体30は、例えば銅、銀、ニッケル、又はパラジウムなどの金属材料で形成されている。その他の構成は実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0077】
実施例1のように絶縁体部10の内部にコイル素子32が形成されていてもよいし、実施例7のようにコンデンサ素子38が形成されていてもよい。また、絶縁体部10の内部にその他の素子、例えばサーミスタ素子やバリスタ素子などが形成されていてもよい。サーミスタ素子及びバリスタ素子は、一例としてコンデンサ素子38と同様の内部電極構造を取ることができる。
【実施例9】
【0078】
図21は、実施例9に係る電子装置900の断面図である。
図21のように、実施例9の電子装置900は、回路基板80の上面に設けられた電極82に、実施例1のコイル部品100のめっき層62が半田84によって接合されている。これにより、コイル部品100が回路基板80に実装されている。
【0079】
実施例9によれば、回路基板80の電極82にコイル部品100のめっき層62が半田84によって接合されている。このため、めっき層62に応力が掛かることがあるが、実施例1で説明したように、めっき層62に応力が掛かった場合でも絶縁体部10にクラックが発生することを抑制できる。
【0080】
なお、実施例9では、回路基板80上に実施例1のコイル部品100が実装される場合を例に示したが、実施例2から実施例7のコイル部品が実装されてもよいし、実施例8のコンデンサ部品が実装されてもよい。
【0081】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。