(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記筒部の前記出力側の端部分には、その中心穴に向かって前記反出力側に傾斜するテーパー面が設けられていることを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか一項に記載のモータ。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明を適用したポンプ装置およびモータの実施形態を説明する。
【0023】
(ポンプ装置)
図1は本発明を適用したポンプ装置の外観斜視図である。
図2はポンプ装置の断面図である。
図3はモータを出力軸が突出している側から見た場合の斜視図である。
図4はモータの底面図である。
図1および
図2ではケース体を点線で示す。
【0024】
図1に示すように、ポンプ装置1は、モータ2と、モータ2に取り付けられたケース体3とを備える。
図2に示すように、モータ2とケース体3との間にはポンプ室4が区画されている。ポンプ室4内にはインペラ5が配置されている。インペラ5は、モータ2の側(ポンプ室4の外側)からポンプ室4内に延びるモータ2の出力軸6の軸端部分に取り付けられている。ケース体3には、流体の吸入口7と吐出口8とが設けられる。吸入口7はモータ2の出力軸6の軸線Lと重なる位置に設けられている。吐出口8は軸線Lと直交する方向に設けられている。モータ2を駆動してインペラ5を回転させると、吸入口7から吸入された水などの流体はポンプ室4を介して吐出口8から吐出される。
【0025】
本明細書では、モータ2の出力軸6の軸線L方向の一方側を図面の上下に対応させて上
側L1、上方L1とし、他方側を下側L2、下方L2とする。上側L1は出力軸6においてインペラ5が取り付けられている側であり、モータ2の出力側である。下側はモータ2の反出力側である。また、軸線Lと直交する方向を径方向とし、軸線L回りを周方向とする。
図1はポンプ装置1を下側L2から見た外観斜視図である。出力軸6の軸線Lはモータ2のロータ10の回転中心線であり、軸線L方向は回転中心線方向である。
【0026】
モータ2はDCブラシレスモータである。
図2に示すように、モータ2は出力軸6を備えるロータ10と、ロータ10の外周側に位置するステータ11と、これらを収納するハウジング12とを備える。
図3に示すように、ハウジング12はステータ11を下側L2から被う樹脂封止部材13(軸受保持部材)と、樹脂封止部材13を上側L1から被うカバー部材14(第2軸受保持部材)とを備える。カバー部材14は樹脂封止部材13に固定される。
図2に示すように、樹脂封止部材13は、ロータ10の出力軸6の下側L2の軸部分を軸線L方向に移動可能および軸線L回りに回転可能に支持する第1軸受部材15を保持する。カバー部材14は、出力軸6の中程を軸線L方向に移動可能および軸線L回りに回転可能に支持する第2軸受部材16を保持する。ロータ10の出力軸6は、カバー部材14を下方L2から上方L1に貫通している。
【0027】
カバー部材14には、ケース体3が上側L1から被せられる。これにより、カバー部材14とケース体3との間にポンプ室4が区画され、出力軸6はポンプ室4の外側からポンプ室4内に延びる状態となる。
図1に示すように、樹脂封止部材13の下端部分からはコネクタ20の一部分が外部に露出している。コネクタ20には、モータ2に電力を供給する外部のケーブル18のケーブル側コネクタ19が下側L2から着脱可能に接続される。ここで、下方L2から上方L1に向かう方向はケーブル側コネクタ19をコネクタ20に挿入する挿入方向であり、上方L1は挿入方向の前方であり、下方L2は挿入方向の後方である。従って、コネクタ20は、ケーブル側コネクタ19の挿入方向の後方の端部分を樹脂封止部材13の下端部分から外部に露出させている。
【0028】
(ロータ)
図5は上側L1から見た場合のモータ2の分解斜視図である。
図6は下側L2から見た場合のモータ2の分解斜視図である。
図7はカバー部材14を取り外した状態のモータ2の分解斜視図である。
図8はロータ10の分解斜視図である。
【0029】
図5に示すように、ロータ10は、出力軸6と、出力軸6を外周側から保持するロータ本体22とを備える。
図7に示すように、ロータ本体22は、出力軸6を囲む環状の磁石23と、出力軸6および磁石23を保持する保持部材24とを備える。磁石23は出力軸6と同軸に配置されており、その外周面にはN極とS極とが周方向において交互に着磁されている。出力軸6はステンレス鋼製である。
図8に示すように、出力軸6は軸線L方向の中央付近に環状溝が形成され、この環状溝にEリング25が固定される。Eリング25は金属製の板状の部材である。Eリング25は保持部材24の上端面に埋め込まれて固定される。
【0030】
また、ロータ本体22は、保持部材24の下端部分に固定された第1軸受板26と、保持部材24の上端部分に固定された第2軸受板27とを備える。第1軸受板26および第2軸受板27は略円環状の金属板であり、本例では、金属製のワッシャーである。
図2に示すように、第1軸受板26は、その中心穴に出力軸6を貫通させた状態で、保持部材24の径方向の中央部分を下側L2から被う。第1軸受板26は軸線Lと直交する姿勢で保持部材24に保持される。
図7に示すように、第2軸受板27は、その中心穴に出力軸6を貫通させた状態でEリング25および保持部材24の径方向の中央部分を上側L1から被う。
図2に示すように、第2軸受板27はEリング25と面接触している。第2軸受板27は軸線Lと直交する姿勢で保持部材24に保持される。
【0031】
(ステータ)
図9(a)はステータ11およびコネクタ20を上側L1から見た場合の斜視図であり、
図9(b)はステータ11およびコネクタ20を下側L2から見た場合の平面図である。
図10(a)、(b)は、コネクタ20および当該コネクタ20と一体のインシュレータ32を上側L1から見た場合の斜視図および下側L2から見た場合の斜視図であり、
図10(c)はコネクタ20および当該コネクタ20と一体のインシュレータ32の断面図である。
【0032】
図9に示すように、ステータ11は、ロータ10の外周側に位置する環状のステータコア31と、ステータコア31にインシュレータ32を介して巻回された複数のコイル33とを備える。複数のコイル33は中心穴を径方向に向けた姿勢で軸線L回りを環状に配列されている。コネクタ20はコイル33およびステータコア31の外周側に位置する。
【0033】
ステータコア31は、磁性材料からなる薄い磁性板が積層されて形成された積層コアである。ステータコア31は、環状部35と、環状部35から径方向の内側に突出する複数の突極部36とを備える。複数の突極部36は等角度ピッチで形成されており、周方向において一定のピッチで配置されている。本例では、複数の突極部36は、軸線Lを中心とする40°の角度ピッチで形成されている。これにより、ステータコア31は9個の突極部36を備える。突極部36の内周側端面36aは、軸線Lを中心とする円弧面であり、ロータ10の磁石23の外周面と僅かなギャップを開けて対向する。
【0034】
各インシュレータ32は樹脂製であり絶縁性を備える。各インシュレータ32は、径方向の両端に鍔部を有する鍔付きの筒状に形成されており、筒状に形成されるインシュレータ32の軸方向とステータ11の径方向とが一致するように突極部36に取り付けられている。すなわち、各インシュレータ32は、
図10(a)に示すように、突極部36が挿入される筒部32aと、筒部32aの内周側の端部分から広がる内周側鍔部32bと、筒部32aの外周側の端部分から広がる外周側鍔部32cとを備える。
図9に示すように、外周側鍔部32cは、ステータコア31の環状部35の上面および下面を、径方向の途中位置まで被う。
【0035】
ここで、
図10に示すように、複数のインシュレータ32のうち、コネクタ20の径方向の内側に位置するインシュレータ32は、コネクタ20のコネクタハウジング41と一体である。すなわち、コネクタ20に最も近いインシュレータ32とコネクタハウジング41とは樹脂による一体成形品である。コネクタハウジング41と一体に成形されたインシュレータ32は、
図9(b)、
図10に示すように、外周側鍔部32cからステータコア31の環状部35の下端面に沿って外周側に延びてコネクタ20に連続する接続部32dを備える。
【0036】
複数のコイル33のそれぞれは、インシュレータ32を介して複数の突極部36のそれぞれに巻回される。インシュレータ32を介して突極部36に巻回された状態の各コイル33は、径方向の外側(環状部35の側)に向かって上方L1および下方L2のそれぞれに突出している。
【0037】
コイル33は、アルミニウム合金または銅合金からなる導線(コイル線)によって構成される。本例では、アルミニウム合金を銅合金で覆った導線が用いられる。本例では、突極部36、インシュレータ32、およびコイル33の数は9である。モータ2は三相ブラシレスモータであり、9個のコイル33のうちの3個はU相コイルであり、残りの6個のうちの3個はV相コイルであり、残りの3個はW相コイルである。U相コイルとV相コイルとW相コイルとは、周方向においてこの順番に配列されている。なお、他の配置であっ
てもよい。
【0038】
3個のU相コイルは、1本の導線が3個の突極部36に順次巻回されることで形成され、3個のV相コイルは、1本の導線が3個の突極部36に順次巻回されることで形成され、3個のW相コイルは、1本の導線が3個の突極部36に順次巻回されることで形成される。
図9(b)に示すように、U相コイルとV相コイルとW相コイルを構成する3本の導線は、コネクタ20の端子ピン42に接続される。
【0039】
(コネクタ)
コネクタ20は、インシュレータ32と一体に成形されたコネクタハウジング41と、コネクタハウジング41に支持された3本の端子ピン42とを備える。
図9に示すように、コネクタハウジング41は、ステータコア31の外周側に位置する。
【0040】
図10(c)に示すように、コネクタハウジング41は、軸線L方向に延びる枠部43と、枠部43の上側L1の開口を塞ぐ封鎖部44と、枠部43および封鎖部44からステータコア31の側に向かって延びる延設部45を備える。枠部43には、雄型のケーブル側コネクタ19が下側L2から着脱可能に挿入される。延設部45には、インシュレータ32の接続部32dが内周側から連続している。
【0041】
図9(b)に示すように、枠部43は、軸線L方向から見た場合の輪郭形状が長方形であり、長手方向を周方向に向けている。枠部43は、その外周面に、軸線L方向を下側L2から上側L1に向かう方向(ケーブル側コネクタ19の挿入方向)の途中位置から外周側に広がる段部46を備える。段部46は、下側L2から見た場合(挿入方向の後方から見た場合)の形状が環状である。より詳細には、
図10(b)に示すように、枠部43は、周方向に延びて径方向で対向する第1枠板部分47および第2枠板部分48と、第1枠板部分47と第2枠板部分48の周方向の一方側の端を接続する第3枠板部分49と、第1枠板部分47と第2枠板部分48の周方向の他方側の端を接続する第4枠板部分50とを備える。段部46は、第1枠板部分47および第2枠板部分48のうち軸線Lに近い内周側の第1枠板部分47の外周面に設けられた第1段部部分51と、第2枠板部分48、第3枠板部分49および第4枠板部分50の外周面に設けられた第2段部部分52とを備える。第1段部部分51は下側L2を向く第1段部部分端面51aを備え、第2段部部分52は下側L2を向く第2段部部分端面52aを備える。第1段部部分端面51aおよび第2段部部分端面52aは、それぞれ軸線Lと直交する面である。
【0042】
ここで、第1段部部分51は第2段部部分52よりも下側L2に位置する。従って、第1段部部分51の第1段部部分端面51aは、第2段部部分52の第2段部部分端面52aよりも下側L2に位置しているが、
図9(b)に示すとおり、枠部43を軸線L方向から見た場合には、第1段部部分端面51aと、第2段部部分端面52aとは、環状の段部端面46aを構成している。なお、
図10(a)に示すように、第2枠板部分48の外周面には、軸線L方向に延びて第1段部部分端面51aと第2段部部分端面52aとの間を接続する接続段部53が形成されている。同様に第4枠板部分50の外周面には、軸線L方向に延びて第1段部部分端面51aと第2段部部分端面52aとの間を接続する接続段部53が形成されている。各接続段部53は軸線L方向に延びて外周側を向く接続段部端面53aを備える。
【0043】
また、第2枠板部分48における第2段部部分52よりも下側L2であって接続段部端面53aよりも外周側には、ケーブル側コネクタを係止するための係止用開口部54が設けられている。同様に、第4枠板部分50の第2段部部分52よりも下側L2であって接続段部端面53aよりも外周側にも、ケーブル側コネクタを係止するための係止用開口部54が設けられている。各係止用開口部54は矩形の貫通穴であり、ケーブル側コネクタ
にフックが設けられている場合には、このフックが枠部43の周方向の外側から係止用開口部54に係止される。
【0044】
図10(b)に示すように、枠部43の内側には、当該枠部43の内部空間を部分的に3つに区画する2枚の仕切り壁55が設けられている。仕切り壁55は、封鎖部44から下方L2に向かって第3枠板部分49および第4枠板部分50と平行に延びる。
図10(c)に示すように、封鎖部44において仕切り壁55により部分的に区画された各空間内に位置する部分のそれぞれには、軸線L方向に貫通する貫通穴56が設けられている。
【0045】
図9(b)、
図10(b)に示すように、延設部45は、下側L2に突出して枠部43からステータコア31の環状部35の側に延びる2本のリブ58を備える。各リブ58は、枠部43の内側の各仕切り壁55の内周側に位置する。
図10(c)に示すように、各リブ58の下端は、第2段部部分端面52aよりも上側L1に位置する。延設部45において、2本のリブ58の間に位置する部分、2本のリブ58のうち周方向の一方側に位置するリブ58よりも一方側に位置する部分、および、2本のリブ58のうち周方向の他方側に位置するリブ58よりも他方側に位置する部分には、それぞれ軸線L方向に貫通する貫通穴59が設けられている。各貫通穴59は、それぞれ封鎖部44に設けられた各貫通穴56の内周側に位置する。
【0046】
各端子ピン42は、断面形状が四角形の金属線を折り曲げることにより形成されている。
図10(c)に示すように、端子ピン42は、封鎖部44の貫通穴56を上方L1から下方L2に貫通して枠部43の内側を延びる外部接続部61と、外部接続部61の上端から延設部45の上面に沿ってステータコア31の環状部35の側(インシュレータ32の側)に延びる連絡部62と、連絡部62の環状部35の側の端から延設部45の貫通穴59を上方L1から下方L2に貫通して延びるコイル線接続部63と、を備える。各端子ピン42は、封鎖部44の貫通穴56および延設部45の貫通穴59に圧入されている。これにより、3本の端子ピン42は、周方向で等間隔に配列される。
【0047】
仕切り壁55によって枠部43の内側に区画された3つの空間内には、それぞれ各端子ピン42の外部接続部61が位置する。各端子ピン42の外部接続部61は、仕切り壁55によって互いに接触することが防止される。外部接続部61には、ケーブル側コネクタ19がコネクタ20に接続されたときに、ケーブル18に電気的に接続される。また、3本のコイル線接続部63において周方向で隣り合う2本のコイル線接続部63の間には、リブ58が存在する。これにより、各コイル線接続部63は互いに接触することが防止されている。
【0048】
ここで、連絡部62は、外部接続部61とコイル線接続部63との間を軸線Lと直交する方向に延びており、
図2に示すように、軸線Lと直交する方向から見た場合に、ステータコア31と重なる位置にある。従って、コネクタハウジング41に端子ピン42を支持させる際に(貫通穴56および貫通穴59に端子ピン42を圧入する際に)、コネクタハウジング41に軸線Lと傾斜する方向の力が加わって一体成形品であるインシュレータ32とハウジング12との間に変形が生じるような場合でも、ステータコア31の外周側に位置する端子ピン42の連絡部62が支えとなって、その変形が抑制される。
【0049】
図10(c)に示すように、コイル線接続部63は、連絡部62から下側L2に直線状に延びてステータ11の下側L2に達する直線部63aと、直線部63aからステータ11の側に折れ曲がった折曲部63bとを備える。
図9(b)に示すように、折曲部63bの先端は、軸線L方向から見た場合に、ステータコア31の環状部35と重なる。3本の端子ピン42のコイル線接続部63のそれぞれには、U相コイルを構成する導線、V相コイルを構成する導線、W相コイルを構成する導線が接続される。折曲部63bは、コイル
33線が端子ピン42から抜けるのを防止する抜け止め部である。なお、隣り合う2本のコイル線接続部63の間に位置する2本のリブ58は、
図10(c)に示すように、折曲部63bよりも上側L1に位置する。
【0050】
(樹脂封止部材)
図11は樹脂封止部材13および第1軸受部材15の分解斜視図である。
図6、
図7に示すように、樹脂封止部材13は、コイル33、インシュレータ32、および、ステータコア31を下側L2から被う円盤形状の封止部材底部65(反出力側封止部)と、封止部材底部65から上方L1に延びる封止部材筒部66と、封止部材筒部66から外周側に突出するコネクタ封止部67とを備える。樹脂封止部材13は、コイル33、インシュレータ32を被っている。また、樹脂封止部材13は、環状部35の上面の外周縁部分および突極部36の内周側の端部分を除き、ステータコア31を被っている。
【0051】
図11に示すように、封止部材底部65は、ステータコア31の内側でロータ本体22と対向する対向面65aに、第1軸受部材15を保持する軸受部材保持凹部68(軸受部材保持部)を備える。軸受部材保持凹部68は円形の底面68aと、底面68aの外周縁から立ち上がり上方L1に延びる環状内壁面68bを備える。環状内壁面68bの周方向の一部分には、軸線L方向に延びる溝68cが形成されている。また、封止部材底部65は、対向面65aにおける軸受部材保持凹部68の開口縁に、軸受部材保持凹部68の側(軸線L)に向かって下方L2に傾斜するテーパー状の面取り部69を備える。
【0052】
図12(a)は第1軸受部材15を上方L1から見た場合の斜視図であり、
図12(b)は第1軸受部材15を下方L2から見た場合の斜視図である。第1軸受部材15は樹脂製である。
図12に示すように、第1軸受部材15は、出力軸6を貫通させる中心穴を備える筒部71と、筒部71の上端から外周側に広がる鍔部72とを備える。筒部71の外周面の周方向の一部分には、
図12(a)に示すように、軸線L方向に一定幅で延びる溝部73が形成されている。また、筒部71の外周面において軸線Lを間に挟んだ溝部73とは反対側には、
図12(b)に示すように、軸線L方向に一定幅で延びる突出部74が形成されている。溝部73内には第1軸受部材15を射出成形する際に樹脂射出用のゲートが接続されたゲート痕75が形成されている。鍔部72の輪郭は、軸線L方向から見た場合に、直線状に延びる直線輪郭部分72aと、直線輪郭部分72aの両端を接続する円弧の円弧輪郭部分72bとを備えるD字形状である。直線輪郭部分72aは軸線L回りで溝部73と同一の角度位置に設けられている。換言すれば、直線輪郭部分72aは軸線Lを間に挟んで突出部74と反対側に位置する。鍔部72の内周側に位置する筒部71の上端面には、当該筒部71の中心穴に向かって下側L2に傾斜するテーパー面76が設けられている。
【0053】
第1軸受部材15は、突出部74と軸受部材保持凹部68の溝68cとの位置を軸線L回りで一致させた姿勢で筒部71が軸受部材保持凹部68に挿入される。そして、
図7に示すように、鍔部72を上方L1から封止部材底部65の対向面65aに当接させて軸受部材保持凹部68に固定される。第1軸受部材15が軸受部材保持凹部68に固定された状態では、鍔部72の上端面は軸線Lと直交する。筒部71と軸受部材保持凹部68の底面68aとは軸線L方向で離間している。また、第1軸受部材15の突出部74と軸受部材保持凹部68の溝68cとは、第1軸受部材15の軸線L回りの回転を阻止する回止め機構79を構成する。
【0054】
また、第1軸受部材15が軸受部材保持凹部68に固定された状態では、対向面65aにおいて軸受部材保持凹部68の開口縁に設けられたテーパー状の面取り部69と、鍔部72の直線輪郭部分72aとの間に、開口77が形成される。
【0055】
第1軸受部材15によりロータ10を支持する際には、出力軸6の軸端部分が筒部71を貫通する。筒部71は、出力軸6(ロータ10)を軸線L方向に移動可能および軸線L回りに回転可能に支持する。鍔部72はロータ本体22(第1軸受板26)に下側L2から摺接可能である。
図2に示すように、ロータ本体22が鍔部72に摺接したときに、筒部71から下方L2に突出する出力軸6の突出軸部分の先端は、軸受部材保持凹部68の底面68aとは軸線L方向で離間している。
【0056】
軸受部材保持凹部68の内側において、軸受部材保持凹部68の底面68aと、第1軸受部材15の筒部71との間の空間は、グリスなどの潤滑剤82が貯留される第1潤滑剤貯留部81である。ここで、対向面65aの開口77と第1潤滑剤貯留部81とは、筒部71の溝部73と軸受部材保持凹部68の環状内壁面68bとの間の隙間を介して連通している。換言すれば、筒部71の溝部73と軸受部材保持凹部68の環状内壁面68bとの間の隙間は、開口77と第1潤滑剤貯留部81とを連通させる連通路78である。
【0057】
次に、
図6に示すように、封止部材底部65の下面側には、中央部分から下側L2に突出する円柱形状の第1突出部85(突部)と、第1突出部85の外周側で第1突出部85を囲んで下側L2に突出する環状突出部86とが設けられている。第1突出部85と環状突出部86との間には、軸線Lと直交する環状面87が設けられている。環状突出部86は、環状面87から外周側に向かって下側L2に傾斜する環状のテーパー面88と、テーパー面88から軸線Lと直交する方向を外周側に延びる環状端面89とを備える。環状端面89において径方向の外側にコネクタ20が位置する外周縁部分には、第2突出部90が設けられている。
図4に示すように、第2突出部90を軸線L方向から見た形状は周方向に長い矩形形状である。第2突出部90は径方向で第1突出部85とコネクタ20との間に位置する。第2突出部90は第1突出部85よりもコネクタ20に近い位置にある。
【0058】
図2に示すように、第1突出部85は、軸線L方向から見た場合に、軸受部材保持凹部68と重なる。軸受部材保持凹部68の底面68aは第1突出部85の内側に位置する。従って、第1潤滑剤貯留部81は、少なくともその下側部分が第1突出部85の内側に位置する。環状突出部86のテーパー面76は、各突極部36に巻回されたコイル33の下側L2の傾斜に沿って設けられている。第2突出部90は、軸線L方向から見た場合にステータコア31の環状部35の外周縁部分と重なるとともに、コネクタ20の端子ピン42におけるコイル線接続部63の折曲部63bの先端と重なる。環状突出部86の環状端面89は第1突出部85の下側L2の円形端面85aよりも上方L1に位置する。第2突出部90の矩形端面90a(下端面)は、軸線L方向で第1突出部85の円形端面85aと同じ高さ位置にあり、軸線Lと直交する一つの仮想面S上に位置する。
【0059】
次に、封止部材筒部66は、
図7に示すように、下側L2から上方L1に向かって大径筒部分91と大径筒部分91よりも外径寸法の小さい小径筒部分92とを備える。
図2に示すように、大径筒部分91の外径はステータコア31の環状部35の外径よりも大きく、小径筒部分92の外径はステータコア31の環状部35の外径よりも小さい。
【0060】
図7に示すように、封止部材筒部66における大径筒部分91と小径筒部分92との境界部分には、ステータコア31の環状部35の外周縁部分を樹脂封止部材13から上方L1に露出させる複数の円弧状開口部93が設けられている。また、樹脂封止部材13における円弧状開口部93の外周側には、軸線Lと直交する環状端面94が設けられている。円弧状開口部93から露出するステータコア31の環状部露出部分35aと環状端面94とは軸線Lと直交する同一平面上に位置する。大径筒部分91の上端部分には、等角度間隔で外周側に突出する4つの係止突起95が設けられている。
【0061】
封止部材筒部66の内周面は、下方L2から上方L1に向かって小径内周面部分96と
、小径内周面部分96よりも内径寸法の大きい大径内周面部分97と、を備える。小径内周面部分96の曲率半径は突極部36の内周側端面36aの曲率半径とほぼ等しい。小径内周面部分96にはステータコア31の各突極部36の内周側端面36aを内周側に露出させる複数の開口部98が設けられている。また、小径内周面部分96には、各突極部36の内周側の端部分を上方L1に露出させる切欠き部99が設けられている。各切欠き部99は、開口部98の縁から小径内周面部分96の上端縁まで軸線L方向に延びる溝状に形成されている。複数の切欠き部99が設けられることにより、各突極部36の内周側の端部分の上面における周方向の中央部分は、上方L1に露出する突極部露出部分36bとなっている。
【0062】
開口部98から露出する各突極部36の内周側端面36aは、小径内周面部分96と段差なく連続する。開口部98から露出する各突極部36の内周側端面36aには防錆剤が塗布されている。また、切欠き部99から露出する各突極部36の突極部露出部分36bにも防錆剤が塗布されている。防錆剤は、例えば、エポキシ塗料である。
【0063】
図6に示すように、コネクタ封止部67は、コネクタ20を上方L1から被い、枠部43の下端部分を下方L2に露出させている。すなわち、コネクタ20において、枠部43の段部端面46a(第1段部部分端面51aおよび第2段部部分端面52a)と、段部端面46aから下側L2に位置する部分と、接続段部端面53aとはコネクタ封止部67により覆われておらず、外部に露出している。
【0064】
また、
図4に示すように、コネクタ封止部67は、その外周面に、枠部43を囲み、第1段部部分端面51a、第2段部部分端面52a、および接続段部端面53aのそれぞれと段差なく連続する外周面部分70を備える。外周面部分70は、第1段部部分端面51aの外周側に第1段部部分端面51aと段差なく連続する第1外周面部分70a、第2段部部分端面52aの外周側に第2段部部分端面52aと段差なく連続する第2外周面部分70b、接続段部端面53aの外周側に接続段部端面53aと段差なく連続する第3外周面部分70cを備える。軸線L方向から見た場合に、第1外周面部分70aと第2外周面部分70bとは、枠部43を囲む環状である。
【0065】
ここで、
図2に示すように、樹脂封止部材13から下方L2に露出したコネクタ20の枠部43の下端部分は、仮想面Sから下方に突出していない。換言すれば、コネクタ20の下端(枠部43の下端)は、封止部材底部65の第1突出部85の円形端面85aおよび第2突出部90の矩形端面90aよりも上方L1に位置する。また、
図4に示すように、第2突出部90の周方向の長さ寸法D1は、枠部43の開口43aの周方向の長さ寸法D2よりも長い。従って、ポンプ装置1を、反出力側を下方L2に向けた姿勢で作業台などの載置面に載置したときに、ポンプ装置1は、封止部材底部65の第1突出部85の円形端面85aおよび第2突出部90の矩形端面90aを設置面として自立するとともに、樹脂封止部材13から下方L2に露出したコネクタ20の枠部43の先端が作業台の載置面に接触することがない。
【0066】
樹脂封止部材13は、BMC(Bulk Molding Compound)によって形成されている。本例では、ステータ11およびコネクタ20を金型内に配置し、この金型内に樹脂を注入して硬化させることで樹脂封止部材13が形成される。すなわち、樹脂封止部材13はインサート成形によりステータ11およびコネクタ20と一体に成形される。
【0067】
(カバー部材)
図13はカバー部材14を下側L2から見た場合の斜視図である。カバー部材14は、樹脂製であり、樹脂封止部材13の上方L1に固定される。
図6および
図13に示すよう
に、カバー部材14は、円板状のカバー部材天井部101と、カバー部材天井部101の外周側から下側L2に延びるカバー部材筒部102とを備える。
【0068】
図13に示すように、カバー部材天井部101は、中心に軸線L方向に貫通する貫通穴103を備える。軸線L方向から見た場合に、貫通穴103は樹脂封止部材13の軸受部材保持凹部68と重なる位置にある。
図5に示すように、カバー部材天井部101の上面の中央部分には、貫通穴103を囲む円形凹部104が設けられている。円形凹部104には円環状のシール部材105が上方L1から挿入された固定されている。
【0069】
図13に示すように、カバー部材天井部101の下面には、その中央部分に貫通穴103と同軸の軸受部材保持筒部107が設けられている。軸受部材保持筒部107の中心穴は、貫通穴103である。カバー部材天井部101の下面には、その円形の外周縁に沿って外側環状リブ108が設けられている。さらに、カバー部材天井部101の下面には、軸受部材保持筒部107と外側環状リブ108との間に円形の内側環状リブ109が設けられている。軸受部材保持筒部107と内側環状リブ109との間には、軸受部材保持筒部107から放射状に延びて内側環状リブ109に達する内側リブ110が設けられている。内側環状リブ109と外側環状リブ108との間には、内側環状リブ109から放射状に延びて外側環状リブ108に達する外側リブ111が設けられている。軸受部材保持筒部107、外側環状リブ108および内側環状リブ109は同軸である。軸受部材保持筒部107の下端面、外側環状リブ108の下端面、および、内側環状リブ109の下端面は軸線Lと直交する平面である。
【0070】
図2に示すように、カバー部材天井部101の下面からの軸受部材保持筒部107の突出量は、カバー部材天井部101の下面からの内側環状リブ109の突出量よりも大きい。内側リブ110の下面と内側環状リブ109の下面とは同一平面上にある。カバー部材天井部101の下面からの内側環状リブ109の突出量は、カバー部材天井部101の下面からの外側環状リブ108の突出量よりも大きい。外側リブ111の下面と外側環状リブ108の下面とは同一平面上にある。
【0071】
図13に示すように、軸受部材保持筒部107は、その中心穴(貫通穴103)の内周壁の周方向の一部分に軸線L方向に延びる107aを備える。また、軸受部材保持筒部107は、下端面における中心穴の開口縁に、中心穴に向かって上方L1に傾斜するテーパー形状の面取り部107bを備える。
図6に示すように、軸受部材保持筒部107の中心穴には、第2軸受部材16が保持される。
【0072】
ここで、第2軸受部材16は、
図12に示す第1軸受部材15と同一の部材を上下逆に配置したものである。従って、第2軸受部材16は、出力軸6を貫通させる中心穴を備える筒部71と、筒部71の下端から外周側に広がる鍔部72とを備える。筒部71の外周面の周方向の一部分には、軸線L方向に一定幅で延びる溝部73が形成されている。また、筒部71の外周面において軸線Lを間に挟んだ溝部73とは反対側には、軸線L方向に一定幅で延びる突出部74が形成されている。溝部73内には第2軸受部材16を射出成形する際に樹脂射出用のゲートが接続されたゲート痕75が形成されている。鍔部72の輪郭は、軸線L方向から見た場合に、直線状に延びる直線輪郭部分72aと、直線輪郭部分72aの両端を接続する円弧の円弧輪郭部分72bとを備えるD字形状である。直線輪郭部分72aは軸線L回りで溝部73と同一の角度位置に設けられている。換言すれば、直線輪郭部分72aは軸線Lを間に挟んで突出部74と反対側に位置する。鍔部72の内周側に位置する筒部71の下端面には、当該筒部71の中心穴に向かって上側L1に傾斜するテーパー面76が設けられている。
【0073】
第2軸受部材16は、筒部71の突出部74と軸受部材保持筒部107の溝107aと
の位置を軸線L回りで一致させた状態で、筒部71が軸受部材保持筒部107に挿入される。そして、
図6に示すように、鍔部72を下方L2から軸受部材保持筒部107に当接させて軸受部材保持筒部107に固定される。第2軸受部材16が軸受部材保持凹部68に固定された状態では、鍔部72の下端面は軸線Lと直交する。また、筒部71とシール部材105とが軸線L方向で隙間を開けて対向する。さらに、軸受部材保持筒部107の下端面における鍔部72の直線輪郭部分72aと軸受部材保持筒部107の面取り部107bとの間には開口115(隙間)が形成されている。ここで、第2軸受部材16の突出部74と軸受部材保持筒部107の溝107aとは、第2軸受部材16の軸線L回りの回転を阻止する回止め機構117を構成する。
【0074】
第2軸受部材16は出力軸6を貫通させた状態でロータ10を支持する。第2軸受部材16の筒部71は出力軸6(ロータ10)を軸線L方向に移動可能に支持するとともに軸線L回りに回転可能に支持する。鍔部72はロータ本体22(第2軸受板27)に上側L1から摺接可能である。従って、ロータ10は、当該ロータ10が回転する際に、ロータ本体22が第1軸受部材15の鍔部72に摺接する下側位置(
図2参照)と、ロータ本体22が第2軸受部材16の鍔部72に摺接する上側位置との間を軸線L方向に移動する。
【0075】
貫通穴103の内側において、第2軸受部材16とシール部材105との間の隙間(第2軸受部材16よりも上方L1出力側に位置する貫通穴部分)は、グリスなどの潤滑剤119が貯留される第2潤滑剤貯留部118である。
図2に示すように、軸受部材保持筒部107の下端面の開口115と、第2潤滑剤貯留部118とは、筒部71の溝部73と軸受部材保持筒部107の中心穴の内壁面との間の隙間を介して連通している。換言すれば、筒部71の溝部73と軸受部材保持筒部107の中心穴の内壁面との間の隙間は、開口115と第2潤滑剤貯留部118とを連通させる連通路116である。
【0076】
次に、カバー部材筒部102は、
図6、
図13に示すように、外側環状リブ108の外周側から下側L2に延びる。カバー部材筒部102は、
図2に示すように、樹脂封止部材13の小径筒部分92にオーバーラップして外周側から被う上側環状筒部分121と、上側環状筒部分121の下側で大径筒部分83の外周側に位置する下側環状筒部分122とを備える。カバー部材筒部102の内周面において、上側環状筒部分121と下側環状筒部分122との間には環状段部123が設けられている。環状段部123は、下方L2を向く環状面123aを備える。環状面123aは、軸線Lと直交する平面である。
図6、
図13に示すように、下側環状筒部分122には、周方向の4か所に樹脂封止部材13の係止突起95と係合する被係止部124が設けられている。
【0077】
ここで、カバー部材14は、樹脂封止部材13の内側にロータ10が配置され、第1軸受部材15にロータ10が支持された状態で、樹脂封止部材13に上方L1から被せられる。カバー部材14が樹脂封止部材13に被せられる際には、樹脂封止部材13の上面の外周縁部分に接着剤が塗布される。
【0078】
カバー部材14を樹脂封止部材13に被せる際には、
図2に示すように、カバー部材14に保持された第2軸受部材16の筒部71に出力軸6を貫通させ、内側環状リブ109の下端部分を樹脂封止部材13の封止部材筒部66の内周側に嵌め込む。これにより、カバー部材14と樹脂封止部材13が径方向で位置決めされ、出力軸6の軸線Lと、ステータ11の中心軸線とが一致する。また、カバー部材筒部102の環状段部123の環状面123aを樹脂封止部材13の大径筒部分91と小径筒部分92との間の環状端面94に当接させる。これにより、カバー部材14を樹脂封止部材13とは軸線L方向で位置決めされる。その後、カバー部材14と樹脂封止部材13とを周方向に相対回転させて、
図1に示すように、樹脂封止部材13の係止突起95とカバー部材14の被係止部124とを係合させる。これにより、カバー部材天井部101は出力軸6を軸線L方向に貫通させた
状態でロータ10と樹脂封止部材13を上方L1から被う。また、カバー部材天井部101の円形凹部104に配置されたシール部材105を出力軸6が貫通する。シール部材105は、出力軸6とカバー部材14との間をシールする。さらに、カバー部材筒部102の上側環状筒部分121が樹脂封止部材13の小径筒部分92を外周側から包囲する。
【0079】
カバー部材14が樹脂封止部材13に固定されると、ロータ10は、ロータ本体22が第1軸受部材15の鍔部72(第1摺接部)の上端面に摺接する下側位置10A(第1位置:
図14参照)と、ロータ本体22が第2軸受部材16の鍔部72(第2摺接部)の下端面に摺接する上側位置10B(第2位置:
図15参照)との間を軸線L方向で移動可能な状態、かつ、軸線L回りに回転可能な状態で、第1軸受部材15および第2軸受部材16に支持される。なお、下側位置10Aにおいて、出力軸6の下端は軸受部材保持凹部68の底面68aから離間している。
【0080】
ここで、出力軸6の上端部分にはインペラ5が接続される。その後、ケース体3は、カバー部材14に上方L1から被せられる。これにより、カバー部材14とケース体3との間に区画された空間がポンプ室4となり、インペラ5がポンプ室4内に配置される。
【0081】
(潤滑剤の供給動作)
図14および
図15は第1軸受部材15および第2軸受部材16への潤滑剤82、119の供給動作の説明図である。
図14はロータ10が第1軸受部材15の鍔部72に摺接する下側位置10Aにある状態であり、
図15はロータ本体22が第2軸受部材16の鍔部72に摺接する上側位置10Bにある状態である。
【0082】
図14、
図15に示すように、第1軸受部材15は、ロータ10の出力軸6を軸線L方向に移動可能かつ軸線L回りに回転可能に支持す筒部71を備える。筒部71は樹脂封止部材13の軸受部材保持凹部68に挿入されて保持されている。軸受部材保持凹部68の内側において、軸受部材保持凹部68の底面68aと筒部71との間の空間は第1潤滑剤貯留部81であり、潤滑剤82が貯留されている。一方、第2軸受部材16は、ロータ10の出力軸6を軸線L方向に移動可能かつ軸線L回りに回転可能に支持す筒部71を備える。筒部71はカバー部材14の軸受部材保持筒部107の中心穴(カバー部材14の貫通穴103)に挿入されて保持されている。カバー部材14の貫通穴103における筒部71よりも上側の貫通穴部分は、第2潤滑剤貯留部118であり、潤滑剤119が貯留されている。
【0083】
図14に示すように、ロータ10が下側位置10Aにある状態では、出力軸6の下端部分は第1潤滑剤貯留部81に貯留された潤滑剤82の中に進入している。ここで、モータ2が駆動されると、ポンプ室4内で回転して流体を圧送するインペラ5はポンプ室4内で上下に移動する。
【0084】
インペラ5が上方L1に移動すると、ロータ10はインペラ5と共に上方L1に移動して、
図15に示す上側位置10Bに達する。ロータ10が下側位置10Aから上側位置10Bに移動すると、太線の矢印で示すように、第1軸受部材15に支持された出力軸6が上方L1に移動する。従って、第1潤滑剤貯留部81に貯留された潤滑剤82は、鎖線の矢印で示すように、出力軸6と第1軸受部材15との間に引き込まれる(供給される)。ここで、第1潤滑剤貯留部81には、第1軸受部材15と出力軸6との間に潤滑剤82を塗布した場合と比較して、多量の潤滑剤82が保持されている。従って、ロータ10の回転に伴って潤滑剤82が飛散した場合でも、経年により、出力軸6と第1軸受部材15との間の潤滑剤82が切れることを防止あるいは抑制できる。
【0085】
次に、
図15に示す状態からインペラ5が下方L2に移動すると、ロータ10はインペ
ラ5と共に下方L2に移動して、
図14に示す下側位置10Aに達する。ロータ10が上側位置10Bから下側位置10Aに移動すると、太線の矢印で示すように、出力軸6が下方L2に移動する。従って、出力軸6において第1軸受部材15の筒部71から軸受部材保持凹部68の底面68aの側に突出する突出部分6aの突出量が多くなり、出力軸6の下端部分は第1潤滑剤貯留部81に貯留された潤滑剤82の中に進入する。ここで、突出部分6aの突出量が多くなると、その分、第1潤滑剤貯留部81の容量が減少する。従って、第1潤滑剤貯留部81に貯留しきれない潤滑剤82は、一点鎖線の矢印で示すように、連通路78に逃げる。なお、ポンプ装置1の製造時点で第1潤滑剤貯留部81の容量よりも多い潤滑剤82が第1潤滑剤貯留部81に注入されている場合には、余分な潤滑剤82は、連通路78および開口77を介して、樹脂封止部材13の対向面65aの側に吐き出される。
【0086】
また、
図15に示す状態からインペラ5が下方L2に移動して
図14に示す状態となると、出力軸6が下方L2に移動するので、第2潤滑剤貯留部118に貯留された潤滑剤119は、鎖線の矢印で示すように、出力軸6と第2軸受部材16との間に引き込まれる(供給される)。ここで、第2潤滑剤貯留部118には、第2軸受部材16と出力軸6との間に潤滑剤82を塗布した場合と比較して、多量の潤滑剤119が保持されている。従って、ロータ10の回転に伴って潤滑剤119が飛散した場合でも、経年により、第2軸受部材16と出力軸6との間の潤滑剤119が切れることを防止あるいは抑制できる。
【0087】
その後、インペラ5が、再び、上方L1に移動すると、ロータ10はインペラ5と共に上方L1に移動して、
図15に示す上側位置10Bに達する。ロータ10が下側位置10Aから上側位置10Bに移動すると、出力軸6が上方L1に移動するので、出力軸6において第1軸受部材15の筒部71から下方L2に突出する突出部分6aの突出量は小さくなる。従って、ロータ10が上側位置10にある状態では、ロータ10が下側位置10Aにある状態と比較して、第1潤滑剤貯留部81の容量は増大する。
【0088】
第1潤滑剤貯留部81の容量が増大すると、連通路78に逃げていた潤滑剤82は、一点鎖線の矢印で示すように、第1潤滑剤貯留部81に引き戻される。よって、長期間に渡って、第1潤滑剤貯留部81に潤滑剤82を保持できる。また、インペラ5が再び上方L1に移動する際には、出力軸6が上方L1に移動するので、第1潤滑剤貯留部81に貯留された潤滑剤82は、鎖線の矢印で示すように、出力軸6と第1軸受部材15との間に引き込まれる(供給される)。
【0089】
ここで、第1潤滑剤貯留部81から潤滑剤82を逃がす連通路78の開口77は、樹脂封止部材13の対向面65aにおいて軸受部材保持凹部68の開口縁に設けられたテーパー状の面取り部69と、鍔部72の直線輪郭部分72aとの間に設けられている。これにより、第1軸受部材15の鍔部72と樹脂封止部材13の面取り部69との間で連通路78を屈曲させることができ、連通路78の流路抵抗を上昇させることができる。従って、連通路78に逃げた潤滑剤82が連通路78から開口77を介して外側に飛散することを抑制できる。
【0090】
また、
図14、
図15に示すように、第1軸受部材15の筒部71の上端部分にはテーパー面76が設けられているので、テーパー面76と出力軸6との間の空間が潤滑剤溜まりとなり、潤滑剤82を保持できる。同様に、第2軸受部材16の筒部71の下端部分にはテーパー面76が設けられているので、テーパー面76と出力軸6との間の空間が潤滑剤溜まりとなり、潤滑剤119を保持できる。
【0091】
(作用効果)
本例では、樹脂封止部材13の軸受部材保持凹部68の内側において、軸受部材保持凹
部68の底面68aと第1軸受部材15の筒部71との間の空間は第1潤滑剤貯留部81であり、潤滑剤82が貯留されている。そして、ロータ10が軸線L方向に移動する毎に、第1潤滑剤貯留部81から出力軸6と第1軸受部材15との間に潤滑剤82が供給される。また、第2軸受部材16を保持するカバー部材14の貫通穴103の内部には、第2潤滑剤貯留部118が設けられており、潤滑剤119が貯留されている。そして、ロータ10が軸線L方向に移動する毎に、第2潤滑剤貯留部118から出力軸6と第2軸受部材16との間に潤滑剤119が供給される。従って、ロータ10の回転に伴って潤滑剤82、119が飛散した場合でも、経年により、潤滑剤82、119が切れることがなく、出力軸6のスムーズな回転が阻害されたり、異音が発生したりすることを防止あるいは抑制できる。よって、モータ2の出力軸6に取り付けられたインペラ5のスムーズな回転が阻害されたり、ポンプ装置1から異音が発生したりすることを防止あるいは抑制できる。
【0092】
また、第1軸受部材15の筒部71には溝部73が設けられているので、第1潤滑剤貯留部81から潤滑剤82を逃がす連通路78を、第1軸受部材15と樹脂封止部材13との間に設けることが容易である。
【0093】
さらに、本例では、ロータ10が下側位置10Aにあるときに、出力軸6の下端は軸受部材保持凹部68の底面68aから離間している。これにより、軸受部材保持凹部68の底面68aと出力軸6との接触による異音の発生を回避できる。
【0094】
ここで、第1軸受部材15とロータ10との間には、第1軸受部材15とロータ10との摺接によって熱が発生するが、第1軸受部材15を保持する樹脂封止部材13の封止部材底部65は、軸線L方向から見た場合に、軸受部材保持凹部68と重なる位置に下側L2に突出する第1突出部85備える。これにより、封止部材底部65の表面積が増加しているので、第1軸受部材15から封止部材底部65に伝わる熱を外部に放出しやすい。
【0095】
また、第1突出部85の内側に軸受部材保持凹部68の底面68aが位置しているので、第1突出部85の内側に第1潤滑剤貯留部81が形成される。従って、第1軸受部材15とロータ10との摺接によって発生した熱を、第1軸受部材15から第1潤滑剤貯留部81に貯留された潤滑剤82を介して、封止部材底部65に放出できる。
【0096】
また、樹脂成形品である第1軸受部材15および第2軸受部材16では、ゲート痕75とはその中心穴(軸線L)を挟んだ反対側にウェルドラインが形成され、ウェルドラインが形成された部分の強度が低下する。これに対して、本例では、第1軸受部材15および第2軸受部材16の筒部71において、ゲート痕75を備える溝部73とは中心穴(軸線L)を挟んだ反対側に軸線L方向に一定幅で延びる突出部74が設けられている。従って、これらの軸受部材15、16の強度を確保できる。また、第1軸受部材15の突出部74と軸受部材保持凹部68の溝68cとは回止め機構79を構成するので、第1軸受部材15の軸線L回りの回転が規制される。同様に、第2軸受部材16の突出部74と軸受部材保持筒部107の溝107aとは、回止め機構117を構成するので、第2軸受部材16の軸線L回りの回転が規制される。
【0097】
なお、上記の例では、第2軸受部材16の筒部71と、カバー部材14の軸受部材保持筒部107の中心穴の内壁面との間に連通路116が設けられているが、連通路116は省略してもよい。