(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
海底や河川の底を掘削することにより発生する浚渫土(土砂や堆積泥からなるもの)や、軟弱土壌等の高含水土壌について、固化材等を用いて固化改良することが知られている。
例えば、特許文献1には、早強ポルトランドセメント10〜40質量%、増量材60〜90質量%及び還元剤0.2〜2.0質量%を含む再掘削用固化材を、ポゾラン活性度が5〜40%の対象土1m
3当たり50〜200kg添加し混合することを特徴とする地盤改良方法が記載されている。
また、特許文献2には、高含水土壌を短時間で固化改良することができる土壌用改質材として、多糖類およびグルコン酸塩の少なくともいずれか一方と、マグネシウム含有物質を含むことを特徴とする土壌用改質材が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
浚渫土等の土壌には、有機物が含まれている場合がある。通常、有機物は、セメントの水和反応を阻害するため、セメント系固化材を用いて、有機物を含む土壌の固化処理を行なっても、固化処理後の土壌の強度を十分に大きくすることができない場合がある。
本発明の目的は、有機質土の強度(例えば、一軸圧縮強さ)を大きくすることができる固化処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、有機質土に、特定の地盤改良材を添加して混合する固化処理方法によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[4]を提供するものである。
[1] 有機質土に、セメント系固化材および可溶性硫酸塩を含む地盤改良材を添加して混合し、改良土を得ることを特徴とする有機質土の固化処理方法。
[2] 上記有機質土中の有機物の含有率が3質量%以上である前記[1]に記載の有機質土の固化処理方法。
[3] 上記地盤改良材が、ポルトランドセメントおよび硫酸第一鉄のみからなるもの、または、ポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末および硫酸第一鉄のみからなるものである前記[1]又は[2]に記載の有機質土の固化処理方法。
[4] 上記硫酸第一鉄の量は、上記ポルトランドセメント100質量部当たり、水和物を含まない量として、20質量部以下である前記[3]に記載の有機質土の固化処理方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の有機質土の固化処理方法によれば、有機質土の強度(例えば、一軸圧縮強さ)を大きくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の有機質土の固化処理方法は、有機質土に、セメント系固化材および可溶性硫酸塩を含む地盤改良材を添加して混合し、改良土を得る方法である。
本明細書中、「有機質土」とは、有機物(特に、腐植物質)を含む土をいう。
なお、「腐植物質」とは、土壌中の動植物等の遺体が、微生物による分解を経て形成された最終生成物をいい、様々な有機化合物を含むものである。
腐植物質を構成する成分としては、ヒューミン(アルカリ及び酸に溶けない成分)、フミン酸(アルカリに溶け、酸に溶けない成分)、及びフルボ酸(アルカリ及び酸に溶ける成分)が挙げられる。
有機質土中の有機物の含有率は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは7〜30質量%、さらに好ましくは10〜20質量%、特に好ましくは11〜15質量%である。該含有率が3質量%以上であれば、本発明の効果(有機質土であっても、強度(例えば、一軸圧縮強さ)を大きくすることができるという効果)をより大きく発揮することができる。該含有率が30質量%以下であれば、有機質土の強度をより大きくすることができる。
なお、有機質土中の有機物の含有率は、有機質土から水分を除いた固形分の全量を100質量%とした場合の割合である。
【0008】
有機質土の含水比は、通常、10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上、特に好ましくは60%以上である。
本発明の有機質土の固化処理方法によれば、例えば、含水比が10%以上の有機質土を対象とした場合、有機質土の強度(例えば、一軸圧縮強さ)を大きくすることができる。上記含水比の上限値は、特に限定されないが、通常、1,200%である。
本発明における該含水比の好ましい範囲の一例として、60〜300%(特に、80〜180%)が挙げられる。
なお、「含水比」(単位:%)とは、有機質土の絶対乾燥状態の質量に対する、有機質土に含まれている水の質量の百分率([水の質量]×100/[絶対乾燥状態の有機質土の質量])をいう。
有機質土の例としては、黒ボク土、水田土、黒泥土、泥炭、ポドゾル、及び石油汚染土等が挙げられる。
【0009】
本発明で用いられるセメント系固化材とは、セメントを主な材料(通常、50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上)として含み、かつ、任意に配合可能な混和材を含むものをいう。
セメント系固化材に用いられるセメントの例としては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント等の混合セメントや、エコセメント等が挙げられる。
混和材の例としては、高炉スラグ微粉末、生石灰、消石灰、フライアッシュ、石灰石微粉末、無水石膏、二水石膏、及びシリカフューム等が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
セメント系固化材としては、入手の容易性や有機質土の強度をより大きくするなどの観点から、ポルトランドセメントのみからなるもの、または、ポルトランドセメントおよび高炉スラグ微粉末のみからなるものが好ましい。
【0010】
本発明で用いられる可溶性硫酸塩の例としては、硫酸第一鉄、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム等が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、入手の容易性や有機質土の強度をより大きくする観点から、硫酸第一鉄が好ましい。
また、入手の容易性や有機質土の強度をより大きくする観点から、セメント系固化材および可溶性硫酸塩を含む地盤改良材としては、ポルトランドセメントおよび硫酸第一鉄のみからなるもの、または、ポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末および硫酸第一鉄のみからなるものが好ましい。
【0011】
上記地盤改良材中のセメントの含有率は、好ましくは20〜98質量%、より好ましくは30〜96質量%、さらに好ましくは40〜94質量%、さらに好ましくは50〜92質量%、特に好ましくは60〜90質量%である。該含有率が20質量%以上であれば、有機質土の強度をより大きくすることができる。該含有率が98質量%以下であれば、地盤改良材中の可溶性硫酸塩の量が相対的に多くなるため、本発明の効果をより大きく発揮することができる。
上記地盤改良材中の可溶性硫酸塩の含有率は、水和物(例えば、FeSO
4・nH
2OにおけるnH
2O;式中、nは整数である。)を含まない量として、好ましくは2〜30質量%、より好ましくは4〜25質量%、さらに好ましくは6〜20質量%、特に好ましくは8〜18質量%である。該含有率が2質量%以上であれば、有機質土の強度をより大きくすることができる。該含有率が30質量%以下であれば、材料にかかるコストをより低減することができる。
【0012】
上記地盤改良材における、可溶性硫酸塩の量は、材料にかかるコストの低減の観点からは、セメント100質量部当たり、水和物を含まない量として、好ましくは20質量部以下、より好ましくは18質量部以下、特に好ましくは14質量部以下である。また、可溶性硫酸塩の量は、有機質土の強度をより大きくする観点からは、セメント100質量部当たり、水和物を含まない量として、好ましくは2質量部以上、より好ましくは4質量部以上、さらに好ましくは6質量部以上、さらに好ましくは8質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上、特に好ましくは12質量部以上である。
【0013】
本発明において、有機質土に上述した地盤改良材を添加し混合する方法の例としては、有機質土に地盤改良材を粉体のまま添加して混合するドライ添加方法や、地盤改良材に水を加えてスラリーとした後に、該スラリーを有機質土に添加して混合するスラリー添加方法等が挙げられる。
有機質土1m
3当たりの地盤改良材の添加量は、有機質土の強度をより大きくする観点からは、好ましくは50kg以上、より好ましくは80kg以上、さらに好ましくは100kg以上、さらに好ましくは120kg以上、さらに好ましくは150kg以上、さらに好ましくは180kg以上、特に好ましくは210kg以上である。該添加量は、固化処理のコストの低減の観点からは、好ましくは800kg以下、より好ましくは600kg以下、特に好ましくは400kg以下である。
【実施例】
【0014】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
(1)セメント;普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
(2)無水石膏
(3)消石灰;奥多摩工業社製、特級品
(4)硫酸第一鉄一水和物(FeSO
4・H
2O)
(5)高炉スラグ微粉末
(6)有機質土;浚渫土(有機物の含有率:12質量%、含水比:120%)
【0015】
なお、有機質土中の有機物の含有率は、「土壌中のアロフェン及び非晶質無機成分の定量に関する研究(北川靖夫;農業技術研究所報告B、第29号、pp.1−48、1977)」に記載された200℃加熱減量法における、有機物を分解する方法に準拠して、有機質土中の有機物を分解除去し、分解除去の前後における有機質土の質量から算出した。
より具体的には、浚渫土(有機質土)を、23℃で24時間ごとに質量を測定しつつ、質量変化が0.01g以内となるまで乾燥させた。乾燥後の浚渫土3.0gに1NのKClを50ml添加し混合することで洗浄を行った後、この浚渫土を300mlのビーカーに移し、10質量%のH
2O
2を50ml添加して、沸騰状態のウォーターバス中において加温しながら、浚渫土中の有機物を分解した。ビーカー内の発泡が収まった後、さらに30質量%のH
2O
2を10ml添加して、浚渫土中の有機物をさらに分解した。次いで、1NのKClを添加して、pHを8〜9に調整した。次いで、上述した30質量%のH
2O
2の添加と1NのKClの添加を2回繰り返した。その後、遠心分離によって、固形分(有機物が分解して除去された浚渫土)を回収した。該固形分に1NのKClを添加し混合することで洗浄を行った後、遠心分離によって固形分を回収した。さらに、回収した固形分に蒸留水を添加し混合することで洗浄を行った後、遠心分離によって固形分を回収するという洗浄の操作を2回繰り返して、浚渫土中の有機物を除去した。次いで、有機物を除去した浚渫土を105℃で24時間乾燥させた後、質量を測定した。該質量は、2.6gであった。有機物を除去する前の乾燥させた浚渫土の質量(3.0g)と、有機物を除去した後の乾燥させた浚渫土の質量(2.6g)から、浚渫土中の有機物の含有率(12質量%)を算出した。
【0016】
[実施例1〜5、比較例1〜4]
上記材料を、表1に示す配合で混合して、セメント系固化材および可溶性硫酸塩を含む地盤改良材を得た。なお、表1中、カッコ内の数値は質量部である。
有機質土に、300kg/m
3となる量の上記地盤改良材を添加して混練を行い、改良土を得た。次に、材齢7日の該改良土を用いて、「JIS A 1216:2009(土の一軸圧縮試験方法)に準拠して、一軸圧縮強さを測定した。
また、米国環境保護庁(EPA)の「Method 1312」に準拠して、検液を調製し、該検液のpHを測定した。
結果を表1に示す。
【0017】
【表1】
【0018】
表1から、セメント系固化材および可溶性硫酸塩を含む地盤改良材を添加して混合した場合(実施例1〜5)の、改良土の一軸圧縮強さは199〜378kN/mm
2であることがわかる。
一方、比較例1(地盤改良材として、普通ポルトランドセメントからなるセメント系固化材を使用した場合)、比較例2(地盤改良材として、普通ポルトランドセメントと無水石膏からなるセメント系固化材を使用した場合)、比較例3(地盤改良材として、普通ポルトランドセメントと無水石膏と高炉スラグ微粉末からなるセメント系固化材を使用した場合)、及び、比較例4(地盤改良材として、普通ポルトランドセメントと消石灰からなるセメント系固化材を使用した場合)における、改良土の一軸圧縮強さは18〜181kN/mm
2であり、実施例1〜5における、改良土の一軸圧縮強さ(199〜378kN/mm
2)よりも小さいことがわかる。