(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一定の間隔で並列に配された複数本の同軸ケーブルと、前記複数本の同軸ケーブルの少なくとも端末部を両面から一体化する固定テープとを有する同軸フラットケーブルにおいて、
前記同軸ケーブルは、内部導体と、該内部導体の外周に設けられた誘電体層と、該誘電体層の外周に設けられた外部導体とを少なくとも備え、
前記誘電体層が、内環状部、外環状部及びこれらを連結する連結部で構成された中空構造体であり、長手方向に連続する空隙部を有し、該中空構造体がフッ素系樹脂で構成されており、
前記外部導体は、金属線の編組若しくは横巻き、及び/又は、前記固定テープ側に金属層の設けられた金属層付き絶縁テープ巻き、であり、
前記固定テープは、基材上に、導電性接着剤層が設けられ、又は、導電層及び導電性接着剤層が積層して設けられ、それら導電性接着剤層が前記外部導体に貼り合わされている、ことを特徴とする同軸フラットケーブル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の同軸フラットケーブルは、端末加工において、各同軸ケーブル1本1本の外皮(絶縁層)を剥いで外部導体を露出させた後にはんだ付けする等、加工が煩雑であるとともに、加工状態がばらついたり、同軸ケーブルを潰したりしてしまうこともあり、伝送特性が悪くなるおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、その目的は、並列に配された複数本の同軸ケーブルの外部導体の電位を電位差なく揃えて電気的特性を維持することができ、さらに加工工数を大幅に削減できる同軸フラットケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る同軸フラットケーブルは、一定の間隔で並列に配された複数本の同軸ケーブルと、前記複数本の同軸ケーブルの少なくとも端末部を両面から一体化する固定テープとを有する同軸フラットケーブルにおいて、前記同軸ケーブルは、内部導体と、該内部導体の外周に設けられた誘電体層と、該誘電体層の外周に設けられた外部導体とを少なくとも備え、前記固定テープは、導電性接着剤層、又は、導電層及び接着剤層、を有し、前記外部導体に貼り合わされていることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、同軸ケーブルは外部導体には、導電層(導電性接着剤層又は導電層)を有する固定テープが接着剤層(導電性接着剤層又は接着剤層)を介して接続しているので、全ての同軸ケーブルの外部導体の電位を電位差なく揃えることができ、電気的特性を維持することができる。さらに、同軸ケーブルが絶縁層を有しないので、同軸ケーブルの外部導体をはんだ付けする前に同軸ケーブル1本1本の外皮(絶縁層)を剥ぐ作業が不要となり、加工工数を大幅に削減できる。
【0009】
本発明に係る同軸フラットケーブルにおいて、前記固定テープが前記導電層及び前記接着剤層を有する場合、該導電層と該接着層とが積層していることが好ましい。
【0010】
この発明によれば、同軸ケーブルの外部導体に接着する接着剤層の上に導電層が設けられているので、電位をより一層安定化させることができる。
【0011】
本発明に係る同軸フラットケーブルにおいて、前記複数本の同軸ケーブルの両面が、2枚の前記固定テープで挟まれている、又は、1枚の前記固定テープで覆われている。
【0012】
この発明によれば、並列した複数本の同軸ケーブルの両面が、導電層(導電性接着剤層又は導電層)を有する1枚又は2枚の固定テープで覆われているので、同軸ケーブルの外部導体の電位を電位差なく一様に揃えることができ、電気的特性を維持することができる。
【0013】
本発明に係る同軸フラットケーブルにおいて、前記誘電体層が、長手方向に連続する空隙部を有することが好ましい。
【0014】
この発明によれば、誘電体層は長手方向に連続する空隙部を有するので、その空隙部の存在により誘電率を小さくすることができる。その結果、同軸ケーブルの外径を大きくすることなく内部導体の外径を増すことができ、内部導体の実効断面積を増して高周波抵抗(交流抵抗)の増大を抑制することができる。さらに、長手方向に連続する空隙部を有する誘電体層は、長手方向に連続しない発泡層からなる誘電体層に比べて製造時(例えばヒートシール等の加圧時等)や配線作業時等に潰れにくく、内部導体と外部導体との距離が変化しないので、特性インピーダンスが安定して高周波特性を安定なものとすることができる。
【0015】
本発明に係る同軸フラットケーブルにおいて、前記誘電体層が、内環状部、外環状部及びこれらを連結する連結部で構成された中空構造体であり、該中空構造体がフッ素系樹脂で構成されていることが好ましい。
【0016】
この発明によれば、上記中空構造体は側圧強度に優れるので、製造時や配線作業時等に潰れにくく、高周波特性を安定なものとすることができる。また、例えばPFA(ε2.1)等のフッ素系樹脂は、ポリエチレン(ε2.2〜2.6)等よりも誘電率が小さいので、高周波伝送特性をさらに向上させることができ、さらに前記中空構造体の空隙率に応じて誘電率を小さくすることができる。
【0017】
本発明に係る同軸フラットケーブルにおいて、前記外部導体は、金属線の編組若しくは横巻き、又は金属層付き絶縁テープ巻き、であることが好ましい。
【0018】
この発明によれば、外部導体は従来からあるものを適用できるが、金属層付き絶縁テープ巻きを適用する場合は、金属層を外側(固定テープ側)に向けて固定テープと貼り合わされるように構成することが好ましい。
【0019】
本発明に係る同軸フラットケーブルにおいて、前記外部導体が金属層付き絶縁テープ巻きである場合、前記固定テープは導電性接着剤層を有し、前記金属層と前記導電性接着剤層とが貼り合わされていることが好ましい。
【0020】
この発明によれば、外部導体が金属層付き絶縁テープ巻きであり、その金属層と固定テープの導電性接着剤層と貼り合わされているので、外部導体の電位を電位差なく一様に揃えることができ、電気的特性を維持することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、並列に配された複数本の同軸ケーブルの外部導体の電位を電位差なく揃えて電気的特性を維持することができ、さらに加工工数を大幅に削減できる同軸フラットケーブルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る同軸フラットケーブルの実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態及び図面に記載した形態と同じ技術的思想の発明を含むものであり、本発明の技術的範囲は実施形態の記載や図面の記載のみに限定されるものでない。
【0024】
本発明に係る同軸フラットケーブル20は、
図1〜
図4に示すように、一定の間隔Pで並列に配された複数本の同軸ケーブル10と、複数本の同軸ケーブル10の少なくとも端末部21を片面又は両面から一体化する固定テープ11とを有するものである。そして、同軸ケーブル10は、内部導体1と、内部導体1の外周に設けられた誘電体層2と、誘電体層2の外周に設けられた外部導体3とを少なくとも備えている。そして、固定テープ11は、導電性接着剤層11B、又は、導電層11C及び接着剤層11D、を有し、外部導体3に貼り合わされている。
【0025】
この同軸フラットケーブル20では、
図4に示すように、各同軸ケーブル10の外部導体3に、導電層(導電性接着剤層11B又は導電層11C)を有する固定テープ11が接着剤層(導電性接着剤層11B又は接着剤層11D)を介して接続しているので、全ての同軸ケーブル10の外部導体3の電位を電位差なく揃えることができ、電気的特性を維持することができる。さらに、同軸ケーブル10が絶縁層を有しないので、同軸ケーブル10の外部導体3をはんだ付けする前に同軸ケーブル1本1本の外皮(絶縁層)を剥ぐ作業が不要となり、加工工数を大幅に削減できる。
【0026】
以下、同軸フラットケーブルの各構成要素を説明する。
【0027】
(内部導体)
内部導体1は、
図1及び
図2に示すように、同軸ケーブル10の長手方向Yに延びる1本の素線で構成されるもの、又は複数本の素線を撚り合わせて構成されるものであり、同軸ケーブル10の中心導体を構成している。素線は、良導電性金属であればその種類は特に限定されないが、銅線、銅合金線、アルミニウム線、アルミニウム合金線、銅アルミニウム複合線等の良導電性の金属導体、又はそれらの表面にめっき層が施されたものを好ましく挙げることができる。高周波用の観点からは、銅線、銅合金線が特に好ましい。めっき層としては、はんだめっき層、錫めっき層、金めっき層、銀めっき層、ニッケルめっき層等が好ましい。素線の断面形状も特に限定されないが、断面形状が円形又は略円形であってもよいし、角形形状であってもよい。
【0028】
内部導体1の断面形状も特に限定されないが、円形(楕円形を含む。)であってもよいし、矩形(四角形、五角形、六角形、八角形等を含む)であってもよい。内部導体1の外径は、電気抵抗(交流抵抗、導体抵抗)が小さくなるように、できるだけ大きいことが望ましく、例えば、0.1mm〜0.4mm程度を挙げることができる。具体的には、AWG28〜36(7/0.127〜7/0.05)程度であればよく、AWG32 7/0.08(外径:約0.24mm)等を好ましく挙げることができる。
【0029】
内部導体1の表面には、必要に応じて絶縁皮膜(図示しない)が設けられていてもよい。絶縁皮膜の種類と厚さは特に限定されないが、はんだ付け時に良好に分解するものが好ましく、例えば熱硬化性ポリウレタン皮膜等を好ましく用いることができる。なお、AWG(American Wire Gaugeの略)は、導体の寸法規格として公知の記号であり、B&S(Brown and Sharp)Gaugeとも呼ばれているものである。
【0030】
(誘電体層)
誘電体層2は、
図1〜
図3に示すように、内部導体1の外周に設けられている低誘電率の絶縁層である。誘電体層2の構成は特に限定されないが、
図2に示すように、長手方向Yに連続する空隙部2Aを有していることが好ましい。この空隙部2Aは、誘電体層2の中に連続して設けられているが、その形態は、丸形でも矩形でもよく特に限定されない。特に、内環状部2B、外環状部2C及びこれらを連結する連結部2Dで構成された中空構造体2(誘電体層と同じ符号2を用いることがある。)は、空隙部2Aが内環状部2B、外環状部2C及び連結部2Dで囲まれた断面形態になっており、側圧強度に優れるので好ましい。側圧強度に優れる中空構造体2は、同軸ケーブル10及び同軸フラットケーブル20の製造時や同軸フラットケーブル20の配線作業時等に潰れにくく、高周波特性を安定なものとすることができる。なお、中空構造体2は、押出ダイを走行する内部導体1の外周に、例えばPFA樹脂を押出しして成形することができる。なお、PFAは、テトラフルオロエチレンとペルフルオロエーテルの共重合体である。内環状部2B、外環状部2C及び連結部2Dのそれぞれの厚さは特に限定されないが、例えば0.01mm〜0.05mm程度の範囲内であり、形成された中空構造体2(誘電体層2)の外径は、例えば0.4mm〜1.0mm程度の範囲内である。
【0031】
誘電体層2は、例えばPFA(誘電率ε:2.1)等のフッ素系樹脂で形成されていることが好ましい。フッ素系樹脂は、ポリエチレン(誘電率ε:2.2〜2.6)等のポリオレフィン樹脂よりも誘電率が小さいので、高周波伝送特性をさらに向上させることができる。さらに、上記した中空構造体2の空隙率に応じて、誘電率を小さくすることができ、一例として、中空構造体2の外径を例えば0.58mmとし、空隙部2Aの割合(空隙率という。)を35%とした場合の誘電率εは1.5〜1.65程度と小さくすることが可能になる。なお、空隙部2Aの空隙率は、誘電体層全体(中空構造体全体)の面積に対し、20%〜60%の範囲内であることが好ましい。
【0032】
こうした誘電体層2では、誘電率を下げることができる空隙部2Aを有し且つ側圧強度を高めて潰れを抑制することができる中空構造体を採用することが好ましく、さらにヒートシール等の加熱圧迫に耐えられるフッ素系樹脂を選択することが好ましい。こうした構造の誘電体層2は誘電率を下げることができるので、同軸ケーブル10の外径を大きくすることなく内部導体1の外径を増すことができ、内部導体1の実効断面積を増して高周波抵抗(交流抵抗)の増大を抑制することができる。さらに、長手方向Yに連続する空隙部2Aを有する誘電体層2は、長手方向Yに連続しない発泡層からなる誘電体層に比べて製造時(例えばヒートシール等の加圧時等)や配線作業時等に潰れにくく、内部導体1と外部導体3との距離が変化しないので、特性インピーダンスが安定して高周波特性を安定なものとすることができる。
【0033】
(外部導体)
外部導体3は、誘電体層2の外周に設けられており、細線を編組としたものや横巻きしたものであってもよいし、金属層付絶縁テープ(例えば銅層付きのポリエチレンテレフタレートフィルム等)であってもよいし、それらの両方を組み合わせたものであってもよい。
図2の例では、誘電体層2の外周に細線横巻3Aを設け、さらにそれを覆うように金属層付き絶縁テープ3Bを設けているが、こうした構成に限定されない。外部導体3の厚さは特に限定されないが、例えば0.01mm〜0.15mm程度の範囲内である。
【0034】
外部導体3には、後述する固定テープ11が貼り合わされている。固定テープ11の貼り合わせ面には、導電性接着剤層11B又は接着剤層11Dが設けられているので、これらの層が外部導体3に貼り合わされる。外部導体3は、上記のように、金属線の編組若しくは横巻き、又は金属層付き絶縁テープ巻きで構成されているが、金属層付き絶縁テープ3Bを適用する場合は、金属層を外側(固定テープ側)に向けて固定テープ11と貼り合わされることになる。この場合においては、固定テープ11は導電性接着剤層11Bを有し、金属層と導電性接着剤層11Bとが貼り合わされていることが好ましく、外部導体3の電位を電位差なく一様に揃えることができ、電気的特性を維持することができる。なお、この外部導体3の外周には、
図5の従来例に示すような絶縁層104は存在しない。
【0035】
(同軸フラットケーブル)
同軸フラットケーブル20は、
図1〜
図3に示すように、一定の間隔Pで並列に配された複数本の同軸ケーブル10と、その同軸ケーブル10を両面から一体化する固定テープ11とを有するように構成されている。さらに。本発明では、外部導体3の外周に設けられる絶縁層(
図5を参照)が存在しない。そのため、内部導体1を太くしても、絶縁層が存在しない個々の同軸ケーブル10の外径が太くなるのを制限することができる。その結果、所望のコネクタのピッチを超えてしまうことがなく、安定で優れた高周波特性を示す同軸フラットケーブル20を既存のコネクタを変更することなく利用することができる。なお、同軸ケーブル10については既に説明したとおりである。
【0036】
(固定テープ)
固定テープ11は、
図1、
図3及び
図4に示すように、複数本の同軸ケーブル10の端末部21又は全面を両面から一体化するものである。本発明では、同軸ケーブル10の外部導体の電位を電位差なく揃えて電気的特性を維持するので、
図1及び
図4に示すように、片面ではなく、両面に固定テープ11を設けることが望ましい。両面に固定テープ11を設ける形態としては、2枚の固定テープ11で挟んで貼り合わせて一体化したり、1枚の固定テープ11で両面を包むように覆って貼り合わせて一体化したりすることが好ましい。
【0037】
図3(A)は同軸ケーブル10の両面を2枚の固定テープ11で挟んで一体化した形態であり、
図3(B)は同軸ケーブル10の端末部21の両面を2枚の固定テープ11で挟んで一体化した形態である。このように、固定テープ11は、複数の同軸ケーブル10の長手方向Yの全てに貼り合わされていてもよいし、長手方向の両側の端末部21のみに貼り合わされていてもよい。固定テープ11を例えば両側の端末部21のみに貼り合わせることで、両側の端末部以外の中間部22を非一体部分として変形させることができ、電子機器内の配線時における自由度を向上させることができる。なお、
図3の例では2枚の固定テープ11で両面から挟んで貼り合わせて一体化しているが、1枚の固定テープ11を折り返して両面から挟んで貼り合わせて一体化したものであってもよい。
【0038】
固定テープ11としては、
図4(A)(B)に示すように、2つの形態を好ましく挙げることができる。第1固定テープ11’は、
図4(A)に示すように、基材11Aと、基材11Aの片面に設けられた導電性接着剤層11Bとを有するものである。第2固定テープ11”は、
図4(B)に示すように、基材11Aと、導電層11Cと、接着剤層11Dとがその順で積層したものである。これら第1、第2の固定テープ11(11’、11”)は、導電性接着剤層11B、又は、導電層11C及び接着剤層11Dを有し、その接着性を有する層(導電性接着剤層11Bと接着剤層11D)を介して外部導体3に貼り合わされている。そのため、全ての同軸ケーブル10の外部導体3の電位を電位差なく揃えることができ、電気的特性を維持することができる。なお、第2固定テープ11”のように、導電層11C及び接着剤層11Dを有する場合、導電層11Cと接着剤層11Dとが積層していることが好ましく、電位をより一層安定化させることができる。
【0039】
基材11Aは特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルムを好ましく用いることができる。剥きやすさの観点からは、1軸延伸したフィルムであることが好ましい。基材11Aの厚さとしては、0.025〜0.1mm程度の範囲内のものが任意に選択される。
【0040】
第1固定テープ11’を構成する導電性接着剤層11Bは、導電性を有した接着剤層であり、例えば導電材(導電粉又は導電フィラー)を含む接着剤層を挙げることができる。導電材の材質としては、導電性の良い銅、銀、ニッケル、カーボン等を挙げることができる。導電性接着剤層11Bは、導電材を含む熱可塑性接着性樹脂、例えば導電材を含むホットメルト系接着剤を好ましく挙げることができる。第1固定テープ11’では、こうした導電性接着剤層11Bが基材11Aに設けられている。導電性接着剤層11Bの厚さとしては、0.02〜0.1mm程度の範囲内のものが任意に選択される。第1固定テープ11’の全体厚さとしては、0.05〜0.15mm程度の範囲内のものが任意に選択される。
【0041】
第2固定テープ11”を構成する導電層11Cは、導電性を有する層であれば特に限定されず、金属層であってもよいし、導電粉を含む導電ペースト層であってもよい。特に金属層が好ましく、銅層、アルミニウム層等が基材11Aに蒸着やめっきにより成膜されたもの、又は貼り合わされたものを好ましく挙げることができる。導電層11Cの厚さは形成手段により異なるが、蒸着やめっきで成膜したものは0.002〜0.007mm程度の範囲内から任意に選択され、金属層を貼り合わせたものは0.01〜0.1mm程度の範囲内から任意に選択される。
【0042】
第2固定テープ11”を構成する接着剤層11Dは、例えばポリエステル系熱可塑性接着性樹脂層等を好ましく挙げることができる。接着剤層11Dの厚さとしては、0.025〜0.05mm程度の範囲内のものが任意に選択される。固定テープ11”の全体厚さとしては、0.01〜0.2mm程度の範囲内のものが任意に選択される。符号11Dの層は導電性接着剤層であってもよく、そうした場合には、導電層11Cとともに電位をより一層安定化させるように作用する。
【0043】
なお、固定テープ11の合計厚さを例えば0.1〜0.2mm程度の十分に厚いものを用いることにより、ヒートシール工程等での熱接着時の熱影響を受けにくくすることができ、その結果、収縮が発生しにくくなり、安定した同軸ケーブル10のピッチを確保することができる。
【0044】
固定テープ11は、複数の同軸ケーブル10の長手方向Yの全てに貼り合わされていてもよいし、長手方向Yの両側の端末部21のみに貼り合わされていてもよい。固定テープ11を例えば両側の端末部21のみに貼り合わせることで、両側の端末部以外の中間部22を非一体部分として変形させることができ、電子機器内の配線時における自由度を向上させることができる。具体的には、固定テープ11によって少なくとも端末部21が両面から固定されているので、少なくとも接続対象のコネクタに対して、正確に接続することができる。固定テープ11を端末部21だけに設けた場合は、端末部以外の中間部22はばらけた状態になっており、それらの中間部を束ねることもできるので、中間部22の幅をかなり小さくすることができる。固定テープ11を端末部21を含む全面に設けた場合は、一般的なフラットケーブルと同様、長手方向全体が同一幅できれいに形成されているので、配線作業時にあまり注意を払うことなく作業することができる。
【0045】
なお、同軸ケーブル10に要求される代表的な電気的特性は以下のようになる。
【0046】
伝搬遅延時間(Td)=√ε/0.3(nS/m)
相対伝送速度(V)=100/√ε(%)
特性インピーダンス(Zo)=60/√ε・LnD/d(Ω)
静電容量(C)=55.63ε/LnD/d(PF/m)
ただし、ε:絶縁体(誘電体層2)の比誘電率、D:絶縁体(誘電体層2)の外径(外部導体3の内径)、d:導体外径(内部導体1の外径)とする。
【0047】
このことから、同軸ケーブル10の伝送特性には、誘電体層2の比誘電率、内部導体1の外径及び誘電体層2の外径が関与し、比誘電率に関しては、その値が小さい程、伝送特性が向上し、内部導体1の外径及び誘電体層2の外径に関しては、その比率とバラツキが大きく関与することが理解できる。特に、特性インピーダンスと静電容量については、誘電体層2の比誘電率が小さく、且つそのバラツキが少ないことと、内部導体1の外径と誘電体層2の外径(外部導体3の内径)等のバラツキが少なく、且つそれらの形状がより真円円筒体状に形成されることが理想であることが理解できる。
【実施例】
【0048】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
[実施例1]
図4(B)に例示した同軸フラットケーブル20を作製した。内部導体1として、直径0.08mmの銀めっき軟銅線を7本撚りしたAWG32(外径約0.24mm)を用いた。誘電体層2は、中空構造体用ダイスニップルにて350℃でPFA樹脂(デュポン社製)を押出しして、空隙部2Aが内環状部2B、外環状部2C及び連結部2Dで囲まれた断面形態の中空構造体を形成した。この中空構造体において、内環状部2Bの厚さは0.05mm、外環状部2Cの厚さは0.05mm、連結部2Dの厚さは0.05mmであり、中空構造体(誘電体層2)の外径は0.60mmであり、空隙部2Aの空隙率は誘電体層全体(中空構造体全体)の面積に対して30%であった。なお、空隙部2Aの形状は、
図4に示すように、ほぼ台形形状であった。
【0050】
外部導体3は、直径0.05mmの錫めっき軟銅線38本を用い、横巻きシールド機を用いて12mmピッチで誘電体層2の外周に巻き付けて横巻の細線横巻3Aとした。得られた同軸ケーブル10を16本準備し、1mmの一定間隔で並列に配した後、第2固定テープ11”で両面から全面を貼り合わせて一体化した。第2固定テープ11”は、厚さ0.035mmのポリエステル熱可塑性樹脂(接着剤層11D)が厚さ0.05mmのアルミニウム層(導電層11C)上に設けられた、厚さ0.1mmアルミニウム層付きポリエチレンテレフタレートフィルムを幅25mmに切断したものを用いた。
【0051】
[実施例2]
第1固定テープ11’を用いた他は、実施例1と同様にして
図4(A)に例示した同軸フラットケーブルを作製した。第1固定テープ11’は、ヒエン電工株式会社製の基材11A(PETフィルム、厚さ約0.012mm)及び導電性接着剤層11B(ポリエステル熱可塑性樹脂と導電材を含む。厚さ約0.013mm)からなるものを、幅25mmに切断して使用した。誘電率εは約1.6であった。
【0052】
[比較例1]
絶縁層104を有する同軸ケーブル100を用いた他は、実施例1と同様にして
図5に示す同軸フラットケーブルを作製した。なお、絶縁層104は、厚さ0.001mmのポリエステル熱可塑性樹脂(接着剤層)が片面に設けられた厚さ0.004mmのポリエステルテープを幅3.0mmに切断し、テープ巻き機を用いて接着剤層を外部導体側にして1/3ラップで巻き付けたものである。誘電率εは約1.6であった。
【0053】
[比較例2]
誘電体層2を微小な空気層を有する発泡層(図示しない)とした他は、実施例1と同様にして同軸フラットケーブルを作製した。なお、発泡層は発泡剤入りポリエチレンコンパウンドを押出成型にて形成し、発泡層の空隙率は30%であり、誘電率εは約1.80であった。
【0054】
[測定と結果]
(加工作業時や配線時の潰れの有無と高周波特性)
加工作業時には、同軸ケーブル10を固定テープ11でヒートシールする際の加熱(約170℃)と圧力(約0.2MPa)が加わるが、こうした加工作業が同軸ケーブル10の断面形態を変形させて伝搬遅延時間を変動させるか否かを調べた。
【0055】
同軸フラットケーブルの伝搬遅延時間の評価方法は、同軸フラットケーブルを一定長さ(例えば1m)に切断したものをサンプルとし、TDR法にて、測定機に接続したサンプルのインピーダンスと伝搬遅延時間を測定した。得られた伝搬遅延時間のばらつき(SKEW)から潰れ等の変形の有無を推測した。なお、測定機は、Tektronix DCA8200サンプリングオシロスコープ(TDRモジュール:80E04)を用いた。
【0056】
【表1】
【0057】
表1の結果に示すように、実施例1,2では共通GND化しているので、対内、対間のSKEWが減り、伝送特性が向上した。一方、比較例2では共通GND化していないので、対内、対間のSKEWが減らず、伝送特性を向上させることができなかった。また、比較例1では、潰えが発生していると考えられ、遅延時間がばらついており、SKEWも大きくなっていた。
【0058】
以上の結果より、同軸フラットケーブル20は、(1)同軸ケーブル10の外部導体3をはんだ付けする前に同軸ケーブル1本1本の外皮(絶縁層)を剥ぐ作業が不要となり、加工工数を大幅に削減できた。また、(2)外部導体の電位を電位差なく揃えて電気的特性を維持することができた。また、(3)製造時(例えばヒートシール等の加熱圧迫時等)や配線作業時等に潰れにくく、内部導体と外部導体との距離の変化を抑制して特性インピーダンスが安定した高周波特性を有した。