特許第6937213号(P6937213)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6937213
(24)【登録日】2021年9月1日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】アクティブダンパ用アッパーマウント
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/54 20060101AFI20210909BHJP
   F16F 3/08 20060101ALI20210909BHJP
   B60G 15/06 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
   F16F9/54
   F16F3/08
   B60G15/06
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-197035(P2017-197035)
(22)【出願日】2017年10月10日
(65)【公開番号】特開2019-70410(P2019-70410A)
(43)【公開日】2019年5月9日
【審査請求日】2020年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】大津 一高
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−099731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/54
F16F 3/08
B60G 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクティブダンパのロッドの上端部が固定される内側部材と、
前記内側部材を、ロッド軸回りに沿う周方向に囲う中間部材と、
前記中間部材を、周方向に囲い車体側に取付けられる外側部材と、
前記内側部材と前記中間部材との間に配設され、前記内側部材および前記中間部材を相対的に弾性変位可能に支持する第1弾性体と、
前記中間部材と前記外側部材との間に配設され、前記中間部材および前記外側部材を相対的に弾性変位可能に支持する第2弾性体と、を備え、
前記第1弾性体は、前記第2弾性体を形成する第2ゴム材料より静的ばね定数が高い第1ゴム材料で形成され
前記第2ゴム材料のtanδは、前記第1ゴム材料のtanδより大きいことを特徴とするアクティブダンパ用アッパーマウント。
【請求項2】
アクティブダンパのロッドの上端部が固定される内側部材と、
前記内側部材を、ロッド軸回りに沿う周方向に囲う中間部材と、
前記中間部材を、周方向に囲い車体側に取付けられる外側部材と、
前記内側部材と前記中間部材との間に配設され、前記内側部材および前記中間部材を相対的に弾性変位可能に支持する第1弾性体と、
前記中間部材と前記外側部材との間に配設され、前記中間部材および前記外側部材を相対的に弾性変位可能に支持する第2弾性体と、を備え、
前記第1弾性体は、前記第2弾性体を形成する第2ゴム材料より静的ばね定数が高い第1ゴム材料で形成され
前記第1ゴム材料の動的ばね定数は、前記第2ゴム材料の動的ばね定数より低いことを特徴とするアクティブダンパ用アッパーマウント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブダンパ用アッパーマウントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるような、ダンパのロッドの上端部が固定される内側部材と、内側部材を、ロッド軸回りに沿う周方向に囲う中間部材と、中間部材を、周方向に囲い車体側に取付けられる外側部材と、内側部材と中間部材との間に配設され、内側部材および中間部材を相対的に弾性変位可能に支持する弾性体と、を備えるアッパーマウントが知られている。
一方、前記ダンパとして、発揮する減衰力を制御可能な駆動部を備えるアクティブダンパが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−180872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のアッパーマウントをアクティブダンパに適用すると、駆動部によりロッドに対してロッド軸方向の大きな制御力が加えられたときに、弾性体がロッド軸方向に大きく圧縮変形して過度に硬くなってしまい、この状態で、タイヤ、若しくはアクティブダンパの駆動部等からロッドに振動が伝わると、周波数の高低を問わず、この振動が弾性体で減衰および吸収されず、車体に伝達するおそれがあった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、アクティブダンパのロッドにロッド軸方向の大きな制御力が加えられた状態で、タイヤ、若しくはアクティブダンパの駆動部等からロッドに伝わった振動を、周波数の高低を問わず、減衰および吸収することができるアクティブダンパ用アッパーマウントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るアクティブダンパ用アッパーマウントは、アクティブダンパのロッドの上端部が固定される内側部材と、前記内側部材を、ロッド軸回りに沿う周方向に囲う中間部材と、前記中間部材を、周方向に囲い車体側に取付けられる外側部材と、前記内側部材と前記中間部材との間に配設され、前記内側部材および前記中間部材を相対的に弾性変位可能に支持する第1弾性体と、前記中間部材と前記外側部材との間に配設され、前記中間部材および前記外側部材を相対的に弾性変位可能に支持する第2弾性体と、を備え、前記第1弾性体は、前記第2弾性体を形成する第2ゴム材料より静的ばね定数が高い第1ゴム材料で形成されていることを特徴とする。
【0007】
この発明では、第1ゴム材料の静的ばね定数が、第2ゴム材料の静的ばね定数より高いので、アクティブダンパのロッドにロッド軸方向の大きな制御力が加えられても、第1弾性体がロッド軸方向に大きく圧縮変形して過度に硬くなってしまうのを抑制することができる。したがって、アクティブダンパのロッドにロッド軸方向の大きな制御力が加えられた状態で、タイヤ、若しくはアクティブダンパの駆動部等からロッドに伝わった振動を、周波数の高低を問わず、第2弾性体だけでなく第1弾性体でも減衰および吸収することが可能になり、この振動が車体に伝達するのを抑制することができる。
また、第1弾性体のロッド軸方向の圧縮変形量が抑えられることから、第1弾性体にかかる負荷を抑えることが可能になり、第1弾性体の耐久性を確保することもできる。
特に、ロッドが固定される振動発生部側の内側部材と中間部材との間、並びに、車体側に取付けられる振動受部側の外側部材と中間部材との間に、各別に第1弾性体および第2弾性体が配設されている、つまり、中間部材が、振動発生部側と振動受部側との間で、第1弾性体と第2弾性体とにより挟まれているので、タイヤ、若しくはアクティブダンパの駆動部等からロッドに高周波数の振動が伝わったときに、中間部材を、その慣性重量に起因して振動させにくくすることができる。いわば、中間部材を、ダイナミックダンパのマスとして作用させることができる。したがって、高周波数の振動が車体に伝達するのを確実に抑制することができる。
【0008】
ここで、前記第2ゴム材料のtanδは、前記第1ゴム材料のtanδより大きくてもよい。
【0009】
この場合、第2ゴム材料のtanδが、第1ゴム材料のtanδより大きいので、前述のようにロッドに伝わった振動に起因して中間部材が共振しようとしたときに、第2弾性体の減衰力により、この共振を抑えることができる。
また、静的ばね定数の低い第2ゴム材料のtanδが、静的ばね定数の高い第1ゴム材料のtanδより大きいので、タイヤ、若しくはアクティブダンパの駆動部等からロッドに伝わった高周波の振動を第2弾性体により効果的に減衰および吸収して、この振動が車体に伝達するのを抑制することができる。
【0010】
また、前記第1ゴム材料の動的ばね定数は、前記第2ゴム材料の動的ばね定数より低くてもよい。
【0011】
この場合、第1ゴム材料の動的ばね定数が、第2ゴム材料の動的ばね定数より低いので、タイヤ、若しくはアクティブダンパの駆動部等からロッドに伝わった高周波の振動を、第2弾性体に伝達する前に、第1弾性体により効果的に減衰および吸収しやすくなり、この振動が車体に伝達するのを確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、アクティブダンパのロッドにロッド軸方向の大きな制御力が加えられた状態で、タイヤ、若しくはアクティブダンパの駆動部等からロッドに伝わった振動を、周波数の高低を問わず、減衰および吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るアクティブダンパ用アッパーマウントにアクティブダンパを装着した状態を示す縦断面図である。
図2図1に示すアクティブダンパ用アッパーマウントの拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るアクティブダンパ用アッパーマウントの一実施形態を、図1および図2を参照しながら説明する。アクティブダンパ用アッパーマウント10は、例えばダブルウィッシュボーン式サスペンションに適用される。
【0015】
アクティブダンパ21は、ほぼ上下方向に延設され、ロッド22およびシリンダ23を備える。ロッド22およびシリンダ23は、共通軸と同軸に配設されている。以下、この共通軸をロッド軸Oといい、また、ロッド軸O方向から見てロッド軸Oに交差する方向を径方向という。
ロッド22は、シリンダ23から上方に突出している。ロッド22のうち、シリンダ23から上方に突出した部分は、バンプストッパ33により径方向の外側から囲繞されている。ロッド22の上端部に雄ねじ部が形成されている。シリンダ23の下端部に、不図示のアーム部材に連結されるブラケット24が取付けられている。シリンダ23の外周面には、例えば入力振動の周波数等に応じて、アクティブダンパ21の発揮する減衰力を調整する駆動部21aが取付けられている。駆動部21aとしては例えばポンプ等が挙げられる。シリンダ23の外周面には、スプリング31の下端部を支持する下受板32が取付けられている。下受板32は、環状に形成されるとともに、ロッド軸Oと同軸に配置されている。
【0016】
アクティブダンパ用アッパーマウント10は、アクティブダンパ21のロッド22の上端部が固定される内側部材11と、内側部材11を、ロッド軸O回りに沿う周方向に囲う中間部材12と、中間部材12を、周方向に囲い車体側に取付けられる外側部材13と、内側部材11と中間部材12との間に配設され、内側部材11および中間部材12を相対的に弾性変位可能に支持する第1弾性体14と、中間部材12と外側部材13との間に配設され、中間部材12および外側部材13を相対的に弾性変位可能に支持する第2弾性体15と、を備える。
【0017】
内側部材11は、環状に形成され、その内側にロッド22の上端部が挿入されている。ロッド22の上端部のうち、内側部材11から上方に突出した部分にナット25が螺着されることにより、アクティブダンパ用アッパーマウント10にアクティブダンパ21が取付けられる。内側部材11は、ロッド軸Oと同軸に配置されている。
【0018】
中間部材12は、図2に示されるように、本体筒16と、本体筒16の内周面から径方向の内側に向けて突出した環状の支持板17と、本体筒16の外周面から径方向の外側に向けて突出した環状の上受板18と、上受板18から下方に向けて突出した嵌合筒19と、を備える。本体筒16、支持板17、上受板18、および嵌合筒19は、ロッド軸Oと同軸に配置されている。
本体筒16および支持板17の各内側に、ロッド22のうちシリンダ23から上方に突出した部分が挿入されている。支持板17および上受板18は、本体筒16におけるロッド軸O方向の中間部に位置している。支持板17は、上受板18よりも下方に位置している。
【0019】
本体筒16の内側において、支持板17の上方に位置する部分に、内側部材11が配置されている。本体筒16の内側において、支持板17の下方に位置する部分に、バンプストッパ33の上端部が嵌合されている。本体筒16の下端開口縁は、嵌合筒19の下端開口縁より下方に位置している。
上受板18の下面のうち、嵌合筒19より径方向の外側に位置する部分、および嵌合筒19の外周面が、スプリング31の上端部を支持している。
【0020】
外側部材13は、中間部材12の本体筒16のうち、上受板18より上方に位置する上部16aを径方向の外側から囲う囲繞筒26と、囲繞筒26の下端部から径方向の外側に向けて突出し、上受板18を上方から覆うフランジ部27と、囲繞筒26の上端部から径方向の内側に向けて突出するストッパ突部28と、を備える。囲繞筒26、フランジ部27およびストッパ突部28は、ロッド軸Oと同軸に配置されている。
【0021】
囲繞筒26は、上方から下方に向かうに従い漸次、拡径している。フランジ部27には、周方向に間隔をあけて複数の貫通孔が形成され、これらの貫通孔にボルト29が各別に挿入されることで、外側部材13が車両側に取付けられる。
ストッパ突部28、および本体筒16の上端開口縁それぞれのロッド軸O方向の位置は互いに同等になっている。ストッパ突部28の内周縁は、本体筒16の外周面より径方向の外側に位置している。
【0022】
ここで、中間部材12の本体筒16の上端部内に、リバウンドストッパ34が装着されている。リバウンドストッパ34は、本体筒16の上端部内に嵌合された装着筒34aと、装着筒34aの上端部から径方向の外側に向けて突出した環状のストッパ部34bと、を備える。装着筒34aおよびストッパ部34bは、ロッド軸Oと同軸に配設されている。ストッパ部34bは、外側部材13のストッパ突部28より上方に位置し、ストッパ突部28の上面とロッド軸O方向で対向している。
【0023】
第2弾性体15は、中間部材12における本体筒16の上部16aの外周面、および上受板18の上面と、外側部材13における囲繞筒26の内周面、フランジ部27の下面、およびストッパ突部28と、リバウンドストッパ34におけるストッパ部34bの下面と、に当接している。
【0024】
図示の例では、第2弾性体15は、外側部材13に加硫接着され、中間部材12およびリバウンドストッパ34には、非接着状態で当接している。第2弾性体15は、環状に形成されるとともに、ロッド軸Oと同軸に配置されている。第2弾性体15は、径方向の外側に圧縮変形させられた状態で、中間部材12の本体筒16の上部16aに外嵌されている。第2弾性体15は、ロッド軸O方向に圧縮変形させられた状態で、中間部材12と外側部材13との間に配設されている。
なお、第2弾性体15は、囲繞筒26およびフランジ部27に当接した部分と、ストッパ突部28に当接した部分と、に分割されていてもよい。第2弾性体15は、外側部材13に非接着状態で当接し、中間部材12およびリバウンドストッパ34の少なくとも一方に加硫接着されてもよい。第2弾性体15は、リバウンドストッパ34のストッパ部34bに非接触であってもよい。
【0025】
中間部材12の本体筒16内に、リバウンドストッパ34の装着筒34aの下端開口縁が当接若しくは近接した環状の押え板35が配設されている。押え板35は、内側部材11の上方に配置されている。押え板35の内側に、ナット25が配置されている。
第1弾性体14は、中間部材12における本体筒16の内周面のうち、支持板17より上方に位置する部分、および支持板17の上面と、内側部材11における上面、下面、および外周面と、押え板35の下面と、に当接している。第1弾性体14は、ロッド軸O方向、および径方向の双方向に圧縮変形している。第1弾性体14は、押え板35、中間部材12、および内側部材11に非接着状態で当接している。なお、第1弾性体14は、押え板35、中間部材12、および内側部材11のうちの少なくとも1つに接着されてもよい。
【0026】
第1弾性体14において、押え板35の下面と、内側部材11の上面と、の間に位置する部分におけるロッド軸O方向の厚さ、支持板17の上面と、内側部材11の下面と、の間に位置する部分におけるロッド軸O方向の厚さ、および、中間部材12の本体筒16の内周面のうち、支持板17より上方に位置する部分と、内側部材11の外周面と、の間に位置する部分における径方向の厚さは、互いに同等になっている。なお、これらの各厚さを互いに異ならせてもよい。
【0027】
第2弾性体15の体積は、第1弾性体14の体積より大きい。
第2弾性体15において、中間部材12の本体筒16の上部16aの外周面と、外側部材13の囲繞筒26の内周面と、の間に位置する部分における径方向の厚さは、第1弾性体14において、中間部材12の本体筒16の内周面のうち、支持板17より上方に位置する部分と、内側部材11の外周面と、の間に位置する部分における径方向の厚さより厚くなっている。
【0028】
第2弾性体15において、中間部材12の上受板18の上面と、外側部材13のフランジ部27の下面と、の間に位置する部分におけるロッド軸O方向の厚さは、第1弾性体14において、押え板35の下面と、内側部材11の上面と、の間に位置する部分におけるロッド軸O方向の厚さ、および支持板17の上面と、内側部材11の下面と、の間に位置する部分におけるロッド軸O方向の厚さより厚くなっている。
【0029】
第1弾性体14は、第2弾性体15を形成する第2ゴム材料より静的ばね定数が高い第1ゴム材料で形成されている。
静的ばね定数は、JIS K 6385:2012における6「静的ばね特性試験」の6.5「試験方法」の「往復方式」に規定された方法によって測定することができる。測定条件(JIS K 6385:2012における6.4「試験条件」)については、試験温度を適用車両での使用環境相当とすることができる。
【0030】
第2ゴム材料のtanδは、第1ゴム材料のtanδより大きい。tanδは、動的引張粘弾性測定装置(例えば、株式会社上島製作所製スペクトロメーター)を用いて、測定温度25℃、初期ひずみ5%、動ひずみ2%、周波数10Hzの条件で測定できる。
【0031】
第1ゴム材料の動的ばね定数は、第2ゴム材料の動的ばね定数より低い。
動的ばね定数Kdは、日本ゴム協会標準規格(SRIS)3503−1990における6.1「非共振方法」の6.1.1「荷重波形、たわみ波形による場合」に規定された方法によって測定することができる。測定条件(SRIS 3503−1990における4.3「試験の指定条件」)については、試験温度を適用車両での使用環境相当とし、試験振動数を適用車両のばね下共振周波数前後とし、平均荷重を適用車両のスプリング1G荷重相当とし、荷重振幅を適用車両での使用条件とすることができる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態によるアクティブダンパ用アッパーマウント10によれば、第1ゴム材料の静的ばね定数が、第2ゴム材料の静的ばね定数より高いので、アクティブダンパ21のロッド22にロッド軸O方向の大きな制御力が加えられても、第1弾性体14がロッド軸O方向に大きく圧縮変形して過度に硬くなってしまうのを抑制することができる。したがって、アクティブダンパ21のロッド22にロッド軸O方向の大きな制御力が加えられた状態で、タイヤ、若しくはアクティブダンパ21の駆動部21a等からロッド22に伝わった振動を、周波数の高低を問わず、第2弾性体15だけでなく第1弾性体14でも減衰および吸収することが可能になり、この振動が車体に伝達するのを抑制することができる。
また、第1弾性体14のロッド軸O方向の圧縮変形量が抑えられることから、第1弾性体14にかかる負荷を抑えることが可能になり、第1弾性体14の耐久性を確保することもできる。
【0033】
特に、ロッド22が固定される振動発生部側の内側部材11と中間部材12との間、並びに、車体側に取付けられる振動受部側の外側部材13と中間部材12との間に、各別に第1弾性体14および第2弾性体15が配設されている、つまり、中間部材12が、振動発生部側と振動受部側との間で、第1弾性体14と第2弾性体15とにより挟まれているので、タイヤ、若しくはアクティブダンパ21の駆動部21a等からロッド22に高周波数の振動が伝わったときに、中間部材12を、その慣性重量に起因して振動させにくくすることができる。いわば、中間部材12を、ダイナミックダンパのマスとして作用させることができる。したがって、高周波数の振動が車体に伝達するのを確実に抑制することができる。
【0034】
また、第2ゴム材料のtanδが、第1ゴム材料のtanδより大きいので、前述のようにロッド22に伝わった振動に起因して中間部材12が共振しようとしたときに、第2弾性体15の減衰力により、この共振を抑えることができる。
また、静的ばね定数の低い第2ゴム材料のtanδが、静的ばね定数の高い第1ゴム材料のtanδより大きいので、タイヤ、若しくはアクティブダンパ21の駆動部21a等からロッド22に伝わった高周波の振動を第2弾性体15により効果的に減衰および吸収して、この振動が車体に伝達するのを抑制することができる。
【0035】
また、第1ゴム材料の動的ばね定数が、第2ゴム材料の動的ばね定数より低いので、タイヤ、若しくはアクティブダンパ21の駆動部21a等からロッド22に伝わった高周波の振動を、第2弾性体15に伝達する前に、第1弾性体14により効果的に減衰および吸収しやすくなり、この振動が車体に伝達するのを確実に抑制することができる。
【0036】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0037】
前記実施形態では、リバウンドストッパ34、押え板35、および外側部材13のストッパ突部28を備える構成を示したが、これらを有しない構成を採用してもよい。
前記実施形態では、第2弾性体15として、ストッパ突部28とリバウンドストッパ34のストッパ部34bとの間に位置する部分を有する構成を示したが、この部分を有しない構成を採用してもよい。
前記実施形態では、第2ゴム材料のtanδが、第1ゴム材料のtanδより大きい構成を示したが、第2ゴム材料のtanδを、第1ゴム材料のtanδ以下としてもよい。
前記実施形態では、第1ゴム材料の動的ばね定数が、第2ゴム材料の動的ばね定数より低い構成を示したが、第1ゴム材料の動的ばね定数を、第2ゴム材料の動的ばね定数以上としてもよい。
【0038】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10 アクティブダンパ用アッパーマウント
11 内側部材
12 中間部材
13 外側部材
14 第1弾性体
15 第2弾性体
21 アクティブダンパ
22 ロッド
O ロッド軸
図1
図2