特許第6937222号(P6937222)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6937222
(24)【登録日】2021年9月1日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】自動分析装置及び磁気攪拌装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20210909BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
   G01N35/02 D
   G01N35/00 C
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-210421(P2017-210421)
(22)【出願日】2017年10月31日
(65)【公開番号】特開2019-82419(P2019-82419A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2020年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】飯田 晋
【審査官】 佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−43400(JP,A)
【文献】 特開2002−311034(JP,A)
【文献】 特開平1−229974(JP,A)
【文献】 特開2009−25167(JP,A)
【文献】 特開2013−217882(JP,A)
【文献】 特開2016−85093(JP,A)
【文献】 特開2010−32386(JP,A)
【文献】 特開2012−127756(JP,A)
【文献】 特開2014−153104(JP,A)
【文献】 特開2015−16468(JP,A)
【文献】 米国特許第5192984(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N35/00−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬容器から試薬を吸引する試薬吸引位置へ、前記試薬容器を搬送可能に保持する搬送手段と、
前記搬送手段と、前記搬送手段により搬送される試薬容器とを格納可能に形成される筐体と、
前記試薬吸引位置とは異なる位置に設けられ、前記試薬容器内に投入されている磁気攪拌子を駆動させる攪拌手段と、
前記筐体の前記試薬吸引位置近傍の内側側壁に、前記試薬容器の底面と同程度の位置、又は前記底面よりも低い位置で保持され、前記試薬容器内の前記磁気攪拌子を引きつける引きつけ手段と
を具備する磁気攪拌装置。
【請求項2】
前記引きつけ手段は、前記試薬吸引位置に位置する前記試薬容器内の前記磁気攪拌子を、前記試薬容器の底に接触させたまま前記試薬容器の内壁まで引きつける磁力を有する請求項1記載の磁気攪拌装置。
【請求項3】
前記攪拌手段は、前記試薬容器の内径の半分を超える長さの磁気攪拌子を駆動させる請求項1又は2記載の磁気攪拌装置。
【請求項4】
前記引きつけ手段は、前記筐体の前記試薬吸引位置近傍の内側側壁に、前記搬送手段の搬送方向に沿って保持される複数の永久磁石である請求項1乃至3のいずれかに記載の磁気攪拌装置。
【請求項5】
前記引きつけ手段は、両極の磁場を前記試薬容器にかける永久磁石である請求項1乃至3のいずれかに記載の磁気攪拌装置。
【請求項6】
前記永久磁石は、いずれか一方の極の影響が大きくなるように配置される請求項5記載の磁気攪拌装置。
【請求項7】
前記永久磁石は、前記試薬容器と対向する面が順次切り替わるように、回転可能に設置される請求項5記載の磁気攪拌装置。
【請求項8】
前記筐体は、前記試薬吸引位置と対応する底面に第2の永久磁石を保持する請求項5記載の磁気攪拌装置。
【請求項9】
前記引きつけ手段は、電磁石であり、
前記電磁石の磁力を制御する磁力制御部をさらに具備する請求項1乃至3のいずれかに記載の磁気攪拌装置。
【請求項10】
前記磁力制御部は、前記試薬容器が前記試薬吸引位置へ搬送されると、前記電磁石の磁力を強める請求項9記載の磁気攪拌装置。
【請求項11】
試薬吸引位置に位置する試薬容器から試薬を吸引する吸引部と、
試薬を収容する複数の試薬容器を格納可能な試薬庫と
を具備し、
前記試薬庫は、
前記試薬吸引位置へ、前記試薬容器を搬送可能に保持する搬送手段と、
前記試薬吸引位置とは異なる位置に設けられ、前記試薬容器内に投入されている磁気攪拌子を駆動させる攪拌手段と、
前記試薬吸引位置近傍の内側側壁に、前記試薬容器の底面と同程度の位置、又は前記底面よりも低い位置で保持され、前記試薬容器内の前記磁気攪拌子を引きつける引きつけ手段と
を備える自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、自動分析装置及び磁気攪拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査用の自動分析装置では、血液及び尿等の生体試料(以下、試料と称する)と試薬とを一定量混合して反応させ、この混合液に光を当てて得られる透過光又は散乱光の光量を測定することで、測定対象物質の濃度、活性値、及び変化に掛かる時間等を求めている。
【0003】
試薬は、試薬容器に収容されて試薬庫で保冷されている。試薬は、測定に基づくタイミングで試薬分注プローブにより試薬容器から吸引され、反応容器へ吐出される。凍結乾燥品試薬等の攪拌が必要な試薬は、試薬庫に設けられているスターラーと、各試薬容器に投入されている攪拌子とにより定期的に攪拌される。
【0004】
ところで、試薬を攪拌した後、攪拌子は、試薬容器の底に不規則に沈んでいる。そのため、試薬容器内の攪拌子が、試薬を吸引するため試薬容器に挿入される試薬分注プローブに干渉するのを回避するため、試薬分注プローブの先端を攪拌子より上の位置で停止させる必要がある。この場合、試薬容器底部から攪拌子上端以上の試薬のデッドボリュームが発生することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−217882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで目的は、試薬容器底部におけるデッドボリュームを極小化することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、磁気攪拌装置は、搬送手段、筐体、攪拌手段、及び引きつけ手段を備える。搬送手段は、試薬容器から試薬を吸引する試薬吸引位置へ、前記試薬容器を搬送可能に保持する。筐体は、前記搬送手段と、前記搬送手段により搬送される試薬容器とを格納可能に形成される。攪拌手段は、前記試薬吸引位置とは異なる位置に設けられ、前記試薬容器内に投入されている磁気攪拌子を駆動させる。引きつけ手段は、前記筐体の前記試薬吸引位置近傍の内側側壁に、前記試薬容器の底面と同程度の位置、又は前記底面よりも低い位置で保持され、前記試薬容器内の前記磁気攪拌子を引きつける。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係る自動分析装置の機能構成を表すブロック図である。
図2図2は、図1に示される分析機構の構成を表す図である。
図3図3は、図2に示される試薬庫の上面図を表す図である。
図4図4は、図3に示される試薬庫の断面図を表す図である。
図5図5は、永久磁石に引きつけられた攪拌子を表す図である。
図6図6は、図4に示される試薬庫に試薬分注プローブが挿入された際の状態を表す図である。
図7図7は、永久磁石が攪拌子へ与える影響の例を表す図である。
図8図8は、永久磁石が攪拌子へ与える影響の例を表す図である。
図9図9は、両極の磁場を試薬容器にかける場合の永久磁石の配置を表す図である。
図10図10は、図9に示される永久磁石の配置例を表す図である。
図11図11は、図9に示される永久磁石の配置例を表す図である。
図12図12は、永久磁石を筐体の底面にも配置する際の例を表す図である。
図13図13は、図12のように永久磁石が配置された際の試薬庫の断面図を表す図である。
図14図14は、第2の実施形態に係る自動分析装置の機能構成を表すブロック図である。
図15図15は、第2の実施形態に係る自動分析装置の試薬庫の断面図を表す図である。
図16図16は、図14に示される制御回路の処理動作のフローチャートを表す図である。
図17図17は、試薬庫のその他の構成の上面図を表す図である。
図18図18は、図17に示される試薬庫の断面図を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る自動分析装置1の機能構成の例を示すブロック図である。図1に示される自動分析装置1は、分析機構2、解析回路3、駆動機構4、入力インタフェース5、出力インタフェース6、通信インタフェース7、記憶回路8、及び制御回路9を備える。
【0011】
分析機構2は、標準試料、又は被検試料等の試料と、この試料に設定される各検査項目で用いられる試薬とを混合する。分析機構2は、試料と試薬との混合液を測定し、例えば吸光度又は散乱光強度等で表される標準データ、及び被検データを生成する。
【0012】
解析回路3は、分析機構2により生成される標準データ、及び被検データを解析することで、検量データ、及び分析データ等を生成するプロセッサである。解析回路3は、記憶回路8から動作プログラムを読み出し、読み出した動作プログラムに従って検量データ、及び分析データ等を生成する。例えば、解析回路3は、標準データに基づき、標準データと標準試料について予め設定された標準値との関係を示す検量データを生成する。また、解析回路3は、被検データと、この被検データに対応する検査項目の検量データとに基づき、濃度値、酵素の活性値、及び変化にかかる時間として表される分析データを生成する。解析回路3は生成した検量データ、及び分析データ等を制御回路9へ出力する。
【0013】
駆動機構4は、制御回路9の制御に従い、分析機構2を駆動させる。駆動機構4は、例えば、ギア、ステッピングモータ、ベルトコンベア、及びリードスクリュー等により実現される。
【0014】
入力インタフェース5は、例えば、操作者から、又は病院内ネットワークNWを介して測定を依頼された試料に係る各検査項目の分析パラメータ等の設定を受け付ける。入力インタフェース5は、例えば、マウス、キーボード、及び、操作面へ触れることで指示が入力されるタッチパッド等により実現される。入力インタフェース5は、制御回路9に接続され、操作者から入力される操作指示を電気信号へ変換し、電気信号を制御回路9へ出力する。なお、本明細書において入力インタフェース5はマウス、及びキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、自動分析装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力される操作指示に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路9へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース5の例に含まれる。
【0015】
出力インタフェース6は、制御回路9に接続され、制御回路9から供給される信号を出力する。出力インタフェース6は、例えば、表示回路、印刷回路、及び音声デバイス等により実現される。表示回路には、例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、及びプラズマディスプレイ等が含まれる。なお、表示対象を表すデータをビデオ信号に変換し、ビデオ信号を外部へ出力する処理回路も表示回路に含まれる。印刷回路は、例えば、プリンタ等を含む。なお、印刷対象を表すデータを外部へ出力する出力回路も印刷回路に含まれる。音声デバイスは、例えば、スピーカ等を含む。なお、音声信号を外部へ出力する出力回路も音声デバイスに含まれる。
【0016】
通信インタフェース7は、例えば、病院内ネットワークNWと接続する。通信インタフェース7は、病院内ネットワークNWを介してHIS(Hospital Information System)とデータ通信を行う。なお、通信インタフェース7は、病院内ネットワークNWと接続する検査部門システム(Laboratory Information System:LIS)を介してHISとデータ通信を行っても構わない。
【0017】
記憶回路8は、磁気的、若しくは光学的記録媒体、又は半導体メモリ等の、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体等を含む。なお、記憶回路8は、必ずしも単一の記憶装置により実現される必要は無い。例えば、記憶回路8は、複数の記憶装置により実現されても構わない。
【0018】
記憶回路8は、解析回路3で実行される動作プログラム、及び制御回路9に備わる機能を実現するための動作プログラムを記憶している。記憶回路8は、解析回路3により生成される検量データを検査項目毎に記憶する。記憶回路8は、解析回路3により生成される分析データを被検試料毎に記憶する。記憶回路8は、操作者から入力された検査オーダ、又は通信インタフェース7が病院内ネットワークNWを介して受信した検査オーダを記憶する。
【0019】
制御回路9は、自動分析装置1の中枢として機能するプロセッサである。制御回路9は、記憶回路8に記憶されている動作プログラムを実行することで、この動作プログラムに対応する機能を実現する。なお、制御回路9は、記憶回路8で記憶されているデータの少なくとも一部を記憶する記憶領域を備えても構わない。
【0020】
図2は、図1に示される分析機構2の構成の一例を示す模式図である。図2に示される分析機構2は、反応ディスク201、恒温部202、ラックサンプラ203、及び試薬庫204を備える。
【0021】
反応ディスク201は、反応容器2011を所定の経路に沿って搬送する搬送部の一例である。具体的には、反応ディスク201は、複数の反応容器2011を、環状に配列させて保持する。反応ディスク201は、駆動機構4により、既定の時間間隔で回動と停止とが交互に繰り返される。反応容器2011は、例えば、ガラスにより形成されている。
【0022】
恒温部202は、所定の温度に設定された熱媒体を貯留し、貯留する熱媒体に反応容器2011を浸漬させることで、反応容器2011に収容される混合液を昇温する。
【0023】
ラックサンプラ203は、測定を依頼された試料を収容する複数の試料容器を保持可能な試料ラック2031を、移動可能に支持する。図2に示す例では、5本の試料容器を並列して保持可能な試料ラック2031が示されている。
【0024】
ラックサンプラ203には、試料ラック2031が投入される投入位置から、測定が完了した試料ラック2031を回収する回収位置まで試料ラック2031を搬送する搬送領域が設けられている。搬送領域では、長手方向に整列された複数の試料ラック2031が、駆動機構4により、方向D1へ移動される。
【0025】
また、ラックサンプラ203には、試料ラック2031で保持される試料容器を所定のサンプル吸引位置へ移動させるため、試料ラック2031を搬送領域から引き込む引き込み領域が設けられている。サンプル吸引位置は、例えば、サンプル分注プローブ207の回動軌道と、ラックサンプラ203で支持されて試料ラック2031で保持される試料容器の開口部の移動軌道とが交差する位置に設けられる。引き込み領域では、搬送されてきた試料ラック2031が、駆動機構4により、方向D2へ移動される。
【0026】
また、ラックサンプラ203には、試料が吸引された試料容器を保持する試料ラック2031を搬送領域へ戻すための戻し領域が設けられている。戻し領域では、試料ラック2031が、駆動機構4により、方向D3へ移動される。
【0027】
試薬庫204は、標準試料、及び被検試料に含まれる所定の成分と反応する試薬を収容する試薬容器100を複数保冷する。本実施形態において、図2では図示していないが、試薬庫204は、着脱自在な試薬カバーにより覆われている。試薬庫204内には、回転テーブルが回転自在に設けられている。回転テーブルは、複数の試薬容器100を円環状に載置して保持する。
【0028】
試薬庫204の所定の位置には、試薬吸引位置P1が設定されている。試薬吸引位置P1は、例えば、試薬分注プローブ209の回動軌道と、回転テーブルに円環状に載置される試薬容器100の開口部の移動軌道とが交差する位置に設けられる。
【0029】
試薬容器100は、例えば、内径が20mm程度の円筒状のガラス製の容器である。試薬容器100には、定期的な攪拌を要する試薬、例えば、凍結乾燥品試薬等が収容されている。試薬容器100には、収容されている試薬を攪拌するための、磁性体の攪拌子200が投入されている。試薬を効果的に攪拌するため、攪拌子200の長さは、例えば、試薬容器100の内径の半分の長さよりも長い程度が望ましい。具体的には、本実施形態において、攪拌子200の長さは10〜15mm程度である。
【0030】
また、図2に示される分析機構2は、サンプル分注アーム206、サンプル分注プローブ207、試薬分注アーム208、試薬分注プローブ209、攪拌ユニット210、測光ユニット211、及び洗浄ユニット212を備える。
【0031】
サンプル分注アーム206は、反応ディスク201とラックサンプラ203との間に設けられている。サンプル分注アーム206は、駆動機構4により、鉛直方向に上下動自在、かつ、水平方向に回動自在に設けられている。サンプル分注アーム206は、一端にサンプル分注プローブ207を保持する。
【0032】
サンプル分注プローブ207は、サンプル分注アーム206の回動に伴い、円弧状の回動軌道に沿って回動する。この回動軌道上には、ラックサンプラ203上の試料ラック2031で保持される試料容器の開口部が位置するようになっている。また、サンプル分注プローブ207の回動軌道上には、サンプル分注プローブ207が吸引した試料を反応容器2011へ吐出するためのサンプル吐出位置が設けられている。サンプル吐出位置は、サンプル分注プローブ207の回動軌道と、反応ディスク201に保持されている反応容器2011の移動軌道との交点に相当する。
【0033】
サンプル分注プローブ207は、駆動機構4によって駆動され、ラックサンプラ203上の試料ラック2031で保持される試料容器の開口部の直上、又は、サンプル吐出位置において上下方向に移動する。また、サンプル分注プローブ207は、制御回路9の制御に従い、直下に位置する試料容器から試料を吸引する。また、サンプル分注プローブ207は、制御回路9の制御に従い、吸引した試料を、サンプル吐出位置の直下に位置する反応容器2011へ吐出する。
【0034】
試薬分注アーム208は、反応ディスク201と試薬庫204との間に設けられている。試薬分注アーム208は、駆動機構4により、鉛直方向に上下動自在、かつ、水平方向に回動自在に設けられている。試薬分注アーム208は、一端に試薬分注プローブ209を保持する。
【0035】
試薬分注プローブ209は、試薬分注アーム208の回動に伴い、円弧状の回動軌道に沿って回動する。この回動軌道上には、試薬吸引位置P1が設けられている。また、試薬分注プローブ209の回動軌道上には、試薬分注プローブ209が吸引した試薬を反応容器2011へ吐出するための試薬吐出位置が設定されている。試薬吐出位置は、試薬分注プローブ209の回動軌道と、反応ディスク201に保持されている反応容器2011の移動軌道との交点に相当する。
【0036】
試薬分注プローブ209は、駆動機構4によって駆動され、回動軌道上の試薬吸引位置P1、又は試薬吐出位置において上下方向に移動する。また、試薬分注プローブ209は、制御回路9の制御に従い、試薬吸引位置P1で停止している試薬容器から試薬を吸引する。すなわち、試薬分注プローブ209は、吸引部の一例である。また、試薬分注プローブ209は、制御回路9の制御に従い、吸引した試薬を、試薬吐出位置の直下に位置する反応容器2011へ吐出する。
【0037】
攪拌ユニット210は、反応ディスク201の外周近傍に設けられている。攪拌ユニット210は、攪拌子を有し、攪拌子により、反応ディスク201上の攪拌位置に位置する反応容器2011内に収容されている試料及び試薬を攪拌する。
【0038】
測光ユニット211は、反応容器2011内に吐出された試料と試薬との混合液における所定の成分を光学的に測定する。測光ユニット211は、光源、及び光検出器を有する。測光ユニット211は、制御回路9の制御に従い、光源から光を照射する。照射された光は、反応容器2011の第1側壁から入射され、第1側壁と対向する第2側壁から出射される。測光ユニット211は、反応容器2011から出射された光を、光検出器により検出する。
【0039】
具体的には、例えば、光検出器は、反応容器2011内の標準試料と試薬との混合液を通過した光を検出し、検出した光の強度に基づき、吸光度等により表される標準データを生成する。また、光検出器は、反応容器2011内の被検試料と試薬との混合液を通過した光を検出し、検出した光の強度に基づき、吸光度等により表される被検データを生成する。測光ユニット211は、生成した標準データ、及び被検データを解析回路3へ出力する。
【0040】
洗浄ユニット212は、測光ユニット211で混合液の測定が終了した反応容器2011の内部を洗浄する。
【0041】
図1に示される制御回路9は、記憶回路8に記憶されている動作プログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。例えば、制御回路9は、動作プログラムを実行することで、システム制御機能91を有する。なお、本実施形態では、単一のプロセッサによってシステム制御機能91が実現される場合を説明するが、これに限定されない。例えば、複数の独立したプロセッサを組み合わせて制御回路を構成し、各プロセッサが動作プログラムを実行することによりシステム制御機能91を実現しても構わない。
【0042】
システム制御機能91は、入力インタフェース5から入力される入力情報に基づき、自動分析装置1における各部を統括して制御する機能である。
【0043】
次に、試薬容器100が保冷される試薬庫204について詳細に説明する。図3及び図4は、第1の実施形態に係る試薬庫204の構成例を表す模式図である。図3は、試薬庫204の上面図を表し、図4は、図3におけるA−A断面図を表す。なお、図3及び図4に示される試薬庫204は、磁気攪拌装置と称しても構わない。図3及び図4に示される試薬庫204は、試薬カバー2041、筐体2042、テーブル回転機構2043、スターラー2044、及び永久磁石2045を有する。
【0044】
試薬カバー2041には、試薬吸引口H1が設けられている。試薬吸引口H1は、試薬カバー2041を貫通する孔であり、試薬分注プローブ209の回動軌道と、試薬容器100の開口部の移動軌道とが交差する位置に設けられる。
【0045】
筐体2042は、上端に開口部を有し、内部にテーブル回転機構2043が備える回転テーブル20431を収容可能に形成されている。筐体2042は、開口部が試薬カバー2041により覆われている。筐体2042は、内面部が熱伝導性に優れたアルミニウム等の材料により形成されている。また、筐体2042は、内面部を覆うように形成される、断熱材から成る断熱部を有する。
【0046】
筐体2042は、内側側面に永久磁石2045を保持している。永久磁石2045は、図3に示されるように、試薬庫204の中心に対して試薬吸引口H1と略同一方向の筐体2042の内側側面に保持されている。永久磁石2045が保持される高さは、例えば、回転テーブル20431上に載置される試薬容器100の底部と略同程度の位置、又はそれより低い位置である。この高さは、試薬容器100の底で停止している攪拌子200と略同程度の位置、又はそれより低い位置と換言可能である。
【0047】
テーブル回転機構2043は、制御回路9の制御に従い、試薬容器100を試薬吸引位置P1へ搬送する搬送手段の一例である。テーブル回転機構2043は、試薬容器100を載置する回転テーブル20431と、この回転テーブル20431を回動させるモータ20432とを備える。
【0048】
回転テーブル20431は、円板形状をしており、表面に複数の試薬容器100が載置される。回転テーブル20431は、略中心に回転軸を有し、回転軸によりモータ20432と接続する。モータ20432は、制御回路9の制御に従って駆動し、回転軸を介して回転テーブル20431へ動力を伝達させる。これにより、モータ20432は、回転テーブル20431に載置される複数の試薬容器100うちいずれかの試薬容器100が、試薬吸引口H1の直下の位置、すなわち、試薬吸引位置P1で停止するように回転テーブル20431を回動させる。回転テーブル20431は、モータ20432の駆動により、回動と停止とが繰り返される。
【0049】
スターラー2044は、試薬容器100に投入された攪拌子200を回転駆動させることで、試薬容器100に収容されている試薬を攪拌する攪拌手段の一例である。スターラー2044は、試薬容器100が停止する停止位置のうち、試薬吸引位置P1以外の停止位置のいずれかの下方に設けられる。本実施形態では、スターラー2044は、試薬吸引位置P1と、回転テーブル20431の中心軸を挟んで対向する位置の、回転テーブル20431の裏側に設けられる。
【0050】
スターラー2044は、永久磁石20441と、この永久磁石20441を回動させるモータ20442とを備える。永久磁石20441は、例えば、回転軸によりモータ20442に直結された円状の板に2つの円形磁石が対角に設けられて成る。このとき、円形磁石の極性は反転させられている。モータ20442は、制御回路9の制御に従って駆動し、回転軸を介して永久磁石20441へ動力を伝達させる。これにより、永久磁石20441は、試薬容器100が停止している期間、モータ20442の駆動により回動する。
【0051】
永久磁石2045は、試薬吸引位置P1で停止する試薬容器100内の攪拌子200を引きつける引きつけ手段の一例である。永久磁石2045は、試薬容器100の底面に接触したまま壁面方向へ引き寄せることが可能な程度の磁力を有する。図5は、永久磁石2045が試薬容器100内の攪拌子200を試薬容器100の底面に接触させたまま壁面に引き寄せた際の模式図を表す。
【0052】
次に、以上のように構成される自動分析装置1における試薬吸引時の動作を説明する。
【0053】
例えば、自動分析装置1が所定の検査項目についての測定を行う際、試薬分注アーム208は、試薬分注プローブ209を試薬吸引位置P1へ移動させるように回動する。試薬分注アーム208が回動している際、回転テーブル20431は、ユーザが所望する試薬容器100を試薬吸引位置P1へ移動させるように回動する。
【0054】
回転テーブル20431が回動し、試薬容器100が試薬吸引位置P1へ近づくにつれ、試薬容器100は、筐体2042に設けられている永久磁石2045に近づくことになる。試薬容器100内の攪拌子200は、永久磁石2045へ近づくにつれ、永久磁石2045からの引力を受ける。そして、試薬容器100が試薬吸引位置P1へ到達すると、試薬容器100内の攪拌子200は、図5に示されるように試薬容器100の底面に接触したまま、試薬容器100の内壁面へ引き寄せられた状態となる。
【0055】
試薬分注プローブ209、及び所望の試薬容器100が試薬吸引位置P1へ到達すると、試薬分注プローブ209が下降される。下降された試薬分注プローブ209は、試薬庫204の試薬吸引口H1を通過し、試薬容器100へ挿入される。このとき、試薬分注プローブ209の挿入位置は、試薬容器100の中心近傍である。試薬容器100に挿入された試薬分注プローブ209は、試薬容器100に収容される試薬を吸引する。
【0056】
試薬分注プローブ209が試薬容器100へ挿入される際、攪拌子200は、図5に示されるように試薬容器100の底面に接触したまま壁面に引き寄せられた状態となる。図6は、試薬分注プローブ209が挿入された際の試薬庫204の状態の例を表す模式図である。図6に示されるように、攪拌子200は、試薬分注プローブ209が通過する位置から退避され、かつ、試薬に最大限浸漬することになる。
【0057】
以上のように、第1の実施形態では、試薬吸引口H1と略同一方向の、試薬庫204の内側側壁の、試薬容器100の底部と略同程度又はそれより低い位置に永久磁石2045を保持するようにしている。これにより、試薬容器100へ試薬分注プローブ209を挿入する際に、試薬容器100内の攪拌子200を、試薬容器100の底面に接触させたまま壁面に引き寄せることが可能となる。このため、試薬分注プローブ209と攪拌子200との接触を回避しながら、試薬容器100に残る試薬の高さを最大とすることが可能となる。すなわち、試薬分注プローブ209の先端を攪拌子200より上の位置で停止させる必要がなくなると共に、残った試薬を無駄なく吸引することが可能となる。
【0058】
したがって、第1の実施形態に係る自動分析装置1によれば、試薬容器100底部におけるデッドボリュームを極小化することができる。
【0059】
なお、第1の実施形態では、筐体2042の内側側面に永久磁石2045を1つだけ保持する場合を例に説明した。しかしながら、これに限定されない。永久磁石は、例えば、試薬容器100内の攪拌子200へ段階的に磁力を及ぼすように、複数保持されていても構わない。
【0060】
図7及び図8は、3つの永久磁石2045−1〜2045−3が筐体2042の内側側面に、回転テーブル20431の回動方向に沿って設けられている場合の例を表す図である。図7及び図8において、永久磁石2045−1〜2045−3は、筐体2042の内側側面に沿って保持されている。このとき、中央に配置される永久磁石2045−1が保持される高さは、例えば、回転テーブル20431上に載置される試薬容器100の底部と略同程度の位置、又はそれより低い位置である。永久磁石2045−1の隣に配置される永久磁石2045−2,2045−3が保持される高さは、永久磁石2045−1と略同一であってもよいし、異なっていてもよい。ただし、永久磁石2045−1〜2045−3が保持される高さが略同一である場合は、永久磁石2045−2,2045−3の磁力は、中央に位置する永久磁石2045−1の磁力よりも弱い。一方、永久磁石2045−1が保持される高さと、永久磁石2045−2,2045−3が保持される高さとが異なる場合、永久磁石2045−1〜2045−3の磁力は同程度であっても構わない。こうすることで、永久磁石2045−2,2045−3が攪拌子200に及ぼす磁力は、永久磁石2045−1が攪拌子200に及ぼす磁力よりも弱くなる。また、試薬容器100に面している永久磁石2045−1〜2045−3の極性はそれぞれ同一である。
【0061】
回転テーブル20431が図7及び図8で示される方向で回動し、試薬容器100が試薬吸引位置P1へ近づく際、試薬容器100内の攪拌子200は、永久磁石2045−2又は永久磁石2045−3にまず引きつけられ、その後に永久磁石2045−1に引きつけられることになる。このように、攪拌子200が試薬容器100の側面へ段階的に引きつけられるようになるため、攪拌子200の急激な移動を防ぐことが可能となる。これにより、試薬の泡立ち等を抑えることが可能となる。
【0062】
また、第1の実施形態では、試薬容器100と面する永久磁石2045の極性は、S極かN極かのいずれか一方である場合を例に説明した。しかしながら、これに限定されない。試薬容器100内の攪拌子200には、両極の磁力が影響を及ぼしても構わない。図9は、両極の磁場を試薬容器100にかける場合の永久磁石2045の配置例を表す図である。図9によれば、永久磁石2045の側面が試薬容器100の側面に対向するように、筐体2042内に永久磁石2045を取り付ける。こうすることにより、攪拌子200の両端が必ず試薬容器100の内壁に接触するようになる。なお、2つの永久磁石を、異なる極が試薬容器100に面するように並べて筐体2042内に配置しても構わない。
【0063】
一方で、試薬容器100が回転テーブル20431により回動されながら永久磁石2045に近づく場合、図9に示される配列では、攪拌子200のN極と永久磁石2045のN極が最初に反発し、その後にそれぞれのN極とS極とが引きつけられるようになる。この場合、攪拌子200が暴れることになり、試薬に泡等が発生する懸念がある。そして、攪拌子200が暴れることによる影響は、試薬が少量のときにより顕著である。
【0064】
そこで、例えば、図10及び図11のように、永久磁石2045を配置することで攪拌子200の挙動を抑えるようにしてもよい。図10では、例えば、永久磁石2045を、永久磁石2045の側面と試薬容器100の側面とが対向する位置から、所定の角度だけ回転させて設置するようにしている。これにより、一方の極の影響が強まることになり、S極とN極との間のバランスが崩れることになる。また、図11では、例えば、永久磁石2045を、試薬容器100に対向する面が順次切り替わるようにフリー回転させるようにしている。これにより、攪拌子200に対して影響を及ぼす極が順次切り替わることになる。このように永久磁石2045を配置することで、攪拌子200の挙動を抑えられ、試薬での泡等の発生を抑えることが可能となる。
【0065】
また、図12及び図13で示されるように、永久磁石2046を配置することで攪拌子200の挙動を抑えるようにしてもよい。図12及び図13で示されるように、筐体2042の底面の試薬吸引位置P1に対応する位置に永久磁石2046を配置する。これにより、永久磁石2046により攪拌子200の一方の端部が引きつけられ、他方の端部が永久磁石2045へ引きつけられるようになる。このようにすることで、攪拌子200の挙動を抑えられ、試薬での泡等の発生を抑えることが可能となる。
【0066】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、永久磁石2045を試薬庫204に設ける場合を例に説明した。しかしながら、これに限定されない。試薬庫204aに設けられる磁石は、電磁石2047であってもよい。
【0067】
図14は、第2の実施形態に係る自動分析装置1aの機能構成の例を表すブロック図である。図14に示される自動分析装置1aは、試薬庫204aが備えられている分析機構2a、解析回路3、駆動機構4、入力インタフェース5、出力インタフェース6、通信インタフェース7、記憶回路8、及び制御回路9aを備える。
【0068】
制御回路9aは、記憶回路8に記憶されている動作プログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。例えば、制御回路9aは、動作プログラムを実行することで、システム制御機能91及び磁力制御機能92を有する。なお、本実施形態では、単一のプロセッサによってシステム制御機能91及び磁力制御機能92が実現される場合を説明するが、これに限定されない。例えば、複数の独立したプロセッサを組み合わせて制御回路を構成し、各プロセッサが動作プログラムを実行することによりシステム制御機能91及び磁力制御機能92を実現しても構わない。
【0069】
磁力制御機能92は、試薬庫204aに設けられている電磁石2047の磁力を制御する機能である。制御回路9aは、磁力制御機能92において、試薬庫204aに設けられている回転テーブル20431の動作と同期させて電磁石2047の磁力を制御する。
【0070】
図15は、第2の実施形態に係る自動分析装置1aの試薬庫204aの断面図の例を表す図である。図15に示される試薬庫204aは、試薬カバー2041、筐体2042、テーブル回転機構2043、スターラー2044、及び電磁石2047を有する。
【0071】
筐体2042は、内側側面に電磁石2047を保持している。電磁石2047は、第1の実施形態における永久磁石2045と同様に、試薬庫204の中心に対して試薬吸引口H1と略同一方向の筐体2042の内側側面に保持されている。電磁石2047が保持される高さは、例えば、回転テーブル20431上に載置される試薬容器100の底部と略同程度の位置、又はそれより低い位置である。この高さは、試薬容器100の底で停止している攪拌子200と略同程度の位置、又はそれより低い位置と換言可能である。
【0072】
電磁石2047は、試薬吸引位置P1で停止する試薬容器100内の攪拌子200を引きつける引きつけ手段の一例である。電磁石2047は、供給される電圧に応じた磁力を発生させる。電力制御回路2048は、制御回路9の制御に従い、電磁石2047へ電力を供給する。
【0073】
次に、以上のように構成される自動分析装置1aにおける試薬吸引時の制御回路9aの動作を説明する。図16は、制御回路9aの処理動作の例を表すフローチャートである。図16では、初期状態として、磁力制御機能92により、電磁石2047の磁力が第1の磁力よりも弱い第2の磁力に設定されている場合を例に説明する。第2の実施形態において、第1の磁力は、試薬吸引位置P1で停止する試薬容器100内の攪拌子200を、試薬容器100の底面に接触したまま壁面方向へ引き寄せることが可能な程度の磁力を表す。
【0074】
制御回路9aは、例えば、自動分析装置1が所定の検査項目についての測定を行う際、試薬分注プローブ209を試薬吸引位置P1へ移動させるように、試薬分注アーム208を回動させる。また、制御回路9aは、試薬分注アーム208の回動とあわせ、ユーザが所望する試薬容器100を試薬吸引位置P1へ移動させるように、回転テーブル20431を回動させる(ステップS161)。
【0075】
回転テーブル20431が回動し、試薬容器100が試薬吸引位置P1へ近づくにつれ、試薬容器100は、筐体2042に設けられている電磁石2047に近づくことになる。試薬容器100内の攪拌子200は、電磁石2047へ近づくにつれ、第2の磁力による引力を受ける。
【0076】
回転テーブル20431が試薬容器100を試薬吸引位置P1へ到達させて停止すると、制御回路9aは、磁力制御機能92により、電力制御回路2048を制御し、電磁石2047に第2の磁力よりも強い第1の磁力を発生させる(ステップS162)。第2の磁力により引きつけられていた攪拌子200は、より強い第1の磁力により、試薬容器100の底面に接触したまま、試薬容器100の内壁面へ引き寄せられる。
【0077】
電磁石2047の磁力を第1の磁力に切り替えた後、試薬分注プローブ209、及び所望の試薬容器100が試薬吸引位置P1へ到達すると、制御回路9aは、試薬分注プローブ209を下降させる。下降された試薬分注プローブ209は、試薬庫204の試薬吸引口H1を通過し、試薬容器100へ挿入される。このとき、試薬分注プローブ209の挿入位置は、試薬容器100の中心近傍である。制御回路9aは、試薬容器100に挿入された試薬分注プローブ209により、試薬容器100に収容される試薬を吸引する(ステップS163)。
【0078】
制御回路9aは、試薬の吸引が完了すると、試薬分注プローブ209を上昇させる(ステップS164)。制御回路9aは、試薬分注プローブ209が上死点へ到達すると、磁力制御機能92により、電力制御回路2048を制御し、電磁石2047に第2の磁力を発生させ(ステップS165)、処理を終了させる。
【0079】
以上のように、第2の実施形態では、試薬吸引口H1と略同一方向の、試薬庫204の内側側壁の、試薬容器100の底部と略同程度又はそれより低い位置に電磁石2047を保持する。そして、試薬分注プローブ209が下降してから上昇するまでの間、電磁石2047の磁力を、試薬吸引位置P1で停止する試薬容器100内の攪拌子200を試薬容器100の底面に接触したまま壁面方向へ引き寄せることが可能な程度の磁力に設定するようにしている。これにより、試薬容器100へ試薬分注プローブ209が挿入されている間、試薬容器100内の攪拌子200を、試薬容器100の底面に接触させたまま壁面に引き寄せることが可能となる。すなわち、攪拌子200は、試薬分注プローブ209が通過する位置から退避され、かつ、試薬に最大限浸漬することになる。このため、試薬分注プローブ209と攪拌子200との接触を回避しながら、試薬容器100に残る試薬の高さを最大とすることが可能となる。すなわち、試薬分注プローブ209の先端を攪拌子200より上の位置で停止させる必要がなくなると共に、残った試薬を無駄なく吸引することが可能となる。
【0080】
また、第2の実施形態では、電磁石2047の磁力を段階的に調整するようにしている。これにより、攪拌子200の急激な移動を防ぐことが可能となるため、試薬の泡立ち等を抑えることが可能となる。
【0081】
したがって、第2の実施形態に係る自動分析装置1aによれば、試薬容器100底部におけるデッドボリュームを極小化することができる。
【0082】
なお、第2の実施形態では、初期状態として電磁石2047に第2の磁力を発生させ、試薬分注プローブ209を下降させる際には、電磁石2047に第1の磁力を発生させる場合を例に説明した。しかしながら、電磁石2047の磁力を段階的に調整可能であれば、これに限定されない。例えば、制御回路9aは、初期状態としては電磁石2047の磁力を発生させず、試薬容器100が試薬吸引位置P1で停止したときから段階的に磁力を発生させるようにしても構わない。
【0083】
また、第1及び第2の実施形態では、試薬庫204,204aは、試薬容器100を一重の周状に保持する場合を例に説明した。しかしながら、これに限定されない。試薬庫204bは、図17及び図18に示されるように、2重の周状に試薬容器100を保持しても構わない。このとき、内周に位置する試薬容器100に投入されている攪拌子200は、内周円の内側に設けられる側壁に保持される永久磁石2049により引きつけられる。
【0084】
実施形態の説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(central processing unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、上記各実施形態の各プロセッサは、プロセッサ毎に単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、上記各実施形態における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0086】
1,1a…自動分析装置
2,2a…分析機構
3…解析回路
4…駆動機構
5…入力インタフェース
6…出力インタフェース
7…通信インタフェース
8…記憶回路
9,9a…制御回路
91…システム制御機能
92…磁力制御機能
100…試薬容器
200…攪拌子
201…反応ディスク
2011…反応容器
202…恒温部
203…ラックサンプラ
2031…試料ラック
204,204a,204b…試薬庫
2041…試薬カバー
2042…筐体
2043…テーブル回転機構
20431…回転テーブル
20432…モータ
2044…スターラー
20441…永久磁石
20442…モータ
2045,2045−1,2045−2,2045−3,2046…永久磁石
2047…電磁石
2048…電力制御回路
2049…永久磁石
206…サンプル分注アーム
207…サンプル分注プローブ
208…試薬分注アーム
209…試薬分注プローブ
210…攪拌ユニット
211…測光ユニット
212…洗浄ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18