特許第6937224号(P6937224)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋ガラス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6937224-ガラス容器成形装置 図000002
  • 特許6937224-ガラス容器成形装置 図000003
  • 特許6937224-ガラス容器成形装置 図000004
  • 特許6937224-ガラス容器成形装置 図000005
  • 特許6937224-ガラス容器成形装置 図000006
  • 特許6937224-ガラス容器成形装置 図000007
  • 特許6937224-ガラス容器成形装置 図000008
  • 特許6937224-ガラス容器成形装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6937224
(24)【登録日】2021年9月1日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】ガラス容器成形装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 9/335 20060101AFI20210909BHJP
【FI】
   C03B9/335
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-212352(P2017-212352)
(22)【出願日】2017年11月2日
(65)【公開番号】特開2019-85279(P2019-85279A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222222
【氏名又は名称】東洋ガラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 博幸
(72)【発明者】
【氏名】金光 真一郎
【審査官】 須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−240121(JP,A)
【文献】 特開平07−314504(JP,A)
【文献】 特開平07−247123(JP,A)
【文献】 特開2001−328823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 9/00−9/48
G03B 17/14
B29C 33/00−33/76
B29C 39/26−39/36
B29C 41/38−41/44
B29C 43/36−43/42
B29C 43/50
B29C 45/26−45/44
B29C 45/64−45/68
B29C 45/73
B29C 49/48−49/56
B29C 49/70
B29C 51/30−51/40
B29C 51/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パリソンからガラス容器を成形するためのガラス容器成形装置であって、
基台に設けられたプレートと、
前記プレート上に載置され、前記ガラス容器の底部を形成する底型と、
前記底型の上部に配置され、前記ガラス容器の側部を形成する一対の仕上型とを有し、
前記プレートの上面又は前記底型の下面に突設された軸部、及び前記軸部の先端に設けられ、前記軸部よりも幅が広い拡頭部を有する係止突起と、
前記係止突起に対向する前記プレートの上面又は前記底型の下面に延設され、前記係止突起を受容可能な係止溝とを有し、
前記係止溝の一端の開口縁には、前記係止溝の幅方向に突出し、前記拡頭部の抜け出しを規制する係止壁が設けられ
前記プレートと前記底型とは支持軸を介して回転可能に結合し、
前記係止溝は、前記支持軸を中心とした周方向に延び、
前記底型は、前記プレート上に互いに隣り合うように2つ設けられ、
前記底型のそれぞれは、外周部の互いに対向する部分に、径方向と直交する平面に形成された切欠面を有し、
前記底型のそれぞれは、前記底型の一方の外周面を外挿した仮想面が前記底型の他方の前記切欠面と交わるように配置されていることを特徴とするガラス容器成形装置。
【請求項2】
パリソンからガラス容器を成形するためのガラス容器成形装置であって、
基台に設けられたプレートと、
前記プレート上に載置され、前記ガラス容器の底部を形成する底型と、
前記底型の上部に配置され、前記ガラス容器の側部を形成する一対の仕上型とを有し、
前記プレートの上面又は前記底型の下面に突設された軸部、及び前記軸部の先端に設けられ、前記軸部よりも幅が広い拡頭部を有する係止突起と、
前記係止突起に対向する前記プレートの上面又は前記底型の下面に延設され、前記係止突起を受容可能な係止溝とを有し、
前記係止溝の一端の開口縁には、前記係止溝の幅方向に突出し、前記拡頭部の抜け出しを規制する係止壁が設けられ、
前記プレートと前記底型とは、前記底型の中央部に設けられた支持軸を介して回転可能に結合し、
前記係止溝は、前記支持軸を中心とした周方向に延び、
前記底型の上部には、前記ガラス容器の底部に対応した底部型面が形成され、
前記底部型面は、下方に凹んだ型面外周部と、上方に突出した型面中央部とを有し、
前記係止突起及び前記係止溝は、前記型面外周部の下方に配置されていることを特徴とするガラス容器成形装置。
【請求項3】
前記軸部の基端には雄ねじが形成され、前記プレートの上面又は前記底型の下面には前記雄ねじが螺合する雌ねじ孔が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガラス容器成形装置。
【請求項4】
前記底型は、下面を構成する底板部と、前記底板部の上面から上方に延びる首部と、前記首部の上部に設けられ、上面に型面を有する頭部とを有し、
一対の前記仕上型は、それらの合わせ面に前記首部及び前記頭部の外周部を挟持する第1挟持部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載のガラス容器成形装置。
【請求項5】
前記底型は、前記底板部の上面に突設された位置決め部を有し、
一対の前記仕上型は、それらの合わせ面に前記位置決め部を挟持する第2挟持部を有することを特徴とする請求項4に記載のガラス容器成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス容器成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パリソンからガラス容器を成形するためのガラス容器成形装置として、基台に支持されたプレートと、プレート上に載置され、ガラス容器の底部を形成する底型と、底型の上部に配置され、ガラス容器の側部を形成する一対の仕上型とを有するものが公知である。底型は、プレートの上面に設けられた段部や突起、位置決めピン等によって水平方向への位置が定められている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国実用新案206127106号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
底型は、鋳鉄等から形成され、比較的大きい質量を有する。そのため、底型をプレートにボルト等で拘束しない方が、生産品種の変更時における底型の交換作業の容易さの点で有利であった。しかし、ガラス容器の底部中央に上方に突出した凸部(いわゆるプッシュアップ、上げ底)を形成するために、底型の中央を突出させると、底型の中央部の温度が上昇し易くなり、成形したガラス容器と分離し難くなる。この場合、成形したガラス容器を底板から上方に引き抜くときに、ガラス容器に引っ張られた底型がプレートから脱落するという問題がある。プッシュアップが高くなると、成形したガラス容器が底型から一層分離し難くなるため、問題が一層顕著になる。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、ガラス容器成形装置において、底型の交換作業性を損なうことなく、プレートからの底型の脱落を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、パリソンからガラス容器を成形するためのガラス容器成形装置(1)であって、基台(2)に設けられたプレート(10)と、前記プレート上に載置され、前記ガラス容器の底部を形成する底型(15)と、前記底型の上部に配置され、前記ガラス容器の側部を形成する一対の仕上型(64)とを有し、前記プレートの上面(11)又は前記底型の下面(35)に突設された軸部(21)、及び前記軸部の先端に設けられ、前記軸部よりも幅が広い拡頭部(22)を有する係止突起(20)と、前記係止突起に対向する前記プレートの上面又は前記底型の下面に延設され、前記係止突起を受容可能な係止溝(40)とを有し、前記係止溝の一端の開口縁には、前記係止溝の幅方向に突出し、前記拡頭部の抜け出しを規制する係止壁(45)が設けられていることを特徴とする。
【0007】
この態様によれば、係止突起が係止壁に係止されることによって、プレートに対する底型の上方への移動が規制される。これにより、成形したガラス容器を底型から分離するときに底型がガラス容器に引っ張られたとしても、底型がプレートから分離することを防止することができる。プレートに対して底板を水平方向に移動させることによって係止突起と係止壁とを結合又は分離させることができるため、底型の交換作業を容易に行うことができる。
【0008】
また、上記の態様において、前記軸部の基端には雄ねじ(28)が形成され、前記プレートの上面又は前記底型の下面には前記雄ねじが螺合する雌ねじ孔(29)が形成されているとよい。
【0009】
この態様によれば、係止突起を容易に底型又はプレートに取り付けることができる。
【0010】
また、上記の態様において、前記プレートと前記底型とは支持軸(17)を介して回転可能に結合し、前記係止溝は、前記支持軸を中心とした周方向に延びているとよい。
【0011】
この態様によれば、嵌合孔に支持軸が嵌合することによって、プレートに対する底型の中心位置が定まる。また、プレートに対して底型を回転させることによって、係止突起と係止壁とを結合又は分離させることができる。
【0012】
また、上記の態様において、前記底型は、下面を構成する底板部(33)と、前記底板部の上面から上方に延びる首部(51)と、前記首部の上部に設けられ、上面に型面を有する頭部(52)とを有し、一対の前記仕上型は、それらの合わせ面に前記首部及び前記頭部の外周部を挟持する第1挟持部(68)を有するとよい。
【0013】
この態様によれば、底型及び一対の仕上型の相対位置が定まる。
【0014】
また、上記の態様において、前記底型は、前記底板部の上面に突設された位置決め部(60)を有し、一対の前記仕上型は、それらの合わせ面に前記位置決め部を挟持する第2挟持部(69)を有するとよい。
【0015】
この態様によれば、底型及び一対の仕上型の相対位置が定まる。
【0016】
また、上記の態様において、前記底型は、前記プレート上に互いに隣り合うように2つ設けられ、前記底型のそれぞれは、外周部の互いに対向する部分に、径方向と直交する平面に形成された切欠面(71)を有し、前記底型のそれぞれは、前記底型の一方の外周面を外挿した仮想面が前記底型の他方の切欠面と交わるように配置されているとよい。
【0017】
この態様によれば、底型の一方のみが回転しようとするときには、底型の一方が底型の他方に突き当たって回転が規制される。そのため、底型が回転するときには2つの底型が同時に回転することが必要になる。これにより、底型の一方のみが回転して係止突起及び係止壁の係合が解除することを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ガラス容器成形装置において、底型の交換作業性を損なうことなく、プレートからの底型の脱落を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】成形装置を示す側面図
図2】ディストリビュータプレート、底型、及び仕上型を示す断面図
図3】ディストリビュータプレートの上面図
図4】底型の底板部の底面図
図5】(A)図4のVA−VA断面図、(B)図4のVB−VB断面図
図6】固定位置にある2つの底型を上方から見た説明図
図7】着脱位置にある2つの底型を上方から見た説明図
図8】3以上の底型をディストリビュータプレートに設けた変形例の説明図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態に係るガラス容器の成形装置は、ガラスゴブからパリソンを成形する工程と、パリソンからガラス容器を成形する工程とを実行する。
【0021】
図1に示すように、成形装置1は、基台2に回転可能に支持された反転アーム3を有する。反転アーム3は、水平方向に延びる回転中心を有し、初期位置と、初期位置に対して180°回転した反転位置との間で回転する。反転アーム3の先端には、少なくとも1つの口型4が支持されている。口型4は、反転アーム3が初期位置にあるときに、反転アーム3の上側に配置される。各口型4は、上下に延びる合せ面を有する割型と、一対の割型の間に配置されるガイドリングとを有する。一対の割型及びガイドリングのそれぞれは、反転アーム3に支持されている。基台には、口型が初期位置にあるときに、ガイドリングを通過して、割型間に突入するプランジャが設けられている。
【0022】
各口型4の上方には、一対の粗型5がそれぞれ配置されている。一対の粗型5は、上下に延びる合せ面を有し、下端部において口型4を側方から挟み込むように配置される。一対の粗型5は、合せ面にパリソンの側部に対応した形状を形成する。粗型5の上端開口は、バッフル6によって開閉可能に閉じられる。
【0023】
ガラスゴブからパリソンを成形する工程は、例えばブローアンドブロー成形によって行う。最初に、バッフル6を退避させた状態で口型4及び粗型5内にゴブを投入する。次に、バッフル6によって粗型5の上端を閉じ、バッフル6からセッツルエアーを噴射してゴブを口型4に押し付けてパリソンの口部を形成する。次に、口型4の割型及びプランジャの間から口部の内部にエアーを噴射してゴブを膨張させ、粗型5及びバッフル6にゴブを押し付けてパリソンの側部及び底部43を形成する。これにより、パリソンが形成される。次にバッフル6と口型4のプランジャを退避させると共に、一対の粗型5を開いてパリソンを露出させる。この状態で、パリソンは口部において口型4に支持される。そして、反転装置が反転位置に移動することによって、パリソンは口部が上端に位置するように反転し、口型4に吊るされた状態になる。他の実施形態では、ブローアンドブロー成形に代えて、プレスアンドブロー成形やナローネックプレスアンドブロー成形によってパリソンを成形してもよい。
【0024】
基台2において、反転位置にある口型4の下方にはディストリビュータプレート10が設けられている。図2及び図3に示すように、ディストリビュータプレート10は、鉄等の金属から形成された板状部材であり、水平な上面11を有する。ディストリビュータプレート10の上面11は、略長方形に形成され、2つの略正方形の領域12、13を有する。各領域12、13は、概ね同様の構成を有する。各領域12、13には、それぞれガラス容器の底部43を形成するための底型15が配置される。底型15は、工具鋼等の金属によって形成されている。
【0025】
ディストリビュータプレート10の上面11の各領域12、13の中央部には、有底の円孔である第1支持孔16が凹設されている。第1支持孔16には、円柱形の支持軸17が着脱可能に嵌合している。支持軸17は、上端が第1支持孔16の上方に突出している。
【0026】
ディストリビュータプレート10の上面11の各領域12、13には、係止突起20が突設されている。図2及び図5に示すように、係止突起20は、上下に延びる断面円形の軸部21と、軸部21の先端(上端)に設けられ、軸部21よりも幅が広い拡頭部22とを有する。拡頭部22は、円板形に形成され、軸部21と同軸に設けられている。拡頭部22の直径は軸部21の直径よりも大きい。拡頭部22の上端面には、ドライバー等の工具と係合するための工具係合溝23が形成されている。軸部21は、基端(下端)側に小径部25を有し、先端側に小径部25よりも直径が大きい大径部26を有する。小径部25及び大径部26の境界には、それらの軸線と垂直な面をなす肩面27が形成されている。小径部25の外周面には、雄ねじ28が形成されている。ディストリビュータプレート10の上面11の各領域12、13には、有底の雌ねじ孔29が形成されている。雄ねじ28が雌ねじ孔29に螺合することによって、係止突起20は拡頭部22及び大径部26がディストリビュータプレート10の上面11から上方に突出した状態で固定される。肩面27がディストリビュータプレート10の上面11に当接することによって係止突起20の上面からの突出量が一定になる。
【0027】
図2及び図3に示すように、ディストリビュータプレート10の上面11の各領域12、13には、ディストリビュータプレート10を上下に貫通する複数の第1通気孔31が形成されている。
【0028】
図2に示すように、各底型15は、底板部33を有する。底板部33は略円板状に形成され、水平な上面34及び下面35を有する。底板部33の下面35の中央には、底型15の中心軸線Aに沿って有底の円孔である第2支持孔37が凹設されている。第2支持孔37は、円柱形の支持軸17が嵌合可能に形成されている。
【0029】
図4及び図5に示すように、底板部33の下面35には、係止突起20を受容可能な係止溝40が形成されている。係止溝40は、中心軸線Aを中心とした周方向に延在している。係止溝40の長手方向(周方向)における一端を係止端41、他端を挿入端42という。また、係止溝40の幅は、長手方向に対して直交する方向の長さをいう。
【0030】
係止溝40の底部43(上部)の幅は、挿入端42及び係止端41において拡頭部22の直径よりも大きく形成されている。これにより、係止突起20の拡頭部22は、係止溝40の底部43において、挿入端42から係止端41に長手方向に移動することができる。係止溝40の係止端41の開口縁44(下端部)には、係止溝40の幅方向において内方に突出した一対の係止壁45が形成されている。互いに対向する一対の係止壁45の間には長手方向に延びるスリット46が形成されている。スリット46の幅は、拡頭部22の直径より小さく、軸部21の直径より大きくなっている。係止壁45によって、係止溝40の係止端41は、開口縁44において底部43よりも幅が狭くなっている。係止溝40の挿入端42においては、開口縁44の幅は、底部43と等しく、拡頭部22の直径よりも大きく形成されている。係止溝40の係止端41における開口縁44の幅は、挿入端42における開口縁44の幅よりも狭くなっている。
【0031】
底型15をディストリビュータプレート10に載置するときには、支持軸17と第2支持孔37とを整合させると共に、係止突起20と係止溝40の挿入端42とを整合させて、底型15をディストリビュータプレート10上に置く。これにより、支持軸17が第2支持孔37に嵌合すると共に、係止突起20が係止溝40の挿入端42に突入する。この状態から支持軸17を中心として底型15をディストリビュータプレート10に対して回転させることによって、係止突起20が係止溝40の挿入端42から係止端41に移動する。本実施形態では、上方から見て時計回りに底型15をディストリビュータプレート10に対して8°回転させることによって、係止突起20が係止溝40の挿入端42から係止端41に移動する。他の実施形態では、挿入端42から係止端41への支持軸17を中心とした回転方向、角度幅は任意に設定することができる。係止突起20が係止溝40の係止端41にあるとき、軸部21の大径部26はスリット46を通過し、拡頭部22が係止壁45の上方に位置する。そのため、拡頭部22が係止壁45に係止されることによって、係止突起20の係止溝40から抜け出しが阻止される。係止突起20が係止端41にあるときの底型15の位置を固定位置といい、係止突起20が挿入端42にあるときの底型15の位置を着脱位置という。
【0032】
図2に示すように、底板部33の上面34の中央には、底型15の中心軸線Aに沿って上方に向けて突出した円柱状の首部51が設けられている。首部51の上端には、同軸に頭部52が設けられている。頭部52は、中心軸線Aを中心とした円板状に形成され、その外周部は首部51よりも径方向外方に張り出している。頭部52の上部には、成形するガラス容器の底部43に対応した底部型面54が形成されている。底部型面54は、下方に凹んだ型面外周部55と、上方に突出した型面中央部56とを有する。型面外周部55及び型面中央部56は、それぞれ曲面に形成され、互いに滑らかに接続している。
【0033】
首部51及び頭部52の内部には、チャンバ57が形成されている。チャンバ57は、第2支持孔37と接続してもよい。首部51及び底板部33には、底板部33の下面35からチャンバ57に延びた複数の第2通気孔58が形成されている。底型15がディストリビュータプレート10に対して固定位置にあるとき、各第2通気孔58の底板部33側の開口端は、対応する第1通気孔31の上面側の開口端と接続する。ディストリビュータプレート10の下方には第1通気孔31の下端に冷却風(圧縮空気)を供給する通風口が設けられている。冷却風は、第1通気孔31及び第2通気孔58を通過してチャンバ57に流入し、底型を冷却する。また、複数の第1通気孔31のいくつかは底板部33の下面35に向けて開口し、底板部33の下面35を冷却する。
【0034】
底板部33の上面34には、上方に向けて突出した位置決めピン60が設けられている。位置決めピン60は、円柱状に形成され、下端が底板部33の上面34に凹設された結合孔61に挿入されている。
【0035】
各底型15の上方には、一対の仕上型64がそれぞれ配置されている。仕上型64は、工具鋼等の金属によって形成されている。一対の仕上型64は、上下に延びる合せ面を有し、合せ面に成形するガラス容器の側部の形状に対応した側部型面65を有する。各側部型面65によって仕上型空洞部66が形成される。一対の仕上型64の下端面67は、底板部33の上面34と摺接可能な平面に形成されている。各仕上型64の側部型面65の下端縁には、底型15の首部51及び頭部52を挟持する第1挟持部68が形成されている。また、一対の仕上型64の合せ面の下端部には、位置決めピン60を挟持する第2挟持部69が形成されている。
【0036】
一対の仕上型64は、図示しない支持装置に支持され、それぞれの合せ面が互いに当接した成形位置と、それぞれの合せ面が互いに分離し、底型15から離れた退避位置との間で移動可能になっている。例えば、一対の仕上型64は、上下に延びる所定の軸線を中心とした回動動作によって成形位置と退避位置との間を移動するとよい。
【0037】
一対の仕上型64が成形位置にあるときに、第1挟持部68に底型15の首部51及び頭部52が挟持され、第2挟持部69に位置決めピン60が挟持される。これにより、一対の仕上型64と底型15の相対位置が定まる。各仕上型64が成形位置にあるときに、底型15は固定位置に配置される。各仕上型64が成形位置にあるときに、底部型面54と側部型面65のそれぞれとは滑らかに接続し、成形するガラス容器の外形に対応した形状を形成する。
【0038】
図4図6及び図7に示すように、1つのディストリビュータプレート10上に配置された2つの底型15は、底板部33の互いに対向する外周部にそれぞれ切欠面71を有している。図6及び図7では、第2通気孔58を省略して各底型15を示している。切欠面71は、底型15の軸線Aから延びる径方向線に対して直交する平面に形成されている。2つの底型15の切欠面71は、各底型15が着脱位置にあるとき、隙間を介して互いに平行に配置される。また、2つの底型15の切欠面71は、各底型15が固定位置にあるとき、隙間を介して互いに平行に配置される。
【0039】
図6及び図7に示すように、2つの底型15は、同方向に等しい角度回転することによって着脱位置から固定位置に移動する。2つの底型15がそれぞれ着脱位置又は固定位置にあるとき、一方の底板部33の外周面を切欠部において外挿した仮想面73は、他方の底板部33の切欠面71と交差する。そのため、2つの底型15がそれぞれ着脱位置又は固定位置にあるとき、一方の底型15のみを回転させると他方の底型15と接触し、回転することができない。そのため、2つの底型15を着脱位置及び固定位置間で回転させるときには、各切欠面71が互いに平行になるように、2つの底型15を同時に回転させる必要がある。
【0040】
2つの底型15をディストリビュータプレート10上に配置するときには、各底型15において、支持軸17と第2支持孔37とを整合させると共に、係止突起20と係止溝40の挿入端42とを整合させて、底型15をディストリビュータプレート10上に置く。これにより、各底型15が着脱位置に配置される。次に各底型15を同時に同方向に回転させ、それぞれを固定位置に配置させる。固定位置では、各係止突起20が対応する係止壁45に係止されるため、各底板部33はディストリビュータプレート10に対して上下に移動できなくなる。各底型15が固定位置にあるとき、仮に一方の底型15が予期せぬ荷重を受けて回転しても他方の底型15に突き当たるため、挿入位置まで移動することはできない。そのため、底型15が予期せず回転してディストリビュータプレート10から脱離可能になることを防止することができる。2つの底型15をディストリビュータプレート10から取り外すときには、各底型15を同時に同方向に回転させ、それぞれを着脱位置に配置させる。この状態では、各係止突起20が対応する係止壁45から離れるため、各底型15をディストリビュータプレート10から上方に取り外すことができる。
【0041】
パリソンからガラス容器を成形する工程では、最初に、口型4に支持されたパリソンは、反転アーム3が反転位置に移動することによって、底型15の上方に口型4によって吊るされた状態となる。このとき、底型15は固定位置に配置され、仕上型64は退避位置に配置されている。次に、仕上型64が成形位置に移動し、底型15の上方に配置される。このとき、第1挟持部68によって底型15の首部51及び頭部52が挟持され、かつ第2挟持部69によって位置決めピン60が挟持されることによって、底型15は固定位置に維持される。そのため、仮に底型15が固定位置から着脱位置側に若干ずれていても、一対の仕上型64に挟まれることによって底型15は固定位置に矯正される。
【0042】
各仕上型64が成形位置に配置されることによって、パリソンは各仕上型64の間の仕上型空洞部66に配置され、口型4は仕上型空洞部66の上端開口に配置される。この状態で、パリソンの口部を介してパリソンの内側に圧縮空気が吹き込まれ、パリソンが下方かつ側方に膨張する。パリソンは、底型15の底部型面54及び仕上型64の側部型面65に押し付けられて成形され、ガラス容器が成形される。
【0043】
次に、成形されたガラス容器の口部を口型4が離すと共に、反転アーム3が初期位置に移動する。同時に、各仕上型64が退避位置に移動する。これにより、ガラス容器は底部43において底型15に支持された状態になる。この状態から図示しないクランプ装置が成形されたガラス容器の口部を挟持してガラス容器を上方に持ち上げ、底型15からガラス容器の底部43を引き離す。このとき、係止突起20と係止壁45との係合によって、ディストリビュータプレート10に対する底型15の移動が規制されているため、底型15がガラス容器に付着してガラス容器と共に持ち上げられることが防止される。クランプ装置によって底型15から取り外されたガラス容器は、続く徐冷工程に送られる。
【0044】
以上のように構成した成形装置1の効果について説明する。底型15が固定位置にあるとき、係止突起20が係止壁45に係止されるため、ディストリビュータプレート10に対する底型15の上方への移動が規制される。これにより、成形されたガラス容器を底型15から分離するときに底型15がガラス容器に引っ張られたとしても、底型15がディストリビュータプレート10から分離することを防止することができる。ディストリビュータプレート10に対して底型15を水平方向に回転させることによって、係止突起20と係止壁45との結合状態を結合又は分離の間で切り換えることができる。そのため、生産品種に応じた底型15の交換作業を容易に行うことができる。
【0045】
底型15がディストリビュータプレート10に対して支持軸17を中心として回転可能である。そのため、底型15及び仕上型64が熱によって膨張するときにも、底型15がディストリビュータプレート10に対して回転することによって膨張による位置ずれを吸収することができ、底型15及び仕上型64が適切に結合することができる。
【0046】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、係止壁45を備えた係止溝40がディストリビュータプレート10の上面11に設けられ、係止突起20が底型15の底板部33の下面35に設けられてもよい。
【0047】
係止突起20のディストリビュータプレート10への結合構造は、様々な代替構造に変更することができる。例えば、係止突起20は、溶接や圧入によってディストリビュータプレート10に結合されてもよい。
【0048】
底型15の底部型面54の形状、すなわち、型面中央部56の高さ(上方への突出量)や型面外周部55の深さ(下方への凹み量)は任意に設定することができる。例えば、図2に示す底部型面54に対して、型面中央部56を低くすると共に、型面外周部55を浅くしてもよい。
【0049】
上記実施形態は、1つのディストリビュータプレート10上に2つの底型15を配置する例について説明したが、他の実施形態では図8に示すように1つのディストリビュータプレート10上に3つ以上の底型15を配置してもよい。この場合、各底型15は2つの切欠面71を有するとよい。2つの切欠面71は、各底型15の隣り合う底型と対向する部分に設けられるとよい。2つの切欠面71を各底型15において対称位置に配置することによって、図8に示すように1つのディストリビュータプレート10上に3つ以上の底型15を直線状に配置することができる。隣り合う底型15は、それぞれの切欠面71において互いに対向し、それぞれの独立した回転が規制される。上記の実施形態と同様に、各底型15の全てを同時かつ同一方向に回転させることによって、各底型15を回転させることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 :成形装置
10 :ディストリビュータプレート
15 :底型
17 :支持軸
20 :係止突起
21 :軸部
28 :雄ねじ
29 :雌ねじ孔
33 :底板部
40 :係止溝
41 :係止端
42 :挿入端
43 :底部
44 :開口縁
45 :係止壁
51 :首部
52 :頭部
54 :底部型面
60 :位置決めピン
64 :成形型
65 :側部型面
68 :第1挟持部
69 :第2挟持部
71 :切欠面
73 :仮想面
A :中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8