特許第6937225号(P6937225)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6937225
(24)【登録日】2021年9月1日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】加硫ゴム成形用離型剤
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/62 20060101AFI20210909BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20210909BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20210909BHJP
   B29K 21/00 20060101ALN20210909BHJP
   B29K 105/24 20060101ALN20210909BHJP
【FI】
   B29C33/62
   C08L71/02
   C08L71/00 Y
   B29K21:00
   B29K105:24
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-215764(P2017-215764)
(22)【出願日】2017年11月8日
(65)【公開番号】特開2019-84777(P2019-84777A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】堀江 拓也
(72)【発明者】
【氏名】鍋島 敏一
(72)【発明者】
【氏名】中川 和典
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−292236(JP,A)
【文献】 特開2012−250495(JP,A)
【文献】 特開2008−201010(JP,A)
【文献】 特開2004−306409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に活性水素原子を4〜8個有するアミン化合物にアルキレンオキシドを付加してなり、数平均分子量が5000〜30000である、アミン化合物のアルキレンオキシド付加物(A)、および
界面活性剤(B)
を含有する加硫ゴム成形用離型剤。
【請求項2】
前記界面活性剤(B)が、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤および両性界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の加硫ゴム成形用離型剤。
【請求項3】
前記アミン化合物のアルキレンオキシド付加物(A)100質量部に対して、前記界面活性剤(B)を0.01〜10質量部含有する、請求項1または2に記載の加硫ゴム成形用離型剤。
【請求項4】
前記アミン化合物のアルキレンオキシド付加物(A)は、オキシエチレン基を50〜95質量%含有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の加硫ゴム成形用離型剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫ゴム成形用離型剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加硫ゴムは、自動車部品、鉄道部品、建設機械などに使用されている。これらの加硫ゴムは、金型などに未加硫ゴムを投入して加硫成形した後、これを脱着することにより得られる。その際、加硫ゴムの金型からの脱着を容易に行うために、金型や未加硫ゴムには離型剤が塗布されている。
【0003】
このような離型剤としては、シリコーンが使用されているが、加硫後のゴムホースに付着した離型剤を除去するためには洗剤などを用いる必要があり、洗浄性の改善が求められる。そのため、水で除去可能な離型剤が提案されており、例えば、特許文献1には、ジアミンのアルキレンオキシド付加物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−292236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、離型性と洗浄性に優れる離型剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る加硫ゴム成形用離型剤は、分子内に活性水素原子を4〜8個有するアミン化合物にアルキレンオキシドを付加してなる、アミン化合物のアルキレンオキシド付加物(A)、および、界面活性剤(B)を含有するものである。
【発明の効果】
【0007】
上記加硫ゴム成形用離型剤であると、ゴムに対する接触角を小さくしてぬれ性を向上することができ、また離型性と洗浄性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態に係る加硫ゴム成形用離型剤は、分子内に活性水素原子を4〜8個有するアミン化合物のアルキレンオキシド付加物(A)を含有するものである。かかるアミン化合物のアルキレンオキシド付加物(A)は、アミン化合物の残基に対して、活性水素原子数に対応する4〜8つのポリオキシアルキレン鎖が結合した構造を有する。ここで、アミン化合物の残基とは、アミン化合物からアルキレンオキシドが付加した活性水素基(アミノ基など)の水素原子を除いた基を示す。
【0009】
上記アミン化合物は、1級アミノ基(−NH)及び/又は2級アミノ基(−NH−)を有する化合物であり、本実施形態では、分子内に活性水素原子を4〜8個有する各種アミン化合物を用いることができる。アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、スペルミン、スペルミジンなどの脂肪族ポリアミン、トリレンジアミン、ジアミノキシレン、フェニレンジアミン、ナフタレンジアミン、ベンジジン、2,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどの芳香族ポリアミンが挙げられる。また、アミン化合物としては、アミノ基とともに水酸基を有してもよく、活性水素原子の合計が4〜8個であればよい。アミノ基と水酸基を有する化合物としては、例えば、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、N−(3−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N−(β−アミノエチル)イソプロパノールアミン、1−アミノプロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,1−ジアミノエタノール、1,3−ジアミノプロパノール、ジアミノフェノール、ジアミノベンジルアルコールなどが挙げられる。これらのアミン化合物は、それぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0010】
上記アミン化合物としては、ポリアミンが好ましく、より好ましくは脂肪族ポリアミンである。一実施形態において、上記アミン化合物としては、2個の1級アミノ基と0〜4個の2級アミノ基を有する炭素数2〜10の脂肪族ポリアミンでもよく、2個の1級アミノ基と0〜2個の2級アミノ基を有する炭素数2〜6の脂肪族ポリアミンでもよく、2個の1級アミノ基を有し活性水素原子の合計が4個である炭素数2〜6の脂肪族ポリアミンでもよい。
【0011】
上記アミン化合物に付加するアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド単独でもよいが、エチレンオキシドと、それ以外のアルキレンオキシドを併用することが好ましい。一実施形態として、エチレンオキシドと、プロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドを用いてもよく、より詳細には、洗浄性に優れることから、エチレンオキシドとプロピレンオキシドを併用することが好ましい。
【0012】
アルキレンオキシドを2種以上付加させる場合、その付加形態は、ブロック付加でも、ランダム付加でも、これらの組み合わせでもよい。すなわち、上記ポリオキシアルキレン鎖は、オキシエチレン基とその他のオキシアルキレン基とのブロック付加体でも、ランダム付加体でも、ブロック付加体とランダム付加体を組み合わせたものでもよく、ブロック付加体の場合、オキシエチレン基とその他のオキシアルキレン基との付加順序はいずれが先でもよい。一実施形態において、上記アミン化合物のアルキレンオキシド付加物(A)は、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのランダム付加物であること、即ち、ポリオキシアルキレン鎖がオキシエチレン基とオキシプロピレン基のランダム付加体であることが好ましく、離型性をより一層向上することができる。
【0013】
一実施形態において、アルキレンオキシドの付加量(平均付加モル数)は、アミン化合物1モル当たり100〜600モルであることが好ましく、より好ましくは120〜450モルであり、150〜300モルでもよい。また、エチレンオキシドの付加量(平均付加モル数)は、アミン化合物1モル当たり80〜570モルが好ましく、より好ましくは100〜400モルであり、120〜250モルでもよい。アルキレンオキシドとして、エチレンオキシドとプロピレンオキシドを併用する場合、両者の平均付加モル数の比(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)は3〜15であることが好ましく、より好ましくは4〜10である。ここで、平均付加モル数は、H−NMR(溶媒:CDCl)により求めることができる。
【0014】
上記アルキレンオキシドを付加する方法は、特に限定されず、例えば、上記アミン化合物及び触媒の存在下、アルキレンオキシドを70〜120℃、0〜0.3MPaとなるように反応容器に導入し、アミン化合物と反応させる方法など、公知の方法を用いることができる。触媒としては、特に限定されないが、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属類などが挙げられる。
【0015】
一実施形態において、アミン化合物のアルキレンオキシド付加物(A)は、数平均分子量(Mn)が5000〜30000であることが好ましい。数平均分子量が5000以上であることにより、少ない使用量でありながら(例えば、低濃度の使用でありながら)、加硫後のゴムと金型との離型性を向上することができる。また、数平均分子量が30000以下であることにより、離型剤の粘度上昇を抑えて作業性の低下を抑えることができる。数平均分子量は、より好ましくは6000〜25000であり、更に好ましくは7000〜22000である。
【0016】
一実施形態において、アミン化合物のアルキレンオキシド付加物(A)は、オキシエチレン基を50〜95質量%含有することが好ましい。すなわち、アミン化合物のアルキレンオキシド付加物(A)中に占めるオキシエチレン基の含有量が50〜95質量%であることが好ましい。このようにオキシエチレン基の含有量を高くすることにより、水に溶解しやすくして洗浄性を向上することができ、上記の分子量の設定と相俟って、洗浄性と離型性を更に向上することができる。オキシエチレン基の含有量は、より好ましくは60〜95質量%であり、更に好ましくは70〜90質量%である。ここで、オキシエチレン基の含有量は、H−NMR(溶媒:CDCl)により求めることができる。
【0017】
好ましい一実施形態に係るアミン化合物のアルキレンオキシド付加物(A)は、数平均分子量(Mn)が5000〜30000であり、かつ、オキシエチレン基を50〜95質量%含有するものである。上記のような4〜8つのポリオキシアルキレン鎖が結合した構造を持つものにおいて、このように分子量を高く、かつオキシエチレン基の含有量を高く設定したことにより、少ない使用量でも優れた離型性を発揮することができ、かつ水に溶けやすくして洗浄性を向上することができる。また、洗浄性に優れ、短時間で離型剤を除去できるため、加硫ゴムの生産性を向上することができる。
【0018】
一実施形態において、上記アミン化合物のアルキレンオキシド付加物(A)は、平均水酸基価が5〜50mgKOH/gであることが好ましい。このような範囲内とすることにより、離型性及び洗浄性がより優れたものとなる。上記平均水酸基価は8〜40mgKOH/gであることがより好ましく、更に好ましくは10〜35mgKOH/gである。ここで、平均水酸基価は、JIS K0070に準じて測定することができる。
【0019】
本実施形態に係る加硫ゴム成形用離型剤は、上記アミン化合物のアルキレンオキシド付加物(A)とともに、界面活性剤(B)を含有するものである。界面活性剤(B)を併用することにより、ゴムに対する接触角を小さくしてぬれ性を向上することができ、離型剤をより均一に付着させることができるので、離型性の向上につながる。
【0020】
界面活性剤(B)としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられ、これらをいずれか1種または2種以上組み合わせ用いることができる。
【0021】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンオクチルエーテル、ポリオキシアルキレンノニルエーテル、ポリオキシアルキレンデシルエーテル、ポリオキシアルキレンドデシルエーテル、ポリオキシアルキレントリデシルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル; ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンフェノール類; ポリオキシアルキレンカプリン酸エステル、ポリオキシアルキレンラウリン酸エステル、ポリオキシアルキレンパルミチン酸エステル、ポリオキシアルキレンステアリン酸エステルなどのポリオキシアルキレン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0022】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ヤシ油脂肪酸カリウム、ヤシ油脂肪酸ナトリウム、パーム油脂肪酸カリウム、パーム油脂肪酸ナトリウムなどの油脂脂肪酸アルカリ金属塩; ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、デシル硫酸ナトリウム、デシル硫酸カリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸カリウムなどのアルキル硫酸アルカリ金属塩などが挙げられる。
【0023】
両性界面活性剤としては、例えば、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタインヒドロキシプロピルリン酸ナトリウムなどのベタイン型両性界面活性剤; β−ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウムなどのアミノ酸型両性界面活性剤; ラウリルジメチルアミンオキシドなどのアミンオキシド型両性界面活性剤などが挙げられる。
【0024】
以上列挙した界面活性剤は、いずれか1種用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。好ましい界面活性剤(B)としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンフェノール類、油脂脂肪酸アルカリ金属塩、アルキル硫酸アルカリ金属塩、ベタイン型両性界面活性剤、及びアミンオキシド型両性界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。また、ゴムに対する接触角がより低くなることから、界面活性剤(B)としては、両性界面活性剤が好ましい。
【0025】
界面活性剤(B)の含有量は、特に限定されないが、アミン化合物のアルキレンオキシド付加物(A)100質量部に対して、0.01〜10質量部含有することが好ましい。このような含有量とすることにより、ゴムに対する接触角がより低くなり、離型性をより向上することができる。界面活性剤(B)の含有量は、0.03質量部以上であることがより好ましく、更に好ましくは0.05質量部以上である。界面活性剤(B)の含有量は、また、7質量部以下であることがより好ましく、更に好ましくは5質量部以下である。
【0026】
本実施形態に係る加硫ゴム成形用離型剤は、上記アミン化合物のアルキレンオキシド付加物(A)と界面活性剤(B)で構成されてもよいが、水などの溶媒で希釈されたものであってもよい。好ましくは水で希釈されたものであり、洗浄性及び離型性の観点から、上記アミン化合物のアルキレンオキシド付加物(A)の濃度は5〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜50質量%である。
【0027】
本実施形態に係る加硫ゴム成形用離型剤は、その効果を阻害しない範囲で、シリコーンなどの他の成分を含有してもよい。
【0028】
本実施形態に係る加硫ゴム成形用離型剤は、種々の加硫ゴムを成形する際の離型剤として用いることができる。例えば、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム(EPDM)、NBRとポリ塩化ビニル(PVC)とをブレンドしたゴム(NBR/PVC)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)など、公知のゴムの加硫成形に用いることができる。
【0029】
ゴムの加硫成形は、常法に従い行うことができ、例えば、本実施形態の離型剤を金型に塗布及び/又は未加硫ゴムに塗布することで、未加硫ゴムと金型が接触する部位に離型剤を付与した後、未加硫ゴムを金型に装着して、加熱及び加硫すればよい。加硫後、金型から加硫成形されたゴムを取り出し、ゴム表面に付着した離型剤を水または温水などにより洗浄することによって、加硫ゴムが得られる。なお、未加硫ゴムとしては、上記ゴムとともに、例えば、加硫剤、加硫助剤、加工助剤、可塑剤、プロセスオイル、カーボンブラック、白色充填材、老化防止剤などの公知の添加剤を配合したゴム組成物を用いることができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
数平均分子量の測定方法は、以下の通りである。
【0032】
(数平均分子量)
GPC法により測定。GPC装置及び分析条件は以下の通りであり、標準サンプルとして分子量327、2000、8250、及び19700のポリエチレングリコールで校正したものを用いた。
・GPC装置:システムコントローラー:SCL−10A(島津製作所社製)
・検出器:RID−10A(島津製作所社製)
・カラム:Shodex GPCKF−G、KF−803、KF802.5、KF−802、KF−801を連結したもの(いずれも昭和電工社製)
・溶離液:テトラヒドロフラン
・サンプル注入:0.5重量%溶液、80μL
・流速:0.8mL/min
・温度:25℃。
【0033】
実施例で使用した原料は下記の通りである。
【0034】
(A−1):製造例1
ステンレス製オートクレーブに、エチレンジアミン60g(1モル)、水酸化カリウム3gを仕込み、反応器内を窒素置換した。100℃に昇温し、エチレンオキシド5544g(126モル)およびプロピレンオキシド1392g(24モル)の混合物を、内圧0.3MPa以下に保ちながら導入した。導入終了後、さらに100℃で2時間反応させることにより、エチレンジアミンのプロピレンオキシド(24モル)/エチレンオキシド(126モル)ランダム付加物(A−1)を得た。
【0035】
得られたアルキレンオキシド付加物(A−1)の詳細を下記表1に示す。表中、アルキレンオキシドの種類と使用量におけるPO(g)及びPO(mol)はプロピレンオキシドの使用量を示し、EO(g)及びEO(mol)はエチレンオキシドの使用量を示し、いずれもアミン化合物(A−1ではエチレンジアミン)1モルに対する使用量である。また、EO(%)は、得られたアルキレンオキシド付加物中に占めるオキシエチレン基の含有量(質量%)である。Mn及びOHVは、それぞれ得られたアルキレンオキシド付加物の数平均分子量及び平均水酸基価(mgKOH/g)を示す。下記の(A−2)〜(A−9)において同じ。
【0036】
(A−2)〜(A−6):製造例2〜6
エチレンオキシドとプロピレンオキシドを表1に記載の使用量とした以外は、製造例1と同様の操作を行い、エチレンジアミンのプロピレンオキシド/エチレンオキシドランダム付加物(A−2)〜(A−6)を得た。
【0037】
(A−7):製造例7
ステンレス製オートクレーブに、エチレンジアミン60g(1モル)、水酸化カリウム3gを仕込み、反応器内を窒素置換した。100℃に昇温し、プロピレンオキシド1798g(31モル)を内圧0.3MPa以下に保ちながら導入した。導入終了後、さらに100℃で2時間反応させた。続いて、エチレンオキシド7172g(163モル)を内圧0.3MPa以下に保ちながら導入した。エチレンオキシドの導入終了後、100℃で2時間反応させることにより、エチレンジアミンのプロピレンオキシド(31モル)−エチレンオキシド(163モル)ブロック付加物(A−7)を得た。
【0038】
(A−8):製造例8
エチレンジアミンに代えてジエチレントリアミン103g(1モル)を用い、エチレンオキシドとプロピレンオキシドを表1に記載の使用量とした以外は、製造例1と同様の操作を行い、ジエチレントリアミンのプロピレンオキシド(31モル)/エチレンオキシド(162モル)ランダム付加物(A−8)を得た。
【0039】
(A−9:製造例9)
プロピレンオキシドとエチレンオキシドを表1に記載の使用量とした以外は、製造例1と同様の操作を行い、エチレンジアミンのプロピレンオキシド(30モル)/エチレンオキシド(30モル)ランダム付加物(A−9)を得た。
【0040】
(B−1):ポリオキシアルキレンデシルエーテル(商品名:ノイゲンXL−1000、第一工業製薬社製)
(B−2):ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(商品名:ノイゲンEA−167、第一工業製薬社製)
(B−3):ヤシ油脂肪酸カリウム
(B−4):ラウリル硫酸ナトリウム
(B−5):ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン
(B−6):ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン
(B−7):ラウリルジメチルアミンオキシド
(C−1):ジメチルポリシロキサン(商品名:KF−96−20CS、信越化学工業社製)。
【0041】
【表1】
【0042】
(実施例1〜19、比較例1,2)
下記表2に記載の割合(質量比)で各原料を混合することにより、離型剤を得た。この離型剤を用いて、下記の評価を行った。
【0043】
(ぬれ性)
エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)またはアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)を用いて、JIS R3257に準じて、25℃における接線法による接触角を測定し、下記基準によりぬれ性を評価した。接触角が小さいほど、ぬれ性に優れる。
【0044】
A:接触角が40°未満
B:接触角が40°以上50°未満
C:接触角が50°以上60°未満
D:接触角が60°以上。
【0045】
(離型性)
離型剤を塗布した未加硫ゴム(エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)またはアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR))を金型(120mm×120mm×2mm)に装着した。続いて、150℃で1時間加硫処理を行い、金型から加硫ゴムを取り出した。このときの作業性を離型性とし、比較例1をコントロールとして下記の基準で評価した。結果を表2に示す。
【0046】
A:ジメチルポリシロキサンを用いた場合と作業性が同程度であり、金型から加硫ゴムを取り出せる
B:ジメチルポリシロキサンを用いた場合よりも作業性が若干劣るが、金型から加硫ゴムを取り出せる
C:ジメチルポリシロキサンを用いた場合よりも作業性が悪く、金型から加硫ゴムを取り出せない。
【0047】
(洗浄性)
離型性の評価で得られた加硫ゴムを、2Lの水(温度:80℃)に30秒間浸漬し、取り出して、加硫ゴム表面のヌメリを確認した。ヌメリがある場合は、新たに用意した2Lの水(温度:80℃)に30秒間浸漬し、ヌメリがなくなる、または、合計3回までこの操作を繰り返した。下記の基準で洗浄性を評価した。結果を表2に示す。なお、加硫ゴム表面にヌメリがある場合は離型剤が残っており、ヌメリがない場合は離型剤が残っていないことを示す。
【0048】
A:1回目の浸漬後に加硫ゴムの表面にヌメリがない
B:2回目の浸漬後に加硫ゴムの表面にヌメリがない
C:3回目の浸漬後に加硫ゴムの表面にヌメリがない
D:3回目の浸漬後でも加硫ゴムの表面にヌメリがある。
【0049】
【表2】
【0050】
表2に示されたように、離型剤としてジメチルポリシロキサンを用いた比較例1では、離型性には優れるものの、洗浄性に劣っていた。比較例2では、エチレンジアミンのアルキレンオキシド付加物を単独で用いており、ぬれ性、離型性および洗浄性に劣っていた。
【0051】
これに対し、エチレンジアミンやジエチレントリアミンのアルキレンオキシド付加物と界面活性剤を併用した実施例1〜19であると、ゴムとの接触角が小さくぬれ性に優れており、また10〜30質量%という低い使用濃度でも十分な離型性を発揮することができ、離型性と洗浄性に優れていた。また、実施例1〜4と実施例5〜7との対比より、界面活性剤(B)としては両性界面活性剤がぬれ性の点で有利であることが分かった。また、実施例18と実施例5,13〜17及び19との対比より、アルキレンオキシドの付加形態としてはブロック付加よりもランダム付加の方が離型性の点で有利であることが分かった。