(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[ステアリング装置]
図1は、ステアリング装置1の斜視図である。
図1に示すように、ステアリング装置1は、車両に搭載されている。ステアリング装置1は、ステアリングホイール2の回転操作に伴って車輪の舵角を調整する。
【0018】
ステアリング装置1は、コラムユニット11と、ステアリングシャフト12と、固定ブラケット(フロントブラケット13及びリヤブラケット14)と、切替部15と、を主に備えている。コラムユニット11及びステアリングシャフト12は、それぞれ軸線O1に沿って形成されている。したがって、以下の説明では、コラムユニット11及びステアリングシャフト12の軸線O1の延びる方向を単にシャフト軸方向といい、軸線O1に直交する方向をシャフト径方向といい、軸線O1回りの方向をシャフト周方向という場合がある。
【0019】
本実施形態のステアリング装置1は、軸線O1が前後方向に対して交差した状態で車両に搭載される。具体的に、ステアリング装置1の軸線O1は、後方に向かうに従い上方に延在している。但し、以下の説明では、便宜上、ステアリング装置1において、シャフト軸方向でステアリングホイール2に向かう方向を単に後方とし、ステアリングホイール2とは反対側に向かう方向を単に前方(矢印FR)とする。また、シャフト径方向のうち、ステアリング装置1が車両に取り付けられた状態での上下方向を単に上下方向(矢印UPが上方)とし、左右方向を単に左右方向とする。
【0020】
<コラムユニット>
コラムユニット11は、アウタコラム21と、インナコラム22と、を有している。
アウタコラム21は、固定ブラケット13,14を介して車体に取り付けられている。アウタコラム21は、保持筒部24と、締付部25と、を主に有している。
【0021】
図2は、
図1のII−II線に沿う断面図である。
図2に示すように、保持筒部24は、軸線O1に沿って延びる筒状に形成されている。保持筒部24内における前端部には、前側軸受27の外輪が嵌合(圧入)されている。保持筒部24の後部において、シャフト周方向の一部(本実施形態では、アウタコラム21の下部)には、スリット28が形成されている。スリット28は、アウタコラム21をシャフト径方向に貫通するとともに、アウタコラム21の後端面で開放されている。
【0022】
図3は、
図1のIII−III線に沿う断面図である。
図3に示すように、締付部25は、保持筒部24のうち、スリット28を間に挟んで左右方向で対向する位置からそれぞれ下方に延設されている。各締付部25には、締付部25を左右方向に貫通する貫通孔31が形成されている。
【0023】
図2に示すように、インナコラム22は、軸線O1に沿って延びる筒状に形成されている。インナコラム22の外径は、保持筒部24の内径よりも小さくなっている。インナコラム22は、保持筒部24内に挿入されている。インナコラム22は、保持筒部24に対してシャフト軸方向に移動可能に構成されている。インナコラム22内における後端部には、後側軸受32の外輪が嵌合(圧入)されている。インナコラム22内における前端部には、中間軸受34の外輪が嵌合(圧入)されている。
【0024】
図4は、ステアリング装置1の底面図である。
図4に示すように、インナコラム22の後部において、シャフト周方向の一部(本実施形態では、下部)には、一対のガイド部33が形成されている。各ガイド部33は、左右方向で対向するとともに、シャフト軸方向(前後方向)に延びるレール状に形成されている。
【0025】
<ステアリングシャフト>
図2に示すように、ステアリングシャフト12は、インナシャフト37及びアウタシャフト38を備えている。
インナシャフト37は、軸線O1に沿って延びる中空円筒状に形成されている。インナシャフト37は、保持筒部24内に遊挿されている。インナシャフト37の前端部は、上述した前側軸受27の内輪に圧入されている。これにより、インナシャフト37は、保持筒部24内で前側軸受27を介して軸線O1回りに回転可能に支持されている。インナシャフト37の前端部(前側軸受27よりも前方に突出した部分)は、自在継手(不図示)等を介して例えばロアシャフト(不図示)とステアリングギヤボックス(不図示)等に連結される。
【0026】
アウタシャフト38は、シャフト軸方向に延在している。アウタシャフト38は、アウタコラム21に対するインナコラム22のシャフト軸方向の移動に伴い、インナシャフト37に対してシャフト軸方向に移動可能に構成されている。なお、アウタシャフト38の内周面には、例えば雌スプラインが形成されている。雌スプラインは、インナシャフト37の外周面に形成された雄スプラインに係合している。これにより、アウタシャフト38は、インナシャフト37に対する相対回転が規制された上で、インナシャフト37に対してシャフト軸方向に移動する。但し、ステアリングシャフト12の伸縮構造や回転規制の構造は、適宜変更が可能である。
【0027】
アウタシャフト38の後端部は、インナコラム22内で後側軸受32の内輪に圧入されている。アウタシャフト38の前端部は、インナコラム22内で中間軸受34の内輪に圧入されている。これにより、アウタシャフト38は、インナコラム22に対して軸線O1回りに回転可能に構成されている。アウタシャフト38のうち、インナコラム22の後方に突出した部分には、ステアリングホイール2が連結される。なお、本実施形態では、アウタシャフト38がインナシャフト37に対して後方に配置された構成について説明したが、この構成のみに限らず、アウタシャフト38がインナシャフト37に対して前方に配置された構成であってもよい。
【0028】
(ハンガブラケット)
図2、
図3に示すように、インナコラム22の下部には、ハンガブラケット51が下向きに固定されている。ハンガブラケット51は、例えば金属板に対してプレス加工を施すことで形成されている。ハンガブラケット51は、保持筒部24のスリット28を通して保持筒部24の外部に露出している。ハンガブラケット51は、シャフト軸方向から見た正面視で下方に開口するU字状に形成されている。
【0029】
図5は、ハンガブラケット51及びロック機構53の拡大斜視図である。
図5に示すように、ハンガブラケット51は、頂板部61と、頂板部61における左右方向の両端部から下方に延設された一対の側板部62と、を有している。
頂板部61は、後端部に位置する厚肉部61aと、厚肉部61aの前方に連なる薄肉部61bと、を有している。厚肉部61aと薄肉部61bと、は段差を介して連なっていても、傾斜面等を介して滑らかに連なっていてもよい。頂板部61における左右方向の中央部には、頂板部61を上下方向に貫通するEA長孔64が形成されている。EA長孔64は、厚肉部61a及び薄肉部61bに亘ってシャフト軸方向に沿って直線状に延設されている。
【0030】
ハンガブラケット51は、固定部材71によってインナコラム22に固定されている。具体的に、EA長孔64の後端部には、固定部材71のボルト72が下方から挿通されている。固定部材71は、テレスコ動作の際にアウタコラム21に対するインナコラム22の前方移動を規制するテレスコ規制部としての機能を有する。ボルト72の軸部72aは、インナコラム22の下部に形成された挿通孔22aを上下方向に貫通している。本実施形態において、挿通孔22aの内径は、軸部72aの外径よりも大きくなっている。具体的に、軸部72aの外周面と、挿通孔22aの内周面との間には、隙間が設けられている。なお、図示の例において、ボルト72の頭部72bは、ボルト72の基端部(下端部)に向かうに従い漸次縮径するテーパ部を有している。
【0031】
軸部72aの先端部(上端部)は、インナコラム22内において、固定部材71のナット73に螺着されている。すなわち、ボルト72の頭部72b及びナット73の間に、頂板部61(厚肉部61a)及びインナコラム22が上下方向に挟持されることで、ハンガブラケット51がインナコラム22に固定されている。なお、ハンガブラケット51の固定方法は、適宜変更が可能である。例えば、リベット等によってハンガブラケット51をインナコラム22に固定してもよい。
【0032】
ハンガブラケット51は、頂板部61の後端部がガイド部33の内側に配置された状態でインナコラム22に固定されている。なお、ハンガブラケット51は、少なくとも一部がガイド部33の内側に配置されていればよい。
【0033】
図6は、
図5のVI―VI線に沿う断面図である。
図6に示すように、側板部62は、頂板部61の全長に亘って形成されている。側板部62において前端部を除く部分には、下方に突出するテレスコロック歯75が形成されている。テレスコロック歯75は、左右方向から見た側面視で台形状に形成されている。具体的に、テレスコロック歯75の後面は、後方から前方に向かうに従い下方に延びる傾斜面である。テレスコロック歯75の下面は、シャフト軸方向に直線状に延びる平坦面である。テレスコロック歯75の前面は、上下方向に直線状に延びる平坦面である。なお、テレスコロック歯75の各面の形状は、適宜変更が可能である。
【0034】
上述したテレスコロック歯75は、シャフト軸方向に間隔をあけて複数形成されている。本実施形態において、各側板部62に形成された対応するテレスコロック歯75同士は、シャフト軸方向の同位置(同ピッチ)に形成されている。なお、テレスコロック歯75の数やピッチ等は、適宜変更が可能である。また、テレスコロック歯75のピッチは、左右の側板部62,62において異なっていてもよい。
【0035】
各側板部62の前端部には、前側テレスコ規制部77が形成されている。前側テレスコ規制部77は、テレスコ動作の際にアウタコラム21に対するインナコラム22の後方移動を規制する。前側テレスコ規制部77は、下方に向かうに従いシャフト軸方向の幅が漸次縮小する台形状に形成されている。前側テレスコ規制部77の上下方向の高さは、テレスコロック歯75よりも高くなっている。前側テレスコ規制部77の後面は、上下方向に直線状に延びる平坦面に形成されている。前側テレスコ規制部77の前面は、下方に向かうに従い後方に延びる傾斜面とされている。
【0036】
(EAワイヤ)
図4、
図5に示すように、ハンガブラケット51と固定部材71との間には、EA(Energy Absorbing)ワイヤ52が介在している。EAワイヤ52は、上下方向から見た平面視でM字状に形成されている。具体的に、EAワイヤ52は、一対の脚部81と、一対の脚部81同士を接続する接続部82と、を有している。
【0037】
脚部81は、シャフト軸方向に延在している。本実施形態において、脚部81は、前方に向かうに従い左右方向の内側に向けて傾斜している。各脚部81は、上述した頂板部61における左右方向の両端部において、インナコラム22に固定されたガイド部33と頂板部61との間に配置されている。
接続部82は、上述したボルト72の頭部72bに前方から掛け回された後、ハンガブラケット51の後方において、各脚部81の後端部に接続されている。なお、EAワイヤ52の線径は、必要な曲げ荷重等に応じて適宜変更可能である。
【0038】
ここで、
図1に示すように、上述したフロントブラケット13は、ピボット軸86を介してアウタコラム21と車体との間を接続している。フロントブラケット13は、シャフト軸方向から見た正面視で下方に開口するU字状に形成されている。フロントブラケット13は、アウタコラム21の後端部を上方及び左右方向の両側から取り囲んでいる。フロントブラケット13のうち、左右方向の両側に位置するフロント側壁13aは、ピボット軸86によってアウタコラム21に接続されている。これにより、アウタコラム21は、ピボット軸86の左右方向に延びる軸線O2回りに回動可能にフロントブラケット13に支持されている。
【0039】
図3に示すように、リヤブラケット14は、ロック機構53の後述するロックボルト100を介してアウタコラム21とハンガブラケット51と車体との間を接続している。リヤブラケット14は、シャフト軸方向から見た正面視で下方に開口するU字状に形成されている。リヤブラケット14は、アウタコラム21の上方及び左右方向の両側を取り囲んでいる。
【0040】
具体的に、リヤブラケット14は、コラムユニット11に対して左右両側に配置された側板部90と、各側板部90同士を接続するブリッジ部91と、を備えている。
側板部90は、シャフト軸方向から見た正面視でL字状に形成されている。側板部90は、上下方向に延びるリヤ側壁92と、リヤ側壁92の上端部から左右方向の外側に張り出す張出部93と、を備えている。
【0041】
各リヤ側壁92には、各リヤ側壁92を左右方向に貫通するチルトガイド孔96が形成されている。チルトガイド孔96は、上方に向かうに従い後方に向けて延びる長孔である。具体的に、チルトガイド孔96は、後方に向けて凸の円弧状に形成されている。
張出部93は、車体に連結されている。
【0042】
ブリッジ部91は、各リヤ側壁92の上端部に連結されている。ブリッジ部91は、上方に向けて突のアーチ状に形成されている。ブリッジ部91は、コラムユニット11のチルト動作(軸線O2回りのコラムユニット11の角度調整)の際に、コラムユニット11の上昇を規制するように構成されている。
【0043】
<切替部>
図4に示すように、切替部15は、ロック機構53と、操作レバー54と、締結カム55と、を主に有している。
【0044】
(ロック機構)
図7は、ロック機構53の分解斜視図である。
図7に示すように、ロック機構53は、ロックボルト100と、ロックボルト100に取り付けられたストッパユニット101と、を主に有している。
【0045】
図3に示すように、ロックボルト100は、各締付部25に形成された貫通孔31よりも小径に形成されている。ロックボルト100は、上述した各締付部25の貫通孔31及びリヤブラケット14のチルトガイド孔96を通して、各締付部25及びリヤブラケット14を左右方向に貫通している。なお、以下の説明では、ロックボルト100の軸線O3が延びる方向を単にボルト軸方向(左右方向)といい、軸線O3に直交する方向をボルト径方向といい、軸線O3回りの方向をボルト周方向という場合がある。
【0046】
図7に示すように、ロックボルト100における左右方向の中間部分には、ボルト係合部103が形成されている。ボルト係合部103は、ボルト凹部103a及びボルト凸部103bがボルト周方向に交互に配されて構成されている。
ボルト凹部103aは、ロックボルト100の外周面に対してボルト径方向の内側に窪むとともに、ボルト軸方向に延在している。ボルト凹部103aは、ロックボルト100の全周に亘ってボルト周方向に間隔をあけて複数形成されている。すなわち、ロックボルト100において、ボルト周方向で隣り合うボルト凹部103a間には、ボルト凹部103aに対してボルト径方向の外側に膨出するボルト凸部103bが形成されている。なお、ボルト係合部103は、ボルト凹部103a(ボルト凸部103b)を少なくとも一つ有していればよい。また、ボルト凸部103bが、ロックボルト100の外周面に対してボルト径方向の外側に突出して形成してもよい。
【0047】
ストッパユニット101は、ホルダ110と、テレスコストッパ111と、EAストッパ112と、第1付勢部材113と、を主に備えている。
ホルダ110は、例えば金属板に対してプレス加工を施すことで形成されている。ホルダ110は、正面視において上方に開口するU字状に形成されている。具体的に、ホルダ110は、左右方向で対向する一対のホルダ側壁115と、ホルダ側壁115の下端同士を接続する底壁116と、を有している。
【0048】
各ホルダ側壁115には、各ホルダ側壁115を左右方向に貫通するホルダ挿通孔120が形成されている。ホルダ挿通孔120内には、ロックボルト100のボルト係合部103が挿通されている。ホルダ挿通孔120は、左右方向から見た側面視において、ボルト係合部103と同等の形状をなしている。すなわち、ホルダ挿通孔120の内周面には、径方向の内側に膨出するホルダ凸部120aが形成されている。ホルダ凸部120aは、ロックボルト100がホルダ挿通孔120に挿通された状態において、ボルト凹部103a内に嵌合している。一方、ボルト周方向で隣り合うホルダ凸部120a間に位置する部分は、ホルダ凸部120aに対してボルト径方向の外側に窪むホルダ凹部120bを構成している。ホルダ凹部120bには、ロックボルト100がホルダ挿通孔120に挿通された状態において、ボルト凸部103bが嵌合されている。
【0049】
ホルダ凹部120bの幅(ボルト周方向に沿う幅)は、ボルト凸部103bと同等に設定されている。ホルダ凸部120aの幅は、ボルト凹部103aと同等に設定されている。これにより、ホルダ110は、ロックボルト100に対してボルト周方向で係合している。本実施形態において、ホルダ110は、ロックボルト100と一体回転する。なお、ホルダ凹部120b及びボルト凸部103bの幅、並びにホルダ凸部120a及びボルト凹部103aの幅は、少なくとも何れかが同等に設定されていればよい。ホルダ凸部120a(ホルダ凹部120b)は、ボルト凹部103a(ボルト凸部103b)と同数でなくてもよい。
【0050】
各ホルダ側壁115における上下方向の中間部分には、屈曲爪123が形成されている。屈曲爪123は、各ホルダ側壁115から前方に向けて延在した後、左右方向の内側に向けてそれぞれ屈曲されている。
【0051】
底壁116の前端縁において、左右方向の中間部分には、変形部124が形成されている。変形部124は、左右方向から見た側面視でL字状に形成されている。具体的に、変形部124は、舌片部125と、舌片部125の先端に連なる保持部126と、を有している。
【0052】
舌片部125は、底壁116の幅(左右方向における幅)よりも狭い細板状に形成されている。舌片部125は、底壁116の前端縁から前方に延在した後、上方に屈曲されている。
【0053】
図6、
図7に示すように、保持部126は、シャフト軸方向から見た正面視において、舌片部125よりも幅広に形成されている。保持部126は、左右方向から見た側面視で後方に向けて凸の湾曲形状をなしている。
【0054】
テレスコストッパ111は、ホルダ110の内側において、ロックボルト100に回転可能に支持されている。
図6に示すように、テレスコストッパ111は、テレスコ挿通孔130が形成されたテレスコリング131を有している。テレスコ挿通孔130は、ロックボルト100のうち、ボルト係合部103の最大外径部分(ボルト凸部103bの外周面)よりも大径の丸孔である。テレスコ挿通孔130内には、ロックボルト100のボルト係合部103が挿通されている。
【0055】
テレスコリング131におけるボルト周方向の一部には、前方ストッパ132が形成されている。前方ストッパ132は、テレスコリング131からボルト径方向の外側に突出するとともに、テレスコリング131よりも左右方向に幅広に形成された板状である。前方ストッパ132は、テレスコ動作の際、インナコラム22の最伸位置において、上述した前側テレスコ規制部77が前方から当接する。これにより、アウタコラム21に対するインナコラム22の後方移動が規制される。
図6に示すように、前方ストッパ132は、上述した保持部126に対してボルト周方向の一方(図示の例では下方)から係合している。
【0056】
テレスコリング131において、前方ストッパ132に対してボルト周方向の他方に位置する部分(図示の例では上方)には、ボルト径方向の外側に突出する係合爪133が形成されている。係合爪133は、上述した保持部126に対してボルト周方向の他方から係合している。このように、テレスコストッパ111は、前方ストッパ132及び係合爪133が保持部126にボルト周方向の両側から係合することで、ロックボルト100に対する回転が規制されている。
【0057】
テレスコリング131において、係合爪133に対してボルト周方向の他方に位置する部分には、後方ストッパ135が形成されている。後方ストッパ135は、テレスコリング131からボルト径方向の外側に突出している。後方ストッパ135は、テレスコリング131よりも幅広で、前方ストッパ132よりも幅狭に形成されている。前方ストッパ132は、上述したホルダ側壁115間に配置されている。後方ストッパ135は、上述したボルト72の頭部72bにシャフト軸方向で対向している。すなわち、後方ストッパ135は、テレスコ動作の際、インナコラム22の最縮位置において、上述したボルト72の頭部72bに当接する。これにより、アウタコラム21に対するインナコラム22の前方移動が規制される。このように、テレスコ動作時のストローク(テレスコストローク)は、固定部材71と前側テレスコ規制部77との間の前後長さに設定されている。なお、後方ストッパ135には、下方に向けて窪むボルト受入部136が形成されている。ボルト受入部136は、テレスコ動作の際に、インナコラム22の最縮位置において、ボルト72の頭部72b(テーパ部)に当接する部位である。
【0058】
図7に示すように、EAストッパ112は、ホルダ110の内側において、テレスコストッパ111に対して左右両側に一対で設けられている。なお、各EAストッパ112は、何れも同等の構成であるため、以下の説明では、一方のEAストッパ112を例にして説明する。
【0059】
EAストッパ112は、EA挿通孔140が形成されたEAリング141を有している。EA挿通孔140内には、ロックボルト100のボルト係合部103がEAストッパ112に対して回動可能に挿通されている。
【0060】
図8は、ボルト係合部103、テレスコ挿通孔130及びEA挿通孔140を示す断面図である。
図8に示すように、EA挿通孔140の内周面には、ボルト径方向の内側に膨出するEA凸部140aが形成されている。EA凸部140aにおけるボルト周方向の幅は、ボルト凹部103aに比べて狭くなっている。EA凸部140aは、ロックボルト100がEA挿通孔140内に挿通された状態において、ボルト凹部103a内に収容されている。
一方、ボルト周方向で隣り合うEA凸部140a間に位置する部分は、EA凸部140aに対してボルト径方向の外側に窪むEA凹部140bを構成している。EA凹部140bにおけるボルト周方向の幅は、ボルト凸部103bに比べて広くなっている。EA凹部140bには、ロックボルト100がEA挿通孔140に挿通された状態において、ボルト凸部103bが収容されている。
【0061】
このように、EA凸部140aは、ボルト周方向で隣り合うボルト凸部103bに対してボルト周方向で隙間Sをあけた状態でボルト凹部103a内に収容されている。すなわち、隙間Sは、EAストッパ112に対してロックボルト100が回動する際の遊びとして機能する。これにより、ロックボルト100は、EA凸部140a及びボルト凸部103b同士がボルト周方向で当接するまでの間、EAストッパ112に対して回動可能に構成されている。
【0062】
図9は、
図5のIX−IX線に沿う断面図である。
図5、
図9に示すように、EAリング141におけるボルト周方向の一部には、当接部144が形成されている。当接部144は、EAリング141からボルト径方向の外側に突出している。当接部144は、ロックボルト100の回動に伴いEAリング141が回動することで、テレスコロック歯75に係合可能に構成されている。具体的に、ロック機構53は、当接部144がテレスコロック歯75の例えば下面に下方から当接する当接位置(ロック状態)と、当接部144がテレスコロック歯75の下面に対して下方に離間した離間位置(ロック解除状態(
図11参照))と、の間を回動する。
【0063】
当接部144の基端部には、EA爪部145が形成されている。EA爪部145は、当接部144の延在方向に交差する方向に突出している。EA爪部145は、当接位置において、シャフト軸方向で隣り合うテレスコロック歯75間に進入している。EA爪部145は、当接位置において、テレスコロック歯75が後方から係止可能に構成されている。本実施形態のEA爪部145は、左右方向から見た側面視で三角形状に形成されている。EA爪部145の後面は、上下方向に沿う平坦面に形成されている。EA爪部145の前面は、下方に向かうに従い前方に向けて傾斜する傾斜面に形成されている。
【0064】
第1付勢部材113は、例えばダブルトーションスプリングである。第1付勢部材113は、ホルダ110の底壁116と各EAストッパ112との間に介在して、EAストッパ112を当接位置(当接部144がテレスコロック歯75に押さえ付けられる方向)に付勢している。したがって、上述したEA凸部140aは、ボルト周方向において、当接位置に向かう方向(A2方向)でボルト凸部103bに係合している。これにより、EAストッパ112はロックボルト100と一体回転する。なお、第1付勢部材113は、ダブルトーションスプリングに限られない。
【0065】
図1に示すように、操作レバー54は、ロックボルト100における左右方向の第1端部(図示の例では左側端部)に連結されている。操作レバー54は、ロック機構53とともに軸線O3回りに回動可能に構成されている。
【0066】
図3に示すように、締結カム55は、操作レバー54と、リヤブラケット14のリヤ側壁92と、の間に介在している。締結カム55は、操作レバー54の回動操作に伴い、左右方向の厚さが変化するように構成されている。ステアリング装置1では、締結カム55の厚さが変化することで、各リヤ側壁92を介して各締付部25が左右方向で互いに接近離間するように(スリット28の左右方向の幅(間隔)が拡縮するように)構成されている。具体的に、締結カム55の厚さが増加するように操作レバー54を回動操作することで、各締付部25同士が各リヤ側壁92とともに接近して保持筒部24が縮径する。これにより、保持筒部24によってインナコラム22が挟持され、アウタコラム21に対するインナコラム22のシャフト軸方向への移動が規制される(ロック状態)。一方、ロック状態において、締結カム55の厚さが減少するように操作レバー54を回動操作することで、締付部25同士が各リヤ側壁92とともに離間して保持筒部24が拡径される。これにより、保持筒部24によるインナコラム22の挟持が解除され、アウタコラム21に対するインナコラム22のシャフト軸方向への移動が許容される(ロック解除状態)。
【0067】
上述したロックボルト100における左右方向の両端部と、リヤブラケット14の上述した各張出部93と、の間には、第2付勢部材150が介在している。第2付勢部材150は、チルトバランスを図るためのものである。第2付勢部材150は、例えばコイルスプリングである。第2付勢部材150のうち、上端部は張出部93に連結され、下端部はロックボルト100に連結されている。第2付勢部材150は、ロックボルト100を介してコラムユニット11やステアリングシャフト12等を上方に向けて付勢している。これにより、ロック解除時にコラムユニット11が自重で下がることを防止している。
【0068】
図10は、
図1のX部拡大図である。
図10に示すように、上述したアウタコラム21において、保持筒部24の上部には、突当部152が形成されている。突当部152は、保持筒部24から上方に膨出している。突当部152は、チルト動作の最上端位置において、リヤブラケット14のブリッジ部91に下方から突き当たる。すなわち、突当部152は、チルト動作の際、ロックボルト100がチルトガイド孔96の上端内周縁に接触する前に、ブリッジ部91に突き当たるように寸法が設定されている。
【0069】
本実施形態の突当部152は、直方体形状に形成されている。突当部152の上面は、後方に向かうに従い下方に延びる傾斜面とされている。なお、突当部152の上面の傾斜角度(シャフト軸方向に対する角度)は、チルト動作の最上端位置において、ブリッジ部91の下面と突当部152の上面とが平行になるように設定されている。これにより、突当部152とブリッジ部91とが面接触するので、突当部152とブリッジ部91との接触時における面圧を低下させることができる。
【0070】
[作用]
次に、上述したステアリング装置1の作用を説明する。以下の説明では、チルト・テレスコ動作及び二次衝突時の動作について主に説明する。以下の説明では、
図9に示すEAストッパ112の当接位置を初期状態として説明する。
【0071】
<チルト・テレスコ動作>
図1に示すように、ステアリングホイール2の前後位置や角度を調整する場合には、まず操作レバー54を回動操作して、ステアリング装置1をロック解除状態とする。具体的には、締結カム55の厚さが減少する方向(例えば、下方)に操作レバー54を回動操作する。すると、締付部25同士が各リヤ側壁92とともに離間して保持筒部24(スリット28)が拡径される。これにより、保持筒部24によるインナコラム22の挟持が解除されるとともに、リヤ側壁92によるアウタコラム21の挟持が解除される。その結果、テレスコ動作及びチルト動作が可能となる。
【0072】
図11は、ストッパユニット101が離間位置にある状態を示す
図9に対応する断面図である。
ここで、上述したようにロックボルト100のボルト係合部103とホルダ110のホルダ凸部120a(ホルダ凹部120b)とは、ボルト周方向で係合している。そのため、
図11に示すように、操作レバー54をロック解除状態に回動する過程において、ホルダ110がロックボルト100とともに軸線O3回りのA1方向(
図11における反時計回り方向)に回動する。
しかも、テレスコストッパ111は、前方ストッパ132及び係合爪133がホルダ110の保持部126にボルト周方向の両側から係合することで、ロックボルト100に対する回転が規制されている。これにより、ホルダ110に保持されたテレスコストッパ111もロックボルト100とともに軸線O3回りのA1方向に回動する。
【0073】
一方、
図9に示すように、EAストッパ112は、第1付勢部材113によって当接位置に向けて付勢されている。そのため、EAストッパ112のEA凸部140aは、ボルト凸部103bに軸線O3回りのA2方向(
図9における時計回り方向)で係合している。したがって、
図11に示すように、操作レバー54をロック解除状態に回動させることで、EAストッパ112についても、ロックボルト100とともに軸線O3回りのA1方向に回動する。
その結果、操作レバー54のロック解除状態に移動するのに伴い、EAストッパ112が離間位置に移動する。
【0074】
ロック解除状態において、ステアリングホイール2を前方に押し込むことで、ステアリングホイール2がインナコラム22及びステアリングシャフト12とともに、アウタコラム21に対して前方に移動する。ロック解除状態において、ステアリングホイール2を後方に引き込むことで、ステアリングホイール2がインナコラム22及びステアリングシャフト12とともに、アウタコラム21に対して後方に移動する。これにより、ステアリングホイール2の前後位置を任意の位置に調整できる。
【0075】
なお、ロック解除状態において、テレスコストッパ111の前方ストッパ132は、前側テレスコ規制部77と正面視で重なり合っている。そのため、インナコラム22の最伸位置において、前方ストッパ132が前側テレスコ規制部77に当接する。これにより、アウタコラム21に対するインナコラム22の後方への移動が規制される。
【0076】
図12は、ロック解除状態における
図6に相当する断面図である。
図12に示すように、ロック解除時、ロックボルト100の回動に伴いテレスコストッパ111が回転すると、前方ストッパ132と前側テレスコ規制部77とが前後方向で対向する。この際、前方ストッパ132における前方を向く面、及び前側テレスコ規制部77における後方を向く面同士(前方ストッパ132と前側テレスコ規制部77の対向面同士)がほぼ平行に配置される。これにより、前方ストッパ132と前側テレスコ規制部77とが当接する際に面接触となり、アウタコラム21に対するインナコラム22の後方への移動を確実に規制することができる。また、当接時の荷重によるテレスコストッパ111の破損を防止することができる。
【0077】
一方、ロック解除状態において、テレスコストッパ111の後方ストッパ135は、ボルト72の頭部72bと正面視で重なり合っている。そのため、インナコラム22の最縮位置において、後方ストッパ135のボルト受入部136とボルト72の頭部72b(テーパ部)とが当接する。これにより、アウタコラム21に対するインナコラム22の前方への移動が規制される。
【0078】
図13は、ロック解除状態における
図6に相当する断面図である。
図13に示すようにロック解除時、ロックボルト100の回動に伴いテレスコストッパ111が回転すると、ボルト受入部136は、後方に向かうに従い下方に向けて傾斜(例えば、前後方向に対する角度が45°程度)する。この状態で、インナコラム22を前方に移動させると、ボルト72の頭部72b(テーパ部)が後方ストッパ135のボルト受入部136に斜め上方から当接する。具体的に、ボルト受入部136と、頭部72bのテーパ部と、は前後方向に対して傾いた状態で接触(面接触)する。したがって、テレスコストッパ111のロック状態への回転を抑制することができる。このとき、ボルト受入部136と頭部72bとの間において、ボルト受入部136の法線方向に沿って作用する荷重は、前方(ロック状態)に向かう荷重と、下方(ロック解除状態)に向かう荷重と、に分解される。すなわち、テレスコ動作の際にボルト受入部136と頭部72bとの間に作用する荷重の分力を、テレスコストッパ111をロック解除状態に回転させる方向(ロック状態とは異なる方向)に作用させることができる。したがって、テレスコストッパ111が予期せず回転するのを抑制した上で、アウタコラム21に対するインナコラム22の前方への移動を確実に規制することができる。
【0079】
ロック解除状態において、ステアリングホイール2を上向きに調整するには、ステアリングホイール2を上方に押し上げる。すると、チルトガイド孔96に沿ってステアリングホイール2がコラムユニット11及びステアリングシャフト12とともに軸線O2回りで上方に揺動する。
一方、ロック解除状態において、ステアリングホイール2を下向きに調整するには、ステアリングホイール2を下方に引き下げる。すると、チルトガイド孔96に沿ってステアリングホイール2がコラムユニット11及びステアリングシャフト12とともに軸線O2回りで下方に揺動する。これにより、ステアリングホイール2の角度を任意の位置に調整できる。
【0080】
図14は、コラムユニット11が最上端位置にある状態を示す
図3に対応する断面図である。
図14に示すように、コラムユニット11が上方に揺動する過程において、ロックボルト100がチルトガイド孔96内を上方に移動する。この際、ロックボルト100がチルトガイド孔96の上端内周縁に突き当たる前に、アウタコラム21の突当部152がブリッジ部91に下方から当接する。これにより、コラムユニット11の上方への揺動が規制される。
【0081】
続いて、
図3に示すように、ステアリングホイール2を所望の位置に調整した後、操作レバー54を回動操作して、ステアリング装置1をロック状態とする。具体的には、締結カム55の厚さが増加する方向(例えば、上方)に操作レバー54を回動する。すると、各締付部25同士が各リヤ側壁92とともに接近して保持筒部24(スリット28)が縮径する。これにより、保持筒部24によってインナコラム22が挟持されるとともに、リヤ側壁92によってアウタコラム21が挟持される。その結果、テレスコ動作及びチルト動作が規制される。
【0082】
図9、
図11に示すように、操作レバー54がロック解除状態に向けて回動することで、ロックボルト100とともにホルダ110及びテレスコストッパ111が軸線O3回りのA1方向に回動する。
一方、ロック状態に向けてロックボルト100がA2方向に回転することで、ボルト凸部103bがEA凸部140aからA2方向に離間しようとする。しかし、EAストッパ112は、第1付勢部材113によって当接位置に向けて付勢されているため、ロックボルト100のA2方向への回転に追従してA2方向に回転する。EAストッパ112は、爪部145が隣り合うテレスコロック歯75間に進入するとともに、当接部144がテレスコロック歯75の下面に下方から当接する。すなわち、操作レバー54のロック状態への移動に伴い、EAストッパ112が当接位置に移動する。
【0083】
図15、
図16は、EAストッパ112が乗り上げ位置にある状態を示す
図9に対応する断面図である。
ここで、
図15に示すように、ロック状態に向けてEAストッパ112がA2方向に回転する過程において、爪部145がテレスコロック歯75に干渉する場合(乗り上げ位置)がある。これに対して、本実施形態では、EAストッパ112が第1付勢部材113によってA2方向に付勢されるとともに、EA凸部140aがボトル周方向で隣り合うボルト凸部103bに対して隙間Sをあけた状態でボルト凹部103a内に収容されている。そのため、
図16に示すように、EAストッパ112が乗り上げ位置にある場合であっても、ロックボルト100(操作レバー54)をA2方向に回転させることで、EAストッパ112に対してロックボルト100等がA2方向に回転する。すなわち、ロックボルト100が隙間Sを埋めるようにEAストッパ112に対して回転(空走)することで、乗り上げ位置にあっても操作レバー54をロック状態に移動できる。
【0084】
<二次衝突時>
次に、二次衝突時の動作について説明する。
二次衝突の際には、ステアリングホイール2に対して前方に向けた衝突荷重が運転者から作用する。衝突荷重が所定以上の場合には、ステアリングホイール2がインナコラム22やステアリングシャフト12とともに、アウタコラム21に対して前方に移動する。具体的に、ステアリング装置1では、インナコラム22の外周面がアウタコラム21の内周面上を摺動しながら、インナコラム22等がアウタコラム21に対して前方に移動する。アウタコラム21とインナコラム22との間の摺動抵抗等により、二次衝突時に運転者に加わる衝撃荷重が緩和される。
【0085】
図17は、二次衝突時の動作を説明するための説明図であって、
図6に対応する断面図である。
ここで、
図17に示すように、EAストッパ112が当接位置にあるとき、ハンガブラケット51がインナコラム22とともに前方に移動しようとすると、テレスコロック歯75と爪部145とがシャフト軸方向で係合する。これにより、アウタコラム21に対するハンガブラケット51の前方への移動が規制される。その結果、インナコラム22は、固定部材71とともにハンガブラケット51やアウタコラム21、ロック機構53(以下、ハンガブラケット51等という。)に対して前方に移動する(コラプスストローク)。
【0086】
一方、
図16に示すように、EAストッパ112が乗り上げ位置にあるとき、ハンガブラケット51がインナコラム22とともに前方に移動すると、爪部145がテレスコロック歯75を乗り越える。すると、
図9に示すように、EAストッパ112は、第1付勢部材113の付勢力によって当接位置に向けて移動することで、爪部145が隣り合うテレスコロック歯75間に進入する。その後、
図17に示すように、テレスコロック歯75が爪部145に係合することで、アウタコラム21に対するハンガブラケット51等の前方への移動が規制される。
このように、本実施形態では、ロック状態でのEAストッパ112の位置(当接位置又は乗り上げ位置)に関わらず、ハンガブラケット51とEAストッパ112とが係合する。そのため、二次衝突時には、ハンガブラケット51等に対してインナコラム22が前方に移動する。
【0087】
図18は、二次衝突時の動作を説明するための説明図であって、
図4に対応する底面図である。
図18に示すように、コラプスストローク時において、固定部材71のボルト72は、インナコラム22の前方への移動に伴い、EA長孔64に沿ってハンガブラケット51等に対して前方に移動する。ボルト72が前方に移動することで、EAワイヤ52の接続部82が前方に引っ張られる。すると、脚部81がハンガブラケット51の後方を通って前方に引き出される(しごかれる)ことで、脚部81が塑性変形する。この際、脚部81はインナコラム22に設けられたガイド部33に案内されつつ塑性変形する。そして、EAワイヤ52(脚部81)が塑性変形する際の曲げ荷重や、EAワイヤ52がインナコラム22やハンガブラケット51、ガイド部33に摺動する際の摺動抵抗、ハンガブラケット51とインナコラム22の摺動抵抗等によって、二次衝突時に運転者に加わる衝撃荷重が緩和される。また、ガイド部33により、脚部81が広がらずにハンガブラケット51の後方に沿って移動することができ、適正な衝撃吸収荷重とすることができる。
【0088】
図19は、二次衝突時の動作を説明するための説明図であって、
図6に対応する断面図である。
図19に示すように、固定部材71が前方に移動する過程において、厚肉部61aを通過した後、薄肉部61bに進入する。薄肉部61bにおいて、ボルト72は、EAワイヤ52の引っ張り力によって、例えばインナコラム22との接触部分を支点にして傾く。そのため、ボルト72の頭部72bは、薄肉部61bに局所的に接触した状態で薄肉部61b上を摺動する。そして、ボルト72と薄肉部61bとの間の摺動抵抗によって、二次衝突時に運転者に加わる衝撃荷重が緩和される。
【0089】
図20、
図21は、二次衝突時の動作を説明するための説明図であって、
図6に対応する断面図である。
図20に示すように、コラプスストローク時において、固定部材71がロック機構53に対して前方に移動することで、ボルト72の頭部72bがテレスコストッパ111の後方ストッパ135に後方から接触する。すると、ボルト72の頭部72bによって後方ストッパ135が前方に押し込まれることで、係合爪133を介して変形部124(保持部126)が前方に押し込まれる。これにより、変形部124が例えば底壁116との境界部分を起点にして広がるように変形する。
【0090】
図21に示すように、変形部124の変形に伴い、テレスコストッパ111がロックボルト100に対してA2方向へ回転する。テレスコストッパ111のA2方向への回転に伴い、後方ストッパ135が前方かつ下方に移動することで、正面視においてボルト72の頭部72bから退避する。これにより、ボルト72の頭部72bがテレスコストッパ111(各EAストッパ112間)を通過することで、インナコラム22及び固定部材71がさらに前方に移動する。
【0091】
以上説明したように、本実施形態では、チルト動作の際、ロックボルト100がチルトガイド孔96の上端内周縁に接触する前に、ブリッジ部91に突き当たる突当部152がアウタコラム21に形成されている構成とした。
この構成によれば、突当部152がブリッジ部91に接触することで、コラムユニット11の上昇が規制される。これにより、コラムユニット11(ステアリングホイール2)を最上端位置に移動させる過程において、第2付勢部材150の付勢力によってロックボルト100の外周面が貫通孔31の内周面に下方から当接した状態にコラムユニット11を常に保持できる。すなわち、ロックボルト100に対するコラムユニット11のがたつきを抑制できる。また、最上端位置でロック状態とした後、コラムユニット11が貫通孔31とロックボルト100とのガタ分落下することを防止でき、所望の最上端位置でステアリングホイール2を固定することができる。
【0092】
本実施形態では、突当部152が、アウタコラム21のうちブリッジ部91で囲まれた部分から上方に突出し、ブリッジ部91に接触可能に構成されている。
この構成によれば、ステアリング装置1の大幅な外形変更を伴うことなく、所望の最上端位置でステアリングホイール2を固定することができる。
【0093】
本実施形態では、突当部152の上面が後方に向かうに従い下方に延びる傾斜面とし、ブリッジ部91に接触する構成とした。
この構成によれば、チルト最上端位置で突当部152とブリッジ部91とが面接触するので、突当部152とブリッジ部91との接触時における面圧を低下させることができる。そのため、突当部152とブリッジ部91との接触によるリヤブラケット14等の変形を抑制できる。
【0094】
(第1変形例)
上述した実施形態では、リヤ側壁92における前後方向の中間部分にブリッジ部91が接続された構成としたが、この構成のみに限られない。例えば、リヤ側壁92の前端部にブリッジ部91を接続したり、リヤ側壁92の後端部にブリッジ部91を接続したりしてもよい。そして、ブリッジ部91の位置に合わせて突当部152の位置を設定することが可能である。
【0095】
(第2変形例)
上述した実施形態では、突当部152におけるブリッジ部91との接触面(上面)を平面に形成した場合について説明したが、この構成のみに限られない。例えば、
図22、
図23に示すように、突当部152におけるブリッジ部91との接触面を湾曲面に形成してもよい。
この構成によれば、突当部152の寸法ばらつきが生じた場合であっても、突当部152とブリッジ部91との接触位置が安定し易い。
【0096】
(第3変形例)
上述した実施形態では、保持筒部24の上部に形成された突当部152と、ブリッジ部91とが接触する構成について説明したが、この構成のみに限られない。すなわち、突当部152は、チルト動作に伴いロックボルト100がチルトガイド孔96の上端内周縁に当接する前にリヤブラケット14に接触する構成であれば、コラムユニット11の任意の位置に形成することが可能である。例えば、
図24に示すように、締付部25の下端部から左右方向の外側に突出する突当部152を形成してもよい。この場合、突当部152は、リヤ側壁92の下端縁に下方から接触可能に構成されている。なお、突当部152は、各締付部25のうち、何れか一方の締付部25に形成されていればよい。
【0097】
上述した実施形態及び各変形例では、コラムユニット11に突当部152が形成された構成について説明したが、この構成のみに限られない。例えば、リヤブラケット14のブリッジ部91等に下方に膨出する突当部を形成してもよい。また、コラムユニット11及びリヤブラケット14の双方に突当部を形成してもよい。
【0098】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本発明は上述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
例えば、上述した実施形態では、軸線O1が前後方向に交差している構成について説明していたが、この構成のみに限られない。軸線O1は、車両の前後方向に一致していてもよい。
【0099】
上述した実施形態では、ハンガブラケット51がインナコラム22に下向きに設けられた構成について説明したが、この構成のみに限られない。例えば、ハンガブラケット51はインナコラム22に対して上向きや横向きに設けられていてもよい。
上述した実施形態では、コラプスストロークの領域の全体がテレスコストロークの領域にラップしている構成について説明したが、この構成のみに限られない。例えば、コラプスストロークの領域とテレスコストロークの領域とが前後方向に並んで配置されていてもよい。
【0100】
上述した実施形態では、テレスコストッパ111がホルダ110に保持されている構成について説明したが、この構成のみに限られない。
上述した実施形態では、摺動抵抗部として、ガイド部33やEAワイヤ52、頂板部61等を例にして説明したが、この構成のみに限られない。摺動抵抗部は、ガイド部33やEAワイヤ52、頂板部61の少なくとも一つを備えていればよい。また、コラプスストローク時において、インナコラム22及びハンガブラケット51のうち少なくとも一方の部材に摺動する構成であれば、ガイド部33やEAワイヤ52、頂板部61以外の部材を摺動抵抗部としてもよい。各摺動部分に高摩擦係数の塗料等を塗布してもよい。
【0101】
上述した実施形態では、ロックボルト100とリヤブラケット14との間に第2付勢部材150が介在する構成について説明したが、この構成のみに限られない。第2付勢部材150は、ロックボルト100を介してコラムユニット11を上方に付勢する構成であれば、リヤブラケット14以外の部分に接続されていてもよい。
上述した実施形態では、テレスコ動作及びチルト動作の双方が可能なステアリング装置1を例にして説明したが、少なくともチルト動作が可能であればよい。
【0102】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した変形例を適宜組み合わせてもよい。