特許第6937230号(P6937230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6937230
(24)【登録日】2021年9月1日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】二次電池の充放電試験システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20210909BHJP
   G01R 31/00 20060101ALI20210909BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20210909BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20210909BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20210909BHJP
   G01R 31/3828 20190101ALI20210909BHJP
   G01R 31/3832 20190101ALI20210909BHJP
   G01R 31/385 20190101ALI20210909BHJP
   G01R 31/387 20190101ALI20210909BHJP
【FI】
   H01M10/48 P
   G01R31/00
   G01R31/382
   H01M10/42 P
   H02J7/00 Q
   G01R31/3828
   G01R31/3832
   G01R31/385
   G01R31/387
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-231706(P2017-231706)
(22)【出願日】2017年12月1日
(65)【公開番号】特開2019-102267(P2019-102267A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年9月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】中野 剛志
(72)【発明者】
【氏名】柴野 隆志
(72)【発明者】
【氏名】木村 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】木原 慎二
【審査官】 辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−159809(JP,A)
【文献】 特開2003−087987(JP,A)
【文献】 特開平07−169509(JP,A)
【文献】 特開2000−354333(JP,A)
【文献】 特開2002−272010(JP,A)
【文献】 特開2003−348760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42−10/48
G01R 31/00
G01R 31/36
H01M 10/42
H02J 7/00−7/12
7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された複数の二次電池に接続される電流制御用電源、及び前記二次電池に直列に接続される電圧制御用バイアス電源を備え、充放電回路を形成する充放電用電源と、
前記二次電池毎に直列に接続され、前記二次電池を前記充放電回路から切り離すための第1のスイッチング素子を有する直列制御回路と、
前記直列制御回路が接続された前記二次電池毎に逆バイアスがかかる方向に並列に接続されたダイオード、及び該ダイオードに並列に接続され前記二次電池のバイパス回路を形成する第2のスイッチング素子を有する並列制御回路と、
前記各二次電池の電圧を検知して、
a)前記直列制御回路に接続される前記二次電池の放電が未完了の間は、放電中の前記二次電池の電圧と該二次電池に接続される線路に発生する電圧降下量との差によって前記ダイオードにかかる電圧が、前記ダイオードに電流が流れ始める電圧より低く、前記二次電池の放電を維持し、
b)前記二次電池の電圧が規定電圧に達して放電が完了したら、前記第1のスイッチング素子をオフにして前記二次電池を前記充放電回路から切り離すと同時に、前記ダイオードに電流が流れ始め、
c)さらに、前記第2のスイッチング素子をオンにして、前記充放電回路の放電電流を前記バイパス回路に流す動作を順に行う、個別制御手段とを備え
前記並列制御回路に、前記ダイオードと直列に逆バイアスがかかる方向に調整用ダイオードが接続されていることを特徴とする二次電池の充放電試験システム。
【請求項2】
請求項1記載の二次電池の充放電試験システムにおいて、前記二次電池に接続される前記線路に発生する電圧降下量は、前記線路の配線抵抗で規定することを特徴とする二次電池の充放電試験システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の二次電池の充放電試験システムにおいて、前記第1、第2のスイッチング素子は、半導体素子であることを特徴とする二次電池の充放電試験システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の充放電試験システムにおいて、直列接続した二次電池を定量放電した場合に、規定の容量に達した二次電池を放電電流の途切れなく、直列接続状態から切り離すシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電池(二次電池)の製造においては、作製した電池の充放電試験を行い、電池が所定の性能や特性を満たしているか否かを検査してから出荷している。
この二次電池の充放電試験では、直列に接続した複数の二次電池を充放電用電源に接続し、所定の定電流で充電して電池電圧を上昇させ、電池電圧が所定の定電圧まで上昇すると、この定電圧を保つように定電圧充電に切り替える。そして、所定の充電時間(又は所定の終了条件)に達すると充電動作を終了させて、定電流放電に切り替える。定電流放電は所定の定電流(放電電流)で実行され、二次電池が過放電とならない所定の規定電圧(又は所定の終了条件)に達すると定電流放電を終了させている。しかし、定電流放電において、各二次電池が規定電圧に達するまでの時間は、各二次電池の特性(ランク)により異なるため、規定電圧に達した二次電池を順次、回路から切り離す(除外する)必要がある。
例えば、特許文献1には、複数のセル(電池)から成る組電池に対して定電流−定電圧充放電制御を行って組電池の評価を行う組電池評価試験システムにおいて、各セルの出力電圧を検出するセル電圧検出線を各セル毎に収容し、かつ各セルの除外/接続をセル毎に行う除外装置を備えた組電池評価試験装置と、各セル電圧検出線から各セルの出力電圧を検出し、検出された出力電圧を合計して得られる組電池総電圧を検出する充放電部と、充放電部に対して組電池総電圧の検出を指令する制御部とから構成される組電池評価試験システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3981530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の組電池評価試験システムにおいては、充電時は、上記従来の充電動作と同様の動作を行い、放電時は、当初、組電池評価試験装置から定電流を出力する定電流制御による放電を行って、組電池評価試験装置が定電流出力を維持できなくなったら、定電圧制御に移行する定電流−定電圧充放電制御を行っている。よって、除外装置の内部スイッチで各セルの除外/接続を切り替えているが、これは、接続されている各セルの出力電圧を検出し、検出された出力電圧を合計して組電池総電圧を検出すると共に、組電池総電圧の変化に対応させて設定電流値を増減させて、定電圧制御による放電を行うためである。
これに対し、定電流放電では放電電流は一定であり、各二次電池が規定電圧に達するまでの時間と放電電流(定電流)の電流値を積算することにより、各二次電池の放電容量を測定することができる。よって、規定電圧に達した二次電池が充放電回路から切り離されても、一定の放電電流が途切れなく充放電回路を流れていれば、その時の電流値は、充放電用電源の出力電流で容易に計測することができる。そのためには、ダイオードを二次電池に対して逆バイアスが掛かる方向に並列に取付け、二次電池が放電している間(規定電圧に達するまで)は、二次電池に放電電流を流してダイオードには電流が流れないようにし、二次電池が規定電圧に達して放電が完了したら、ダイオードに放電電流が流れるようにして、二次電池を充放電回路から切り離す(二次電池に電流が流れないようにする)という方法が考えられる。
しかし、二次電池が放電することによって、二次電池の電圧が低下していくと、ダイオードの特性と配線抵抗等の電圧降下の影響で、放電が完了していなくてもダイオードに順方向の電圧がかかり、ダイオードに微小な電流が流れてしまう。この状態になると、実際に二次電池に流れる電流と、放電電源の電流値に誤差を生じてしまい、放電容量を正確に測定することができなくなるという問題がある。この傾向は、逆バイアスを掛けるダイオードにショットキーバリアダイオードを用いた場合に顕著となる。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、充放電回路に流れる放電電流を一定に保ちながら、放電が完了した二次電池を順次、充放電回路から切り離し、各二次電池の放電容量を精密に計測することができる充放電試験システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る二次電池の充放電試験システムは、直列接続された複数の二次電池に接続される電流制御用電源、及び前記二次電池に直列に接続される電圧制御用バイアス電源を備え、充放電回路を形成する充放電用電源と、
前記二次電池毎に直列に接続され、前記二次電池を前記充放電回路から切り離すための第1のスイッチング素子を有する直列制御回路と、
前記直列制御回路が接続された前記二次電池毎に逆バイアスがかかる方向に並列に接続されたダイオード、及び該ダイオードに並列に接続され前記二次電池のバイパス回路を形成する第2のスイッチング素子を有する並列制御回路と、
前記各二次電池の電圧を検知して、
a)前記直列制御回路に接続される前記二次電池の放電が未完了の間は、放電中の前記二次電池の電圧と該二次電池に接続される線路に発生する電圧降下量との差によって前記ダイオードにかかる電圧が、前記ダイオードに電流が流れ始める電圧より低く、前記二次電池の放電を維持し、
b)前記二次電池の電圧が規定電圧に達して放電が完了したら、前記第1のスイッチング素子をオフにして前記二次電池を前記充放電回路から切り離すと同時に、前記ダイオードに電流が流れ始め、
c)さらに、前記第2のスイッチング素子をオンにして、前記充放電回路の放電電流を前記バイパス回路に流す動作を順に行う、個別制御手段とを備え
前記並列制御回路に、前記ダイオードと直列に逆バイアスがかかる方向に調整用ダイオードが接続されている。
【0007】
本発明に係る二次電池の充放電試験システムにおいて、前記二次電池に接続される前記線路に発生する電圧降下量は、前記線路の配線抵抗で規定することが好ましい。
【0008】
【0009】
本発明に係る二次電池の充放電試験システムにおいて、前記第1、第2のスイッチング素子は、半導体素子であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る二次電池の充放電試験システムは、直列接続された複数の二次電池に接続される電流制御用電源、及び二次電池に直列に接続される電圧制御用バイアス電源を備え、充放電回路を形成する充放電用電源を有するので、二次電池の電圧が規定電圧に達するまで確実に放電電流を流すことができ、また、放電が完了した二次電池を充放電回路から切り離す際に電圧変動が発生しても、放電電流の変動を抑えて、略一定の放電電流を安定的に流し続けることが可能で、放電容量計測の高精度化を図ることができる。
二次電池毎に直列に接続され、二次電池を充放電回路から切り離すための第1のスイッチング素子を有する直列制御回路と、直列制御回路が接続された二次電池毎に逆バイアスがかかる方向に並列に接続されたダイオード、及びダイオードに並列に接続され二次電池のバイパス回路を形成する第2のスイッチング素子を有する並列制御回路を備えており、個別制御手段により各二次電池の電圧を検知して、直列制御回路に接続される二次電池の放電が未完了(電圧が規定電圧に達するまで)の間は、放電中の二次電池の電圧と二次電池に接続される線路に発生する電圧降下量との差によってダイオードにかかる電圧が、ダイオードに電流が流れ始める電圧より低く、二次電池の放電を維持することができる。この結果、放電中はダイオードに電流が流れることはなく、二次電池の電圧が規定電圧(ほぼ0V)になるまで、一定の放電電流を流し続けることができ、放電完了までの時間と放電電流の電流値の積算により、正確な放電容量を計測することができる。また、二次電池の電圧が規定電圧に達して放電が完了したら、第1のスイッチング素子をオフにして放電が完了した二次電池を充放電回路から切り離すと同時にダイオードに電流が流れ始め、さらに、第2のスイッチング素子をオンにして、充放電回路の放電電流をバイパス回路に流すことにより、充放電回路に流れる放電電流が途切れることはなく、ダイオードの発熱を最小限に抑えることができる。このようにして、放電が完了した二次電池が順次、充放電回路から切り離され、充放電回路に接続されている二次電池の数が減少しても、一定の放電電流を流し続けることができ、全ての二次電池について精度よく放電容量を計測できる。
【0011】
二次電池に接続される線路に発生する電圧降下量を線路の配線抵抗で規定した場合、ダイオードの特性に応じた最適な電圧降下量を容易に設定することができ、二次電池の放電中にダイオードに電流が流れることがなく、二次電池に流れる放電電流の変動を防ぎ、放電容量の測定誤差を抑えることができる。
並列制御回路に、ダイオードと直列に逆バイアスがかかる方向に調整用ダイオードが接続されているので、並列制御回路(ダイオード)に電流が流れ始める電圧を高くすることができ、その分、二次電池に接続される線路を長くする(配線抵抗を大きくする)ことができ、回路設計の自由度が増す。
第1、第2のスイッチング素子が半導体素子である場合、スイッチングの応答速度を調整することができ、電流制御用電源と電圧制御用バイアス電源を備えた充放電用電源との組合せにより、放電電流の変動を効果的に防ぎ、放電容量計測の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態に係る二次電池の充放電試験システムの構成を示す説明図である。
図2】同二次電池の充放電試験システムの動作を示す説明図である。
図3】同二次電池の充放電試験システムの並列制御回路の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。本発明の一実施の形態に係る二次電池の充放電試験システム10は、図1図2に示すように、充放電回路11に直列接続した複数の二次電池12を定電流放電する場合に、規定電圧(例えば、0V)に達して放電が完了した二次電池12を直列接続状態から切り離しても、充放電回路11に流れる放電電流Iが途切れることがなく、各二次電池12の放電容量を精密に計測できるものである。
以下、二次電池の充放電試験システム10の詳細について説明する。
まず、図1に示すように、二次電池の充放電試験システム10では、充放電回路11に複数の二次電池12を直列接続して同時に試験を行う。充放電回路11を形成する充放電用電源13は、直列接続された複数の二次電池12に接続される電流制御用電源14、及び二次電池12に直列に接続される電圧制御用バイアス電源15を備えている。なお、電流制御用電源14には、スイングチョークコイルを使用したものが好適に用いられる。これにより、微小電流時のリップル電流の影響を軽減することができ、微小電流から大電流まで精度よく流すことができる。また、電圧制御用バイアス電源15は、二次電池12の電圧が低くなっても、規定電圧(例えば、0V)まで放電できるようにするために、二次電池12に対してオフセット電圧を与える電源である。なお、直列接続される試験対象の二次電池12の数は特に限定されるものではない。
【0014】
次に、二次電池12毎に直列に直列制御回路16が接続されており、この直列制御回路16は、二次電池12を充放電回路11から切り離すための第1のスイッチング素子17を有している。本実施の形態では、第1のスイッチング素子17として、半導体素子であるパワーMOSFETを用いたが、これに限定されるものではない。なお、図1には、ダイオード18が記載されているが、これはパワーMOSFETの内部に存在する寄生ダイオード(ボディーダイオード)を表しており、必須の構成ではないので、内部に寄生ダイオードが存在しないスイッチング素子を使用する際に、別途、ダイオードを接続する必要はない。
さらに、直列制御回路16が接続された二次電池12毎に並列制御回路20が接続されており、この並列制御回路20は、逆バイアスがかかる方向に二次電池12と並列に接続されたダイオード21、及びダイオード21に並列に接続され二次電池12のバイパス回路を形成する第2のスイッチング素子22を有している。第2のスイッチング素子22は、適宜、選択することができるが、半導体素子が好適に用いられる。また、ダイオード21としては、整流ダイオードが好適に用いられる。整流ダイオードは、ショットキーバリアダイオードに比べ、漏れ電流が少なく、分流の影響をなくして、二次電池12に流れる放電電流Iを高精度に保つことができる。なお、第2のスイッチング素子22として、パワーMOSFETを用いる場合、ダイオード21にはパワーMOSFETの内部に存在する寄生ダイオード(ボディーダイオード)を使用するので、別途、ダイオードを接続する必要はない。
【0015】
そして、二次電池の充放電試験システム10は、二次電池12毎に充放電を制御する個別制御手段25を有している。個別制御手段25は、放電中の二次電池12の電圧を測定し、予め設定した規定値(規定電圧、例えば、0V)と比較する比較器26と、比較器26で測定した二次電池12の電圧に従って、第1、第2のスイッチング素子17、22のオンオフを切り替えるドライバー27を有している。
放電試験は、二次電池12が満充電の状態で、第2のスイッチング素子22をオフにし、第1のスイッチング素子17をオンにしてから開始する。
ここで、ダイオード21が、二次電池12に対して逆バイアスがかかる方向に並列に接続されているので、二次電池12の電圧が高い間は、ダイオード21に順方向の電圧がかかることはなく、ダイオード21に電流は流れない。
【0016】
しかし、二次電池12に接続される線路28には配線抵抗29が存在しており、放電電流Iが流れることにより、電圧降下が発生する。このため、放電中の二次電池12の電圧と、二次電池12に接続される線路28に発生する電圧降下量との差が、ダイオード21の両端にかかる電圧となる。したがって、放電に伴って二次電池12の電圧が低下すると、ある時点で二次電池12の電圧よりも、線路28に発生する電圧降下量が大きくなり、ダイオード21にマイナスの電圧、即ち順方向の電圧がかかることになる。そして、この順方向の電圧がある値よりも大きくなると、ダイオード21に電流が流れ始め、二次電池12に流れる放電電流が変動してしまう。
そこで、放電中の二次電池12の電圧が規定電圧に達するまで(放電が完了するまで)、ダイオード21にかかる電圧が、ダイオード21に電流が流れ始める電圧より低くなるように、配線抵抗29を規定することにより、放電に伴って二次電池12の電圧が低くなっても、ダイオード21に電流を流すことなく、放電完了まで定電流で二次電池12の放電を維持することができる。
【0017】
例えば、ダイオード21に電流が流れ始める順方向の電圧が0.2Vの場合、線路28に発生する電圧降下量が0.2Vより低くなるように配線抵抗29を設定しておき、二次電池12の電圧が0Vになった時に、第1のスイッチング素子17をオフにすれば、その時点でダイオード21に電流が流れ始めるので、二次電池12の電圧が0Vになるまで、一定の放電電流Iを維持することができる。よって、比較器26で測定した二次電池12の電圧がほぼ0Vになった時に、放電が完了したと判断し、ドライバー27からの指令で第1のスイッチング素子17をオフにすることにより、二次電池12は充放電回路11から切り離される。そして、放電が完了した二次電池12が充放電回路11から切り離されると同時にダイオード21に電流が流れ始め、放電電流Iはダイオード21を通って充放電回路11を流れ続けるので、放電電流Iの変動を防ぐことができる。次に、ドライバー27からの指令で第2のスイッチング素子22をオンにすることにより、ダイオード21に流れていた放電電流Iは第2のスイッチング素子22で形成されるバイパス回路側を通って充放電回路11を流れ続ける。このとき、第2のスイッチング素子22のオン抵抗は小さく、発熱を最小限に抑えることができる。なお、図2において、第1のスイッチング素子17をオフにしてから、第2のスイッチング素子22をオンにするまでの時間(T2−T1)は適宜、選択することができるが、数msec程度が好ましい。
ここで、二次電池12に接続される線路28が長くなり、配線抵抗29が大きくなる場合は、ダイオード21と直列に逆バイアスがかかる方向に調整用ダイオードを追加で接続し、配線抵抗29による電圧降下量と相殺するようにすれば、二次電池12の電圧がほぼ0Vになるまで放電させることができる。なお、図3の変形例に示すように、並列制御回路20aにおいて、追加スイッチング素子22aとしてパワーMOSFETを追加すれば、パワーMOSFETの内部に存在する寄生ダイオード(ボディーダイオード)を調整用ダイオード30として使用することができるので、別途、ダイオードを接続する必要はない。
【0018】
以上のように、二次電池の充放電試験システム10によれば、二次電池12が放電を開始し、時間T1で放電が完了して第1のスイッチング素子17がオフとなり、二次電池12が充放電回路11から切り離されるまでの間、二次電池12には一定の放電電流I(充放電用電源13の出力電流)が流れる。よって、図1に示すように、充放電用電源13と、各個別制御手段25に接続されたコントローラ31により、放電電流Iと、各二次電池12が放電を開始して放電が完了するまでの時間T1を計測し、その放電電流Iと時間T1を積算することにより、各二次電池12の放電容量を精度よく測定できる。このとき、充放電回路11に流れる放電電流Iは、接続されている二次電池12の数に関わらず一定に維持されるので、各二次電池12の特性(ランク)によって放電時間(T1)が異なっていても、それぞれの放電容量を正確に求めることができ、複数の二次電池12を短時間で試験、選別することが可能となる。
なお、二次電池12から放電される放電エネルギーは商用交流電源に回生して有効利用することができ、電力の消費量を低減して、試験の低コスト化を図ることができる。このとき、放電に伴って二次電池12の電圧は低下するが、昇圧チョッパー回路を用いることにより、高電圧の出力を維持して効率的に電力回生を行うことができる。
【0019】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
二次電池の充放電試験システム10により試験する二次電池は、主にニッケル水素電池であるが、リチウム電池や鉛バッテリー等のその他の二次電池も対象とすることができる。
【符号の説明】
【0020】
10:二次電池の充放電試験システム、11:充放電回路、12:二次電池、13:充放電用電源、14:電流制御用電源、15:電圧制御用バイアス電源、16:直列制御回路、17:第1のスイッチング素子、18:ダイオード、20、20a:並列制御回路、21:ダイオード、22:第2のスイッチング素子、22a:追加スイッチング素子、25:個別制御手段、26:比較器、27:ドライバー、28:線路、29:配線抵抗、30:調整用ダイオード、31:コントローラ
図1
図2
図3