(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
共に非周期的、異方性面レリーフ微細構造を有した、第1のイメージに関する区域及び第2のイメージに関する区域が存在し、その結果、第1及び第2のイメージの前記区域の異方性方向が、22.5度と67.5度との間で角度が異なる、請求項1に記載の光学要素。
幾何学的変換が、平行移動(28、72、77)、ミラーリング(92)、回転(77)、スケーリング(72、97)、若しくは点反転のうちの1つ又はこれらの組み合わせである、請求項11に記載の光学要素。
第1及び第2のイメージの少なくとも1つの部分が、イメージ単位に分割され、第1のイメージの情報内容に割り当てられたイメージ単位の形状が、第2のイメージの情報内容に割り当てられたイメージ単位の形状と異なる、請求項13又は14に記載の光学要素。
第1及び第2のイメージの少なくとも1つの部分が、イメージ単位に分割され、両方のイメージのイメージ単位を含む領域では、第1及び第2のイメージの情報内容を符号化するイメージ単位の総面積が互いに異なる、請求項13〜15のうちのいずれかに記載の光学要素。
【技術分野】
【0001】
分野
本発明は、少なくとも2つのイメージが要素を傾斜又は回転させる際に観察され得る、パターン化された面レリーフ微細構造を有した光学要素に関する。本発明による要素は、特に、模造及び改竄に対して文書及び物品を保全するために有用である。
【0002】
発明の背景
技術の発展のため、偽造者は、今日、コピー機、スキャナ、及びプリンタなどの、先進的ツールにアクセスし、これらのツールにより、高品質を有する多くのセキュリティ特性の外観をコピー又は少なくとも模倣することが可能である。したがって、光学セキュリティ要素の1つの条件は、特性の複製が偽造者にとって困難であることである。このような要素の作製は特別でかつ非常に精巧な装置を必要とするが、光学的効果自体は、素人の眼でも容易かつ迅速に識別可能でなければならない。
【0003】
WO2007/131375は、要素を傾斜又は回転させる際に明確なポジティブ−ネガティブ切替で、例えばイメージ、写真、グラフィックス、又はレタリングの形の、高解像度光学情報を表示し、これにより、イメージの明らかなコントラスト反転をもたらすために異方性散乱を使用した光学要素を開示する。光学情報は、モノクロか又はカラーとして現れ得る。入射光との相互作用を引き起こす非周期的、異方性面レリーフ構造のため、イメージは、一般的なホログラム又はキネグラムの典型的な虹色なしで現れる。したがって、光学特性及び光学特性を検証する方法の指示が、素人に容易に説明され得る。
【0004】
依然として、偽造防止のための、光学セキュリティ要素における新規な識別可能な特性が常に必要である。
【0005】
概要
したがって、本発明の目的は、技術的手段なしで人が容易に検証することができる新規なセキュリティ特性を有した光学要素を提供することである。更なる目的は、このような光学的構成部品を製造する方法を提供することである。
【0006】
本発明の第1の態様によれば、非周期的、異方性面レリーフ微細構造を有する領域を含む光学要素であって、光が要素の面に入射するときに、第1のイメージが第1の視角下において最適に見え、第2のイメージが第2の視角下において最適に見えるように、第1及び第2のイメージが、非周期的、異方性面レリーフ微細構造のパターンによって少なくとも部分的に符号化される、光学要素が提供される。
第1及び第2の視角は、同一でない。
【0007】
「最適に見える」という用語は、イメージが最大コントラストで現れることを意味する。好ましくは、要素の構造は、第1のイメージが最適に見えるときに、第2のイメージは見えないか又はほとんど見えなく、第2のイメージが最適に見えるときに、第1のイメージは見えないか又はほとんど見えない。
【0008】
それぞれ、第3の又は追加的な視角下において最適に見えるパターンによって符号化された3つ以上のイメージが存在し得る。個々のイメージが最適に見える視角は、互いに異なる。
【0009】
イメージの少なくとも1つの部分のための非周期的、異方性面レリーフ微細構造符号化は、下部区域から上部区域への及び上部区域から下部区域への遷移の面変調を有する領域を含むことが好ましい。好ましくは、面領域の第1の横方向に、20マイクロメートル内毎に上部区域から下部区域への又はその逆への平均で少なくとも1つの遷移が存在し、好ましくは、追加的に、第1の方向に対して垂直である面領域の第2の横方向に、200マイクロメートル内毎に上部区域から下部区域への又はその逆への平均で少なくとも1つの遷移が存在する。好ましくは、第1の方向は、異方性微細構造の対称方向と平行である。
【0010】
好ましくは、非周期的、異方性面レリーフ微細構造の平均構造深さが60nmより大きく、より好ましくは、微細構造の平均構造深さが90nmより大きい領域が存在する。色をもたらすために、微細構造の平均構造深さは、好ましくは180nmより大きく、より好ましくは300nmより大きく、最も好ましくは400nmより大きい。識別可能な色を提供するための平均構造深さの好ましい範囲は、180nm〜230nm、240nm〜280nm、290nm〜345nm、365nm〜380nm、及び430nm〜600nmである。
【0011】
本出願の文脈において、「イメージ」という用語は、任意の種類の光学情報、例えば、写真、マイクロテキストを含むテキスト、数、図画、バーコード、記号、文字、図、及びグラフィックスを指す。好ましくは、イメージは、写真、好ましくは顔の写真、テキスト、数、又はグラフィックスを表す。
【0012】
イメージは、光学的コントラストで表示される場合にのみ知覚され得る。従来例のように、黒い紙の上に黒いインクで印刷された文字は、ほとんど見えない。したがって、文字が印刷される背景が文字の外観と光学的に異なることが重要である。文字が白い紙上に印刷される場合、知覚されるイメージは、白い背景上の黒い文字である。
【0013】
他方で、テキストは、例えばインクジェット又はレーザープリンタを使用して、白い紙の上に、黒い背景に白い文字で印刷され得る。この場合に実際に印刷されるものは、文字ではなく背景であり、文字の領域を除くすべての場所が印刷される。しかし、光学情報して知覚されるものは、テキストである。したがって、本出願の文脈において、唯一の違いがイメージコントラストであるならば、イメージは、同一のイメージとみなされる。特に、ポジティブ又はネガティブコントラストのイメージは、同じイメージとみなされる。本発明の異なる実施形態では、イメージは、第1の視角下においてポジティブコントラストで、別の視角下においてネガティブコントラストで現れ得る。このような状況では、ポジティブ及びネガティブコントラストイメージは、同じイメージとみなされ、本発明による第1及び2のイメージと混同されない。
【0014】
テキストが白い紙の上に黒で印刷される上記の例では、文字は光学情報と、白い紙は背景と識別され得る。しかしながら、多くのイメージに対して、このような割り当てを行うことができない。例えば、イメージがモノクロのチェック模様である場合、情報が、白い背景上の黒い正方形からなるか又は黒い背景上の白い正方形からなるかどうか明らかではない。したがって、本出願の文脈において、「イメージ」という用語は、上記の例では文字及び背景並びにチェック模様のモノクロ部分などの、イメージの知覚に寄与するあらゆる部分を含むと理解される。
【0015】
本発明により異方性面レリーフ構造のパターンによって少なくとも部分的に符号化されるイメージは、以下イメージ単位と呼ばれる、正方形又は線などの、小さい単位に分割され得る。イメージ単位は、例えば異なるイメージの交互配置を可能にするために、互いに離れて間隔を置かれ得る。
【0016】
イメージは、非周期的、異方性面レリーフ微細構造を有する及び有しない領域を含んだパターンによって符号化され得る。
【0017】
第1及び第2のイメージの領域は、要素の面上で重なり合っても又は分離してもよい。
【0018】
好ましくは、第2のイメージは、第1のイメージの一部分又は全体の幾何学的変換として構築され得る、少なくとも1つの部分を含む。好ましくは、第1及び第2のイメージのそれらの部分に、非周期的、異方性面レリーフ微細構造を有する領域が存在する。幾何学的変換の例としては、平行移動、ミラーリング、回転、スケーリング、及び点反転が挙げられる。幾何学的変換はまた、任意の順序の上述の変換のうちの1つ以上の組み合わせであってもよい。幾何学的変換によって第1のイメージから構築される第2のイメージの利点は、光学要素を傾斜又は回転させる際に何が起こるかを一般人に容易に説明できることである。関連した幾何学的変換を説明すればよいので、第1及び第2のイメージの内容を説明する必要がない。例えば、説明は「第1の視角下において現れる第1のイメージが存在し、要素を回転又は傾斜させる際に、ミラーリングされた、同じイメージが現れる」とすることができる。このような容易な指示は、何人でも記憶することができ、したがって、このような特性を使用した光学セキュリティ要素は、誰でも容易に検証することができる。
【0019】
好ましい実施形態では、第2のイメージは、第1のイメージ又は第1のイメージの一部分から変形によって構築され得る少なくとも1つの部分を含む。
【0020】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様による要素を含む要素を製造する方法が提供される。光が要素の面に入射するときに、第1のイメージが第1の視角下において最適に見え、第2のイメージが第2の視角下において最適に見える特性を有する光学要素を製造する方法は、要素上に非周期的、異方性面レリーフ微細構造のパターンをもたらし、その結果、パターンが、微細構造の異なる異方性方向の領域を含み、第2のイメージの情報内容を符号化するパターンが、第1のイメージの情報内容を符号化するパターンにおいて使用されない異方性方向を有した少なくとも1つの領域を有すること、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1.2】
図1.1と類似するが、異方性散乱面での反射による特徴的な出力光分布を示す。
【
図3.1】イメージの異なるゾーンにおける異なる面特性によって符号化されたイメージを示す。
図3.1の例は、非周期的、異方性面レリーフ微細構造、並びに等方性散乱、吸収、及び反射特性を使用する。
【
図3.2】
図3.2では、イメージは、局所的に異なる異方性方向を有する非周期的、異方性面レリーフ微細構造を有した領域によってのみ表される。
【
図4.1】
図4.1は、それぞれ、第1及び第2の視角下において最適に見える第1及び第2のイメージを符号化する非周期的、異方性面レリーフ微細構造を有した光学要素を示す。
【
図4.2】加えて、
図4.2に示されるように、イメージの各々を、視角に応じてポジティブ及びネガティブコントラストで見ることができる。
【
図4.3】加えて、
図4.3に示されるように、イメージの各々を、視角に応じてポジティブ及びネガティブコントラストで見ることができる。
【
図4.4】加えて、
図4.4に示されるように、イメージの各々を、視角に応じてポジティブ及びネガティブコントラストで見ることができる。
【
図4.5】加えて、
図4.5に示されるように、イメージの各々を、視角に応じてポジティブ及びネガティブコントラストで見ることができる。
【
図5】イメージの異なるゾーンにおける異なる面特性によって符号化された2つのイメージを含む、光学要素を示す。2つのイメージ間の唯一の違いは、非周期的、異方性面レリーフ微細構造における異方性方向である。
【
図6】第2のイメージが第1のイメージの幾何学的変換、この場合スケーリング及び平行移動の組み合わせ、として構築された、本発明の好ましい実施形態の一例を示す。
【
図7】第2のイメージが第1のイメージの幾何学的変換、この場合回転及び平行移動の組み合わせ、として構築された、本発明の好ましい実施形態の一例を示す。
【
図8.1】イメージ単位のいろいろな形状及び配列を示す。
【
図8.2】イメージ単位のいろいろな形状及び配列を示す。
【
図8.3】イメージ単位のいろいろな形状及び配列を示す。
【
図8.4】イメージ単位のいろいろな形状及び配列を示す。
【
図8.5】イメージ単位のいろいろな形状及び配列を示す。
【
図8.6】イメージ単位のいろいろな形状及び配列を示す。
【
図9.1】六角形のイメージ単位のマトリックスへの2つのイメージの割り当てを示す。
【
図9.2】六角形のイメージ単位のマトリックスへの2つのイメージの割り当てを示す。
【
図9.3】六角形のイメージ単位のマトリックスへの2つのイメージの割り当てを示す。
【
図9.4】六角形のイメージ単位のマトリックスへの2つのイメージの割り当てを示す。
【
図9.5】六角形のイメージ単位のマトリックスへの2つのイメージの割り当てを示す。
【
図10.1】視角に応じてイメージが異なるサイズで現れ、その結果、ズーム効果が観察者によって知覚される光学要素を示す。
【
図10.2】視角に応じてイメージが異なるサイズで現れ、その結果、ズーム効果が観察者によって知覚される光学要素を示す。
【
図10.3】視角に応じてイメージが異なるサイズで現れ、その結果、ズーム効果が観察者によって知覚される光学要素を示す。
【
図10.4】視角に応じてイメージが異なるサイズで現れ、その結果、ズーム効果が観察者によって知覚される光学要素を示す。
【
図11.1】第2のイメージが第1のイメージの鏡像である、第1及び第2のイメージが異なる視角で現れる光学要素を示す。
【
図11.2】第2のイメージが第1のイメージの鏡像である、第1及び第2のイメージが異なる視角で現れる光学要素を示す。
【
図11.3】第2のイメージが第1のイメージの鏡像である、第1及び第2のイメージが異なる視角で現れる光学要素を示す。
【
図11.4】第2のイメージが第1のイメージの鏡像である、第1及び第2のイメージが異なる視角で現れる光学要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
本発明による要素の光学的効果は、異方性の光散乱に基づく。
図1.1及び
図1.2は、等方性の光散乱と異方性の光散乱との間の違いを示す。
【0023】
等方性散乱面での散乱は、方位方向が好ましくない。
図1.1に指示されるように、平行な入射光1は、特徴的な軸対称出力光分布及び特徴的な発散角度4を有して、散乱面2で新しい出射方向3に方向転換される。
【0024】
異方性散乱面の場合には、光は、好ましい方位方向に散乱する。
図1.2では、平行な入射光1は、異方性散乱面5に衝突し、特徴的な出力光分布7を有して新しい出射方向6に方向転換される。
【0025】
本発明の文脈において、異方性方向という用語は、層の平面内の局所的な対称軸、例えば微細構造の溝又はくぼみに沿った方向を意味する。
【0026】
面が、
図2の方向10、11のような、局所的に異なる異方性方向を有する異方性構造のパターンを含む場合、パターンの個々の領域は異なる方向に入射光を散乱させる。パターンは、このとき、斜めからの観察によって又は斜入射光を使用することによって、認識され得る。
【0027】
一般的に、イメージは、非周期的、異方性面レリーフ微細構造を有する及び有しない領域を含んだパターンによって符号化され得る。非周期的、異方性面レリーフ微細構造を有しない領域は、異なる面特性を有することができる。例えば、それらは、等方性散乱することができるか、反射することができるか、又は周期的等方性若しくは異方性構造を有することができる。更に、例えば、対応する領域が任意の色又は白黒で印刷される場合に、これらの領域は、特定の可視波長範囲又は全可視波長範囲(単数又は複数)の光を吸収することができる。イメージは、異なる領域にこれらの面特性のうちのいくらかを含むことができる。
【0028】
図3.1は、異なる光学的特性の領域によって符号化されたイメージ20の一例を示す。
図3.1に示される車は、異なる光学特性によって各々符号化された、異なる部分を含む。車の車体23を表す領域は、例えば、非周期的、異方性面レリーフ微細構造を有することができる。窓23に対応する領域は、等方性散乱することができる。車輪24は、インク、例えば黒いインク、で印刷され得る。リム25は、周期的異方性微細構造を有し、背景21は反射することができる。
【0029】
図3.2は、上記と同じ車でイメージ30を示すが、共に非周期的、異方性面レリーフ微細構造を有することができる、2種類の領域のみによって符号化される。2つの領域の異方性方向は、互いに異なる。例えば、車体32及び車輪34を表す領域は、同じ異方性方向を有するが、窓33、リム35、及び背景は、別の異方性方向を有する。
【0030】
イメージを表すパターンが、
図3.2のパターンのように、異なる異方性方向の非周期的、異方性面レリーフ微細構造を有した少なくとも2つの領域を含む場合、2つの異方性方向は、好ましくは80度と100度との間の角度、より好ましくは85度と95度との間の角度、最も好ましくは90度の角度異なる。このようなパターンを含む光学要素は、要素を傾斜又は回転させる際に明確なポジティブ−ネガティブ切替を示す。
【0031】
本発明の一例が、
図4.1〜4.5に示される。
図4.1には、第1及び第2のイメージを符号化する、非周期的、異方性面レリーフ微細構造を有する領域を含んだ、光学的構成部品40が示される。第1のイメージは、微細構造42を有する背景上の微細構造43のパターン41によって表された文字「A」である。微細構造42及び43は、異方性方向が異なり、互いに90度の角度になる。例えば、微細構造43の異方性方向は、45度で配向されて、微細構造46は、基準方向に対して135度で配向される。第2のイメージは、微細構造45を有する背景上の微細構造46のパターン44によって表された文字「B」である。微細構造45及び46は、異方性方向が異なり、互いに90度の角度になる。例えば、微細構造45の異方性方向は、0度で配向されて、微細構造46は、上記の基準方向に対して90度で配向される。イメージ41に関する微細構造の異方性方向は、イメージ44の異方性方向に対して45度回転する。
図4に関して上述された微細構造は、非周期的、異方性面レリーフ微細構造である。
【0032】
図4.2は、第1のイメージ51が最適に見える第1の視角下における光学要素40の外観50を示す。観察者には、明るい背景上に暗い文字「A」が見え、文字は、この場合には、ポジティブコントラストとみなされる。
図4.3は、第1のイメージ51が最適に見える別の視角下における光学要素40の外観54を示す。観察者には、暗い背景上に明るい文字「A」が見え、したがって、文字は、ネガティブコントラストで現れる。
【0033】
図4.4は、第2のイメージ61が最適に見える第2の視角下における光学要素40の外観60を示す。観察者には、明るい背景上に暗い文字「B」が見え、したがって、文字は、ポジティブコントラストで現れる。
図4.5は、第2のイメージ61が最適に見える別の視角下における光学要素40の外観64を示す。観察者には、暗い背景上に明るい文字「B」が見え、したがって、文字は、ネガティブコントラストで現れる。
【0034】
一般的に、第1及び第2のイメージに関する微細構造の異方性方向は、どのような角度で異なってもよい。しかしながら、共に非周期的、異方性面レリーフ微細構造を有した、第1のイメージに関する区域及び第2のイメージに関する区域が存在することが好ましく、その結果、第1及び第2のイメージの前記区域の異方性方向は、22.5度と67.5度との間の角度、より好ましくは30度と60度との間の角度、最も好ましくは40度と50度との間の角度異なる。
【0035】
本発明の好ましい実施形態では、第2のイメージは、第1のイメージの一部分又は全体の幾何学的変換として構築され得る、少なくとも1つの部分を含む。好ましくは、第1及び第2のイメージのそれらの部分に、非周期的、異方性面レリーフ微細構造を有する領域が存在する。幾何学的変換の例としては、平行移動、ミラーリング、回転、スケーリング、及び点反転が挙げられる。回転又はスケーリングの中心は、どこにあってもよく、特に、イメージの領域の内側又は外側にすることができる。好ましくは、スケーリングの中心は、イメージの中心と一致する。同様に、点反転のための反転中心は、イメージの領域の内側又は外側にすることができる。また、ミラーリング動作のための鏡面線は、どこにあってもよく、特に、イメージの領域の内側又は外側にすることができる。幾何学的変換はまた、任意の順序の上述の変換のうちの1つ以上の組み合わせであってもよい。鏡面対称イメージは、鏡映動作の結果とみなされてはならない。例えば、「A」、「H」、「I」、「M」、「O」、「T」、「U」、「V」、「W」、「X」のような字は、鏡面対称であるが、鏡映動作は、平行移動及び回転の組み合わせとすることもできる。幾何学的変換は、イメージを符号化することができる面レリーフ微細構造に関するのではなく、イメージに関するだけである。例えば、幾何学的変換が特定の角度での回転を含む場合、第2のイメージの領域の異方性方向は、第1のイメージの対応する領域に対して同じ角度で回転する必要はない。第2の例として、幾何学的変換がスケーリング動作を含む場合、この動作はイメージに関連するだけであり、微細構造がスケーリングされる必要はない。
【0036】
イメージの異なる部分は、個々に変換され得る。例えば、数の各々の数字は、異なるスケーリングの中心でスケーリングされ得る。
【0037】
図5は、本発明による光学要素29の一例を示し、第2のイメージ28が、平行移動によって、車である第1のイメージ27から構築される。第1及び第2のイメージ間の唯一の違いは、位置、及び車の車体22、26の領域における非周期的、異方性面レリーフ微細構造の、例えば45度異なる、異方性方向である。車の他の領域は、
図3.1に関して述べられた特性と同じ特性を有することができ、すなわち、窓23に対応する領域が、等方性散乱することができ、車輪24がインク、例えば黒いインク、で印刷され、リム25が周期的異方性微細構造を有し、背景21が反射することができることを意味する。その結果、第1のイメージの車の車体が、したがって第1のイメージ自体もまた、第1の視角下において最適に見え、第2のイメージの車の車体が、したがって第2のイメージ自体もまた、第2の視角下において最適に見える。
【0038】
図6は、本発明の一例として、光学要素70を示し、第2のイメージ72が、平行移動及びスケーリングによって第1のイメージ71から構築され、イメージ71が視角に応じて異なる位置で縮小又は拡大スケールで現れることを意味する。幾何学的変換はまた、第1のイメージの領域の外側にスケーリング中心を有したスケーリングとすることができる。例では、第1のイメージ71の数「10」の数字に対応する領域74並びに背景73は、非周期的、異方性面レリーフ微細構造を有し、異方性方向が、例えば、90度異なる。イメージ72もまた、それぞれ数「10」の数字及び背景を表す領域76及び75を有した、非周期的、異方性面レリーフ微細構造のパターンによって符号化される。領域75及び76の異方性方向は、例えば、90度異なることができる。数字74、76の領域における異方性方向は、45度異なることができる。同様に、背景73、75における異方性方向は、45度異なることができる。したがって、第1のイメージは、第1の視角下において最適に見え、第2のイメージは、第2の視角下において最適に見える。数字及び背景の微細構造のため、イメージ71及び72は、視角に応じて、ポジティブイメージ及びネガティブイメージとして現れる。
【0039】
図7は、本発明の一例として、光学要素79を示し、第2のイメージ77が、平行移動及び回転によって第1のイメージ71から構築される。例では、第1のイメージ71の数「10」の数字に対応する領域74並びに背景73は、非周期的、異方性面レリーフ微細構造を有し、異方性方向が、例えば、90度異なる。イメージ77もまた、それぞれ数「10」の数字及び背景を表す領域76及び75を有した、非周期的、異方性面レリーフ微細構造のパターンによって符号化される。領域75及び76の異方性方向は、例えば、90度異なることができる。数字74、76の領域における異方性方向は、45度異なることができる。同様に、背景73、75における異方性方向は、45度異なることができる。したがって、第1のイメージは、第1の視角下において最適に見え、第2のイメージは、第2の視角下において最適に見える。数字及び背景の微細構造のため、イメージ71及び72両方は、視角に応じて、ポジティブイメージ及びネガティブイメージとして現れる。
【0040】
イメージの情報内容は、イメージ単位に分割され得る。第1の、第2の、又は追加的なイメージに割り当てられたイメージ単位は、特定の領域を共有するように、分布させることができる。このようにして、実質的に同じ位置に異なるイメージを配置することが可能であり、その結果、イメージは、部分的に又は完全に重なり合う。イメージ単位は、多角形、好ましくは正多角形、又は円などの、任意の形状を有することができる。好ましい形状は、正方形、長方形、台形、三角形、六角形、円である。
図8.1は、第1又は第2のイメージの情報内容に割り当てられる、六角形に分割された領域を示す。例示的な割り当ては、六角形の内側の数1及び2によって指示される。
図8.2は、六角形に分割された領域の一例を示し、3つのイメージの情報内容間で六角形のイメージ単位を分配する。例示的な割り当ては、六角形の内側の数1、2及び3によって指示される。
図8.3は、それぞれ、第1及び第2のイメージの情報内容に割り当てられた、正方形の一例を示す。
図8.4では、交互ストライプが、それぞれ、第1及び第2のイメージに割り当てられる。異なるイメージの情報内容に対応するイメージ単位は、いろいろな方法で、例えば
図8.4の、交互線で、配列されるか、又は例えば
図8.3の、行及び/若しくは列で、若しくはより複雑な分布で配列され得る。
【0041】
異なるイメージの情報内容に関するイメージ単位は、サイズ、形状、及び数を異にすることができる。例えば、
図8.5の例のように、円の領域は、第1のイメージの情報内容を符号化するために使用され、円の領域の間の領域は、第2のイメージの情報内容を符号化するために使用され得る。別の例は、
図8.6に示され、台形状の単位が、第1のイメージの情報内容に割り当てられ、三角形状の単位が、第2のイメージの情報内容に割り当てられる。異なるイメージのイメージ単位を含む領域では、例えば
図8.6の台形単位及び三角形単位の総面積などの、異なるイメージの情報内容を符号化するイメージ単位の総面積は、異なってもよい。これにより、異なるイメージの光学的コントラストを制御して、したがって光学印象のバランスをとることが可能となる。例えば、1つのイメージが非常に弱く見え、別のイメージが非常に高いコントラストで見えしたがって優位であることが可能である。多くの用途で、個々のイメージに割り当てられたイメージ単位の総面積は、略同じである。個々のイメージに割り当てられたイメージ単位の総面積が等しくバランスをとらない場合には、最も小さい総面積に対する最も大きい総面積の比は、好ましくは1.3:1以上であり、より好ましくは1.6:1以上であり、最も好ましくは2:1以上である。
【0042】
イメージ単位はまた、ディザリングによってイメージの知覚グレーレベルを調整するために使用され、これは、領域の明るさが多数のイメージ単位の平均値であることを意味する。グレーレベルに平均化させるイメージ単位は、例えば、それぞれ、特定の視角で、暗い又は明るいと知覚され得る2つの異なる異方性方向を有することができ、観察者の眼が、グレーの印象に平均化する。好ましくは、本発明による光学要素において使用されるイメージは、3つ以上のグレーレベルを符号化する非周期的、異方性面レリーフ微細構造を有した領域を有する。非周期的、異方性面レリーフ微細構造が8つ以上、16つ以上、32つ以上、又は64つ以上のグレーレベルを符号化するイメージが、より好ましい。
【0043】
図9.1〜9.5は、第1のイメージとしての文字「A」及び第2のイメージとしての文字「B」が、互いに重なり合い、共に異なる異方性軸を有する非周期的、異方性面レリーフ微細構造によって符号化される一例を示す。例では、領域80は、それぞれ、六角形81の内側の数1又は六角形82の内側の数2によって指示される、第1又は第2のイメージに割り当てられた六角形のイメージ単位に分けられる。
図9.1は、六角形マトリックスの領域80内における文字「A」の所望の形状及び位置83を示す。
図9.2は、六角形マトリックスの領域80内における文字「B」の所望の形状及び位置84を示す。
図9.3は、第1のイメージに割り当てられる六角形単位のパターン構成を示すが、第2のイメージに割り当てられた六角形は、数2によって指示される。
図9.3の例では、文字「A」の形状83と重なり合うイメージ単位の部分は、網掛方向によって指示される第1の異方性方向86を有した非周期的、異方性面レリーフ微細構造を有するが、重なり合わない領域は、第2の異方性方向85を有した非周期的、異方性面レリーフ微細構造を有する。
図9.3の描画では、第1及び第2の方向は、互いに垂直とされる。文字「A」と部分的に重なり合う六角形単位は、例えば重なり合うか又は重なり合わない領域のうちの大きいほうによって決定された、均一な異方性方向を有することができる。
図9.3の描画において、例えば六角形87において、対応する網掛方向によって指示されるように、良好なイメージ解像度のために、イメージ単位を重なり合う及び重なり合わない部分に分割して微細構造の対応する異方性方向を適用することが好ましい。
【0044】
同じように、
図9.4は、第2のイメージに割り当てられる六角形単位のパターン構成を示すが、第1のイメージに割り当てられた六角形は、数1によって指示される。文字「B」の形状84と重なり合うイメージ単位の部分は、網掛方向によって指示される第3の異方性方向89を有した非周期的、異方性面レリーフ微細構造を有するが、重なり合わない領域は、第4の異方性方向88を有した非周期的、異方性面レリーフ微細構造を有する。
図9.4の描画では、第3及び第4の方向は、互いに垂直とされる。文字「B」と部分的に重なり合う六角形単位のために、領域は、重なり合う及び重なり合わない部分に分割され、微細構造の対応する異方性方向が、
図9.4の描画において対応する網掛方向によって指示される。第3の異方性方向89は、好ましくは、第1の異方性方向86に対して+45度又は−45度の角度に配向される。第4の異方性方向88は、好ましくは、第2の異方性方向85に対して+45度又は−45度の角度に配向される。
【0045】
図9.3及び
図9.4の所望の文字A及びBの輪郭は、パターン構成の概念の例示のために示されるだけであり、イメージ単位の重なり合う及び重なり合わない部分への細分化のために発生するそれらの境界を除き、パターンの一部分を形成しない。
【0046】
図9.5は、
図9.3及び
図9.4によるパターン構成から生じた、完全なパターンを示す。文字A及びBの形状は、重なり合う及び重なり合わない部分に細分化されたイメージ単位の内側の異なる微細構造方向の領域間の境界を除き、示されない。
【0047】
光が
図9.5の非周期的、異方性面レリーフ微細構造のパターンを含む光学要素に入射するとき、文字「A」は、第1の視角下において最適に見え、文字「B」は、第2の視角下において最適に見える。両方の文字は、光学要素のほとんど同じ位置に見える。文字及び背景の領域内の微細構造のため、両方の文字は、視角に応じて、ポジティブイメージ及びネガティブイメージとして現れる。
【0048】
本発明の好ましい実施形態では、第2のイメージは、第1のイメージの少なくも1つの部分のスケーリングによって構築され得る、少なくとも1つの部分を含み、第1及び第2のイメージの領域が重なり合う。好ましくは、重なり合う領域は、イメージ単位に分けられ、その結果、第1、第2、又はそれ以上のイメージの部分が、上で説明したような異なるイメージ単位に割り当てられ得る。スケーリングの中心は、イメージの内側又は外側にすることができる。この場合には、第2のイメージは、第1のイメージの関連した部分の拡大又は縮小イメージとして現れる。好ましくは、光学的構成部品は、非周期的、異方性面レリーフ微細構造のパターンによって少なくとも部分的に符号化され、それぞれ、第3の又は追加的な視角下において最適に見える第3又はそれ以上のイメージを含む。第2、第3、又はそれ以上の数のイメージの割り当ては、光学要素を回転又は傾斜させる際の関連したイメージの外観の順序に対応するようなものとなる。第2のイメージのように、第3又は追加的なイメージは、第1のイメージの少なくも1つの部分のスケーリングによって構築され得る、少なくとも1つの部分を含み、第1及び第3並びに任意追加的なイメージの領域が重なり合う。第2、第3、及び任意追加的なイメージの構築のためのスケーリングの中心は、好ましくは、互いに一致する。第2、第3、及び任意追加的なイメージの構築のための倍率は、互いに異なる。好ましくは、倍率は、イメージの順序に伴って単調増加又は減少する。光学要素を傾斜又は回転させるときに観察者が知覚する光学的効果は、それぞれ、イメージをズームイン又はアウトする効果である。
図10は、視角を変化させる際にズーム効果を提供する光学要素の一例を示す。光学要素95は、
図10.1に示される、第1の視角下において最適に見える、第1のイメージ96を含む。第1のイメージは、第1のサイズを有する数10である。イメージは、第1の異方性方向を有した非周期的、異方性面レリーフ微細構造によって符号化される。
図10.1はまた、輪郭によって第2のイメージ97、第3のイメージ98、及び第4のイメージ99を示す。第1、第2、第3、及び第4のイメージは、互いに部分的に重なり合う。好ましくは、重なり合う領域のイメージは、イメージ単位に分割され、その結果、個々のイメージの部分が、上で説明したような異なるイメージ単位に割り当てられ得る。第2、第3、及び第4のイメージの各々は、異なる倍率によって第1のイメージから構築され、その結果、イメージのサイズは、イメージ順に増加する。スケーリング中心は第1のイメージの中心と一致するが、上述したように任意の他の位置にあってもよい。第1、第2、第3、及び第4のイメージは、各々異なる異方性方向を有した、非周期的、異方性面レリーフ微細構造によって符号化される。数10の外側の領域はまた、イメージの各々の異方性方向と異なる異方性方向を有した、非周期的、異方性面レリーフ微細構造を含むことができる。しかしながら、4つのイメージの各々の背景であるこれらの領域は、任意の他の面特性を有することができる。第1の視角では、イメージ96だけが最適に見え、イメージ97、98、及び99は、第1のイメージ96と比較して低いコントラストで見えるだけであるか又は見えない。例えば光学要素95を更に傾斜させることによって調整され得る第2の視角では、イメージ97が、
図10.2に示されるように、最適に見えるようになる。光学要素を更に傾斜させることによって、第3のイメージ98が、第3の視角で最適に見えるようになり、第4のイメージ99が、第4の視角で最適に見えるようになる。光学要素を連続的に傾斜させることによって、4つのイメージが、順番に見えるようになり、傾斜方向に応じてズームイン又はアウトの印象を与える。
【0049】
本発明の別の好ましい実施形態では、第1のイメージは、立体感を有し、観察者によってある程度の奥行を有するものとして知覚されることを意味する。この場合、第2のイメージは、奥行反転イメージである。例えば、第1のイメージは、イメージの少なくとも1つの部分が、光学要素と観察者との間を意味する、光学要素の平面の上にあるという印象を与えることができる。この場合、第2のイメージは、光学要素平面の後にあるように見える少なくとも1つの部分を有する。好ましくは、第1及び第2のイメージの情報内容は、奥行知覚を除き、大部分同一である。イメージに特定の奥行感を与えるために当技術分野において公知のいくらかの設計方法が存在する。周知の例は、非押状態から押状態に外観を変化させることができる、コンピュータプログラムのユーザインタフェースにおいて使用されるボタンアイコンである。好ましくは、第1及び第2のイメージの重なり合う領域は、イメージ単位に分けられ、その結果、第1及び第2のイメージの部分が、上で説明したような異なるイメージ単位に割り当てられ得る。
【0050】
本発明の好ましい実施形態のうちの1つでは、第2のイメージは、第1のイメージの少なくとも1つの部分のミラーリングによって構築され得る、少なくとも1つの部分を含む。鏡面線は、任意の位置にあり、任意の方向を有することができる。好ましくは、第1のイメージから第2のイメージへの幾何学的変換は、平行移動を含む。したがって、鏡面線が第1のイメージの領域の外側にある場合でも、第2のイメージは、第1のイメージと完全に又は部分的に重なり合うことができる。好ましくは、重なり合う領域は、イメージ単位に分けられ、その結果、第1、第2、又はそれ以上のイメージの部分が、上で説明したような異なるイメージ単位に割り当てられ得る。
図11は、本発明による光学要素90の一例を示し、
図11.2の第2のイメージ92が、
図11.1の第1のイメージ91の鏡像であり、第1及び第2のイメージの両方が、異なる視角で、同じ位置に現れる。要素を傾斜又は回転させることによって、観察者は、イメージと鏡像との間を切り替えることができる。加えて、イメージ及び鏡像は、適切な視角の調整のために要素を傾斜又は回転させる際に、
図11.3及び
図11.4のネガティブイメージ93、94として現れる。観察のための異なる視角は、光学要素の異なる視点によって、
図11に指示される。光学特性の検証は角度の測定のためのツールを必要とし、検証プロセスは複雑でかつ時間がかかってしまうので、観察者に適切な視角に関する詳細な指示をする必要がない。それぞれの視角範囲が調整されるような配向であるならば第1及び第2のイメージがポジティブ及びネガティブイメージとして自動的に現れるので、光学特性の検証が可能であるように、観察者が必要とする唯一の指示は、要素を回転及び傾斜させることである。同じ位置でのイメージ及び鏡像の重なり合わせには、視角の変化によるイメージの鏡像への遷移という驚くべき効果がある。当然、鏡像を光学要素の他のどこかに位置付けることも可能である。
【0051】
一定の間隔の後に構造自体を繰り返し、したがって周期の構造が既知ならば予測可能である周期的構造とは対照的に、非周期的構造の面プロファイルは、構造の既知の部分から離れたところでは予測できない。非周期的である面プロファイルの決定のために、自己相関関数及び関連する自己相関長さが使用され得る。面プロファイルの自己相関関数は、平面において距離xで空間的に分離された2つの点に対する、面プロファイルの予測可能性のための尺度として理解され得る。
【0052】
面レリーフ微細構造プロファイルなどの関数P(x)の自己相関関数AC(x)は、
【数1】
と定められる。
【0053】
非周期的又は非決定的面プロファイルでは、自己相関関数は、xの増加と共に急速に減衰する。他方で、例えば格子に見られる決定的面プロファイルでは、自己相関関数は、周期的な関数で変調されて、振幅は減衰しない。
【0054】
自己相関関数を用いて、単一の特徴的な数である、自己相関長さLが、定められ得る。自己相関長さLは、自己相関関数の包絡線が特定の閾値まで減衰する長さである。本目的のために、AC(x=0)の10%の閾値が、好適であることが判明した。
【0055】
本発明の文脈において、非周期的、異方性面レリーフ微細構造が、自己相関長さ内でx=0でACの10%まで減衰する包絡線を有した平均化された1次元自己相関関数AC(x)を少なくとも1つの方向に有することが好ましく、自己相関長さが、隆起及びくぼみなどの、上部及び下部区域の隣接する遷移間の横方向の平均距離の3倍未満である。好ましくは、1つの方向は、異方性方向に対して垂直である。好ましくは、異方性面レリーフ微細構造がまた、異方性方向yに沿って変調され、その結果、平均化された自己相関関数AC(y)の包絡線は、自己相関長さ内でy=0でACの10%まで減衰し、自己相関長さが、異方性方向に沿った上部及び下部区域の隣接する遷移間の横方向の平均距離の3倍未満である。
【0056】
自己相関長さが上部及び下部区域の隣接する遷移間の横方向の平均距離の2倍未満である面レリーフ微細構造が、より好ましい。自己相関長さが上部及び下部区域の隣接する遷移間の横方向の平均距離より短い面レリーフ微細構造が、更に好ましい。
【0057】
好ましくは、自己相関長さ(L)は、上部及び下部区域の隣接する遷移間の横方向の平均距離の100分の1より大きい。
【0058】
コポリマーにおける自己組織化又はディウェッティング、レーザーアブレーション、電子又はイオンビームリソグラフィー、及びナノインプリントリソグラフィーなどの、非周期的、異方性面レリーフ微細構造を生成するために使用され得る、いろいろな公知の方法が存在する。微細構造は、例えば、微細構造を包含するエンボス加工ツールを使用したエンボス加工によって簡単に複製され得る。
【0059】
非周期的、異方性面レリーフ微細構造を製造する好ましい方法は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、国際特許出願WO 01/29148に説明される。方法は、いわゆるモノマーコルゲーション(MC)技術を使用する。MC技術は、基板に適用された特殊な混合物又はブレンドの相分離が架橋によって、例えば紫外線放射への暴露によって、誘起されるという事実に依拠する。非架橋成分のその後の除去により、特殊な面トポロジーを有した構造が残る。MC層という用語は、この技術により調製された層のために使用される。微細構造の異方性は、例えば液晶混合物が使用される場合に達成され、下にあるアラインメント層によってアラインメントされ得る。配向パターンを有するアラインメント層を使用することによって、パターン化された、非周期的、異方性面レリーフ微細構造を作製することが可能である。
【0060】
WO 2006/007742は、特定の観察角度下においてパステル色の外観を生成する、修正されたMC層及び層構造をもたらすための方法を開示する。
【0061】
WO2007/131375は、上部及び下部水平域を有した非周期的、異方性面レリーフ微細構造をもたらす方法を開示し、格子によってもたらされる色とは対照的に、光の入射角度によってほとんど変化しないパステル色をもたらすことを可能にする。面の異なる区域が異なる深さの構造を有することができるので、このような構造によって散乱する本来は白色の光は、散乱する区域に応じて、異なる色に変化することができる。
【0062】
好ましくは、方法は、基板上に薄いフォトアラインメントフィルムをコーティングする工程と、フォトアラインメントフィルムの個々の領域を異なる偏光方向の直線偏光のUV光に暴露することにより配向パターンをもたらす工程と、フォトアラインメントフィルムの上部に架橋可能及び非架橋可能な液晶材料のブレンドをコーティングする工程と、液晶ブレンドを架橋する工程と、例えば適切な溶媒を使用して、非架橋材料を除去する工程と、を含む。
【0063】
液晶ブレンドの架橋は、化学光への暴露によって行われることが好ましい。架橋プロセスは、液晶プレポリマーの相分離及び架橋を誘起する。微細コルゲート化された薄いフィルムの基本原理及び光学挙動は、例えば、国際特許出願WO-A-01/29148に開示される。
【0064】
追加的な工程では、コルゲート化された面の下方ゾーンおける層の材料が取り除かれ、下にある基板の一部分が解放されるまで、面レリーフ微細構造を含む層の厚さは、ウェット又はドライエッチングによって低減される。その後、基板が、ドライ又はウェットエッチングによって、コルゲート化された層の解放された部分を通じてエッチングされる。このプロセスにより、コルゲート化された層の微細構造は、構造の上部及び下部区域である、2つの水平域を有したバイナリ構造として基板に転写される。
【0065】
基板にエッチングされた微細構造の深さは、基板のエッチング時間及びエッチング速度に左右される。結果として、エッチング時間を制御することによって微細構造の深さを調整することが可能である。好ましくは、コピーされた微細構造の平均構造が60nmより大きく、より好ましくは、コピーされた微細構造の深さが90nmより大きい領域が存在する。色をもたらすために、微細構造の平均構造深さは、好ましくは180nmより大きく、より好ましくは300nmより大きく、最も好ましくは400nmより大きい。識別可能な色を提供するための平均構造深さの好ましい範囲は、180nm〜230nm、240nm〜280nm、290nm〜345nm、365nm〜380nm、及び430nm〜600nmである。
【0066】
好ましくは、イメージは、異なる領域における異なる構造深さの非周期的異方性面レリーフ微細構造によって少なくとも部分的に符号化される。このようなイメージは、局所的に異なる色又はグレーレベルで現れる。異なる深さの作製は、例えば、基板へのエッチングを局所的にブロックするか又は遅延させることによって行うことができる。
【0067】
本発明の好ましい実施形態では、イメージの少なくとも1つの部分のための非周期的、異方性面レリーフ微細構造符号化は、下部区域から上部区域への及び上部区域から下部区域への遷移の面変調を有する領域を含み、面領域の(第1の)横方向に、20マイクロメートル内毎に上部区域から下部区域への又はその逆への(平均で)少なくとも1つの遷移が存在し、好ましくは、追加的に、第1の方向に対して垂直である面領域の第2の横方向に、200マイクロメートル内毎に上部区域から下部区域への又はその逆への平均で少なくとも1つの遷移が存在する。
【0068】
好ましくは、イメージは、第1の横方向において上部区域から下部区域への又はその逆への隣接する遷移間の横方向の平均距離が0.5マイクロメートル〜10マイクロメートルの範囲にある、非周期的、異方性面レリーフ微細構造によって、少なくとも部分的に符号化される。有利には、横方向の平均距離は、0.5マイクロメートル〜5マイクロメートルの範囲にある。有利には、第1の横方向に対して垂直である第2の横方向において、上部区域から下部区域への遷移間の平均距離は、100マイクロメートル未満であり、より有利には、50マイクロメートル未満である。
【0069】
異方性面レリーフ構造を説明するために、面レリーフアスペクト比(SRAR)という用語は、本発明の文脈のために、異方性面レリーフパターンの幅に対する平均長さの比と定められる。SRARは、面レリーフ微細構造で散乱した光の方位光学的外観を強く決定する。少なくとも2つの横方向において平均で同じ長さを呈する面レリーフパターンに対応するSRAR=1では、入射光の散乱特性は、光の方位入射角度とほとんど無関係である。したがって、面レリーフ微細構造を包含する要素が要素の面に対して垂直な軸に沿って回転するとき、SRAR=1のレリーフ微細構造の面から反射した光の強度はほとんど変化しない。
【0070】
SRAR>1を意味する異方性レリーフ構造では、反射した光の強度は、光の方位入射角度に左右される。この方位入射角度への依存性を視覚的に認識することができるようにするために、SRARは、1.1より大きくなければならない。異なる異方性軸を有する面レリーフ構造のパターンのイメージセットアップの可視コントラストを増加させるために、2より大きいSRAR値が好ましい。5より大きいSRAR値が更に好ましい。
【0071】
非常に大きいSRAR値では、有意な量の光が散乱して入る方位角度の範囲は小さくなり、面レリーフパターンで作製されたイメージから反射した光を認識することが困難になる。したがって、好ましくはSRARが50未満であり、より好ましくはSRARが20未満である、少なくとも1つの領域が存在する。
【0072】
本発明の文脈において、「面レリーフ曲線因子」という用語は、すべての上部及びすべての下部区域上の合計領域に対する上部区域の総領域の比と定められる。好ましくは、面レリーフ曲線因子が0.050〜0.95の範囲にある、より好ましくは0.2〜0.8の範囲にある、及び更に好ましくは0.3〜0.7の範囲にある少なくとも1つの領域が存在する。
【0073】
本発明の文脈において、水平域は、構造の高さが構造の中間深さの20%未満で変動する微細構造内の領域と定められるものとする。
【0074】
好ましくは、本発明による光学要素は、少なくとも部分的に反射性である。したがって、本発明による光学要素は、好ましくは、金、銀、銅、アルミニウム、クロム、又は顔料などの、材料を使用した反射性の又は部分的に反射性の層を含む。反射性の又は部分的に反射性の層は、更に、光学要素の部分だけを被覆するように構造化され得る。これは、例えば、層の構造化された堆積又は局所的な脱金属化によって達成され得る。
【0075】
反射はまた、異なる屈折率を有する材料への遷移よって引き起こされ得る。したがって、本発明の好ましい実施形態では、本発明による光学要素の微細構造の面は、誘電体材料で少なくとも部分的に被覆される。高屈折率材料の例は、ZnS、ZnSe、ITO、又はTiO2である。高屈折率材料のナノ粒子を含む複合材料もまた、好適であり得る。被覆媒体は、デバイスの色外観を変化させるために、特定の色に対して吸収性であってもよい。
【0076】
任意に、本発明による光学要素の面レリーフ微細構造は、要素を機械的衝撃、汚染から保護するために、かつこのような要素の複製品の権限のない違法な作製を防止するために、密封され得る。したがって、本発明による光学要素は、好ましくは、微細構造の上部に密封層を含む。
【0077】
微細構造の深さに応じて、干渉色がもたらされ得る。広範な色パレットが、例えば黄色、オレンジ色、バラ色、紫色、青色、及び緑色の浅めから深めの変調から、得られ得る。更に深い構造では、更に高次の色が現れ得る。干渉色は、典型的に、明確な角度依存性を示す。特定の角度下においては、色は見えるが、他の角度では、色は変化するか又は見えなくなり得る。したがって、パターンは、色が観察角度及び/又は光の入射角度に左右される色付きのパターンと認識される。
【0078】
本発明による光学要素はまた、他のセキュリティ特性を組み込むことができる。それらのセキュリティ特性のうちのいくつかは、要素の作製のために使用されるマスタに既に存在し得る。このような特性は、例えば、ホログラム又はキネグラムである。第1、第2、又は第3のレベルのセキュリティ特性であり得る他のセキュリティ特性が、追加的なプロセス及び/又は追加的な層に追加され得る。追加的な特性は、特殊な光学的効果をもたらさずに、永久に可視であってもよい。好ましくは、追加される特性は、例えば同様にホログラム若しくはキネグラムによって又はコレステリック若しくは干渉層によって実現された、視角依存性を示す。より好ましい実施形態では、観察ツールを使用せずに検知することができない第2のレベルのセキュリティ特性が追加される。このような特性は、例えば、蛍光によって又は複屈折材料によって導入される。異なる位相差又は光軸配向の領域を含む複屈折層が、特に好ましい。このような複屈折層に収められたセキュリティ特性は、偏光、例えば偏光子シートを使用した、観察によってのみ可視である。加えて、光学要素は、磁性領域を含むことができる。
【0079】
本発明によってもたらされる光学要素は、光強度の空間変調を取り扱う異なる用途で使用され得る。好ましくは、本発明による光学要素は、セキュリティデバイスのセキュリティ要素として使用される。詳細には、このようなセキュリティデバイスは、模造及び改竄を防ぐために、文書、パスポート、免許証、株券及び債券、クーポン、小切手、証明書、クレジットカード、銀行券、チケットなどに適用されるか又は組み込まれる。セキュリティデバイスは更に、ブランド若しくは製品保護デバイスとして、又は包装紙、梱包箱、封筒などのような、梱包のための手段として適用されるか又は組み込まれ得る。有利には、セキュリティデバイスは、タグ、セキュリティストリップ、ラベル、繊維、糸、積層体、又はパッチなどの形態をとることができる。
【0080】
高さヒストグラムに基づくメリット関数は、明確な面レリーフ水平域を特徴付けるために有益であり得る。可能なメリット関数Mは、以下の通りである。
【数2】
【0081】
メリット関数Mは、ピーク幅とレリーフ変調深さとの関係を使用する。水平域周辺の上部及び下部区域の偏差の範囲は、レリーフ変調深さの特定の定められた分数内でなければならない。Δx1及びΔx2は、全ピーク高さの高さ1/eで測定されるような2つのヒストグラムピークの幅であり、eは、自然対数の底(e≒2.72)であり、dは、(平均水平域間距離又はレリーフ変調深さに対応する)2つのピークの距離である。
【0082】
本発明の方法において使用される面レリーフ微細構造は、好ましくは、2より大きい、メリット関数Mを有する。より好ましくは、Mは3.5より大きい。