(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記絶縁部材は、前記コンデンサ素子の巻芯部の内周面に対して、当該内周面の周方向に部分的かつ互いに分離した状態で接触することを特徴とする請求項1に記載のコンデンサ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面に基づき詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る電解コンデンサ1は、コンデンサ素子2、ケース(外装ケース)3a、封口体3b、底板4、スリーブ5、固定材6、端子(外部端子)7a、7bおよび圧力弁10、ピン20を有する。
【0014】
ケース3aは、コンデンサ素子2を収容するものであり、開口部に封口体3bが嵌合されている。封口体3bは、ケース3aを封止している。ケース3aは金属(アルミニウム等)からなり、封口体3bは、絶縁材料(変性フェノール樹脂等)からなる。
【0015】
封口体3bの上部周縁には、弾性材料(ゴム等)からなるパッキン3xが設けられている。パッキン3xは、封口体3bとケース3aとの隙間からケース3a内のガスが漏出することを防止する機能を有する。パッキン3xはケース3aの上端で加締固定されている。
【0016】
底板4は、絶縁材料(難燃性ポリエステル等)からなる円形のフィルムであり、ケース3aの底部下面に重なるように配置されている。スリーブ5は、絶縁材料(ポリオレフィン等)からなる略円筒状の部材であり、ケース3aの側部周面、底板4の下部周縁、およびケース3aの上部周縁を覆っている。スリーブ5の下部は、底板4に固定されている。
【0017】
固定材6は、コンデンサ素子2をケース3a内に固定するものであり、熱可塑性樹脂(ポリプロピレン等)からなる。
【0018】
端子7a、7bおよび圧力弁10は、封口体3bに設けられている。端子7a、7bは、封口体3bの厚み方向から見て、封口体3bの中心に関して点対称となる位置に、互いに離隔して設けられている。端子7a、7bは金属(アルミニウム等)からなり、陰極端子7aはコンデンサ素子2の陰極リードタブ2a、陽極端子7bはコンデンサ素子2の陽極リードタブ2bとそれぞれ接続されている。
【0019】
封口体3bには、封口体3bの厚み方向から見たときの中心(端子7a、7b間の中央)と外縁との間に、ケース3aの内部と外部とを連通する貫通孔3b1が形成されている。圧力弁10は、当該貫通孔3b1を塞ぐように設けられており、その上面に設けられたロックワッシャ8によって、封口体3bに固定されている。圧力弁10は、ケース3a内のガスを放出する機能を有している。
【0020】
次いで、
図2を参照し、コンデンサ素子2の構成について詳細に説明する。
【0021】
コンデンサ素子2は、陰極リードタブ2aおよび陽極リードタブ2bがそれぞれ取り付けられた陰極箔2xおよび陽極箔2yを、絶縁材料からなるセパレータ(クラフト紙等)2zを介して巻回し、これにより形成された巻回体の外周を素子止めテープ2tで固定し、その後巻回体を駆動用電解液に含浸させることにより、形成されている。陰極箔2xおよび陽極箔2yはアルミニウム箔の表面を粗面化したものであり、陽極箔2yは当該表面に陽極酸化皮膜を形成したものである。
【0022】
ここで、コンデンサ素子2の製造工程では、陰極箔2x、陽極箔2yおよびセパレータ2zを巻芯部材に巻き付けた後、当該巻芯部材を引き抜くことにより、陰極箔2x、陽極箔2yおよびセパレータ2zからなる巻回体15を形成するようになされており、当該巻回体15の中心部(巻芯部)には、巻芯部材を引き抜いたあとに空洞が残る。
【0023】
本実施形態の電解コンデンサ1では、この空洞部15aに封口体3b側からピン20を挿入することにより、空洞部15aの封口体3b側の所定範囲において、巻回体15(空洞部15a)の内周面15bとピン20との間に接触部が形成されるようになっている。
【0024】
図3および
図4はピン20の斜視図および側面図であり、
図5および
図6は
図4のA−A線を断面にとって示す横断面図である。
【0025】
図3に示すように、ピン20は、全体が樹脂材料によって形成され、巻回体15の巻芯部(空洞部15a)の直径よりも大きな直径で形成されピン20の空洞部15aに対する巻軸方向の位置決め手段としての機能を有する円盤形状の座板21と、当該座板21の一方の表面に形成された突起部22とを有する。突起部22には、空洞部15aへの挿入方向である長手方向に対して直交する方向に4つの当接部25、26、27および28が放射状に形成されている。
【0026】
当接部25〜28において、その当接面25a、26a、27aおよび28aは、巻回体15の空洞部15aの内周面15bの形状にほぼ沿う形状となっており、当接部25〜28の外径形状(当接面25aと27aとの間の距離、前端面26aと28aとの間の距離)は、空洞部15aの直径とほぼ同様となっている。これにより、ピン20を空洞部15aに挿入した状態では、当接部25〜28の当接面25a〜28aと空洞部15aの内周面15bとは、巻回体15を構成する電極箔(陰極箔2x、陽極箔2y)において過電圧が印加されない通常状態ではショートが発生しない程度の接触圧で接触するようになされている。
【0027】
また、突起部22の先端部分において、当接部25〜28にはテーパ面25b、26b、27bおよび28bが形成され、先端に向かって先細りの形状となっている。これにより、突起部22を当該先端部分から空洞部15aに挿入する際に円滑な挿入を可能とし巻回体15に傷が付くことを防止することができる。
【0028】
図5に示すように、突起部22において、当接部25、26、27および28は、その当接面25a、26a、27aおよび28aの両端部25c、26c、27cおよび28cが曲面状に面取りされている。このような形状とすることにより、当該両端部25c、26c、27cおよび28cが鋭角に形成されている場合に比べて、
図6に示すように突起部22を空洞部15aに挿入した状態において空洞部15aの内周面15bに傷が付き難くすることができる。
【0029】
ここで、当接部25〜28の各当接面25a〜28aにおいては、その円周方向の幅W1(
図5)の合計が空洞部15a(
図2)の直径(巻回体15の巻芯部の直径)の20〜40%となるように形成されている。その理由は、20%未満では、当接面25a〜28aと空洞部15aの内周面15bとの接触面積が小さくなることにより、当該接触部分において発生する応力が小さくなりすぎるためであり、40%を超えると、当該接触部分において発生する応力が大きくなりすぎるためである。具体的には、
図7に示すように過電圧が印加された場合に巻回体15の体積が大きくなると、巻回体15の空洞部15aの内周面15bの一部が内側(巻軸側)に向かって突出するような「く」の字状の変形箇所15cが発生する。ピン20の突起部22を空洞部15aに挿入した状態において、過電圧が印加されると、当該変形箇所15cでは当接部25〜28の各当接面25a〜28aと内周面15bとの接触部分によって電極箔(陰極箔2x、陽極箔2y)へのストレスが大きくなるが、各当接面25a〜28aの円周方向の幅W1(
図5)の合計が空洞部15a(
図2)の直径の20%未満では、当接部間の電極箔(陰極箔2x、陽極箔2y)が内側に向かって突出するような変形が発生し、当接面25a〜28aと対向する電極箔(陰極箔2x、陽極箔2y)へのストレスが弱くなり当接部25〜28の当接面25a〜28aが空洞部15aの内周面15bに接触している部分以外で電極箔(陰極箔2x、陽極箔2y)にショートが発生する可能性が高くなり、これに対して、40%を超えると、当該ストレスが大きくなりすぎて耐過電圧性能が低下しショートが発生し易くなるためである。
【0030】
また、当接部25〜28の各当接面25a〜28aにおいては、その長手方向(突起部22が挿入される空洞部15aの挿入方向)の長さL1(
図4)を15〜30mmとすることが好ましい。その理由は、15mm未満では、当接面25a〜28aと空洞部15aの内周面15bとの接触面積が小さくなることにより、
図7について上述したように巻回体15の体積が大きくなった場合に空洞部15a付近の電極箔(陰極箔2x、陽極箔2y)へ加わるストレスが弱くなり当接部25〜28の当接面25a〜28aが空洞部15aの内周面15bに接触している部分以外で電極箔(陰極箔2x、陽極箔2y)にショートが発生する可能性が高くなり、これに対して、30mmを超えると、電極箔(陰極箔2x、陽極箔2y)へのストレスが大きくなり過ぎて耐過電圧性能が低下しショートが発生し易くなるためである。
【0031】
このような構成の当接部25〜28を備えたピン20を巻回体15の空洞部15aに対して封口体3b側から挿入した状態で製造された電解コンデンサ1と、ピン20を備えていない電解コンデンサとについて、過電圧を印加する試験を行い、ショート箇所の確認を行った。
【0032】
具体的には、定格400V/18000μFのネジ端子形アルミニウム電解コンデンサ(外形寸法:直径φ90mm×長さ220mm)であって、コンデンサ素子の寸法が直径φ83mm×長さ200mm、巻回体15の巻芯部(空洞部15a)の直径がφ10mmのものに対して、印加電圧800V、試験電流10A、試験温度を室温として試験を行った。
【0033】
この結果、ピン20を備えていない従来品では、5個のサンプルのうち4個にショートが発生した。ショート箇所としては、コンデンサ素子の底部(ケースの底部側)に発生したものが3個、中央部(ケースの底部側と封口体側との間の中央部)に発生したものが1個であった。
【0034】
これに対して、ピン20を備えた本実施形態の構成では、5個のサンプルのうち5個にショートが発生し、ショート箇所は、いずれもピン20の当接部25〜28付近であった。
【0035】
この試験結果から、ピン20を備えた電解コンデンサ1では、ピン20が挿入された位置に応じてショートの発生位置が限定的になることが分かった。すなわち、ピン20を設けることにより、ショートが発生する位置を限定した範囲にすることが可能になることが分かった。
【0036】
具体的には、
図7に示したように、コンデンサ素子2に過電圧が印加されると、急激に漏れ電流が増加し、当該コンデンサ素子2に発熱と電極箔の膨張が発生する。コンデンサ素子の発熱は、電解液を気化させケース内部の圧力を上昇させる。空洞部15aにピン20が挿入されていない状態では、この圧力上昇と膨張により空洞部15aに向かって素子の変形が生じる(変形部15c)。本実施形態のコンデンサ素子2においては、空洞部15aにピン20の突起部22を挿入しているため、変形部15cと突起部22(当接面25a〜28a)との間の接触圧が大きくなり、この接触部分における発生応力を、ピン20の突起部22(当接面25a〜28a)が空洞部15aの内周面15bに接触していない部分に比べて大きくすることができる。これにより、当該接触部分において意図的にショートを誘発させ、ショート箇所を意図した部分に限定することができる。
【0037】
従って、例えば
図8に示すように、巻回体15の空洞部15aに対して、封口体3b側からピン20を挿入した構成においては、ピン20が挿入された箇所の周囲(すなわち、電解コンデンサ1の封口体3b側の周囲)を例えば金属材料で形成される高強度の外装部材40によって覆う構成とすることにより、過電圧状態となってショートが発生しケース3aが破損した場合であっても、部分的に外装部材40を設けるだけで破損物が周囲に飛散することを防止することができる。すなわち、電解コンデンサ全体を高強度の外装部材で覆うといった大がかりな構成を用いることなく、簡易な構成によって、電解コンデンサ1にショート等の異常が発生した場合に対応することができる。
【0038】
なお、外装部材40を設ける位置は、
図8に示すような電解コンデンサ1のケース外周面に対向する位置だけでなく、封口体3bが設けられた上面に対向する位置にも設けるようにしてもよい。また、外装部材40は電解コンデンサ1に接するように設けても、
図8に示すように離間して設けるようにしてもよい。
【0039】
以上の構成において、例えば、定格400Vの電解コンデンサを2つ直列接続して800Vで使用する場合、異常が発生していない状態であれば各々の電解コンデンサに400Vが印加されるが、一方の電解コンデンサが故障して導通状態になると、他方の電解コンデンサに800Vが印加されることになり、当該電解コンデンサは過電圧が印加された状態となる。この場合であっても、当該電解コンデンサにピン20を備えることにより、過電圧印加時にショート等により破損が発生する箇所を意図する範囲に限定することができる。この結果、電解コンデンサを設けるレイアウトに応じて高強度の外装部材40(
図8)を設ける位置に制約があっても、当該外装部材40の位置に応じてショート等の異常による電解コンデンサの破損箇所を外装部材40の位置に合わせることが可能となる。
【0040】
また、以上の構成によると、コンデンサ素子2の巻芯部に形成される空洞部15aにピン20を挿入するだけでショート等による破損箇所を限定することができるため、従来構造のコンデンサにおいても本発明に係る構成を容易に導入することが可能となる。
【0041】
なお、上述の実施形態においては、巻回体15の空洞部15aに対して、ピン20を封口体3b側から挿入した構成について述べたが、これに限られるものではなく、例えば、ケース3aの底部側から挿入してもよい。この場合、外装部材40をケース3aの底部の周囲の限定された範囲に設けることにより、ショート発生時の破損に対応することができる。
【0042】
また、上述の実施形態においては、巻回体15の空洞部15aに対する位置決め手段としての座板21に直接突起部22を形成したピン20を用いることにより、空洞部15aの上部(封口体3b側)または下部(ケース3aの底部側)に突起部22(当接部25〜28)を設ける構成について述べたが、これに限られるものではなく、コンデンサ素子2の長さ方向の中央部(電解コンデンサ1の封口体3b側とケース3aの底部側との間の略中央部)に設けるようにしてもよい。
図3〜
図5との対応部分に同一符号を付して示す
図9は、当接部25〜28を空洞部15aの中央部に配置する実施形態を示す図である。
【0043】
図9に示すように、ピン120は、巻回体15の内周面15bに接触する当接部125、126、127および128を有する。これらの当接部125〜128は、上述したピン20の当接部25〜28と同様に放射状に設けられているものである。なお、
図9において当接部127は紙面の奥方向に設けられるものであるため、符号のみを示している。
【0044】
当接部125〜128は、
図3〜
図8について上述したピン20の当接部25〜28と同様に、各々の当接面125a、126a、127aおよび128aが巻回体15の内周面15bに接触し、当該接触部分において過電圧印加時にショートを誘発させる構成となっている。
【0045】
このピン120は、当接部125〜128を巻回体15の空洞部15aに対して深く挿入する必要があるため、柱状の支持部123によって座板21から所定距離に当接部125〜128を支持するように構成されている。この支持部123の長さによって当接部125〜128と巻回体15の内周面15bとの接触位置を決定することができる。従って、過電圧印加時のショートを誘発させようとする位置に応じた長さの支持部123を用いることにより、外装部材40(
図8)を配置する位置に応じて適切な位置でショートを誘発させることができる。
【0046】
なお、
図9に示したピン120では、当接部125〜128を巻回体15aの空洞部15bに対して、当接部125〜128の長さよりも深く挿入する必要があるため、巻回体15の内周面15bに接触する当接面125a〜128aの上下両端部にテーパ面125b、126b、127b、128bを形成している。これにより、必要に応じてピン120を空洞部15aから引き抜く際に当接部125〜128によって巻回体15の内周面15bに傷が付くことを防止することができる。
【0047】
また、上述の実施形態においては、ピン20、120にそれぞれ4つの当接部25〜28、125〜128を設ける場合について述べたが、これに限られず、当接部の数は種々の数を適用することができる。なお、3〜5個の当接部を設けることが好ましい。
【0048】
また、上述の実施形態においては、座板21によってピン20、120の位置決めを行う構成について述べたが、これに限られるものではなく、例えば
図10に示すように、ピン20に代えて、封口体3bに突起部22を固定する構成としてもよい。すなわち、
図8との対応部分に同一符号を付して示す
図10において、封口体3bには、柱状の支持部50を介して突起部22が支持されている。突起部22には、
図3〜
図6について上述した構成と同様の構成を有する当接部25〜28が設けられていることにより、当接部25〜28と巻回体15の内周面15bとの接触部分によって過電圧印加時のショートを誘発させることができる。
【0049】
なお、封口体3bに支持部50を介して突起部22を設けた構成においても、支持部50の長さを変えることにより、突起部22(当接部25〜28)が巻回体15aの内周面15bに接触する部分の位置を任意に設定することができる。
【0050】
また、上述の実施形態においては、樹脂材料で形成されたピン20、120を用いる場合について述べたが、これに限られるものではなく、例えば金属材料の表面に絶縁物を被覆したものを用いる等、巻回体15の内周面15bとの接触部分が絶縁性を有するものであれば、種々のものを用いることができる。