特許第6937259号(P6937259)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6937259
(24)【登録日】2021年9月1日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】報知装置および報知方法
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20210909BHJP
【FI】
   B60N2/90
【請求項の数】16
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-50400(P2018-50400)
(22)【出願日】2018年3月19日
(65)【公開番号】特開2019-162891(P2019-162891A)
(43)【公開日】2019年9月26日
【審査請求日】2020年12月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118094
【弁理士】
【氏名又は名称】殿元 基城
(72)【発明者】
【氏名】橋本 武志
(72)【発明者】
【氏名】藤田 康弘
【審査官】 田中 佑果
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−100468(JP,A)
【文献】 特開平11−326084(JP,A)
【文献】 特開2009−195595(JP,A)
【文献】 実開平4−77355(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0143270(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートのクッションに内設されて、前記シートに伝達された振動を検出してシート振動信号に変換する第1信号変換手段と、
前記シートの前記クッション以外の位置に設置されて、伝達された振動を検出して入力振動信号に変換する第2信号変換手段と、
前記第1信号変換手段より前記シート振動信号を取得すると共に、前記第2信号変換手段より前記入力振動信号を取得して、前記入力振動信号の信号レベルの値から前記シート振動信号の信号レベルの値を減算した信号レベル差ΔGを算出するレベル差算出手段と、
該レベル差算出手段により算出された信号レベル差ΔGの値に基づいて、ユーザに対して報知を行うための報知態様を決定する報知態様決定手段と、
報知対象となる状況を報知状況検出手段が検出したときに出力される報知情報を取得した場合に、前記報知態様決定手段により決定された前記報知態様に基づいて、前記報知を行う報知実行手段と
を備えることを特徴とする報知装置。
【請求項2】
前記報知態様決定手段は、
前記レベル差算出手段により算出された信号レベル差ΔGの値に基づいて、調整レベルを決定する調整レベル決定手段と、
前記報知情報に基づいて報知信号を生成する報知信号生成手段と、
前記調整レベル決定手段により決定された前記調整レベルに基づいて、前記報知信号生成手段により生成された前記報知信号の信号レベルを調整する報知信号調整手段と、
を有し、
前記報知実行手段は、前記報知信号調整手段により調整された前記報知信号を報知振動に変換し、前記シートにおいて前記報知振動を出力する振動変換手段であること
を特徴とする請求項1に記載の報知装置。
【請求項3】
前記調整レベル決定手段は、前記信号レベル差ΔGの値に反比例するようにして前記調整レベルを決定すること
を特徴とする請求項2に記載の報知装置。
【請求項4】
前記調整レベル決定手段は、前記報知状況検出手段により前記報知情報が出力された場合に、当該報知情報が出力される直前に決定した前記調整レベルの値を維持し、
前記報知信号調整手段は、前記報知情報が出力されている間、前記調整レベル決定手段により維持された前記調整レベルの値に基づいて、前記報知信号の信号レベルを調整すること
を特徴とする請求項2又は請求項3に記載の報知装置。
【請求項5】
前記第1信号変換手段と前記振動変換手段とは、同一の変換手段により構成され、当該変換手段は、前記振動をシート振動信号に変換し、且つ、前記報知信号を前記報知振動に変換すること
を特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の報知装置。
【請求項6】
前記報知態様決定手段は、前記報知を前記ユーザに認識させる方法に応じて異なる複数の報知方法の中から、いずれかの報知方法を前記報知態様として決定し、
前記報知実行手段は、前記報知態様決定手段により決定された報知方法に基づいて前記報知を行うこと
を特徴とする請求項1に記載の報知装置。
【請求項7】
前記報知実行手段は、
前記ユーザに対して前記報知を行うために振動を出力する振動出力手段と、
前記ユーザに対して前記報知を行うために報知音を出力する報知音出力手段と、
前記ユーザに対して前記報知を行うために報知情報を表示させる報知情報表示手段と
を有し、
前記報知態様決定手段によって、振動により前記報知を認識させる方法が決定された場合には、前記振動出力手段が前記振動を出力して前記報知を行い、
前記報知態様決定手段によって、報知音により前記報知を認識させる方法が決定された場合には、前記報知音出力手段が前記報知音を出力して前記報知を行い、
前記報知態様決定手段によって、報知情報の表示により前記報知を認識させる方法が決定された場合には、前記報知情報表示手段が前記報知情報を表示して前記報知を行うこと
を特徴とする請求項6に記載の報知装置。
【請求項8】
前記第1信号変換手段は、車両の走行中に車室内の前記シートに伝達された振動を検出して前記シート振動信号に変換し、
前記第2信号変換手段は、前記車両の走行中に前記車室内に発生する振動を検出して前記入力振動信号に変換すること
を特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の報知装置。
【請求項9】
シートのクッションに内設された第1信号変換手段が、前記シートに伝達された振動を検出してシート振動信号に変換する第1信号変換ステップと、
前記シートの前記クッション以外の位置に設置された第2信号変換手段が、伝達された振動を検出して入力振動信号に変換する第2信号変換ステップと、
レベル差算出手段が、前記第1信号変換ステップにおいて変換された前記シート振動信号を取得すると共に、前記第2信号変換ステップにおいて変換された前記入力振動信号を取得して、前記入力振動信号の信号レベルの値から前記シート振動信号の信号レベルの値を減算した信号レベル差ΔGを算出するレベル差算出ステップと、
該レベル差算出ステップにおいて算出された信号レベル差ΔGの値に基づいて、報知態様決定手段が、ユーザに対して報知を行うための報知態様を決定する報知態様決定ステップと、
報知対象となる状況を報知状況検出手段が検出したときに出力される報知情報を取得した場合に、前記報知態様決定ステップにおいて決定された前記報知態様に基づいて、報知実行手段が前記報知を行う報知実行ステップと
を有することを特徴とする報知方法。
【請求項10】
前記報知態様決定ステップは、
前記レベル差算出ステップにおいて算出された信号レベル差ΔGの値に基づいて、調整レベル決定手段が、調整レベルを決定する調整レベル決定ステップと、
前記報知情報に基づいて、報知信号生成手段が、報知信号を生成する報知信号生成ステップと、
前記調整レベル決定ステップにおいて決定された前記調整レベルに基づいて、報知信号調整手段が、前記報知信号生成ステップにおいて生成された前記報知信号の信号レベルを調整する報知信号調整ステップと、
を有し、
前記報知実行ステップは、
振動変換手段が、前記報知信号調整ステップにおいて調整された前記報知信号を報知振動に変換し、前記シートにおいて前記報知振動を出力する振動変換ステップを有すること
を特徴とする請求項9に記載の報知方法。
【請求項11】
前記調整レベル決定ステップにおいて前記調整レベル決定手段は、前記信号レベル差ΔGの値に反比例するようにして前記調整レベルを決定すること
を特徴とする請求項10に記載の報知方法。
【請求項12】
前記調整レベル決定ステップにおいて前記調整レベル決定手段は、前記報知状況検出手段により前記報知情報が出力された場合に、当該報知情報が出力される直前に決定した前記調整レベルの値を維持し、
前記報知信号調整ステップにおいて前記報知信号調整手段は、前記報知情報が出力されている間、前記調整レベル決定ステップにおいて維持された前記調整レベルの値に基づいて、前記報知信号の信号レベルを調整すること
を特徴とする請求項10又は請求項11に記載の報知方法。
【請求項13】
前記第1信号変換手段と前記振動変換手段とは、同一の変換手段により構成され、当該変換手段は、前記第1信号変換ステップにおいて前記振動をシート振動信号に変換し、且つ、前記振動変換ステップにおいて前記報知信号を前記報知振動に変換すること
を特徴とする請求項10乃至請求項12のいずれか1項に記載の報知方法。
【請求項14】
前記報知態様決定ステップにおいて前記報知態様決定手段は、前記報知を前記ユーザに認識させる方法に応じて異なる複数の報知方法の中から、いずれかの報知方法を前記報知態様として決定し、
前記報知実行ステップにおいて前記報知実行手段は、前記報知態様決定手段により決定された報知方法に基づいて前記報知を行うこと
を特徴とする請求項9に記載の報知方法。
【請求項15】
前記報知実行ステップは、
前記ユーザに対して前記報知を行うために、振動出力手段が振動を出力する振動出力ステップと、
前記ユーザに対して前記報知を行うために、報知音出力手段が報知音を出力する報知音出力ステップと、
前記ユーザに対して前記報知を行うために、報知情報表示手段が報知情報を表示させる報知情報表示ステップと
を有し、
前記報知態様決定ステップにおいて、振動により前記報知を認識させる方法が決定された場合には、前記振動出力ステップにおいて前記振動を出力して前記報知を行い、
前記報知態様決定ステップにおいて、報知音により前記報知を認識させる方法が決定された場合には、前記報知音出力ステップにおいて前記報知音を出力して前記報知を行い、
前記報知態様決定ステップにおいて、報知情報の表示により前記報知を認識させる方法が決定された場合には、前記報知情報表示ステップにおいて前記報知情報を表示して前記報知を行うこと
を特徴とする請求項14に記載の報知方法。
【請求項16】
前記第1信号変換ステップにおいて前記第1信号変換手段は、車両の走行中に車室内の前記シートに伝達された振動を検出して前記シート振動信号に変換し、
前記第2信号変換ステップにおいて前記第2信号変換手段は、前記車両の走行中に前記車室内に発生する振動を検出して前記入力振動信号に変換すること
を特徴とする請求項9乃至請求項15のいずれか1項に記載の報知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、報知装置および報知方法に関し、より詳細には、振動によって報知を行う報知装置および報知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用の報知装置として、車両用シートを振動させて、運転者に注意を促す装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、走行車線の車両境界線を認識する境界線識別手段が設けられた車両において、車両用シートの左右位置に、着座者の大腿部の近傍を振動させるための振動発生手段を設置する。境界線識別手段により、車両の左側の所定部位が左側の車両境界線を乗り越えたと判断された場合には、車両用シートの左側の振動発生手段を振動させて、着座者に逸脱方向の報知を行う。また、境界線識別手段により、車両の右側の所定部位が右側の車両境界線を乗り越えたと判断された場合には、車両用シートの右側の振動発生手段を振動させて、着座者に逸脱方向の報知を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−129716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車両用シートに振動発生手段を設置し、着座者に振動を体感させることによって報知を行う装置では、着座者の着座姿勢等によって、着座者の感じる振動の大きさが変化してしまうという問題があった。
【0006】
例えば、着座者が正しい姿勢で車両用シートに着座していない場合には、シートクッションに対する着座面からの圧力が小さくなる傾向がある。このように、シートクッションに対する着座面からの圧力が小さい場合には、シートクッションに設置された振動発生手段を振動させても、シートクッションを介して体感する振動が弱くなってしまう傾向がある。すなわち、振動発生手段の設置位置に対して着座者が正しい姿勢で着座していない場合には、着座者に対して振動を十分に伝達することができず、着座者による振動の認識性が低下してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、着座者の着座状態にかかわらず、着座者に対して報知を十分に認識させることが可能な報知装置および報知方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る報知装置は、シートのクッションに内設されて、前記シートに伝達された振動を検出してシート振動信号に変換する第1信号変換手段と、前記シートの前記クッション以外の位置に設置されて、伝達された振動を検出して入力振動信号に変換する第2信号変換手段と、前記第1信号変換手段より前記シート振動信号を取得すると共に、前記第2信号変換手段より前記入力振動信号を取得して、前記入力振動信号の信号レベルの値から前記シート振動信号の信号レベルの値を減算した信号レベル差ΔGを算出するレベル差算出手段と、該レベル差算出手段により算出された信号レベル差ΔGの値に基づいて、ユーザに対して報知を行うための報知態様を決定する報知態様決定手段と、報知対象となる状況を報知状況検出手段が検出したときに出力される報知情報を取得した場合に、前記報知態様決定手段により決定された前記報知態様に基づいて、前記報知を行う報知実行手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る報知方法は、シートのクッションに内設された第1信号変換手段が、前記シートに伝達された振動を検出してシート振動信号に変換する第1信号変換ステップと、前記シートの前記クッション以外の位置に設置された第2信号変換手段が、伝達された振動を検出して入力振動信号に変換する第2信号変換ステップと、レベル差算出手段が、前記第1信号変換ステップにおいて変換された前記シート振動信号を取得すると共に、前記第2信号変換ステップにおいて変換された前記入力振動信号を取得して、前記入力振動信号の信号レベルの値から前記シート振動信号の信号レベルの値を減算した信号レベル差ΔGを算出するレベル差算出ステップと、該レベル差算出ステップにおいて算出された信号レベル差ΔGの値に基づいて、報知態様決定手段が、ユーザに対して報知を行うための報知態様を決定する報知態様決定ステップと、報知対象となる状況を報知状況検出手段が検出したときに出力される報知情報を取得した場合に、前記報知態様決定ステップにおいて決定された前記報知態様に基づいて、報知実行手段が前記報知を行う報知実行ステップとを有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る報知装置および報知方法では、第2信号変換手段より取得した入力振動信号の信号レベルの値から、第1信号変換手段より取得したシート振動信号の信号レベルの値を減算して信号レベル差ΔGを算出し、算出された信号レベル差ΔGに基づいて、ユーザに対して報知を行うための報知態様を決定する。
【0011】
ここで、第1信号変換手段は、シートのクッションに内設されているため、シート振動信号の信号レベルは、クッションに加えられる圧力に応じて変動する。つまり、シート振動信号の信号レベルは、シートに着座者が正しい姿勢で着座しているか否か等の着座状態によって、変動することになる。一方で、第2信号変換手段は、シートのクッション以外の位置に設置されるため、検出される入力振動信号の信号レベルは、着座者の着座状態による影響を受けない。このため、入力振動信号の信号レベルの値からシート振動信号の信号レベルの値を減算した信号レベル差ΔGの値は、シートに着座者が正しい姿勢で着座しているか否かによって変わることになる。
【0012】
従って、本発明に係る報知装置および報知方法では、シートに着座者が正しい姿勢で着座しているか否かにより値が変動する信号レベル差ΔGを用いて報知態様を決定する。決定された報知態様に基づいて報知を行うことにより、着座者の着座状態に応じて適切な報知態様を決定することができ、着座者に対して報知を十分に認識させることが可能になる。
【0013】
また、上述した報知装置において、前記報知態様決定手段は、前記レベル差算出手段により算出された信号レベル差ΔGの値に基づいて、調整レベルを決定する調整レベル決定手段と、前記報知情報に基づいて報知信号を生成する報知信号生成手段と、前記調整レベル決定手段により決定された前記調整レベルに基づいて、前記報知信号生成手段により生成された前記報知信号の信号レベルを調整する報知信号調整手段とを有し、前記報知実行手段は、前記報知信号調整手段により調整された前記報知信号を報知振動に変換し、前記シートにおいて前記報知振動を出力する振動変換手段であってもよい。
【0014】
さらに、上述した報知方法において、前記報知態様決定ステップは、前記レベル差算出ステップにおいて算出された信号レベル差ΔGの値に基づいて、調整レベル決定手段が、調整レベルを決定する調整レベル決定ステップと、前記報知情報に基づいて、報知信号生成手段が、報知信号を生成する報知信号生成ステップと、前記調整レベル決定ステップにおいて決定された前記調整レベルに基づいて、報知信号調整手段が、前記報知信号生成ステップにおいて生成された前記報知信号の信号レベルを調整する報知信号調整ステップとを有し、前記報知実行ステップは、振動変換手段が、前記報知信号調整ステップにおいて調整された前記報知信号を報知振動に変換し、前記シートにおいて前記報知振動を出力する振動変換ステップを有するものであってもよい。
【0015】
本発明に係る報知装置および報知方法では、シートに着座者が正しい姿勢で着座しているか否かにより値が変動する信号レベル差ΔGを用いて調整レベルを決定し、調整レベルに基づいて報知信号の信号レベルを調整することにより、着座者の着座状態に応じて報知振動の振動レベルを適切に調整・変更することができる。よって、着座者が十分に認識可能な強さの報知振動を出力することが可能になる。
【0016】
上述した報知装置および報知方法において、前記調整レベルは、前記信号レベル差ΔGの値に反比例するようにして決定するものであってもよい。
【0017】
シートに着座者が正しい姿勢で着座している場合には、クッションへの圧力が大きくなる。クッションへの圧力が大きい場合には、クッションに内設される第1信号変換手段に対して伝達される振動が抑えられる傾向がある。このため、シートに着座者が正しい姿勢で着座している場合に、第1信号変換手段で検出されるシート振動信号の信号レベルは、シートに着座者が正しい姿勢で着座していない場合に比べて、低い値になる傾向がある。一方で、シートに着座者が正しい姿勢で着座していない場合には、クッションへの圧力が小さくなるため、第1信号変換手段で検出されるシート振動信号の信号レベルが、シートに着座者が正しい姿勢で着座している場合に比べて、高い値になる傾向がある。従って、シートに着座者が正しい姿勢で着座している場合には、信号レベル差ΔGの値が大きくなり、シートに着座者が正しい姿勢で着座していない場合には、信号レベル差ΔGの値が小さくなる。
【0018】
また、シートに着座者が正しい姿勢で着座している場合には、クッションへの圧力が大きくなるため、クッションにおける振動伝搬の減衰量が小さくなる。従って、報知振動は、あまり減衰せずに着座者に伝達されることになる。また、シートに着座者が正しい姿勢で着座していない場合には、クッションへの圧力が小さくなるため、クッションにおける振動伝搬の減衰量が大きくなる。従って、報知振動は、減衰されて着座者に伝達されることになる。
【0019】
このため、本発明に係る報知装置および報知方法では、シートに着座者が正しい姿勢で着座している場合、つまり信号レベル差ΔGの値が大きい場合に、シートにおいて出力される報知振動があまり減衰せずに着座者に伝達されることになるため、信号レベル差ΔGの値に反比例するように調整レベルを小さい値に設定する。このように、シートにおいて報知振動があまり減衰しない場合に、調整レベルを小さい値に設定することにより、シートの着座者に対して、適切なレベルの報知振動を体感させることが可能になる。
【0020】
一方で、シートに着座者が正しい姿勢で着座していない場合、つまり信号レベル差ΔGの値が小さい場合には、シートにおいて出力される報知振動の減衰量が大きくなるため、信号レベル差ΔGの値に反比例するように調整レベルを大きい値に設定する。このように、調整レベルを大きい値に設定することにより、報知振動が減衰した場合であっても、シートの着座者に対して、適切なレベルの報知振動を体感させることが可能になる。
【0021】
また、上述した報知装置において、前記調整レベル決定手段は、前記報知状況検出手段により前記報知情報が出力された場合に、当該報知情報が出力される直前に決定した前記調整レベルの値を維持し、前記報知信号調整手段は、前記報知情報が出力されている間、前記調整レベル決定手段により維持された前記調整レベルの値に基づいて、前記報知信号の信号レベルを調整するものであってもよい。
【0022】
さらに、上述した報知方法において、前記調整レベル決定ステップにおいて前記調整レベル決定手段は、前記報知状況検出手段により前記報知情報が出力された場合に、当該報知情報が出力される直前に決定した前記調整レベルの値を維持し、前記報知信号調整ステップにおいて前記報知信号調整手段は、前記報知情報が出力されている間、前記調整レベル決定ステップにおいて維持された前記調整レベルの値に基づいて、前記報知信号の信号レベルを調整するものであってもよい。
【0023】
本発明に係る報知装置および報知方法では、報知情報が出力された場合に、報知情報が出力される直前に決定された調整レベルの値を維持し、報知情報が出力されている間、維持された調整レベルの値に基づいて、報知信号の信号レベルを調整する。このため、報知情報が出力されていて、第1信号変換手段や第2信号変換手段において振動の検出を行うことができない場合でも、直前に決定された調整レベルの値に基づいて、報知信号の信号レベルを調整することができる。従って、報知情報の出力の有無にかかわらず、適切に報知信号の信号レベルを調整することが可能になる。
【0024】
また、上述した報知装置において、前記第1信号変換手段と前記振動変換手段とは、同一の変換手段により構成され、当該変換手段は、前記振動をシート振動信号に変換し、且つ、前記報知信号を前記報知振動に変換するものであってもよい。
【0025】
さらに、上述した報知方法において、前記第1信号変換手段と前記振動変換手段とは、同一の変換手段により構成され、当該変換手段は、前記第1信号変換ステップにおいて前記振動をシート振動信号に変換し、且つ、前記振動変換ステップにおいて前記報知信号を前記報知振動に変換するものであってもよい。
【0026】
本発明に係る報知装置および報知方法では、信号変換手段と振動変換手段とを同一の変換手段により構成することにより、装置の簡素化を図ることが可能になる。さらに、電気信号から振動への変換(振動出力)と、振動から電気信号への変換(振動検出)という可逆性のある処理を1つの変換手段で行うことができるため、シート振動信号の信号レベルの値に基づいて、実際に出力される報知信号(報知振動)の信号レベル(振動レベル)を適切に調整することが可能になる。
【0027】
また、上述した報知装置において、前記報知態様決定手段は、前記報知を前記ユーザに認識させる方法に応じて異なる複数の報知方法の中から、いずれかの報知方法を前記報知態様として決定し、前記報知実行手段は、前記報知態様決定手段により決定された報知方法に基づいて前記報知を行うものであってもよい。
【0028】
さらに、上述した報知方法は、前記報知態様決定ステップにおいて前記報知態様決定手段が、前記報知を前記ユーザに認識させる方法に応じて異なる複数の報知方法の中から、いずれかの報知方法を前記報知態様として決定し、前記報知実行ステップにおいて前記報知実行手段が、前記報知態様決定手段により決定された報知方法に基づいて前記報知を行うものであってもよい。
【0029】
本発明に係る報知装置および報知方法では、報知をユーザに認識させる方法に応じて異なる複数の報知方法の中から、いずれかの報知方法を報知態様として決定し、決定された報知方法に基づいて報知を行う。ここで、報知態様は、信号レベル差ΔGの値に基づいて決定されており、信号レベル差ΔGの値は、シートに着座者が正しい姿勢で着座しているか否かによって変化する。このため、シートに着座者が正しい姿勢で着座しているか否かを示す信号レベル差ΔGの値に基づいて、報知をユーザに認識させる報知方法を決定することにより、ユーザの着座状態に応じて適切な報知方法を用いることができる。
【0030】
特に、上述した報知装置において、前記報知実行手段は、前記ユーザに対して前記報知を行うために振動を出力する振動出力手段と、前記ユーザに対して前記報知を行うために報知音を出力する報知音出力手段と、前記ユーザに対して前記報知を行うために報知情報を表示させる報知情報表示手段とを有し、前記報知態様決定手段によって、振動により前記報知を認識させる方法が決定された場合には、前記振動出力手段が前記振動を出力して前記報知を行い、前記報知態様決定手段によって、報知音により前記報知を認識させる方法が決定された場合には、前記報知音出力手段が前記報知音を出力して前記報知を行い、
前記報知態様決定手段によって、報知情報の表示により前記報知を認識させる方法が決定された場合には、前記報知情報表示手段が前記報知情報を表示して前記報知を行うものであってもよい。
【0031】
さらに、上述した報知方法において、前記報知実行ステップは、前記ユーザに対して前記報知を行うために、振動出力手段が振動を出力する振動出力ステップと、前記ユーザに対して前記報知を行うために、報知音出力手段が報知音を出力する報知音出力ステップと、前記ユーザに対して前記報知を行うために、報知情報表示手段が報知情報を表示させる報知情報表示ステップとを有し、前記報知態様決定ステップにおいて、振動により前記報知を認識させる方法が決定された場合には、前記振動出力ステップにおいて前記振動を出力して前記報知を行い、前記報知態様決定ステップにおいて、報知音により前記報知を認識させる方法が決定された場合には、前記報知音出力ステップにおいて前記報知音を出力して前記報知を行い、前記報知態様決定ステップにおいて、報知情報の表示により前記報知を認識させる方法が決定された場合には、前記報知情報表示ステップにおいて前記報知情報を表示して前記報知を行うものであってもよい。
【0032】
本発明に係る報知装置および報知方法では、報知をユーザに認識させる報知方法として、振動を出力して報知を行うことにより報知を体感させる方法と、報知音を出力して聴覚的に報知を認識させる方法と、報知情報を表示して視覚的に報知を認識させる方法とを予め備えており、決定された報知方法に応じて、それぞれの方法により報知が行われる。
【0033】
例えば、シートに着座者が正しい姿勢で着座しておらず、信号レベル差ΔGの値が低い場合には、シートに振動を発生させてもユーザが振動を認識しないおそれがある。このような場合には、報知音による聴覚的な報知や、報知情報の表示による視覚的な報知を行うことにより、ユーザに対して効果的に報知を認識させることができる。
【0034】
また、ユーザの周囲環境で騒音や振動等が発生している場合、例えば、走行する車両の車室内において走行騒音や走行音などが発生する場合には、シート振動信号の信号レベルも入力振動信号の信号レベルも高い値を示し、信号レベル差ΔGが小さい値になってしまう場合がある。このように、レベル差ΔGが小さい場合であって、報知音や振動ではユーザに十分な報知を行うことができない場合であっても、報知情報の表示を用いて、視覚的な報知を行うことにより、視覚的演出によりユーザに十分な報知を行うことも可能である。
【0035】
また、上述した報知装置において、前記第1信号変換手段は、車両の走行中に車室内の前記シートに伝達された振動を検出して前記シート振動信号に変換し、前記第2信号変換手段は、前記車両の走行中に前記車室内に発生する振動を検出して前記入力振動信号に変換するものであってもよい。
【0036】
さらに、上述した報知方法において、前記第1信号変換ステップにおいて前記第1信号変換手段は、車両の走行中に車室内の前記シートに伝達された振動を検出して前記シート振動信号に変換し、前記第2信号変換ステップにおいて前記第2信号変換手段は、前記車両の走行中に前記車室内に発生する振動を検出して前記入力振動信号に変換するものであってもよい。
【0037】
本発明に係る報知装置および報知方法では、第1信号変換手段が、車両の走行中に車室内のシートに伝達された振動を検出してシート振動信号に変換し、第2信号変換手段が、車両の走行中に車室内に発生する振動を検出して入力振動信号に変換するため、車両走行によって車室内の振動レベルが変化しやすい状況において、報知信号(報知振動)の信号レベル(振動レベル)を適切かつ迅速に調整することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係る報知装置および報知方法では、シートに着座者が正しい姿勢で着座しているか否かにより値が変動する信号レベル差ΔGを用いて報知態様を決定し、決定された報知態様に基づいて報知を行うことにより、着座者の着座状態に応じて適切な報知態様を決定することができ、着座者に対して報知を十分に認識させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】実施の形態に係る車両用振動警報装置の概略構成を示したブロック図である。
図2】実施の形態に係る車両用シートを示した斜視図である。
図3】実施の形態に係る振動信号検出部の概略構成を示したブロック図である。
図4】実施の形態に係る警報情報判定部の処理内容を示したフローチャートである。
図5】警報情報判定部が警報情報を取得するタイミングと、警報情報の出力の有無と、警報情報判定部が更新信号を出力するタイミングとを示した図である。
図6】実施の形態に係るシート振動信号の信号レベル特性と、車体振動信号の信号レベル特性とを示した図であって、(a)は、ユーザが車両用シートに正しい姿勢で着座していない場合を示し、(b)は、ユーザが車両用シートに正しい姿勢で着座している場合を示している。
図7】信号レベル差ΔGと信号ゲインSGとの対応関係を示した図である。
図8】警報振動信号設定部が、車線境界線逸脱情報を受信した場合に設定する振動パターンを示した図である
図9】(a)は、1周期分のスイープ信号の振幅特性を示した図であり、(b)は、車線境界線逸脱情報に基づく警報振動信号の振幅特性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明に係る報知装置について、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明に係る報知装置の一例である、車両用振動警報装置の概略構成を示したブロック図である。車両用振動警報装置1は、警報振動信号設定部(報知信号生成手段、報知態様決定手段)10と、警報振動信号調節部(報知信号調整手段、報知態様決定手段)20と、振動信号検出部(調整レベル決定手段、レベル差算出手段、報知態様決定手段)30と、増幅部40と、スピーカ(第1信号変換手段、報知実行手段、振動変換手段、変換手段、振動出力手段)50と、加速度センサ(第2信号変換手段)60とを有している。車両用振動警報装置1は、車両に設置される。
【0041】
[エキサイタ、増幅部、加速度センサ]
本実施の形態に係る車両用振動警報装置1では、スピーカの一例として、接触面を振動させることにより振動の出力を行うエキサイタを用いる。エキサイタ50は、図2に示すように、車両用シート(シート)80を構成する座面部81の中央部であって、クッション内部に埋設される。エキサイタ50は、入力された電気信号(警報振動信号:報知信号)を振動に変換することにより、警報振動(報知振動)を出力する振動出力手段として機能する。
【0042】
また、エキサイタ50は、車両用シート80に伝達される車室内の振動をシート振動として検出し、シート振動信号に変換する振動検出手段としても機能する。エキサイタ50により変換されたシート振動信号は、振動信号検出部30へ出力される。
【0043】
増幅部40は、エキサイタ50より警報振動を出力させるための警報振動信号を、増幅する。増幅部40において増幅された警報振動信号は、低インピーダンスでエキサイタ50へ出力される。
【0044】
加速度センサ60は、車室内に発生する車体振動(入力振動)を検出する。加速度センサ60は、座面部81のクッション以外の位置、例えば、車両用シート80のフレーム85等に設置される。車室内において振動を検出する点で、加速度センサ60とエキサイタ50とは共通する。しかしながら、加速度センサ60は、座面部81のクッション以外の位置であって、車両用シート80に着座したユーザの着座状態等に影響を受けない位置に設置される点で、エキサイタ50と相異する。
【0045】
加速度センサ60を車両用シート80のフレーム85等に設置することにより、ユーザが着座しているか否かにかかわらず、またユーザが正しい姿勢で着座しているか否かにかかわらず、加速度センサ60で、車室内の振動(車両用シート80に伝達される車体振動等)を検出(収集)することができる。加速度センサ60は、検出した車体振動を車体振動信号(入力振動信号)に変換し、振動信号検出部30へ出力する。
【0046】
[振動信号検出部30]
振動信号検出部30は、エキサイタ50より警報振動が出力されていない場合に、エキサイタ50からシート振動信号を高インピーダンスで受信する。シート振動信号を高インピーダンスで受信することにより、増幅部40からの影響を低減することができる。また、振動信号検出部30は、エキサイタ50より警報振動が出力されていない場合に、加速度センサ60から車体振動信号を受信する。エキサイタ50より警報振動が出力されている場合には、シート振動信号や車体振動信号に警報振動の振動成分が含まれてしまう可能性があるため、シート振動および車体振動の振動レベルを適切に検出することができない。このため、振動信号検出部30は、エキサイタ50より警報振動が出力されていない場合に、シート振動信号および車体振動信号を受信する。
【0047】
図3は、振動信号検出部30の概略構成を示したブロック図である。振動信号検出部30は、警報情報判定部31と、ゲイン調節部32と、包絡線検波部33と、スムージング部34と、デシベル変換部35と、信号レベル判定部(調整レベル決定手段、報知態様決定手段)36とを有している。
【0048】
警報情報判定部31は、警報情報(報知情報)を取得することが可能となっている。警報情報とは、車載用の警報状況検出装置(電子制御ユニット:報知状況検出手段)90によって発せられる情報である。警報状況検出装置90は、例えば、車線境界線逸脱情報や、車両接近情報や、居眠り検知情報などの警報情報を、それぞれの警報状況に該当する間だけ連続して出力する。例えば、車両が左右の車線境界線を踏んで走行していることを、警報状況検出装置90が検知した場合、警報状況検出装置90は、車両が車線境界線を踏んでいる間だけ連続して、車線境界線逸脱情報を出力する。警報状況に該当しなくなると、警報状況検出装置90は、警報情報の出力を停止する。
【0049】
[警報情報判定部の処理]
警報情報判定部31は、ゲイン調節部32と、包絡線検波部33と、スムージング部34と、デシベル変換部35と、信号レベル判定部36とに対して、更新信号の出力および停止を行う。
【0050】
図4は、警報情報判定部31における更新信号の出力・停止処理を示したフローチャートである。警報情報判定部31は、警報状況検出装置90より警報情報を取得する処理(サンプリング処理)を行う(S.1)。そして、警報情報判定部31は、警報情報を取得できたか否かの判断を行う(S.2)。警報情報を取得できなかった場合(S.2においてNoの場合)、警報情報判定部31は、ゲイン調節部32と、包絡線検波部33と、スムージング部34と、デシベル変換部35と、信号レベル判定部36とに対して、更新信号を出力し(S.3)、更新信号の出力・停止処理を終了する。
【0051】
一方で、警報情報を取得できた場合(S.2においてYesの場合)、警報情報判定部31は、ゲイン調節部32と、包絡線検波部33と、スムージング部34と、デシベル変換部35と、信号レベル判定部36とに対して、更新信号を出力せずに(更新信号を停止して)(S.4)、更新信号の出力・停止処理を終了する。図4に示した警報情報判定部31における更新信号の出力・停止処理は、一定の更新タイミングで繰り返し実行される。
【0052】
図5は、警報情報判定部31が警報情報を取得する処理(サンプリング処理、S.1)の実行タイミングと、警報情報の出力の有無と、警報情報判定部31が更新信号を出力する処理(S.3)の実行タイミングとを示した図である。
【0053】
図5に示すように、警報情報判定部31が警報情報を取得する処理(サンプリング処理、S.1)は、一定の更新タイミングで周期的に実行される。また、警報情報は、警報状況に該当する期間だけ、警報状況検出装置90から出力される。従って、警報情報判定部31より更新信号を出力する処理は、警報情報が出力されていない期間であって、警報情報判定部31が警報情報を取得する処理(サンプリング処理)を実行する更新タイミングの時だけ実行される。図5では、時間t1までの更新タイミングで、警報情報判定部31が更新信号を出力する。
【0054】
しかしながら、警報情報が出力される時間t1から時間t2までの間、警報情報判定部31は、更新信号の出力を行わない(更新信号を停止する)。そして、警報情報判定部31は、警報情報の出力が終了した時間t2以降の更新タイミングで、更新信号の出力を再開する。
【0055】
更新信号が警報情報判定部31より周期的に出力されている間、ゲイン調節部32と、包絡線検波部33と、スムージング部34と、デシベル変換部35と、信号レベル判定部36とは、次述する処理を実行する。警報情報判定部31による周期的な更新信号の出力が停止された場合、ゲイン調節部32と、包絡線検波部33と、スムージング部34と、デシベル変換部35と、信号レベル判定部36は、最後に更新信号を受信した時に実行した処理の結果(シート振動信号の信号レベルの値や、車体振動信号の信号レベルの値等)のデータ(値)を維持する。そして、更新信号の出力が停止されている間(図5に示す時間t1から時間t2までの区間)、つまり、警報情報判定部31に対して警報情報が入力されている間、ゲイン調節部32と、包絡線検波部33と、スムージング部34と、デシベル変換部35と、信号レベル判定部36は、維持されたデータ(値)に基づいて処理を継続する。
【0056】
[ゲイン調節部、包絡線検波部、スムージング部、デシベル変換部]
ゲイン調節部32は、エキサイタ50より受信したシート振動信号の信号レベルを調節する。エキサイタ50は、警報振動を出力するための振動出力手段としての機能と、車両用シート80に伝達されたシート振動を検出するための振動検出手段との2つの機能を備えるため、車体振動を検出することだけを目的として設置される加速度センサ60と、振動の検出感度に差異が生じる可能性がある。このため、ゲイン調節部32において、エキサイタ50により検出されるシート振動信号の信号レベルを調節することにより、エキサイタ50と加速度センサ60とに同じ大きさの振動が入力される場合に、エキサイタ50および加速度センサ60によって変換された信号の信号レベルを、同じレベルにすることができる。
【0057】
包絡線検波部33は、エキサイタ50よりシート振動信号を取得して、シート振動信号の包絡線を検波する。また、包絡線検波部33は、加速度センサ60より車体振動信号を取得して、車体振動信号の包絡線を検波する。
【0058】
スムージング部34は、包絡線検波部33により検波されたシート振動信号の包絡線と、車体振動信号の包絡線とのそれぞれに対して、ローパスフィルタを用いたスムージング処理を行う。スムージング部34によるスムージング処理によって、路面のギャップ等を車両が通過するときに発生する非定常的な振動の振動レベル変化を低減させることができる。
【0059】
デシベル変換部35は、スムージング部34によりスムージング処理されたシート振動信号と車体振動信号とのそれぞれの信号を、デシベル単位の信号(デシベル信号)に変換する。
【0060】
ゲイン調節部32と、包絡線検波部33と、スムージング部34と、デシベル変換部35と、信号レベル判定部36とは、既に説明したように、警報情報判定部31が周期的に更新信号を出力している間、それぞれの処理を実行し、更新信号の出力が停止されている間、最後に更新信号を受信した時のデータ(値)を維持して処理を実行する。そして、警報情報判定部31に対する警報情報の入力が停止され、警報情報判定部31による更新信号の出力が再開された場合には、新たにエキサイタ50から受信したシート振動信号および加速度センサ60から受信した車体振動信号に基づいて、ゲイン調節部32と、包絡線検波部33と、スムージング部34と、デシベル変換部35と、信号レベル判定部36がそれぞれの処理を実行する。
【0061】
[信号レベル判定部]
信号レベル判定部36は、デシベル変換部35により求められたシート振動信号の信号レベルの値と、車体振動信号の信号レベルの値との差によって、警報振動信号の信号レベル(警報振動の振動レベル)を調整するための信号ゲインSG(調整レベル)を決定する。
【0062】
図6(a)(b)は、信号レベル判定部36において、デシベル変換部35より取得したシート振動信号の信号レベル特性(信号レベルの時間変化)と、車体振動信号の信号レベル特性とを示した図である。図6(a)は、ユーザが車両用シート80に正しい姿勢で着座していない場合を示しており、図6(b)は、ユーザが車両用シート80に正しい姿勢で着座している場合を示している。
【0063】
図6(a)(b)に示す時間t1とt2とは、図5に示した更新信号の更新タイミングの時間t1およびt2に該当する。時間t1は、警報情報判定部31において警報情報が受信される直前のタイミングを示す。信号レベル判定部36において、時間t1のタイミングでデシベル変換部35より取得した車体振動信号の信号レベルの値をG′(dB)とする。
【0064】
時間t1の次に、警報情報判定部31で更新信号が出力される時間は時間t2である。このため、時間t1から時間t2の直前までの間、車体振動信号の信号レベルの値はG′に維持(ホールド)される。そして、時間t2において警報情報判定部31が更新信号を出力すると、デシベル変換部35により新たな車体振動信号の信号レベルの値が求められ、信号レベル判定部36において取得される。
【0065】
また、ユーザが車両用シート80に正しい姿勢で着座していない場合(図6(a))に、信号レベル判定部36において、時間t1のタイミングでデシベル変換部35より取得したシート振動信号の信号レベルの値をG1(dB)とし、ユーザが車両用シート80に正しい姿勢で着座している場合(図6(b))に、時間t1のタイミングで取得したシート振動信号の信号レベルの値をG2(dB)とする。車体振動信号と同様に、時間t1から時間t2の直前までの間、シート振動信号の信号レベルの値はG1およびG2に維持(ホールド)される。そして、時間t2において警報情報判定部31が更新信号を出力すると、デシベル変換部35により新たなシート振動信号の信号レベルの値が求められ、信号レベル判定部36において取得される。
【0066】
ユーザが車両用シート80に正しい姿勢で着座していない場合におけるシート振動信号の信号レベルG1(dB)と、正しい姿勢で着座している場合におけるシート振動信号の信号レベルG2(dB)とを比較する。ユーザが車両用シート80に正しい姿勢で着座している場合(図6(b)の場合)には、座面部81のクッションへの圧力が大きくなる。クッションへの圧力が大きい場合には、車両走行時などに座面部81のクッションを介してエキサイタ50へ伝達される路面等からの振動が抑えられることになり、エキサイタ50で検出されるシート振動信号の信号レベルが低下する傾向がある。一方で、ユーザが車両用シート80に正しい姿勢で着座していない場合(図6(a)の場合)には、座面部81のクッションへの圧力が小さくなる。クッションへの圧力が小さい場合には、車両走行時などに座面部81のクッションを介してエキサイタ50へ伝達される路面等からの振動が、クッションへの圧力が大きい場合に比べて抑制されないため、エキサイタ50で検出されるシート振動信号の信号レベルが比較的高くなる傾向がある。
【0067】
なお、加速度センサ60は、車両用シート80のフレーム等に設置されている。このため、加速度センサ60で検出される車体振動信号の信号レベルG′(dB)は、ユーザが正しい姿勢で着座しているか否かによる影響を受けない。
【0068】
次に、車体振動信号の信号レベルG′(dB)からシート振動信号の信号レベルG1(dB)あるいはG2(dB)を引いた値(信号レベル差)ΔGを考える。図6(a)(b)に示すように、ユーザが車両用シート80に正しい姿勢で着座していない場合(図6(a)の場合)のシート振動信号の信号レベルG1は、ユーザが車両用シート80に正しい姿勢で着座している場合(図6(b)の場合)のシート振動信号の信号レベルG2よりも値が高くなる。加速度センサ60で検出される車体振動信号の信号レベルG′(dB)は、ユーザが正しい姿勢で着座しているか否かによる影響を受けないため、車体振動信号の信号レベルG′から、シート振動信号の信号レベルG1あるいはG2の値を減算した信号レベル差ΔGは、G′−G1<G′−G2となる。つまり、ユーザが車両用シート80に正しい姿勢で着座していない場合の信号レベル差ΔG=G′−G1の方が、ユーザが車両用シート80に正しい姿勢で着座している場合の信号レベル差ΔG=G′−G2よりも、値が小さくなる。
【0069】
このことから、信号レベル差ΔGに応じて警報振動信号の信号レベルを調整することによって、ユーザの着座状態に応じて警報振動の振動レベルを調整することができる。従って、ユーザの着座姿勢の違いにより生じ得る警報振動の体感上の違いを、着座状態にかかわらず等しい強さとなるように調整することができる。
【0070】
信号レベル判定部36は、時間t1や時間t2のタイミングにおいて、車体振動信号の信号レベルの値からシート振動信号の信号レベルの値を減算することによって、信号レベル差ΔGを算出する。そして、算出された信号レベル差ΔGに基づいて、警報振動信号の信号ゲインSG(調整レベル)を決定する。
【0071】
図7は、信号レベル差ΔGと信号ゲインSGとの対応関係を示した図である。信号レベル差ΔGの値が小さい場合とは、上述したように、ユーザが車両用シート80に正しい姿勢で着座していない場合である(図6(a))。この場合には、座面部81のクッションへの圧力が小さくなることから、クッションにおける振動伝搬の減衰量が大きくなる。このため、エキサイタ50を介してユーザが体感する警報振動の振動レベルは、低い値となる。従って、信号レベル差ΔGの値が小さい場合には、警報振動信号の信号レベルを高い値に設定することにより、ユーザが体感する警報振動の振動レベルを高めることができる。
【0072】
一方で、信号レベル差ΔGの値が大きい場合とは、上述したように、ユーザが車両用シート80に正しい姿勢で着座している場合である(図6(b))。この場合には、座面部81のクッションへの圧力が大きくなることから、クッションにおける振動伝搬の減衰量が小さくなる。このため、エキサイタ50を介してユーザが体感する警報振動の振動レベルは、比較高い値となる。従って、信号レベル差ΔGの値が大きい場合には、警報振動信号の信号レベルを低い値に設定することにより、ユーザが体感する警報振動の振動レベルが高くなりすぎてしまうことを防止することができる。
【0073】
図7に示すように、信号レベル差ΔGの値に反比例するように、警報振動信号の信号ゲインSGの値を設定することは、クッションに付加される圧力に応じて信号ゲインSGを調節することに該当する。従って、ユーザが車両用シート80に正しい姿勢で着座していない場合には、警報振動信号の信号ゲインSGを大きくすることができ、ユーザが車両用シート80に正しい姿勢で着座している場合には、警報振動信号の信号ゲインSGを小さくすることができる。
【0074】
信号レベル判定部36において決定された警報振動信号の信号ゲインSGは、警報振動信号調節部20へ出力される。
【0075】
[警報振動信号設定部]
警報振動信号設定部10は、警報状況検出装置90より取得した警報情報に基づいて振動パターン信号を生成する。図8は、警報振動信号設定部10が、警報情報として車線境界線逸脱情報を受信した場合に設定する振動パターンを示した図である。車線境界線逸脱情報における振動パターンは、1周期が0.5secの信号を3周期分設定することによって、1パターン分の振動パターンが構成される。具体的には、図8に示すように、2周期分だけ連続して信号レベルをON(図8では、信号レベル1)に設定し、その後1周期分だけ信号レベルをOFF(図8では、信号レベル0)に設定することにより1パターン分の振動パターンが生成される。1パターンの振動パターンは1.5secの長さとなる。警報振動信号設定部10では、警報状況検出装置90より警報情報が入力されている間、図8に示す振動パターンからなる振動パターン信号を連続的に生成する。警報振動信号設定部10により生成された振動パターン信号は、警報振動信号調節部20へ出力される。
【0076】
[警報振動信号調節部]
警報振動信号調節部20は、警報振動信号設定部10より取得した振動パターン信号と、振動信号検出部30から取得した信号ゲインSGの値とに基づいて、警報振動信号を生成する。
【0077】
図9(a)は、1周期分(0.5sec)のスイープ信号の振幅特性(波形)を示した図である。図9(a)に示すスイープ信号は、中心周波数を44Hzとし、低域側の下限の周波数を36Hzとし、高域側の上限の周波数を52Hzとした周波数範囲で、連続的に周波数が変更(スイープ)された信号である。スイープ信号の振幅は、基本振幅値として1に設定されている。
【0078】
次に、警報振動信号調節部20は、生成された1周期分のスイープ信号を、振動パターン信号の振動パターンに応じて組み合わせることによって、振動レベルがON・OFF設定された警報振動信号を生成する。図9(b)は、車線境界線逸脱情報に基づく警報振動信号の振幅特性を示している。図9(b)に示すように、警報振動信号の振動パターンでは、1パターンが1.5secの信号が繰り返し生成される。警報振動信号の振幅も、基本振幅値として1に設定される。
【0079】
また、警報振動信号調節部20は、図9(b)に示した警報振動信号の信号レベルを、信号ゲインSGに基づいて調整する。例えば、ユーザが車両用シート80に正しい姿勢で着座している場合であって、信号レベル差ΔGが15dBの値である場合には、図7に示すように信号ゲインSGの値が0dBとなる。信号ゲインSGが0dBの場合、警報振動信号調節部20は、図9(b)に示した警報振動信号の振幅を変更しない。
【0080】
また、例えば、正しい姿勢で着座していたユーザが、着座姿勢を変えてしまい、検出される信号レベル差ΔGが9dBの値に変化した場合には、図7に示すように信号ゲインSGの値が6dBに変更される。信号ゲインSGが6dBに変更された場合に、警報振動信号調節部20は、警報振動信号の振幅を図9(b)に示した基本振幅値の2倍の値に変更する。信号ゲインSGが6dBの場合に警報振動信号の振幅を2倍に変更する理由は、警報振動信号の信号レベルを6dB増加することは、振幅値を2倍に変更することに等しいからである。
【0081】
このようにして警報振動信号調節部20によって生成された警報振動信号は、警報振動信号設定部10において警報情報が受信される間だけ継続して、増幅部40へ出力される。そして、増幅部40で振幅(信号レベル)の調整が行われた警報振動信号は、エキサイタ50において警報振動に変換されて、車両用シート80において振動として出力される。
【0082】
以上説明したように、実施の形態に係る車両用振動警報装置1では、エキサイタ50を振動検出手段として用いて、座面部81のクッションの内部に埋設することにより、エキサイタ50でシートの振動を検出してシート振動信号を求める。このようにエキサイタ50により求められるシート振動信号の信号レベルによって、ユーザの着座状態を判断することができる。
【0083】
そして、ユーザの着座状態に影響しないように車両用シート80のフレーム等に設置された加速度センサ60によって、車体振動を検出することにより車体振動信号を求める。加速度センサ60で求められた車体振動信号の信号レベルから、エキサイタ50で求められたシート振動信号の信号レベルを減算して信号レベル差ΔGを算出し、信号レベル差ΔGの値に応じて警報振動信号の信号レベルを調節するための信号ゲインSGを決定する。ここで、信号ゲインSGの値は、信号レベルΔGの値に反比例するようにして決定される。このため、信号レベル差ΔGの値が増加するに従って、信号ゲインSGの値が減少するように値が決定される。
【0084】
信号レベル差ΔGが大きい場合、つまり、ユーザが車両用シート80に正しい姿勢で着座している場合には、座面部81のクッションに対する圧力が大きいことから、着座したユーザがエキサイタ50を介して警報振動を体感する時の振動レベルが比較的高い値となる。このため、信号レベル差ΔGが大きい場合に、信号ゲインSGの値を小さめに設定することによって、比較的小さな振動レベルの警報振動をエキサイタ50から出力させても、ユーザに対して十分な大きさの警報振動を体感させることが可能になる。
【0085】
一方で、信号レベル差ΔGが小さい場合、つまり、ユーザが車両用シート80に正しい姿勢で着座していない場合には、座面部81のクッションに対する圧力が小さいことから、着座したユーザがエキサイタ50を介して警報振動を体感する時の振動レベルを比較的高く設定しなければ、十分な警報振動を体感させることが難しくなる。このため、信号レベル差ΔGが小さい場合に、信号ゲインSGの値を大きく設定することによって、十分に大きな振動レベルの警報振動をエキサイタ50から出力させることができ、ユーザに対して確実に警報振動を体感させることが可能になる。
【0086】
このように信号レベル差ΔGに応じて信号ゲインSGを決定し、信号ゲインSGに基づいて警報振動信号の信号レベルを調整して、エキサイタ50から警報振動を出力する。これにより、ユーザの着座状態に応じて警報振動信号の信号レベルを変更・調整することができ、警報の認知性向上を図ることが可能となる。
【0087】
また、車両用振動警報装置1では、警報状況検出装置90によって警報情報が出力されており、エキサイタ50からシート振動信号を取得することができなくなった場合であっても、直前のシート振動信号の信号レベルの値と、直前の車体振動信号の信号レベルの値とに基づいて、信号レベル差ΔGを算出して、警報振動信号の信号レベルを設定することができる。このため、警報状況検出装置90による警報情報の出力が終了した直後であっても、適切に警報振動信号の信号レベルを設定することが可能になる。
【0088】
また、本実施の形態に係る車両用振動警報装置1では、電気信号から振動への変換(振動出力)と、振動から電気信号への変換(振動検出)という可逆性のある処理を1台のエキサイタ50で行う。このため、装置の簡素化を図ることが可能になる。
【0089】
以上、本発明に係る報知装置および報知方法について、一例を示して詳細に説明を行った。しかしながら、本発明に係る報知装置および報知方法は、実施の形態に示した例には限定されない。
【0090】
実施の形態に係る車両用振動警報装置1では、車両用シート80を構成する座面部81の中央部であってクッションの内部に、エキサイタ50が設けられる場合について説明した。しかしながら、エキサイタ50の設置位置は、座面部81には限定されず、図2に示す背もたれ部82や、ヘッドレスト部83に設置するものであってもよい。但し、ユーザが車両用シート80に着座した状態において、背もたれ部82やヘッドレスト部83はユーザの背中側に位置するため、座面部81のように常に大きな圧力(体重等)が付加される状態にはならない。このため、振動信号検出部30において、加速度センサ60による車体振動信号の信号レベルの値から、エキサイタ50によるシート振動信号の信号レベルの値を減算した信号レベル差ΔGが、所定以下の値(例えば、3dBなど)になる場合を、背もたれ部82に体重がほとんどかけられていない状態として予め設定し、この場合にユーザが正しい姿勢で着座していないと判断する構成にすることも可能である。
【0091】
このように背もたれ部82等にエキサイタ50が設置される場合には、エキサイタ50から警報振動を出力させても、ユーザが振動を認識できない場合があり得る。このため、ユーザに警報を発する場合には、エキサイタ50による警報振動の出力に加えて(あるいは、換えて)、警報音や警報注意表示のような聴覚的あるいは視覚的に注意を行う手段を併設(あるいは、置き換え)するものであってもよい。
【0092】
例えば、異なる報知方法によってユーザに報知を行う複数の報知装置を予め用意しておき、求められた信号レベル差ΔGの大きさに応じて、複数の報知装置のうちからいずれかの報知装置を決定し、決定された報知装置を用いて報知を行う構成としてもよい。信号レベル差ΔGが大きい場合には、ユーザが車両用シート80に正しい姿勢で着座していると判断することができる。この場合には、報知装置として振動発生装置(振動出力手段)を用いて、振動発生装置のエキサイタ50より警報振動を出力してユーザに警報振動を体感させる。このように報知装置として振動発生装置を用いて、ユーザに警報振動を体感させることにより、効果的な報知を行うことが可能となる。
【0093】
しかしながら、信号レベル差ΔGが小さい場合には、ユーザが車両用シート80に正しい姿勢で着座していないと判断することができる。この場合には、報知装置として振動発生装置を用いてエキサイタ50より警報振動を出力しても、ユーザが十分な大きさの警報振動を体感できない場合があり得る。また、上述したように、背もたれ部82や、ヘッドレスト部83等にエキサイタ50が設置される場合にも、常に大きな圧力(体重等)が背もたれ部82等に付加される状態にはならないため、信号レベル差ΔGが小さくなる傾向がある。このように、報知装置として振動発生装置を用いてエキサイタ50より警報振動を出力しても、ユーザが十分な大きさの警報振動を体感できない場合があり得る。
【0094】
従って、信号レベル差ΔGが小さい場合には、報知装置として振動発生装置ではなく、他の方法による報知装置、例えば、警報音発生装置(報知音出力手段)を用いてもよい。信号レベル差ΔGが小さい場合に、音をスピーカ等より出力させて警報音により報知を行うことによって、ユーザに十分な報知を行うことができる。このように、報知装置として警報音発生装置を用いることにより、ユーザが振動による警報(警報振動)を十分に体感できない場合であっても、音による警報(警報音)により、効果的な報知を行うことができる。
【0095】
また、車室内の走行振動や走行音等が大きい場合には、報知装置として振動発生装置や警報音発生装置を用いても、ユーザに十分な報知を行うことができない場合があり得る。さらに、車室内の走行振動や走行音等が大きい場合には、シート振動信号の信号レベルも入力振動信号の信号レベルも高い値を示し、信号レベル差ΔGが小さい値になってしまう場合がある。このため、レベル差ΔGが小さい場合には、報知装置として警報表示装置(報知情報表示手段)を用いて、視覚的な警報を行うことにより、警報音や警報振動ではユーザに十分な報知を行うことができない場合であっても、視覚的演出によりユーザに十分な報知を行うことも可能である。
【0096】
このように、複数の報知装置(例えば、振動発生装置、警報音発生装置、あるいは、警報表示装置)を予め用意し、信号レベル差ΔGに応じて、複数の報知装置の中から少なくとも1つの報知装置を決定して報知を行うことにより、ユーザの着座状態や、車室内の状態(走行音や走行振動の有無等)に応じて、最適な報知装置を決定することができ、ユーザに対して効果的な報知を行うことが可能になる。
【0097】
なお、予め用意される報知装置は、ユーザに報知を認識させる方法(体感方法)が異なる装置であってもよい。例えば、上述したように、触覚(体感)により報知(警報振動)を認識させる振動発生装置、聴覚により報知(警報音)を認識させる警報音発生装置、視覚により報知(警報表示)を認識させる警報表示装置など、人間の異なる感覚(五感)により報知を認識させる装置を、予め用意する報知装置とすることができる。
【0098】
また、予め用意される報知装置は、ユーザに報知を認識させる方法(体感方法)が同じ装置を複数用意するものであってもよい。例えば、2つの振動発生装置(第1振動発生装置と第2振動発生装置)を予め用意し、第1振動発生装置を車両用シート80に設置し、第2振動発生装置をステアリング内部等に設置する。信号レベル差ΔGが大きい場合には、ユーザが車両用シート80に正しい姿勢で着座していると判断できるので、第1振動発生装置で振動を出力させることにより、ユーザにシートでの振動を体感させることができる。信号レベル差ΔGが小さい場合には、ユーザが車両用シート80に正しい姿勢で着座していないと判断できるので、シートの振動をユーザに体感させることが容易ではない。この場合には、第2振動発生装置で振動を出力させることにより、ユーザにステアリングでの振動を体感させることが可能となる。
【0099】
さらに、予め用意する報知装置は1つであっても、その報知装置による報知を信号レベル差ΔGに応じて変化させることによって、結果的に複数の報知態様を用いて報知を行うものであってもよい。例えば、実施の形態に係る車両用振動警報装置1では、信号レベル差ΔGに応じて信号ゲインSGを決定し、信号ゲインSGに基づいて警報振動信号の信号レベルを調整して、エキサイタ50から警報振動を出力する。このように、信号レベル差ΔGに応じて、警報振動信号の信号レベルを変更・調整する場合には、出力される警報振動の大きさが信号レベル差ΔGに応じて変化されるため、信号レベル差ΔGに応じて報知態様を決定して報知を行う場合の一例に該当する。また、予め複数の報知装置を用意して、信号レベル差ΔGに応じて報知装置を決定して報知を行う場合も、信号レベル差ΔGに応じて報知態様を決定して報知を行う場合の一例に該当する。
【0100】
また、実施の形態に係る車両用振動警報装置1では、エキサイタ50が座面部81の中央部に1つだけ設置される場合を一例として示して、説明を行ったが、エキサイタ50は、必ずしも1つには限定されず、複数設置するものであってもよい。例えば、図2に符号a〜dで示すように、座面部81の四隅近傍にそれぞれ1つずつ、合計4つのエキサイタを設置する構成とすることも可能である。エキサイタを複数設置した場合には、それぞれのエキサイタにより検出されるシート振動信号の信号レベルの値を、加速度センサ60によって検出される車体振動信号の信号レベルの値から差し引くことにより、それぞれのエキサイタ毎に、信号レベル差ΔGを算出する。
【0101】
また、実施の形態に係る車両用振動警報装置1の振動信号検出部30において、加速度センサ60によって検出される車体振動信号の信号レベルの値から、エキサイタ50により検出されるシート振動信号の信号レベルの値を差し引くことにより求められる信号レベル差ΔGの値が、所定以上の値(例えば、30dB)の場合には、加速度センサ60あるいはエキサイタ50に不具合が発生している旨のエラーメッセージ等を出力させる構成にすることも可能である。このようなエラーメッセージを出力させることによって、車両用振動警報装置1における故障診断機能を実装することが可能になる。
【0102】
また、実施の形態に係る車両用振動警報装置1のエキサイタ50および加速度センサ60において検出する振動は、車両の走行における路面やエンジンからの振動が該当し、また、車両停止時におけるエンジンからの振動などが主に該当するが、車外から侵入する低域音や、車内に設置されるスピーカによって出力(再生)された低域音などの振動も含まれ得る。これらの低域音に基づく振動に関しても、車室内における振動として、エキサイタ50および加速度センサ60で検出することにより、実施の形態に係る車両用振動警報装置1で説明した効果と、同様の効果を奏することが可能である。
【0103】
また、実施の形態に係る車両用振動警報装置1では、振動出力手段および振動検出手段としてエキサイタ50を用いる場合を一例として示して説明を行った。しかしながら、振動出力手段および振動検出手段として用いられるものは、必ずしもエキサイタ50には限定されない。電気信号から振動への変換(振動出力)と、振動から電気信号への変換(振動検出)という可逆性のある処理を1つの手段で行うことができるものであれば、他のスピーカやマイクロフォン等であっても、本発明に係る報知装置および報知方法の第1信号変換手段および振動変換手段として用いることが可能である。
【0104】
さらに、実施の形態に係る車両用振動警報装置1では、スイープ信号を用いて警報振動信号を生成する場合について説明したが、警報振動信号は必ずしもスイープ信号に基づいて生成されるものには限定されず、スイープしない所定の周波数の信号に基づいて生成されるものであってもよい。また、スイープ信号を用いる場合であっても、スイープされる周波数範囲は、実施の形態に示した周波数範囲(36Hzから52Hzまでの周波数範囲)に限定されるものではない。
【0105】
また、実施の形態に係る振動信号検出部30では、警報情報判定部31による継続的な更新信号の出力が停止された場合に、ゲイン調節部32と、包絡線検波部33と、スムージング部34と、デシベル変換部35と、信号レベル判定部36とで、最後に更新信号を受信した時に実行した処理のデータ(値)を維持する場合を一例として説明した。また、更新信号の出力が停止されている間、つまり、警報情報判定部31に対して警報情報が入力されている間、ゲイン調節部32と、包絡線検波部33と、スムージング部34と、デシベル変換部35と、信号レベル判定部36とが、維持されたデータ(値)に基づいて処理を継続する場合について説明した。
【0106】
しかしながら、本発明に係る報知装置および報知方法は、実施の形態に係る警報情報判定部31により周期的な更新信号の出力が停止された場合に、各機能部32〜36の全てで、最後に更新信号を受信した時の処理のデータ(値)を維持し、更新信号の出力が停止されている間に、そのデータ(値)に基づいて、各機能部32〜36による処理を継続する構成には限定されない。少なくとも、更新信号の出力が停止される場合に、更新信号停止の直前に算出された信号ゲインSGの値が、信号レベル判定部36から警報振動信号調節部20へ出力される構成であれば十分である。
【0107】
このため、例えば、周期的な更新信号の出力が停止された場合に、ゲイン調節部32と、包絡線検波部33と、スムージング部34と、デシベル変換部35とが処理を停止する構成にしてもよい。このように、各機能部32〜35が処理を停止した場合であっても、警報情報判定部31に警報情報が入力される(更新信号が停止される)直前に算出された信号ゲインSGの値を維持したまま(ホールドされた状態で)、信号レベル判定部36が警報振動信号調節部20へ信号ゲインSGの値を継続して出力する構成とすることにより、実施の形態に示した効果と同等の効果を奏することが可能である。
【0108】
また、各機能部32〜36のいずれかが処理を停止し、他のいずれかが、最後に更新信号を受信した時のデータ(値)を用いて処理を実行する構成とするものであってもよく、この場合であっても、警報情報判定部31への警報情報の入力直前に算出した信号ゲインSGの値を、信号レベル判定部36が警報振動信号調節部20へ出力できれば十分である。
【符号の説明】
【0109】
1 …車両用振動警報装置(報知装置)
10 …警報振動信号設定部(報知信号生成手段、報知態様決定手段)
20 …警報振動信号調節部(報知信号調整手段、報知態様決定手段)
30 …振動信号検出部(調整レベル決定手段、レベル差算出手段、報知態様決定手段)
31 …警報情報判定部
32 …ゲイン調節部
33 …包絡線検波部
34 …スムージング部
35 …デシベル変換部
36 …信号レベル判定部(調整レベル決定手段、報知態様決定手段)
40 …増幅部
50 …エキサイタ(第1信号変換手段、報知実行手段、振動変換手段、変換手段、振動出力手段)
60 …加速度センサ(第2信号変換手段)
80 …車両用シート(シート)
81 …座面部(シートのクッション)
82 …背もたれ部
83 …ヘッドレスト部
85 …フレーム
90 …警報状況検出装置(報知状況検出手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9