(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記把持形態を実現しうる前記使用形態の候補毎に、前記把持装置が現在位置および現在姿勢から前記障害物と干渉することなく前記把持位置および把持姿勢に到達できるか否かを判断可能な、判断部を備え、
前記第一決定部は、現在位置および現在姿勢から前記障害物と干渉することなく前記把持位置および把持姿勢に到達できる前記候補の中から、前記使用形態を決定する、請求項2に記載の把持制御装置。
前記第一情報、前記第二情報、および前記第三情報のうち少なくともいずれか一つに基づいて、前記把持形態を実現しうる前記使用形態の候補毎に、少なくとも一つの物理量に基づいたスコアであって前記第一決定部における決定の指標とするスコアを算出するスコア算出部を備え、
前記第一決定部は、前記スコアが最も高い前記候補を、前記使用形態として決定する、請求項1〜3のうちいずれか一つに記載の把持制御装置。
前記制御部は、前記第一決定部によって使用が決定された複数の把持部材に含まれる第一把持部材と障害物との距離が所定距離以内となる場合であって、当該第一把持部材以外の把持部材によって対象物を把持できる場合には、前記第一把持部材と障害物との距離が所定距離以内である状態において前記第一把持部材が非作動となるよう前記把持装置を制御する、請求項1〜6のうちいずれか一つに記載の把持制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、把持制御装置の例示的な実施形態および変形例が開示される。以下に示される実施形態および変形例の構成や制御(技術的特徴)、ならびに当該構成や制御によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。
【0008】
また、以下の実施形態および変形例には、同様の構成要素が含まれている。以下では、それら同様の構成要素には共通の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される場合がある。また、本明細書において、序数は、構成要素等を区別するために便宜上付与されており、優先順位や順番を示すものではない。
【0009】
[第1実施形態]
図1は、マニピュレータ10の構成図である。マニピュレータ10は、
図1には不図示の制御装置20(
図4参照)とともに、マニピュレータシステム100を構成している。マニピュレータ10は、ロボットアームとも称されうる。マニピュレータ10は、対象物Tを把持し、当該対象物Tが存在した位置から別の場所に移す。マニピュレータ10は、把持装置の一例である。マニピュレータシステム100は、把持システムの一例である。制御装置20は、把持制御装置の一例である。
【0010】
マニピュレータ10は、複数のアーム11が関節12において回動可能に連結された所謂多関節アームとして構成されている。制御装置20は、
図1には不図示の第一アクチュエータ15(
図4参照)の作動を制御することにより、各関節12における二つのアーム11の角度を変化させ、これによりマニピュレータ10の位置や姿勢を変化させる。関節12は、例えば、回転関節や、ボールジョイント等である。第一アクチュエータ15は、制御装置20が生じる電気的な制御信号によって駆動される。第一アクチュエータ15は、例えば、モータや、人工筋肉等である。なお、マニピュレータ10は、直動関節を含んでもよい。アーム11は、可動部材の一例である。
【0011】
マニピュレータ10は、その先端に、エンドエフェクタ13を有している。エンドエフェクタ13は、可動部材の一例である。
【0012】
図2は、エンドエフェクタ13の側面図、
図3は、エンドエフェクタ13の
図2の矢印IIIから見た図である。
【0013】
エンドエフェクタ13は、一例として、複数の吸着パッド14A〜14E(14)を有したバキュームチャックとして構成されている。制御装置20は、
図1には不図示の第二アクチュエータ16(
図4参照)の作動を制御することにより、吸着パッド14からの空気の吸引を選択的に作動させ、これにより対象物Tを吸着して保持することができる。また、制御装置20は、対象物Tを吸着している吸着パッド14からの空気の吸引を停止するよう第二アクチュエータ16を制御することにより、対象物Tをリリースすることができる。第二アクチュエータ16は、例えば、空気圧系の電動ポンプや電動バルブ等である。吸着パッド14は、吸着部や把持部等とも称されうる。吸着パッド14は、把持部材の一例である。第二アクチュエータ16は、アクチュエータの一例である。
【0014】
吸着パッド14による対象物Tの吸着は、対象物Tの吸着可能な面(吸着面、対象面)に近接した位置および姿勢で実行される必要がある。よって、制御装置20は、エンドエフェクタ13が対象物Tの吸着(把持)を開始する際には、エンドエフェクタ13が対象物Tを吸着する(把持する)ことが可能な把持位置および把持姿勢となるよう、第一アクチュエータ15を制御する。把持位置は、把持開始位置とも称され、把持姿勢は、把持開始姿勢とも称されうる。
【0015】
図2に示されるように、複数の吸着パッド14は、エンドエフェクタ13の端面13aから突出している。複数の吸着パッド14は、同一スペックを有している。吸着パッド14は、略円筒形のノズルである。複数の吸着パッド14の先端14a(開口縁)は、端面13aに沿って、言い換えると略同一平面に沿って配置されている。
【0016】
図3に示されるように、本実施形態では、吸着パッド14の数は5である。四つの吸着パッド14A〜14Dが、
図3中に破線で示す仮想正方形Sの角部に位置するように配置され、一つの吸着パッド14Eが、当該仮想正方形Sの中心(二つの対角線の交点)に位置するように配置されている。よって、複数の吸着パッド14は、それらの図心Cf0(
図3における重心)を中心とする回転対称(4回対称)に配置されている。制御装置20は、エンドエフェクタ13を、図心Cf0を通り吸着パッド14の先端14aが略沿う仮想平面(または端面13a)と直交する軸Ax(
図2,3参照)回りに回転させることにより、複数の吸着パッド14の同一配置を、軸Ax回りの複数(四つ)の回転角度で得ることができる。なお、軸Axは、マニピュレータ10の関節12における回転軸とは限らない。
【0017】
図4は、制御装置20のブロック図である。制御装置20は、演算処理部21と、主記憶部22と、補助記憶部23と、を有している。演算処理部21は、例えば、central processing unit(CPU)である。制御装置20は、主記憶部22として、read only memory(ROM)や、random access memory(RAM)等を含み、補助記憶部23として、hard disk drive(HDD)や、solid state drive(SSD)、フラッシュメモリ等を含む。
【0018】
演算処理部21は、情報取得部21a、モデル選択部21b、把持位置姿勢決定部21c、経路算出部21d、干渉判断部21e、スコア算出部21f、パターン選択部21g、および把持制御部21hを有している。
【0019】
情報取得部21aは、対象物Tや、障害物O、マニピュレータ10の情報(特徴情報、属性情報、検出情報)を取得する。対象物Tや、障害物O、マニピュレータ10の情報は、例えば、センサ17による検出値から得られる。センサ17は、例えば、RGB−Dセンサや、カメラ、接触センサ、距離センサ等である。また、情報取得部21aは、例えば、既知の対象物Tや、障害物O、マニピュレータ10の情報を持つデータベースや、light detection and ranging、laser imaging detection and ranging(LIDAR)、補助記憶部23等から、情報を取得してもよい。また、情報取得部21aは、マニピュレータ10の情報を、第一アクチュエータ15や第二アクチュエータ16から取得してもよいし、把持制御部21hによる第一アクチュエータ15や第二アクチュエータ16への制御指令値から算出したりしてもよい。対象物Tの情報は、第一情報の一例である。マニピュレータ10の情報は、第二情報の一例である。障害物Oの情報は、第三情報の一例である。
【0020】
モデル選択部21bは、少なくとも対象物Tの情報に基づいて、吸着パッド14による把持態様を選択する。吸着パッド14による対象物Tの把持形態を、本明細書ではモデルと称する。モデル選択部21bは、選択部の一例である。
【0021】
図5は、複数のモデルを示す図である。モデルは、吸着パッド14の数および配置によって定まる吸着パッド14による把持態様の区分であり、モードとも称されうる。モデルにおいては、使用される吸着パッド14は完全には特定されていない。
図5の各モデルにおいて実線の円で示されているのが作動中の吸着パッド14であり、破線の円で示されているのが非作動中の吸着パッド14である。本実施形態では、一つの吸着パッド14を用いた把持態様としてモデル1およびモデル2が設定され、二つの吸着パッド14を用いた把持態様としてモデル3およびモデル4が設定され、三つの吸着パッド14を用いた把持態様としてモデル5およびモデル6が設定され、四つの吸着パッド14を用いた把持態様としてモデル7が設定され、五つの吸着パッド14を用いた把持態様としてモデル8が設定されている。
【0022】
モデル1となる吸着パッド14の組み合わせは、複数の吸着パッド14のレイアウトの回転対称を考慮すると、四通りある。すなわち、吸着パッド14A(
図3参照)が作動し他の吸着パッド14B〜14E(
図3参照)が非作動の場合、吸着パッド14Bが作動し他の吸着パッド14A,14C〜14Eが非作動の場合、吸着パッド14Cが作動し他の吸着パッド14A,14B,14D,14Eが非作動の場合、吸着パッド14Dが作動し他の吸着パッド14A〜14C,14Eが非作動の場合である。各モデルに属する組み合わせは、把持形態を満たす吸着パッド14の使用形態(候補)を示しており、当該使用形態(候補)を本明細書ではパターンと称する。モデル1には、四つのパターンが含まれる。パターンにおいては、使用される吸着パッド14は特定される。
【0023】
同様に回転対称を考慮すると、モデル2、モデル5、モデル6、モデル7、およびモデル8となる吸着パッド14の組み合わせは、それぞれ四通りである。言い換えると、モデル2、モデル5、モデル6、モデル7、およびモデル8には、それぞれ四つのパターンが含まれる。なお、モデル2には、非作動の吸着パッド14A〜14Dの位置が異なる四つのパターンが含まれる。
【0024】
また、モデル3およびモデル4では、回転対称を考慮すると、吸着パッド14の組み合わせは四通りであるが、二つの吸着パッド14の位置の入れ替え(反転)を考慮すると、組み合わせはさらに倍になる。したがって、モデル3およびモデル4となる吸着パッド14の組み合わせは、それぞれ八通りである。言い換えると、モデル3およびモデル4には、それぞれ八つのパターンが含まれる。
【0025】
また、
図5を見れば明らかとなるように、本実施形態では、モデルには、非作動の中央の吸着パッド14Eの両側に作動させる吸着パッド14を配置する把持形態、すなわち、モデル6,7,8において中央の吸着パッド14Eを非作動とする把持形態は、含まれていない。対象物Tの表面において中央の吸着パッド14Eを配置可能な場合にあっては、当該吸着パッド14Eを作動させた方が対象物Tをより確実に把持できるからである。
【0026】
図5の各モデル1〜8に示されるCf1〜Cf8は、吸着パッド14の図心(重心)である。
【0027】
モデル1〜8毎に、把持可能重量が定められている。モデル選択部21bは、対象物Tの重量よりも把持可能重量が大きいモデルを選択する。
【0028】
図6は、対象物Tの表面(吸着面、対象面)において検出された把持可能な対象領域Taを示す図である。また、
図7は、三つの吸着パッド14を含むモデル5において吸着パッド14が対象領域Taと面するパッド領域Paを示す図である。対象領域Taは、把持可能領域とも称されうる。対象領域Taは、例えば、対象物Tの表面のうち平面度が第一閾値以内であって面積が第二閾値以上の領域である。
図6は、二値化されたデータを示しており、当該
図6では、数値が「1」の場所が対象領域Taであり、数値が「0」の場所が非対象領域Tn(把持不能領域)である。また、
図7も二値化されたデータを示しており、
図7では、数値が「1」の場所がパッド領域Paであり、数値が「0」の場所が非パッド領域Pnである。
【0029】
モデル選択部21bは、対象物Tの対象領域Taの形状や大きさに基づいて、モデルを選択する。具体的に、モデル選択部21bは、まず、センサ17による検出値に基づいて得られた対象領域Taを示す情報から、対象領域Ta内に含まれる最大の四角形Qt(内接四角形)の大きさを示す情報、例えば、
図6に示されるような長辺Llt(長さ)および短辺Lst(長さ)を取得する。長辺Lltおよび短辺Lstも、対象領域Taを示す情報の一例である。
【0030】
そして、モデル選択部21bは、長辺Lltおよび短辺Lstに基づいて、四角形Qt内に配置可能な少なくとも一つのモデルを選択する。具体的には、例えば、補助記憶部23には、各モデルについて、
図7に示されるような当該モデルを収容可能な外接四角形Qpの長辺Llpおよび短辺Lspを示す情報が記憶されている。モデル選択部21bは、複数のモデルから、四角形Qtの長辺Lltが外接四角形Qpの長辺Llp以上であり(Llt≧Llp)、かつ四角形Qtの短辺Lstが外接四角形Qpの短辺Lsp以上である(Lst≧Lsp)モデルを、当該対象領域Taの把持形態の候補として、選択する。
【0031】
また、把持位置姿勢決定部21cは、対象領域Taに対して、把持形態の候補となったモデルにおける吸着パッド14の吸着位置(把持位置)を決定する。
図8は、
図6の対象領域Taと
図7のモデル5のパッド領域Paとの重畳度の演算結果である。具体的に、
図8内の各ピクセルに示される数値は、当該ピクセルの位置にパッド領域Paの図心Cfp(
図7における重心)が位置した場合における重畳度を示している。重畳度は、互いに重なりあっているピクセルについて、対象領域Taを含む
図6のデータにおけるピクセルの値(1または0)と、パッド領域Paを含む
図7のデータにおけるピクセルの値(1または0)とを乗算した値の、全ピクセル分の合計値(積算値)である。
図8中に太枠Fpで示されるように、把持位置は、対象領域Ta内で、重畳度が最も高い位置、
図8においては、パッド領域Paの図心が太枠Fp内となる位置に、設定される。なお、パッド領域Paを含むデータを回転角度を変更しながら、各角度位置について上記と同様の演算を実行することで、重畳度が最も高い回転角度(姿勢)を把持姿勢に決定することができる。なお、把持位置姿勢決定部21cは、少なくとも重畳度が所定値(閾値)以上となるよう把持位置を設定すればよく、上記重畳度が最も大きい位置に把持位置を設定することは必須ではない。把持位置姿勢決定部21cは、第二決定部の一例である。
【0032】
経路算出部21dは、エンドエフェクタ13の現在位置および現在姿勢から、把持位置および把持姿勢に至る移動経路を算出する。また、干渉判断部21eは、算出された移動経路でのエンドエフェクタ13の移動について、マニピュレータ10と障害物Oとの干渉の有無を判断する。
【0033】
移動経路の算出および干渉の有無の判断は、選択されたモデルに含まれるパターン(候補)毎に、実行される。
図9は、モデル選択部21bにおいて対象領域Ta(
図9には不図示)に対応したモデル2が選択され、把持位置姿勢決定部21cにおいて対象領域Taに対応したパッド領域Paの図心Cfpが算出された場合の、パターン5−1における各吸着パッド14の配置を示している。
図10は、モデル選択部21bにおいてモデル2が選択され、把持位置姿勢決定部21cにおいてパッド領域Paの図心Cfpが算出された場合の、パターン5−2における各吸着パッド14の配置を示している。
図11は、モデル選択部21bにおいてモデル2が選択され、把持位置姿勢決定部21cにおいてパッド領域Paの図心Cfpが算出された場合の、パターン5−7における各吸着パッド14の配置を示している。
図9と
図10とを比較すれば明らかとなるように、パターン5−1の場合とパターン5−2の場合とでは、対象領域Taに対する吸着パッド14A〜14Dの位置が異なるため、エンドエフェクタ13(マニピュレータ10)の現在位置および現在姿勢から把持位置および把持姿勢までの移動経路が異なることになる。また、
図9,10と
図11とを比較すれば明らかとなるように、パターン5−1およびパターン5−2の場合と、パターン5−7の場合とでは、エンドエフェクタ13の、対象領域Taに対する位置が異なるため、エンドエフェクタ13(マニピュレータ10)の現在位置および現在姿勢から把持位置および把持姿勢までの移動経路がそれぞれ異なることになる。なお、
図9〜11において、パターンの番号は、仮の番号である。
【0034】
干渉判断部21eは、
図11に示されるように、センサ17による検出値等から、パターン5−7の把持位置および把持姿勢において、エンドエフェクタ13と対象物Tの周辺の障害物O(例えば、対象物Tを収容している容器の壁)との干渉が明らかである場合には、当該パターン5−7については、パターンの選択の対象(候補)から除外する。
【0035】
図12は、エンドエフェクタ13の現在位置Pc(現在姿勢)、把持位置P1(把持姿勢)、把持位置P2(把持姿勢)、現在位置Pcから把持位置P1へ至る経路R1、および現在位置Pcから把持位置P2へ至る経路R2、を示す図である。経路算出部21dは、パターン毎に経路R1,R2を算出し、干渉判断部21eは、各経路R1,R2でのエンドエフェクタ13およびマニピュレータ10の移動について、エンドエフェクタ13およびマニピュレータ10と対象物T以外の障害物Oとの干渉の有無を演算する。
図12の例では、把持位置P1となるパターンが選択された場合、現在位置Pcから把持位置P1に至るまで、エンドエフェクタ13およびマニピュレータ10は障害物Oと干渉しないが、把持位置P2となるパターンが選択された場合、現在位置Pcから把持位置P2に至るまでの間に、エンドエフェクタ13およびマニピュレータ10は障害物Oと干渉する。干渉判断部21eは、干渉する経路R2に対応するパターン、すなわち、把持位置P2となるパターンについては、パターンの選択の対象(候補)から除外する。干渉判断部21eは、判断部の一例である。
【0036】
スコア算出部21fは、各パターン(候補)について、パターン選択部21gにおいてパターンを選択する指標(決定する指標)としてのスコアを算出する。スコア算出部21fは、スコアの各項の変数(数値、物理量)をx
i(i=1,2,・・・,n)、各項の係数(重み付け係数)をa
i(i=1,2,・・・,n)として、スコアxを以下の式(1)により算出する。
x=a
1・x
1+a
2・x
2+・・・+a
n・x
n ・・・(1)
【0037】
変数は、例えば、各パターンについて、吸着パッド14の数や、吸着パッド14の図心(重心)と対象物Tの図心(重心)との距離、現在位置および現在姿勢から把持位置および把持姿勢に至るまでの動作量(移動長、移動角度、エネルギ消費量)、現在位置および現在姿勢から把持位置および把持姿勢に至るまでの所要時間、把持位置および把持姿勢におけるエンドエフェクタ13から障害物Oまでの距離、対象領域Taの水平面との角度、対象領域Taの高さ、等である。各係数は、吸着パッド14の数が多いほどスコアが高く、吸着パッド14の図心(重心)と対象物Tの図心(重心)との距離が短いほどスコアが高く、エンドエフェクタ13から障害物Oまでの距離が短いほどスコアが低く、マニピュレータ10と対象領域Taの水平面との角度が小さいほどスコアが高く、対象領域Taの高さが高いほどスコアが高くなるよう、設定される。なお、変数(数値、物理量)は、対象物Tの情報、マニピュレータ10の情報、および障害物Oの情報のうち少なくとも一つの情報に基づく物理量であって、把持や搬送の、可否、効率、迅速性、エネルギ消費、確実性、ロバスト性、信頼性等に関与する物理量であればよく、上記例には限定されない。また、式(1)には少なくとも一つの項が含まれればよいし、変数の種類や数、指標毎の係数の大きさ等は、使用環境等に応じて、適宜に調整することができる。対象領域Taを示す情報は、第四情報の一例である。
【0038】
パターン選択部21gは、スコアが最も高いパターンの使用形態(候補)を、制御に用いる使用形態として選択する(決定する)。
【0039】
把持制御部21hは、エンドエフェクタ13およびマニピュレータ10が、現在位置および現在姿勢から、当該選択されたパターンの使用形態について算出した移動経路を通り、算出した把持位置および把持姿勢となり、対象物Tを把持するよう、第一アクチュエータ15および第二アクチュエータ16を制御する。パターン選択部21gは、第一決定部の一例である。把持制御部21hは、制御部の一例である。
【0040】
図13は、制御装置20による制御手順を示すフローチャートである。
図13に示されるように、演算処理部21は、情報取得部21aとして機能し、対象物Tの情報、障害物Oの情報、およびマニピュレータ10の情報を取得する(S10)。次に、演算処理部21は、モデル選択部21bとして機能し、モデル(把持形態)を選択する(S11)。S11で選択されたモデルに含まれるパターンが、S18におけるパターン選択の候補となる。次に、演算処理部21は、把持位置姿勢決定部21cとして機能し、モデルによる把持位置および把持姿勢を決定する(S12)。
【0041】
次に、演算処理部21は、経路算出部21dおよび干渉判断部21eとして機能し、選択されたモデル(把持形態)に含まれる各パターン(使用形態の候補)について、エンドエフェクタ13の現在位置および現在姿勢から把持位置および把持姿勢までの経路を算出するとともに、当該経路でのエンドエフェクタ13およびマニピュレータ10の移動について、エンドエフェクタ13およびマニピュレータ10と対象物T以外の障害物Oとの干渉の有無を演算する(S13)。
【0042】
エンドエフェクタ13が現在位置および現在姿勢から障害物Oとの干渉無く把持位置および把持姿勢へ到達可能である場合には(S14でYes)、演算処理部21は、スコア算出部21fとして機能し、各パターンについて、スコアを算出する(S15)。
【0043】
他方、干渉がある場合には(S14でNo)、当該パターンをS18におけるパターンの選択の候補から除外する(S16)。
【0044】
他の候補となるパターンが有る場合(S17でYes)、当該他の候補となるパターンについてS13〜16を実行する。
【0045】
他方、他の候補となるパターンが無い場合(S17でNo)、パターン選択部21gは、スコアが最も高いパターンの使用形態(候補)を、制御に用いる使用形態として選択し(S18)、把持制御部21hは、エンドエフェクタ13およびマニピュレータ10が、現在位置および現在姿勢から、当該選択されたパターンの使用形態について算出した移動経路を通り、算出した把持位置および把持姿勢となり、対象物Tを把持するよう、第一アクチュエータ15および第二アクチュエータ16を制御する(S19)。
【0046】
図14は、把持制御部21hによる把持制御の一例を示す説明図である。把持制御部21hは、吸着パッド14Bと障害物Oとの距離が距離h(所定距離)以内である場合であって、当該吸着パッド14Bを除く他の吸着パッド14によって対象物Tを把持できる場合には、吸着パッド14Bと障害物Oとの距離が距離h以内である状態において、吸着パッド14Bを非作動とすることができる。この場合、
図14の上段に示される把持開始時点から、エンドエフェクタ13が移動し、
図14の中段に示される吸着パッド14Bと障害物Oとの距離が距離hとなるまでの間、把持制御部21hは、吸着パッド14Bが非作動となるよう、第二アクチュエータ16を制御する。そして、
図14の中段に示される吸着パッド14Bと障害物Oとの距離が距離hである状態以降、吸着パッド14Bが作動されるよう、第二アクチュエータ16を制御する。この場合の吸着パッド14Bは、第一把持部材の一例である。
【0047】
上述した制御装置20による演算処理や制御は、ソフトウエアによって実行されてもよいし、ハードウエアによって実行されてもよい。また、制御装置20による演算処理や制御には、ソフトウエアによる演算処理や制御とハードウエアによる演算処理や制御とが含まれてもよい。ソフトウエアによる処理の場合にあっては、制御装置20は、ROMや、HDD、SSD、フラッシュメモリ等の記録媒体(記憶媒体)に記憶されたプログラム(アプリケーション)を読み出して実行する。制御装置20は、プログラムにしたがって作動することにより、制御装置20に含まれる各部、すなわち、情報取得部21a、モデル選択部21b、把持位置姿勢決定部21c、経路算出部21d、干渉判断部21e、スコア算出部21f、パターン選択部21g、把持制御部21h、等として、機能する。この場合、プログラムには、上記各部に対応するモジュールが含まれる。
【0048】
プログラムは、それぞれインストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD−ROMや、FD、CD−R、DVD、USBメモリ等の、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されうる。また、プログラムは、通信ネットワークに接続されたコンピュータの記憶部に記憶され、ネットワーク経由でダウンロードされることによって導入されうる。また、プログラムは、ROM等に予め組み込まれてもよい。
【0049】
また、制御装置20の少なくとも一部がハードウエアによって構成される場合、当該制御装置20には、例えば、field programmable gate array(FPGA)や、application specific integrated circuit(ASIC)等が含まれうる。
【0050】
以上、説明したように、本実施形態によれば、例えば、モデル選択部21b(選択部)は、対象物Tの情報(第一情報)に基づいて吸着パッド14の数および配置によって定められる複数のモデル(把持形態)の中から対象物Tに対するモデルを選択し、パターン選択部21g(第一決定部)は、マニピュレータ10の情報(第二情報)および障害物Oの情報(第三情報)のうち少なくとも一方に基づいて、選択されたモデルを実現する吸着パッド14が特定されたパターン(使用形態)を決定し、把持制御部21hは、決定されたパターンによって少なくとも一つの吸着パッド14が対象物Tを把持するよう、第一アクチュエータ15および第二アクチュエータ16を制御する。このような構成によれば、制御装置20は、例えば、モデル選択部21bによって絞り込まれたモデルや、パターン選択部21gによって絞り込まれたパターンについて、経路の算出や障害物Oとの干渉の有無の演算を実行することができるため、考えられる全てのパターンについて経路の算出や障害物Oとの干渉の有無の演算を実行する場合に比べて、制御装置20の演算負荷を減らすことができる。よって、マニピュレータシステム100は、例えば、対象物Tの把持や搬送をより迅速に実行することができる。
【0051】
また、本実施形態では、例えば、把持位置姿勢決定部21c(第二決定部)は、モデル毎に、対象物Tの把持位置および把持姿勢を算出する。このような構成によれば、例えば、考えられる全てのパターンについて把持位置や把持姿勢を算出する場合に比べて、制御装置20の演算負荷を減らすことができる。よって、マニピュレータシステム100は、例えば、対象物Tの把持や搬送をより迅速に実行することができる。
【0052】
また、本実施形態では、例えば、干渉判断部21e(判断部)は、パターン(使用形態の候補)毎に、エンドエフェクタ13およびマニピュレータ10(把持装置)が現在位置および現在姿勢から障害物Oと干渉することなく把持位置および把持姿勢に到達できるか否かを判断し、パターン選択部21gは、現在位置および現在姿勢から障害物Oと干渉することなく把持位置および把持姿勢に到達できるパターンの候補の中から、制御に用いるパターンを決定する。このような構成によれば、例えば、エンドエフェクタ13およびマニピュレータ10による対象物Tの把持および搬送に際して、エンドエフェクタ13およびマニピュレータ10と障害物Oとの干渉を抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態では、例えば、スコア算出部21fは、パターン(候補)毎に、少なくとも一つの物理量に基づくスコアを算出し、パターン選択部21gは、スコアが最も高いパターンの候補を、制御に用いるパターンとして決定する。このような構成によれば、より適切なパターンによって、エンドエフェクタ13およびマニピュレータ10による対象物Tの把持および搬送が実現されうる。
【0054】
また、本実施形態では、例えば、モデル選択部21bは、対象領域Taと各パターンにおける吸着パッド14(把持部材)の配置とに基づいて、モデルを選択することができる。このような構成によれば、例えば、対象物Tを把持できないモデルおよび当該モデルに属するパターンについての無駄な演算を省くことができる。
【0055】
また、本実施形態では、例えば、モデルには、使用しない吸着パッド14の両側に使用する吸着パッドが配置されたモデルは含まれない。このような構成によれば、例えば、モデルの種類(数)を減らすことができる分、当該モデルを含む場合に比べて制御装置20による演算負荷を減らすことができる。
【0056】
また、本実施形態では、例えば、把持制御部21hは、吸着パッド14B(第一把持部材)と障害物Oとの距離が所定距離以内となる場合であって、当該吸着パッド14Bを非作動としても他の吸着パッド14によって対象物Tを把持できる場合にあっては、吸着パッド14Bと障害物Oとの距離が距離h以内である状態において当該吸着パッド14Bが非作動となるよう、第二アクチュエータ16を制御する。このような構成によれば、例えば、吸着パッド14Bによる障害物Oの吸引を抑制することができる。
【0057】
[第2実施形態]
図15は、第2実施形態のエンドエフェクタ13Aの斜視図、
図16は、エンドエフェクタ13Aの側面図である。本実施形態のマニピュレータ10Aでは、エンドエフェクタ13Aの把持部材(可動部材)は、挟持部材141である。挟持部材141は、端面13aから当該端面13aと交差する方向(直交する方向)に突出している。挟持部材141は、第二アクチュエータ16Aによって、それぞれ、端面13aと交差する方向(
図15,16のZ方向)に伸縮可能に構成されるとともに、端面13aに沿う方向(
図15,16のX方向およびY方向)に移動可能に構成されている。制御装置20は、複数(二つ以上)の挟持部材141が選択的に突出し、対象物Tを挟持するよう、第二アクチュエータ16Aを制御する。エンドエフェクタ13Aは、例えば、表面が曲面やメッシュのような、吸着パッド14によっては把持できない対象物Tを把持することができる。第二アクチュエータ16Aは、アクチュエータの一例である。
【0058】
図17は、対象物Tにおいて検出された把持可能な対象領域Taを示す図である。
図17におけるi方向は
図15,16のX方向に沿い、j方向は
図15,16のY方向に沿っている。本実施形態では、例えばRGB−Dセンサのようなセンサ17によって検出された挟持部材141の伸縮方向における対象物Tの厚さ(高さ、深さ)により、対象領域Taが定められる。
図17では、ピクセルの数値が0の部位は、対象物Tではない非対象領域Tnであり、ピクセルの数値が1以上の部位は、対象領域Taであり、各ピクセルの数値が大きいほど、対象物Tの厚さ(高さ)が大きいことを示している。この場合、制御装置20は、例えば、i,j方向における二次元的な演算により、非対象領域Tnとの境界において、ピクセルの数値が所定値(例えば3)以上の領域が、所定間隔で平行で並ぶ場合に、すなわち、
図17内の太枠Ftで示すような部位Ta1が存在する場合に、当該対象領域Taを把持可能と判断することができる。
【0059】
[第2実施形態の変形例]
図18は、第2実施形態の変形例のエンドエフェクタ13Bの側面図である。本変形例のマニピュレータ10Bでは、エンドエフェクタ13Bの把持部材(可動部材)は、掬い上げ部材142である。掬い上げ部材142は、端面13aから当該端面13aと交差する方向(直交する方向)に突出している。掬い上げ部材142の端部には、ペアを構成する他の掬い上げ部材142に近付く方向に向けて鉤型に曲がるように突出したフック142aが設けられている。掬い上げ部材142は、第二アクチュエータ16Aによって、それぞれ、端面13aと交差する方向に伸縮可能に構成されるとともに、端面13aに沿って移動可能に構成されている。制御装置20は、複数(二つ以上)の掬い上げ部材142が選択的に突出し、対象物Tを掬い上げるよう、第二アクチュエータ16Aを制御する。エンドエフェクタ13Bは、吸着パッド14や挟持部材141によっては把持できない対象物Tを把持することができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、実施形態の構成や形状は、部分的に入れ替えて実施することも可能である。また、各構成や形状等のスペック(構造や、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、角度、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0061】
例えば、把持部材は、吸着、挟持、掬い上げ以外の態様で対象物を把持するものであってもよい。また、把持部材の数や配置は種々に変更することができる。