(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタの接続ノードに、前記高周波入力信号に対する前記出力信号経路から出力される出力信号の非線形性を補償する非線形補償回路を接続するか否かを切り替える第6切替器を備え、
前記第1切替器、前記第2切替器、前記第3切替器、前記第4切替器、及び前記第6切替器は、複数の利得モードの中から選択される利得モードに応じた切替を行う、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の高周波増幅回路。
前記第1トランジスタ、前記第2トランジスタ、前記第1インダクタ、前記第2インダクタ、前記第1切替器、前記第2切替器、前記第3切替器、及び前記第4切替器が実装されるSOI(Silicon On Insulator)基板を備える、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の高周波増幅回路。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、本件明細書と添付図面においては、理解のしやすさと図示の便宜上、一部の構成部分を省略、変更または簡易化して説明および図示しているが、同様の機能を期待し得る程度の技術内容も、本実施の形態に含めて解釈することとする。また、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物から変更し誇張してある。
【0009】
(第1の実施形態)
第1の実施形態による高周波増幅回路(以下、LNA)は、携帯電話やスマートフォンなどの無線装置2で用いられる。
図1は第1の実施形態によるLNA1を内蔵する無線装置2の概略構成を示すブロック図である。
図1の無線装置2は、アンテナ3と、アンテナスイッチ4と、バンドパスフィルタ(BPF)5と、LNA1と、無線IC(RFIC)6と、パワーアンプ(PA)7と、ローパスフィルタ(LPF)8とを備えている。
【0010】
アンテナスイッチ4は、送受信を切り替えるスイッチである。
図1では、送信側と受信側がそれぞれ1系統の例を示しているが、送信側と受信側がそれぞれ、複数の周波数帯域の信号を送受する複数系統を有していてもよい。
図1のアンテナスイッチ4とLNA1は同一のSOI基板上に配置可能であり、ワンチップにすることができる。アンテナスイッチ4とLNA1をSOI基板上に配置することで、消費電力の削減と小型化も可能となる。
【0011】
図2は第1の実施形態によるLNA1の内部構成を示す回路図である。
図2のLNA1は、それぞれ利得が異なる4つの利得モードG0〜G3モードのいずれか一つを選択する機能を持っている。G0モードが最も利得が高く、G0→G1→G2→G3の順に利得が低くなる。
【0012】
図2のLNA1は、高周波入力信号を増幅するソース接地の第1トランジスタQ1と、第1トランジスタQ1で増幅された信号をさらに増幅して出力信号を生成するゲート接地の第2トランジスタQ2と、バイアス生成回路9と、第1インダクタLsと、第2インダクタLdと、第1減衰器10と、第1切替器11と、第1抵抗Rsh23と、第2切替器12と、複数の第2抵抗Rd0,Rd1,Rd2と、第3切替器13と、複数の第1キャパシタCout0,Cout1,Cout2と、第4切替器14と、第2減衰器15と、第5切替器16とを備えている。
【0013】
図2の第1トランジスタQ1と第2トランジスタQ2はNMOSトランジスタであるが、PMOSトランジスタにすることも設計上は可能である。ただし、電気的特性はNMOSトランジスタで構成した方が優れているため、以下では第1トランジスタQ1と第2トランジスタQ2をNMOSトランジスタで構成する例を説明する。
【0014】
第1トランジスタQ1のゲートには、入力信号経路が接続されている。この入力信号経路上には、入力端子RFinと、第1減衰器10と、第1切替器11と、外付けインダクタ(第3インダクタ)Lextと、第1抵抗Rsh23とが接続されている。
【0015】
第1切替器11は、第1〜第3トランジスタスイッチSW1〜SW3を有する。第1トランジスタスイッチSW1は、入力端子RFinと外付けインダクタLextの一端であるノードn1との間に接続されている。第2トランジスタスイッチSW2は、入力端子RFinと第1減衰器10の一端との間に接続されている。第3トランジスタスイッチSW3は、第1減衰器10の他端とノードn1との間に接続されている。第1トランジスタスイッチSW1のゲートには、G3モード以外の利得モードのときにハイになるxG3信号が入力されている。第1トランジスタスイッチSW1は、G3モードでないときにオンし、G3モードのときにオフする。第2トランジスタスイッチSW2と第3トランジスタスイッチSW3のゲートには、G3モードのときにハイになるG3信号が入力されている。第2トランジスタスイッチSW2と第3トランジスタスイッチSW3は、G3モードのときにオンし、G0〜G2モードのときにオフする。
【0016】
このように、G0〜G2モードのときは、第1減衰器10の入出力が遮断されるため、高周波入力信号は、第1トランジスタスイッチSW1により、第1減衰器10をバイパスして、外付けインダクタLextに入力される。第1減衰器10は、
図2のようなπ型構成でもよいし、T型構成でもよい。
【0017】
外付けインダクタLextは、インピーダンス整合のために設けられている。外付けインダクタLextから入力端子RFin側を見たインピーダンスは、50Ωになるように設計される。なお、外付けインダクタLextは、外付けではなく、SOI基板上に形成することも可能であるが、広いパターン面積を必要とするため、現実的には外付けされる可能性が高い。そこで、本明細書では、外付けインダクタLextと呼ぶ。
図2のLNA1のうち、外付けインダクタLext以外の回路部品は、SOI基板上に配置可能である。実際には、ノードn1とn2にはパッドが設けられ、これらパッド間に外付けインダクタLextを接続することになる。
【0018】
第1トランジスタQ1のソースと接地ノードの間には、第1インダクタLsが接続されている。第1トランジスタQ1のゲートには、抵抗RB1を介してバイアス電圧VB1が供給される。また、第1トランジスタQ1のゲートと外付けインダクタLextの他端側のノードn2との間の入力信号経路上には、キャパシタCxが接続されている。キャパシタCxは、入力信号経路上の高周波入力信号のDC成分をカットする。
【0019】
ノードn2と接地ノードの間には、第1抵抗Rsh23と第2切替器12とが直列接続されている。第2切替器12は、第4トランジスタスイッチSW4を有する。第4トランジスタスイッチSW4のゲートには、G2モード又はG3モードのときにハイになるG23信号が入力されている。よって、第4トランジスタスイッチSW4は、G2モード又はG3モードのときにオンし、それ以外の利得モードではオフする。
【0020】
第2切替器12内の第4トランジスタスイッチSW4がオンのときには、第1抵抗Rsh23はシャント抵抗として機能する。第4トランジスタスイッチSW4がオフのときには、第1抵抗Rsh23は入力信号経路から遮断される。よって、G2モード又はG3モードの時は、第1抵抗Rsh23がシャント抵抗として機能して、高周波入力信号の利得を下げる作用を行う。G0モード又はG1モードの時は、第1抵抗Rsh23は高周波入力信号の利得を下げる作用を行わない。
【0021】
また、第1トランジスタQ1のゲートとソースとの間に、不図示のキャパシタCinを接続してもよい。第1トランジスタQ1のソースは、インダクタLsを介して接地ノードに接続されているため、第1トランジスタQ1はソース接地の増幅器として機能する。
【0022】
外付けインダクタLext、キャパシタCx、Cin、第1インダクタLsは、入力整合回路を構成している。入力整合回路内の各構成部品の素子値は、第1トランジスタQ1の利得整合とノイズ整合を考慮に入れて設定される。
【0023】
第2トランジスタQ2のゲートには、抵抗RB2を介してバイアス電圧VB2が供給される。また、第2トランジスタQ2のゲートと接地ノードとの間には、キャパシタCB2が接続されている。キャパシタCB2の容量と抵抗RB2の抵抗値はいずれも十分に大きいため、第2トランジスタQ2はゲート接地の増幅器として機能する。
【0024】
第2トランジスタQ2のドレインと第1基準電位VDD_LNAとの間には、第2インダクタLdと、複数の第2抵抗Rd0,Rd1,Rd2とが並列接続されており、また、複数の第2抵抗Rd0,Rd1,Rd2のうち少なくとも一つを選択する第3切替器13が設けられている。第3切替器13は、第5トランジスタスイッチSW5と第6トランジスタスイッチSW6とを有する。第5トランジスタスイッチSW5は第2抵抗Rd1に直列接続されている。第6トランジスタスイッチSW6は、第2抵抗Rd2に直列接続されている。第5トランジスタスイッチSW5は、ゲート信号G1Rがハイのときにオンする。ゲート信号G1Rは、G1モードのときにハイになる。よって、第2抵抗Rd1は、G1モードのときに第2抵抗Rd0及び第2インダクタLdに並列接続される。第6トランジスタスイッチSW6は、ゲート信号G23Rがハイのときにオンする。ゲート信号G23Rは、G2モード又はG3モードのときにハイになる。よって、第2抵抗Rd2は、G2モード又はG3モードのときに第2抵抗Rd0及び第2インダクタLdに並列接続される。
【0025】
このように、G0モードでは、第2抵抗Rd0だけが第2インダクタLdに並列接続される。G1モードでは、第2抵抗Rd0とRd1が第2インダクタLdに並列接続される。G2モード又はG3モードでは、第2抵抗Rd0とRd2が第2インダクタLdに並列接続される。
【0026】
複数の第2抵抗Rd0,Rd1,Rd2の抵抗値は、Rd0>Rd1>Rd2である。よって、第2インダクタLdに並列接続される第2抵抗の抵抗値は、G0のときに最大になり、次にG1のときに大きくなり、G2とG3のときに最小になる。第2抵抗の抵抗値が小さいほど、出力信号の利得を下げることができる。
【0027】
第2トランジスタQ2のドレインと出力端子RFoutとの間には、複数の第1キャパシタCout0,Cout1,Cout2が並列接続されており、また、複数の第1キャパシタCout0,Cout1,Cout2のうち少なくとも一つを選択する第4切替器14が設けられている。第4切替器14は、第7トランジスタスイッチSW7と第8トランジスタスイッチSW8とを有する。第7トランジスタスイッチSW7は、第1キャパシタCout1に直列接続されている。第7トランジスタスイッチSW7は、ゲート信号G1がハイのときにオンする。ゲート信号G1はG1モードのときにハイになる。よって、第1キャパシタCout1は、G1モードのときに第1キャパシタCout0に並列接続される。第8トランジスタスイッチSW8は、第1キャパシタCout2に直列接続されている。第8トランジスタスイッチSW8は、ゲート信号G23がハイのときにオンする。ゲート信号G23はG2モード又はG3モードのときにハイになる。よって、第1キャパシタCout2は、G2モード又はG3モードのときに第1キャパシタCout0に並列接続される。
【0028】
これにより、G0〜G3モードでの複数の第1キャパシタCout0,Cout1,Cout2の容量は、G0モードが最小でCout1、次にG1モードのCout0+Cout1、次にG2モードとG3モードのCout0+Cout2の順に大きくなる。複数の第1キャパシタの合成容量を調整することで各利得モードにおける出力整合を最適化することができる。
【0029】
本実施形態によるLNA1は、SOI基板上に形成されるため、第1インダクタLsと第2インダクタLdは、渦巻き状の配線パターンからなるスパイラルインダクタで形成される。一方、外付けインダクタLextは、上述したようにインダクタンスが大きいことから、SOI基板上には形成されず、LNA1に外付けされる。
【0030】
図1のLNA1では、第1キャパシタ素子Cout0と出力端子RFoutとの間に、第2減衰器15と第5切替器16とを接続しているが、第2減衰器15と第5切替器16は、省略してもよい。第2減衰器15は、第1減衰器10と同様に、π型構成でもよいし、T型構成でもよい。
【0031】
第5切替器16は、第9トランジスタスイッチSW9と第10トランジスタスイッチSW10を有する。第9トランジスタスイッチSW9は、第1キャパシタ素子Coutの一端であるノードn3と出力端子RFoutとの間に接続されている。第10トランジスタスイッチSW10は、第2減衰器15と接地ノードの間に接続されている。第9トランジスタスイッチSW9は、xG3信号がハイのときにオンする。xG3信号は、G3モード以外のときにハイになる。よって、第9トランジスタスイッチSW9は、G0〜G2モードのときにオンし、第2減衰器15をバイパスさせる。第10トランジスタスイッチSW10は、G3信号がハイのときにオンする。G3信号は、G3モードのときにハイになる。よって、第10トランジスタスイッチSW10は、G3モードのときに出力信号経路と接地ノードとの間に第2減衰器15を接続する。
【0032】
バイアス生成回路9は、バイアス電圧VB1、VB2を生成する。抵抗RB1、RB2は、高周波入力信号がバイアス生成回路9に回り込むのを防止するために設けられている。バイアス電圧VB1は利得モードによって電圧値が異なる。具体的には、バイアス電圧VB1とVB2は、G0モードとG1モードの時が最大値になり、G2モードのときの電圧値が次に大きく、G3モードのときの電圧値が最小になる。
【0033】
図3は、各利得モードでの
図1のバイアス電圧VB1、VB2と第1〜第10トランジスタスイッチSW1〜SW10のゲートに入力されるゲート信号G1、G1R、G23、G23R、G3、xG3の電圧値を示す図である。
【0034】
図3に示すように、G0モードでは、バイアス電圧VB1は最大のVB1_G0に、バイアス電圧VB2は最大のVB2_G0に設定される。また、ゲート信号G1は−2Vに、ゲート信号G1Rは0Vに、ゲート信号G23は−2Vに、ゲート信号G23Rは0Vに、ゲート信号G3は−2Vに、ゲート信号xG3は3Vに設定される。よって、第1トランジスタスイッチSW1がオンして、第1減衰器10はバイパスされる。バイパス抵抗である第1抵抗Rsh23は入力信号経路から遮断される。第2インダクタLdには、第2抵抗Rd0のみが並列接続される。出力信号経路には、第1キャパシタCout0のみが接続される。第2減衰器15は出力信号経路から遮断される。これにより、G0モードでは、高周波入力信号が減衰されることなく、第1トランジスタQ1のゲートに入力される。また、第2インダクタLdに並列接続される第2抵抗は最大値になる。よって、G0モードでは、最大の利得が得られる。
【0035】
なお、各トランジスタスイッチSW1〜SW10の閾値電圧は0Vである。各トランジスタスイッチSW1〜SW10をオフする場合に、ゲートに0Vを印加する場合と−2Vを印加する場合があるのは、本来的にはオフ時にゲートに−2Vを印加した方が、ボディに溜まったホールをゲートに吸い出すことができるため、望ましい。ただし、トランジスタスイッチのドレインが1.8Vの電源電圧に接続されている場合、ゲートが−2Vだと、ドレイン−ゲート間に3Vを超える電圧が印加され、耐圧をオーバーしてしまう。このため、ドレイン電圧に高い電圧が印加される場合は、ゲートを0Vに設定している。
図1では、トランジスタスイッチがオフ時にゲートに0Vを印加する場合には、ゲート信号の末尾に「R」を付している。ゲート信号の末尾に「R」が付いていない場合は、オフ時に−2Vが印加される。
【0036】
G1モードでは、
図3に示すように、バイアス電圧VB1はG0モードに次いで大きな値VB1_G1に、バイアス電圧VB2もG0モードに次いで大きな値VB2_G1に設定される。また、ゲート信号G1は3Vに、ゲート信号G1Rは3Vに、ゲート信号G23は−2Vに、ゲート信号G23Rは0Vに、ゲート信号G3は−2Vに、ゲート信号xG3は3Vに設定される。よって、第1トランジスタスイッチSW1がオンして、第1減衰器10はバイパスされる。第1抵抗Rsh23は入力信号経路から遮断される。第2インダクタLdには、第2抵抗Rd0とRd1が並列接続される。出力信号経路には、第1キャパシタCout0とCout1が並列接続される。第2減衰器15は出力信号経路から遮断される。これにより、G1モードでは、高周波入力信号が減衰されることなく、第1トランジスタQ1のゲートに入力される。また、第2インダクタLdに並列接続される第2抵抗はG0モードに次いで小さな値になる。よって、G1モードでは、G0モードに次いで大きな利得が得られる。
【0037】
G2モードでは、
図3に示すように、バイアス電圧VB1はG1モードに次いで大きな値VB1_G2に、バイアス電圧VB2もG1モードに次いで大きな値VB2_G2に設定される。また、ゲート信号G1は−2Vに、ゲート信号G1Rは0Vに、ゲート信号G23は3Vに、ゲート信号G23Rは3Vに、ゲート信号G3は−2Vに、ゲート信号xG3は3Vに設定される。よって、第1トランジスタスイッチSW1がオンして、第1減衰器10はバイパスされる。また、第4トランジスタスイッチSW4がオンし、入力信号経路と接地ノードの間に第1抵抗Rsh23が接続される。第2インダクタLdには、第2抵抗Rd0とRd2が並列接続される。出力信号経路には、第1キャパシタCout0とCout2が並列接続される。第2減衰器15は出力信号経路から遮断される。これにより、G2モードでは、高周波入力信号がRsh23により減衰され、第1トランジスタQ1のゲートに入力される。また、第2インダクタLdに並列接続される第2抵抗はG1モードに次いで小さな値になる。よって、G2モードでは、G1モードに次いで大きな利得が得られる。
【0038】
G3モードでは、
図3に示すように、バイアス電圧VB1は最小のVB1_G3に、バイアス電圧VB2も最小のVB2_G3に設定される。また、ゲート信号G1は−2Vに、ゲート信号G1Rは0Vに、ゲート信号G23は3Vに、ゲート信号G23Rは3Vに、ゲート信号G3は3Vに、ゲート信号xG3は−2Vに設定される。よって、第1トランジスタスイッチSW1がオフして、第2及び第3トランジスタスイッチSW3がオンし、高周波入力信号は第1減衰器10で減衰された後、外付けインダクタLextを通過する。また、第4トランジスタスイッチSW4がオンし、入力信号経路と接地ノードの間に第1抵抗Rsh23が接続される。これにより、入力信号経路上の高周波入力信号はさらに減衰される。第2インダクタLdには、第2抵抗Rd0とRd2が並列接続される。出力信号経路には、第1キャパシタCout0とCout2が並列接続される。第9トランジスタスイッチSW9がオフして、第10トランジスタスイッチSW10がオンするため、出力信号経路と接地ノードの間に第2減衰器15が接続され、出力信号が第2減衰器15により減衰される。これにより、G3モードでは、出力信号の利得が最小になる。
【0039】
図4(a)は
図2のG0モード時のLNA1のSパラメータを示す図である。
図4(a)の横軸は周波数[GHz]、縦軸はSパラメータ値[dB]である。
図4(a)の曲線cb1は入力側の反射特性S11、曲線cb2は出力側の反射特性S22、曲線cb3は入力側からの通過特性S21、曲線cb4はS21の位相を表している。
【0040】
図4(b)は
図2のG0モード時のLNA1のノイズ指数NFを示す図である。
図4(b)の横軸は周波数[GHz]、縦軸はノイズ指数NFである。
【0041】
図4(a)と
図4(b)では、LTE(Long Term Evolution)バンドの一つであるバンド41の周波数帯域である2.496GHz、2.593GHz、2.690GHzに目印を付している。本実施形態によるLNA1は、バンド41の周波数帯域で使用することを念頭に置いて設計したものであるが、
図4(a)からわかるように、バンド41の周波数帯域内のSパラメータは良好である。例えば、帯域中心周波数2.593GHzの利得は、18.0dBであり、S11とS22も、一般に要求される基準値(−12dB以下)を確保している。
【0042】
図5(a)〜
図7(a)は
図2のG1〜G3モード時のLNA1のSパラメータをそれぞれ示す図、
図5(b)〜
図7(b)は
図2のG1〜G3モード時のLNA1のノイズ指数NFをそれぞれ示す図である。これらの図から明らかなように、G0→G1→G2→G3の順に利得が下がっており、G0モードが約18dB、G1モードが約15dB、G2モードが約9dB、G3モードが約−3dBになるように設計されている。
【0043】
図8は
図2のLNA1の各利得モードでのIIP3を示す図である。
図8の横軸は入力信号電力Pin[dBm]であり、縦軸はIIP3[dBm]である。
図8に示すように、G3→G2→G1→G0の順にIIP3は下がるが、一般的な要求値よりも十分に大きな値になっている。特に、G3モードでのIIP3は、一般的な要求値12dBmよりも3.3dB大きな値になっている。
【0044】
図9はG0〜G3モードでのシミュレーション結果を示す図である。
図9は、各利得モードごとに、バイアス電流Idd_lna[mA]、S21の帯域中心値[dB]、ノイズ指数NFの帯域中心値[dB]、S11のバンド41内の最悪値[dB]、S22のバンド41内の最悪値[dB]、IIP3の帯域中心値[dBm]、S21の位相[deg]を示している。
【0045】
図9のS21位相から、利得モード間の最大位相偏差[deg]は、10.57になる。この値は、一般的な要求値である20[deg]に対して十分に余裕があることがわかる。
【0046】
このように、第1の実施形態では、複数の利得モードを有するLNA1において、最小利得のG3モードが選択された場合には、入力信号経路をシャント抵抗Rsh23にて接地ノードに接続するため、IIP3を改善することができる。
【0047】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、シャント抵抗の回路構成が第1の実施形態とは異なるものである。
【0048】
図10は第2の実施形態によるLNA1の回路図である。
図10では、
図2と共通する構成部材には同一符号を付しており、以下では相違点を中心に説明する。
図2のLNA1は、G2モードとG3モードのときにシャント抵抗として機能する第1抵抗Rsh23を備えている。これに対して、
図10のLNA1は、G2モードのときにシャント抵抗として機能する第1抵抗Rsh2と、G3モードのときにシャント抵抗として機能する第1抵抗Rsh3と、第1抵抗Rsh3に並列に接続される第2キャパシタCsh3とを備えている。
【0049】
第1抵抗Rsh2には第11トランジスタスイッチSW11が直列接続されており、第1抵抗Rsh3には第12トランジスタスイッチSW12が直列接続されている。第11トランジスタスイッチSW11はG2信号がハイのときにオンし、第12トランジスタスイッチSW12はG3信号がハイのときにオンする。よって、G2モード時には、入力信号経路と接地ノードの間に第1抵抗Rsh2が接続される。G3モード時には、入力信号経路と接地ノードの間に第1抵抗Rsh3と第2キャパシタCsh3が並列接続される。
【0050】
本発明者が検証したところ、第1抵抗Rsh3に第2キャパシタCsh3を並列接続することにより、G3モード時のIIP3がより大きくなることがわかった。このため、
図10のLNA1によれば、
図1のLNA1よりも、G3モード時のIIP3をより大きくできる。
【0051】
このように、
図10のLNA1では、G2モード専用のシャント抵抗Rsh2と、G3モード専用のシャント抵抗Rsh3及び第2キャパシタCsh3とを有するため、G2モードとG3モードのときのIIP3をそれぞれ最適化することができる。
【0052】
図11は
図10の一変形例によるLNA1の回路図である。
図11のLNA1は、
図10のLNA1に非線形補償回路17と第6切替器18を追加したものである。
図11の非線形補償回路17は、第1トランジスタQ1と第2トランジスタQ2の接続ノードに接続されている。すなわち、非線形補償回路17は、第1トランジスタQ1のドレインと、第2トランジスタQ2のソースとに接続されている。
【0053】
また、非線形補償回路17には、第1基準電位VDD_LNAと接地ノードが接続されている。なお、非線形補償回路17は、2つの基準電位間に接続されていればよいため、VDD_LNA以外の第3基準電位と、接地電位以外の第4基準電位との間に非線形補償回路17を接続してもよい。
【0054】
非線形補償回路17は、第1トランジスタQ1と第2トランジスタQ2の接続ノードに接続されており、高周波入力信号に対する出力信号の非線形性を補償する。第6切替器18は、高周波入力信号に対する出力信号経路から出力される出力信号の非線形性を補償する非線形補償回路17を有効にするか否かを切り替える。
【0055】
非線形補償回路17は、第1整流回路19と、第2整流回路20と、抵抗R1Aと、抵抗R1Bと、第3キャパシタC1Aと、第4キャパシタC1Bとを有する。第6切替器18は、第13トランジスタスイッチSW13を有する。
【0056】
第1整流回路19と抵抗R1Aは、第1基準電位VDD_LNAと第13トランジスタスイッチSW13のドレインとの間に直列接続されている。抵抗R1Bと第2整流回路20は、第1基準電位VDD_LNAと第13トランジスタスイッチSW13のドレインとの間に直列接続されている。
【0057】
第1整流回路19と抵抗R1Aの接続ノードは、第3キャパシタC1Aを介して、第1トランジスタQ1と第2トランジスタQ2の接続ノードに接続されている。同様に、抵抗R1Bと第2整流回路20の接続ノードは、第4キャパシタC1Bを介して、第1トランジスタQ1と第2トランジスタQ2の接続ノードに接続されている。
【0058】
第13トランジスタスイッチSW13は、G01信号がハイのときにオンして、抵抗R1Aの一端と第2整流回路20の一端とを接地ノードに導通させる。よって、G0モードとG1モードのときに、非線形補償回路17は高周波入力信号に対する出力信号の非線形性を補償し、G2モードとG3モードのときには、非線形補償回路17は遮断される。
【0059】
第1整流回路19は、ダイオード接続された第3トランジスタQ3を有する。第2整流回路20は、ダイオード接続された第4トランジスタQ4を有する。第3トランジスタQ3のドレイン及びゲートには、第1基準電位VDD_LNAが接続され、第3トランジスタQ3のソースには抵抗R1Aの一端が接続されている。第4トランジスタQ4のドレイン及びゲートの一端には抵抗R1Bの一端が接続され、第4トランジスタQ4のソースには接地ノードが接続されている。
【0060】
第3トランジスタQ3と第4トランジスタQ4の素子定数は同一である。ここで、素子定数とは、ゲート幅、ゲート長、閾値電圧、ゲート酸化膜厚など、トランジスタの電気的特性を決める各種パラメータを指す。また、抵抗R1AとR1Bの抵抗値は同一であり、第3キャパシタC1Aと第4キャパシタC1Bの容量も同一である。
【0061】
このように、非線形補償回路17は、トランジスタと抵抗からなる直列回路を2つ設けて、これら直列回路におけるトランジスタと抵抗の接続順序を逆にしている。これにより、偶数次の相互変調歪を相殺できる。
【0062】
また、本実施形態による非線形補償回路17は、G0モードとG1モードでのIIP3ができるだけ大きくなるように、第3トランジスタQ3と第4トランジスタQ4の素子定数、抵抗R1AとR1Bの抵抗値、及び第3キャパシタC1Aと第4キャパシタC1Bの容量の少なくとも一つを調整することができる。これにより、利得とノイズ指数をそれほど低下させずに、IIP3を大きくできる。
【0063】
図12は、各利得モードでの
図11のLNA1のバイアス電圧VB1、VB2と第1〜第10トランジスタスイッチSW1〜SW10のゲートに入力されるゲート信号G1、G1R、G23、G23R、G3、xG3の電圧値を示す図である。
図12は、
図2と比べて、G01信号についての論理が追加されている。G01信号が入力される第13トランジスタスイッチSW13は、G0モードとG1モードのときにオンする。
【0064】
図13(a)〜
図16(a)は、
図11のG0〜G3モード時のLNA1のSパラメータをそれぞれ示す図、
図13(b)〜
図16(b)は
図11のG0〜G3モード時のLNA1のノイズ指数NFをそれぞれ示す図である。
【0065】
図17は
図11のLNA1のG0〜G3モードでのシミュレーション結果を示す図である。
図17のS21位相からわかるように、利得モード間の最大位相偏差[deg]は9.76であり、
図9よりも最大位相偏差が小さくなる。
【0066】
図18は
図17に示す各利得モードでのIIP3をグラフ化した図である。
図18の横軸は利得モード、縦軸はIIP3[dBm]である。図示のように、非線形補償回路17を設けたことで、G0モードとG1モードのIIP3が大きくなる。また、G3モード専用のシャント抵抗である第1抵抗Rsh3と、この第1抵抗Rsh3に並列接続された第2キャパシタCsh3とを備えているため、G3モードでのIIP3がより大きくなる。
【0067】
図11のLNA1に設けた非線形補償回路17は、
図2のLNA1に追加してもよい。
図19は
図2のLNA1に、
図11と同様の回路構成の非線形補償回路17を追加した回路図である。
図19のLNA1によれば、
図11のLNA1と同様に、G0モードとG1モードでのIIP3をより大きくできる。
【0068】
このように、第2の実施形態では、第1トランジスタQ1のゲートに繋がる入力信号経路と接地ノードとの間に接続されるシャント抵抗である第1抵抗Rsh3に第2キャパシタCsh3を並列接続するため、G3モード時のIIP3をより大きくすることができる。
【0069】
また、第2の実施形態では、第1トランジスタQ1と第2トランジスタQ2の接続ノードに非線形補償回路17を接続して、G0モードとG1モードのときに高周波入力信号に対する出力信号の非線形性を補償するため、G0モードとG1モードでのIIP3をより大きくできる。
【0070】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、外付けインダクタLextに並列に第5抵抗を接続するか否かを切り替えるものである。
【0071】
図20は第3の実施形態によるLNA1の回路図である。
図20のLNA1は、
図10のLNA1と共通する構成部材には同一符号を付しており、以下では相違点を中心に説明する。
図20のLNA1は、外付けインダクタLextに並列に第5抵抗Rtを接続するか否かを切り替える第7切替器21を備えている。第7切替器21は、G3信号がハイのときに、第5抵抗Rtを外付けインダクタLextに並列接続する第14トランジスタスイッチSW14である。すなわち、G3モード時には、外付けインダクタLextに第5抵抗Rtが並列接続され、G0〜G2モード時には、第5抵抗Rtは遮断されて外付けインダクタLextのみとなる。
【0072】
本発明者が検証したところ、G3モード時に、外付けインダクタLextに第5抵抗Rtを並列接続することにより、入力インピーダンスが変化し、IIP3がより大きくなることがわかった。、そのため、
図20の第7切替器21は、G3モード時のみ、外付けインダクタLextに第5抵抗Rtを並列接続している。
【0073】
図21は、
図20のLNA1に、
図11と同様の回路構成の非線形補償回路17を接続したLNA1の回路図である。
図21の非線形補償回路17は、G0〜G2モード時に、高周波入力信号に対する出力信号の非線形性を補償する。これにより、G0〜G2モード時にIIP3がより大きくなる。なお、
図11のLNA1内の非線形補償回路17は、G0モードとG1モードのときのみ非線形性を補償していた。これは、G2モードでは補償効果があまり得られなかったためである。よって、
図21の非線形補償回路17でも、
図11に合わせて、G0モードとG1モードのときのみ非線形性の補償を行ってもよい。あるいは、逆に、
図11の非線形補償回路17において、G0〜G2モード時に非線形性の補償を行ってもよい。
【0074】
図22は、各利得モードでの
図21のLNA1のバイアス電圧VB1、VB2と第1〜第10トランジスタスイッチSW1〜SW10のゲートに入力されるゲート信号G1、G1R、G23、G23R、G3、xG3の電圧値を示す図である。
図22の真理値表は、
図12からG01信号を省略したものになっている。
【0075】
図23(a)〜
図26(a)は、
図21のG0〜G3モード時のLNA1のSパラメータをそれぞれ示す図、
図23(b)〜
図26(b)は
図21のG0〜G3モード時のLNA1のノイズ指数NFをそれぞれ示す図である。
【0076】
図27は
図21のLNA1のG0〜G3モードでのシミュレーション結果を示す図である。
図27のS21位相からわかるように、利得モード間の最大位相偏差[deg]は12.8であり、
図17の最大位相偏差よりは大きいが、実用上は問題ない値である。
【0077】
図28は
図27に示す各利得モードごとのIIP3をグラフ化した図である。
図28の横軸は利得モード、縦軸はIIP3[dBm]である。G3モードの時のIIP3は15.6dBmであり、
図17に示される20.3dBmに対しては小さい。しかし、
図27の方がバイアス電流Idd_lnaが小さいことに留意されたい。すなわち第3の実施形態では、バイアス電流Idd_lnaが小さくても良好なIIP3が得られる。
【0078】
このように、第3の実施形態では、G3モード時に外付けインダクタLextに第5抵抗Rtを並列接続することにより、小さいバイアス電流Idd_lnaに対しても良好なIIP3を得ることができる。
【0079】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、第1トランジスタQ1のゲートと接地ノードとの間に、抵抗とキャパシタからなる直列回路を接続するか否かを切り替える回路(以下では、第1IIP3改善回路と呼ぶ)を設けるものである。
【0080】
図29は第4の実施形態によるLNA1の回路図である。
図29のLNA1は、
図2のLNA1に第1IIP3改善回路22を追加した回路構成になっている。第1IIP3改善回路22は、第1トランジスタQ1のゲートと接地ノードの間に、第5キャパシタCx3と第6抵抗Rb3とを直列接続した直列回路を設けるか否かを切り替える第8切替器23を有する。
【0081】
第8切替器23は、G3信号がハイのときにオンする第15トランジスタスイッチSW15である。この第15トランジスタスイッチSW15がオンすると、第1トランジスタQ1のゲートと接地ノードの間に、第5キャパシタCx3と第6抵抗Rb3とが直列接続される。
【0082】
G3モード時に、第1IIP3改善回路22の第5キャパシタCx3の容量と第6抵抗Rb3の抵抗値を最適化することで、IIP3をより大きくすることができる。
【0083】
図30は、
図29のLNA1に、
図11と同様の回路構成の非線形補償回路17を接続したLNA1の回路図である。
図30の非線形補償回路17は、G0〜G2モード時に、出力信号の非線形性を補償する。
【0084】
このように、
図29のLNA1では、非線形補償回路17にてG0〜G2モード時のIIP3をより高くでき、第1IIP3改善回路22にてG3モード時のIIP3をより高くできる。
【0085】
図31は、各利得モードでの
図30のLNA1のバイアス電圧VB1、VB2と第1〜第10トランジスタスイッチSW1〜SW10のゲートに入力されるゲート信号G1、G1R、G23、G23R、G3、xG3の電圧値を示す図である。
図31の各利得モードでの各ゲート信号の電圧値は、
図22と同様である。
【0086】
図32(a)〜
図35(a)は、
図30のG0〜G3モード時のLNA1のSパラメータをそれぞれ示す図、
図32(b)〜
図35(b)は
図30のG0〜G3モード時のLNA1のノイズ指数NFをそれぞれ示す図である。
【0087】
図36は
図30のLNA1のG0〜G3モードでのシミュレーション結果を示す図である。
図36のS21位相からわかるように、利得モード間の最大位相偏差[deg]は10.44であり、
図17の最大位相偏差よりは大きいが、実用上は問題ない値である。
【0088】
図37は
図36に示す各利得モードごとのIIP3をグラフ化した図である。
図37の横軸は利得モード、縦軸はIIP3[dBm]である。
図37では、
図30のLNA1の各利得モードでのIIP3を実線で、
図30のLNA1から非線形補償回路17と第1IIP3改善回路22を削除した一比較例のLNA1のIIP3を破線で示している。図示のように、第1及び第1IIP3改善回路22を設けることで、各利得モードにおいて、IIP3がより大きくなることがわかる。
【0089】
このように、第4の実施形態では、G3モード時に第1トランジスタQ1のゲートと接地ノードとの間に、第5キャパシタCx3と第6抵抗Rb3とを直列接続するため、G3モードでのIIP3をより高くすることができる。
【0090】
(第5の実施形態)
第5の実施形態は、第1トランジスタQ1のゲートに接続されるESD保護回路を用いて、G3モード時のIIP3をより高くするものである。
【0091】
図38は第5の実施形態によるLNA1の回路図である。
図38のLNA1は、
図2のLNA1に第2IIP3改善回路24を追加した回路構成になっている。第1トランジスタQ1のゲートに繋がる入力信号経路と、第1トランジスタQ1のソースとの間には、ESD保護回路25が接続されることがあり、このESD保護回路25をG3モード時のIIP3を改善する目的で利用するのが第2IIP3改善回路24である。
【0092】
ESD保護回路25は、アノード−カソードが逆向きに並列接続された第1ダイオード対26と、同じくアノード−カソードが逆向きに並列接続された第2ダイオード対27とを有する。第1ダイオード対26と第2ダイオード対27は、第1トランジスタQ1のゲートに繋がる入力信号経路と、第1トランジスタQ1のソースとの間に直列に接続されている。すなわち、第1ダイオード対26の一端はノードn2に接続され、第1ダイオード対26の他端は第2ダイオード対27の一端に接続され、第2ダイオード対27の他端は第1トランジスタQ1のソースに接続されている。第1ダイオード対26は、第2ダイオード対27よりも、接合面積が大きいため、第1ダイオード対26は等価的にキャパシタとして機能する。
【0093】
また、第1ダイオード対26の他端と接地ノードの間には、第2IIP3改善回路24にてIIP3の改善を行うか否かを切り替える第9切替器28が接続されている。
【0094】
第9切替器28は、G3モード時にハイになる第16トランジスタスイッチSW16を有する。この第16トランジスタスイッチSW16がハイになると、第1ダイオード対26の他端と接地ノードとの間に第7抵抗Rsh3が接続される。G0〜G2モードでは、第7抵抗は遮断される。このため、G0〜G2モードでは、第1ダイオード対26と第2ダイオード対27は、単なるESD保護回路25として機能する。
【0095】
第1ダイオード対26は、ハイインピーダンス回路であり、等価的にはキャパシタとして機能する。よって、第9切替器28内の第16トランジスタスイッチSW16がオンの場合には、第1トランジスタQ1のゲートと接地ノードの間に、キャパシタと第7抵抗Rsh3とが直列接続された回路となる。これにより、
図29の第1IIP3改善回路22と同様に、IIP3をより高くすることができる。
【0096】
図39は、
図38のLNA1に、
図11と同様の回路構成の非線形補償回路17を接続したLNA1の回路図である。
図39の非線形補償回路17は、G0〜G2モード時に、出力信号の非線形性を補償する。
【0097】
このように、
図39のLNA1では、非線形補償回路17によりG0〜G2モード時のIIP3をより高くでき、第2IIP3改善回路24によりG3モード時のIIP3をより高くできる。
【0098】
図40は、各利得モードでの
図39のLNA1のバイアス電圧VB1、VB2と第1〜第10トランジスタスイッチSW1〜SW10のゲートに入力されるゲート信号G1、G1R、G23、G23R、G3、xG3の電圧値を示す図である。
図40の各利得モードでの各ゲート信号の電圧値は、
図22と同様である。
【0099】
図41(a)〜
図44(a)は、
図30のG0〜G3モード時のLNA1のSパラメータをそれぞれ示す図、
図41(b)〜
図44(b)は
図39のG0〜G3モード時のLNA1のノイズ指数NFをそれぞれ示す図である。
【0100】
図45は
図39のLNA1のG0〜G3モードでのシミュレーション結果を示す図である。
図45のS21位相からわかるように、利得モード間の最大位相偏差[deg]は9.88であり、十分に小さいことがわかる。
【0101】
図46は
図45に示す各利得モードごとのIIP3をグラフ化した図である。
図46の横軸は利得モード、縦軸はIIP3[dBm]である。
図46では、
図39のLNA1の各利得モードでのIIP3を実線で、
図39のLNA1から非線形補償回路17と第2IIP3改善回路24を削除した一比較例のLNA1のIIP3を破線で示している。図示のように、非線形補償回路17と第2IIP3改善回路24を設けることで、各利得モードにおいて、IIP3がより大きくなることがわかる。
【0102】
このように、第5の実施形態では、第1トランジスタQ1のゲートに接続されている汎用的なESD保護回路25を流用して第2IIP3改善回路24を構成するため、回路規模をさほど大きくすることなく、G3モード時のIIP3をより大きくすることができる。
【0103】
(第6の実施形態)
最近の携帯通信機器では、複数の周波数を利用して無線通信を行うキャリアアグリゲーション技術を用いて無線通信を行うことが多い。この場合、SOI基板上に、複数のLNA1と、複数のバンド切替スイッチとを配置する必要がある。
図47はキャリアアグリゲーションに対応した無線装置2の概略構成を示すブロック図である。
図47は、アンテナ3からの受信回路のブロック構成を示している。送信回路のブロック構成は
図1と同様である。
【0104】
図47の無線装置2は、アンテナスイッチ4と、複数のバンドパスフィルタ5と、複数のバンド切替スイッチ29と、複数のLNA1とを備えている。複数のバンド切替スイッチ29と複数のLNA1とは同一のSOI基板に配置されており、ワンチップ化が可能である。あるいは、アンテナスイッチ4も含めて同一のSOI基板に配置してワンチップ化してもよい。
【0105】
図47の複数のLNA1は、第1乃至第6の実施形態によるLNA1である。アンテナスイッチ4で切り替えられた各周波数の受信信号は、対応するバンドパスフィルタ5を通過した後、対応するバンド切替スイッチ29に入力される。バンド切替スイッチ29において選択された入力信号が対応するLNA1に入力されて、G0〜G3モードのいずれかの利得モードで増幅される。
【0106】
SOI基板上に複数のバンド切替スイッチ29と複数のLNA1を配置することで小型化及び低消費電力化も可能となる。
【0107】
上述した第1〜第5の実施形態では、SOI基板上にLNA1を配置する例を説明したが、第1〜第5の実施形態によるLNA1は、バルクシリコン基板上に配置してもよい。バルクシリコン基板上に配置したLNA1であっても、上述した非線形補償回路17やシャント抵抗、IIP3補償回路等を内部に設けることで、IIP3をより大きくすることができる。
【0108】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。