特許第6937285号(P6937285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日▲高▼ 修一の特許一覧

特許6937285持ち出しタイプ且つスラブ隠しタイプの手摺構成体
<>
  • 特許6937285-持ち出しタイプ且つスラブ隠しタイプの手摺構成体 図000002
  • 特許6937285-持ち出しタイプ且つスラブ隠しタイプの手摺構成体 図000003
  • 特許6937285-持ち出しタイプ且つスラブ隠しタイプの手摺構成体 図000004
  • 特許6937285-持ち出しタイプ且つスラブ隠しタイプの手摺構成体 図000005
  • 特許6937285-持ち出しタイプ且つスラブ隠しタイプの手摺構成体 図000006
  • 特許6937285-持ち出しタイプ且つスラブ隠しタイプの手摺構成体 図000007
  • 特許6937285-持ち出しタイプ且つスラブ隠しタイプの手摺構成体 図000008
  • 特許6937285-持ち出しタイプ且つスラブ隠しタイプの手摺構成体 図000009
  • 特許6937285-持ち出しタイプ且つスラブ隠しタイプの手摺構成体 図000010
  • 特許6937285-持ち出しタイプ且つスラブ隠しタイプの手摺構成体 図000011
  • 特許6937285-持ち出しタイプ且つスラブ隠しタイプの手摺構成体 図000012
  • 特許6937285-持ち出しタイプ且つスラブ隠しタイプの手摺構成体 図000013
  • 特許6937285-持ち出しタイプ且つスラブ隠しタイプの手摺構成体 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6937285
(24)【登録日】2021年9月1日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】持ち出しタイプ且つスラブ隠しタイプの手摺構成体
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/18 20060101AFI20210909BHJP
   E04B 1/00 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
   E04F11/18
   E04B1/00 502C
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-221073(P2018-221073)
(22)【出願日】2018年11月27日
(65)【公開番号】特開2020-84597(P2020-84597A)
(43)【公開日】2020年6月4日
【審査請求日】2020年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】518058340
【氏名又は名称】日▲高▼ 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 修一
【審査官】 津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−144403(JP,A)
【文献】 特開2017−197930(JP,A)
【文献】 特開2009−074238(JP,A)
【文献】 特開2004−107887(JP,A)
【文献】 特開平10−037423(JP,A)
【文献】 特開2006−307620(JP,A)
【文献】 国際公開第02/075073(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/18
E04B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルコニーや廊下を構成するコンクリートスラブ(13)に設けられる支柱(12)、該支柱に固定された連結部材(14,34)、該連結部材に取り付けられる格子ユニット(16,30)を有する、持ち出しタイプ且つスラブ隠しタイプの手摺構成体(1)であって、
前記格子ユニット(16,30)は、バルコニーや廊下の内側空間(S2)に配置された構造物を覆うように配置されており、上下に移動可能であり、
前記連結部材(14,34)は、外側空間方向に延びる第1連結部材(14)と、該第1連結部材よりも外側空間方向に短い第2連結部材(34)とを有し、
前記格子ユニット(16,30)は、前記第1連結部材(14)に対して取り付けられた第1格子ユニット(16)と、前記第2連結部材(34)に対して取り付けられた第2格子ユニット(30)とを有し、
それぞれの前記第1格子ユニット(16)又は前記第2格子ユニット(30)の上又は下に隣接して、前記第2格子ユニット(30)又は前記第1格子ユニット(16)がそれぞれ配置されている、ことを特徴とする手摺構成体。
【請求項2】
上下方向に移動した前記第1格子ユニット(16)又は前記第2格子ユニット(30)の下端とコンクリートスラブ(13)の間に、開口部(40)が形成される、ことを特徴とする請求項1に記載の手摺構成体。
【請求項3】
前記連結部材(14,34)は、前記第1及び第2格子ユニット(16,30)をそれぞれ支えるストッパとして機能する上側ブラケット(14A,34A)及び下側ブラケット(14B,34B)を有し、
前記第1及び第2格子ユニット(16,30)の下側横桟(18B,38B)の上端から前記上側ブラケット(14A,34A)の下端までの距離(Z)が、前記開口部(40)の縦寸法を画定する、ことを特徴とする請求項2に記載の手摺構成体。
【請求項4】
前記第1及び第2格子ユニット(16,30)の左右両端に位置する2本の縦桟(20A又は18)は、第1溝部(20c又は20d)を有するレール部(20e又は20f)を備え、
前記連結部材(14,34)は、固定手段(17a,17b)により前記縦桟(20A又は18)の前記レール部(20e又は20f)に解除可能に固定され、前記固定手段(17a,17b)の解除時には前記第1及び第2格子ユニット(16,30)は前記レール部(20e又は20f)に沿って移動可能である、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の手摺構成体。
【請求項5】
前記第1格子ユニット(16)及び前記第2格子ユニット(30)が上下方向に交互に配置されている、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の手摺構成体。
【請求項6】
前記第1格子ユニット(16)及び前記第2格子ユニット(30)が複数の階にわたって配置されている、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の手摺構成体。
【請求項7】
前記第1格子ユニット(16)及び前記第2格子ユニット(30)が左右方向に且つ上下方向に交互に配置されている、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の手摺構成体。
【請求項8】
或る階では前記第1格子ユニット(16)のみが配置され、当該階の上階又は下階では前記第2格子ユニット(30)のみが配置される、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の手摺構成体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、持ち出しタイプ且つスラブ隠しタイプの手摺構成体に関する。
【背景技術】
【0002】
中高層マンションのような集合住宅等においては、工期の短縮とコストの軽減を図る目的から仮設足場を必要としない建築工法が研究されている。この際、バルコニーや外部廊下の手摺構成体は、採光性と防風性、更にはデザイン性を重視する観点から、ガラス腰壁や格子腰壁を備えた「腰壁タイプ」の手摺構成体が多く採用される傾向にある。このような手摺構成体は、バルコニーや廊下を構成するコンクリートスラブの外側空間と内側空間の間に位置するスラブ鼻先部に沿って所定間隔で支柱を列設することにより手摺本体を構成し、前記支柱にブラケットを介して格子ユニットを取付けることにより構築される。従って、格子ユニットが外側に持ち出し状に支持されるため「持ち出しタイプ」と称される。
【0003】
また、デザイン的側面から、建物の外観として、手摺本体の笠木や支柱上部が外部から視認できないように格子ユニットで被い隠すことが好ましく、更には、外部からバルコニーや廊下のコンクリートスラブの鼻先部を見せないように、格子ユニットによりスラブの鼻先部分を被い隠した「スラブ隠しタイプ」の手摺構成体が提供されている。これにより、格子ユニットが建物の外観部の前面に設置されると共に、他の外壁と同一面上で連続するファサードを構成することが可能になる。
【0004】
さらに、図13に示すように、持ち出しタイプかつスラブ隠しタイプの手摺構成体が知られている。このような手摺構成体は複数の階にわたって延在し、ベランダなどの上部空間に設置されたエアコン室外機や間仕切りなどの構造物を覆って外側空間S1から隠している。スラブ鼻先部51のタイル補修又は塗装工事等のメンテナンスに対応するために、個々の手摺構成体50は上下に可動に構成されている。
【0005】
しかしながら、個々の手摺構成体50の格子ユニット(格子パネル)が、外側空間方向に同レベルで上下に配置されているため、互いにつかえてしまい、任意の格子ユニットを自由に動かせない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、バルコニーや廊下などの内側空間に配置された構造物を外側空間から隠しつつ、内側空間からの、バルコニーや廊下などを構成するコンクリートスラブの鼻先部のメンテナンスをも可能とする、持ち出しタイプ且つスラブ隠しタイプの手摺構成体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、バルコニーや廊下を構成するコンクリートスラブに設けられる支柱、該支柱に固定された連結部材、該連結部材に取り付けられる格子ユニットを有する、持ち出しタイプ且つスラブ隠しタイプの手摺構成体であって、前記格子ユニットは、バルコニーや廊下の内側空間に配置された構造物を覆うように配置されており、上下に移動可能であり、前記連結部材は、外側空間方向に延びる第1連結部材と、該第1連結部材よりも外側空間方向に短い第2連結部材とを有し、前記格子ユニットは、前記第1連結部材に対して取り付けられた第1格子ユニットと、前記第2連結部材に対して取り付けられた第2格子ユニットとを有し、それぞれの前記第1格子ユニット又は前記第2格子ユニットの上又は下に隣接して、前記第2格子ユニット又は前記第1格子ユニットがそれぞれ配置されている、ことを特徴とする手摺構成体により解決される。
【発明の効果】
【0008】
バルコニーや廊下などの内側空間に配置された構造物を外側空間から隠しつつ、内側空間からの、バルコニーや廊下などを構成するコンクリートスラブの鼻先部のメンテナンスも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】建物の外側から見た手摺構成体の概略側面図である。
図2図1のA−Aを通る概略平面断面図である。
図3】縦桟の拡大断面図である。
図4図1の手摺構成体の概略正面図である。
図5図4の手摺構成体の縦桟を通るX−Xにおける概略側面断面図である。
図6図4の手摺構成体の縦桟を通るX−Xにおける概略側面断面図である。
図7】別な実施形態に係る手摺構成体の概略正面図である。
図8】建物の外側から見た手摺構成体の概略側面図である。
図9図1における縦格子タイプの格子ユニットを90°回転させてブラケットに取り付けた状態の概略側面図である。
図10図9のB−Bを通る概略平面断面図である。
図11】縦桟18の拡大断面図である。
図12】格子ユニットの回転を示す概略図である。
図13】従来型の手摺構成体を示す概略側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1〜7は、本発明の実施形態に係る移動可能な縦格子タイプの手摺構成体を示す。
図1は、建物の外側から見た手摺構成体の概略側面図、図2は、図1のA−Aを通る概略平面断面図、図3は、縦桟の拡大断面図である。図4は、図1の手摺構成体の概略正面図である。図5図6は、図4の手摺構成体の縦桟を通るX−Xにおける概略側面断面図である。図7は、別な実施形態に係る手摺構成体の概略正面図である。
【0011】
図1において、手摺構成体1は、縦格子タイプの格子ユニットを有する縦格子タイプの手摺構成体であり、バルコニーや廊下を構成するコンクリートスラブ13に設けられる支柱12、支柱の上部に取り付けられた笠木10、2本の支柱に上下に固定された連結部材としての各4個の第1ブラケット14及び第2ブラケット34、4個の第1ブラケット14に取り付けられた第1格子ユニット16、第1格子ユニット16の上下左右に隣接して4個の第2ブラケット34に取り付けられた第2格子ユニット30などを有する。格子ユニット16,30は、バルコニーや廊下の内側空間S2に配置された構造物を覆うように配置されており、上下に移動可能である。
【0012】
第1格子ユニット16は、水平方向に真っ直ぐに延びる2本の横桟18と、ネジ19によって横桟18に対して直交方向に横桟18に固定された複数の真っ直ぐに延びる縦格子20を有する。第2格子ユニット30も同様に、水平方向に真っ直ぐに延びる2本の横桟38と、ネジ19によって横桟38に対して直交方向に横桟38に固定された複数の真っ直ぐに延びる縦格子20を有する。よって、第1格子ユニット16及び第2格子ユニット30は同一構造を有する。ただし、第2連結部材としての第2ブラケット34は第1連結部材としての第1ブラケット14よりも外側空間方向に短いため(図1図2)、第2格子ユニット30は第1格子ユニット16よりも手前(バルコニー側)に位置する。それぞれの第1格子ユニット16又は第2格子ユニット30の上又は下に隣接して、第2格子ユニット30又は第1格子ユニット16がそれぞれ配置されている(図1)。
【0013】
図示のように手摺構成体1は持ち出しタイプかつスラブ隠しタイプの手摺構成体である。
以下では、適宜、第1格子ユニット16について説明するが、第2格子ユニット30についても同様の記載が当てはまる。
【0014】
図2に示すように、第1格子ユニット16及び第2格子ユニット30において、ネジ19は、断面が矩形形状で中空の形材である横桟18,38の内側(長辺部分)に形成された穴にそれぞれ挿入され、同様に断面が矩形形状で中空の形材である縦格子20Bの短辺を通って縦格子20Bの内側までそれぞれ挿入され、それにより縦格子20Bが横桟18,38にそれぞれ固定されている。縦格子20Bと横桟18,38はそれぞれ互いに直交方向に配置されている。
【0015】
支柱12は、アンカー11によってスラブ13に固定されている。
【0016】
図2,3に示すように、第1格子ユニット16の左右両端に位置する縦桟20Aは長方形断面を有し、縦桟20Aの短辺部分に対応する第1面20aには、第1溝部である第1溝20cを有するレール部である第1レール部20eが形成されており、第1面20aに隣接し長辺部分に対応する第2面20bには第2溝部である第2溝20dを有する別なレール部である第2レール部20fが形成されている。図1から分かるように、第1溝20cを有する第1レール部20e及び第2溝20dを有する第2レール部20fは縦桟20Aの全長に沿って延びている。よって、縦桟20Aは、2つのレール部を有する2レール部材として構成されている。縦桟20Aは、縦格子20Bと平行且つ横桟18,38とは直交方向に配置されている。
【0017】
第1格子ユニット16及び第2格子ユニット30のそれぞれの縦桟20Aは、上下2つの第1ブラケット14(14A,14B)及び第2ブラケット34(34A,34B)を介して支柱12に固定される(図1図2)。
【0018】
ここで、図2に示すように、第1ブラケット14の先端14c及び第2ブラケット34の先端34cは、ボルト17a及びナット17bを有する固定手段であるボルト部材17によって縦桟20Aの第1レール部20eに解除可能に締め付けられている。具体的には、縦桟20Aの第1溝20cにはナット17bが回転しないように挿入されており、このナット17bに、ボルト17aが第1ブラケット14の先端14cを介してねじ込まれている。したがって、ボルト17aを緩めることで、第1格子ユニット16及び第2格子ユニット30は支柱12に対して第1レール部20eに沿って上下に移動可能であるとともに、ボルト17aを締めることで、第1格子ユニット16及び第2格子ユニット30は任意の位置で支柱12に対して固定することができる。一方で、第1ブラケット14の基部14a及び第2ブラケット34の基部34aはネジ15によって支柱12に固定されており、第1ブラケット14及び第2ブラケット34は支柱12に対して動かない。
【0019】
図1に示すように、第1格子ユニット16及び、第1格子ユニットの上下に隣接して配置された第2格子ユニット30は、バルコニーや廊下の内側空間S2に配置された構造物を覆うように配置されている。これにより、内側空間S2の上部に設置されたエアコン室外機や間仕切りなどの構造物が外側空間S1から直接見えない。
【0020】
図4は、図1の手摺構成体の概略正面図である。図4は、例えば建物の1階及び2階に設けられた手摺構成体を示す。
図4に示す1階部分において、第1格子ユニット16及び第2格子ユニット30は左右方向に交互に配置されている。1階部分の中央の第1格子ユニット16Aに着目すると、第1格子ユニット16Aの上には、図4における2階部分において、第2格子ユニット30Aが配置されている。すなわち、第1格子ユニット16及び第2格子ユニット30が上下方向に交互に配置されている。また、第1格子ユニット16及び第2格子ユニット30が複数の階にわたって配置されている。なお、図示しない3階以上においても、第1格子ユニット16及び第2格子ユニット30が上下方向に交互に配置されてもよい。これにより、各階において、第1格子ユニット16又は第2格子ユニット30を、その上方に配置された第2格子ユニット30又は第1格子ユニット16に干渉することなく移動させることができる。
【0021】
中央の第1格子ユニット16Aは上階のスラブ13の下端まで延びているため、中央の第1格子ユニット16Aにより、例えば上部空間に設置されたエアコン室外機や間仕切りなどが覆われ、外側空間S1から隠されている。
【0022】
なお、本実施形態では各階の外側空間S1を覆うために1つの第1格子ユニット16又は1つの第2格子ユニット30が設置されているが、これに限られず、各階の外側空間S1を覆うために2以上の第1格子ユニット16及び第2格子ユニット30が、各階において上下に交互に設置されてもよい。
【0023】
図5図6は、図4の手摺構成体の支柱を通るX−Xにおける概略側面図である。ここでは、例えば3階部分に設けられた第1格子ユニット16も示している。
上述したように、第2格子ユニット30の取り付けられる第2ブラケット34が第1格子ユニット16の取り付けられる第1ブラケット14よりも外側空間方向に短いため、第1格子ユニット16は第2格子ユニット30よりも外側に位置する(図5)。したがって、図6に示すように、第1格子ユニット16は第2格子ユニット30に干渉せずに上方に移動できる。すなわち、第1格子ユニット16の縦桟20Aの上端は、第2格子ユニット30の縦桟20Aの下端に接触せずにすれ違い、重なる。これにより、上下方向に移動した第1格子ユニット16の下端とスラブ13の間に開口部40が形成される。
【0024】
同様に、図6から明らかなように、第2格子ユニット30も第1格子ユニット16に干渉することなく上方に移動でき、第2格子ユニット30の縦桟20Aの上端は、第1格子ユニット16の縦桟20Aの下端に接触せずにすれ違い、重なる。これにより、上下方向に移動した第2格子ユニット30の下端とスラブ13の間にも開口部が形成される。内側空間S1から開口部40を介して、コンクリートスラブ鼻先部33の防水塗装、タイル塗装、足場解体後の補修などのメンテナンスを行うことができ、手間のかかる外側空間S2からのメンテナンスは不要となる。さらに、開口部40は、外側空間S1からの消防隊の進入口や、内部空間からの居住者の緊急時の脱出口などとしても機能する。
【0025】
図7は、別な実施形態に係る手摺構成体の概略正面図である。図7は、例えば建物の1階、2階及び3階に設けられた手摺構成体を示す。
1階部分において、第1格子ユニット16及び第2格子ユニット30は左右方向に交互に配置されている。1階部分の中央の第1格子ユニット16Aに着目すると、第1格子ユニット16Aの上には、2階部分において第2格子ユニット30Aが配置され、3階部分において第1格子ユニット16Bが配置されている。また、2階部分及び3階部分においても、第1格子ユニット16及び第2格子ユニット30は左右方向に交互に配置されている。したがって、それぞれの第1格子ユニット16又は第2格子ユニット30の上又は下に隣接して、第2格子ユニット30又は第1格子ユニット16がそれぞれ配置されている。また、全ての第1格子ユニット16及び第2格子ユニット30が上下方向に交互に配置されている。さらに、第1格子ユニット16及び第2格子ユニット30が複数の階にわたって配置されている。
【0026】
これにより、各階において、第1格子ユニット16又は第2格子ユニット30を、その上方に配置された第2格子ユニット30又は第1格子ユニット16に干渉することなく移動させることができる。各階において第1格子ユニット16又は第2格子ユニット30を移動させることで、上下方向に移動した第1格子ユニット16又は第2格子ユニット30の下端とコンクリートスラブ13の間に開口部40(図6)が形成される。第1格子ユニット16A及び第2格子ユニット30は上階のスラブ13の下端まで延びているため、第1格子ユニット16A及び第2格子ユニット30により、例えば上部空間に設置されたエアコン室外機や間仕切りなどが覆われ、外側空間S1から隠されている。
【0027】
ところで、近年、子供が上層階のバルコニーなどから下へ落下する事故が起きている。その原因として、バルコニーに置かれた椅子や植物などが子供の足掛かりとなったり、寝室のベッドから窓枠までの距離が近すぎるためベッドが子供の足掛かりとなったりすることが考えられる。本実施形態では、バルコニー全体を覆うように第1格子ユニット16及び第2格子ユニット30が配置されているため、子供が落下するスペース(隙間)の形成を防ぐことができる。さらに、バルコニー全体(建物全体)を覆うように第1格子ユニット16及び第2格子ユニット30を配置した場合でも、建築基準法施行令で求められる、消防隊の進入口や居住者の緊急時の脱出口などとして機能する非常用進入口(開口部40)を形成することができる。
【0028】
本実施形態では、バルコニー全体(建物全体)を覆うように、第1格子ユニット16及び第2格子ユニット30が配置されており、また第1格子ユニット16及び第2格子ユニット30は左右方向に且つ上下方向に交互に配置されている。言い換えれば、外側空間S1において前後に位置する第1格子ユニット16及び第2格子ユニット30は市松模様を構成するように配置されている。
【0029】
しかしながら、図示した市松模様の配置に限られず、例えば1階では第1格子ユニット16のみを左右方向に配置し、2階では第2格子ユニット30のみを左右方向に配置し、3階では第1格子ユニット16のみを左右方向に配置してもよい。これによっても、各階において、第1格子ユニット16又は第2格子ユニット30を、その上方に配置された第2格子ユニット30又は第1格子ユニット16に干渉することなく移動させて、開口部40を形成することができる。
【0030】
なお、図1図5に示すように、第1格子ユニット16及び第2格子ユニット30が下限位置にあるとき、第1格子ユニット16の上端を構成する縦桟20A及び縦格子20Bの上端は、その第1格子ユニット16の上に配置された第2格子ユニット30の下端を構成する縦桟20A及び縦格子20Bの下端まで延びている。この第1格子ユニット16の上端と第2格子ユニット30の下端は外側空間方向に前後にずれているが、図4,7に示すように、その境界及び凹凸は正面からは見えず、繋ぎ目の無いきれいな外観が現れる。
【0031】
また前述した実施形態では、第1格子ユニット16及び第2格子ユニット30の左右両端に位置する縦桟20Aに、第1溝20cを有する第1レール部20eが直接形成されているため(図3)、第1ブラケット14及び第2ブラケット34と横桟18の間にレール部材として機能する別の縦桟(レール柱)を設ける必要が無い。
【0032】
また前述した実施形態では、第1格子ユニット16及び第2格子ユニット30において、左右両端に位置する2本の縦桟20Aと2本の横桟18,38は同一形状の形材から作られている。よって、図1に示される2本の横桟18,38の断面は、図2,3に示される縦桟20Aの断面と等しく、2本の横桟18,38も、第1レール部20e及び第2レール部20fを有する。これにより、左右両端に位置する2本の縦桟20A及び2本の横桟18,38に対応する一種の形材と、左右両端に位置する2本の縦桟20Aの間に配置された縦格子20Bに対応する一種の形材の、全二種の形材によって第1格子ユニット16及び第2格子ユニット30を構成することができる。ゆえに、格子ユニットは簡単且つ迅速に製作可能であり、コストダウンを図ることができる。
【0033】
なお図2の第1格子ユニット16及び第2格子ユニット30において、左右両端に位置する2本の縦桟20Aの間に配置された縦格子20Bが、左右両端に位置する2本の縦桟20Aと同一形状を有してもよい。すなわち、全ての縦桟20A及び縦格子20Bが同一形状を有してもよい。これにより、第1格子ユニット16及び第2格子ユニット30は一種の形材のみで構成することができ、格子ユニットの製作がさらに簡略化される。
【0034】
また前述した実施形態では、全ての格子部材、すなわち縦桟20A、縦格子20B及び横桟18,38は同一の寸法を有する。例えば、各格子部材の断面の長辺は30mm、短辺は15mmである。このように全ての格子部材の寸法を統一することで、格子部材の製作が簡単になるとともに格子ユニットの美観が向上される。なお、各格子部材の断面は長方形に限定されず、正方形や他の形状であってもよい。
【0035】
また、図1図5図6などに示す支柱12、笠木10及びブラケット14は、格子ユニット16により覆われているため、外側空間S1から視認できない。そのため、従来、顧客の要望に応じて様々な設計の笠木や支柱を作製する必要があったところ、支柱12及び笠木10は単純な形状を有する従来型の押出形材で統一することができる。すなわち、支柱12及び笠木10を2つの押出形材で構成することができる。また上述したように、格子ユニット16は1又は2つの押出形材で構成することができる。よって、手摺構成体1を3又は4つの押出形材で構成することができる。さらに、支柱12、笠木10及びブラケット14を、格子ユニットを取り付けるための架台とみなせば、架台が1つの設計で統一され(同一の架台が構成され)、この架台に、縦格子タイプの格子ユニット、横格子タイプの格子ユニット、ガラスパネルなどの任意のパネルを取り付けることができる。
【0036】
図1に示すように、架台(支柱12、笠木10及びブラケット14,34)に格子ユニットなどを取り付ける際は、上側横桟18Aが上側ブラケット14Aよりも上側に位置し、下側横桟18Bが下側ブラケット14Bよりも上側に位置するように、第1格子ユニット16を正面から又は上方から架台に対して取り付ければよい。すなわち、上側ブラケット14A及び下側ブラケット14Bが第1格子ユニット16を支えるストッパとなる。このとき、下側横桟18Bの上端から上側ブラケット14Aの下端までの距離Zが、格子ユニットが上下に移動可能な距離になり、開口部40の縦寸法を画定する。
【0037】
第2格子ユニット30についても同様に、上側ブラケット34A及び下側ブラケット34Bが第2格子ユニット30を支えるストッパとなる。このとき、下側横桟38Bの上端から上側ブラケット34Aの下端までの距離Zが、格子ユニットが上下に移動可能な距離になり、開口部40の縦寸法を画定する。
【0038】
距離Zは適切な長さに変更でき、例えば建築基準法施行令で求められる1200mmとすることができる。一方、開口部40の横寸法は支柱間の距離により画定され、例えば建築基準法施行令で求められる750mmとすることができる。
【0039】
図8は、本発明の別な実施形態に係る移動可能な縦格子タイプの手摺構成体を示す。
図8は、建物の外側から見た手摺構成体の概略側面図である。
手摺構成体1は、縦格子タイプの格子ユニットを有する縦格子タイプの手摺構成体であり、バルコニーや廊下を構成するコンクリートスラブ13に設けられる支柱12、支柱の上部に取り付けられた笠木10、2本の支柱に上下に固定された連結部材としての各4個の第1ブラケット14及び第2ブラケット34、4個の第1ブラケット14に取り付けられた第1格子ユニット16、第1格子ユニット16の上下左右に隣接して4個の第2ブラケット34に取り付けられた第2格子ユニット30などを有する。本実施形態では、支柱12は、或る階のスラブ13から上階のスラブ13まで延在する方立柱として構成されている。すなわち、支柱12の底部はアンカー11によってスラブ13に固定されるとともに、その上部分41が笠木10の上方にさらに延び、上階のスラブ13の下部に固定されている。これにより、支柱12は、格子ユニット16,30を支えるより強固な支柱となる。手摺構成体1のその他の構成は図1に示すものと同じである。
【0040】
また、図示した第1ブラケット14及び第2ブラケット34に加えて、第1ブラケット及び第2ブラケット(不図示)を支柱12の上部分41にさらに設け、第1格子ユニット16及び第2格子ユニット30をこれら第1ブラケット及び第2ブラケット(不図示)にさらに固定してもよい。
【0041】
また例えば、図示した上側ブラケット14A,34Aを支柱12の上部分41に取り付けてそれらの位置を上方へずらし、上側横桟18A,38Aを上側ブラケット14A,34Aに載るように位置を上方へずらしてもよい。このようにして、格子ユニットが上下に移動可能な距離に相当する、下側横桟18B,38Bの上端から上側ブラケット14A,34Aの下端までの距離Z(開口部40の縦寸法)を拡大することができる。
【0042】
図9〜11は、本発明の実施形態に係る移動可能な横格子タイプの手摺構成体を示す。
図9は、図1における縦格子タイプの格子ユニットを90°回転させてブラケットに取り付けた状態の概略側面図、図10は、図9のB−Bを通る概略平面断面図、図11は、縦桟18,38の拡大断面図である。
以下では主に第1格子ユニット16について説明するが、第2格子ユニット30にも同様の記載が当てはまる。
【0043】
前述した実施形態では、左右両端に位置する2本の縦桟20Aと2本の横桟18は同一形状の形材から作られている。なお、縦桟20A及び横桟18は長方形断面を有しているが、これに限られず正方形断面や他の多角形断面を有してもよい。具体的には、図3に示すように、縦桟20A及び横桟18の短辺部分に対応する第1面20aには、第1溝部である第1溝20cを有する第1レール部20eが形成されており、第1面20aに隣接し長辺部分に対応する第2面20bには第2溝部である第2溝20dを有する第2レール部20fが形成されている。このように、左右両端に位置する2本の縦桟20Aと2本の横桟18のそれぞれに第1レール部20e及び第2レール部20fを形成することで、縦格子タイプの第1格子ユニット16を、90°回転させて横格子タイプの第1格子ユニット16として使用することができる。
【0044】
すなわち、このように構成された縦格子タイプの第1格子ユニット16を第1ブラケット14から取り外し、90°回転させると、図9に示すように、横格子タイプの第1格子ユニット16となる。具体的には、図9に示すように、図2において左右両端に位置していた縦桟20Aは上下端部の横ルーバー(横桟)20Aとなり(図9)、図1の2本の横桟18は2本の縦桟18となり(図9)、図2の左右両端に位置する2本の縦桟20Aの間に配置されていた縦格子20Bは横ルーバー20Bとなる(図9,10)。よって、図10,11に示すように、90°回転後の横格子タイプの第1格子ユニット16は、第2面20bに、第1溝部である第2溝20dを有するレール部である第2レール部20fを備えた縦桟18を有し、第2レール部20fは鉛直方向に延びている。そのため、この第1格子ユニット16を、第2レール部20f及びボルト部材17を用いて第1ブラケット14に固定することで、第2レール部20fに沿って上下に移動可能な横格子タイプの手摺構成体1を構成することができる。
【0045】
逆に言えば、図9において、上下両端に位置する2本の横ルーバー20Aと2本の縦桟18のそれぞれに第1レール部20e及び第2レール部20fを形成することで、横格子タイプの第1格子ユニット16(図9)を、90°回転させて縦格子タイプの第1格子ユニット16(図1)として使用することができる。
【0046】
第2格子ユニット30にも同様の記載が当てはまる。すなわち、縦格子タイプの第2格子ユニット30を第2ブラケット34から取り外し、90°回転させると、図9に示すように、横格子タイプの第2格子ユニット16となる。具体的には、図9に示すように、図2において左右両端に位置していた縦桟20Aは上下端部の横ルーバー(横桟)20Aとなり(図9)、図1の2本の横桟18は2本の縦桟18となり(図9)、図2の左右両端に位置する2本の縦桟20Aの間に配置されていた縦格子20Bは横ルーバー20Bとなる(図9,10)。よって、図10,11に示すように、90°回転後の横格子タイプの第2格子ユニット16は、第2面20bに、第1溝部である第2溝20dを有するレール部である第2レール部20fを備えた縦桟18を有し、第2レール部20fは鉛直方向に延びている。そのため、この第2格子ユニット30を、第2レール部20f及びボルト部材17を用いて第2ブラケット34に固定することで、第2レール部20fに沿って上下に移動可能な横格子タイプの手摺構成体1を構成することができる。
【0047】
逆に言えば、図9において、上下両端に位置する2本の横ルーバー20Aと2本の縦桟18のそれぞれに第1レール部20e及び第2レール部20fを形成することで、横格子タイプの第2格子ユニット30(図9)を、90°回転させて縦格子タイプの第2格子ユニット30(図1)として使用することができる。
【0048】
ゆえに、縦格子タイプの格子ユニットと横格子タイプの格子ユニットを必要に応じて使い分けることができるため、コストダウンが可能となるとともに、これら格子ユニットを簡単且つ迅速に製作することができる。横格子タイプの格子ユニットの場合、格子ユニットを上下動させるためのレール部を縦桟18に直接設けることができる。
【0049】
図9,10,11に示す持ち出しタイプの手摺構成体1は、バルコニーや廊下を構成するコンクリートスラブに設けられる支柱12、2本の支柱に上下に固定された連結部材としての各4個の第1ブラケット14及び第2ブラケット34、4個の第1ブラケット14に取り付けられた横格子タイプの第1格子ユニット16、第1格子ユニット16の上下左右に隣接して4個の第2ブラケット34に取り付けられた横格子タイプの第2格子ユニット30などを有する。格子ユニット16,30は、バルコニーや廊下の内側空間S2に配置された構造物を覆うように配置されており、上下に移動可能である。
【0050】
第1格子ユニット16の左右両端に位置する2本の縦桟18は、第1溝部である第2溝20dを有するレール部である第2レール部20fを備える。支柱12及び第1ブラケット14によって構成された架台に対して第1格子ユニット16が取り付けられる。第1ブラケット14は、固定手段であるボルト17a、ナット17bにより縦桟18の第2レール部20fに解除可能に固定され、固定手段の解除時には格子ユニット16は第2レール部20fに沿って移動可能である。
【0051】
また、この横格子タイプの第1格子ユニット16を有する手摺構成体1では、2本の縦桟18は長方形断面を有し、2本の縦桟18の長辺部分に対応する第2面20bには、第1溝部である第2溝20dを有するレール部である第2レール部20fが形成されており、第2面20bに隣接し短辺部分に対応する第1面20aには第2溝部である第1溝20cを有する別なレール部である第1レール部20eが形成されている。
【0052】
また、この横格子タイプの第1格子ユニット16を有する手摺構成体1では、横格子タイプの第1格子ユニット16の上端及び下端に位置する横桟20Aは長方形断面を有し、横桟20Aの短辺部分に対応する第1面20aには、第2溝部である第1溝20cを有する別なレール部である第1レール部20eが形成されており、第1面20aに隣接し長辺部分に対応する第2面20bには第1溝部である第2溝20dを有するレール部である第2レール部20fが形成されている。
【0053】
また、この横格子タイプの第1格子ユニット16を有する手摺構成体1では、横格子タイプの第1格子ユニット16は、90°回転させることで縦格子タイプの第1格子ユニット16を構成し(図1,2,3)、第1ブラケット14は、固定手段により、縦桟として機能する横桟20Aの別なレール部である第1レール部20eに解除可能に固定され、固定手段の解除時には第1格子ユニット16は別なレール部である第1レール部20eに沿って移動可能である。
【0054】
なお、第1格子ユニット16を90°回転させるとは、図12に示すように、例えば縦格子タイプの第1格子ユニット16における、右上に位置する縦桟20Aと上側横桟18Aの結合点Pを右下の結合点P’の位置に回転移動させることを意味する。90°回転により、縦格子タイプの第1格子ユニット16は横格子タイプの第1格子ユニット16になる。
【0055】
図1図8及び図9に示すように、本発明の実施形態に係る手摺構成体1は、持ち出しタイプ且つスラブ隠しタイプの手摺構成体である。
【0056】
なお、第1格子ユニット16及び第2格子ユニット30を有する手摺構成体を例に述べたが、これに限られず、例えば第1ブラケット14よりも長い別なブラケット又は第2ブラケット34よりも短い更に別なブラケットに、第3格子ユニット又は第4格子ユニットを固定してもよい。これによっても、第1格子ユニット16、第2格子ユニット30、第3格子ユニット又は第4格子ユニットは、互いに干渉することなく移動でき、開口部を形成することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 手摺構成体
12 支柱
14 第1ブラケット(第1連結部材)
16 第1格子ユニット
30 第2格子ユニット
34 第2ブラケット(第2連結部材)
S2 内側空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13