(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントであって、Tauへの結合について、請求項1、2、又は3に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメントと競合する、前記Tau結合抗体又はその結合フラグメント。
単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントであって、請求項1、2、又は3に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメントと実質的に同じエピトープへ結合する、前記Tau結合抗体又はその結合フラグメント。
Tau結合抗体又はその結合フラグメントが、可溶性形態のヒトTau、ヒトTauの対形成したらせん状フィラメント(PHF)又は可溶性形態のヒトTau及びヒトTauの対形成したらせん状フィラメント(PHF)の両方へ結合する、請求項1、2、3、4、5、6、又は7に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実験2.3のELISAアッセイにおける配列番号7のウサギVL配列(VL_AB1)及び配列番号8のウサギVH配列(VH_AB1)を有するAB1の、ビオチン化T197ペプチドへの結合対ビオチン化ペプチドT174、T211、T230及びT396への結合。
【
図3】ヒトPSP患者(PSP−PHF8)から回収したヒトTau病理学的原線維をシーズとして用いた細胞内Tau凝集アッセイにおける配列番号17の軽鎖及び配列番号20の重鎖を有するTau結合抗体(A)、ならびに配列番号17の軽鎖及び配列番号21の重鎖を有するTau結合抗体、又は陰性対照IgG4抗体A33(C)の有効性。
【
図4】ヒトAD又はPSP由来のTau含有可溶化液に対する、配列番号9の軽鎖及び配列番号10の重鎖を有するTau結合抗体AB1の結合特性を示すウェスタンブロット。
【
図5】A)は、CDR1(配列番号1)、CDR2(配列番号2)及びCDR3(配列番号53)が下線を付されている配列番号7のAB1のドナーVL(VL_AB1)を示す。B)は、アクセプターCDR1、CDR2、及びCDR3が下線を付されている配列番号44のヒトアクセプター領域IGKV1−39のVL配列を示す。C)は、CDR1(配列番号1)、CDR2(配列番号2)及びCDR3(配列番号3)が下線を付されている、配列番号11のCDRグラフト結合配列gVL4_AB1を示す。D)は、CDR1(配列番号1)、CDR2(配列番号2)及びCDR3(配列番号54)が下線を付されている配列番号12のCDRグラフト結合配列gVL9_AB1を示し、CDR3は、VL_AB1と比較してA91変異を含む。
【
図6】A)は、CDR1(配列番号4)、CDR2(配列番号5)及びCDR3(配列番号48)が下線を付されている配列番号8のAB1のドナーVH(VH_AB1)を示す。B)は、アクセプターCDR1、CDR2、及びCDR3が下線を付されている配列番号45のヒトアクセプター領域のVH配列IGHV4−39を示す。C)は、CDR1(配列番号4)、CDR2(配列番号5)及びCDR3(配列番号49)が下線を付されている配列番号14のCDRグラフト結合配列gVH41_AB1を示す。ドナー残基は、斜体かつ太字で示されている(K71及びV78)。フレームワークにおける変異は、強調されている(E1)。CDR3は、VH_AB1と比較してN100Q置換を含む。D)は、CDR1(配列番号4)、CDR2(配列番号5)及びCDR3(配列番号50)が下線を付されている配列番号15のCDRグラフト結合配列gVH49_AB1を示す。ドナー残基は、斜字かつ太字で示されている(K71及びV78)。フレームワークにおける変異は強調されている(E1)。CDR3は、VH_AB1と比較してN100A置換を含む。
【
図7】ヒトAD患者からシードとして回収されたヒトTau病理学的原線維を用いた細胞内Tau凝集アッセイにおける、配列番号9の軽鎖及び配列番号10の重鎖を有するTau結合抗体の、ならびに配列番号55のリン酸化された残基202及び205を含むエピトープへ結合するような当該文献において説明されるTau結合抗体AT8、又は陰性対照抗体101.4の有効性。
【
図8】ヒトAD患者、又はヒトPSP患者もしくはヒトFTD患者からシードとして回収されたヒトTau病理学的原線維を用いた細胞内Tau凝集アッセイにおける配列番号17の軽鎖及び配列番号20の重鎖を有するTau結合抗体の有効性。
【0029】
発明の詳細な説明
以下において例証として説明される本開示は、本明細書に具体的に開示されていないいかなる要素又は複数の要素、制限又は複数の制限の不在下でも適切に実施され得る。
【0030】
本開示は、その特定の態様及びその実施形態に関して、ならびにある図面及び例に関して説明されるが、本発明はそれらによる制限を受けない。
【0031】
技術用語は、別段の記載がない限り、当該用語の通常の意味によって使用される。具体的な意味がある特定の用語に付与される場合、用語の定義が当該用語が使用される状況に応じて以下に与えられる。
【0032】
「を含んでいる」という用語が本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、当該用語は、他の要素を排除しない。本開示の目的のために、「からなる」という用語は、「から構成されている」という用語の好ましい実施形態であるとみなされる。以後、群が少なくともある特定の数の実施形態を含むと定義される場合、このことはまた、好ましくはこれらの実施形態のみからなる群を開示するように理解されるものとする。
【0033】
本開示の目的のために、「得られた」という用語は、「得ることができる」という用語の好ましい実施形態であるとみなされる。以後、例えば、抗体が具体的な源から得られることができると定義される場合、このことはまた、この源から得られる抗体を開示するよう理解されるものとする。
【0034】
不定冠詞又は定冠詞、例えば「a」、「an」又は「the」が、単数名詞を指すときに使用される場合には、ほかに何らかの具体的な記載がない限り、当該名詞の複数形も包含される。「約」又は「およそ」という用語は、問題となっている特性の技術的な効果がなおも保証されると当業者が理解するであろう正確な間隔を示す。当該用語は典型的には、±10%の、好ましくは±5%の、示される数値からの偏差を示す。
【0035】
種々の態様の好ましい実施形態としてのTau結合抗体又はその結合フラグメントに対するいかなる参照も、モノクローナルTau結合抗体又はその結合フラグメントを熟慮することは理解されるものとする。
【0036】
種々の態様について、本開示は、CDRならびに個々の軽鎖領域及び/又は重鎖領域の可変部を含む抗体ならびにその結合フラグメントを示す。軽鎖可変部及び/又は重鎖可変部のみを含む抗体又はその結合フラグメントは、例えば、対応する他の可変部と有効に結合することのできる可変部を製造する方法に対して、又は当該可変部をスクリーニングする方法に対して有用であり得る。しかしながら、CDRならびに個々の軽鎖領域及び/又は重鎖領域の可変部を含む抗体ならびにその結合フラグメントに対する参照がなされる場合はどこでも、このことが常に、CDRならびに個々の軽鎖領域及び重鎖領域の可変部を含む抗体ならびにその結合フラグメントを好ましい実施形態として熟慮することは理解されるものとする。
【0037】
本明細書で使用される場合、「処置」、「処置すること」という用語及びこれらに類するものは、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを指す。当該効果は、疾患及び/もしくはその症状を完全にもしくは部分的に予防する点で予防的であり得、ならびに/又は疾患及び/もしくは当該疾患に起因する有害作用に対する部分的な又は完全な治癒の点で治療的であり得る。したがって、処置は、哺乳類における、特にヒトにおける疾患の何らかの処置を網羅し、(a)当該疾患に易罹患性であり得るが、当該疾患に罹患しているとまだ診断されてはいない対象において、当該疾患が発症するのを予防すること、(b)当該疾患を抑制すること、すなわち、当該疾患の発症を抑止すること、及び(c)当該疾患を緩和すること、すなわち、当該疾患の退行を生じることがカバーされる。
【0038】
Tau結合抗体又はその結合フラグメントを「治療活性のある薬剤」として参照する場合、疾患の処置におけるTau結合抗体又はその結合フラグメントの使用を指す。
【0039】
「治療有効量」は、疾患を処置するために哺乳類又は他の対象へ投与される時、当該疾患のためのこのような処置をもたらすのに十分であるTau結合抗体又はその結合フラグメントの量を指す。治療有効量は、Tau結合抗体又はその結合フラグメント、治療されることになっている対象の疾患及びその重症度ならびに齢、体重などによって変化するであろう。
【0040】
「診断活性のある薬剤」としてのTau結合抗体又はその結合フラグメントに対する参照は、疾患の診断におけるTau結合抗体又はその結合フラグメントの使用を指す。
【0041】
「診断有効量」は、生物試料に関する診断検査において使用される時に、疾患の識別、又は治療介入の有効性をモニターする手段として疾患組織の量をモニターすることを可能にするのに十分であるTau結合抗体又はその結合フラグメントの量を指す。
【0042】
本出願は、ヒトTauを結合するAB1と呼ばれる抗体の識別に一部基づいている。当該技術分野において通例であるように、この状況におけるTau残基の番号付けは、配列番号55のアイソフォーム2型を指す(NCBI参照配列:NP_005901.2)。免疫化ウサギから単離されたAB1と以後割り付けられるであろうように、配列番号55のアミノ酸197〜206内のリン酸化されたTau領域を認識する。
【0043】
例は、AB1がヒトTauの対形成したらせん状フィラメント(PHF)へ結合することができること(例2.4を参照されたい)、ならびにヒト試料の凍結切片においてニューロン内神経原線維濃縮体(NFT)、ニューロン外NFT、老人斑様構造及び神経柔毛糸(neurophil thread)を検出することができたこと(例3.2を参照されたい)を確立している。この挙動が、AB1の軽鎖可変部(VL)及び重鎖可変部(VH)の相補性決定領域(CDR)によって少なくとも一部仲介されていると想定することは妥当であるようである。
【0044】
この背景に対して、本開示は、AB1(配列番号7)のVL部のCDR若しくは特異性決定残基及び/又はAB1(配列番号8)のVH部のCDRを含む、Tau結合抗体又はその結合フラグメントを提供する。
【0045】
抗体可変部における残基は慣習的に、Kabatらによって考案されたシステムによって番号付けされている。このシステムは、Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Department of Health and Human Services, NIH,米国におけるKabatら,1987(以後、「Kabatら(上述)」)において発表されている。この番号付けシステムは、別段の記載がない限り、本明細書において使用される。
【0046】
Kabatの残基命名法は必ずしも、アミノ酸残基の線形的な番号付けと直接対応してはいない。実際の線形アミノ酸配列は、フレームワークであろうと相補性決定領域(CDR)であろうと、塩基性可変部構造の短縮又は構造成分への挿入に対応する厳密なKabatの番号付けにおけるよりも少数の又は追加のアミノ酸を含有し得る。残基の正確なKabat番号付けは、抗体の配列における相同性の残基を「標準的な」Kabat番号付け配列と整列させることによって、付与された抗体に対して決定され得る。しかしながら、Chothia(Chothia,C.及びLesk, A.M. J.Mol.Biol., 196,901−917(1987))によると、CDR−H1と等価のループは、残基26から残基32まで延びる。
【0047】
AB1のVLのCDR1、CDR2、及びCDR3はしたがって、それぞれ配列番号1、2、及び53に対応すると識別された。AB1のVHのCDR1、CDR2、及びCDR3はしたがって、それぞれ配列番号4、5、及び48に対応すると識別された。CDRに対するアミノ酸の置換、付加及び/又は欠失の効果は、当業者によって、例えば、例において説明される方法を用いることによって容易に検査することができる。VHの元々識別されたCDR3(CDRH3)、すなわち配列番号48において、例えば、潜在的なアスパラギン脱アミド化部位を識別し、グルタミン、アラニン、アスパラギン酸又はセリンのいずれかによってアスパラギン残基を置き換えることによって修飾した。このことは、CDRH3に対してそれぞれ、配列番号49、50、51及び52の配列をもたらした。簡潔にする目的のため、CDRH3に対する3つの配列、すなわち、配列番号48、49、50、51及び52を配列番号6として組み合わせた。同様に、VLのCDR3(CDRL3)において、潜在的なグルタミン脱アミド化部位を識別し、連続的なグリシンをアラニンと置き換えることによって修飾した。簡潔にする目的のため、CDRL3に対する両配列、すなわち、配列番号53及び54を配列番号3として組み合わせた。
【0048】
置換、付加及び/又は欠失のようなさらなる修飾が、例えばAB1と比較して結合特性を実質的に変化させることなくCDRに対してなされ得ることは認識されるであろう。このことは主として、例えば、CDRにおけるアミノ酸を類似のアミノ酸と置き換えることによって達成され得る。本明細書で使用される「類似性」は、整列した配列における何らかの特定の位置において、アミノ酸残基が配列間で類似のタイプであることを示す。例えば、ロイシンは、イソロイシン又はバリンと置換され得る。しばしば互いに置換されることのできる他のアミノ酸には、以下が含まれるが、これらに限定されない。
・フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン(芳香族側鎖を有するアミノ酸)
・リジン、アルギニン及びヒスチジン(塩基性側鎖を有するアミノ酸)
・アスパラギン酸及びグルタミン酸(酸性側鎖を有するアミノ酸)
・アスパラギン及びグルタミン(アミド側鎖を有するアミノ酸)、ならびに
・システイン及びメチオニン(含硫側鎖を有するアミノ酸)。
【0049】
この背景に対して、本開示は、一態様において、
配列番号1もしくはそれと少なくとも90%同一の配列から選択されるCDR1、配列番号2もしくはそれと少なくとも90%同一の配列から選択されるCDR2、及び配列番号3もしくはそれと少なくとも90%同一の配列から選択されるCDR3、ならびに/又は
配列番号4もしくはそれと少なくとも90%同一の配列から選択されるCDR1、配列番号5もしくはそれと少なくとも90%同一の配列から選択されるCDR2、もしくは配列番号6もしくはそれと少なくとも90%同一の配列から選択されるCDR3
を含む、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを準備する。
【0050】
さらなる態様において、本開示は、
配列番号1もしくはそれと少なくとも90%同一の配列から選択されるCDR1、配列番号2もしくはそれと少なくとも90%同一の配列から選択されるCDR2、及び配列番号3もしくはそれと少なくとも90%同一の配列から選択されるCDR3、ならびに
重鎖
を含む、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供する。
【0051】
さらなる態様において、本開示は、
軽鎖、ならびに
配列番号4もしくはそれと少なくとも90%同一の配列から選択されるCDR1、配列番号5もしくはそれと少なくとも90%同一の配列から選択されるCDR2、もしくは配列番号6もしくはそれと少なくとも90%同一の配列から選択されるCDR3
を含む、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供する。
【0052】
本明細書で使用される「同一性」は、整列した配列における何らかの特定の位置において、アミノ酸残基が当該配列間で同一であることを示す。同一性の程度は、例えば、NCBIから入手可能なBLAST(商標)ソフトウェアを用いて容易に算出することができる(Altschul,S.F.ら,1990,J.Mol.Biol.215:403−410、Gish,W及びStates,D.J.1993,Nature Genet.3:266−272。Madden,T.L.ら,1996,Meth.Enzymol.266:131−141、Altschul,S.F.ら,1997,Nucleic Acids Res.25:3389−3402、Zhang,J.k.Madden,T.L.1997,Genome Res.7:649−656)。
【0053】
それぞれ配列番号1、2、3、4、5、及び6に対するCDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1、CDRH2、及びCDRH3の同一性は、少なくとも90%であり得るが、より高い同一性に対して任意に好ましく少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%のようにより高くもあり得る。異なる同一性の位置は、類似性の考慮により選択され得る。
【0054】
この状況において、本開示は具体的には、それぞれ配列番号1、2、3のCDRL1、CDRL2、及びCDRL3を有するVL、ならびにそれぞれ配列番号4、5、及び6のCDRH1、CDRH2、及びCDRH3を有するVHを含む、Tau結合抗体又はその結合フラグメントを考慮する。
本開示は、それぞれ配列番号1、2、53のCDRL1、CDRL2、及びCDRL3を有するVL、ならびにそれぞれ配列番号4、5、及び6のCDRH1、CDRH2、及びCDRH3を有するVHを含む、Tau結合抗体又はその結合フラグメント、それぞれ配列番号1、2、54のCDRL1、CDRL2、及びCDRL3を有するVL、ならびにそれぞれ配列番号4、5、及び6のCDRH1、CDRH2、及びCDRH3を有するVHを含む、Tau結合抗体又はその結合フラグメント、それぞれ配列番号1、2、3のCDRL1、CDRL2、及びCDRL3を有するVL、ならびにそれぞれ配列番号4、5、及び48のCDRH1、CDRH2、及びCDRH3を有するVHを含む、Tau結合抗体又はその結合フラグメント、それぞれ配列番号1、2、3のCDRL1、CDRL2、及びCDRL3を有するVL、ならびにそれぞれ配列番号4、5、及び49のCDRH1、CDRH2、及びCDRH3を有するVHを含む、Tau結合抗体又はその結合フラグメント、それぞれ配列番号1、2、3のCDRL1、CDRL2、及びCDRL3を有するVL、ならびにそれぞれ配列番号4、5、及び50のCDRH1、CDRH2、及びCDRH3を有するVHを含む、Tau結合抗体又はその結合フラグメント、それぞれ配列番号1、2、3のCDRL1、CDRL2、及びCDRL3を有するVL、ならびにそれぞれ配列番号4、5、及び50のCDRH1、CDRH2、及びCDRH3を有するVHを含む、Tau結合抗体又はその結合フラグメント、それぞれ配列番号1、2、3のCDRL1、CDRL2、及びCDRL3を有するVL、ならびにそれぞれ配列番号4、5、及び51のCDRH1、CDRH2、及びCDRH3を有するVHを含む、Tau結合抗体又はその結合フラグメント、ならびにそれぞれ配列番号1、2、3のCDRL1、CDRL2、及びCDRL3を有するVL、ならびにそれぞれ配列番号4、5、及び52のCDRH1、CDRH2、及びCDRH3を有するVHを含む、Tau結合抗体又はその結合フラグメント、それぞれ配列番号1、2、53のCDRL1、CDRL2、及びCDRL3を有するVL、ならびにそれぞれ配列番号4、5、及び48のCDRH1、CDRH2、及びCDRH3を有するVHを含む、Tau結合抗体又はその結合フラグメント、それぞれ配列番号1、2、53のCDRL1、CDRL2、及びCDRL3を有するVL、ならびにそれぞれ配列番号4、5、及び49のCDRH1、CDRH2、及びCDRH3を有するVHを含む、Tau結合抗体又はその結合フラグメント、それぞれ配列番号1、2、53のCDRL1、CDRL2、及びCDRL3を有するVL、ならびにそれぞれ配列番号4、5、及び50のCDRH1、CDRH2、及びCDRH3を有するVHを含む、Tau結合抗体又はその結合フラグメント、それぞれ配列番号1、2、53のCDRL1、CDRL2、及びCDRL3を有するVL、ならびにそれぞれ配列番号4、5、及び51のCDRH1、CDRH2、及びCDRH3を有するVHを含む、Tau結合抗体又はその結合フラグメント、ならびにそれぞれ配列番号1、2、53のCDRL1、CDRL2、及びCDRL3を有するVL、ならびにそれぞれ配列番号4、5、及び52のCDRH1、CDRH2、及びCDRH3を有するVHを含む、Tau結合抗体又はその結合フラグメント、それぞれ配列番号1、2、54のCDRL1、CDRL2、及びCDRL3を有するVL、ならびにそれぞれ配列番号4、5、及び48のCDRH1、CDRH2、及びCDRH3を有するVHを含む、Tau結合抗体又はその結合フラグメント、それぞれ配列番号1、2、54のCDRL1、CDRL2、及びCDRL3を有するVL、ならびにそれぞれ配列番号4、5、及び49のCDRH1、CDRH2、及びCDRH3を有するVHを含む、Tau結合抗体又はその結合フラグメント、それぞれ配列番号1、2、54のCDRL1、CDRL2、及びCDRL3を有するVL、ならびにそれぞれ配列番号4、5、及び50のCDRH1、CDRH2、及びCDRH3を有するVHを含む、Tau結合抗体又はその結合フラグメント、それぞれ配列番号1、2、54のCDRL1、CDRL2、及びCDRL3を有するVL、ならびにそれぞれ配列番号4、5、及び51のCDRH1、CDRH2、及びCDRH3を有するVHを含む、Tau結合抗体又はその結合フラグメント、ならびにそれぞれ配列番号1、2、54のCDRL1、CDRL2、及びCDRL3を有するVL、ならびにそれぞれ配列番号4、5、及び52のCDRH1、CDRH2、及びCDRH3を有するVHを含む、Tau結合抗体又はその結合フラグメントも考慮する。
【0055】
当該第一の態様によって熟慮されるTau結合抗体又はその結合フラグメントは、異なる起源のフレームワーク領域において埋め込まれたこれらのCDRを含み得る。したがって、CDRは、AB1の元のフレームワーク領域、すなわち配列番号7のウサギVL部内及び配列番号8のウサギVH部内に含まれ得る。しかしながら、CDRは、このようなマウス又はヒトのフレームワーク領域のような異なる種起源のフレームワーク領域にも埋め込まれ得る。このようなフレーム枠領域と組み合わされることのできるフレームワーク領域の起源及び定常部に応じて、キメラ、ネズミ化又はヒト化のTau結合抗体又はその結合フラグメントを得られ得る。
【0056】
キメラTau結合抗体又はその結合フラグメントは、ネズミ又はヒト起源のような異なる種由来の定常部と組み合わされた非ヒト起源のフレーム領域内にCDRを含むであろう。ネズミ化Tau結合抗体又はその結合フラグメントは、ネズミ起源の定常部と合わせて組み合わされたネズミ起源のフレームワーク領域内にCDRを含むであろう。ヒト化Tau結合抗体又はその結合フラグメントは、ヒト起源の定常部と合わせて組み合わされたヒト起源のフレームワーク領域内にCDRを含むであろう。
【0057】
この背景に対して、本開示は、別の態様において、
配列番号7もしくはそれと少なくとも80%同一の配列を含む軽鎖可変部、及び/又は
配列番号8もしくはそれと少なくとも80%同一の配列を含む重鎖可変部
を含む、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供する。
【0058】
配列番号7及び8のVL及びVHの同一性はそれぞれ、少なくとも80%であり得るが、より高い同一性に対して任意に好ましく少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%のようにより高くもあり得る。異なる同一性の位置は、類似性の考慮により選択され得る。同一性の点で、CDRに対するフレームワーク領域についてより可撓性があり得ることは認識されるであろう。
【0059】
この文脈において、本開示は具体的には、配列番号7のVL及び配列番号8のVHを含むTau結合抗体又はその結合フラグメントを考慮する。
【0060】
ヒト化Tau結合抗体又はその結合フラグメントは、本開示によって特に熟慮される。
【0061】
この目的のため、CDRは、ヒトフレームワーク領域へとグラフト結合され得る。このようなヒト化CDRをグラフト結合したTau結合抗体又はその結合フラグメントの識別は、当該技術分野の確立されたアプローチに従って達成され得ることは認識されるであろう。CDR又は特異性決定残基がグラフト結合した時、CDRが由来するドナー抗体のクラス/タイプに関して、何らかの適切なアクセプターヒト可変部フレームワーク配列が使用され得る(例えば、Bossら,米国特許第4,816,397号、Bossら,欧州特許第0,120,694 B1号、Neuberger,M.S.ら,WO 86/01533、Neuberger,M.S.ら,欧州特許第0,194,276 B1号、Winter,米国特許第5,225,539号、Winter,欧州特許第0,239,400 B1号、Padlan,E.A.ら,欧州特許出願第0,519,596 A1号を参照されたい)。
【0062】
また、本発明のCDRをグラフト結合した抗体可変部において、フレームワーク領域は、アクセプター抗体のフレームワーク領域と同じ配列を実際に有している必要はない。したがって、CDRは、フレームワークの変化とともに又は当該変化を伴わずにグラフト結合し得る。ドナー可変部のフレームワーク領域とアクセプターフレームワーク領域の間の比較を基にしてフレームワーク変化を導入することは、例えば、さもなくばヒト化の結果として低下し得る抗体の親和性を保有することが可能となり得る。例えば、異常な残基は、アクセプター鎖のクラス又はタイプのためにより頻繁に発生する残基へと変化し得る。あるいは、アクセプターフレームワーク領域における選択された残基は、ドナー抗体における同じ位置において認められる残基に対応するよう変化し得る(Riechmannら,1998,Nature,332,323−324を参照されたい)。このような変化は、ドナー抗体の親和性を回復させるのに必要な最低限まで維持されるべきである。変化のための残基は、Adairら(1991)(ヒト化抗体,WO91/09967)によって概略されるプロトコルを用いて選択され得る。本発明のCDRをグラフト結合した抗体において、アクセプター重鎖及び軽鎖は、同じ抗体に由来する必要は必ずしもなく、所望の場合、異なる鎖由来のフレームワーク領域を有する複合鎖を含み得る。
【0063】
本発明において使用することのできるヒトアクセプターフレームワークの例は、KOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAY及びPOMである(Kabatら,上述)。例えば、KOL及びNEWMは、重鎖に使用することができ、REIは、軽鎖に使用することができ、ならびにEU、LAY及びPOMは、重鎖及び軽鎖の両方に使用することができる。あるいは、ヒト生殖系列配列を使用し得、これらは、http://vbase.mrc−CE.cam.ac.uk/又はhttp://www.imgt.orgにおいて入手可能である。本開示は具体的には、配列番号44(IMGT,http://www.imgt.org/)のヒトV部IGKV1−39プラスJK4 J部を軽鎖CDRのアクセプターフレーム領域として、ならびに配列番号45(IMGT,http://www.imgt.org/)のヒトV部IGHV4−39プラスJH4 J部を重鎖CDRについてのアクセプターフレームワーク領域として使用することを考慮する。配列番号45において、位置1、73及び80は例えば、フレームワーク領域における残基変化のために考慮され得る。位置73におけるバリン残基は、リジンへ変化し得る。位置80におけるフェニルアラニンは、バリンへ変化し得る。フレームワーク領域における残基変化のための配列番号45における他の位置は、位置39及び/又は75であり得る。例えば、配列番号45の位置39におけるイソロイシン残基は、バリンへ変化し得る。位置75におけるトレオニン残基は、セリンへ変化し得る。フレームワーク領域における残基変化のための配列番号44における位置は、位置2及び/又は63であり得る。例えば、配列番号44の位置2におけるイソロイシン残基は、バリンへ変化し得る。配列番号44の位置63におけるセリン残基は、リジンへ変化し得る。
【0064】
この背景に対し、本開示は、別の態様において、
配列番号9もしくはそれと少なくとも80%同一の配列を含む軽鎖可変部、及び/又は
配列番号10もしくはそれと少なくとも80%同一の配列を含む重鎖可変部
を含む、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供する。
【0065】
本開示はさらに、別の態様において、
配列番号13もしくはそれと少なくとも80%同一の配列を含む軽鎖可変部、及び/又は
配列番号16もしくはそれと少なくとも80%同一の配列を含む重鎖可変部
を含む、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供する。
【0066】
このような単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントは、
配列番号13もしくはそれと少なくとも80%同一の配列を含む軽鎖可変部、及び/又は
配列番号14、15もしくはそれらと少なくとも80%同一の配列を含む重鎖可変部
を含み得る。
【0067】
さらに、このような単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントは、
配列番号11、12もしくはそれらと少なくとも80%同一の配列を含む軽鎖可変部、及び/又は
配列番号16もしくはそれと少なくとも80%同一の配列を含む重鎖可変部
を含み得る。
【0068】
このような単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントは、
配列番号11もしくはそれと少なくとも80%同一の配列を含む軽鎖可変部、及び/又は
配列番号14、15もしくはそれらと少なくとも80%同一の配列を含む重鎖可変部
を含み得る。
【0069】
このような単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントは、
配列番号12もしくはそれと少なくとも80%同一の配列を含む軽鎖可変部、及び/又は
配列番号14、15もしくはそれらと少なくとも80%同一の配列を含む重鎖可変部
を含み得る。
【0070】
配列番号13及び16のVL及びVHの同一性はそれぞれ、少なくとも80%であり得るが、より高い同一性に対して任意に好ましく少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%のようにより高くもあり得る。異なる同一性の位置は、類似性の考慮により選択され得る。CDRに対するフレームワーク領域についてより可撓性があり得ることは認識されるであろう。
【0071】
この状況において、本出願は具体的には、配列番号11のVL及び配列番号14のVHを含むTau結合抗体又はその結合フラグメント、配列番号11のVL及び配列番号15のVHを含むTau結合抗体又はその結合フラグメント、配列番号12のVL及び配列番号14のVHを含むTau結合抗体又はその結合フラグメント、ならびに配列番号12のVL及び配列番号15のVHを含むTau結合抗体又はその結合フラグメントを考慮する。
【0072】
ヒト化CDRをグラフト結合したTau結合抗体又はその結合フラグメントは、ヒト起源の定常部を含み得る。当該重鎖の定常部のアミノ酸配列に応じて、抗体又は免疫グロブリンは、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMのクラスへと分けられ、これらのうちのいくつかはさらにサブクラス(サブタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4、IgGA1、及びIgA2へと分けられ得る。特にヒトIgG定常部ドメインは、抗体分子が治療用途に企図され及び抗体エフェクター機能が必要とされる時に、IgG1及びIgG3のアイソタイプが特に使用され得る。あるいは、IgG2及びIgG4のアイソタイプは、抗体分子が治療目的のために企図され及び抗体エフェクター機能が必要とされない時に使用され得る。本開示は具体的には、IgG1及びIgG4サブタイプのヒト化抗体を考慮する。
【0073】
これらの定常部ドメインの配列修正も使用され得ることは認識されるであろう。例えば、1つ又は2つのアミノ酸のような1つ又は2つ以上のアミノ酸の置換、付加及び/又は欠失は、Tauへ結合する抗体の能力を有意に変化させることなく抗体定常部に対してなされ得る。位置241におけるセリンがAngalら,Molecular Immunology,1993,30(I),105−108において説明されるようにプロリンへ変化したIgG4分子は、同様に使用され得る。
【0074】
抗体エフェクター機能には、ADCC及びCDCが含まれる。ADCCは、抗体依存性細胞傷害を指す。抗体が原理上、ADCCを仲介することができるかどうかを判定するために、ADCCは、例えば、いわゆるCr
51、Eu及びS
35放出アッセイによってインビトロで測定され得る。関心対象の抗原、すなわちTauを含有する標的細胞は、これらの化合物で標識され得る。治療用抗体の結合後、細胞を洗浄し、FcγRIIIのようなFc受容体を発現するエフェクター細胞を抗体標識標的細胞とともにインキュベートし、標的細胞の溶解を、標識の放出によってモニターすることができる。別のアプローチは、いわゆるaCella TOX(商標)アッセイを用いる。CDCは、補体依存性細胞傷害を指す。抗体が原理上、CDCを仲介することができるかどうかを判定するために、CDCは、例えば、Delobel A et al, Methods Mol Biol. (2013); 988:115−43又はCurrent Protocols in Immunology, Chapter 13 Complement(Print ISSN: 1934−3671)において説明されるように、インビトロで測定され得る。
【0075】
この背景に対して、本開示は、別の態様において、
配列番号19もしくはそれと少なくとも70%同一の配列を含む軽鎖、及び/又は
配列番号22もしくはそれと少なくとも70%同一の配列を含む重鎖
を含む、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供する。
【0076】
このような単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントは、
配列番号19もしくはそれと少なくとも70%同一の配列を含む軽鎖、及び/又は
配列番号20、21もしくはそれらと少なくとも80%同一の配列を含む重鎖
を含み得る。
【0077】
このような単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントは、
配列番号17、18もしくはそれらと少なくとも70%同一の配列を含む軽鎖、及び/又は
配列番号22もしくはそれと少なくとも80%同一の配列を含む重鎖
を含み得る。
【0078】
このような単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントは、
配列番号17、18もしくはそれらと少なくとも70%同一の配列を含む軽鎖、及び/又は
配列番号20、21もしくはそれらと少なくとも80%同一の配列を含む重鎖
を含み得る。
【0079】
配列番号19及び22に対する軽鎖及び重鎖の同一性はそれぞれ、少なくとも70%であり得るが、より高い同一性に対して任意に好ましく少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%のようにより高くもあり得る。異なる同一性の位置は、類似性の考慮により選択され得る。同一性の点で、CDRに対するフレームワーク領域についてより可撓性があり得、定常部についてはさらにより可撓性があり得ることは認識されるであろう。
【0080】
この状況において、本出願は具体的には、配列番号17の軽鎖及び配列番号20の重鎖を含むTau結合抗体又はその結合フラグメント、配列番号17の軽鎖及び配列番号21の重鎖を含むTau結合抗体又はその結合フラグメント、配列番号18の軽鎖及び配列番号20の重鎖を含むTau結合抗体又はその結合フラグメント、ならびに配列番号18の軽鎖及び配列番号21の重鎖を含むTau結合抗体又はその結合フラグメントを考慮する。
【0081】
さらに、本開示は、別の態様において、
配列番号19もしくはそれと少なくとも70%同一の配列を含む軽鎖、及び/又は
配列番号25もしくはそれと少なくとも70%同一の配列を含む重鎖
を含む、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供する。
【0082】
このような単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントは、
配列番号19もしくはそれと少なくとも70%同一の配列を含む軽鎖、及び/あるいは
配列番号23もしくは配列番号24又はそれらと少なくとも70%同一の配列を含む重鎖
を含み得る。
【0083】
このような単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントは、
配列番号19もしくはそれと少なくとも70%同一の配列を含む軽鎖、及び/あるいは
配列番号23もしくは配列番号24又はそれらと少なくとも80%同一の配列を含む重鎖
を含み得る。
【0084】
このような単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントは、
配列番号17、18もしくはそれと少なくとも70%同一の配列を含む軽鎖、及び/あるいは
配列番号23もしくは配列番号24又はそれらと少なくとも80%同一の配列を含む重鎖
を含み得る。
【0085】
この状況において、本出願は具体的には、配列番号17の軽鎖及び配列番号23の重鎖を含むTau結合抗体又はその結合フラグメント、配列番号17の軽鎖及び配列番号24の重鎖を含むTau結合抗体又はその結合フラグメント、配列番号18の軽鎖及び配列番号23の重鎖を含むTau結合抗体又はその結合フラグメント、ならびに配列番号18の軽鎖及び配列番号24の重鎖を含むTau結合抗体又はその結合フラグメントを考慮する。
【0086】
配列番号19及び配列番号23又は24に対する軽鎖及び重鎖の同一性はそれぞれ、少なくとも70%であり得るが、より高い同一性に対して任意に好ましく少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%のようにより高くもあり得る。異なる同一性の位置は、類似性の考慮により選択され得る。同一性の点で、CDRに対するフレームワーク領域についてより可撓性があり得、定常部についてはさらにより可撓性があり得ることは認識されるであろう。
【0087】
本開示によって提供される抗体又はその結合フラグメント、特にCDR−H1(配列番号4)、CDR−H2(配列番号5)、CDR−H3(配列番号6)、CDR−L1(配列番号1)、CDR−L2(配列番号2)又はCDR−L3(配列番号3)のうちのいずれかを含む抗体又はその結合フラグメント、例えば、配列番号7のVL及び配列番号8のVLを含む抗体によって結合するヒトTauの特異的な領域又はエピトープも、本開示によって提供される。
【0088】
本開示において提供される抗体又はその結合フラグメント、特に配列番号7のVL及び配列番号8のVHを含む抗体又はその結合フラグメントによって結合するヒトTau、特に配列番号55のアミノ酸197〜206内のリン酸化されたTau領域の特異的な領域又はエピトープは、本開示によってさらに提供される。
【0089】
配列番号55のアミノ酸197〜206内のTau領域は、位置198(S198)、199(S199)、202(S202)におけるセリン残基及び位置205におけるトレオニン残基(T205)に対応する4つの起こり得るリン酸化部位を含む。
【0090】
「配列番号55のアミノ酸197〜206内のリン酸化されたTau領域」という用語は、S198、S199、S202及びT205から選択される少なくとも1つのリン酸化された残基を含む配列番号55のアミノ酸197〜206内のTau領域を指す。当業者が知っているであろうように、リン酸化された残基は例えば、Ser(PO
3H
2)又はThr(PO
3H
2)とも呼ばれ得る。
【0091】
Tauのこの特異的な領域又はエピトープに対するTau結合抗体の結合は、本開示によって提供される抗体のうちのいずれか1つとの組み合わせで、当該技術分野で公知の何らかの適切なエピトープマッピング法によって識別することができる。このような方法の例としては、Tau結合抗体又はその結合フラグメントによって認識されるエピトープの配列を含有する抗体へ特異的に結合することのできる最小のフラグメントを用いて、本開示のTau結合抗体又はその結合フラグメントに対する結合について、配列番号55に由来する変動する長さのペプチドをスクリーニングすることが挙げられる。中枢神経系における異なるTauアイソフォームの存在を考慮すると、何らかのこのようなアイソフォームが本明細書で詳述される方法において使用され得ることは理解されることになっている。具体的な例において、Tauの最長のアイソフォーム、すなわち、配列番号55に定義されるアイソフォーム2型が使用され得る。配列番号55のTauペプチドは、組換えで、合成で又はTauポリペプチドのタンパク質分解性消化によって生成され得る。抗体を結合するペプチドは、例えば、ウェスタンブロット又は質量分析によって識別されることができる。別の例において、NMR分光法又はX線結晶学的手法は、Tau結合抗体又はその結合フラグメントによって結合したエピトープを識別するために使用されることができる。いったん識別されると、本発明の抗体を結合するエピトープフラグメントは、必要な場合、同じエピトープを結合する追加の抗体を得るための免疫原として使用されることができる。さらに、本発明の抗体を結合するエピトープフラグメントは、同じエピトープへ結合して、必要な場合、例えば、当該技術分野において公知のリポカリン(「アンチカリン」)、フィブロネクチン(「アドネクチン」、トリネクチン)、クーニッツドメイン、C型レクチン、トランスフェリン、ガンマ−クリスタリン、システインノット、アンキリン反復配列(「DARPin」)又はプロテインA(「アフィボディ」)由来のタンパク質足場を基にした10個を超えるアミノ酸を含むタンパク質又はポリペプチドの化合物のような、Tauの少なくとも凝集を阻害するタンパク質を得るために使用されることができる(Tomlinson, 2004、Mosaviら, 2004、Gill及びDamle,2006、Nilsson及びTolmachev,2007、Binzら,2004)。さらに、同じエピトープを結合する分子には、10個以下のアミノ酸を含むペプチド及び環状ペプチドならびにペプチド模倣薬を含むさらなる有機分子が含まれる。ペプチド模倣薬は、タンパク質間相互作用において認められるアミノ酸配列に基づいた、及び当該技術分野で公知の化合物である(Sillerud及びLarson,2005)。
【0092】
この背景に対して、本開示は、別の態様において、配列番号55のアミノ酸197〜206内のリン酸化されたTau領域へ結合する、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供する。
【0093】
このような抗体は、キメラ、ネズミ化、ヒト化もしくは完全にヒトのモノクローナル抗体であることができ、又はキメラ、ネズミ化、ヒト化もしくは完全にヒトのモノクローナル抗体を得るために使用されることができる。
【0094】
別の態様において、本開示は、配列番号55のアミノ酸197〜206内のリン酸化されたTau領域へ結合する、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供し、この中で、当該リン酸化されたTau領域は、S198、S199、S202及びT205から選択される少なくとも少なくとも1つのリン酸化された残基を含む。
【0095】
別の態様において、本開示は、配列番号55のアミノ酸197内のリン酸化されたTau領域へ結合する、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供し、この中で、当該リン酸化されたTau領域は、S198及びS199から選択される少なくとも1つのリン酸化された残基を含む。
【0096】
別の態様において、本開示は、配列番号55のアミノ酸197〜206内のリン酸化されたTau領域へ結合する、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供し、この中で、当該リン酸化されたTau領域は、S202及びT205から選択される少なくとも1つのリン酸化された残基を含む。
【0097】
別の態様において、本開示は、配列番号55のアミノ酸197〜206内のリン酸化されたTau領域へ結合する、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供し、この中で、当該リン酸化されたTau領域は、S198を含む少なくとも1つのリン酸化された残基を含む。
【0098】
別の態様において、本開示は、配列番号55のアミノ酸197〜206内のリン酸化されたTau領域へ結合する、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供し、この中で、当該リン酸化されたTau領域は、S199を含む少なくとも1つのリン酸化された残基を含む。
【0099】
別の態様において、本開示は、配列番号55のアミノ酸197〜206内のリン酸化されたTau領域へ結合する、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供し、この中で、当該リン酸化されたTau領域は、S202を含む少なくとも1つのリン酸化された残基を含む。
【0100】
別の態様において、本開示は、配列番号55のアミノ酸197〜206内のリン酸化されたTau領域へ結合する、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供し、この中で、当該リン酸化されたTau領域は、T205を含む少なくとも1つのリン酸化された残基を含む。
【0101】
別の態様において、本開示は、配列番号55のアミノ酸197〜206内のリン酸化されたTau領域へ結合する、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供し、この中で、当該リン酸化されたTau領域は、S198,S199、S202及びT205から選択される少なくとも2つのリン酸化された残基を含む。
【0102】
別の態様において、本開示は、配列番号55のアミノ酸197〜206内のリン酸化されたTau領域へ結合する、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供し、この中で、当該リン酸化されたTau領域は、S198及びS199を含む少なくとも2つのリン酸化された残基を含む。
【0103】
別の態様において、本開示は、配列番号55のアミノ酸197〜206内のリン酸化されたTau領域へ結合する、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供し、この中で、当該リン酸化されたTau領域は、S199及びS202を含む少なくとも2つのリン酸化された残基を含む。
【0104】
別の態様において、本開示は、配列番号55のアミノ酸197〜206内のリン酸化されたTau領域へ結合する、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供し、この中で、当該リン酸化されたTau領域は、S202及びT205を含む少なくとも2つのリン酸化された残基を含む。
【0105】
別の態様において、本開示は、配列番号55のアミノ酸197〜206内のリン酸化されたTau領域へ結合する、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供し、この中で、当該リン酸化されたTau領域は、S198及びT205を含む少なくとも2つのリン酸化された残基を含む。
【0106】
別の態様において、本開示は、配列番号55のアミノ酸197〜206内のリン酸化されたTau領域へ結合する、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供し、この中で、当該リン酸化されたTau領域は、S198及びS202を含む少なくとも2つのリン酸化された残基を含む。
【0107】
別の態様において、本開示は、配列番号55のアミノ酸197〜206内のリン酸化されたTau領域へ結合する、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供し、この中で、当該リン酸化されたTau領域は、S199及びT205を含む少なくとも1つのリン酸化された残基を含む。
【0108】
別の態様において、本開示は、配列番号55のアミノ酸197〜206内のリン酸化されたTau領域へ結合する、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供し、この中で、当該リン酸化されたTau領域は、S198、S199、S202及びT205から選択される少なくとも3つのリン酸化された残基を含む。
【0109】
別の態様において、本開示は、配列番号55のアミノ酸197〜206内のリン酸化されたTau領域へ結合する、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供し、この中で、当該リン酸化されたTau領域は、S198及びS199を含む少なくとも3つのリン酸化された残基を含む。
【0110】
別の態様において、本開示は、配列番号55のアミノ酸197〜206内のリン酸化されたTau領域へ結合する、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供し、この中で、当該リン酸化されたTau領域は、S199及びS202を含む少なくとも3つのリン酸化された残基を含む。
【0111】
別の態様において、本開示は、配列番号55のアミノ酸197〜206内のリン酸化されたTau領域へ結合する、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供し、この中で、当該リン酸化されたTau領域は、S202及びT205を含む少なくとも3つのリン酸化された残基を含む。
【0112】
別の態様において、本開示は、配列番号55のアミノ酸197〜206内のリン酸化されたTau領域へ結合する、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供し、この中で、当該リン酸化されたTau領域は、S198及びT205を含む少なくとも1つのリン酸化された残基を含む。
【0113】
別の態様において、本開示は、配列番号55のアミノ酸197〜206内のリン酸化されたTau領域へ結合する、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供し、この中で、当該リン酸化されたTau領域は、S198及びS202を含む少なくとも1つのリン酸化された残基を含む。
【0114】
別の態様において、本開示は、配列番号55のアミノ酸197〜206内のリン酸化されたTau領域へ結合する、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供し、この中で、当該リン酸化されたTau領域は、S199及びT205を含む少なくとも3つのリン酸化された残基を含む。
【0115】
別の態様において、本開示は、配列番号55のアミノ酸197〜206内のリン酸化されたTau領域へ結合する、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供し、この中で、当該リン酸化されたTau領域は、以下の4つのリン酸化された残基、すなわちS198、S199,S202及びT205を含む。
【0116】
このような抗体は、キメラ、ネズミ化、ヒト化もしくは完全にヒトのモノクローナル抗体であることができ、又はキメラ、ネズミ化、ヒト化もしくは完全にヒトのモノクローナル抗体を得るために使用されることができる。
【0117】
別の態様において、本開示は、配列番号35のアミノ酸197〜206内のリン酸化されたTau領域を結合する、単離された中和するTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供する。
【0118】
このような抗体は、キメラ、ネズミ化、ヒト化もしくは完全にヒトのモノクローナル抗体であることができ、又はキメラ、ネズミ化、ヒト化もしくは完全にヒトのモノクローナル抗体を得るために使用されることができる。
【0119】
別の態様において、本開示は、先に説明したTau結合抗体又はその結合フラグメントと実質的に同じTauエピトープへ結合する、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供する。エピトープへの結合は、例えば、参照としての配列番号7のVL及び配列番号8のVHを含むTau結合抗体又はその結合フラグメントを用いたエピトープマッピングについて説明されるように決定され得る。
【0120】
このような抗体は、キメラ、ネズミ化、ヒト化もしくは完全にヒトのモノクローナル抗体であることができ、又はキメラ、ネズミ化、ヒト化もしくは完全にヒトのモノクローナル抗体を得るために使用されることができる。
【0121】
別の態様において、本開示は、Tauへの結合について、先に説明したTau結合抗体と競合する、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供する。
【0122】
この状況において、本開示は具体的には、Tauへの結合について、配列番号7のVL及び配列番号8のVHを含むTau結合抗体又はその結合フラグメントと競合する、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを熟慮する。
【0123】
このような抗体は、キメラ、ネズミ化、ヒト化もしくは完全にヒトのモノクローナル抗体であることができ、又はキメラ、ネズミ化、ヒト化もしくは完全にヒトのモノクローナル抗体を得るために使用されることができる。
【0124】
Tauへの結合についての競合は、配列番号7のVL及び配列番号8のVH、又は配列番号9のVL及び配列番号10のVHを含み得る参照抗体又はその結合フラグメントの存在下でのTauへの抗体又はその結合フラグメントの結合の少なくとも約50%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約99%、又は約100%ほどの低下によって判定することができる。結合は、ビアコア(登録商標)機器を用いた表面プラズモン共鳴法、種々の蛍光検出技術(例えば、蛍光相関分光法、蛍光交差相関、蛍光寿命測定など)又は種々のタイプのラジオイムノアッセイ又は標的分子に対する抗体結合を追うために使用される他のアッセイを用いて測定され得る。
【0125】
「Tau結合抗体又はその結合フラグメント」という用語は、当該抗体又はその結合フラグメントが、Tauへその可変部を経由して特異的に結合する、すなわち、Tau抗原を、Tauの類似体ではない他の抗原よりも大きな親和性で結合することを意味する。「Tau結合抗体又はその結合フラグメント」は、Tauへその可変部を経由して、Tauの類似体ではない他の抗原よりも少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10、20、100、10
3、10
4、10
5又は少なくとも10
6倍の親和性で結合する。Tau結合抗体及びその結合フラグメントがそれにもかかわらず、Tau結合抗体及びその結合フラグメントの可変部の外側にある配列との相互作用を通じて他のタンパク質(例えば、黄色ブドウ球菌(S.aureus)プロテインA又はELISA技術における他の抗体)とも相互作用することは理解されるであろう。Tau結合抗体及びその結合フラグメントの可変部の外側にある配列によって、特にTau結合抗体及びその結合フラグメントの定常部によって仲介されるこのような後者の結合特性は、「Tau結合抗体又はその結合フラグメント」という用語によって包含されることを意味するものではない。抗体の結合特異性を判定するためのスクリーニングアッセイは周知であり、当該技術分野において通例で実施される。Tau結合抗体又はその結合フラグメントは、ナノモル濃度の範囲での抗体の抗原に対する当該抗体(又はその結合フラグメント)の結合の親和性に対して平衡解離定数(K
D)を有し得る。したがって、K
Dは、約1×10
−6未満、例えば、約2×10
−7以下のような、約5×10
−7未満であり得、例えば、例において説明される表面プラズモン共鳴法及びビアコア装置を用いて測定されることができる。
【0126】
先に記載されたように、本開示は、Tau結合抗体又はその結合フラグメントを提供する。全長の抗体には、定常部及び可変部が含まれる。定常部は、抗体の抗原結合フラグメントにおいてその全長で存在する必要はないことがある。しかしながら、適用がADCC及び/又はCDCを仲介する抗体の使用を考慮する場合はどこでも、結合フラグメントが、なおもADCC及び/又はCDCを仲介することができるのに十分な長さの定常部を含まなければならないことは理解されることになっている。
【0127】
先に記載されたように、本開示は、ヒト化に対する代替物質として生成することのできるヒトTau結合抗体又はその結合フラグメントにも言及する。例えば、免疫化の際に、内在性ネズミ抗体の産生の非存在下で、完全なレパートリーのヒト抗体を産生することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス)は、当該技術分野で公知である。例えば、キメラマウス及び生殖系列変異マウスにおける抗体重鎖接合部(JH)遺伝子のホモ接合性欠失が内在性抗体産生の完全な阻害を結果的に生じることは説明されてきた。このような生殖系列変異マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイの転移は、当該抗原を用いたヒト生殖系列免疫グロブリン胃炎死を保有するトランスジェニック動物の免疫化の際に、特定の抗原に対する特異性を有するヒト抗体の産生を結果的に生じるであろう。このようなトランスジェニック動物を作出するための技術、及びこのようなトランスジェニック動物からヒト抗体を単離及び生成するための技術は、当該技術分野で公知である(Lonberg,2005、Green,1999、Kellermann及びGreen,2002、Nicholsonら,1999)。あるいは、トランスジェニック動物、例えば、マウスにおいて、マウス抗体の可変部をコードする免疫グロブリン遺伝子のみが、対応するヒト可変部免疫グロブリン遺伝子配列と置き換えられる。抗体定常部をコードするマウス生殖系列免疫グロブリン遺伝子は、未変化のままである。この方法で、抗体エフェクターは、トランスジェニックマウスの免疫系において機能し、結果的にB細胞の発達が本質的に変わらず、このことは、インビボでの抗原負荷に及ぼす改善された抗体応答をもたらし得る。関心対象の特定の抗体をコードする遺伝子がいったんこのようなトランスジェニック動物から単離された場合、定常部をコードする遺伝子は、完全ヒト抗体を得るためにヒト定常部遺伝子と置き換えられることができる。ヒト抗体抗体フラグメントをインビトロで得るための他の方法は、ファージディスプレイ技術又はリボソームディスプレイ技術のようなディスプレイ技術に基づいており、この中で、少なくとも一部人工的に、又はドナーの免疫グロブリン可変(V)部遺伝子レパートリーからのいずれかで作製された組換えDNAライブラリが使用される。ヒト抗体を作製するためのファージディスプレイ技術及びリボソームディスプレイ技術は、当該技術分野で周知である(Winterら,1994、Hoogenboom,2002、Kretzschmar and von Ruden,2002、Groves及びOsbourn,2005、Dufnerら,2006)。
【0128】
ヒト抗体は、関心対象の抗原でエクスビボで免疫化され、その後融合してハイブリドーマを作製し、次に当該ハイブリドーマを最適なヒト抗体についてスクリーニングすることができる、単離されたヒトB細胞からも作製され得る(Grassoら,2004、Liら,2006)。
【0129】
本明細書で使用する「中和するTau結合抗体」という用語は、Tauへ結合してその少なくとも1つの生物活性を阻害する抗体を指す。特定の実施形態において、本明細書で使用する「中和するTau結合抗体」は、インビトロアッセイにおける、例えば、以下の実験3.1において説明されるような例えばインビトロアッセイにおけるような、Tau凝集を結合及び阻害する抗体を指す。
【0130】
本明細書で使用する「抗体」という用語は概して、すなわち2本の重鎖及び2本の軽鎖からなる要素を含む無処置(全、完全長)抗体に関する。抗体は、例えば、WO2007/024715において開示される分子DVD−Ig、又はWO2011/030107において説明されるいわゆる(FabFv)2Fcにより、さらなる追加の結合ドメインを含み得る。したがって、本明細書で採用される抗体には、二価、三価又は四価の全長抗体が含まれる。
【0131】
抗体の結合フラグメントには、一本鎖抗体(すなわち、全長の重鎖及び軽鎖)、Fab、修飾されたFab、Fab’、修飾されたFab’、F(ab’)
2、Fv、Fab−Fv、Fab−dsFv、Fab−scFv、Fab−scFc、ジスルフィド安定化したFab−scFv、単一ドメイン抗体(例えば、VH又はVL又はVHH)、scFv、scFv−scFc、dsscFv、dsscFv−scFc、二価、三価もしくは四価の抗体、Bis−scFv、ダイアボディ、トライボディ、トライアボディ、テトラボディ、sdAb、VHHフラグメント及びVNARフラグメントのようなドメイン抗体(dAbs)、ならびに上述のうちのいずれかのエピトープ結合フラグメントが含まれる(例えば、Holliger及びHudson,2005,Nature Biotech.23(9):1126−1136、Adair及びLawson,2005,Drug Design Reviews−Online 2(3),209−217を参照されたい)。これらの抗体フラグメントを作製及び生成するための方法は、当該技術分野で周知である(例えば、Vermaら,1998,Journal of Immunological Methods,216,165−181を参照されたい)。Fab−Fvフォーマット及びそのジスルフィド安定化版は、WO2009/040562において最初に開示され、Fab−dsFvは、WO2010/035012において最初に開示された。Fab−scFvのジスルフィド安定化形態は、WO2013/068571において説明された。scFcフォーマットを含む抗体フォーマットは、WO2008/012543において最初に説明された。本発明における使用のための他の抗体フラグメントには、国際特許出願WO2005/003169、WO2005/003170及びWO2005/003171において説明されるFabフラグメント及びFab’フラグメントが含まれる。
【0132】
多価抗体は、多重特異性、例えば二重特異性を含み得、又は単一特異性であり得る(例えば、WO92/22583及びWO05/113605を参照されたい)。後者の1つのこのような例は、WO92/22583において説明される三価Fab(又はTFM)である。
【0133】
一実施形態において、Fabフラグメントが提供される。
【0134】
一実施形態において、Fab’フラグメントが提供される。
【0135】
典型的なFab’分子は、重鎖が可変部VH、定常部CH1及び天然の又は修飾されたヒンジ部を含み、ならびに軽鎖が可変部VL及び定常部CLを含む、重鎖及び軽鎖の対を含む。
【0136】
一実施形態において、例えば、二量体化がヒンジを通じてであり得るF(ab’)2を作製するために、本開示によるFab’の二量体が提供される。
【0137】
一実施形態において、抗体又はその結合フラグメントは、結合ドメインを含む。結合ドメインは概して、6個のCDRを含み、3個は重鎖由来、及び3個は軽鎖由来であろう。一実施形態において、CDRは、フレームワークにあり、まとめて可変部を形成する。したがって、一実施形態において、抗体又は結合フラグメントは、軽鎖可変部及び重鎖可変部を含む、抗原に対して特異的な結合ドメインを含む。本開示によって提供されるTau結合抗体又はその結合フラグメントの親和性が、当該技術分野で公知の適切な方法を用いて変化し得ることは認識されるであろう。本開示はそれゆえ、Tauに対する改善された親和性を有する、本発明の抗体分子のバリアントにも関する。このようなバリアントは、CDRを変異させること(Yangら,J. Mol.Biol.,254,392−403,1995)、鎖のシャッフリング(Marksら,Bio/Technology,10,779−783,1992)、大腸菌(E.coli)の変異誘発株の使用(Lowら,J.Mol.Biol.,250,359−368,1996)、DNAシャッフリング(Pattenら,Curr.Opin.Biotechnol.,8,724−733,1997)、ファージディスプレイ(Thompsonら,J.Mol.Biol.,256,77−88,1996)及びセクシャルPCR(Crameriら,Nature,391,288−291,1998)を含む、いくつかの親和性成熟化プロトコルによって得られることができる。Vaughanら(上述)は、親和性成熟化に関するこれらの方法を考察している。
【0138】
したがって、Tau結合抗体及びその結合フラグメントは、例えば、1つ又は2つ以上の保存的置換(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15の保存的置換)を有する軽鎖又は重鎖の、上述の具体的に記載されたアミノ酸配列のうちのいずれかも包含する。保存的置換についての候補であるアミノ酸配列の位置を決定することができ、何らかの特定のアミノ酸についての保存的置換をもたらす合成の及び天然のアミノ酸を選択することができる。保存的置換を選択することについての考慮には、何らかの特定のアミノ酸置換がなされる状況、側鎖の疎水性又は極性、側鎖の一般的な大きさ、及び生理学的条件下で酸性又は塩基性の特徴を有する側鎖のpK値が含まれる。例えば、リジン、アルギニン、及びヒスチジンはしばしば、互いに適切に置換される。当該技術分野で公知のように、このことは、3つのアミノ酸はすべて塩基性側鎖を有するからであるが、リジン及びアルギニンの側鎖についてのpK値は、ヒスチジン(約6)よりも互いに非常に近い(約10及び12)。同様に、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシンはしばしば、互いに適切に置換され、但し、グリシンがしばしば、当該群の他のメンバーと適切に置換されることがないことを条件とする。しばしば互いに適切に置換されるアミノ酸の他の群には、グルタミン酸及びアスパラギン酸からなる群、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンからなる群、ならびにセリン、トレオニン、及び任意にチロシンからなる群が含まれるが、これらに限定されない。
【0139】
本発明についての文脈において記載されるようなTau結合抗体及びその結合フラグメントは、本明細書に開示される例示的な抗体、フラグメント及び配列の誘導体を包含し得る。「誘導体」には、化学的に修飾されたTau結合抗体及びその結合フラグメントが含まれる。化学修飾の例としては、水溶性ポリマー、N結合型もしくはO結合型炭水化物、糖、リン酸塩のような1つ又は2つ以上のポリマーの、及び/又はフルオロフォアのような検出可能な標識のような他のこのような分子の共有結合が挙げられる。
【0140】
所望の場合、本発明における使用のためのTau結合抗体又はその結合フラグメントはしたがって、1つ又は2つ以上のエフェクター分子(複数可)へ共役し得る。エフェクター分子が、本発明の抗体へ結合することのできる単一の部分を形成するよう連結された単一のエフェクター分子又はこのような2つ以上のエフェクター分子を含み得ることは認識されるであろう。エフェクター分子へ連結された抗体フラグメントを得ることが所望の場合、このことは、抗体フラグメントがエフェクター分子へ直接又はカップリング剤を介してのいずれかで連結される標準的な化学的手順又は組換えDNA手順によって調製され得る。このようなエフェクター分子を抗体へ共役させるための技術は、当該技術分野で周知である(Hellstromら,Controlled Drug Delivery 第2版,Robinsonら(編),1987,pp.623−53、Thorpeら,1982,Immunol.Rev.,62:119−58及びDubowchikら,1999,Pharmacology and Therapeutics,83,67−123を参照されたい)。エフェクター分子を共役させるためのこれらの技術には、部位特異的共役又は非部位特異的なもしくは無作為な共役が含まれ得る。特定の化学的手順には、例えば、WO 93/06231、WO 92/22583、WO 89/00195、WO 89/01476及びWO 03/031581において説明されるものが含まれる。あるいは、エフェクター分子がタンパク質又はポリペプチドである場合、連結は、例えば、WO 86/01533及び欧州特許第392745号において説明される組換えDNA手順を用いて達成され得る。あるいは、エフェクター分子に対する特定の付着部位は、例えば、WO 2008/038024において説明されるように、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントへと操作され得る。さらに、カップリング剤は、例えば、WO 2005/113605において説明されるように、エフェクター分子を本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントへ連結するのに使用され得る。先に列挙した可能性が、それ自体で又は組み合わせで使用され得ることは、当業者によって理解されるであろう。
【0141】
本明細書で使用されるエフェクター分子という用語には、例えば、薬剤、毒素、生物活性のあるタンパク質、例えば、酵素、他の抗体又は抗体フラグメント、合成又は天然のポリマー、核酸及びそのフラグメント、例えば、DNA、RNA及びそれらのフラグメント、放射性核種、特に放射性ヨウ素、放射性同位体、キレート化金属、ナノ粒子及び、蛍光化合物又はNMMR分光法もしくはESR分光法によって検出され得る化合物のようなレポーター群が含まれる。
【0142】
他のエフェクター分子には、
111In及び
90Y、Lu
177、ビスマス
213、カリフォルニウム
252、イリジウム
192及びタングステン
188/レニウム
188のようなキレート化放射性核種又はアルキルホスホコリン、トポイソメラーゼI阻害薬、タキソイド及びスラミンのような、しかしこれらに限定されない薬剤が含まれ得る。
【0143】
他のエフェクター分子には、タンパク質、ペプチド及び酵素が含まれる。関心対象の酵素には、タンパク質分解性酵素、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼが含まれるが、これらに限定されない。関心対象のタンパク質、ポリペプチド及びペプチドには、免疫グロブリン、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、もしくはジフテリア毒素のような毒素、インスリン、腫瘍壊死因子、α−インターフェロン、β−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子もしくは組織プラスミノーゲン活性化因子、血栓薬もしくは血管新生抑制薬、例えば、アンギオスタチンもしくはエンドスタチン、又はリンホカイン、インターロイキン1(IL−I)、インターロイキン2(IL−2)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、神経成長因子(NGF)もしくは他の成長因子及び免疫グロブリンのような生物応答修飾薬、又は当該技術分野において公知のリポカリン(「アンチカリン」)、フィブロネクチン(「アドネクチン」、トリネクチン)、クーニッツドメイン、C型レクチン、トランスフェリン、ガンマ−クリスタリン、システインノット、アンキリン反復配列「DARPin」)、Fyn SH3ドメイン(「フィノマー」)又はプロテインA(「アフィボディ」)由来のタンパク質足場を基にした10個を超えるアミノ酸を含む他のタンパク質もしくはポリペプチドの化合物が含まれるが、これらに限定されない(Tomlinson, 2004、Mosaviら, 2004、Gill及びDamle,2006、Nilsson及びTolmachev,2007、Binzら,2004、Silacciら,2014)。
【0144】
他のエフェクター分子には、血液脳関門通過を亢進又は容易にするペプチド及びタンパク質が含まれる。例えば、WO2010/043047、WO2010/063122、WO2010/063123又はWO2011/041897は、血液脳関門を通過して治療用分子を輸送することのできるベクターとして作用し得るペプチド又はポリペプチド、及びこれらを治療用分子へ共役させる方法を説明している。血液脳関門通過との関連ににおける関心対象のペプチド及びタンパク質には、トランスフェリン受容体、グルコース受容体、インスリン受容体、インスリン様成長因子受容体、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8型、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1型及びヘパリン結合性表皮成長因子様成長因子が含まれるが、これらに限定されない。あるいは、エフェクター分子は、先の血液脳関門受容体のうちの1つへ特異的に結合するドメイン抗体のような抗体フラグメント、ラクダ抗体又はサメ由来抗体(VNAR)である。
【0145】
他のエフェクター分子には、例えば、診断において有用な検出可能な物質が含まれ得る。検出可能な物質の例としては、種々の酵素、補綴群(prosthetic group)、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、放射性核種、ポジトロン放射断層撮影法もしくは単一光子放射断層撮影法において使用され得るようなポジトロン放射材料、及び非放射性常磁性金属イオンが挙げられる。診断薬としての使用のために抗体へ共役することのできる金属イオンについては概して、米国特許第4,741,900号を参照されたい。適切な酵素には、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼが含まれ、適切な補綴群には、ストレプトアビジン、アビジン及びビオチンが含まれ、適切な蛍光材料には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル及びフィコエリトリンが含まれ、適切な発光材料には、ルミノールが含まれ、適切な生物発光材料には、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンが含まれ、ならびに適切な放射性核種には、
124I
125I、
131I、
111In、
99Tc、
89Zr、
90Y、
64Cu、
68Ga及び
18Fが含まれる。診断に有用な検出可能な物質として適した特定のタイプのエフェクター分子には、Wyffelsら 2014,Nuclear Medicine and biology 41(2014):513−523において説明される電子欠乏性テトラジン及びトランスシクロオクテン(TCO)が含まれ、ここで、テトラジンへ連結した本発明のTau結合抗体が投与され得、最大取り込み及び非標的部位からの十分な除去に到達することを許容し得、次いで、適切な放射性核種で標識されたTCO又は最適化されたTCO類似体のその後の投与があり、それにより、TCOは、本発明のTau結合抗体においてテトラジンを共有結合するであろうし、例えば、ポジトロン放射断層撮影法又は単一光子放射断層撮影法によるテトラジンの検出を許容するであろう。
【0146】
一実施形態において、放射性核種へ又はテトラジンへ連結されたTau結合型のFab、Fab’、又はscFvが提供される。放射性核種に対する又はテトラジンに対する連結は、抗体フラグメントに位置する何らかの利用可能なアミノ酸側鎖又は末端アミノ酸官能基、例えば、何らかの遊離したアミノ基、イミノ基、チオール基、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を通じての付着を介してなされ得る。このようなアミノ酸は、抗体フラグメントにおいて自然に生じ得、又は組換えDNA法を用いてフラグメントへと操作され得る(例えば、米国特許第5,219,996号、米国特許第5,667,425号、WO98/25971、WO2008/038024を参照されたい)。一例において、本発明のTau結合抗体又はその結合フラグメントは、修飾されたFabフラグメントであり、この中で、当該修飾は、当該フラグメントの重鎖のC末端への、エフェクター分子の付着を許容するための1つ又は2つ以上のアミノ酸の付加である。適切には、追加のアミノ酸は、エフェクター分子が付着し得る1つ又は2つ以上のシステイン残基を含有する修飾されたヒンジ部を形成する。一実施形態において、放射性核種が111In、99Tc、89Zr、90Y、64Cu、又は68Gaのような金属である場合、このことは、例えば、Turnerら(Br.J.Cancer,1994,70:35−41; Comparative biodistribution of indium−111−labelled macrocycle chimeric B72.3 antibody conjugates in tumour−bearing mice)によって説明される大環状キレーターによって結合し得、それにより後者は順に、当該抗体又は抗体フラグメントの上述のアミノ酸側鎖又は末端アミノ酸官能基(又は複数可)へ共有結合する。さらなる実施形態において、放射性核種の結合した大環状キレートは、2つ以上の抗Tau抗体又はその結合フラグメントを連結するクロスリンカーの一部である、WO05/113605において説明されるエフェクター分子であり得る。
【0147】
別の例において、エフェクター分子は、インビボでの抗体の半減期を延長し得、及び/又は抗体の免疫原性を低下させ得、及び/又は上皮性関門を通過して免疫系に至る抗体の送達を亢進し得る。このタイプの適切なエフェクター分子の例としては、ポリマー、アルブミン、及びアルブミン結合タンパク質又はWO05/117984において説明されるもののようなアルブミン結合化合物が挙げられる。
【0148】
このようなエフェクター分子がポリマーである場合、概して、合成又は天然のポリマー、例えば、任意に置換された直鎖もしくは分枝鎖のポリアルキレンポリマー、ポリアルケニレンポリマーもしくはポリオキシアルキレンポリマー又は分枝鎖もしくは非分枝鎖の多糖、例えば、ホモ多糖もしくはヘテロ多糖であり得る。
【0149】
上述の合成ポリマーにおいて存在し得る具体的な任意置換には、1つ又は2つ以上のヒドロキシ基、メチル基又はメトキシ基が含まれる。
【0150】
合成ポリマーの具体例としては、任意に置換された直鎖又は分枝鎖のポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)ポリ(ビニルアルコール)又はこれらの誘導体、特にメトキシポリ(エチレングリコール)又はその誘導体のような、任意に置換されたポリ(エチレングリコール)が挙げられる。
【0151】
具体的な天然ポリマーには、ラクトース、アミロース、デキストラン、グリコーゲン又はこれらの誘導体が含まれる。
【0152】
一実施形態において、エフェクター分子は、ヒト血清アルブミン又はそのフラグメントのような、アルブミン又はそのフラグメントである。
【0153】
ポリマーの大きさは、所望の通り変化し得るが、概して、500Da〜50000Da、例えば、20000〜40000Daのような5000〜40000Daの平均分子量範囲にあるであろう。ポリマーの大きさは特に、生成物の企図される使用、例えば、脳のようなある特定の組織へ局在する又は循環半減期を延長する能力を基に選択され得る(総説については、Chapman,2002,Advanced Drug Delivery Reviews,54,531−545を参照されたい)。したがって、例えば、当該生成物が、循環系を出て組織に浸透する場合である。
【0154】
適切なポリマーには、分子量が約15000Da〜約40000Daの範囲にあるポリ(エチレングリコール)又は、特に、メトキシポリ(エチレングリコール)もしくはその誘導体のような、ポリアルキレンポリマーが含まれる。
【0155】
一例において、本発明における使用のための抗体は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)部分へ付着する。1つの特定の例において、抗体は、Tau結合抗体又はその結合フラグメント及びPEG分子は、抗体フラグメントに位置する何らかの利用可能なアミノ酸側鎖又は末端アミノ酸官能基、例えば、何らかの遊離のアミノ基、イミノ基、チオール基、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を通じて付着し得る。このようなアミノ酸は、抗体フラグメントにおいて自然に生じ得、又は組換えDNA法を用いてフラグメントへと操作され得る(例えば、米国特許第5,219,996号、米国特許第5,667,425号、WO98/25971、WO2008/038024を参照されたい)。一例において、本発明のTau結合抗体又はその結合フラグメントは、修飾されたFabフラグメントであり、この中で、当該修飾は、その重鎖のC末端への、エフェクター分子の付着を許容する1つ又は2つ以上のアミノ酸の付加である。適切には、追加のアミノ酸は、エフェクター分子が付着し得る1つ又は2つ以上のシステイン残基を含有する修飾されたヒンジ部を形成する。2つ以上のPEG分子を付着させるために、複数の部位を使用することができる。
【0156】
適切に、PEG分子は、抗体フラグメントに位置する少なくとも1つのシステイン残基のチオール基を通じて共有結合する。修飾された抗体フラグメントへ付着した各ポリマー分子は、当該フラグメントに位置するシステイン残基の硫黄原子へ共有結合し得る。当該共有結合は概して、ジスルフィド結合又は、特に硫黄−炭素結合であろう。チオール基が適切に活性化されたエフェクター分子の付着点として使用される場合、例えば、マレイミドのようなチオール選択的誘導体及びシステイン誘導体が使用され得る。活性化されたポリマーは、先に説明したポリマー修飾された抗体フラグメントの調製における出発材料として使用され得る。活性化されたポリマーは、α−ハロカルボン酸又はエステルのようなチオール反応基を含有する何らかのポリマー、例えば、ヨードアセトアミド、イミド、例えば、マレイミド、スルホンビニル又はジスルフィドであり得る。このような出発材料は、商業的に得られ得(例えば、Nektar,旧Shearwater Polymers社,米国アラバマ州ハンツビル市)、又は従来の化学的手順を用いて市販の出発材料から調製され得る。特定のPEG分子には、20Kメトキシ−PEG−アミン(Nektar,旧Shearwater、Rapp Polymere、及びSunBioから入手可能)及びM−PEG−SPA(Nektar,旧Shearwaterから入手可能)が含まれる。
【0157】
別の態様において、本開示は、Tau結合抗体又はその結合フラグメントの軽鎖可変部及び/又は重鎖可変部をコードする核酸配列を含む核酸分子に対する、ならびにTau結合抗体又はその結合フラグメントの軽鎖可変部及び/又は重鎖可変部のCDR1、CDR2及び/又はCDR3をコードする核酸配列を含む核酸分子に対するTau結合抗体又はその結合フラグメントをコードする核酸配列を含む核酸分子を提供する。
【0158】
例として、AB1のVL(配列番号7)は、配列番号26によってコードされ得る。AB1のVH(配列番号8)は、配列番号27によってコードされ得る。
【0159】
配列番号11のヒト化VLは、配列番号30によってコードされ得る。配列番号12のヒト化VLは、配列番号31によってコードされ得る。配列番号14のヒト化VHは、配列番号32によってコードされ得、配列番号15のヒト化VHは、配列番号33によってコードされ得る。
【0160】
配列番号17のヒト化軽鎖は、配列番号34によってコードされ得る。配列番号18のヒト化軽鎖は、配列番号35によってコードされ得る。配列番号20のヒト化重鎖は、配列番号36によってコードされ得、配列番号21のヒト化重鎖は、配列番号37によってコードされ得る。配列番号23のヒト化重鎖は、配列番号38によってコードされ得、配列番号24のヒト化重鎖は、配列番号39によってコードされ得る。
【0161】
Tau結合抗体及びその結合フラグメントは、単一の核酸(例えば、当該抗体の軽鎖ポリペプチド及び重鎖ポリペプチドをコードする塩基配列を含む単一の核酸)によって、又は2つ以上の別個の核酸によってコードされ得、これらの各々は、当該抗体又は抗体フラグメントの異なる一部をコードする。この点において、本開示は、上述の抗体のうちのいずれか又は結合フラグメントをコードする1つ又は2つ以上の核酸を提供する。当該核酸分子は、DNA、cDNA、RNA及びこれらに類するものであり得る。
【0162】
例えば、抗体の重鎖及び軽鎖の一部又は全部をコードするDNA配列は、決定されたDNA配列から所望の通り、又は対応するアミノ酸配列を基にして合成され得る。アクセプターフレームワーク配列をコードするDNAは、当業者に対して広く入手可能であり、当業者が公知のアミノ酸配列を基にして容易に合成することができる。
【0163】
分子生物学の標準的な技術は、本発明の抗体分子をコードするDNA配列を調製するために使用され得る。所望のDNA配列は、オリゴヌクレオチド合成技術を用いて、完全に又は部分的に合成され得る。部位特異的変異誘発技術及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術は、適宜使用され得る。
【0164】
好ましくは、コードする核酸配列は、原核細胞又は真核細胞における発現を許容する発言制御配列へ操作可能に連結される。当該ポリヌクレオチドの発現は、翻訳可能なmRNAへのポリヌクレオチドの転写を含む。真核細胞、好ましくは哺乳類細胞における発現を確実にする調節エレメントは、当業者に周知である。当該エレメントは通常、転写の開始を確実にする調節配列、ならびに任意に、転写の終結及び転写産物の安定化を確実にするポリAシグナルを含む。追加の調節エレメントには、転写エンハンサー及び翻訳エンハンサー、ならびに/又は天然に会合した若しくは異種性のプロモーター領域を含み得る。
【0165】
さらなる態様における本開示はしたがって、Tau結合抗体及びその結合フラグメントをコードするこのような核酸配列を含むクローニングベクター又は発現ベクターを提供する。
【0166】
「ベクター」とは、例えば、コードされたポリペプチドの合成が生じることのできる適切な宿主細胞へと核酸配列を運搬する能力を有する何らかの分子又は組成物である。典型的には及び好ましくは、ベクターとは、当該技術で公知である組換えDNA技術を用いて操作して所望の核酸配列(例えば、本発明の核酸)を組み込んだ核酸である。発現ベクターは典型的には、以下の構成要素(核酸分子によってまだ提供されていない場合)、すなわちプロモーター、1つ又は2つ以上のエンハンサー配列、複製起源、転写終結配列、ドナー及びアクセプターのスライス部位を含有する完全イントロン配列、分泌のためのリーダー配列、リボソーム結合部位、ポリアデニル化配列、発現することになっているポリペプチドをコードする核酸を挿入するためのポリリンカー領域、ならびに選択可能なマーカーエレメントのうちの1つ又は2つ以上を含有する。
【0167】
ベクターは典型的には、当該ベクターが使用されるであろう宿主細胞において機能的であるよう選択される(当該ベクターは、当該遺伝子及び/又は当該遺伝子の発現が生じることができるように宿主細胞機械と互換性がある)。
【0168】
さらなる態様における本開示はしたがって、先に説明したクローニングベクターもしくは発現ベクターならびに/又は先に説明したTau結合抗体及びその結合フラグメントをコードする核酸配列を含む宿主細胞を提供する。
【0169】
宿主細胞は、核酸又はベクターによりコードされたTau結合抗体又はその結合フラグメントを生成するよう、当該核酸又はベクターを用いて形質転換することのできる何らかのタイプの細胞であることができる。当該核酸又はベクターを含む宿主細胞は、Tau結合抗体又はその結合フラグメントあるいはその一部(例えば、当該核酸又はベクターによってコードされる重鎖配列又は軽鎖配列)を生成するために使用することができる。当該核酸又はベクターを細胞へ導入した後、細胞を、コードした配列の発現に適した条件下で培養する。次に、抗体、抗原結合フラグメント、又は抗体の一部は、細胞から単離されることができる。
【0170】
宿主細胞は、原核宿主細胞(大腸菌(E.coli)のような)又は真核宿主細胞(酵母細胞、昆虫細胞、又は脊椎動物細胞のような)であり得る。宿主細胞は、適切な条件下で培養される時、その後、培地(宿主細胞が培地へ抗体又はその結合フラグメントを分泌する場合)から又は抗体もしくはその結合フラグメントを産生する宿主細胞から(宿盗細胞が分泌しない場合)直接収集されることのできる当該抗体又はその結合フラグメントを発現する。適切な宿主細胞の選択は、所望の発現レベル、グリコシル化又はリン酸化のような活性に対して望まれる又は必要なポリペプチド修飾、及び生物活性のある分子への折り畳みのしやすさのような種々の因子によるであろう。宿主細胞の選択は、抗体又はその結合フラグメントが転写後修飾される(例えば、グリコシル化される及び/又はリン酸化される)ことになっているかどうかに一部よるであろう。そうである場合、酵母、昆虫、又は哺乳類の宿主細胞が好ましい。
【0171】
適切な哺乳類宿主細胞には、CHO細胞、骨髄腫細胞又はハイブリドーマ細胞が含まれる。本発明における使用に適したタイプのチャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)には、CHO−DG44細胞及びCHODXB11細胞のようなかつDHFR選択可能マーカーと併用され得るdhfr−CHO細胞、又はグルタミンシンテターゼ選択可能マーカーと併用され得るCHOKI−SV細胞を含む、CHO細胞及びCHO−K1細胞を含み得る。多くは、米国培養細胞系統保存機関(ATCC),バージニア州マナサス市から入手可能である。例としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)(ATCC第CCL61番)、ヒト胚腎(HEK)293細胞もしくはHEK293T細胞(ATCC第CRL1573番)、3T3細胞(ATCC第CCL92番)、又はPER.C
6細胞のような哺乳類細胞が挙げられる。抗体を発現する上での使用に関する他の細胞タイプには、リンパ球細胞株、例えば、NSO骨髄腫細胞及びSP2細胞、COS細胞が含まれる。
【0172】
本開示の別の態様は、例えば、Tau結合抗体又はその結合フラグメントをコードするDNAからのTau結合抗体又はその結合フラグメントの発現をもたらすのに適した条件下で、例えばベクターを含有する宿主細胞を培養すること、及び当該抗体分子を単離することを含む、Tau結合抗体又はその結合フラグメントの精製のための方法を提供する。
【0173】
Tau結合抗体又はその結合フラグメントは、重鎖ポリペプチド又は軽鎖ポリペプチドのみを含み得、いずれの場合においても、重鎖ポリペプチド又は軽鎖ポリペプチドのみをコードする配列が宿主細胞をトランスフェクトするために使用されることが必要である。重鎖お及び軽鎖の両方を含む生成物の生成のために、当該細胞株は、軽鎖ポリペプチドをコードする第一のベクター及び重鎖ポリペプチドをコードする第二のベクターの2つのベクターがトランスフェクトされ得る。あるいは、軽鎖ポリペプチド及び重鎖ポリペプチドをコードする配列を含む単一のベクターが使用され得る。
【0174】
Tau結合抗体又はその結合フラグメント本開示による抗体及びフラグメントは、良好なレベルで宿主細胞から発現する。したがって、当該抗体及び/又はフラグメントの特性は、商業的な加工をさせやすくする。
【0175】
したがって、宿主細胞を培養すること、及びTau結合抗体又はその結合フラグメントを発現させること、後者を単離し、任意にこれを精製して、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントを提供することのための方法が提供される。一実施形態において、当該方法はさらに、エフェクター分子を当該単離された抗体又はフラグメントへ共役させるステップ、例えば、特に本明細書で説明されるPEGポリマーへ共役させるステップを含む。
【0176】
Tau結合抗体又はその結合フラグメントは、組成物、特に医薬組成物又は診断用組成物において製剤化されることができる。医薬組成物は、治療有効量又は予防有効量のTau結合抗体又はその結合フラグメントを、適切な担体、例えば、診断上許容され得る薬剤との混合で含む。
【0177】
本医薬組成物における使用のための医薬として許容され得る薬剤には、担体、賦形剤、希釈剤(diluent)、抗酸化物質、防腐剤、着色剤、香料及び希釈剤(diluting agent)、乳化剤、懸濁剤、溶剤、充填剤、増量剤、緩衝剤(buffer)、送達ビヒクル、等張化剤、共溶媒、湿潤剤、錯化剤、緩衝剤(buffering agent)、抗菌薬、ならびに界面活性剤が含まれる。
【0178】
当該組成物は、液状に又は凍結乾燥(lyophilized)形態もしくは凍結乾燥(freeze−dried)形態にあることができ、1つ又は2つ以上の凍結防止剤、賦形剤、界面活性剤、高分子量構造付加剤及び/又は増量剤を含み得る(例えば、米国特許第6,685,940号、第6,566,329号、及び第6,372,716号を参照されたい)。
【0179】
組成物は、非経口投与に適していることができる。例示的な組成物は、関節内経路、皮下経路、静脈内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、脳内(くも膜下内)経路、脳室内経路、筋肉内経路、眼内、動脈内、病変内経路のような、当業者に利用可能な何らかの経路による、動物への注射又は注入に適している。非経口製剤は典型的には、医薬として許容され得る防腐剤を任意に含有している、滅菌済みの、発熱物質非含有の、等張性水溶液であろう。
【0180】
非水性溶剤の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、及びオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルである。水性担体には、塩類溶液及び緩衝媒体を含む、水、アルコール溶液/水溶液、エマルション又は懸濁液が含まれる。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸化リンガー液、又は不揮発性油が含まれる。静脈内ビヒクルには、流体及び栄養物質の補液、リンガーデキストロースに基づいた補液のような電解質の補液、ならびにこれらに類するものが含まれる。例えば、抗菌薬、抗酸化物質、キレート剤、不活性ガス及びこれらに類するもののような、防腐剤及び他の添加剤も存在し得る。概して、参照により本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Science,第16版,Mack編,1980を参照されたい。
【0181】
本明細書で説明される医薬組成物は、特定の局所環境における生成物の局所濃度(例えば、ボーラス、デポー作用)及び/又は安定性もしくは半減期の増大を提供する様式で徐放性送達又は持効性送達のために製剤化することができる。当該組成物には、後にデポー注射として送達することのできる作用薬の徐放性又は持効性を準備するポリ乳酸、ポリグリコール酸などのようなポリマー化合物の粒子状調製物、ならびに生分解性マトリックス、注射可能な微小球、マイクロカプセル粒子、マイクロカプセル、生体分解可能な粒子ビーズ、リポソーム、及び植え込み可能な送達装置のような薬剤の粒子状調製物を用いた、本発明の抗体、結合フラグメント、核酸又はベクターの製剤が含まれることができる。
【0182】
あるいは又は加えて、当該組成物は、本発明の抗体、結合フラグメント、核酸、又はベクターが吸収又は封入されたメンブレン、スポンジ、又は他の適切な材料の、罹患した領域への植え込みを介して、局所的に投与することができる。植え込み装置を使用する場合、当該装置は、何らかの適切な組織又は器官へと植え込まれることができ、本発明の抗体、結合フラグメント、核酸、又はベクターの送達は、ボーラスを介して直接、又は連続投与を介して、又は連続注入を用いるカテーテルを介して当該装置を通じて直接であることができる。
【0183】
Tau結合抗体又はその結合フラグメントを含む医薬組成物は、例えば、乾燥粉末としてのように吸入用に製剤化されることができる。吸入溶液は、エアゾール送達用液化高圧ガス中に製剤化することができる。さらに別の製剤において、溶液は、霧状化され得る。
【0184】
本開示の一態様は、疾患の治療における治療活性のある薬剤としてのTau結合抗体又はその結合フラグメントの使用に関する。
【0185】
本開示の別の態様は、タウオパチーの治療におけるTau結合抗体又はその結合フラグメントの使用に関する。Tau封入体を含むことが説明されてきたタウオパチー(Clavagueraら.Brain Pathology 23(2013)342−349)には、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン症−認知症合併症、好銀性粒子病、慢性外傷性脳症、皮質基底核変性、石灰沈着を伴うびまん性神経原線維変化病、ダウン症候群、家族性英国型認知症、家族性デンマーク型認知症、MAPT変異起因性17番染色体連関型前頭側頭型認知症及びパーキンソン症、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病、グアドループ島型パーキンソン症、筋緊張性ジストロフィー、脳内鉄蓄積を伴う神経変性、ニーマン・ピック病C型、神経原線維変化病併発性非グアマニアン型運動ニューロン疾患、ピック病、脳炎後パーキンソン症、プリオンタンパク質性脳アミロイド血管症、進行性皮質下神経膠症、進行性核上性麻痺(PSP)、SLC9A6関連精神遅滞、亜急性硬化性全脳炎、変化のみの認知症、ならびに球状神経膠封入体を伴う白質タウオパチーが含まれる。
【0186】
本開示の別の態様はしたがって、アルツハイマー病及び/又は進行性核上性麻痺の処置におけるTau結合抗体又はその結合フラグメントの使用に関する。
【0187】
同様に、本開示は、タウオパチー、特にアルツハイマー病及び/又は進行性核上性麻痺を処置することを必要とする対象へ、治療活性のある量のTau結合抗体又はその結合フラグメントを投与することによって、タウオパチー、特にアルツハイマー病及び/又は進行性核上性麻痺を処置する方法にも関する。
【0188】
本開示は、タウオパチー、特にアルツハイマー病及び/又は進行性核上性麻痺の処置のための薬剤の製造におけるTau結合抗体又はその結合フラグメントの使用にも関する。
【0189】
本開示の別の態様において、Tau結合抗体又はその結合フラグメントは、療法において単独で又は他の薬剤との組み合わせでのいずれかで使用され得る。例えば、Tau結合抗体又はその結合フラグメントは、少なくとも1つの追加の治療薬と併用投与され得る。ある特定の態様において、追加の治療薬は、Tau結合抗体又はその結合フラグメントが処置するために使用中であるのと同じ又は異なる障害を処置するのに情動的な治療薬である。例示的な追加の治療薬には、コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、ロバスチグミン、及びタクリンのような)、NMDA受容体アンタゴニスト(メマンチンのような)、アミロイドベータペプチド凝集阻害薬、抗酸化物質、ガンマ−セクレターゼ調節薬、神経成長因子(NGF)模倣薬もしくはNGF遺伝子療法、PPARyアゴニスト、HMS−CoA還元酵素阻害薬(スタチン)、アンパキン、カルシウムチャネル遮断薬、GABA受容体アンタゴニスト、グリコーゲンシンターゼキナーゼ阻害薬、静脈内免疫グロブリン、ムスカリン性受容体アゴニスト、ニコチン性受容体調節薬、能動的又は受動的アミロイドベータペプチド免疫化、ホスホジエステラーゼ阻害薬、セロトニン受容体アンタゴニスト及び抗アミロイドベータペプチド抗体又はさらなる抗タウ抗体が含まれるが、これらに限定されない。追加の例示的な神経学的薬剤は、成長ホルモン又は神経栄養因子から選択され得、例としては、脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン4型/5型、線維芽細胞成長因子(FGF)2型及び他のFGF、ニューロトロフィン(NT)3型、エリスロポエチン(EPO)、肝細胞成長宇因子(HGF)、表皮成長因子(EGF),トランスフォーミング増殖因子(TGF)アルファ、TGFベータ、血管内皮成長因子(VEGF)、インターロイキン1型受容体アンタゴニスト(IL−1ra)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、血小板由来成長因子(PDGF)、ヘレグリン、ニューレグリン、アルテミン、パーセフィン、インターロイキン類、グリア細胞株由来神経栄養因子(GFR)、顆粒球コロニー刺激因子(CSF)、顆粒球−マクロファージ−CSF、ネトリン、カルジオトロフィン1型、ヘッジホッグ、白血病抑制因子(LIF)、ミドカイン、プレイオトロフィン、骨形成タンパク質(BMP)、ネトリン類、サポシン類、セマフォリン、ならびに幹細胞因子(SCF)が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、当該少なくとも1つの追加の治療薬は、神経学的薬剤の1つ又は2つ以上の副作用を軽減する能力について選択される。先に記載されたこのような併用療法は、併用投与(2つ以上の治療薬が同じ又は別個の製剤に含まれる場合)、及び個別投与を包含し、いずれの場合においても、Tau結合抗体又はその結合フラグメントの投与は、追加の治療薬及び/又はアジュバントの投与の前、投与と同時、及び/又は投与後に生じることができる。Tau結合抗体又はその結合フラグメントは、当該技術分野で公知の及び処置又は予防されることになっている神経学的障害に適切な、放射線療法、行動療法、又は他の療法のような、しかしこれらに限定されない他の介入療法と併用することもできる。
【0190】
本開示の別の態様は、診断活性のある薬剤としてのTau結合抗体又はその結合フラグメントの使用に関する。
【0191】
本開示の一態様は、タウオパチー、特にアルツハイマー病及び/又は進行性核上性麻痺の診断におけるTau結合抗体又はその結合フラグメントの使用にも関する。
【0192】
このような診断検査は好ましくは、生物試料に関して実施され得る。「生物試料」は、個体から得られた種々の試料タイプを包含し、診断アッセイ又はモニタリングアッセイにおいて使用することができる。当該定義は、脳脊髄液、血液及び生物起源の他の液体試料、生検標品もしくは組織培養物又はそれらから得られる細胞及び当該細胞の後代のような固体組織試料を包含する。当該定義には、試薬を用いた処置、可溶化、又はポリヌクレオチドのようなある特定の成分についての濃縮などによる、当該試料の獲得後に何らかの方法で操作されたものも含まれる。「生物試料」という用語は、臨床試料を包含し、これには培養物、細胞上清、細胞可溶化液、血清、生物流体、及び組織試料における細胞も含まれる。「生物試料」という用語には、尿、唾液、脳脊髄液、血漿及び血清のような血液画分、ならびにこれらに類するものが含まれる。
【0193】
診断検査は好ましくは、ヒト又は動物の身体と接触していない生物試料に関して実施され得る。このような診断検査は、インビトロ検査とも呼ばれる。
【0194】
インビトロ診断検査は、i)生物試料を本明細書に説明されるTau結合抗体又はその結合フラグメントと接書させるステップ、ならびにii)Tauに対する本明細書で説明されるTau結合抗体又はその結合フラグメントの結合を検出するステップを含む、個体から得られた生物試料におけるTauを検出するインビトロ法に寄り得る。検出されたTauレベルを適切な対照と比較することによって、次に、アルツハイマー病及び/又は進行性核上性麻痺のようなタウオパチーの存在又は発症見込みを診断することができる。このような検出方法はしたがって、対象がタウオパチーに罹患しているかどうか、又はタウオパチーを発症する危険にあるかどうかを、タウオパチーの病期(重症度)を判定することを含めて判定するために使用することができる。
【0195】
本開示はしたがって、i)本明細書で説明されるTau結合抗体又はその結合フラグメントを使用することによって、対象から得た生物試料におけるTauのレベル又は状態を評価するステップ、及びii)Tauのレベル又は状態を、基準値、標準値、又は正常対照対象におけるTauのレベルもしくは状態を示す正常対照値と比較するステップを含む、対象におけるアルツハイマー病及び/又は進行性核上性麻痺のようなタウオパチーを診断するインビトロ法を提供する。Tauポリペプチドのレベル及び/又は状態の、生物試料と正常対照値の間の有意差は、個体がアルツハイマー病及び/又は進行性核上性麻痺のようなタウオパチーに罹患していることを示す。
【0196】
本明細書で説明してきたこれらの種々の態様及び実施形態に関してい、本開示はとりわけ、以下を熟慮する。
【0197】
1.単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメントであって、
配列番号1もしくはそれと少なくとも90%同一である配列から選択されるCDR1、配列番号2もしくはそれと少なくとも90%同一である配列から選択されるCDR2、及び配列番号3もしくはそれと少なくとも90%同一である配列から選択されるCDR3を含む軽鎖可変部、ならびに/又は
配列番号4もしくはそれと少なくとも90%同一である配列から選択されるCDR1、配列番号5もしくはそれと少なくとも90%同一である配列から選択されるCDR2、及び配列番号6もしくはそれと少なくとも0%同一である配列から選択されるCDR3を含む重鎖可変部
を含む、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0198】
2.配列番号1から選択されるCDR1、配列番号2から選択されるCDR2、及び配列番号3から選択されるCDR3を含む軽鎖可変部、ならびに
配列番号4から選択されるCDR1、配列番号5から選択されるCDR2、及び/又は配列番号6から選択されるCDR3を含む重鎖可変部
を含む、実施形態1に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0199】
3.配列番号3のX
1は、Aである、実施形態1又は2に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0200】
4.配列番号3のX
1は、Gである、実施形態1又は2に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0201】
5.配列番号6のX
2は、Aである、実施形態1又は2に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0202】
6.配列番号6のX
2は、Qである、実施形態1又は2に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0203】
7.配列番号6のX
2は、Nである、実施形態1又は2に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0204】
8.配列番号6のX
2は、Dである、実施形態1又は2に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0205】
9.配列番号6のX
2は、Sである、実施形態1又は2に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0206】
10.モノクローナル抗体である、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8又は9のいずれか1つに記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0207】
11.キメラ、ヒト化又は完全にヒトの抗体である、実施形態10に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0208】
12.IgG1又はIgG4サブタイプのヒト化抗体である、実施形態11に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0209】
13.配列番号55のアミノ酸197〜206内のリン酸化Tau領域へ結合する、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12のいずれか1つに記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0210】
14.ヒトTauの可溶性形態、ヒトTauの対形成したらせん状フィラメント(PHF)の可溶性形態又はヒトTau及びヒトTauの対形成したらせん状フィラメント(PHF)の両可溶性形態へ結合する、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13のいずれか1つに記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0211】
15.配列番号7もしくはそれと少なくとも80%同一である配列を含む軽鎖可変部、及び/又は
配列番号8もしくはそれと少なくとも80%同一である配列を含む重鎖可変部
を含む、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0212】
16.配列番号7を含む軽鎖可変部、及び
配列番号8を含む重鎖可変部
を含む、実施形態15に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0213】
17.配列番号7のX
1は、Aである、実施形態15又は16に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0214】
18.配列番号7のX
1は、Gである、実施形態15又は16に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0215】
19.配列番号8のX
2は、Aである、実施形態15又は16に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0216】
20.配列番号8のX
2は、Qである、実施形態15又は16に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0217】
21.配列番号8のX
2は、Nである、実施形態15又は16に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0218】
22.配列番号8のX
2は、Dである、実施形態15又は16に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0219】
23.配列番号SのX
2である、実施形態15又は16に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0220】
24.モノクローナル抗体である、実施形態15、16、17、18、19、20、21、22又は23のいずれか1つに記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0221】
25.キメラ抗体である、実施形態24に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0222】
26.配列番号55のアミノ酸197〜206内のリン酸化Tau領域へ結合する、実施形態15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25のいずれか1つに記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0223】
27.ヒトTauの可溶性形態、ヒトtauの対形成したらせん状フィラメント(PHF)の可溶性形態又はヒトTau及びヒトtauの対形成したらせん状フィラメント(PHF)の両可溶性形態へ結合する、実施形態15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25又は26のいずれか1つに記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0224】
28.配列番号9もしくはそれと少なくとも80%同一である配列を含む軽鎖可変部、及び/又は
配列番号10もしくはそれと少なくとも80%同一である配列を含む重鎖可変部
を含む、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0225】
29.配列番号13もしくはそれと少なくとも80%同一である配列を含む軽鎖可変部、及び/又は
配列番号16もしくはそれと少なくとも80%同一である配列を含む重鎖可変部
を含む、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0226】
30.配列番号13を含む軽鎖可変部、及び
配列番号16を含む重鎖可変部
を含む、実施形態29に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0227】
31.配列番号13のX
1は、Aである、実施形態29又は30に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0228】
32.配列番号13のX
1は、Gである、実施形態29又は30に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0229】
33.配列番号16のX
2は、Aである、実施形態29又は30に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0230】
34.配列番号16のX
2は、Qである、実施形態29又は30に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0231】
35.配列番号16のX
2は、Nである、実施形態29又は30に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0232】
36.配列番号16のX
2は、Dである、実施形態29又は30に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0233】
37.配列番号16のX
2は、Sである、実施形態29又は30に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0234】
38.当該重鎖可変部は、配列番号14又は15を含む、実施形態29に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0235】
39.当該軽鎖可変部は、配列番号11又は12を含む、実施形態29に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0236】
40.モノクローナル抗体である、実施形態29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、又は39のいずれか1つに記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0237】
41.ヒト化抗体である、実施形態40に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0238】
42.IgG1又はIgG4サブタイプである、実施形態41に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0239】
43.配列番号55のアミノ酸197〜206内のリン酸化Tau領域へ結合する、実施形態29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41又は42のいずれか1つに記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0240】
44.ヒトTauの可溶性形態、ヒトTauの対形成したらせん状フィラメント(PHF)の可溶性形態、又はヒトTau及びヒトTauのらせん状フィラメント(PHF)の両可溶性形態へ結合する、実施形態29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42又は43のいずれか1つに記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0241】
45.配列番号19もしくはそれと少なくとも70%同一である配列を含む軽鎖、及び/又は
配列番号22もしくはそれと少なくとも70%同一である配列を含む重鎖
を含む、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0242】
46.配列番号19を含む軽鎖、及び
配列番号22を含む重鎖
を含む、実施形態45に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0243】
47.配列番号19のX
1は、Aである、実施形態45又は46に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0244】
48.配列番号19のX
1は、Gである、実施形態45又は46に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0245】
49.配列番号22のX
2は、Aである、実施形態45又は46に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0246】
50.配列番号22のX
2は、Qである、実施形態45又は46に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0247】
51.配列番号22のX
2は、Nである、実施形態45又は46に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0248】
52.配列番号22のX
2は、Dである、実施形態45又は46に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0249】
53.配列番号22のX
2は、Sである、実施形態45又は46に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0250】
54.当該重鎖可変部は、配列番号14又は15を含む、実施形態45に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0251】
55.当該軽鎖可変部は、配列番号11又は12を含む、実施形態45に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0252】
56.モノクローナルヒト化抗体である、実施形態45、46、47、48、49、50、51、52、53、54又は55のいずれか1つに記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0253】
57.IgG1又はIgG4サブタイプである、実施形態56に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0254】
58.配列番号55のアミノ酸197〜206内に含むリン酸化Tau領域へ結合する、実施形態45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56又は57のいずれか1つに記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0255】
59.ヒトTauの可溶性形態、ヒトTauの対形成したらせん状フィラメント(PHF)の可溶性形態又はヒトTau及びヒトTauの対形成したらせん状フィラメント(PHF)の両可溶性形態へ結合する、実施形態45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57又は58のいずれか1つに記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0256】
60.配列番号55のアミノ酸197〜206内に含むリン酸化Tau領域へ結合する、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0257】
61.モノクローナル抗体である、実施形態60に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0258】
62.キメラ、ヒト化又は完全にヒトの抗体である、実施形態60又は61に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0259】
63.当該IgG1又はIgG4サブタイプのモノクローナル抗体ヒト化抗体又はその結合フラグメントである、実施形態62に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0260】
64.ヒトTauの可溶性形態、ヒトTauの対形成したらせん状フィラメント(PHF)の可溶性形態又はヒトTau及びヒトTauの対形成したらせん状フィラメント(PHF)の両可溶性形態へ結合する、実施形態60、61、62、又は63のいずれか1つに記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0261】
65.Tauへの結合に対して、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、又は64のいずれか1つに記載のTau結合抗体又はその結合フラグメントと競合する、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0262】
66.Tauへの結合に対して、
配列番号11又は12を含む軽鎖可変部、及び
配列番号14又は15を含む重鎖可変部
を含むTau結合抗体又はその結合フラグメントと競合する、実施形態65に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0263】
67.実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66又は67のいずれか1つに記載のTau結合抗体又はその結合フラグメントと実質的に同じTauエピトープへ結合する、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0264】
68.配列番号11又は12を含む軽鎖可変部、及び
配列番号14又は15を含む重鎖可変部
を含むTau結合抗体又は結合フラグメントTau結合抗体又は結合フラグメントと実質的に同じTauエピトープへ結合する、実施形態67に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0265】
69.モノクローナル抗体である、実施形態65、66、67、又は68のいずれか1つに記載の単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0266】
70.キメラ、ヒト化又は完全にヒトの抗体である、実施形態69に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0267】
71.IgG1又はIgG4サブタイプのヒト化抗体である、実施形態70に記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0268】
72.配列番号55のリン酸化Tau領域アミノ酸197〜206へ結合する、実施形態65、66、67、68、69、70、又は71のいずれか1つに記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0269】
73.ヒトTauの可溶性形態、ヒトTauの対形成したらせん状フィラメント(PHF)の可溶性形態又はヒトTau及びヒトTauの対形成したらせん状フィラメント(PHF)の両可溶性形態へ結合する、実施形態65、66、67、68、69、70、71、又は72のいずれか1つに記載のTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0270】
74.Fab、Fab’、F(ab’)
2、Fd及びFv、scFv、Fab−Fv、Fab−scFv、Fab−dsFv、Fab−scFc、scFv−scFc、dsscFv、dsscFv−scFc、ダイアボディ、トライアボディ(triabody)、テトラボディ、線形抗体、又はVHH含有抗体である、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72又は73のいずれか1つに記載の単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0271】
75.実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、又は74のいずれか1つに記載のTau結合抗体又はその結合フラグメントの軽鎖及び/又は重鎖をコードする、単離された核酸分子。
【0272】
76.実施形態75に記載の1つ又は2つ以上の核酸配列を含む、クローニングベクター又は発現ベクター。
【0273】
77.実施形態76に記載の1つ又は2つ以上の核酸配列又は実施形態76の1つ又は2つ以上のクローニングベクターもしくは発現ベクターを含む、宿主細胞。
【0274】
78.ヒト胚性幹細胞ではない、実施形態77に記載の宿主細胞。
【0275】
79.少なくとも
a)実施形態77又は78に記載の宿主細胞を培養するステップ、及び
b)当該Tau結合抗体又はその結合フラグメントを単離するステップ
を含む、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73又は74のいずれか1つに記載のTau結合抗体又はその結合フラグメントを生成する方法。
【0276】
80.治療活性のある薬剤としての使用のための、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73又は74のいずれか1つに記載の単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0277】
81.タウオパチーを処置する上での使用のための、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73又は74のいずれか1つに記載の単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0278】
82.当該タウオパチーは、アルツハイマー病である、実施形態81に記載の使用のための、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0279】
83.当該タウオパチーは、進行性核上性麻痺である、実施形態81に記載の使用のための、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0280】
84.タウオパチーを処置する必要のある対象へ、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73又は74のいずれか1つに記載のTau結合抗体又はその結合フラグメントを投与するステップを含む、タウオパチーを処置する方法。
【0281】
85.当該タウオパチーは、アルツハイマー病である、実施形態84に記載の方法。
【0282】
86.当該タウオパチーは、進行性核上性麻痺である、実施形態85に記載の方法。
【0283】
87.診断薬としての使用のための、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73又は74のいずれか1つに記載の単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0284】
88.タウオパチーを診断する上での使用のための、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73又は74のいずれか1つに記載の単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0285】
89.当該タウオパチーは、アルツハイマー病である、実施形態88に記載の使用のための、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0286】
90.当該タウオパチーは、進行性核上性麻痺である、実施形態88に記載の使用のための、単離されたTau結合抗体又はその結合フラグメント。
【0287】
さて、本発明は、制限するものとして解釈されることのない一部の例に関して説明される。
【0288】
実験
実験1−Tau結合抗体の作製
1.1 Tauペプチドの設計及び生成
ペプチド及びイムノゲンをPeptide Protein Research Ltd.,英国ビショップスウォルサム町によって供給し、Atherton及びSheppardの方法(参考文献:Atherton,E.; Sheppard,R.C.(1989).Solid Phase peptide synthesis: a practical approach.英国オックスフォード市: IRL Press)によるFmoc固相ペプチド化学によって合成した。ホスホセリン含有ペプチド(pSer)、ホスホトレオニン(pThr)、3−ニトロチロシン(nTyr)及びN−ε−アセチルリジン(aLys)をFmoc保護された前駆体Fmoc−Ser(PO(OBzl)OH)−OH、Fmoc−Thr(PO(OBzl)OH)−OH、Fmoc−Tyr(3−NO
2)−OH及びFmoc−Lys(Ac)−OHを用いて合成した。
【0289】
ホスホセリン(pSer)、ホスホトレオニン(pThr)及び/又はニトロソ−チロシン(nTyr)で翻訳後修飾したTauアイソフォームをすべて認識するであろうTau結合抗体を作製するようペプチドを設計及び使用した。当該ペプチドは、Tauアイソフォーム2(配列番号55、Uniprotコード:P10636−8、NCBI参照配列:NP_005901.2)に対して整列した残基197〜206:
N−アセチル−nTyr pSer pSer Pro Cys
* pSer Pro Gly pThr Pro−アミド
(T197と指定されかつ配列番号56において定義されるペプチド)
を表す。
【0290】
Nペプチド末端及びCペプチド末端をそれぞれアセチル基及びアミド基でキャッピングし、cys
*は、システイン側鎖チオール基が、以下に詳述するように、それぞれイムノゲン又はアッセイ試薬の調製のためのタンパク質又はビオチンを運搬するための連結のための共役地点であることを意味する。抗血清力価をモニターするためのアッセイ試薬を、等量のマレイイミド(maleiimido)−PEG−ビオチン及びペプチドを反応させることによって調製した。3つの異なるイムノゲンを、当該ペプチドと、ε−アミノリジン側鎖上のマレイミド基で置換した以下の担体タンパク質、すなわちキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、先の血清アルブミン(BSA)及び卵白アルブミン(OVA)との反応によって調製した。
【0291】
1.2 免疫化
2匹の雌ニュージーランドホワイトウサギ(2kg以上)を等容積のフロイント完全アジュバント(CFA)中で注射器を用いて激しく混合することによって乳化した500μgの総ペプチド混合物(T197及びT211)で皮下的に免疫化した。KLH、OVA及びBSAへ共役したペプチドを設計し、交互に免疫化した。フロイント不完全アジュバント(IFA)を用いてウサギに2回の追加抗原注射を21日間隔で与えるとともに、免疫化14日後に耳から採血した。最終追加の14日後に終了するとともに、脾臓、骨髄及び末梢血単核細胞の単一細胞懸濁液を調製し、10%DMSO/FCS中で−80℃で凍結させた。
【0292】
1.3 B細胞培養
B細胞培養物を、Zublerら(1985)によって説明された方法と類似の方法を用いて調製した。簡潔には、免疫化したウサギからのPBMC由来B細胞を、10%FCS(PAA laboratories ltd)、2%HEPES(Sigma Aldrich)、1% L−グルタミン(Gibco BRL)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液(Gibco BRL)、0.1%β−メルカプトエタノール(Gibco BRL)、3%活性化型脾細胞培養上清及びガンマ照射済み変異EL4ネズミ胸腺腫細胞(5×10
4/ウェル)を補充した200μl/ウェルのRPMI1640培地(Gibco BRL)を用いたバーコード入り96穴組織培養プレート中に1ウェルあたりおよそ3000個の密度で、37℃、5%CO
2の雰囲気下で7日間培養した。総じて、およそ1.2×10
7個のB細胞を採取した。
【0293】
1.4 一次スクリーニング
B細胞培養上清中のT197ペプチド特異的抗体の存在を、標的抗原の源としてのビオチン化T197ペプチドを用いてコーティングしたSuperavidin(商標)ビーズ(Bangs Laboratories)を用いる均質蛍光系結合アッセイを用いて判定した。スクリーニングは、Matrix Platemate液体取り扱い装置を用いて、バーコード入り96穴組織培養プレートから、ビーズ上に免疫化したT197を含有するバーコード入りの384穴黒色壁アッセイプレート中へと10ulの上清を転移させることを包含した。ヤギ抗ウサギIgG Fcγ特異的Cy−5共役体(Jackson)を用いて、結合を評価した。プレートをApplied Biosystems 8200細胞検出システム上で読み取った。
【0294】
1.5 二次スクリーニング
一次スクリーニング後、陽性上清を96穴バーコード入りマスタープレートに、Aviso Onyxヒットピッキングロボットを用いてまとめ、細胞培養プレート中のB細胞を−800Cで凍結させた。次に、マスタープレートをT197ペプチドに関して、及びストレプトアビジンのみに関してもELISAアッセイにおいてスクリーニングした。このことは、各ウェルに対するペプチド特異性を判定するために、及びSuperavidinビーズへ非特異的に結合することを示す擬陽性ウェルを除外するために実施した。当該ELISAアッセイは、炭酸塩コーティング緩衝液(dH
2O+0.16%Na
2CO
3+0.3%NaHCO3)中のストレプトアビジンでコーティングした384穴Maxisorpプレート(ThermoScientific/Nunc)上へのビオチン化T197の捕捉を包含した後、10ul/ウェルのB細胞培養上清(ブロッキング緩衝液で1:1希釈)とともにインキュベートした。HRP共役したヤギ抗ウサギIgGfc二次抗体(Stratech Scientific Ltd/Jackson ImmunoResearch)をプレートへ添加した後、TMB基質(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン、EMD Millipore製、10μl/ウェル)を用いた結合の可視化を行った。光学密度を、BioTek Synergy 2μプレートリーダーを用いて630nMで測定した。一次結合アッセイは、880のヒットを識別し、ELISAスクリーニング後、当該ヒットのうちの406は、T197へ特異的に結合することが示された。T197に対する特異性を実証するB細胞上清をBiacoreによるさらなる分析のために選択して、当該細胞上清を最良の親和性で識別した。
【0295】
1.6 可変部の回収
関心対象のウェルの選択からの抗体可変部遺伝子の回収を可能にするために、逆重畳積分のステップは、B細胞の異種性集団を含有する付与されたウェルにおける抗原特異的B細胞の識別を可能にするために実施しなければならなかった。このことは、蛍光焦点法(Clargoら,2014)を用いて達成された。簡潔には、陽性ウェルからの免疫グロブリン分泌細胞を、ビオチン化T197ペプチド及び1:1200の最終希釈のヤギ抗ウサギFcγフラグメント特異的FITC共役体(Jackson)でコーティングしたストレプトアビジンビーズ(New England Biolabs)と混合した。37℃で1時間の静的インキュベーション後、抗原特異的B細胞を、当該B細胞を取り囲む蛍光ハローの存在により識別することができた。次に、Olympus顕微鏡を用いて識別したこれらの個々のB細胞クローンのいくつかを、Eppendorf微小操作装置を用いて拾い、PCRチューブへと入れた。
【0296】
抗体可変部遺伝子を、重鎖及び軽鎖の可変部に特異的なプライマーを用いる逆転写(RT)−PCRによって単一細胞から回収した。2回のPCRをAviso Onyx液体取り扱いロボット上で実施し、入れ子状態になった2回目のPCRは、ウサギIgG(VH)又はウサギカッパ(VL)哺乳類発現ベクターへと可変部のクローニングを可能にする3’末端及び5’末端における制限部位を組み込んだ。31の異なるウェル由来の抗T197抗体遺伝子を発現ベクター中へとうまくクローニングした。重鎖及び軽鎖のコンストラクトを、Fectin 293(Invitrogen)を用いてHEK−293細胞中へと同時トランスフェクトし、組換え抗体を125mlのErlenmeyerフラスコ中で30mlの容積で発現させた。5〜7日間の発現後、上清を収集し、アフィニティークロマトグラフィーを用いて精製した。
【0297】
実験2−識別した抗体のさらなるスクリーニング
2.1 大腸菌(E.coli)中でのTau産生
異なるTauアイソフォームをコードする遺伝子を合成で作製し、コドンを大腸菌における発現のために最適化した。標準的な分子生物学技術を用いて、N末端6His−TEVタグを有するTauを生成するよう操作した改変pET32ベクター中へとサブクローニングした。
【0298】
大腸菌BL21(DE3)細胞を上述のベクターで形質転換し、そのタンパク質を標準的な技術を用いて発現させた。
【0299】
次に、大腸菌を遠心分離によって回収し、溶解し、Tauタンパク質を、NiNTA(Qiagen)を用いたアフィニティークロマトグラフィーによる可溶性画分から捕捉した。6Hisタグを、TEVプロテアーゼに続く第二のNiNTAクロマトグラフィーステップを用いて除去した。精製したTauを、適用に応じた適切な緩衝液中へと緩衝液交換した。免疫化に対して生じた試料は、Proteus NoEndo(商標)カラム(Vivaproducts)を用いて取り出した内毒素を有していた。
【0300】
核磁気共鳴(NMR)試験のための同位体標識したTauの作製
タンパク質発現を、先に説明した通り実施したが、例外として、
15N、
13C及び
2Hの当該タンパク質への組み込みのために最少培地を使用した。大腸菌細胞ペレットを溶解し、Tauタンパク質をNiNTA(Qiagen)アフィニティークロマトグラフィーステップを用いて精製し、6HisタグをTEVプロテアーゼにより除去した後、Tauタンパク質を、Superdex200単位(GE−Healthcare)を用いたゲル濾過によって精製した。
【0301】
2.2 HEK293におけるTau産生
Tauアイソフォーム2型をコードする遺伝子を、野生型DNA配列を用いて合成で作製した。標準的な分子生物学技術を用いて、当該遺伝子を、N末端10His−TEVタグを有するTauを産生するよう操作した発現ベクターpMV−10HisTEV(CMVプロモーター含有)中へとサブクローニングした。
【0302】
結果として生じるベクターを、製造元のプロトコルに従ってExpi293(商標)発現システム(Invitrogen)を用いてトランスフェクトした。このシステムは、HEK293細胞株に由来するExpi293Fヒト細胞を用いている。
【0303】
Tauタンパク質は、培地中に蓄積し、そこから当該Tauタンパク質を、免疫化金属イオンアフィニティークロマトグラフィーNi Sepharose Excel(GE Healthcare)を用いて回収した。次に、10Hisタグを、TEVプロテアーゼを用いて除去した後、Ni Sepharoseカラムへと再適用し、フロースルー中にある開裂したTauを収集した。精製したTauを適用に応じた適切な緩衝液中へと緩衝液交換した。
【0304】
2.3 ヒト脳試料からのPHF Tau原線維の調製
対形成したらせん状フィラメント(PHF)−Tauタンパク質を、アルツハイマー病(AD)又は進行性核上性麻痺(PSP)又は前頭側頭型認知症(FTD)に罹患しているドナー由来の脳試料から、Ksiezak−Reding及びWall(Neurobiology of Aging 15,11−19,1994)によって公開されたプロトコルにより精製した。PHF−Tauが豊富であることがすでに説明されてきた画分8(この参照におけるスクロース勾配遠心分離前の粗PHF−Tauと等価)及び画分11(画分A2と等価、この参照において説明されるSDS可溶性PHF)を回収し、BIAcoreアッセイ及び実験3の細胞アッセイに使用した。
【0305】
2.4 ELISAスクリーニング
次に、精製した抗体をELISAによる及びBiacoreによるさらなるスクリーニングへ供し、組換え抗体の活性を確認し、最高の親和性のかつ最も特異的である抗体を選択した。ELISAアッセイはまた、ビオチン化したT197の、炭酸塩コーティング緩衝液(dH2O+0.16%Na2CO3+0.3%NaHCO3)中のストレプトアビジンでコーティングした384穴Maxisorpプレート(ThermoScientific/Nunc)上への捕捉を包含した。また、個別のプレートを、Tau分子の代替的な領域へとマッピングする異なるTauペプチドでコーティングして、T197配列の身に対する結合の特異性を点検した。プレートを1%(w/v)PEG/PBSデブロッキングした後、精製済み一過性上清の数回希釈物ともにインキュベートした。HRP共役型ヤギ抗ウサギIgG fc二次抗体(Stratech Scientific Ltd/Jackson ImmunoResearch)をプレートへ添加した後、TMB基質(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン、EMD Millipore製、10μl/ウェル)を用いて結合を可視化した。光学密度を、BioTek Synergy 2マイクロプレートリーダーを用いて、630nMで測定した。選択された抗体、すなわち、配列番号7のウサギVL及び配列番号8のウサギVHを有するAB1についてのデータを
図1に示す。わかるように、AB1は、T197に対してのみ非常に選択的な結合を示し、Tau分子の他の領域に対応する4つのペプチド、すなわち、
・T174 N−アセチル−C
*K pT P P A P K pT P Pアミド(配列番号62)、
・T211 N−アセチル−R pT P pS L P pT P C
*アミド(配列番号63)、
・T230 N−アセチル−R pT P P K pS P pS SC
*アミド(配列番号57)、及び
・T396 N−アセチル−C
*pS P V V pS G D pT pSアミド(配列番号64)
(
*ビオチン共役位置)
に対しては選択的結合を示さない。
【0306】
2.5 BIAcoreスクリーニング
選択されたウサギ抗Tau IgG抗体クローンを一過的に発現させ、精製し、SPR Biacore T200プラットフォームを用いて分析した。抗体をまず、固定化したヤギF(ab’)2抗ウサギFcガンマ試薬を用いてCM5センサーチップへと捕捉した。浮遊細胞2、3及び4は、5600〜6100RUの固定化レベルを示したのに対し、ブロッキングした浮遊細胞1(デキストランのみ)は、参照として機能した。精製したIgGをGE Healthcare製のHBS−EP+緩衝液中で0.5μg/mlへと希釈し、チップ上で10μl/分の流量で捕捉した。各捕捉ステップの次に、ペプチド/ストレプトアビジン複合体、緩衝液対照及び脱リン酸化型ペプチド/ストレプトアビジン複合体による180秒間の分析物注入を行った。3mM EDTA及び1%DMSOを含有するHBS−EP+中の10μlの100μMペプチド溶液を用い、これを0.3mM EDTAを含有するHBS−N緩衝液(GE Healthcare)中で1:10に希釈し、当該EDTAを2μlの0.5M MgCl2で飽和させることによって、ペプチドを脱リン酸化した。ウシ小腸アルカリホスファターゼ(NEB,カタログ番号M0290S)の2μlの1:10の希釈物(HBS−N溶液)を添加し、37℃で1時間インキュベートした後、4℃で保存した。ホスファターゼ反応を、1μlの0.5M EDTAを当該混合物へ添加することによって阻害した。この溶液を、脱リン酸化ペプチド/ストレプトアビジン複合体の調製に使用した。配列番号7のVL部及び配列番号8のVHを有するウサギ抗体のために、配列番号57のアミノ酸配列を有するTau領域230〜238由来のペプチドT230を陰性対照として使用した。データを二価の分析物モデルと適合させた。
【0307】
表1は、T197及びT230のリン酸化型及び脱リン酸化型ペプチド/ストレプトアビジン複合体へ結合した時のこの交代について測定された親和性の値を示す。
【表1】
【0308】
選択されたモノクローナルFabフラグメント(mFab)を、配列番号58の軽鎖及び配列番号59の重鎖を有するネズミ化mAB1抗体から、Pierce Ficin開裂キット(カタログ番号44980,Thermo Scientific)を用いて製造元のプロトコルにより調製した。280nmでの吸光度を使用して、Biacore分析のためのFabストック溶液の濃度を測定した。アルツハイマー病患者由来の不溶性Tauタンパク質調製物(AD−PHF,画分11)、HEK由来のTauアイソフォーム2型モノマー(アミノ酸1〜441)、及び大腸菌において発現したアイソフォーム2型モノマーをCM5チップ上へとアミン固定し、抗Tau mFabの結合を、Biacore T200機を用いて測定した。GE Healthcare製の緩衝液HBS−EPを、10mM酢酸(pH3.0)を使用するAD−PHFを除き、固定に使用した。HBS−EP+緩衝液に300mM NaCl及び1.25%CM−デキストラン(Sigma)を補充し、アッセイ緩衝液として使用した。浮遊細胞(Fc)1を参照として使用したのに対し、以下のRU値、すなわち、5ug/mlの大腸菌Tauによる44RU、5ug/mのHEK Tauによる56RU、及びAD−PHF材料の1:20希釈溶液による500RUをFc2〜4について得た。10mMグリシン(pH1.7)の2回の60秒間周期を再生に使用した。10ul/分の流量を固定及び再生に使用したのに対し、30ul/分の流量を分析物の結合に使用した。AD−PHFのために、複数回の手動注入を適用して、500RUに到達し、これにはEDC/NHS及びEからAへのキャッピングを含んだ。5回の開始周期及びmFab試料又は緩衝液対照あたり12回の周期を適用し、解離については180秒間又は300秒間のいずれかの90ul分析物注入を用いた。600nM溶液プラス緩衝液の111:3の希釈を各mFabについて使用した。
【表2】
【0309】
2.6 BIAcoreによるエピトープマッピング
HEK細胞から発現及び精製した組換えTauアイソフォーム2型モノマー(アミノ酸1〜441)、及びアルツハイマー病患者脳から単離した対形成したらせん状フィラメント調製物(AD−PHF)の形態にある不溶性Tauタンパク質を、Biacore3000機及びランニングバッファーとしてのHBS−EP(GE Healthcare)を用いて、CM5チップ上へアミン固定した。50mMのN−ヒドロキシスクシミド(hydroxysuccimide)及び200mMの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドからなる70μlの新鮮混合物の10μl/分の流量での注入によるこれらの浮遊細胞及び参照浮遊細胞のカルボキシメチルデキストラン表面の活性化後に、前者を浮遊細胞2及び4へそれぞれアミンカップリングした。tauモノマーの固定化は、10mM酢酸(pH5.0)緩衝液中の50μl/mlにおける160μlを注入することによって達成したのに対し、AD−PHFは、10mM酢酸(pH3.0)における2μg/mlの20個の一定分量160μlの注入によって固定した。検査浮遊細胞表面及び対照浮遊細胞表面を1MエタノールアミンHCl(pH8.5)の50μlパルスを用いて非活性化した。
【0310】
エピトープマッピングは、それぞれ200nM及び5000nMのランニングバッファー中で調製された配列番号17の軽鎖及び配列番号20の重鎖を有するTau結合ヒト化抗体(L17H20)と検査ペプチド又は緩衝液対照とからなるプレインキュベーション溶液によって実施した。これらを個別に、一連のセンサグラム周期で、10μl/分の定常流量で、50μlを参照、tauモノマー及びAD−PHFの浮遊細胞に関して注入することによって検査した。抗体結合の応答単位を検査浮遊細胞値と参照浮遊細胞値の間の差として、各注入終了15秒後に取った報告時点で記録した。リン酸緩衝塩類溶液中の1.5Mグアニジンの2回の20μl注入によって、チップを各周期の終了時に再生した。
【0311】
【表3】
【0312】
検査ペプチドを調製し、Tauタンパク質の残基196〜206を含有するペプチド(配列番号65)を基に分析し、ホスホセリン、ホスホトレオニン及び/又はニトロソチロシンを用いた翻訳後修飾の役割を表3において定義するように解析した。
【0313】
この解析を基に、最小エピトープは、配列番号55のアミノ酸(モチーフGly pSer Pro Gly pThr Proに対応)によって定義されるリン酸化されたTau領域であり、ならびにこのエピトープは、配列番号55の位置205におけるホスホトレオニン、及び配列番号55の位置202におけるホスホセリンの存在についての絶対的な必要条件を有していると結論付けられる。
【0314】
実験3−識別した抗体のさらなる特徴づけ
3.1 細胞アッセイ
Tau凝集を誘導するための、Tauトランスジェニックマウスからの粗可溶性画分及び粗不溶性画分の調製
これらの実験について、ヒトTauP301S(Allenら,2002 J.Neurosci.22(21):9340−51)及びP301L(Lewisら,2000 Nat Genet.(4):402−5、Gotz Jら,2001 J Biol Chem.276(1):529−34)を発現するトランスジェニックマウスを使用した。
【0315】
粗可溶性画分及び粗不溶性画分を、P301S及びP301LのTauトランスジェニックマウスの脳から、差次的遠心分離によって調製した。簡潔には、P301S(脊髄及び脳幹)及びP301L(中脳及び脳幹)のTauトランスジェニックマウス由来の脳組織を氷冷TBS(Fisher Scientific)中で、把持型のホモジナイザーであるPellet Pestle Motor(Kontes)を用いて、氷上の1.5ml微量遠心分離チューブ中で均質化した。次に、均質液(H)を4℃、4,000gで10分間遠心分離して、細胞デブリを除去した。結果として生じる上清(S0)を4℃、20,000gで20分間遠心分離して、粗可溶性画分(S1)に対応する上清を提供した。残存するペレット(P1)を、TBS中で調製した1mlの1%サルコシル溶液中に再懸濁し、室温で1時間インキュベートした後、4℃、100,000gで1時間遠心分離した。上清(S2)を廃棄した。ペレット(P2)を5mlの氷冷TBSで洗浄した後、TBS中に再懸濁して、粗不溶性画分(P2’)を提供した。
【0316】
P301S変異を有するヒトTauを発現するHEK−293−F細胞の調製
HEK−293−F細胞(Life Technologies)に、P301S変異を有するヒトTauアイソフォーム2型を発現するpcDNA3.1(+)ベクターを、293フェクチン(Life Technologies)を用いて製造元の説明書によりトランスフェクトした。一定分量のトランスフェクトした細胞を液体窒素中で保存した。
【0317】
Tau凝集の誘導
図2は、Tau治療用抗体の活性を特徴づけるために使用される細胞凝集アッセイの異なるステップを示す。1日目に、P301S変異を有するヒトTauアイソフォーム2型を発現するHEK−293−F細胞(P301S−tau)を37℃で解凍し、10%ウシ胎仔血清及び1%ペニシリン−ストレプトマイシン(FFBS)を含有する293発現培地(Life Technologies)中に希釈した。細胞を自動細胞計数機(Vi−CELL XR,Beckman Coulter)を用いて計数した後、ウェルあたり25,000個の生細胞密度で、ポリ−D−リジンでプレコーティングしておいた96穴プレート(Greiner Bio−One)の中に播種した。細胞を37℃、5%CO
2で維持した。同日、アルツハイマー病患者(AD−PHF、画分8)又は進行性核上性麻痺患者(PSP−PHF、画分8)又は前頭側頭型認知症(FTD−PHF)又はP301SもしくはP301Lのトランスジェニックマウス脳に由来する脳画分(Tau凝集を誘導するためのシードとして使用)からの超音波処理されたヒト不溶性Tauを、4℃のFFBS培地中で抗Tau抗体ととともに又はそれなしで、緩徐に撹拌しながら一晩インキュベートした。AD−PHF(画分8)をAD試料及びPSP試料についてそれぞれ80ng/μl及び60ng/μlで使用し、トランスジェニックマウスP301S及びP301L由来の可溶性能画分をそれぞれ0.1μg/μl、1.2μg/μlで使用した。2日目に、シード又はシード/抗体混合物を細胞へ24時間適用した。3日目に、培地を、抗体を含有する新鮮FFBS培地と交換し、細胞を培養物中でさらに24時間維持した。4日目に、Tau凝集を、均質時間分解性蛍光エネルギー転移(HTRF)を基にしたTau凝集アッセイキット(Cisbio)を用いて、製造元の説明書により測定した。SpectraMax Padadigm(Molecular Devices)を用いて蛍光を測定した。凝集を、抗体の非存在下で外来性の原線維又は画分によって誘導される最大凝集応答に相当する、対照(−)に対する%凝集として報告した。誘導したTau凝集に及ぼすAB1及び従来技術の他のTau結合抗体の効果を検査した。従来技術の抗体は、WO2014/028777A2のIPN002、WO2013/096380A2のPT3、WO2010/142423A2のmAb2.10.3、及びWO 2014/008404のHJ8.5とした。
【0318】
本アッセイの結果を表3及び
図3に要約する。
【0319】
表4は、配列番号9のネズミ化VL及び配列番号10のネズミ化VHを有するAB1(VL9VH10)、配列番号17の軽鎖及び配列番号23の重鎖を有するTau結合抗体(L17H23)、配列番号17の軽鎖及び配列番号24の重鎖を有するTau結合抗体(L17H24)、配列番号17の軽鎖及び配列番号20の重鎖を有するTau結合抗体(L17H20)、配列番号17の軽鎖及び配列番号21の重鎖を有するTau結合抗体(L17H21)、ならびに種々の脳抽出物由来のある範囲のTauシードに対する競合抗体に関する効力(IC
50)及び最大有効性(300nMにおけるI
max)を要約する。
図3は、ヒトPSP患者由来のヒトTau病理学的原線維を用いた細胞凝集アッセイにおける配列番号17の軽鎖及び配列番号20の重鎖を有するTau結合抗体(L17H20)の、ならびに配列番号17の軽鎖及び配列番号20の重鎖を有するTau結合抗体(L17H21)の有効性を示す。
【表4】
【0320】
さらなる実験を細胞アッセイにおいて実施して、配列番号9のネズミ化VL及び配列番号10のネズミ化VHを有するAB1(VL9VH10)の活性を、P301L(n=2)、AD(n=3)及びPSP(n=3)由来のTauシードを用いて測定し、それぞれ15nM、27nM及び70nMの最終IC
50値、ならびにそれぞれ79%、68%及び57%のI
max値を提供した。
【0321】
3.2 組織学的分析
配列番号7のウサギVL及び配列番号8のウサギVHを有するAB1、配列番号11のVL及び配列番号14のVHを有するヒト化AB1(VL11VH14)又は配列番号11のVL及び配列番号15のVHを有するヒト化AB1(VL11VH15)ならびに従来技術の抗体IPN002、PT3及びMab2.10.3をアッセイして、病理学的Tau構造を含有することがAT8免疫染色を用いて既に示されてきたアルツハイマー疾患に罹患しているドナー由来のヒト海馬の凍結切片を用いて至適濃度を判定した(Braak及びBraak,1995,Neurobiol Aging; 16(3):271−8、ならびにPorzigら,2007 Biochem Biophys Res Commun;358(2):644−9において説明されるように)。AB1抗体及び従来技術の抗体全部は、101.4(陰性対照抗体)を除き、特異的なかつ濃度依存的な免疫反応性を呈した。これらのデータから、抗体の単一の至適濃度を選択し、6個のヒト脳試料からなるパネルをスクリーニングするために使用した。3個の試料は、アルツハイマー病に罹患しているドナー又は高レベルのTau病理(AT8免疫染色を用いて検出された陽性Tau病理)を呈する非常に高齢のドナーから得、3個はTau病理に罹患していない(AT8免疫染色を用いて検出された陰性Tau病理)ドナーから得た。
【0322】
AB1、VL11VH14、VL11VH15、PT3及びMab2.10.3は、AT8陽性試料における免疫染色の類似のパターンを示した。神経原線維変化(ニューロン内NFT)、細胞質Tau、老人斑様構造及び神経絨毛糸の特異的免疫染色を、陽性Tau病理試料の海馬及び側頭皮質内で観察した。しかしながら、AT8陰性組織では非常により低い免疫染色が検出された。本結果は、これらの抗体が非病理学的Tauと比較して病理学的Tauを優先的に認識することを示唆する。IPN002は、陽性及び陰性の両病理学試料において類似のシグナルを提供した。
【0323】
3.3 ウェスタンブロット
化学発光読み出しを用いて実施したウェスタンブロット
AD、PSPヒトから調製した可溶化液を10%ポリアクリルアミドゲルへと負荷した(レーン当たり20μgタンパク質)。タンパク質をSDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動法)によって分離し、PVDF(ポリビニリデンフルオリド)膜上へと電気泳動で転写した。膜を4%BSA(ウシ血清アルブミン(TBST溶液:50mMトリス、150mM NaCl、0.05%トゥイーン20、HClを用いてpHをpH7.6に調整))中でブロッキングした。膜を4℃で一晩、一次抗体又は非免疫IgG対照抗体とともにインキュベートし、TBSTですすぎ、二次抗体とともに1時間インキュベートし(マウス抗ビオチン)、TBSTですすぎ、三次抗体とともに1時間インキュベートし(抗マウスIgG−ペルオキシダーゼ)、TBSTですすぎ、ECL(増強化学発光法)を用いて発光させた。
【0324】
配列番号9のネズミ化VL及び配列番号10のネズミ化VHを有するmAB1は、ヒトAD試料由来の病理学的Tauへ結合するが、PSPに対しては弱い。
図4を参照されたい。
【0325】
実験4−識別した抗体のヒト化
配列番号7のVL及び配列番号8のVHを有するAB1を、ウサギ抗体V部由来のCDRをヒト生殖系列抗体V部フレームワークへと移植することによってヒト化した。当該抗体の活性を回復させるために、ウサギV部由来のいくつかのフレームワーク残基もヒト化配列において保有された。これらの残基を、Adairら(1991)(ヒト化抗体,WO91/09967)によって概略されるプロトコルを用いて選択した。ウサギ抗体(ドナー)V部配列とヒト生殖系列(アクセプター)V部配列との整列を
図5及び
図6に、設計したヒト化配列とまとめて示す。ドナーからアクセプター配列へと移植したCDRは、Kabat(Kabatら,1987)によって定義されるとおりであるが、例外はCDR−H1で、Chothia/Kabat定義の組み合わせを使用する(Adairら,1991 ヒト化抗体,WO91/09967を参照されたい)。
【0326】
ヒトV部IGKV1−39プラスJK4 J部(IMGT,http://www.imgt.org/)を抗体AB1軽鎖CDRのためのアクセプターとして選択した。移植片gL4及びgL9における軽鎖フレームワーク残基はすべて、ヒト生殖系列遺伝子に由来する。CDRL3を移植片gL9において変異させ、潜在的な脱アミド化部位を修飾した。ヒトV部IGHV4−39プラスJH4 J部(IMGT,http://www.imgt.org/)を、抗体AB1の重鎖CDRのためのアクセプターとして選択した。多くのウサギ抗体と共通して、抗体AB1のVH遺伝子は、選択されたヒトアクセプターよりも短い。ヒトアクセプター配列と整列させる時、抗体AB1のVH部のフレームワーク1はN末端残基を欠失しており、当該残基はヒト化抗体において保有されている(
図6)。AB1ウサギVH部のフレームワーク3はまた、ベータシート鎖DとEの間のループにおいて2つの残基(75及び76)を欠失している。移植片gH41及びgH49において、間隙は、選択されたヒトアクセプター配列由来の対応する残基(リジン75(K75)、アスパラギン76(N76))で満たされている(
図6)。移植片gH41及びgH49における重鎖フレームワーク残基はすべて、ヒト生殖系列遺伝子由来であるが、例外は、残基71及び78を含む群由来の1つ又は2つ以上の残基であり(Kabatの番号付け)、ここでは、ドナー残基であるリジン(K71)及びバリン(V78)をそれぞれ保有していた。残基K71及びV78の保持は、ヒト化抗体の完全な効力に必須であった。ヒトフレームワークの位置1におけるグルタミン残基をグルタミン酸(E1)と置き換えて、均質な生成物の発現及び精製を得た。抗体及び抗体フラグメントのN末端におけるグルタミンからピログルタミン酸への変換は、広く報告されている。CDRH3を移植片gH41及びgH49において変異させ、潜在的な脱アミド化部位を修飾した。
【0327】
各抗体についていくつかのバリアントの重鎖及び軽鎖のV部配列をコードする遺伝子を、DNA2.0 Inc.による自動化合成アプローチによって設計及び構築した。重鎖及び軽鎖のV部のさらなるバリアントを、潜在的な脱アミド化部位を修飾するためのCDR内での変異を一部の場合に含むオリゴヌクレオチド指定突然変異によってVH遺伝子及びVK遺伝子を修飾することによって作製した。一過性発現のために、ヒト化軽鎖V部遺伝子を、ヒトカッパ鎖定常部(Km3アロタイプ)をコードするDNAを含有するUCBヒト軽鎖発現ベクターpMhCKへとクローニングした。ヒト化重鎖V部遺伝子を、ヒンジが変異S241Pを安定化しているヒトガンマ4重鎖発現ベクターをコードするDNAを含有するUCBヒトガンマ4重鎖発現ベクターpMhγ4P FLへとクローニングした(Angalら,Mol Immunol.1993,30(1):105−8)。あるいは、ヒト化VH遺伝子を、ヒトガンマ1定常部(G1m17、1アロタイプ)をコードするDNAを含有するUCBガンマ1重鎖発現ベクターpMhγ1FLへとクローニングした。ヒト化抗体の一価の結合動態を評価するために、ヒト化VH遺伝子を、10個のヒスチジン残基からなるC末端タグを有するヒトガンマ1CH1−ヒンジドメインをコードするDNAを含有するUCBヒトFab−HIS発現ベクターpMhFab10HISへもクローニングした。ヒスチジンタグは、発現したFabのアフィニティークロマトグラフィーによる精製を容易にする。結果として生じる重鎖ベクター及び軽鎖ベクターのHEK293懸濁細胞への同時トランスフェクションは、293Fectin(12347−019 Invitrogen)を用いて達成され、ヒトIgG4P、IgG1又はFab−HISフォーマットのいずれかにおけるヒト化組換え抗体の発現を与えた。
【0328】
複数のバリアントヒト化抗体鎖及びこれらの組み合わせを発現させ、親抗体に対するこれらの効力、これらの生物物理的特性及び下流プロセシングに対する適切性について評価した。
【0329】
哺乳類細胞におけるヒト化組換え抗体の安定した発現のために、ヒト化軽鎖V部遺伝子を、ヒトC−カッパ定常部(Km3アロタイプ)をコードするDNA配列へと接合させて、連続的な軽鎖遺伝子を作製した。ヒト化重鎖遺伝子を、ヒトガンマ−4P重鎖定常部、又はヒトガンマ−1重鎖定常部(Glml7、1アロタイプ)のいずれかをコードするDNAへと接合させて、連続的な重鎖遺伝子を作製した。重鎖及び軽鎖の遺伝子を哺乳類発現ベクターへとクローニングした。