(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリオレフィン系樹脂またはスチレン改質ポリオレフィン系樹脂(オレフィン改質ポリスチレン系樹脂)からなる型内発泡成形体と、インサート成形により前記型内発泡成形体中に挿入されたインサート材と、を備え、前記インサート材の少なくとも一部が、前記型内発泡成形体から露出した、車両用シート芯材として使用される型内発泡成形体ユニットと、
ポリウレタンフォームと、を備えており、
前記インサート材における、前記型内発泡成形体から露出した部分と、前記ポリウレタンフォームとが接しており、
前記インサート材は、
(1)前記型内発泡成形体に形成された有底孔、
(2)前記型内発泡成形体に形成された貫通孔、および、
(3)前記型内発泡成形体が区分けされて得られた複数の成形体片のうち2つの隙間、
からなる群より選択される少なくとも1つにて、前記型内発泡成形体から露出していることを特徴とする発泡複合成形体。
前記インサート材は、無機繊維、繊維強化プラスチック、繊維強化金属、木材、コンクリート、鉄、ステンレス、亜鉛、およびアルミからなる群より選択される材質によって構成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の発泡複合成形体。
ポリオレフィン系樹脂またはスチレン改質ポリオレフィン系樹脂(オレフィン改質ポリスチレン系樹脂)からなる型内発泡成形体と、インサート成形により前記型内発泡成形体中に挿入されたインサート材とを備えており、前記インサート材の少なくとも一部が、前記型内発泡成形体から露出している、車両用シート芯材として使用される型内発泡成形体ユニットを用意する工程と、
前記型内発泡成形体ユニットの前記インサート材における、前記型内発泡成形体ユニットの前記型内発泡成形体から露出した部分と、ポリウレタンフォームとが接するようにポリウレタンフォームを形成する工程とを含み、
前記インサート材は、
(1)前記型内発泡成形体に形成された有底孔、
(2)前記型内発泡成形体に形成された貫通孔、および、
(3)前記型内発泡成形体が区分けされて得られた複数の成形体片のうち2つの隙間、
からなる群より選択される少なくとも1つにて、前記型内発泡成形体から露出していることを特徴とする発泡複合成形体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について、
図1〜
図7を参照して以下に説明する。
【0019】
〔発明の前提〕
本発明の一実施形態では、型内発泡成形体ユニットからポリウレタンフォームを剥離しにくくさせることを目的とする。しかし、ポリウレタンフォームとオレフィン系樹脂等からなる型内発泡成形体とでは、接着性があまり良好ではない。また、車両用シート用途の発泡複合成形体においては、一般に型内発泡成形体の一部の表面のみにポリウレタンフォームが形成される。このため、ポリウレタンフォームによって型内発泡成形体を包み込んでポリウレタンフォームが型内発泡成形体から剥離することを防ぐことも難しい。そこで、本発明者らは、鋭意検討した結果、次の手法を完成させるにいたった。
【0020】
〔発泡複合成形体の構成〕
図1は、本発明の一実施形態に係る発泡複合成形体を側面から見た外観図である。
【0021】
図1に示すように、発泡複合成形体1は、ポリウレタンフォーム2と型内発泡成形体ユニット5とを一体化させたものである。型内発泡成形体ユニット5は、インサート材3と、熱可塑性樹脂発泡粒子からなる型内発泡成形体とを備えるものであり、
図1では、例として、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子からなる型内発泡成形体4とインサート材3とを一体成形している。また、詳細は
図2以降に示しているが、発泡複合成形体1は、ポリウレタンフォーム2を、型内発泡成形体4から露出しているインサート材3と接するように形成することにより、製造することができる。なお、型内発泡成形体はポリオレフィン系樹脂からなっていることが好ましい。
【0022】
ポリウレタンフォーム2は、例えば、発泡複合成形体1が車両へ搭載されるものである場合、少なくとも型内発泡成形体4における車両への搭載側と反対側の面に形成されており、同搭載側の面には形成されていないことが好ましい。つまり、
図1に示すように、ポリウレタンフォーム2は、型内発泡成形体4の全面を覆っていなくてもよい。言い換えると、
図1に示すように、型内発泡成形体4の表面の少なくとも一部が、ポリウレタンフォーム2によって覆われずに露出していてもよい。例えば、ポリウレタンフォーム2は、型内発泡成形体4の第1面41に形成されている一方、第1面41に対する裏面である第2面42には形成されていなくてもよい。
【0023】
インサート材3は、型内発泡成形体4の中に挿入されている。インサート材3は、型内発泡成形体4より、破断に対する強度(引張強度)が高ければ、つまり、型内発泡成形体4より硬いか、または型内発泡成形体4より柔らかい材質であっても千切れにくければ、種々の材質のものを用いることができる。また、インサート材3は、ポリウレタンフォーム2との親和性が高い材質であることが好ましい。例えば、金属、無機繊維(炭素繊維、ガラス繊維等)、繊維強化プラスチック(炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチック等)、繊維強化金属、木材、コンクリートを挙げることができる。なかでも、インサート材3は、材質が金属のワイヤーであることが好ましい。インサート材3を構成する金属の一例として、鉄、ステンレス、亜鉛、アルミ等が挙げられる。
【0024】
熱可塑性樹脂発泡粒子を構成する基材樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂(オレフィン改質ポリスチレン系樹脂)、およびポリエステル系樹脂等が挙げられる。この中で、ポリオレフィン系樹脂、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂等のオレフィン系樹脂、さらに好ましくはポリオレフィン系樹脂を用いることにより、緩衝性、耐薬品性、耐熱性、圧縮後の歪回復率が優れ、リサイクルが容易になる。
【0025】
ポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されず、ポリプロピレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂等が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、エチレン/プロピレン共重合体、およびエチレン/プロピレン/1−ブテン共重合体等が挙げられる。また、ポリエチレン系樹脂としては、エチレン単独重合体、高密度ポリエチレン系樹脂、中密度ポリエチレン系樹脂、低密度ポリエチレン系樹脂、および直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂等が挙げられる。具体的には、エチレン/1−ブテン共重合体およびエチレン/4−メチル−1−ペンテン共重合体等が挙げられる。なお、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/プロピレン/1−ブテン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、およびエチレン/4−メチル−1−ペンテン共重合体は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0026】
発泡粒子の製造方法には特に制限はなく、従来公知の製造方法を適用することができる。例としては、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子であれば、国際公開特許公報WO2009/075208や特開2006−117842号公報等に開示されている製造方法が挙げられる。ポリスチレン系樹脂発泡粒子であれば、特開2003−201360号公報、特開2014−118474号公報、および国際公開特許公報WO2015/137363等に開示されている製造方法が挙げられる。該特許文献中には、「予備発泡粒子」として記載されている。スチレン改質ポリオレフィン系樹脂発泡粒子であれば、特開2008−239794号公報や国際公開特許公報WO2016/152243等に開示されている製造方法が挙げられる。しかし、発泡粒子の製造方法は、これらの製造方法に限定されるものではない。
【0027】
このようにして得られる発泡粒子には、従来公知の方法により適宜、難燃剤、帯電防止剤、および着色剤等の添加剤を含有または被覆させることができる。発泡粒子の粒径は、特に限定されず、例えば、1mm〜10mmであればよいが、金型充填性の観点からは、1mm〜5mmが好ましく、1mm〜3mmがより好ましい。
【0028】
発泡粒子の発泡倍率は、特に限定されず、例えば、3倍〜90倍であってもよいが、機械的強度や成形性の観点からは、5倍〜60倍が好ましく、5倍〜45倍がより好ましい。
【0029】
また、このような発泡粒子は、例えば、株式会社カネカ製のエペラン−PP、エペラン−XL等として市販されており、容易に入手することができる。
【0030】
本実施形態において、型内発泡成形体4は以降、便宜上、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子からなる型内発泡成形体として説明する。型内発泡成形体4は、型内発泡成形用金型装置を用いて、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子を加熱発泡、融着させることにより成形される。詳細について、以下に説明する。
【0031】
上記型内発泡成形用金型装置は、凹型と該凹型を保持する凹型ハウジングとを有する凹型ユニット、および、凸型と該凸型を保持する凸型ハウジングとを有する凸型ユニットを備えている。上記凹型と凸型とを型閉じすることにより、凹型と凸型とによって空間が形成される。該空間にポリオレフィン系樹脂の発泡粒子を充填する。なお、この発泡粒子は予め内部に無機ガス等を圧入し内圧を高めてもよいし、内圧が付与されていない大気圧の発泡粒子を用いてもよい。上記空間にポリオレフィン系樹脂の発泡粒子を充填した後、上記凹型ハウジングおよび凸型ハウジングにそれぞれ備えられているチャンバー内に0.04〜0.40MPa(G)程度の飽和水蒸気圧を供給する。これにより、ポリオレフィン系樹脂の発泡粒子を加熱発泡、融着させる。よって、ポリオレフィン系樹脂の発泡粒子を型内発泡成形した型内発泡成形体4が成形される。
【0032】
型内発泡成形体ユニット5は、型内発泡成形体用金型装置の凸型もしくは凹型にインサート材3を設置し、上記型内発泡成形体作製手法により、型内発泡成形体4とインサート材3とを一体成形したものである。型内発泡成形体ユニット5は、例えば、車両用シート芯材として使用し得る。型内発泡成形体ユニット5とポリウレタンフォーム2とを一体成形し、その後シートカバーで覆うことで、車両用シートとなり得る。
【0033】
まず、ポリウレタンフォーム2と型内発泡成形体ユニット5との接着性を向上させるために、型内発泡成形体4の中にインサート材3を挿入して一体成形したものを準備する。このとき、インサート材3の一部を型内発泡成形体4から露出させる(型内発泡成形体ユニットを用意する工程)。これにより、型内発泡成形体4から露出したインサート材3の一部がポリウレタンフォーム2と接触する(型内発泡成形体ユニットの型内発泡成形体から露出した部分と、ポリウレタンフォームとが接するようにポリウレタンフォームを形成する工程)。以下、そのインサート材3の一部を型内発泡成形体4から露出させる部分を露出部ともいう。つまり、ポリウレタンフォーム2と型内発泡成形体ユニット5のインサート材3との親和性が高い場合、両者を良好に接着させ得る。これにより、ポリウレタンフォーム2と型内発泡成形体ユニット5との接着強度を向上させることができる。このように、ポリウレタンフォーム2と型内発泡成形体ユニット5とを接着させることにより、発泡複合成形体1を形成する(発泡複合成形体の製造方法)。
【0034】
すなわち、本発明の一実施形態に係る発泡複合成形体1において、(i)インサート材3は、型内発泡成形体4から少なくとも一部が露出している、(ii)インサート材3の少なくとも一部は、ポリウレタンフォーム2に接している、ことが好ましい。
【0035】
〔実施形態1〕
図2は、本発明の実施形態1に係る型内発泡成形体ユニットの構成を示す平面図であり、型内発泡成形体に形成された穴(又は孔)にてインサート材を露出させた例を示す構造図である。
図2は、型内発泡成形体4におけるポリウレタンフォーム2と接触する接触部分を示している。
【0036】
図2に示すように、型内発泡成形体4には穴6が設けられており、その穴6からインサート材3の一部が露出している。穴6から露出したインサート材3の一部がポリウレタンフォーム2と接触する。これにより、ポリウレタンフォーム2と型内発泡成形体ユニット5との接着性を向上させることができる。
【0037】
穴6は、型内発泡成形体4において、少なくとも1箇所以上設けられている。また、穴6は、インサート材3とポリウレタンフォーム2とが接する場所に少なくとも1箇所以上設けられている。インサート材3とポリウレタンフォーム2との接着性を考慮すると、穴の数は複数で、サイズは大きいことが好ましい。穴の数や形状、サイズは特に制限されないが、発泡複合成形体1に求められる強度やクッション性を考慮して適宜調整するものである。型内発泡成形体4のサイズが大きいほど、穴6のサイズは大きくすることができる。このため、穴6のサイズの上限は設けないが、例えば、穴6の直径は、汎用的には、1.0mm以上200.0mm以下が好ましく、5.0mm以上30.0mm以下がより好ましく、5.0mm以上20.0mm以下が更に好ましい。穴6の形状が直径で表せない場合は穴6の周部の2点を直線で結んだ場合に直線内に阻害物がない状態で最大値を取る部分を直径と見なす。
【0038】
穴6の開口形状として、
図2に示す円形状以外にも、例えば、楕円、多角形(矩形、菱形、三角形、星形、L字、十字等)形状を用いてもよい。また、穴6には、穴6の底面または内壁から突出する突起が少なくとも1つ形成されていてもよい。
【0039】
図3の(a)〜(c)は、本発明の実施形態1に係る別の、型内発泡成形体4に形成された穴の断面図である。
図3の(a)〜(c)はいずれも、
図2における、A−A’の断面図である。
【0040】
図3の(a)は、型内発泡成形体4に設けられた穴6(
図2参照)が有底孔6aの場合であって、インサート材3の一部が有底孔6aの底に嵌め込まれている場合、すなわち、インサート材3が有底孔6aにて型内発泡成形体4から露出している場合を示している。
【0041】
図3の(a)に示すように、有底孔6aは、型内発泡成形体4を貫通せずに窪みになっている。また、インサート材3は、有底孔6aの底に嵌め込まれており、インサート材3の露出部分の上側のみが型内発泡成形体4から露出している構造になっている。この構造の場合、ポリウレタンフォーム2がインサート材3を包み込むことができないため、インサート材3の材質は、ポリウレタンフォーム2との親和性が高く接着強度が十分であるもの(例えば、鉄)が好ましい。これにより、インサート材3の露出部とポリウレタンフォーム2とを接着させることができる。
【0042】
図3の(b)は、型内発泡成形体4に設けられた穴6(
図2参照)が有底孔6aの場合であって、インサート材3が有底孔6aの底から離れている場合、すなわち、インサート材3が有底孔6aにて型内発泡成形体4から露出している場合を示している。
【0043】
図3の(b)に示すように、インサート材3は、有底孔6aの底から離れており、インサート材3の上端から下端に亘って、型内発泡成形体4から露出している構造になっている。これにより、
図3の(a)と比べ、インサート材3と、ポリウレタンフォーム2との接触面積を大きくすることができ、さらにポリウレタンフォーム2がインサート材3を包み込むことができる。このため、インサート材3の露出部分からポリウレタンフォーム2が剥離しにくくなる。
【0044】
図3の(c)は、型内発泡成形体4の変形例である型内発泡成形体4aに設けられた穴が貫通孔6bの場合、すなわち、インサート材3が貫通孔6bにて型内発泡成形体4aから露出している場合を示している。
【0045】
図3の(c)に示すように、貫通孔6bは、型内発泡成形体4aを貫通している。また、インサート材3の上端から下端に亘って、型内発泡成形体4aから露出している構造になっている。これにより、
図3の(b)と比べ、インサート材3とポリウレタンフォーム2の接着がより強固となる。これは、貫通孔6bは、型内発泡成形体4aを貫通しているため、インサート材3の露出部分の周囲のポリウレタンフォーム2は分厚くなり、ポリウレタンフォーム2がちぎれてしまう虞が減るためである。また、ポリウレタンフォーム2がインサート材3を包み込むことができる。
【0046】
また、上記
図3の(a)〜(c)のような、穴6を設ける構造にするのではなく、型内発泡成形体4の表面に対してインサート材3の一部を突出させる構成にしてもよい。すなわち、
図4の(a)に示すように、型内発泡成形体4
bの外面の周囲(特に、型内発泡成形体4
bの外形のさらに外側)にて、インサート材3が型内発泡成形体4bから露出している構成にしてもよい。なお、
図4の(a)は、本発明の実施形態1に係るさらに別の、型内発泡成形体ユニットを示す平面図であり、
図4の(b)は、
図4の(a)に対応する、本発明の実施形態1に係る発泡複合成形体を示す断面図である。型内発泡成形体4bは、型内発泡成形体4の変形例である。型内発泡成形体4bは、外面の周囲において一部が欠けている構造になっており、その欠けている部分からインサート材3が露出している。
図4の(b)は、
図4の(a)における、D−D’の断面図である。
図4の(b)に示すように、インサート材3において型内発泡成形体4bから露出している部分は、周囲をポリウレタンフォーム2に覆われている。これにより、型内発泡成形体4
bから突出したインサート材3をポリウレタンフォーム2と接着させることができる。または、型内発泡成形体4
bから突出したインサート材3をポリウレタンフォーム2で包み込むことができる。この構成では、インサート材3とポリウレタンフォーム2との接触面積を大きくすることができる。よって、インサート材3からポリウレタンフォーム2を剥離しにくくさせることができる。
【0047】
インサート材3の径が大きいほど、インサート材3とポリウレタンフォーム2との接触面積が大きくなる。しかし、インサート材3の径を大きくすると、インサート材3の重量が大きくなる。つまり、車両用シートの重量が大きくなるため、本来の目的である車両の軽量化に反する。このため、例えばインサート材3が鉄製のワイヤーの場合、該ワイヤーの径は、0.1mm以上10.0mm以下が好ましく、3.0mm以上5.0mm以下がさらに好ましい。また、例えばインサート材3が鉄製のワイヤーであり、該ワイヤーの内部が中空である構成からなるパイプの場合、該パイプの外径は、6.0mm以上20.0mm以下が好ましく、8.0mm以上13.0mm以下がさらに好ましい。
【0048】
〔実施形態2〕
図5の(a)および(c)は、本発明の実施形態2に係る型内発泡成形体ユニットを示す平面図であり、
図5の(b)および(d)は、それぞれ(a)および(c)に対応する、本発明の実施形態2に係る発泡複合成形体を示す断面図である。また、
図5の(a)〜(d)は、型内発泡成形体4を2つに区分けした場合を示している。
図5の(a)では、型内発泡成形体4を2つ(すなわち、2つの成形体片4A、4B)に区分けした境界において分割しており、
図5の(c)では、型内発泡成形体4を2つに区分けした境界において一部を切り取っている。
【0049】
図5の(a)は、型内発泡成形体4を2つの成形体片4A、4Bに分割した場合を示している。
図5の(a)に示すように、インサート材3が2つの成形体片4A、4Bにまたがって環状に挿入されている。このように、型内発泡成形体4を2つに分割することで、型内発泡成形体4が分割されて得られた複数の成形体片のうち2つの隙間にて、インサート材3が型内発泡成形体4から露出する。この2つの隙間とは、2つの成形体片の間の隙間を意味する。また、このとき、インサート材3は型内発泡成形体4から2箇所露出する。これにより、型内発泡成形体ユニット5とポリウレタンフォーム2とを一体成形するときに、型内発泡成形体4から露出しているインサート材3とポリウレタンフォーム2とが接する。よって、型内発泡成形体ユニット5とポリウレタンフォーム2との接着性を向上させることができ、ポリウレタンフォーム2がインサート材3を包み込むことができる。なお、型内発泡成形体4を分割するときは、3つ以上に分割してもよい。つまり、型内発泡成形体4を分割したときの成形体片が3つ以上であってもよい。
【0050】
図5の(b)は、
図5の(a)における、B−B’の断面図である。
図5の(b)に示すように、インサート材3において型内発泡成形体4から露出している部分は、周囲をポリウレタンフォーム2に覆われている。これにより、インサート材3の露出部分の全周にわたってポリウレタンフォーム2と接触させることができるため、型内発泡成形体ユニット5とポリウレタンフォーム2との接着性を向上させ得る。
【0051】
図5の(c)は、インサート材3の引き回しに対応する四角形の対向する2辺のうち一方を横断する溝を設けて、型内発泡成形体4の一部を切り取った場合を示している。
図5の(c)に示すように、型内発泡成形体4は、ポリウレタンフォーム2に接する面に対して、型内発泡成形体4を2つに区分けした境界において一部を切り取った構造になっている。このとき、インサート材3を型内発泡成形体4から1箇所のみ露出させる。これにより、型内発泡成形体ユニット5にポリウレタンフォーム2を形成させるときに、型内発泡成形体4から露出しているインサート材3がポリウレタンフォーム2と接触する。よって、型内発泡成形体ユニット5とポリウレタンフォーム2との接着性を向上させることができ、ポリウレタンフォーム2がインサート材3を包み込むことができる。
図5の(
c)の場合と比較すると、
図5の(a)の場合の方が2箇所、型内発泡成形体4からインサート材3が露出しポリウレタンフォーム2と接触しているため、接着強度は高くなる。ただし、
図5の(c)の場合は、型内発泡成形体4が完全に分割している訳ではない。よって、型内発泡成形体ユニット5にポリウレタンフォーム2を形成させたとき、ポリウレタンフォーム2が、型内発泡成形体4の分割部分で、破けてしまう可能性が低くなる。したがって、ポリウレタンフォームとの接着性の観点からは、
図5(a)に示すような形状が好ましく、ポリウレタンフォームの強度確保の観点からは、
図5(c)に示すような形状が好ましい。なお、型内発泡成形体4に、区分けした境界を
2つ以上形成してもよい。例えば、型内発泡成形体4に上記の溝を2か所以上形成した構造であってもよい。
【0052】
図5の(d)は、
図5の(c)における、C−C’の断面図である。
図5の(d)に示すように、一方のインサート材3の一部は、周囲を型内発泡成形体4に覆われているのに対し、他方のインサート材3の一部は、周囲をポリウレタンフォーム2に覆われている。これにより、型内発泡成形体4に覆われている方のインサート材3の一部は、ポリウレタンフォーム2とは接触しない。ただし、型内発泡成形体4から露出している方のインサート材3により、ポリウレタンフォーム2と接触することができる。
【0053】
また、型内発泡成形体4を区分けした境界で分割したときの成形体片4Aと成形体片4Bとの離間距離、もしくは、一部を切り取ることにより型内発泡成形体4に形成された溝の幅を区切り幅とする。当該離間距離または当該溝の幅が場所によって一定でない場合、その幅が最も大きい部分を区切り幅とする。区切り幅は、ポリウレタンフォームとの接着性の観点からは、より大きい方が好ましい。一方で、発泡複合成形体1の形状にもよるが、区切り幅があまりにも大きい場合は、発泡複合成形体1のクッション性や強度の低下が発生する虞があるため適宜調整する。区切り幅は、型内発泡成形体4のサイズが大きいほど、大きくできるため、区切り幅の長さに上限は設けない。ただし、例えば、区切り幅は、汎用的には、1.0mm以上150.0mm以下が好ましく、また、5.0mm以上30.0mm以下がより好ましく、5.0mm以上15.0mm以下が更に好ましい。
【0054】
〔実施形態3〕
図6は、本発明の実施形態3に係るインサート材の露出部を示す図である。また、インサート材3における型内発泡成形体4から露出した部分の全長は、当該部分の両端を結んだ線分の長さ(距離a1)より大きい。
図6は、その一例を示したものである。
【0055】
図6の(a)は、インサート材3を折り曲げて、インサート材3の露出部の中央が突出して三角形の凸状になっている場合を示している。
図6の(a)に示すように、インサート材3の露出部の中央を三角形の凸形状にすることで、インサート材3の露出部が直線である場合よりも、インサート材3とポリウレタンフォーム2との接触面積が大きくなる。インサート材3の露出部が直線である場合とは、インサート材3の露出部の全長が距離a1である場合と言うこともできる。これにより、インサート材3とポリウレタンフォーム2との接着強度が向上し、型内発泡成形体4とポリウレタンフォーム2との接着強度も向上させることができる。なお、前記凸形状は、三角形の凸形状ではなく、半円の凸形状または矩形の凸形状等であってもよい。
【0056】
図6の(b)は、インサート材3の露出部を曲線状に曲げて、インサート材3の露出部が波状になっている場合を示している。
図6の(b)に示すように、インサート材3の露出部を波状にすることで、
図6の(a)の場合と同様に、インサート材3とポリウレタンフォーム2との接触面積が大きくなる。これにより、インサート材3とポリウレタンフォーム2との接着強度が向上し、型内発泡成形体4とポリウレタンフォーム2との接着強度も向上させることができる。
図6の(a)の場合と比較すると、インサート材3とポリウレタンフォーム2との接触面積が
図6の(a)の場合より、
図6の(b)の場合の方が大きくなる。よって、
図6の(a)の場合より、
図6の(b)の場合の方が型内発泡成形体4とポリウレタンフォーム2との接着強度をより向上させることができる。つまり、インサート材3の露出部分において、ポリウレタンフォーム2との接着面積が大きいほど、型内発泡成形体4とポリウレタンフォーム2との接着強度をより向上させることができる。なお、
図6の(b)において、インサート材3の露出部は波状ではなく、螺旋状になっていてもよい。
【0057】
図6の(c)は、インサート材3の露出部を数回巻いて、インサート材3の露出部の形状が輪形状になっている場合を示している。
図6の(c)に示すように、インサート材3の露出部を輪形状にすることで、インサート材3とポリウレタンフォーム2との接触面積が大きくなる。よって、
図6の(a)および(b)の場合と同様の効果が得られる。
【0058】
図6の(d)は、型内発泡成形体4から露出したインサート材3の一端と、型内発泡成形体4から露出したインサート材3の他端とが互いに接触し、その接触部分を溶接により接着されている場合を示している。
図6の(d)に示すように、インサート材3の一端と、インサート材3の他端とが接着する部分(溶接点3a)が形成される形状を、インサート材3が有する。このとき、インサート材3の一端および/またはインサート材3の他端を折り曲げる。これにより、インサート材3とポリウレタンフォーム2との接触面積が大きくなる。よって、
図6の(a)、(b)、および(c)の場合と同様の効果が得られる。
【0059】
〔実施形態4〕
図7は、本発明の実施形態4に係るインサート材の露出部に構造物を取り付けた例を示す図である。
【0060】
図7の(a)は、インサート材3の露出部分に取り付ける構造物8の側面視である場合を示している。
図7の(a)に示すように、側面視矩形状の構造物8をインサート材3の露出部分の中央に取り付けている。この場合、構造物8は直方体形状であってもよいし、円筒形状であってもよい。
【0061】
構造物8の材質は、特に限定されない。ただし、入手や加工が容易なことから、構造物8の材質は、金属であることが好ましい。ポリウレタンフォーム2が構造物8を包み込むことができるため、型内発泡成形体ユニット5からポリウレタンフォーム2を剥離しにくくさせることができる。特に、インサート材3の露出部分に取り付ける構造物8の材質が、ポリウレタンフォーム2との親和性が高く接着強度が十分であるものの場合(例えば、構造物8の材質が鉄)は、その構造物8とポリウレタンフォーム2とが接着する。インサート材3のみがポリウレタンフォーム2と接着する場合と比較して、ポリウレタンフォーム2と、構造物8との接着領域を新たに設けることができる。よって、型内発泡成形体ユニット5とポリウレタンフォーム2との接着面積が大きくなり、その接着強度を向上させることができる。
【0062】
また、インサート材3の材質が、ポリウレタンフォーム2と親和性が低く接着性が悪いものの場合は、インサート材3の露出部分に取り付ける構造物8の材質を、ポリウレタンフォーム2との親和性が高く接着強度が良好なものにすることが好ましい。例えば、インサート材3の露出部分に取り付ける構造物8の材質が鉄の場合である。これにより、その構造物8とポリウレタンフォーム2とを接着させることができる。よって、型内発泡成形体ユニット5とポリウレタンフォーム2との接着性を向上させることができる。
【0063】
図7の(b)は、インサート材3に取り付ける構造物が網目状である場合を示している。
図7の(b)に示すように、網目状の構造物9をインサート材3の露出部分の中央に取り付けている。
【0064】
インサート材3に取り付ける構造物9を網目状にすることで、ポリウレタンフォーム2が網目状の構造物9に接着する。これにより、
図7の(a)の場合と同様に、型内発泡成形体4よりポリウレタンフォーム2との親和性が高い部材と、ポリウレタンフォーム2との接着面積を大きくすることができる。よって、インサート材3に取り付ける構造物9とポリウレタンフォーム2との接着強度を向上させることができる。また、構造物9が網目状であるため、ポリウレタンフォーム2が網目に入り込むことにより、さらに接着強度の向上を図ることができる。ポリウレタンフォーム2が網目状の構造物9を包み込む場合、構造物9が網目状であるため、ポリウレタンフォーム2が網目に入り込む。これにより、インサート材3に取り付ける構造物9からポリウレタンフォーム2を剥離しにくくさせることができる。
【0065】
また、
図7の(a)の場合と同様に、インサート材3の材質が、ポリウレタンフォーム2と接着性がないものの場合は、構造物
9の材質を、ポリウレタンフォーム2との親和性が高く接着強度が良好なものにすることが好ましい。例えば、インサート材3の露出部分に取り付ける構造物
9の材質が鉄の場合である。この場合、インサート材3の露出部分に取り付ける構造物9とポリウレタンフォーム2とを接着させることができる。これにより、その構造物9とポリウレタンフォーム2とを接着させることができる。よって、型内発泡成形体4とポリウレタンフォーム2とを接着させることができる。
【0066】
図7の(c)は、インサート材3の露出部の中央に、インサート材3と材質が同じコの字型の構造物7を接着させている場合を示している。これにより、
図7の(a)および(b)の場合と同様に、インサート材3とポリウレタンフォーム2との接触面積が大きくなる。よって、インサート材3とポリウレタンフォーム2との接着強度が向上し、型内発泡成形体4とポリウレタンフォーム2との接着強度も向上させることができる。なお、コの字型の構造物7の材質は、インサート材3と材質が異なるものであってもよい。また、コの字型の構造物7の材質は、特に限定されないが、
図7の(a)および(b)の場合と同様に、インサート材3またはコの字型の構造物7の少なくとも1つをポリウレタンフォーム2と親和性が高い材質から構成されることが好ましい。
【0067】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0068】
本実施例では、発泡複合成形体1(型内発泡成形体ユニット5とポリウレタンフォーム2から構成されるもの)を形成し、ウレタンの引張試験を行った。各実施例1〜3はそれぞれ
図8の(a)〜(c)に相当する。以下の表1は、ウレタンの引張試験における条件と引張試験の結果を示した表である。
【0069】
なお、実施例および比較例では、ポリオレフィン系樹脂の発泡粒子として、L−EPP36(株式会社カネカ製、エチレン−プロピレンランダム共重合体樹脂、かさ密度20g/L、融点146℃)を用いる。また、耐圧容器内にて、このL−EPPに対して加圧空気を含浸させて内圧を約0.1MPa(G)にした。
【0070】
(実施例1)
図8の(a)に示すように、発泡倍率36倍(密度25g/L)の発泡ポリプロピレン成形体4(EPP成形体)に直径27.5mm、深さ30.0mmの有底孔6aを金型形状の転写により作製する。また、当該有底孔6aから鉄製ワイヤー3(インサート材3)が露出するように型内発泡成形体ユニットを調製した。なお、鉄製ワイヤー3の太さは直径4.0mmとした。
図8の(a)に示すように、ワイヤー3(インサート材3)が有底孔6aの底に接している場合を、ワイヤー3の位置が0mmであるとする。
【0071】
製造した型内発泡成形体ユニット5の有底孔6aから露出したワイヤー3と接するように、有底孔6a内にポリウレタンフォーム2を形成した。このとき、ウレタン液は、軟質ウレタン原液(トーヨーソフランR)を用いた。
【0072】
得られた発泡複合成形体1について、ポリウレタンフォーム2の引張試験を実施した。具体的には、ポリウレタンフォーム2を引張速度3.0mm/sで引張試験をした際の最大荷重を測定した。
【0073】
その結果、最大引張荷重3.10kgfにてポリウレタンフォーム2がワイヤー3から剥離したが、ワイヤー3の外周にポリウレタンフォーム2が残留した。そのときのワイヤー3の様子を
図9の(a)に示す。
【0074】
(実施例2)
図8の(b)に示すように、ワイヤー3(インサート材3)と有底孔6aの底との距離A1が13mmとなるように、ワイヤー3とEPP成形体4とを一体形成した以外は、実施例1と同様である。発泡複合成形体を製造し、ポリウレタンフォーム2の引張試験を実施した。なお、本実施例に限られず、距離A1の下限は特に制限されないが、1mm以上にすることが好ましい。これは距離A1が小さすぎるとワイヤー3より深い位置にポリウレタンフォーム2が入り込まないためである。距離A1の上限は有底孔6aの深さにより設定されるため、特に制限されない。ただし、有底孔6aの上方に搭乗者の体の一部が位置する場合、ワイヤー3が有底孔6aの周囲の上面(有底孔6aを除いたEPP成形体4の表面)より上方に位置しないことが好ましい。これは搭乗者の座り心地を低下させないためである。距離A2の下限は特に制限されないが、ポリウレタンフォーム2がワイヤー3とEPP成形体4との間に入り込めるように、1mm以上にすることが好ましい。距離A2の上限は有底孔6aの直径により設定されるため、特に制限されない。
【0075】
その結果、最大引張荷重6.00kgfにてウレタンがワイヤー3から剥離した。そのときのワイヤー3の様子を
図9の(b)に示す。
図9の(b)に示すように、有底孔において、ワイヤー3より深い位置にウレタンが残った。これは、ワイヤー3とウレタンとの接着面積を大きくすることができ、ワイヤー3とウレタンとの接着強度を向上させることができた。このため、ウレタンを引っ張った際に、ワイヤー3の周辺でウレタンが破断し、ワイヤー3より深い位置にあるウレタンが残ったと考えられる。したがって、ウレタンがワイヤー3を包み込むことができるため、ワイヤー3からウレタンを剥離しにくくさせることができる。また、本実施例では、引張荷重2.75kgfを超える強度でウレタンを引っ張った際に、ウレタンがワイヤー3から剥離しない状態を、「接着」と称している。
【0076】
(実施例3)
図8の(c)に示すように、1つの有底孔6aに対してワイヤー3・3(インサート材3)のように、2本のワイヤー3を露出させた。また、これらワイヤー3・3と有底孔6aの底との距離A1が13mmとなるように、2本のワイヤー3・3間の距離A3を2.5mmとした以外は、実施例2と同様に発泡複合成形体を製造し、ポリウレタンフォーム2の引張試験を実施した。なお、本実施例に限られず、距離A3の下限は特に制限されないが、ポリウレタンフォーム2が2本のワイヤー3・3間に入り込めるように、1mm以上にすることが好ましい。距離A3の上限は有底孔6aの直径により設定されるため、特に制限されない。このとき、発泡複合成形体1には、2本のワイヤー3が設けられており、その2本のワイヤー3はいずれも、有底孔6aの底から離れていることが好ましい。また、2本のワイヤー3に代えて、3本以上のワイヤー3が、発泡複合成形体1に設けられていてもよい。また、2本または3本以上のワイヤー3のうち少なくとも1本が、有底孔6aの底から離れていても(すなわち、有底孔6aの底から離れていないワイヤー3が存在していても)よい。
【0077】
その結果、最大引張荷重6.50kgfにてウレタンがワイヤー3から剥離した。そのときのワイヤー3の様子を
図9の(c)に示す。
図9の(c)に示すように、ワイヤー3の周辺にウレタンが残り、また有底孔6aにおいて、ワイヤー3より深い位置にウレタンが残った。さらに、実施例1および実施例2と比較して、有底孔6aにウレタンが多く残った。これは、ワイヤー3を2本通すことで、実施例2と比べ、ワイヤー3とウレタンとの接着面積を大きくすることができ、ワイヤー3とウレタンとの接着強度を向上させることができるためであると推測された。したがって、有底孔6aに2本のワイヤー3が露出し、ウレタンがその2本のワイヤー3を包み込むことができるため、ワイヤー3からウレタンを剥離しにくくさせることができる。
【0078】
(比較例)
ワイヤー3を使用しなかった以外は、実施例1と同様に発泡複合成形体1を製造し、ポリウレタンフォーム2の引張試験を実施した。
【0079】
その結果、引張荷重2.75kgfにてウレタンが型内発泡成形体ユニット5から剥離した(すなわち、接着していなかった)。そのときの型内発泡成形体ユニット5の様子を
図9の(d)に示す。
図9の(d)に示すように、ワイヤー3を使用しなかった場合、有底孔6aにほとんどウレタンが残らなかった。これは、型内発泡成形体4がウレタンとほとんど接着していなかったことを示す。実施例1〜3と比較して、引張強度も比較例の場合は弱いものであった。
【0080】
なお、ブランクとして
図9の(e)に、ワイヤー3にウレタンを接着させた状態を示した。
【0081】
【表1】
〔補足〕
本発明の一実施形態に係る発泡複合成形体は、熱可塑性樹脂からなる型内発泡成形体と、前記型内発泡成形体と一体化されたインサート材と、ポリウレタンフォームとを備えており、前記インサート材の少なくとも一部が、前記型内発泡成形体から露出しており、前記インサート材における、前記型内発泡成形体から露出した部分と、前記ポリウレタンフォームとが接していることを特徴としている。
【0082】
上記の構成によれば、型内発泡成形体と一体化されたインサート材の少なくとも一部が露出されている。これにより、当該インサート材の露出部分にポリウレタンフォームを接着させる、または、当該インサート材の露出部分をポリウレタンフォームによって包み込むことができる。従って、ポリウレタンフォームとの接着性が型内発泡成形体より良好であるものを、当該インサート材の材質として適用する。これにより、型内発泡成形体とインサート材とが一体化されて形成された型内発泡成形体ユニットから、ポリウレタンフォームが剥離しにくい発泡複合成形体を実現することができる。なお、インサート材は、前記型内発泡成形体より強度が高いものであることが好ましい。
【0083】
本発明の一実施形態に係る発泡複合成形体において、前記インサート材は、(1)前記型内発泡成形体に形成された有底孔、(2)前記型内発泡成形体に形成された貫通孔、(3)前記型内発泡成形体が区分けされて得られた複数の成形体片のうち2つの隙間、および、(4)前記型内発泡成形体の外面の周囲、からなる群より選択される少なくとも1つにて、前記型内発泡成形体から露出している構成であってもよい。
【0084】
上記の構成によれば、型内発泡成形体と一体化されたインサート材の少なくとも一部を型内発泡成形体から容易に露出させることができる。
【0085】
本発明の一実施形態に係る発泡複合成形体において、前記インサート材における前記型内発泡成形体から露出した部分の全長は、当該部分の両端を結んだ線分の長さより大きい構成であってもよい。
【0086】
上記の構成によれば、インサート材における型内発泡成形体から露出した部分を変形させることになり、インサート材とポリウレタンフォームとを接触可能な面積を大きくすることができる。従って、型内発泡成形体ユニットからポリウレタンフォームを剥離しにくくさせることができる。
【0087】
本発明の一実施形態に係る発泡複合成形体において、前記インサート材は、前記型内発泡成形体に形成された前記有底孔にて、前記型内発泡成形体から露出しており、前記有底孔にて、前記インサート材における前記型内発泡成形体から露出した部分の少なくとも一部が前記ポリウレタンフォームにより包み込まれていてもよい。
【0088】
上記の構成によれば、インサート材における型内発泡成形体から露出した部分の少なくとも一部がポリウレタンフォームにより包み込まれているため、型内発泡成形体ユニットからポリウレタンフォームを剥離しにくくさせることができる。
【0089】
本発明の一実施形態に係る発泡複合成形体において、前記インサート材における前記型内発泡成形体から露出した部分は、前記インサート材とは別の構造物が設けられた表面を有している構成であってもよい。
【0090】
上記の構成によれば、インサート材における型内発泡成形体から露出した部分に、インサート材とは別の構造物が設けられることになり、構造物とポリウレタンフォームとを接触可能な領域を設けることができる。従って、型内発泡成形体ユニットからポリウレタンフォームを剥離しにくくさせることができる。
【0091】
本発明の一実施形態に係る発泡複合成形体において、前記構造物は、金属によって構成されていてもよい。
【0092】
上記の構成によれば、構造物が金属によって構成されていることで、構造物の入手および加工が容易になる。
【0093】
本発明の一実施形態に係る発泡複合成形体において、前記インサート材は、金属によって構成されていてもよい。
【0094】
上記の構成によれば、インサート材が金属によって構成されていることで、インサート材の入手および加工が容易になる。
【0095】
本発明の一実施形態に係る発泡複合成形体において、前記インサート材は、無機繊維、繊維強化プラスチック、繊維強化金属、木材、コンクリート、鉄、ステンレス、亜鉛、およびアルミからなる群より選択される材質によって構成されていてもよい。
【0096】
上記の構成によれば、インサート材が上記の材質によって構成されることで、インサート材とポリウレタンフォームとを十分な強度で接着させることができる。
【0097】
本発明の一実施形態に係る発泡複合成形体において、前記インサート材は、前記ポリウレタンフォームと接着していてもよい。
【0098】
上記の構成によれば、インサート材がポリウレタンフォームと接着することで、型内発泡成形体とポリウレタンフォームとを接着する場合と比較して、型内発泡成形体ユニットとポリウレタンフォームとを強固に接着させることができる。
【0099】
本発明の一実施形態に係る発泡複合成形体において、前記型内発泡成形体は、前記ポリウレタンフォームとは接着していなくてもよい。
【0100】
本発明の一実施形態に係る発泡複合成形体において、前記型内発泡成形体の表面の少なくとも一部が、前記ポリウレタンフォームによって覆われておらずに露出していてもよい。
【0101】
本発明の一実施形態に係る発泡複合成形体において、前記型内発泡成形体は、オレフィン系樹脂からなっていてもよい。
【0102】
本発明の一実施形態に係る発泡複合成形体の製造方法は、熱可塑性樹脂からなる型内発泡成形体と、前記型内発泡成形体と一体化されたインサート材とを備えており、前記インサート材の少なくとも一部が、前記型内発泡成形体から露出している型内発泡成形体ユニットを用意する工程と、前記型内発泡成形体ユニットの前記インサート材における、前記型内発泡成形体ユニットの前記型内発泡成形体から露出した部分と、ポリウレタンフォームとが接するようにポリウレタンフォームを形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0103】
上記の構成によれば、型内発泡成形体と一体化されたインサート材の少なくとも一部を、ポリウレタンフォームと接着させる、または、ポリウレタンフォームによって包み込む。このため、型内発泡成形体ユニットからポリウレタンフォームが剥離しにくい発泡複合成形体を製造することができる。