特許第6937297号(P6937297)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6937297特に、淹れたコーヒーの調製のための飲料粉末を含むカプセル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6937297
(24)【登録日】2021年9月1日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】特に、淹れたコーヒーの調製のための飲料粉末を含むカプセル
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/06 20060101AFI20210909BHJP
   A47J 31/36 20060101ALI20210909BHJP
   B29C 41/00 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
   A47J31/06 320
   A47J31/36 120
   B29C41/00
【請求項の数】22
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-520649(P2018-520649)
(86)(22)【出願日】2016年7月7日
(65)【公表番号】特表2018-524139(P2018-524139A)
(43)【公表日】2018年8月30日
(86)【国際出願番号】EP2016066197
(87)【国際公開番号】WO2017005877
(87)【国際公開日】20170112
【審査請求日】2019年6月24日
(31)【優先権主張番号】15175704.4
(32)【優先日】2015年7月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518003948
【氏名又は名称】スイス コーヒー イノベーション アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニッケル, アクセル
【審査官】 吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2014−0112339(KR,A)
【文献】 特表2010−518844(JP,A)
【文献】 米国特許第03293041(US,A)
【文献】 国際公開第2014/207557(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/00 − 31/60
A23L 2/00 − 2/84
B29C 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料粉末を含むカプセルであって、前記カプセルに水を導入することによって、飲料を調製するためのカプセルであって、前記カプセルは少なくとも1つの多糖を含む粉末でできた圧縮ペレットを含み、前記圧縮ペレットは、少なくとも1つのコーティング層で被覆されており、前記少なくとも1つのコーティング層は架橋多糖を含み、前記架橋多糖は、ポリオールスペーサーを使用しない架橋剤による多糖の架橋によって得られたカプセル。
【請求項2】
前記少なくとも1つのコーティング層における前記多糖が、デンプン、セルロース、キチン、カラギーナン、寒天およびアルギン酸からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のカプセル。
【請求項3】
前記少なくとも1つのコーティング層における前記多糖がアルギン酸であることを特徴とする請求項に記載のカプセル。
【請求項4】
前記少なくとも1つのコーティング層における前記多糖が共有結合によって架橋されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のカプセル。
【請求項5】
前記少なくとも1つのコーティング層における前記多糖が、イオン結合および/または配位結合によって架橋されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のカプセル。
【請求項6】
前記少なくとも1つのコーティング層における前記架橋多糖が、アルカリ土類金属アルギン酸塩であることを特徴とする請求項5に記載のカプセル。
【請求項7】
前記少なくとも1つのコーティング層における前記架橋多糖が、アルギン酸カルシウムであることを特徴とする請求項6に記載のカプセル。
【請求項8】
前記圧縮ペレットが、1〜100層のコーティング層で被覆されていることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のカプセル。
【請求項9】
前記圧縮ペレットが、2〜5層のコーティング層で被覆されていることを特徴とする請求項8に記載のカプセル。
【請求項10】
前記圧縮ペレットが、コーヒー、茶、飲用チョコレート、ココアおよび粉乳からなる群から選択される材料を含むか、またはその材料から構成されることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のカプセル。
【請求項11】
前記圧縮ペレットが、0.01〜1000MPaの圧力で前記粉末をプレスすることによって得られたことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のカプセル。
【請求項12】
前記カプセルが、コーヒー、茶、飲用チョコレート、ココアおよび粉乳からなる群から選択される物質の粉末から作られた圧縮ペレットを含み、前記圧縮ペレットが、0.01〜1.000MPaの圧力で前記粉末をプレスすることによって得られ、前記圧縮ペレットが、1〜100層のアルギン酸カルシウムのコーティング層でカプセル化されることを特徴とする請求項1に記載のカプセル。
【請求項13】
前記圧縮ペレットが、2〜5層のアルギン酸カルシウムのコーティング層でカプセル化されることを特徴とする請求項12に記載のカプセル。
【請求項14】
i)少なくとも1つの多糖を含む粉末から圧縮ペレットを調製するステップと、
ii)ステップi)において使用される前記圧縮ペレットの少なくとも一部を、溶媒中の多糖の溶液と、または分散剤中の多糖の分散物と接触させるステップと、
iii)適切なとき、ステップii)の前記溶液または分散物から前記圧縮ペレットを取り出すステップと、
iv)ステップii)またはiii)において得られた前記圧縮ペレットを、少なくとも1つの架橋剤と接触させるステップと、
v)適切なとき、ステップiv)の溶液から前記圧縮ペレットを取り出すステップと、
vi)ステップiv)またはv)において得られた前記圧縮ペレットを乾燥するステップと
を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載のカプセルを製造するための方法。
【請求項15】
ステップii)において前記圧縮ペレットの表面全体を前記溶液または分散物と接触させる、請求項14に記載のカプセルを製造するための方法。
【請求項16】
ステップii)の前記圧縮ペレットが、アルカリ金属アルギン酸塩溶液に液浸され、またはステップii)の前記圧縮ペレットにその溶液が吹付けられる請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
ステップii)の前記圧縮ペレットが、0.5〜5重量%アルカリ金属アルギン酸塩水溶液に液浸される、またはステップii)の前記圧縮ペレットにその溶液が吹付けられる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ステップii)の前記圧縮ペレットが、0.5〜5重量%アルギン酸ナトリウム水溶液に液浸される、またはステップii)の前記圧縮ペレットにその溶液が吹付けられる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ステップiv)の前記圧縮ペレットが、アルカリ土類金属塩溶液に液浸され、またはステップiv)の前記圧縮ペレットにその溶液が吹付けられる請求項14から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ステップiv)において前記圧縮ペレットが、1〜7重量%アルカリ土類金属塩水溶液に液浸される、またはステップiv)の前記圧縮ペレットにその溶液が吹付けられる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ステップiv)において前記圧縮ペレットが、1〜7重量%塩化カルシウム水溶液に液浸される、またはステップiv)の前記圧縮ペレットにその溶液が吹付けられる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
コーヒー飲料を調製するための、請求項1から13のいずれか一項に記載のカプセルの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ココア、茶またはコーヒーなどの飲料の調製に特に適した飲料粉末を含むカプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
過去数年にわたり、コーヒーパッドに加えて、コーヒーカプセルが、飲料、特に淹れたコーヒーのポーション式の調製においてますます利用されてきた。カプセル壁は通常、ステンレス鋼、アルミニウムまたはプラスチックでできている。このようなカプセルは、風味を失うことなくコーヒー粉をかなり長期間保存することが可能になる。さらに、このようなカプセルは、所望のタイプのコーヒーが入ったカプセルが、この目的に合わせたコーヒーマシン内に置かれ、次いで熱水がカプセル内に圧入され、そこから所望の淹れたコーヒーが作られるため、所望の風味を持つ一杯のコーヒーを速く、ユーザーフレンドリーに作ることが可能になる。しかし、このようなカプセルは、使用されるカプセル材料および製造に費用がかかるカプセル構造のために比較的高価である。さらに、このようなカプセルは環境上問題となる。カプセルはリサイクル可能ではなく、ユーザーは通常、カプセルを残留廃棄物として処分する。したがって、コーヒーカプセルのリサイクルは事実上行われず、これは、アルミニウムベースのコーヒーカプセルの場合に特に重大である。その理由は、アルミニウムの製造が非常にエネルギー集約的であり、このようなカプセルのCO2バランスを特に悪くするためである。別の主要な不利な点は、このようなカプセルが生分解せず、したがって、生物学的に処理することができないことである。ドイツだけで20億個を超えるコーヒーカプセルが毎年使用されることを考えると、これは非常に深刻な問題である。
【0003】
少なくとも部分的に上述の問題を克服するため、代替材料でできたカプセルが既に提案されている。
【0004】
例えば、その内部にコーヒーまたは茶が充填され、カプセル壁を含むカプセルが国際公開第2010/006979(A1)号により既知であり、加えて、カプセル内容物は、構成要素として水も含む。しかし、安定なカプセル壁を形成するためには、カプセルが構成要素の凝固点未満に冷却されることが必要である。その理由は、その凝固点を超えると構成要素が溶融し、カプセル内容物を湿らすからである。当然、これは、このようなカプセルの使用をかなり制限する。
【0005】
国際公開第2009/053811(A2)号には、挽いたコーヒー、カプチーノ粉末、チョコレート粉末、粉乳または茶粉末を含むことができるカプセルが記載されている。カプセルは2つのハーフシェルからなり、これらはカプセル壁を形成する。カプセル壁は、淹れるプロセスの間に溶解する水溶性材料からなる。この考えでは、カプセル壁材料は、淹れるプロセスの間に溶解するため、調製される飲料の一部になり、これは味に望ましくない影響を及ぼす可能性がある。それとは別に、このようなカプセルの製造は複雑で費用がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2010/006979(A1)号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2009/053811(A2)号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これを出発点として、本発明は、単純かつ費用効果の高い方法で製造することができるだけでなく、特に、生分解性であるため、環境に優しい方法で処分することができる、ココア、茶およびコーヒーなどの飲料粉末から飲料をポーション毎に調製するためのカプセルを提供する目的に基づいている。カプセルはまた、認められるほど風味を失うことなく長期間にわたって保存することができて、それに対応して設計された飲料販売機において使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この目的は、少なくとも1つの多糖を含む粉末、特にコーヒー粉などの圧縮ペレットを含むカプセルによって達成され、圧縮ペレットは、少なくとも1つのコーティング層で被覆されており、少なくとも1つのコーティング層は架橋多糖を含み、架橋多糖は、ポリオールセパレータまたはポリオールスペーサーを使用しない架橋剤による多糖の架橋によって得られたか、または得ることができる。
【0009】
この解決策は、少なくとも1つの多糖を含むコーヒー粉などの粉末から構成される圧縮ペレットからなり、架橋多糖から構成される少なくとも1つのコーティング層で圧縮ペレットが被覆されているようなカプセルが、コーヒーなどの飲料のポーション毎の調製におけるその使用に必要とされるすべての必要な特性を示すだけでなく、特に、環境に優しい方法で処分することもできるという認識に基づいている。特に、架橋多糖から構成される少なくとも1つのコーティング層は、カプセルを輸送時に十分に保護し、取り扱い時に保護するのにも十分安定である。それとは別に、本発明によれば、カプセルはまた、認められるほど風味を失うことなく長期間にわたってカプセル内容物を保護する。これは、架橋多糖から構成される少なくとも1つのコーティング層と圧縮ペレットとの相乗的な協同作用に基づいている。コーヒー粉を圧縮ペレットにプレスすることは、酸素に接触可能なコーヒー粉の表面積が、圧縮されていない形態の粉末と比べて大幅に小さいことを意味する。さらに、架橋多糖から構成される被覆は、別の酸素バリアとして機能する。したがって、小さい表面積と被覆の組み合わせは、カプセル内容物の風味を保つことになる。本発明によるカプセルの別の利点は、少なくとも1つのコーティング層が、飲料の調製時に溶解せず、したがって、調製された飲料の味を悪化させないことにある。これとは別に、本発明によるカプセルは、単純かつ費用効果の高い方法で製造することができる。さらに、本発明によるカプセルは容易に球形に製造することができ、したがって、カプセルが転がるため、対応して合わせた飲料自動販売機における使用に非常に適している。さらに、特に重要であるのは、少なくとも1つの架橋多糖コーティングが完全に生分解性であり、したがって、環境に優しい方法で処分できることである。多糖は化石由来ではなく、それらの製造は比較的エネルギー集約的ではないため、本発明によるカプセルは有利なCO2バランスを示す。
【0010】
原則として、本発明は、少なくとも1つのコーティング層の多糖の化学的性質に関して限定されない。少なくとも1つのコーティング層の多糖が、デンプン、セルロース、キチン、カラギーナン、寒天およびアルギン酸からなる群から選択されるとき、良好な結果が得られる。少なくとも1つのコーティング層の多糖がカラギーナンまたはアルギン酸を含むことが特に好ましいであろう。これにより、少なくとも1つのコーティング層の多糖がアルギン酸であることがとりわけ好ましい。本発明の文脈において、これらの多糖は、飲料の調製時に味を悪化させないことが明らかになっている。本発明の文脈において、圧縮ペレット、特にコーヒー粉から構成される圧縮ペレットは、費用効果の高い方法でアルギン酸によって容易に被覆することができることも明らかになっている。アルギン酸は生分解性であり、著しく風味を失うことなく十分に安定な被覆となり、カプセルの内容物を保護する。本発明の文脈において、アルギン酸が水の硬度を低下させることができることも明らかになっている。それによって不快な酸味が減少する。
【0011】
少なくとも1つのコーティング層の多糖が架橋されることが本発明には極めて重要である。本発明の1つの実施形態によれば、多糖は、共有結合によって架橋することができる。共有結合による架橋は、非常に耐久性のある被覆を可能にする。同時に、共有結合による架橋は通常、多糖と、適した架橋剤との反応によって起こる。特に適した架橋剤は二官能性有機化合物であり、官能基は、例えば、カルボン酸、カルボン酸の塩、活性カルボン酸、アミン、アルコール、アルデヒドおよびケトンからなる群から選択される。この文脈において、活性カルボン酸は、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸の活性エステル、カルボン酸の無水物またはカルボン酸の他の反応性誘導体である。好ましくは、架橋は、スペーサーを使用せずに、特に、ポリオールスペーサーなしで行われる。
【0012】
本発明の代替の特に好ましい実施形態によれば、少なくとも1つのコーティング層の多糖は、イオン結合および/または配位結合によって架橋されている。イオン結合および/または配位結合によって架橋されたこのような多糖は、特に容易な方法で製造することができて、使用される多糖の生分解性を損なわない。イオン架橋および/または配位架橋は、例えば、カルボン酸基またはスルホン酸基などの陰性基を有する多糖により得ることができる。安定な被覆層を形成するために、二価またはそれ以上の高原子価の陽イオン、特にアルカリ土類金属イオンを導入することによって、次に、多糖の陰性基のイオン架橋または配位架橋が起こる。
【0013】
この文脈において、配位結合は、例えば、ヒドロキシル基の酸素原子の自由電子対と陽イオンとの間で起こり得るような、電子対供与体と電子対受容体の間の相互作用を意味する。
【0014】
とりわけ好ましいのは、架橋多糖の場合、アルカリ土類金属アルギン酸塩であろう。最も好ましいのはアルギン酸カルシウムであろう。この場合、カルシウムイオンがアルギン酸の基との配位結合またはイオン結合に入るため、カルシウムイオンが架橋剤になる。本発明の文脈において、驚くべきことに、カプセル内容物が著しく風味を失われることなく輸送時および取り扱い時に保護されるように、アルギン酸カルシウムを含む被覆が、カプセルから作られる飲料の味を損なわない非水溶性層となり、カプセルの十分な安定性をもたらすことが明らかになった。さらに、アルギン酸カルシウムは生分解性に優れている。別の利点は、アルギン酸カルシウムがE番号E405の承認済み食品添加物であり、したがって健康に害がないことである。この実施形態においてさらに好ましいのは、カプセルの内容物、すなわち多糖から構成される圧縮ペレットが、アルカリ土類金属イオン、特にカルシウムイオンを少なくとも実質的に含まないことであり、これは、圧縮ペレットが作られ、天然のアルカリ土類金属イオン、特にカルシウムイオンを含み得る多糖を除いて、圧縮ペレットが、さらにアルカリ土類金属イオン、特にカルシウムイオンを含まないものとすることを意味する。カプセルに含まれる圧縮ペレットまたは圧縮ペレットの内容積の少なくとも80%が、1mol/l未満のアルカリ土類金属イオン濃度、特にカルシウムイオン濃度を有することが特に好ましく、0.1mol/l未満が好ましく、さらにより好ましいのは0.001mol/l未満であり、特に好ましいのは0.001mol/l未満であり、とりわけ好ましいのは0.0001mol/l未満であろうし、最も好ましいのは0.00001mol/l未満であろう。「圧縮ペレットの内容積の80%」は、圧縮ペレットの中心点から半径方向に外面に至る最も長い部分から、中心点から外面の点に向かって出発して80%のところにある点の周りに球面が広がるときに得られる容積を意味すると理解される。圧縮ペレットはアルカリ金属アルギン酸塩溶液とまず接触し、その後に初めて、アルギン酸カルシウムコーティングの形成時に、アルカリ土類金属イオン、特にカルシウムイオンを含む液体と接触し、アルカリ金属アルギン酸塩溶液が加えられる前に土類金属アルギン酸塩、特にカルシウムイオンを含む流体と最初に接触しないため、アルカリ土類金属イオン、特にアルギン酸カルシウムコーティングが形成されるので、アルカリ土類金属イオン、特にカルシウムイオンによる圧縮ペレットの汚染を防ぐことができる。
【0015】
原則として、本発明によるカプセルは、架橋多糖のコーティング層のみを含むことができる。カプセルの安定性、したがって、輸送時の安全性および取り扱い時の保護を向上させるために、本発明概念の別の展開において、本発明によるカプセルは、2層以上のコーティング層を含むべきであるということが提案されている。好ましくは、カプセルの圧縮ペレットは、2〜100層のコーティング層で被覆され、特に好ましいのは2〜20層であろうし、とりわけ好ましいのは2〜10層であろうし、最も好ましいのは2〜5層のコーティング層であろう。2層以上のコーティング層でカプセルの圧縮ペレットを被覆すると、酸素バリアとしてのコーティングの効果も高まるだけでなく、その結果もたらされる効果的な香りの保護も特に高度に向上する。
【0016】
第1のコーティング層は、圧縮ペレットのまだ粗い表面にゲルとして浸透し、より滑らかな表面になることが明らかになっている。これは、表面積がさらに小さくなり、風味をさらに濃厚にすることを意味する。次いで、さらにより滑らかな表面が別のコーティング層によって得られ、これも必要な安定性を示し、したがって、さらにより強い衝撃が悪影響もなく吸収される。
【0017】
本発明の別の特に好ましい実施形態によれば、カプセルのコーティングは、2〜100層のアルギン酸カルシウムコーティング層からなり、圧縮ペレットが被覆されるのに好ましいのは2〜20層であろうし、特に好ましいのは2〜10層であろうし、非常に好ましいのは2〜5層であろう。
【0018】
個々のコーティング層は、アルギン酸ナトリウムの粘度およびその後の手順に応じて、50〜600μmの間の範囲の厚さを特徴とする。最大100〜300μmの層厚が、安定性と乾燥速度の間の最適な妥協を示すため、第1のコーティング層に特に好ましいであろう。その後のコーティング層は、速い乾燥を可能にするために、好ましくはさらに薄く、好ましくは50〜200ミクロンの間の厚さである。
【0019】
ゲルに含まれる水をより容易に除去し、架橋剤、すなわちカルシウムイオンのアルギン酸ナトリウムへの可能な限り最も速い拡散を容易にするために、薄いコーティング層が好ましい。原則として、カルシウムイオンのアルギン酸ナトリウムへの拡散速度は、架橋剤の濃度をさらに高くすることによって大きくすることもできる。しかし、この変種を実際に実施したところ、薄いコーティング厚が拡散速度および取り扱いにおいて有利であることが判明した。
【0020】
本発明は、本発明によるカプセルの圧縮ペレットが作られる材料に関して特に限定されない。圧縮ペレットが、コーヒー、茶、飲用チョコレート、ココアおよび粉乳からなる群から選択される材料を含むか、または好ましくはその材料から構成されるか、またはその材料からなるとき、良好な結果が得られる。特に、圧縮ペレットが挽いたコーヒー粉からなるとき、良好な結果が得られる。
【0021】
本発明の文脈において、圧縮ペレットは、圧縮粉末を意味すると理解される。特に、本発明によるカプセルの圧縮ペレットが、0.01〜1000MPa、好ましくは0.05〜500MPa、特に好ましくは0.1〜100MPa、さらにより好ましくは0.5〜100MPa、さらにより好ましくは1〜100MPa、とりわけ好ましくは5〜50MPa、最も好ましくは15〜30MPaの圧力で粉末、特にコーヒー粉をプレスすることによって作られる場合に良好な結果が得られる。このようにして、圧縮ペレットを確実に被覆するために十分な圧縮を行うことができ、良好な酸素バリアが得られる。さらに低い圧力では密着が十分でなく、さらに高い圧力では密着が強すぎて、ある状況下では、プレス機から取り出した後に緩み、場合によってはカプセルが崩壊する。
【0022】
さらに、本発明は、コーヒー、茶、飲用チョコレート、ココアおよび粉乳からなる群から選択される物質の粉末から作られた圧縮ペレットを含むカプセルに関し、圧縮ペレットは、0.01〜1.000MPa、好ましくは0.05〜500MPa、特に好ましくは0.1〜100MPa、さらに好ましくは0.5〜100MPa、さらにより好ましくは1〜100MPa、とりわけ好ましくは5〜50MPa、最も好ましくは15〜30MPaの圧力で粉末をプレスすることによって得られ、圧縮ペレットは、1〜100層、好ましくは2〜20層、特に好ましくは2〜10層、最も好ましくは2〜5層のアルギン酸カルシウムのコーティング層で被覆されている。最も好ましいのは、本発明によれば、カプセルが、コーヒー、茶、飲用チョコレート、ココアおよび粉乳からなる群から選択される物質の粉末から15〜30MPaの圧力で得られる圧縮ペレットからなり、圧縮ペレットが、2〜20層のアルギン酸カルシウムのコーティング層で被覆されているときである。
【0023】
原則として、圧縮ペレットは、任意の形状、例えば、円錐台、円錐、楕円体、円柱、直方体、コーヒー豆または球体の形状を有することができる。本発明によるカプセルは、特に好ましくは球体の形状を有するが、その理由は、容積に対する表面の比率がこの場合に最も小さく、その結果、香りが特に良く保たれるからである。さらに、球形は、カプセルが転がるため、飲料販売機において特にうまく使用される。
【0024】
さらに、本発明は、
i)少なくとも1つの多糖を含む粉末から圧縮ペレットを調製するステップと、
ii)ステップi)において使用される圧縮ペレットの表面の少なくとも一部、好ましくは表面全体を、溶媒中の多糖の溶液と、または分散剤中の多糖の分散物と接触させるステップと、
iii)適切なとき、ステップii)の溶液または分散物から圧縮ペレットを取り出すステップと、
iv)ステップii)またはiii)において得られた圧縮ペレットを、少なくとも1つの架橋剤と接触させるステップと、
v)適切なとき、ステップiv)の溶液から圧縮ペレットを取り出すステップと、
vi)ステップiv)またはv)において得られた圧縮ペレットを乾燥するステップと
を含む、カプセルを製造するための方法に関する。
【0025】
ステップii)における圧縮ペレットの接触は、好ましくは、圧縮ペレットの表面の少なくとも一部、好ましくは表面全体が多糖の溶液または分散物で濡れるように行われる。例えば、ステップii)およびiv)における圧縮ペレットの接触は、多糖の溶液または分散物あるいは架橋剤による圧縮ペレットの浸漬、吹付またはコーティングによって互いに独立して行われる。
【0026】
本発明による方法は、圧縮ペレットの均一な被覆を可能にする。特に、圧縮ペレットが球形であるときでさえも、エッジまたは継ぎ目が生じない。
【0027】
溶媒または分散剤は、好ましくは水性の溶媒または分散剤である。水が溶媒または分散剤として特に好ましい。
【0028】
ステップii)の圧縮ペレットは、好ましくは、0.5〜5重量%アルカリ金属アルギン酸塩水溶液に浸漬され、またはその溶液が吹付けられる。特に好ましいのは、ステップii)の圧縮ペレットを1〜2重量%アルカリ金属アルギン酸塩水溶液に浸漬するか、またはその溶液を吹付けることである。0.5重量%未満の濃度では、その後のステップで十分に安定な被覆を形成するためにはアルカリ金属アルギン酸塩溶液が十分に濃厚ではなく、単純な液浸または吹付で十分な量のアルカリ金属アルギン酸塩を圧縮ペレットに塗布するには粘度が低すぎる。アルカリ金属アルギン酸塩の濃度が5重量%を超えると、アルカリ金属アルギン酸塩溶液の粘度が高すぎて、完全な被覆の形成が妨げられる。さらに、アルカリ金属アルギン酸塩の濃度が5重量%を超えるとコーティング厚が厚くなり、乾燥がさらに困難になる。
【0029】
アルカリ金属アルギン酸塩溶液は、好ましくは、アルギン酸と、アルカリ金属の陽イオン、または例えば、アンモニウムイオンなどの関連する陽イオンとからなる塩の溶液である。特に好ましくは、アルカリ金属アルギン酸塩溶液は、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウムまたはアルギン酸アンモニウムの水溶液である。アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウムおよびアルギン酸アンモニウムは、E番号E401、E402またはE403の承認済み食品添加物である。このような被覆は、食品産業において躊躇することなく使用することができる。とりわけ好ましいのは、アルギン酸ナトリウムの水溶液である。
【0030】
本発明の方法において、1〜15重量%、好ましくは1〜7重量%のアルカリ土類金属塩水溶液にステップiv)の圧縮ペレットを浸漬するか、またはその溶液を吹付けることが好ましい。1〜15重量%の間、好ましくは1〜7重量%の間のアルカリ土類金属塩濃度の場合、多糖の迅速なイオン架橋を得ることができる。アルカリ土類金属塩は、好ましくは、特に塩化カルシウムなどのカルシウム塩である。
【0031】
圧縮ペレットはアルカリ金属アルギン酸塩溶液とまず接触し、その後に初めて、アルカリ土類金属イオン、特に、アルギン酸カルシウムを含むコーティングの形成下、アルカリ土類金属イオン、特に、カルシウムイオンを含む液体と接触するため、カプセル内の多糖から構成される圧縮ペレットが、アルカリ土類金属イオン、特にカルシウムイオンを少なくとも実質的に含まないようにすることができる。これは、圧縮ペレットが作られた多糖中におそらく存在した天然に含まれるアルカリ土類金属イオン、特にカルシウムイオンを除いて、カプセルに含まれる圧縮ペレットが、さらにアルカリ土類金属イオン、特にカルシウムイオンを含まないことを意味すると理解される。カプセルに含まれる圧縮ペレットまたは圧縮ペレットの内容積の少なくとも80%が、1mol/l未満のアルカリ土類金属イオン濃度、特にカルシウムイオン濃度を有することが特に好ましく、0.1mol/l未満が好ましく、さらにより好ましいのは0.001mol/l未満であり、特に好ましいのは0.001mol/l未満であり、とりわけ好ましいのは0.0001mol/l未満であろうし、最も好ましいのは0.00001mol/l未満であろう。「圧縮ペレットの内容積の80%」は、圧縮ペレットの中心点から半径方向に外面に至る最も長い部分から、中心点から外面の点に向かって出発して80%のところにある点の周りに球面が広がるときに得られる容積を意味すると理解される。
【0032】
圧縮ペレットをいくつかの層でカプセル化するために、ステップii)〜v)またはステップii)〜vi)を数回、すなわち、好ましくは2〜20回、特に好ましくは2〜10回、最も好ましくは2〜5回繰り返すことができる。
【0033】
ステップvi)の乾燥は、さまざまな方法で実施することができて、これにより、さまざまな乾燥方法が成功することが判明した。非常に均一な乾燥は、これに限定されないが、圧縮ペレットが自由に浮遊し、それ自体の回転によって均一に乾燥する、適したチャネル内の空気流中の乾燥によって実現することができる。コーティング層の形成時にコーティング層を通って拡散する水をより良く吸収するために、吸収剤の上または温かい表面での接触乾燥も有用であることが判明した。両方の原理を流動床チャネルの一種において組み合わせることができる。赤外線乾燥機およびマイクロ波乾燥機も、その他の非常に効率的な乾燥原理として利用することができる。
【0034】
さらに、本発明は、本発明によるカプセルを水と接触させることによって飲料を製造するための、本発明によるカプセルの使用に関する。好ましくは、カプセルは、コーヒー、茶、飲用チョコレート、ココアおよび粉乳からなる群から選択される材料を含む。
【0035】
コーヒー飲料の調製のための、本発明によるカプセルの使用は、必要とされる要求に応じて飲料をポーション毎に調製することを可能にする。本発明による応用の特定の利点は、生分解性廃棄物のみが生じることである。
【0036】
飲料、特にコーヒー飲料を調製するために本発明によるカプセルを使用するとき、コーヒーカプセルは、好ましくは押し潰されるか、または穴が開けられた後、押し潰されたか、または穴が開けられたコーヒーカプセルが水で抽出される。
【0037】
以下で、例示することを意図する非限定的な2つの実施例に基づいて本発明を説明する。
【実施例1】
【0038】
プレス機を用いて20MPaの圧力で、8gの挽いた焙煎コーヒーを球形の圧縮ペレットにプレスした。次いで、得られた球形の圧縮ペレットを1重量%アルギン酸ナトリウム水溶液に浸漬し、1〜2秒後、アルギン酸ナトリウム溶液から取り出した。アルギン酸ナトリウム溶液から圧縮ペレットを取り出した後、圧縮ペレットに5重量%CaCl2溶液を吹付けた。次に、圧縮ペレットを空気流中、室温で10分間乾燥した。
【0039】
アルギン酸カルシウムのカプセル化された層を有する圧縮ペレットからなるカプセルが得られた。
【実施例2】
【0040】
実施例1のようにコーヒーカプセルを調製した。ただし、圧縮ペレットをアルギン酸ナトリウム溶液に浸漬するステップと、アルギン酸ナトリウム溶液から取り出すステップと、塩化カルシウム溶液を吹付けるステップと、乾燥するステップがそれぞれ合計で5回、連続的に繰り返されることを除く。
【0041】
アルギン酸カルシウムのカプセル化された5つの層を有する圧縮ペレットからなるカプセルが得られた。