(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
セルロース繊維を含むストックを、クラフトパルプ化、ケミサーモメカニカルパルプ化からの完成紙料を使用することによって、又はリサイクル繊維を再パルプ化することによって得ることを特徴とする請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に提示した例示的な実施形態及びその利点は、必ずしも別に言及するとは限らないが、適用可能な部分につき本発明に係る方法、使用方法、及び、製品にも関連する。
【0011】
紙、板紙等を製造する典型的な方法は、
− セルロース繊維を含む濃厚なストックを得ること、
− 該ストックから繊維ウェブを形成すること、
− 少なくとも1種の合成又は天然ポリマー、又はそれらの混合物と、非木材源(non-wood sources)に由来するミクロフィブリル化柔組織(parenchymal)セルロース材料とを含む紙力剤系を該濃厚なストックに加えること、及び
− 該繊維ウェブを乾燥させること
を含む。
【0012】
非木材源に由来するミクロフィブリル化柔組織セルロース材料の典型的な使用方法は、紙、板紙等の製造における紙力剤として用いることである。
【0013】
本発明に係る典型的な紙又は板紙製品は、150〜800kg/m
3の範囲の密度を有し、本発明に係る方法によって製造される。
【0014】
今や、驚くべきことに、少なくとも1種のポリマーとミクロフィブリル化柔組織セルロース材料とを含む紙力剤系を濃厚なストックに添加することによって、紙又は板紙の様々な重要な強度パラメータを高めることができることが分かった。ポリマーとミクロフィブリル化柔組織セルロース材料との相互作用が、製造した紙又は板紙の強度特性に効果的、かつ予想外の増加をもたらすものである。さらに、同時に、複数の所望の強度パラメータを改善することも可能である。ポリマー及びミクロフィブリル化柔組織セルロースを含む紙力剤系を用いることによって達成される強度向上は、木材の二次壁構造から製造された従来のミクロフィブリル化材料を使用することによって達成される結果と同程度、又はそれより良好であることが観察された。これは、ミクロフィブリル化を行う前の柔組織及び厚膜組織の強度特性を考慮すると驚くべきことである。
【0015】
ミクロフィブリル化柔組織セルロースを使用することで、紙及び板紙製品の強度特性を改善するための、持続可能で環境に優しい選択肢を提供することができる。第一に、ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料の製造には、木材ベースの材料のフィブリル化よりも少ないエネルギーしか必要としない。第二に、しばしば廃棄物として無視されるような原料を使用することが可能である。ミクロフィブリル化柔組織セルロースは、高固形分含量の製品に製造することができ、これにより、貯蔵及び輸送が経済的となる。さらに、合成ポリマー又は天然ポリマーの両方とも、本発明の紙力剤系に使用することができ、これにより、各種の紙及び板紙製造プロセスにおけるその汎用性が増加する。
【0016】
本発明に係る紙力剤系は、また、最終的な紙又は板紙に、改善された表面特性、例えば、改良されたガスバリア性を付与することができる。
【0017】
この文脈において、「ミクロフィブリル化(した)柔組織セルロース材料」という用語は、本質的に一次細胞壁構造、すなわち柔組織細胞(parenchymal cells)を含む、植物ベースのセルロースに富む材料をフィブリル化することによって得られるミクロフィブリル化材料を意味する。したがって、この材料は、一次細胞壁構造、すなわち柔組織細胞に由来するセルロースフィブリルを含む。ここでは、柔組織は、植物の基本組織として理解され、薄い一次細胞壁を有する細胞を含むものである。茎の皮層(cortex)と髄(pith)、葉の内層、及び、果実と野菜の柔らかい部分は柔組織で構成されている。柔組織細胞(parenchyma cells)は、成熟時に生存しており、植物構造体の水貯蔵、損傷組織の置換、及び物理的支持などの様々な機能を果たす。ミクロフィブリル化した柔組織セルロース材料は非木材源から得られ、好ましくは、薄い柔軟な一次細胞壁を含むが、二次細胞壁構造を欠くものである。
【0018】
ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料は、適切な植物源に由来する柔組織セルロースフィブリルを含み、その植物源には、主として柔組織細胞の類型(types)からなる植物種(plant species)、及び/又は、セルロースの大部分が一次細胞壁中に存する植物種が包含される。本発明の一実施形態によれば、ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料には、サトウダイコンパルプ、ジャガイモパルプ、キャッサバパルプ、サツマイモなどの野菜;柑橘類の果皮、果実の果肉などの果物;例えばバガス髄(pith)、コーン髄、竹髄のようなセルロース髄;及びこれらの任意の混合物が含まれる。特に適切な原材料は、サトウダイコンパルプ、バガスの髄画分、ジャガイモパルプ、キャッサバパルプ、及びこれらの混合物である。好ましい一実施形態によれば、ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料は、サトウダイコンパルプに由来する柔組織セルロースフィブリルを含む。
【0019】
特定の植物種では、一次及び二次細胞壁構造が共存する。例えば、種々の草類では、その植物構造は、厚い二次細胞壁を有する巨視的なセルロース繊維を含む剛性外殻と、主として、薄い一次細胞壁を有する柔組織細胞を含む、柔らかい内部コア、すなわち、髄組織とから構成される。セルロース髄を容易に単離することができる植物の具体例としては、サトウキビ、竹、トウモロコシ、種々の草及びストロー構造体、例えば、小麦、大麦、ライ麦、オート麦、イネ(rice)、サバイ(sabai)、アルバーディン(albardine)、エスパルト(esparto)などが挙げられる。本発明の一実施形態によれば、ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料は、これらの原料に由来する。特に適した原材料は、主な繊維源として非木材繊維を使用する紙又は板紙産業からの、予め分別されたセルロース髄の副次的産物 (side-streams)である。
【0020】
一実施形態によれば、ミクロフィブリル化の機械的処理を行う前に、ペクチンなどの可溶性多糖類を使用原料から取り除く。過剰の可溶性多糖類を除去すると、微生物学的活性のリスクが低減する。主として柔組織細胞の類型(types)を含み、かつ、例えば、原材料製造業者がペクチンなどの可溶性多糖類を少なくとも部分的に除去した非木材原材料は、ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料のための特に適切な原材料である。これらの原材料の具体例は、例えば、柑橘類の皮、リンゴ残留物、又はサトウダイコンをペクチン源として使用するペクチン工場から供される柔組織セルロースに富む副次的産物 (side-streams)である。対応して、ジャガイモ又はキャッサバをベースとするデンプンの工場から供される柔組織セルロースに富む副次的産物 (side-streams)が特に適した原材料である。
【0021】
前記段落で言及した原材料の多くは、食品、砂糖及び/又はデンプンの加工又は製造における、副産物、廃棄物又は残留物として容易に、かつ、豊富に入手可能である。そのような材料から、経済的に有利な原材料が提供される。
【0022】
ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料は、柔組織セルロース、ミネラル、塩類、糖類、並びに、ペクチン及びヘミセルロースなどのアニオン性結合ポリマー、及びそれらの加水分解生成物を含む。本発明の一実施形態によれば、ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料は、該材料の乾燥固形分含量から計算して、少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも60質量%、より好ましくは少なくとも70質量%、さらにより好ましくは少なくとも80質量%の柔組織セルロースを含む。ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料は、二次細胞壁構造に由来するセルロースフィブリルを含まないことが好ましい。
【0023】
紙力剤系の成分として使用するのに適したミクロフィブリル化柔組織セルロース材料は、任意の適切な機械的処理、例えば、粉砕機(grinder)、コミニュータ(comminutor)、ローター‐ステーターミキサー又は粉砕機、ローター‐ローターミキサー又は粉砕機、ホモジナイザー、フリューダイザー(fluidizer)又は超音波ディスインテグレーター(ultrasonic disintegrator)が挙げられる。一実施形態によれば、ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料を製造するための機械的処理には、粉砕機、ローター‐ローターミキサー、ローター‐ローター粉砕機、又はAtrex(登録商標)粉砕機などの高せん断速度粉砕機を使用する。粉砕機は、使い易く、目詰まりが起こりにくいため、好ましい代替手段である。一般に、上に列挙した原材料からミクロフィブリル化柔組織セルロース材料を製造するときには、比較的少ないエネルギー及び/又は力(force)しか必要とせず、したがって、生産が容易化し、プロセス全体の持続可能性が増加することになる。
【0024】
ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料は、セルロースミクロフィブリル又はセルロースミクロフィブリルの束(bundles)として得られる。ミクロフィブリル化材料中のミクロフィブリルの長さは、典型的には1μmを超え(>)、好ましくは1〜200μm、さらにより好ましくは10〜100μm、最も好ましくは10〜60μmである。個々のミクロフィブリルの直径は、2〜200nm、好ましくは2〜100nm、より好ましくは4〜70nm、さらにより好ましくは5〜40nmの範囲であることができる。ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料は、10〜50本のミクロフィブリル束を含むことが多く、ミクロフィブリル束の直径は通常1μm未満(<)である。
【0025】
機械的処理の前に、例えば、洗浄、精製及び/又は漂白を行う前に、柔組織セルロース原料を処理することが可能である。一実施形態によれば、機械的処理の前に、セルロース原料をアルカリ性、中性又は酸性の洗浄に供する。アルカリ性又は酸性pHでセルロース原料を洗浄することにより、ペクチン及びヘミセルロースなどの結合ポリマーを一次細胞壁から完全に又は部分的に分離することが可能である。これにより、フィブリル化プロセスが容易になる。この洗浄はバッチ形式プロセス又は連続的プロセスで実施することができる。さらに、洗浄することで、とりわけミクロフィブリル化柔組織セルロース材料の着色の可能性が減少する。
【0026】
好ましい一実施形態によれば、ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料の原料は、機械的処理によるミクロフィブリル化を行う前に、アルカリ洗浄、続いて、任意で中性洗浄に供するだけである。これらの洗浄工程により、残留した糖類、並びに、ペクチン及びヘミセルロースのようなアニオン性結合ポリマーがその原料から除去できると考えられる。
【0027】
しかし、本発明の別の実施形態によれば、ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料は、酸化、抽出及び/又は洗浄から選択されるような処理工程を先行して実施しないでも、均質化(homogenization)などの機械的処理を行うことで得ることができるものである。また、一実施形態によれば、酸化及び/又は抽出から選択されるような、いかなる処理工程をも先行して行うことなく、ミクロフィブリル化材料を均質化のような機械的処理によって得ることができる。未処理の原材料によりミクロフィブリル化柔組織セルロース材料が供給され、これを、少なくとも1種のポリマーと一緒に紙力剤系に使用する場合その効果を向上させることが観察されている。理論に拘束されるものではないが、現在のところ、未処理ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料は原材料に由来する不均質なポリマー材料を多く含んでおり、このポリマー材料が、本発明に係る紙力剤組成物中に存在するとき、結合(binding)効果を増大させるものと考えられる。
【0028】
特に、ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料に対しては、ミクロフィブリル化の前又は後に、化学基、無機沈着物、化学コーティング又は化学層をフィブリルに又はその表面に付着させ又は結合させるような化学的修飾工程を実施することがないことが好ましい。したがって、ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料は、立体基又は荷電基による誘導体化されることがない。
【0029】
ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料には、殺生物剤を加えることが好ましい。その殺生物剤は1〜400ppm、好ましくは150ppm〜350ppmの量で添加することができる。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料を、例えば、少なくとも10質量%の、好ましくは12〜95質量%の範囲の、より好ましくは20〜95質量%の範囲の固形分含量まで濃縮及び/又は乾燥することができる。ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料の濃縮及び/又は乾燥は、フィブリル化の前に実施することができるが、好ましくは、ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料を機械的処理によって生成した後に行うことができる。両方の選択的手段により、貯蔵及び輸送が容易な濃縮ミクロフィブリル化材料が生成する。紙力剤系の成分として使用する前に、乾燥又は濃縮したミクロフィブリル化セルロースを、適切な使用濃度、例えば0.2〜5質量%、好ましくは0.3〜4質量%、より好ましくは0.5〜3質量%まで水中に再分散させることができる。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料は、
− 100rpmのせん断速度で、1.0質量%の濃度で測定した、少なくとも10Pas、好ましくは少なくとも100Pasのブルックフィールド粘度、及び/又は、
− 0.1質量%の濃度で測定した、1000NTU未満の、好ましくは100−700NTUの範囲の濁度値、及び/又は、
− pH7.5で、−0.001〜−1.99meq/g、好ましくは−0.01〜−1.50meq/g、より好ましくは−0.05〜−1.0meq/gの範囲の正味電荷量
を有する。
【0032】
一般に、高粘度及び低濁度は、柔組織セルロース材料のフィブリル化度が良好であることを示す。本発明の一実施形態によれば、ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料のブルックフィールド粘度は、0.01〜10000Pas、好ましくは10〜10000Pas、より好ましくは100〜10000Pas、さらにより好ましくは200〜850Pasの範囲である。これは、1.0質量%の濃度、100rpmのせん断速度で、Vane geometry(V−72)を備えたBrookfield DV3T粘度計(Brookfield Engineering Laboratories、Middleboro、米国)を用いて測定したものである。
【0033】
好ましい一実施形態によれば、ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料のブルックフィールド粘度は、Vane geometry(V−72)を装備したブルックフィールドDV3T粘度計(Brookfield Engineering Laboratories、Middleboro、米国)を用い、50rpmで測定するとき、500〜2000Pas、好ましくは800〜1400Pas、より好ましくは900〜1300Pasの範囲にあってもよい。
【0034】
好ましくは、ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料は、せん断減粘(shear-thinning)挙動を示し、すなわち、そのせん断速度の増加に伴ってその粘度が低下する。このせん断減粘挙動により、ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料と合成ポリマー及び/又は天然ポリマーとの、並びにストック中の繊維との混合が改善し、したがって生成する紙力組成物の均一性が改善する。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料の濁度は、HACH P2100濁度計で測定して、375〜525NTU、好ましくは490〜510NTUの範囲であることができる。測定するとき、材料サンプルを0.1質量%の濃度まで水で希釈し、測定前にサンプルを10分間攪拌し、続いて真空中で脱気してサンプル中に取り込まれた気泡を除去する。測定ではサンプルの粒子から散乱した光の放射が検出されるが、その前に、温度を20℃に調整した。
【0036】
本発明に係る紙力剤系は、ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料に加えて、少なくとも1種の天然又は合成ポリマー又はそれらの混合物を含む。また、紙力剤系は、複数の天然及び/又は合成ポリマーを含むことができる。天然ポリマーと合成ポリマーとの間の選択については、それらの有効性、経済的側面、機械の走行性及び生産性への影響、使用の容易性、製品の入手可能性及び貯蔵寿命などの多くの要因に依存する。本発明の紙力剤組成物は合成ポリマー又は天然ポリマーの両方又はその混合物を使用することができるので、ポリマー成分の選択の自由度が予想外に増加する。
【0037】
上記少なくとも1種の合成及び/又は天然ポリマーは、ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料を製造する機械的処理の前、後又はその間に、ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料に添加することができる。
【0038】
好ましい一実施形態によれば、天然又は合成ポリマーはカチオン性である。本出願との関連では、カチオン性ポリマーは、当該ポリマーの正味電荷がカチオン性である限り、局所的なアニオン電荷をも含有することができるものと理解される。カチオン性ポリマーにより、ストック中の繊維表面上のミクロフィブリル化柔組織セルロース材料の保持が改善する。それは、ミクロフィブリル化材料及び繊維表面の両方がアニオン荷電部位を含むからである。カチオン性ポリマーは、ミクロフィブリル化材料と繊維表面との間に効果的な結合網を生み出し、最終的な紙又は板紙製品の重要な強度特性を向上させる。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、紙力剤系は、カチオン性デンプン又は両性デンプン、キチン(chitin)、グアールガム(guargum)、カルボキシメチルセルロース及びそれらの任意の混合物からなる群から選択される天然ポリマーを含む。紙力剤系において使用するために、デンプンを適切な方法によってカチオン化してもよい。デンプンのカチオン化は、2,3−エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド又は3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドを使用することによって行うのが好ましい。好適なのは、2,3−エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドである。また、(3−アクリルアミドプロピル)−トリメチルアンモニウムクロライドのようなカチオン性アクリルアミド誘導体を使用することによってデンプンをカチオン化することも可能である。置換度(DS)は、グルコース単位当たり、平均でデンプン中に存在するカチオン性基の数を示す。好ましくは、天然ポリマーは、置換度が0.01〜0.3、好ましくは0.02〜0.1、より好ましくは0.03〜0.6の範囲内のカチオン性デンプンである。
【0040】
一実施形態によれば、カチオン性デンプンは非分解性である。すなわち、そのデンプンは単にカチオン化によってのみ修飾されたものであって、その主鎖が非分解性であり、架橋もしていないことを意味する。
【0041】
一実施形態によれば、カチオン性デンプンは、ジャガイモ、米、トウモロコシ、ワキシートウモロコシ、小麦、大麦又はタピオカデンプン、好ましくはトウモロコシデンプン又はジャガイモデンプンなどの製紙に使用される任意の適切なカチオン性デンプンである。典型的には、カチオン性デンプンのアミロペクチン含量は、65〜90%、好ましくは70〜85%の範囲である。一実施形態によれば、カチオン性デンプンのデンプン単位の少なくとも70質量%は、20,000,000g/molを超え、好ましくは50,000,000g/molを超え、より好ましくは100,000,000g/molを超える平均分子量(MW)を有する。
【0042】
紙力剤系中のポリマーは、さらに又は代替的に、合成ポリマーであってもよく、その合成ポリマーは、カチオン性ポリアクリルアミド(C−PAM)、グリオキサール化ポリアクリルアミド(G−PAM)、両性ポリアクリルアミド、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(ポリ−DADMAC)、ポリアクリルアミド(PAAE)、ポリビニルアミン(PVAm)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレンイミン(PEI)、又はこれらのポリマーの2種以上の任意の混合物から選択される。
【0043】
合成ポリマーの平均分子量は、100,000〜20,000,000g/mol、典型的には300,000〜8,000,000g/mol、より典型的には300,000〜1,500,000g/molの範囲内であることができる。そのポリマーの分子量は、異種成分間の効率的な吸着及び水素結合を確実にするのに十分高いこと、しかし、ポリマーが系内で凝集を引き起こすほど高くはないことが好ましい。
【0044】
この出願では、「平均分子量」の値を用いて、ポリマー鎖長の大きさを説明する。平均分子量の値は、既知の方法で1N NaCl中、25℃で測定した固有粘度の結果から計算する。選択した毛細管は、測定すべき粘度値に適したものであり、この出願での測定では、定数K=0.005228のウベローデ毛細管粘度計を使用した。次いで、平均分子量は、固有粘度の結果から、Mark−Houwink式[D]=K・M
aを用いて既知の方法で計算する。上記式中、[D]は固有粘度、Mは分子量(g/mol)であり、K及びaは、Polymer Handbook(第4版、第2巻、編集者:J.Brandrup、E.H.Immergut及びE.A.Grulke、John Wiley & Sons,Inc.、米国、1999)に記載のパラメータである。固有粘度によって決定した分子量が1,000,000未満であった場合、PEO基準ポリマー較正のGPH 25 HPCL−SEC分析を使用した。
【0045】
合成ポリマーは、0.5〜2meq/g、好ましくは0.3〜1.9meq/g、より好ましくは0.4〜1.35meq/gの電荷密度を有するカチオン性合成ポリマーである。
【0046】
好ましい一実施形態によれば、合成ポリマーはカチオン性合成ポリマーである。特に、合成ポリマーは、メタクリルアミド又はアクリルアミドと少なくとも1種のカチオン性モノマーとのコポリマーであってもよい。カチオン性モノマーは、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、3−(メタクリルアミド)プロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3−(アクリロイルアミド)プロピルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド及びジメチルアミノプロピルメタクリルアミドからなる群から選択することができる。
【0047】
紙力剤系は、該系の乾燥固形分含量から計算して、少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも60質量%、より好ましくは少なくとも70質量%、さらにより好ましくは少なくとも80質量%のミクロフィブリル化柔組織セルロース材料を含むことができる。好ましい一実施形態によれば、紙力剤系は、乾燥固形分含量から計算して、50〜99.9質量%、好ましくは70〜99.9質量%、より好ましくは80〜99.5質量%、さらにより好ましくは85〜90質量%のミクロフィブリル化柔組織セルロース材料を含むことができる。一実施形態によれば、紙力剤系は、乾燥固形分含量から計算して、50〜90質量%、好ましくは60〜90質量%のミクロフィブリル化柔組織セルロース材料を含むことができる。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、紙力剤系の、少なくとも1種のカチオン性ポリマー及びミクロフィブリル化柔組織セルロース材料は、濃厚なストックに同時に添加することができる。このポリマーとセルロース材料とは、同時に、しかし別々に、又は調合済みのプレミックスとして加えることができる。好ましい実施形態によれば、紙力剤系の、少なくとも1種のカチオン性ポリマー及びミクロフィブリル化柔組織セルロース材料は、調合済みのプレミックスとして濃厚ストックに添加する。
【0049】
本発明の別の実施形態によれば、紙力剤系の、少なくとも1種のカチオン性ポリマー及びミクロフィブリル化柔組織セルロース材料は、別々に、かつ、連続して濃厚ストックに添加する。紙力剤組成物の成分を連続して濃厚ストックに添加する場合、添加物間の混合を効果的に行うことが好ましい。少なくとも1種のポリマーは、ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料の添加の前又は後に、濃厚なストックに添加してもよい。紙力剤系のミクロフィブリル化柔組織セルロース材料を、紙力剤系の少なくとも1種のポリマーの添加前に、濃厚なストックに添加することが好ましい。例えば、ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料を脱水(drainage)の60秒前に添加し、合成ポリマー又は天然ポリマーを、ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料の添加後、例えば脱水の30秒前に添加してもよい。
【0050】
紙力剤系は、2〜6質量%、好ましくは3〜5質量%の範囲の濃度(consistency)を有する濃厚ストックに添加することができる。
【0051】
紙力剤系は、ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料が、繊維ストックの乾燥固形分1トンに対して乾燥基準で、1〜100kg、好ましくは5〜70kg、より好ましくは10〜50kg、さらにより好ましくは15〜50kgの量で添加されるような量で、濃厚ストックに添加する。
【0052】
本発明の一実施形態によれば、カチオン性歩留まり(retention)ポリマーを、紙力剤系の添加後に、ストックに添加する。カチオン性歩留まりポリマーは脱水の直前に添加するのが好ましい。このカチオン性歩留まりポリマーは、4,000,000〜18,000,000Da、好ましくは4,000,000〜12,000,000Da、より好ましくは7,000,000〜10,000,000Daの平均分子量を有し、及び/又は、0.2〜2.5meq/g、好ましくは0.5〜1.5meq/g、より好ましくは0.7〜1.2meq/gの電荷密度を有するカチオン性ポリアクリルアミドであってもよい。
【0053】
セルロース繊維を含むストックは、クラフトパルプ化法、ケミサーモメカニカル(CTM)パルプ化法から得られる完成紙料を使用することによって、又はリサイクル繊維を再パルプ化することによって得ることができる。
【0054】
本発明の一実施形態によれば、紙又は板紙製品は、少なくとも、互いに貼り付いた、第1の表面層、中間層、及び第2の表面層を含み、これらの層の少なくとも1つの層が、非木材源に由来するミクロフィブリル化柔組織セルロース材料を含む。
【0055】
本発明の一実施形態によれば、国際公開第2014/029917号に記載されている多層技術を用いることにより、少なくとも、少なくとも1種のカチオン性ポリマーとミクロフィブリル化柔組織セルロース材料とを含む紙力剤系を、紙又は板紙製品の1層又は数層に加えることができる。
【0056】
実験例
本発明について、いくつかの実施形態を以下の非限定的な実施例で説明する。
【0057】
実施例1
ジャガイモパルプ又はサトウダイコンパルプをベースとするフィブリル化柔組織セルロースの製造
バッチ抽出、及び、それに続くフィブリル化:
でんぷん工場から供される濃縮ジャガイモパルプを水洗又は灰汁(ライ:lye)洗浄で精製した。ここで、ジャガイモパルプを25g/L懸濁液にし、60〜90℃に加熱した。また、別に、砂糖工場から供された乾燥含量26質量%の圧縮サトウダイコンパルプを、最初に、灰汁中で洗浄した。ここで、パルプを25乾燥g/L懸濁液にし、70〜80℃に加熱した。次いで、ジャガイモとサトウダイコンの両方について、穏やかに攪拌しながらNaOHを添加した。この間、水和したジャガイモ/サトウダイコン切断片(切り身:clippings)は、固体様の形態を失い、崩壊して暗褐色の粘稠な塊になった。120分間攪拌した後、反応物を冷却し、必要に応じて細孔径0.25mmの鋼製スクリーンを通して濾過した。灰汁洗浄した淡灰色のセルロース性ジャガイモ塊をさらに大量の水で洗浄した。得た材料を水中に分散させ、高速グラインダー又はホモジナイザーを用いてpH8〜10でフィブリル化した。種々の試料について、原料、抽出パラメータ及びフィブリル化方法は下記のとおりであった。
【0058】
基準MFC:均質化法によって製造した木材ベースのMFC。これを基準として使用した。また、WO2015/166141に従って製造した。
【0059】
MFC 35:試料は中性抽出の乾燥ジャガイモであった。すなわち、pH7一定で抽出した。生成物を大量の水で洗浄した後、Atrex(登録商標)を用い、試料を1800rpmで4回通過させてフィブリル化した。試料は殺生物剤4ppmを含有する。
【0060】
MFC 37:試料は塩基抽出した乾燥ジャガイモであった。すなわち、NaOH濃度0.05M一定で抽出した。生成物を大量の水で洗浄した後、Atrex(登録商標)を用い、試料を1800rpmで4回通過させてフィブリル化した。試料は殺生物剤4ppmを含有する。
【0061】
MFC 38:試料は塩基抽出した乾燥ジャガイモであった。すなわち、NaOH濃度0.05M一定で抽出した。生成物を大量の水で洗浄した後、Atrex(登録商標)を用い、試料を1800rpmで4回通過させてフィブリル化した。試料は殺生物剤4ppmを含有する。
【0062】
MFC 41:試料は、0.05M NaOH(4%固形分)で抽出した、塩基抽出したペレット化サトウダイコンであった。Atrex(登録商標)を用い、試料を1800rpmで4回通過させてフィブリル化した。この試料は、殺生物剤として200ppmのFennocideBZ26を含有する。固形分含量3.7%。
【0063】
MFC 42:試料は、0.05M NaOH(4%固形分)で抽出した、塩基抽出したジャガイモ繊維であった。Atrex(登録商標)を用い、試料を1800rpmで4回通過させてフィブリル化した。この試料は、殺生物剤として200ppmのFennocideBZ26を含有する。固形分含量3.4%。
【0064】
連続的向流抽出、及び、それに続くフィブリル化:
MFC 43:試料は、向流反応器を用いて抽出した、塩基抽出の新鮮なサトウダイコンの切断片であった。受け入れたままの切断片を加えることで、抽出を行った(24%)。この試料の抽出は、0.3M NaOHの定常流を用いて行った。次いで、熱水で、再度、向流反応器を用いて試料を洗浄した。熱水洗浄後、試料のpHは10であり、固形分含量は約10%であった。Atrex(登録商標)により、試料を1800rpmで4回通過させてフィブリル化した。フィブリル化(4回パス)後、固形分含量は約20%であった。この試料は、殺生物剤として200ppmのFennocideBZ26を含有する。固形分含量20.5%。
【0065】
MFC 46:試料は、向流反応器を用いて抽出した、塩基抽出の新鮮なサトウダイコンの切断片であった。受け入れたままの切断片を加えることで、抽出を行った(24%)。この試料の抽出は、0.5M NaOHの定常流を用いて行った。次いで、熱水で、再度、向流反応器を用いて試料を洗浄した。熱水洗浄後、試料のpHは10であり、固形分含量は約10%であった。Atrex(登録商標)に、試料を1800rpmで4回通過させてフィブリル化した。フィブリル化(4回パス)後、固形分含量は約20%であった。この試料は、殺生物剤として200ppmのFennocideBZ26を含有する。固形分含量19.3%。
【0066】
原料データ、抽出パラメータ、及びフィブリル化方法を表1に要約する。
【0067】
生成したミクロフィブリル化柔組織セルロース材料について、濁度及び粘度測定値を用いて特性評価を行った。その特性値を表2に要約する。
【0068】
表1 原料データ、抽出パラメータ、及びフィブリル化方法の要約
【表1】
【0069】
表2 濁度及び粘度の結果の要約
【表2】
【0070】
典型的製品の寸法を評価するために透過型電子顕微鏡を使用した。ジャガイモパルプをベースとするミクロフィブリル化柔組織セルロース材料を
図1に示し、サトウダイコンパルプをベースとするミクロフィブリル化柔組織セルロース材料を
図2に示す。
【0071】
実施例2
特性評価方法
ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料の粘度は、Vane geometry(V−72、直径21.67mm、長さ43.38mm)を備えたブルックフィールドDV3T粘度計(Brookfield Engineering Laboratories、Middleboro、米国)により測定した。この材料を1.0質量%の濃度まで水で希釈し、10分間攪拌し、その後、真空中で脱気して混入気泡を除去した。粘度測定に先立って、温度を20℃に調整した。せん断速度50rpm及び100rpmで試料の粘度を測定した。
【0072】
ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料の希釈した水性分散液の濁度をHACH P2100濁度計で測定した。この材料を0.1質量%の濃度まで水で希釈し、10分間攪拌し、その後、真空中で脱気して混入気泡を除去した。濁度測定に先立って、温度を20℃に調整した。その測定では、試料の粒子から散乱される光の放射を検出した。
【0073】
実施例3
OCC及びクラフトパルプ用の紙力組成物
ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料の3種の異なる試料について、段ボール古紙OCC(Old Corrugated Cardboard)及びクラフトパルプを有する紙力助剤(strength aid)合成ポリマーをも含む紙力組成物の成分として試験を行った。ダイナミック(Dynamic)Kothenシートフォーマー及びラピッド(Rapid)Kothenシートフォーマーの両方を使用した。
【0074】
表3 試験に使用した紙力及び歩留まりポリマー
【表3】
【0075】
ダイナミックシートフォーマー(dynamic sheet former)試験は以下のように行った。
ワイヤー速度1400m/sのダイナミックシートフォーマー(フランス、Techpap SAS社により供給のA.D.F)を用いて、約100g/m
2の坪量の紙又は板紙を製造した。シートの寸法は25×92cmであり、シートの乾燥度は10〜15%であった。ミキシングチェスト内でパルプ懸濁液を形成し、ミクロフィブリル化セルロース材料を添加した。懸濁液を30秒間混合した後、他の化学薬剤を10秒間隔で添加した。最後に、歩留まり用ポリマー、すなわちChem4を400g/tonの用量で、Chem5を320g/tonの用量で、シート製造開始の20秒前及び10秒前に添加した。得られたシートを2バールのロールプレス上に寝かせ(すなわち、クーチし)、さらにプレートプレスにより10バールで5分間吸取り紙の間でプレスした。その後、シートをSTFI乾燥機中で140℃、9分間拘束し乾燥した。シートを、ISO 187:1990に従って気候室に保持し調整した。
【0076】
シートの諸特性を表4に記載の規格に従って測定した。
【0077】
表4 試験したシートの諸特性
【表4】
【0078】
得られた結果を表5及び6に要約する。Chem1の用量はkg/tonで示す。
【0079】
表5 OCCパルプを含む完成紙料の結果
【表5】
【0080】
表6 クラフトパルプを含む完成紙料の結果
【表6】
【0081】
ラピッドKothenシート形成試験は以下のように行った。
規格ISO5269/2に従いラピッドKothenシートフォーマーで、手すきシートを形成した。パルプ懸濁液を一定の攪拌速度で攪拌した。この懸濁液にミクロフィブリル化柔組織セルロース材料(用量20kg/t)、及び合成カチオン性ポリマーを添加した。完成紙料の攪拌をプロペラミキサーを用い1000rpmで行った。1000mbarの圧力下、92℃の温度で、5分間真空乾燥機中でシートすべてを乾燥させた。その乾燥後、シートを23℃相対湿度50%に24時間保持し予め調整した。シートの坪量は、空調した状態で100g/m
2であった。歩留まりを一定に維持するために、坪量を歩留まりポリマーの用量(クラフトパルプについては100g/t、OCCについては300g/t)により調節した。
【0083】
表7 OCC完成紙料に関するラピッドKothenシート試験結果
【表7】
【0084】
表8 クラフト完成紙料に関するラピッドKothenシート試験結果
【表8】
【0085】
実施例4
ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料を含む紙力組成物の性能
ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料を含む紙力組成物の性能を、木材ベースのミクロフィブリル化セルロースを含む基準紙力組成物と比較した。上記のように、また、段ボール古紙(OCC)完成紙料を使用して、手すきシートをラピッドKothen手順に従って形成した。紙力組成物中のカチオン性ポリマー(Chem1、Chem2)の量は3kg/t(パルプ)であった。歩留まりポリマー(Chem3)の量は300g/t(パルプ)であった。
【0088】
これらの結果から、ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料を含む本発明に係る紙力組成物は、基準物と比較して、特にZ−強さ及び破裂強さ値の点で、より高い増大をもたらすものであることが分かる。
【0089】
実施例5
ミクロフィブリル化柔組織セルロース材料を含む紙力組成物の性能
カチオン性合成ポリマーとミクロフィブリル化柔組織セルロース材料とを含む紙力組成物の性能を、乾燥リサイクル繊維完成紙料を使用してパイロット抄紙機で試験した。紙力系は、20kg/ton(乾燥パルプ)の量で添加したミクロフィブリル化柔組織セルロースと、3kg/ton(乾燥パルプ)の量で加えた上記定義のカチオン性ポリマーChem2とを含んでいた。
【0090】
試験に使用したストックは次のように調製した。すなわち、約75kgの乾燥紙を現地の水道水3m
3(温度8〜10℃)に加えてスラッシュ化(slush)した。
【0091】
目標とする白水条件は、導電率:8000mS/cm、カルシウムレベル800ppmCa
2+、電荷レベル:1500meq/lであった。
【0092】
プロピオン酸カルシウム(Caldic、Espoo、フィンランド)、Na
2SO
4(Algol、Espoo、フィンランド)及びアニオン性カルボキシメチルセルロースStaflo Exlo(Akzo Nobel、Gothenburg、スエーデン)を添加することにより、ストック中のアニオントラッシュレベルを調整した。これらの添加物は次のようにパルプに加えた。すなわち、最初にプロピオン酸カルシウム3.72g/lを添加して導電率が3500mS/cmに達した後、4.67g/lのNa
2SO
4及び3.5mg/lのカルボキシメチルセルロースを、この順で、添加した。
【0093】
調製した紙ストックを混合し、ポンプ輸送し、Esser−Wysch 13Aリファイナー(4.4kWh/t)内で、2.25質量%の供給コンシステンシーで、軽度なリファイニング(デフレーキング(deflaking)工程に類似)に供した。
【0094】
このストックをパイロット抄紙機に供給し、白水でヘッドボックス・コンシステンシーまで希釈した。白水の容量は、以下のように、パルプバッチ(pulped batch)当たり約8.5m
3であった。すなわち、パルパー2m
3;4つの混合チェスト5m
3;白水循環約1.5m
3であった。製造したストックは、4つの真空箱、1つの真空ロール及び2つのニップ、50MPa及び70MPa、平均効果(average effect)120kWの11個の乾燥シリンダーを生産速度約90kg/hで通過させて、ワイヤー上でウェブに形成した(速度30m/min)。
【0096】
表10 紙力増大(%で測定)
【表10】
【0097】
特定の実施形態及び実施例を上記で詳細に説明したが、当業者は、その教示から逸脱することなく、実施形態及び実施例において多くの変更が可能であることを明確に理解するであろう。このような改変は、全て、本発明の特許請求の範囲に包含されるものであることを意図している。