(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ゴム基材は天然ゴム、クロロプレンゴム、天然ゴムとクロロプレンゴムの混合材料の中の選択された少なくとも1種からなる、請求項1に記載のワイパーブレードラバー。
前記ゴム基材のコーティング層と接する部分にハロゲン化処理、紫外線処理、電子線処理、プラズマ処理、コロナ放電処理のいずれかもしくは複数の処理が施されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のワイパーブレードラバー。
前記ゴム基材を被覆する部分(A)が、粒径3μm〜5μmの鱗片状グラファイトからなる固体潤滑剤を含み、固体潤滑剤をワイパーブレードラバーに付着させるためのバインダーが1MPa以上の弾性率(0.5%モジュラス)及び1%以上の破断伸びを有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のワイパーブレードラバー。
【背景技術】
【0002】
通常、ワイパーブレードラバーは、はじめに2つのワイパーブレードラバー基材の先端部同士を接続した所謂タンデム形状で金型成型される。次に、このワイパーブレードラバー基材のリップ部の両面にワイパーブレードラバー用コーティング剤を塗布し、乾燥又は硬化して、コーティング層を形成する。その後、リップ部の中央で切断し、リップ部の両面にコーティング層を有し、リップ部の端面にゴム基材が露出したワイパーブレードラバーを形成する。
【0003】
コーティング剤を塗布する方法としては、スプレーコーティング、ナイフコーティング、ローラーコート、ディッピング等、公知の方法を適用することができる。コーティングは通常、タンデム形状のワイパーブレードラバー基材のリップ部に、乾燥又は硬化後のコーティング層の膜厚が所定の厚みになるように一面に塗布することにより行われる。
【0004】
ワイパーブレードラバー用途のゴム基材を構成するゴムとしては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エチレンプロピレンゴム等の合成ゴム、樹脂エラストマー、又はそれらのブレンドを母材とする弾性材料が使用されている。
【0005】
ところで、ゴム基材には通常、可塑剤、安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、カーボンブラックのような充填剤、補強剤、着色剤、架橋剤(加硫剤及び加硫促進剤) 、臭気マスキング剤、軟化剤、老化防止剤等の添加剤が配合されている。
ワイパーブレードラバーは、車両、航空機、船舶等の輸送機器、建設機械等の産業機械機器のワイパーの摺動部に装着され、長期間屋外環境にさらされるものである。その結果、添加剤がゴム基材の表面に浮き出るブリードアウトという現象の発生を免れない。ゴム基材の表面が粉をふいたようになる現象を特にブルームと呼ぶ場合があるが、このような現象が発生することで、ワイパーブレードラバーに施したコーティング層にふくれ(ブリスター)が生じるが、このようなワイパーブレードの品質の劣化や美観の低下の問題に対しては著効のある解決策が見出されていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ガラス面への密着性が高く、摩擦性能及び払拭性能に優れ、かつ、ゴム基材からのブリードアウトやブルームによるコーティング層のふくれ(ブリスター)が無いワイパーブレードラバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下を包含する。
[1] ゴム基材にスプレー塗布でコーティング層を設けてリップ部としたワイパーブレードラバーであって、
コーティング層は、ゴム基材を被覆する部分(A)と、ゴム基材を被覆しない部分(B)とからなり、
ゴム基材を被覆しない部分(B)は、コーティング層の全面積にわたって均一に分散して存在する直径10μm〜40μmの複数の孔であり、
ゴム基材を被覆する部分(A)の総面積とゴム基材を被覆しない部分(B)の総面積との比が40:60〜60:40となっていることを特徴とするワイパーブレードラバー。
[2] 前記ゴム基材は天然ゴム、クロロプレンゴム、天然ゴムとクロロプレンゴムの混合材料の中の選択された少なくとも1種からなる、[1]に記載のワイパーブレードラバー。
[3] 前記ゴム基材のコーティング層と接する部分にハロゲン化処理、紫外線処理、電子線処理、プラズマ処理、コロナ放電処理のいずれかもしくは複数の処理が施されていることを特徴とする、[1]又は[2]に記載のワイパーブレードラバー。
[4] 前記ゴム基材を被覆する部分(A)が、粒径3μm〜5μmの鱗片状グラファイトからなる固体潤滑剤を含み、固体潤滑剤をワイパーブレードラバーに付着させるためのバインダーが1MPa以上の弾性率(0.5%モジュラス)及び1%以上の破断伸びを有する、[1]乃至[3]のいずれか一項に記載のワイパーブレードラバー。
[5] 前記ゴム基材を被覆する部分(A)の膜厚は2μm〜10μmであることを特徴とする、[1]乃至[4]のいずれか一項に記載のワイパーブレードラバー。
[6] 前記コーティング層は、前記バインダーに対する前記固体潤滑剤の体積比が0.25〜1であることを特徴とする、[4]に記載のワイパーブレードラバー。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コーティング層に空隙が設けられているので、ゴム基材の表面にブリードアウトしてくる添加剤を徐放することができるため、コーティング層のふくれ(ブリスター)発生を抑制できる。また、空隙を適切な大きさと分布で配置することにより、他の諸物性に悪影響を与えないようにすることができた。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.ワイパーブレードラバー
初めに、本発明に係るワイパーブレードラバーについて説明する。
図1は、本発明のワイパーブレードラバーの一実施態様を示す部分斜視図である。
図1において、11はワイパーブレードラバーであり、このワイパーブレードラバー11は、ガラス面に接触し摺動するリップ摺動部を有するリップ部4と、図示せぬワイパーブレード保持具に図示せぬバーテブラとともに組み付けられ保持される保持部5と、上記リップ部4と上記保持部5を接続するネック部6からなっている。12は表面処理部であり、この表面処理部12はワイパーブレードラバー11のリップ部4のリップ側面部4aに形成されている。そして、上記ワイパーブレードラバー11をワイパー装置に組み付けることによって、好適なワイパー装置とすることが出来る。
【0012】
2.素材
次に、ワイパーブレードラバーを構成する各種素材について説明する。
ワイパーブレードラバーは典型的には、
図2のように、2つのワイパーブレードラバー基材1の先端部同士が当接しているタンデム形状で成形される。このワイパーブレードラバー基材1のくびれ部にあるリップ部2の両面に、所定のポリマーと固体潤滑剤とを含むコーティング剤をスプレー塗布し、硬化又は乾燥して、固体潤滑剤を分散したコーティング層3を形成する。その後、リップ部2の中央(
図2の符号4で図示する切断部)で切断し、リップ部2の両面に層3を有し、リップ部の端面にゴム基材が露出したワイパーブレードラバーを形成する。
【0013】
2.1.ゴム基材
ワイパーブレードラバー基材を構成するゴムとしては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エチレンプロピレンゴム及びこれらの混合物などのゴムが挙げられる。好ましくは、天然ゴム、クロロプレンゴム、又はこれらの混合物である。
ゴム基材の形状に特に制限があるわけではないが、上記したようにタンデム形状の断面を有することが好ましい。これによって、リップ部先端をきれいに切断することが容易になり、また、リップ部に固体潤滑剤を分散したコーティング層が設けられたワイパーブレードラバーを経済的に製造することが可能になる。
好ましくは、ワイパーブレードラバーのリップ部となるゴム基材の部分(ゴム基材がコーティング層と接する部分)には予めハロゲン処理、紫外線処理、電子線処理、プラズマ処理、コロナ放電処理のいずれかもしくは複数の処理などの従来公知の表面処理が施されている。例えばハロゲン化処理の一種である塩素化処理が挙げられる。この塩素処理は少なくともワイパーブレードゴムのリップ部を塩素系の溶剤に浸漬させて表面を硬化させるものである。
同時に、この塩素化処理は、表面粗面化も可能であり、これによりゴム基材とコーティング層との密着性を向上させることができる。
【0014】
2.2.固体潤滑剤
本発明における固体潤滑剤は鱗片状グラファイトからなる。更に従来公知の固体潤滑剤を併用することもできる。例えば、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。
鱗片状グラファイトからなる固体潤滑剤の粒子径が大きいと表面粗度が大きくなったり、脱落時の影響が大きくなったりして、得られるワイパーブレードラバーの拭き性能が不良になることがある。鱗片状グラファイトからなる固体潤滑剤の好ましい粒子径としては、レーザー回折散乱法により計測した体積基準の平均粒子径(D
50)が粒径3μm〜5μmである。レーザー回折散乱法による測定には、例えば、マイクロトラック粒度分布測定装置MT3300(日機装社製)等を使用することができる。固体状潤滑剤が球形の場合は、平均粒子径は直径を意味するが、鱗片状グラファイトの場合は、平均粒子径は長径を意味する。
【0015】
2.3.コーティング層
本発明においては、ゴム基材にスプレー塗布でコーティング層を設け、ワイパーブレードラバーのリップ部とする。コーティング層は、ゴム基材を被覆する部分(A)と、ゴム基材を被覆しない部分(B)とからなる。
ゴム基材を被覆する部分(A)の好ましい膜厚は2μm〜10μmである。
ゴム基材を被覆しない部分(B)は、コーティング層の全面積にわたって均一に分散して存在する直径10μm〜40μmの複数の孔である。ここで、均一に分散とは、顕著な偏り無く、コーティング層全体に万遍なく孔が形成されている状態を言う(
図4(C))。また、ここでいう孔は、必ずしもきれいな円形をしている必要はなく、孔のいわゆる内壁部分が、グラファイトの片が飛び出したり、ひっこんだりしているいわゆる凹凸のある面となっていても構わない。このような場合の直径としては、グラファイトの片を含め内壁部分の長径を採用する。ゴム基材からブリードアウトしてくる添加剤を徐放するため、孔はコーティング層がゴム基材と接触している面からコーティング層の外側表面まで貫通していることが好ましい。
ゴム基材を被覆する部分(A)の総面積とゴム基材を被覆しない部分(B)の総面積との比は40:60〜60:40とする。
また、コーティング層は、バインダーに対する固体潤滑剤の体積比(以下、P/B比と称することがある)を0.25〜1とすることが好ましい。この比が0.25未満であると、コーティング剤を用いて得られるリップ部にコーティング層が形成されたワイパーブレードラバーのガラスに対する静止摩擦係数が大きくなり、びびりが発生しやすくなることがある。逆にこの比が1.0を超えると、コーティング剤を用いて得られるリップ部にコーティング層の形成されたワイパーブレードラバーの塗膜表面が粉っぽくなり、ガラス表面に固体潤滑剤が付着することがある。
【0016】
3.ワイパーブレードラバーの製造方法
本発明に係るワイパーブレードラバーは、ゴム基材にコーティング剤をスプレー塗布することにより、コーティング層を形成することにより製造することができる。
【0017】
3.1.コーティング剤
コーティング剤は、バインダーと固体潤滑剤とを含むものであり、通常はこれらのバインダーと固体潤滑剤からなる固形分を溶剤に溶かして使用するものである。
【0018】
3.1.1.バインダー
バインダーとしては、乾燥または硬化後の弾性率(0.5%モジュラス)が1MPa以上であり、破断伸びが1%以上であるものを選択することが好ましい。弾性率が1MPa未満であると、得られるワイパーブレードラバーの摩擦係数を充分に小さくすることができないことがある。一方、破断伸びが1%未満であると、コーティング剤をゴム基材に塗布し、乾燥又は硬化した後、リップ部先端を切断するときに塗膜割れを生じて塗膜剥離が発生することがある。
バインダーの具体例としては、下記種々のバインダーa〜gを挙げることができる。
a)ポリオールポリエーテル系ウレタン/芳香族イソシアネート(「ニッポラン3016」(商標;日本ポリウレタン工業(株)製)100質量部/「コロネートL」(商標;日本ポリウレタン工業(株)製;硬化剤)5質量部)
b)テトラフロロエチレン、ヘキサフロロプロピレン及びビニリデンフロライドの共重合体(住友スリーエム(株)製;商品名「THV200P」)
c)シリコン変性ウレタンポリオール/イソホロンジイソシアネート(「タケラックTE−520」(商標;武田薬品工業(株)製)100質量部/「タケネートD−140N」(商標;武田薬品工業(株)製;硬化剤)33質量部)
d)BPA型液状エポキシ/芳香族ポリアミド(「アデカレジンEP−4100」(商標;旭電化工業(株)製)100質量部/「アデカハードナーEH−540」(商標;旭電化工業(株)製;硬化剤)60質量部)
e)ポリアミドイミド「HPC−5000−37」(商標;日立化成工業(株)製)
f)ポリオールポリエーテル系ウレタン/ブロックイソシアネート(「ニッポラン179」(商標;日本ポリウレタン工業(株)製)100質量部/「コロネート2513」(商標;日本ポリウレタン工業(株)製)124質量部;硬化剤)
g)アクリル(「アクリディック56−1155」(商標;大日本インキ化学工業(株)製))
これらのバインダーa〜gの各々を厚さ30〜150μm、幅10mmの短冊状のサンプルに加工し、その短冊状サンプルを引張り速度10mm/分で引張って応力−変位(S−S)曲線を測定した。そのときの0.5%伸張時のモジュラスを、これらのバインダーを用いて得られたワイパーブレードラバーのコーティング層の静摩擦係数と併せて表1に示す。なお、静摩擦係数の測定方法は後記する。
【0020】
バインダーの乾燥体又は硬化物の0.5%モジュラスが大きくなる程、得られるワイパーブレードラバーのコーティング層の静摩擦係数は小さくなり、概ね1MPa以上で、びびりが発生し難いことが確認されている0.65以下になる。
次に、上記各バインダーについてその乾燥体又は硬化物の破断伸び(%)を測定し、これらを用いたコーティング剤を塗布し乾燥又は硬化させた後、リップ部先端を切断するときの塗膜割れ(これから塗膜剥離が発生してしまう)との関係を調べた。その結果を表2に示す。この表から破断伸びが概ね0.8%以下となると膜厚やカット刃の影響により、塗膜割れが発生することがあることが分かる。
【0022】
3.1.2.固体潤滑剤
固体潤滑剤については上述のとおりである。
【0023】
3.1.3.溶剤
溶剤は、コーティング剤をスプレー塗布した際に、均一なコーティング層を形成できるような乾燥速度(揮発性)が得られるものであれば特に制限なく、いかなる物質でも良い。例えば、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類、トルエン、キシレン、エチルベンゼンのような芳香族炭化水素類、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドのようなアミド類、テトラヒドロフランのようなエーテル類、n−ブタノールのようなアルコール類、セロソルブアセテート等から選択される溶剤又はこれらの混合物を用いることができる。好ましくは、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジメチルホルムアミドから選択される1種あるいは複数種の溶剤を混合したものである。
【0024】
3.1.4.コーティング剤の調製
コーティング剤は例えば以下のようにして調製することができる。すなわち、所定の有機溶剤を容器に入れ、攪拌機を用いてバインダーと混合溶解する。これに鱗片状グラファイトのような固体潤滑剤を少量ずつ加え、均一に大きな粒子がなくなるまで攪拌してコーティング剤を得る。硬化剤を用いる場合は、ワイパーブレードへ塗布する直前に、コーティング剤に所定量の硬化剤を加えて、よく混合して調製する。
固形分に対する溶剤の使用量は特に限定されるものではないが、通常は固形分100質量部に対して、溶剤150〜1,200質量部の範囲が選択される。
また通常、コーティング剤は均一なスプレー塗布が可能な範囲の動粘度に調整する。好ましくは30cP以下、より好ましくは23cP以下とする。40cP以上とした場合、緻密なスプレー塗布ができずに、あたかもボタン雪のようになってしまうことがある。
【0025】
3.2.スプレー塗布
上記のように調製されたコーティング剤を、ワイパーブレードラバー基材のくびれ部にあるリップ部の両面にスプレー塗布し、硬化又は乾燥してコーティング層を形成する。このとき、ゴム基材を被覆する部分(A)と、ゴム基材を被覆しない部分(B)とからなるコーティング層を形成するようにスプレー塗布を行う。更に、ゴム基材を被覆する部分(A)の膜厚が2μm〜10μmとなるようにスプレー塗布を行うことが好ましい。2μm未満であると、得られるワイパーブレードラバーのガラスに対する摩擦係数が大きくて好ましくない場合がある。逆に10μmを超えると拭きが不良となる場合がある。
スプレー塗布は通常スプレーガンを使用して行われるが、そのノズルの出口径や圧力には特に制限はない。一般な目安としてはノズルの出口径0.1〜1.0mm程度、圧力0.1〜10バール程度である。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例及び比較例により詳細に説明するが、本発明は以下の実施例及び比較例に限定されるものではない。特に断らない限り、実施例及び比較例中、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を示す。
【0027】
4.各種物性の測定方法
各種物性は以下のように測定した。
【0028】
4.1.拭きの官能評価
拭き性能に関する官能評価は、コーティング剤により成形されたコーティング層を設けたワイパーブレードラバーを普通自動車のワイパー装置に取り付け、当該普通自動車のウインドシールドガラス面に毎分約100〜500mlの水を払拭面全体に万遍なく散布した状態で、ワイパー装置にて払拭動作を行い、拭き下げ時に残ったスジの状態をウインドシールドガラス面の室内側から観察し、後述する評価点の基準に従い、拭き評価を行った。なお、払拭試験前に、ウインドシールドガラス面を清掃して、ワックスやコーティング剤を除去したガラス面を通常ガラス面とし、市販の自動車ウインドシールドガラス用撥水剤(タクティー社製 ドライブジョイ(Drive Joy(登録商標))業務用ガラスコートセット、以下「ドライブジョイ撥水ガラスコート」と称する場合がある)を当該撥水剤の説明書に従って撥水剤被膜をコーティングした状態のガラス面を撥水ガラス面とした。
図3は、官能評価の点数の基準を模式的に表した図である。
評価点:5 スジが全く発生しない。
評価点:4 瞬間的にスジが発生し直ぐに消える。
評価点:3 部分的にスジが発生し直ぐに消える。
評価点:2 部分的にスジが発生し直ぐに消えない。
評価点:1 全面にスジが発生し直ぐに消えない。
【0029】
4.2.膜厚測定方法
ワイパーブレードラバーのリップ部に塗装するときと同じ条件で、厚み50±1μmのSUS板にコーティング剤を塗装する。
塗装前及び塗装後の厚みをマイクロゲージで測定し、その差を膜厚とする。
【0030】
4.3.コーティング層の塗装面積
塩素処理したゴム基材にコーティング剤を塗装する。塗装面をCCDカメラ(倍率200倍、視野領域横1.5mm×縦1.1mm)で撮影し、撮影した画像を、コーティング層は白、ゴム基材素地は黒、のように二値化処理することで、下記計算式に従って塗装面積をパーセンテージで算出する。なお、塗装面積の測定誤差は±10%である。
計算式:白面積/(白面積+黒面積)×100
実際のコーティング層表面の顕微鏡写真((倍率200倍、視野領域横1.5mm×縦1.1mm)を
図4に示す。(a)、(b)及び(c)はそれぞれ後記する比較例1、比較例2及び実施例1で得られたものであり、塗装面積はそれぞれ、100%、70%及び50%である。
【0031】
4.4.びびり性能
実車を模した、カットボディベンチを準備する。散水しながらワイパーを作動する。モーターへの電圧を1Vずつ下げ、びびり振動が発生しない最低電圧を記録する。
【0032】
4.5.静止摩擦係数
静止摩擦係数は、長さ10cmのワイパーブレードラバーサンプルをガラス面に荷重P=1.67N(170gf)で押圧し、ガラス面とワイパーブレードラバーサンプルとの相対速度を0〜2m/sの範囲で変化させ、サンプルがガラス面を擦る荷重Fを歪みゲージで測定した。測定時の周囲温度は常温である。上記測定値より、静止摩擦係数μ=P/Fで算出した。
【0033】
4.6.耐久試験
実車を模した、カットボディベンチを準備する。
ワイパーを10万回作動させたときの払拭性を、上記拭きの官能評価と同様に行った。
【0034】
4.7.コーティング層ふくれ(ブリスター)
ワイパーブレードラバーを屋外に2週間放置し、リップ部のコーティング層のふくれの有無を目視で確認する。
【0035】
(実施例1)
図2に示す、2本のワイパーブレードラバー(材料:天然ゴム/クロロプレンのブレンド)がくっついたタンデム形状体を成形加工した。このタンデム形状体を処理液に浸漬して表面を塩素化処理し、煮沸洗浄した。次いで、スプレーガンで片側のリップ部を中心にコーティング剤を塗布した。このワイパーブレードラバーを反転させて反対側にも塗布した。その後、焼成炉で焼成した。リップ部中央でカットしてワイパーブレードラバーを2本に分離した。コーティング層の塗装面積は50%(ゴム露出面積50%)、膜厚は6μm、被塗布部分の直径は25μmであった。
上記コーティング剤は、固体潤滑剤として鱗片状グラファイト(SKWイーストアジア(株)製;商品名「UF−2」)8.0質量%を、バインダーとしてポリオールポリエーテル系ウレタン/ブロックイソシアネート(いずれも日本ポリウレタン工業(株)製;商品名「ニッポラン179」100質量部と商品名「コロネート2513」15質量部からなる)11.0質量%を用いてP/B比(前記バインダーに対する前記固体潤滑剤の体積比)を0.5とし、これらとメチルエチルケトン56.0質量%、キシレン15.0質量%、N,N−ジメチルホルムアミド10.0質量%を溶剤として容器に入れて、均一になるまで攪拌して調製した。バインダーの弾性率(0.5%モジュラス)は5MPa、破断伸びは3.1%であった。
【0036】
(実施例2、3)
ゴム基材をそれぞれ天然ゴム、クロロプレンゴムに変更した以外は実施例1と同様の操作を繰り返し、ワイパーブレードラバーを得た。
【0037】
(実施例4)
鱗片状グラファイト粒子径を5μmに変更した以外は実施例1と同様の操作を繰り返し、ワイパーブレードラバーを得た。
【0038】
(実施例5、6)
P/B比をそれぞれ0.25、1に変更した以外は実施例1と同様の操作を繰り返し、ワイパーブレードラバーを得た。
【0039】
(実施例7、8)
コーティング層の膜厚をそれぞれ2μm、10μmに変更した以外は実施例1と同様の操作を繰り返し、ワイパーブレードラバーを得た。
【0040】
(実施例9、10)
被塗布部分の直径をそれぞれ40μm、10μmに変更した以外は実施例1と同様の操作を繰り返し、ワイパーブレードラバーを得た。
【0041】
(比較例1、2)
コーティング層の塗装面積をそれぞれ100%(ゴム露出面積0%)、70%(ゴム露出面積30%)に変更した以外は実施例1と同様の操作を繰り返し、ワイパーブレードラバーを得た。
【0042】
(比較例3)
バインダー弾性率を0.5MPaに変更した以外は実施例1と同様の操作を繰り返し、ワイパーブレードラバーを得た。
【0043】
結果を表3に示す。
【0044】
【表3】