(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6937313
(24)【登録日】2021年9月1日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】心血管処置のための血流低減器
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20210909BHJP
【FI】
A61B17/12
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-543467(P2018-543467)
(86)(22)【出願日】2016年9月27日
(65)【公表番号】特表2018-535810(P2018-535810A)
(43)【公表日】2018年12月6日
(86)【国際出願番号】IB2016055763
(87)【国際公開番号】WO2017081561
(87)【国際公開日】20170518
【審査請求日】2019年9月24日
(31)【優先権主張番号】62/252,599
(32)【優先日】2015年11月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518158835
【氏名又は名称】リヴァンプ メディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】タル, マイケル ジー
(72)【発明者】
【氏名】アヴィトブ, リフ
(72)【発明者】
【氏名】ベナリー, ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ショハット, ヤエル
【審査官】
山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2004−533290(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02025360(EP,A2)
【文献】
米国特許第08876850(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0064059(US,A1)
【文献】
特表2010−522601(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0114022(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/12
A61B 17/00
A61F 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体腔の中に設置されるように構成された血流低減アセンブリ(10)であって、
カテーテルシャフト(12)と、
前記カテーテルシャフト(12)と共に組み立てられる拡張可能閉塞部材(14)であって、前記拡張可能閉塞部材(14)は、相互接続支柱(16)を備え、前記支柱(16)のうちの少なくともいくつかの遠位端は、突出部(20)を有し、前記突出部(20)は、前記突出部(20)が前記支柱(16)の前記少なくともいくつかのまわりで枢動するように、ヒンジ部材(22)によって前記遠位端に接続される、拡張可能閉塞部材(14)と、
前記突出部(20)に接続される1つまたはそれを上回る接続リンク(26)であって、前記1つまたはそれを上回る接続リンク(26)は、ハンドル(28)まで延在し、前記ハンドル(28)の操作は、前記1つまたはそれを上回る接続リンク(26)および前記突出部(20)を移動させ、前記突出部(20)の閉塞能力を改変し、前記1つまたはそれを上回る接続リンク(26)を移動させることは、前記1つまたはそれを上回る接続リンク(26)を引動することを含み、これにより、前記突出部(20)を半径方向内向きに折畳し、前記突出部(20)の下流の血流を低減する、接続リンク(26)と、
前記突出部(20)を含めて前記拡張可能閉塞部材(14)を少なくとも部分的に被覆するように構成される被覆材(24)と
を備え、血流は、オリフィス(34)を通って流動することによって前記アセンブリ(10)から退出し、前記オリフィス(34)は、前記突出部(20)が内向きに完全には折畳されない場合の中心を通る、前記被覆材(24)内に開放されたままにされる空間を通して形成され、
前記オリフィス(34)の直径は、前記拡張可能閉塞部材(14)の直径および前記患者の前記体腔の直径よりも小さく、これにより、血液は、前記拡張可能閉塞部材(14)の比較的大径から前記オリフィス(34)の比較的小径を通って、次いで、前記体腔の比較的大径に戻るように流動し、
前記被覆材(24)は、血流に不浸透性である、血流低減アセンブリ(10)。
【請求項2】
前記被覆材(24)はまた、前記支柱(16)の遠位端の一部および前記ヒンジ部材(22)の一部を被覆する、請求項1に記載の血流低減アセンブリ(10)。
【請求項3】
前記突出部(20)が内向きに移動されたとき、前記オリフィス(34)は、前記被覆材(24)内で開放されたままにされる、請求項1に記載の血流低減アセンブリ(10)。
【請求項4】
前記突出部(20)の閉鎖度を示すように構成される前記ハンドル(28)上のインジケータ(32)をさらに備える、請求項1に記載の血流低減アセンブリ(10)。
【請求項5】
相互により近づく前記突出部(20)の移動は、前記突出部(20)の閉塞能力を増加させ、相互からより離れる前記突出部(20)の移動は、前記突出部(20)の閉塞能力を減少させる、請求項1に記載の血流低減アセンブリ(10)。
【請求項6】
前記ヒンジ部材(22)は、前記支柱(16)のうちの一部または全部の遠位端のまわりで円周方向に分散される、請求項1に記載の血流低減アセンブリ(10)。
【請求項7】
前記突出部(20)が相互により近づけられたとき、前記オリフィス(34)は、前記被覆材(24)内で開放されたままにされる、請求項1に記載の血流低減アセンブリ(10)。
【請求項8】
前記突出部(20)の閉鎖度を示すように構成される前記ハンドル(28)上のインジケータ(32)をさらに備える、請求項1に記載の血流低減アセンブリ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、限定ではないが、急性CHF(慢性心不全)患者における静脈性高血圧症または肺水腫等の異なる状態を処置するように、血流を変更する、または心血管系内の前負荷および後負荷を変更する、もしくはそれに影響を及ぼすための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医学的な緊急事態である、肺水腫は、肺内の流体の蓄積である。肺水腫は、多くの場合、鬱血性心不全によって引き起こされる。心臓が、効率的に送出することが不可能であるとき、血液は、肺を通して血液を取り込む、静脈の中に逆流し得る。
【0003】
これらの血管内の圧力が増加すると、流体は、肺内の空気空間(肺胞)の中に押動される。本流体は、肺を通した正常酸素移動を低減させる。これらの2つの要因が組み合わさり、息切れを引き起こす。
【0004】
心臓の左側(左心室)の障害は、血液を肺の静脈(肺静脈)内に蓄積させ、これらの静脈内に危険な血圧上昇を産生する。肺静脈内の持続的高圧力は、最終的に、一部の流体を血液から間質腔の中に、最終的に、酸素を血流に運ぶ、周囲の微視的気嚢(肺胞)に押進させる。肺胞が流体で充填するにつれて、それらは、もはや、適正な量の酸素を身体に提供することができない。
【0005】
症状、特に、深刻な呼吸困難は、数時間の過程にわたって発生し、命を脅かし得る。肺水腫の予後は、基礎疾患が適時に処置される場合、好ましいが、患者の全体的転帰は、基礎疾患の性質に依存する。心不全の高リスクにある成人は、最も影響を受けやすい。
【0006】
CHFの結果として肺水腫を発現している患者のための典型的処置は、最大(拡張終期)心室体積または心室を伸展させる拡張終期圧力の大きさである、拡張期の終了時の心臓の機械的状態として説明される、前負荷を低減させるように設計される、利尿薬の投与である。加えて、血管拡張薬も、後負荷または心室が血液を吐出する圧力を低減させるように投与される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、限定ではないが、急性CHF(慢性心不全)患者における肺水腫または静脈性高血圧症および他の状態等の異なる状態を処置するように、血流を変更する、もしくはそれに影響を及ぼす、または心血管系内の前負荷および後負荷を変更する、もしくはそれに影響を及ぼすための装置および方法を提供することを模索する。
【0008】
一実施形態では、血流低減アセンブリは、留置カテーテルの遠位端に位置する自己拡張可能要素を含む。自己拡張可能要素は、折畳可能要素が内向きに(内向き半径方向に)曲がることを可能にするヒンジ部材と共に複数の円周方向に配置された内向きに折畳まれる要素を伴う遠位端を有する。ヒンジ部材は、折畳可能要素が、自己拡張可能要素の円筒形区分の開放直径に及ぼす最小限の努力で折畳することを可能にする。
【0009】
折畳可能要素(およびある実施形態では、自己拡張可能要素のいくつか)は、血流に不浸透性である、膜または他の被覆材でコーティングもしくは被覆される。拡張可能遠位端は、低減器が閉鎖されるにつれて、折畳可能アーム間の過剰材料を最小限にするように、折畳可能アームが半閉鎖位置にある間、被覆またはコーティングされてもよい。
【0010】
デバイスの閉鎖度(または折畳可能要素の内向き折畳度)は、カテーテルの近位端に位置するハンドルを使用して、オペレータによって制御される。ハンドルは、低減デバイスの閉鎖度を示す、インジケータを有してもよい。
【0011】
低減器は、その中心開口部から退出する噴流を用いて、ベルヌーイ効果を血流に引き起こし得る。
【0012】
低減器は、開放位置から完全または部分的閉鎖位置まで操作されることができる。
【0013】
本発明の非限定的実施形態によると、カテーテルシャフトと、カテーテルシャフトと共に組み立てられる拡張可能閉塞部材であって、ループを含む、拡張可能閉塞部材と、ループに接続され、ループを相互により近づける、または相互からより引き離すように動作する、操作部材とを含み、ループの移動は、ループの閉塞能力を改変する、血流低減アセンブリが、提供される。
【0014】
本発明のある実施形態によると、相互により近づくループの移動は、ループの閉塞能力を増加させ、相互からより離れるループの移動は、ループの閉塞能力を減少させる。
【0015】
本発明の一非限定的実施形態によると、閉塞部材は、相互接続支柱を含み、ループは、ループが1つまたはそれを上回る方向に支柱に対して枢動することを可能にするヒンジ部材によって、支柱の少なくともいくつかに接続される。ヒンジ部材は、支柱の一部または全部の遠位端のまわりで円周方向に分散されてもよい。ループは、完全開放位置においてヒンジ部材から軸方向に延在可能であってもよい、または部分的もしくは完全閉鎖位置において相互に向かって内向きに折畳可能である。
【0016】
本発明のある実施形態によると、被覆材が、少なくとも部分的に、拡張可能閉塞部材を被覆し、被覆材は、血流に不浸透性である。
【0017】
本発明のある実施形態によると、操作部材は、ループに接続される1つまたはそれを上回る接続リンクを含み、接続リンクは、カテーテルシャフトの近位端に位置するハンドルまで延在し、ハンドルの操作は、ループを移動させ、ループの閉塞能力を改変する。ループが相互により近づけられたとき、オリフィスと呼ばれる空間が、被覆材内に開放されたままにされる。
【0018】
本発明のある実施形態によると、ハンドル上のインジケータが、ループの閉鎖度を示すように構成される。
【0019】
本発明の別の非限定的実施形態によると、カテーテルシャフトは、外側シャフト内で摺動するように配列される内側シャフトを含む、伸縮自在シャフトを含み、ループは、閉塞部材の近位端と遠位端との間に位置付けられる螺旋ループを含み、閉塞部材の近位端は、内側シャフトおよび外側シャフトの一方に固着され、閉塞部材の遠位端は、内側シャフトおよび外側シャフトの他方に固着され、近位端と遠位端との間の距離の減少は、閉塞部材のループをともに寄せ集め、操作部材は、内側シャフトおよび外側シャフトである。
【0020】
本発明のある実施形態によると、拡張可能閉塞部材は、ループの中に形成される部分を伴う、バルーンを含む。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
血流低減アセンブリであって、
カテーテルシャフトと、
前記カテーテルシャフトと共に組み立てられる拡張可能閉塞部材であって、前記拡張可能閉塞部材は、相互接続支柱を備え、前記支柱の少なくともいくつかの遠位端は、折畳可能突出部を有し、前記折畳可能突出部は、前記折畳可能突出部が、1つまたはそれを上回る方向に前記支柱の前記少なくともいくつかのまわりで枢動するように、ヒンジ部材によって前記遠位端に接続される、拡張可能閉塞部材と、
前記折畳可能突出部に接続される1つまたはそれを上回る接続リンクであって、前記1つまたはそれを上回る接続リンクは、ハンドルまで延在し、前記ハンドルの操作は、前記1つまたはそれを上回る接続リンクおよび前記折畳可能突出部を移動させ、前記折畳可能突出部の閉塞能力を改変する、接続リンクと、
を備える、血流低減アセンブリ。
(項目2)
前記折畳可能突出部を被覆する被覆材をさらに備え、前記被覆材は、血流に不浸透性である、項目1に記載の血流低減アセンブリ。
(項目3)
前記被覆材はまた、前記支柱の遠位端の一部および前記ヒンジ部材の一部を被覆する、項目2に記載の血流低減アセンブリ。
(項目4)
前記折畳可能突出部が内向きに移動されたとき、オリフィスと呼ばれる空間は、前記被覆材内で開放されたままにされる、項目2に記載の血流低減アセンブリ。
(項目5)
前記折畳可能突出部の閉鎖度を示すように構成される前記ハンドル上のインジケータをさらに備える、項目1に記載の血流低減アセンブリ。
(項目6)
相互により近づく前記折畳可能突出部の移動は、前記折畳可能突出部の閉塞能力を増加させ、相互からより離れる前記折畳可能突出部の移動は、前記折畳可能突出部の閉塞能力を減少させる、項目1に記載の血流低減アセンブリ。
(項目7)
前記ヒンジ部材は、前記支柱の一部または全部の遠位端のまわりで円周方向に分散される、項目1に記載の血流低減アセンブリ。
(項目8)
前記折畳可能突出部が相互により近づけられたとき、オリフィスと呼ばれる空間は、前記被覆材内で開放されたままにされる、項目2に記載の血流低減アセンブリ。
(項目9)
前記折畳可能突出部の閉鎖度を示すように構成される前記ハンドル上のインジケータをさらに備える、項目1に記載の血流低減アセンブリ。
(項目10)
血流低減アセンブリであって、
カテーテルシャフトと、
前記カテーテルシャフトと共に組み立てられる拡張可能閉塞部材であって、前記拡張可能閉塞部材は、ループを含む、拡張可能閉塞部材と
を備え、
前記カテーテルシャフトは、外側シャフト内で摺動するように配列される内側シャフトを備える伸縮自在シャフトを備え、前記ループは、前記閉塞部材の近位端と遠位端との間に位置付けられる螺旋ループを備え、前記閉塞部材の近位端は、前記内側シャフトおよび外側シャフトの一方に固着され、前記閉塞部材の遠位端は、前記内側シャフトおよび外側シャフトの他方に固着され、前記近位端と遠位端との間の距離の減少は、前記閉塞部材のループをともに寄せ集め、前記拡張可能閉塞部材の閉塞能力を増加させる、血流低減アセンブリ。
(項目11)
前記拡張可能閉塞部材は、前記ループの中に形成される部分を伴う、バルーンを備える、項目10に記載の血流低減アセンブリ。
(項目12)
前記拡張可能閉塞部材は、自己拡張式である、項目1に記載の血流低減アセンブリ。
(項目13)
前記拡張可能閉塞部材は、流動的に拡張可能である、項目1に記載の血流低減アセンブリ。
【0021】
拡張可能閉塞部材は、例えば、自己拡張式または流動的に拡張可能であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明は、図面と関連して検討される、以下の発明を実施するための形態からより完全に理解および認識されるであろう。
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の非限定的実施形態に従って構築され、動作する、血流低減アセンブリの簡略化された視覚表現である。
【
図2】
図2Aおよび2Bは、それぞれ、完全流動ならびに制限流動(例えば、閉鎖またはほぼ閉鎖)位置における血流低減アセンブリの簡略化された視覚表現である。
【
図3】
図3は、本発明の非限定的実施形態による、操作ハンドルに接続されるシャフト上に搭載される血流低減アセンブリの簡略化された視覚表現である。
【
図4】
図4は、閉鎖度のインジケータを示す、操作ハンドルの簡略化された視覚表現である。
【
図5】
図5は、本発明の非限定的実施形態による、シャフト上に搭載され、体腔の中に導入される、血流低減アセンブリの簡略化された視覚表現である。
【
図6】
図6は、本発明の別の非限定的実施形態に従って構築され、動作する、血流低減アセンブリの簡略化された視覚表現である。
【
図7A】
図7Aは、ともに部分的に寄せ集められ、半径方向外向きに部分的に拡張され、部分的閉塞を達成する、血流低減アセンブリのループの簡略化された視覚表現である。
【
図7B】
図7Bは、ともに完全に寄せ集められ、半径方向外向きに完全に拡張され、最大閉塞に到達する、ループの簡略化された視覚表現である。
【
図8】
図8は、本発明の非限定的実施形態による、シャフト上に搭載され、体腔の中に導入される、
図6−7Bの血流低減アセンブリの簡略化された視覚表現である。
【
図9】
図9は、本発明の別の非限定的実施形態に従って構築され、動作する、血流低減アセンブリの簡略化された視覚表現である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ここで、本発明の非限定的実施形態に従って構築され、動作する、血流低減アセンブリ10を図示する、
図1を参照する。
【0025】
アセンブリ10は、可撓性カテーテルシャフト12等のシャフトと、シャフト12と共に組み立てられる拡張可能閉塞部材14とを含む。閉塞部材14は、最初に、シャフト12内に配置され、閉塞部材14をシャフト12から押し出す等によって、シャフト12から展開されてもよい。代替として、閉塞部材14は、(シャフト12の内側ではなく)シャフト12の遠位端に搭載されてもよい。拡張可能閉塞部材14は、自己拡張式である(例えば、限定ではないが、ニチノール等の形状記憶材料から構築される)、または機械的手段(例えば、拡張可能要素を押動/引動させるワイヤ)によって拡張可能である、もしくは流体手段(例えば、限定ではないが、バルーン等の可撓性部材の油圧または空気圧膨張/収縮)によって拡張可能であってもよい。
【0026】
拡張可能閉塞部材14は、半径方向に(および/または軸方向に)拡張し、それが展開される体腔(例えば、血管)の形状に共形化してもよい。拡張可能閉塞部材14は、略円筒形形状であってもよい(但し、他の形状も本発明の範囲内である)。閉塞部材14の拡張されたサイズは、閉塞部材14が体腔の形状を再構築するために使用され得るように、体腔の内部周界を上回ってもよい。
【0027】
本実施形態では、閉塞部材14は、ワイヤ折畳部18において相互接続されるループへと曲げられ得るかまたは別様に形成され得る、ワイヤもしくは他の細長い要素等の相互接続支柱16から構築される。相互接続支柱16の本構造は、容易に圧縮され、続いて、所定の形状に拡張されることができる。
【0028】
拡張可能閉塞部材14は、1つまたはそれを上回る折畳可能突出部20(ループとして形成され得る)を含んでもよい。折畳可能突出部20は、支柱16の少なくともいくつか(または全て)に接続されてもよい。図示される実施形態では、折畳可能突出部20は、折畳可能突出部20が1つまたはそれを上回る方向に支柱16の遠位端のまわりで枢動することを可能にするヒンジ部材22によって、支柱16の遠位端に接続される。ヒンジ部材22は、支柱16の一部または全部の遠位端のまわりで円周方向に分散される。折畳可能突出部20は、完全開放位置においてヒンジ部材22から軸方向に延在することができる、または部分的もしくは完全閉鎖位置において相互に向かって内向きに折畳することができる。
【0029】
被覆材24が、アセンブリ10の遠位端に提供されることができる。被覆材24は、折畳可能突出部20を被覆してもよく、また、支柱16の遠位端の一部および閉塞部材14のヒンジ部材22もしくは他の一部を被覆してもよい。被覆材24は、血流に不浸透性である、膜であってもよい。ワイヤまたはスレッドおよび同等物等の1つもしくはそれを上回る接続リンク26が、折畳可能突出部20のそれぞれ(例えば、その遠位端)に接続されてもよい。接続リンク26は、カテーテルシャフト12の軸方向長を通してシャフト12の近位端に位置するハンドル28(
図3)まで延在する。ハンドル28は、接続リンク26に接続される内部制御可能スピンドルに接続され得る、制御ノブ30を含む。制御ノブ30は、接続リンク26を引動または別様に操作し、それによって、折畳可能突出部20を半径方向に内向きに引動し、体腔内の流動に対する抵抗を効果的に生成するために使用されることができる。言い換えると、相互により近接する折畳可能突出部20の移動は、体腔内の流動の閉塞を生成または増加させる。
【0030】
図2Aは、完全開放位置においてヒンジ部材22から軸方向に延在される、折畳可能突出部20を図示する。接続リンク26は、内向きに引動されていない。
図2Bは、部分的または完全閉鎖位置において相互に向かって内向きに折畳されている、折畳可能突出部20を図示する。接続リンク26は、内向きに引動され、折畳可能突出部20を相互に向かって内向きに折畳している。接続リンク26は、折畳可能突出部20の閉塞能力を改変する、操作部材である。閉鎖度は、ハンドル28(制御ノブ30)によって制御されることができる。
図3および4に見られるように、インジケータ32が、閉鎖度を示すためにハンドル28上に提供されてもよい。
【0031】
折畳可能突出部20が、閉鎖(または内向き)位置に来ると、折畳可能突出部20および閉塞部材14の下流の流動は、低減される。血流は、被覆材24内に開放されたままにされる空間(オリフィス34と称される−
図2B)を通して、すなわち、折畳可能突出部20が内向きに完全に折畳されない中心を通して流動することによって、流動低減器から退出する。血液は、したがって、遠位要素14の比較的大径から、オリフィス34の比較的小径を通して流動し、次いで、オリフィス34より大径を有する、体腔に戻る。これは、ベンチュリ効果(ベルヌーイ効果に基づく)を生成し、オリフィス34を通る流動は、より低い圧力およびより速い速度を有し、これは、血流低減アセンブリ10のすぐ下流の圧力形態に影響を及ぼすために使用されることができる。
【0032】
ここで、
図5を参照すると、本発明の非限定的実施形態による、シャフト12上に搭載され、体腔の中に導入される、血流低減アセンブリ10を図示する。アセンブリは、腎動脈の上流の腎臓につながる血管の中に導入されるように示される。
【0033】
上記に説明されるように、アセンブリ10がその閉鎖位置にあるとき、噴流血流は、概して、下大静脈(IVC)の中心に向かって、オリフィス34を通して流動し得る。ベルヌーイ効果のため、IVCの中心の近傍の領域は、増加した血液速度および低減された圧力を有するように生成され、これは、血液を腎静脈から引き出す(腎臓にわたる圧力降下を増加させる)。アセンブリ10は、血液を下肢内に貯留し、右心房の中への血流を低減させ、前負荷を低減させることができる。
【0034】
流動制限は、したがって、下大静脈および/または上大静脈を介して、心臓の右心房に戻る血液の体積、圧力、または静脈容量を制御し、それによって、静脈還流を減少させるために使用されることができる。IVC、SVC、または両方の制御された妨害によって、血液は、静脈系内に貯留し、したがって、右心房への静脈血液還流を減少させ、前負荷に影響を及ぼすことができると推察される。
【0035】
ここで、本発明の別の非限定的実施形態に従って構築され、動作する、血流低減アセンブリ60を図示する、
図6−7Bを参照する。
【0036】
アセンブリ60は、可撓性カテーテルシャフト62等のシャフトと、シャフト62と共に組み立てられる拡張可能閉塞部材64とを含む。図示される実施形態では、カテーテルシャフト62は、外側シャフト66内で摺動するように配列される内側シャフト65を含む、伸縮自在シャフトである。閉塞部材64は、最初に、シャフト62内に配置され(内側シャフト65の一部の周囲に巻着される等)、閉塞部材64をシャフト62から押し出すこと等によって、シャフト62から展開されてもよい。外側シャフト66は、内側シャフト65と同心であってもよい。
【0037】
図示される実施形態では、拡張可能閉塞部材64は、それぞれ、閉塞部材64の近位端61と遠位端63との間に位置付けられる複数のコイルまたはループ68を有する、螺旋である。近位端61は、外側シャフト66に固着され、遠位端63は、内側シャフト65に固着される(代替として、反対が行われてもよい)。内側シャフト65または外側シャフト66のいずれかの好適な縦方向軸方向移動によって、近位端61と遠位端63との間の距離は、減少させられるかまたは増加させられる。近位端61と遠位端63との間の距離の減少は、閉塞部材64のループ68をともに寄せ集める。
図7Aは、ともに部分的に寄せ集められ、半径方向外向きに部分的に拡張され、したがって、部分的閉塞を達成する、ループ68を示し、
図7Bは、ともに完全に寄せ集められ、半径方向外向きに完全に拡張され、したがって、最大閉塞に到達する、ループ68を示す。
図6は、近位端61と遠位端63との間の最大距離を示し、その場合、閉塞部材64のループ68は、内側シャフト65の周囲にぴったりと巻着され、最小閉塞を提示する。
【0038】
前述の実施形態におけるように、制御ノブ(図示せず)が、内側シャフトおよび外側シャフトを操作し、ループ68を拡張または収縮させ、体腔69内の流動に対する抵抗を増加もしくは減少させるために使用されることができる。相互により近づけるループ68の移動は、体腔69内の流動の閉塞を生成または増加させる。内側シャフト65および外側66は、ループ68の閉塞能力を改変する、操作部材である。
【0039】
図示される実施形態では、拡張可能および螺旋閉塞部材64は、バルーンから構築され、その一部は、ループ68へと巻装される。バルーンは、油圧または空気圧式に膨張および収縮されてもよく、したがって、その堅度は、それが膨張される量によって制御されることができる。代替として、拡張可能および螺旋閉塞部材64は、自己拡張式であってもよい(例えば、限定ではないが、ニチノール等の形状記憶材料から構築される)。
【0040】
バルーンは、収縮状態にある間、体腔69を通して導入され、当技術分野において公知の方法を使用して位置付けられてもよい。限定ではないが、放射線不透過性マーカまたは光学的感知マーカ等の基準マーカが、デバイスの設置を補助するために、選択された面積においてデバイス上に設置されてもよい。いったん定位置に来ると、渦巻バルーンは、膨張され、螺旋流動閉塞部材を生成し、これは、脈管を完全に閉塞せずに、順行性方向における血流を妨害または閉塞し得る。
【0041】
ここで、本発明の非限定的実施形態による、体腔69の中に導入される血流低減アセンブリ60を図示する、
図8を参照する。アセンブリは、腎動脈の上流の腎臓につながる血管の中に導入されるように示される。
【0042】
ここで、拡張可能閉塞部材90が下大静脈74等の体腔の中に設置される、本発明の別の血流低減アセンブリを図示する、
図9を参照する。拡張可能閉塞部材90は、示されるように、円錐形要素であってもよいが、また、平坦オリフィスであることもできる。拡張可能閉塞部材90は、腎静脈73の入口の近傍に設置され、したがって、その近位端より直径が小さい遠位端を有する円錐形部材の遠位端に低減された圧力の面積を生成する。腎静脈入口の入口面積内のより低い圧力の面積は、腎臓72によって被られる全体的圧力勾配を増加させる。
【0043】
図9の実施形態では、拡張可能閉塞部材90は、近位端86と遠位端87とを具備する、切頭円錐形要素であって、近位端86は、順行性流動に対して円錐形要素の上流に位置し、遠位端87は、円錐形要素の下流に位置し、円錐形要素の近位端は、切頭円錐形要素の遠位端より大きい直径を有する。切頭円錐形要素は、1つまたはそれを上回る内部シャフトと、1つまたはそれを上回る外部シャフトとを有する、送達カテーテル92の内側シャフト上に位置し、それによって、外部シャフトは、送達カテーテルの内側シャフトに対する外部シャフトの相対的移動によって、切頭円錐形区分の半径方向拡張を統制することができる(
図6−8の実施形態に関して上記に説明されるように)。切頭円錐形要素の近位端は、周囲体腔の組織と接触してもよい、またはしなくてもよい。切頭円錐形要素の中心軸に対して円錐形壁区分によって画定された角度は、限定ではないが、臨界オリフィスと共に平坦要素を特徴付けるであろう90°から、伸長円錐形要素に対して成すであろう5°まで変動することができる。説明される拡張可能閉塞部材はまた、直線切頭円錐以外のより複雑な形態をとってもよい。
【0044】
切頭円錐形要素(拡張可能閉塞部材)の近位端に進入する血液は、切頭円錐形要素を通して順行性方向に流動するにつれて徐々に加速するであろう。体腔の中に戻るように放出するにつれた円錐形要素の遠位端から退出する流体噴流の速度は、円錐形要素の近位端における流体の速度を上回り、したがって、デバイスの近位端におけるものより低い圧力を有するであろう。切頭円錐形要素を通した、または上記に説明されるオリフィスを通した流動は、以下のベルヌーイの方程式を使用することによって説明されることができる。
【化1】
式中、
【0045】
P
1およびP
2は、それぞれ、狭窄前およびその時点の圧力であって、pは、血液の密度であって、V
1およびV
2は、それぞれ、狭窄前ならびにその時点の血液速度である。
腎静脈の入口の後端にある、下大静脈内への本デバイスの設置は、その面積内により低い圧力のゾーンを生成し、それによって、腎臓における圧力勾配を増加させ、腎機能を改良する。