【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、固有の安定性を有し、貫流を可能にする多孔性のフィルター要素を提案し、該フィルター要素は、多孔性の焼結構造を形成するフィルター本体であって、少なくとも部分的にポリサルファイド粒子であるフィルター本体粒子で構成されるフィルター本体を含む。
【0010】
焼結は、一種の、熱の作用の下で個々の粒子から固体(solid body)への焼結構造を形成することを意味する。焼結構造を備えた固体を形成するための出発材料は通常、パウダー形状をしており、すなわち個々の出発材料粒子から成る。焼結では、当該パウダー形状の出発材料が繋がり、コヒーレントな固体構造、焼結構造が出発材料粒子から生じる。焼結本体の形成、特にその構造は、焼結温度と焼結時間によって制御できる。焼結の間、当初はパウダー状の材料は、主に拡散、すなわち接触箇所を介して互いに接触した個々の出発材料粒子の原子の、それぞれの隣接する出発材料粒子への拡散(移動)と、再結晶化、すなわち焼結構造の加工硬化箇所での新たな結晶形成とにより固まる。焼結によって、成形品又は半加工品の製造が可能となる。一般に、金属とセラミックスは焼結されるが、或るプラスチック、特にポリエチレンなどの簡単な熱可塑性樹脂を焼結することも可能である。大抵の場合、パウダー形状の出発材料は焼結前に圧力を受け、それでそれは所望の形状をとり、圧縮もされる。圧縮は他のパウダー粒子との接触面積を増大させる。これは、焼結工程を拡張し、多くのケースでそれを可能にする、というのも焼結工程は複数の個々の出発材料粒子間のなるべく多くの接触点を好むからである。これは、焼結構造を形成するための材料の能力にとって重要な必要条件である、何故なら焼結工程の駆動力は表面積を減少させることで境界面を維持するのに必要なエネルギーを減少させることであるからである。これらの理由のため、機械的に安定した焼結構造を形成するために、焼結工程の間に焼結すべき材料に圧力を加えることも好ましい。しかしながら、細孔の形成が焼結工程の間に加えられる圧力により抑制されるので、圧力下での焼結は、そこを通る流体の流れを可能にするように多孔性である又は多孔性でもある固体の製造にあまり適していない。ゆえに、焼結工程によりフィルター本体を形成するために、圧力の付加は焼結工程の間避けるべきである。原則として、パウダー形状の出発材料は圧力を受けずに、パウダーが充填される間に振動される焼結型に充填され、それでパウダー粒子が合理的に密なパッキングを受けるように、当該工程は実施される。したがって、焼結の間、そこを通る流体相、特に気体又は液体の流れを可能にする多孔性フィルターが創出できる。
【0011】
フィルター本体は、共に焼結されたフィルター本体粒子から構成されるべきである。これは、フィルター本体粒子が焼結工程の間に、貫流を可能とするために多孔性である機械的に安定した焼結構造を互いに形成することを意味する。これは、焼結構造内に組み込まれた又は焼結工程の間に焼結構造に組み込まれる添加剤及び/又はフィラー(賦形剤)がさらに存在することを排除しない。しかしながら、フィラーはそれら自体が焼結構造を形成すべきでなく、むしろ焼結構造は本質的にフィルター本体粒子により構成されるべきである。したがって、本発明は、フィルター本体の焼結構造が完全に又は少なくとも部分的にポリサルファイド粒子によって形成されることを提案する。これは、プラスチックでできたフィルター本体を備えた既知のフィルター要素に比べて改良された耐熱性及び加水分解抵抗性をもたらす。焼結構造におけるポリサルファイド粒子の割合が高くなるほど、フィルター要素は耐熱性及び/又は加水分解抵抗性がより高まる。
【0012】
ポリサルファイドは特に有機ポリサルファイドであってもよい。とりわけ、ポリアリルサルファイドが適している。ポリサルファイドは、一連の硫黄原子を含む化合物の群である。有機ポリサルファイドは、官能基としてS−S結合の形式の硫黄を含む有機化合物である。ポリフェニレンサルファイドのようなポリアリルサルファイドの場合、芳香族モノマーが硫黄原子を介して一緒に連結される。
【0013】
ポリサルファイドは特にポリフェニレンサルファイドであってもよい。ポリフェニレンサルファイドは、略語PPSで知られ、時々ポリ(チオ−p−フェニレン)とも称される。それは一般式(SC
6H
4)
nを有し、高耐熱性プラスチックに属する。ポリフェニレンサルファイドは部分的に結晶性高性能プラスチックであり、原則として熱可塑性プラスチック材料に属する。硫黄原子を介する芳香族モノマーユニットの組み合わせにより、特に耐性のあるポリマーが創出され、その良好な機械的特性は200℃以上の温度でも保持され、それで連続的使用が負荷に応じて240℃まで可能になる。短い時間の間、ポリフェニレンサルファイドも270℃までの温度に耐える。さらに、それは殆ど全ての溶剤、多くの酸及びアルカリに対して耐薬品性があり、また高温でも雰囲気酸素に対して限られた耐性を示す。ポリフェニレンサルファイドは通常、以下の材料特性を有する。密度:約1350kg/m
3、23℃での吸水率:<0.05%、引張弾性率:約3000MPa、融点DSC(10℃/分での):280℃、これは275℃〜290℃の間で変化してもよい。
【0014】
ポリサルファイド、特にポリアリルサルファイドは熱可塑性物質として普通は製造される。例えば、直線状のポリフェニレンサルファイドと分岐したポリフェニレンサルファイドが存在する。分岐したポリフェニレンサルファイドでは、分岐したポリマーチェーンが物理的架橋点により逆に互いに連結している。直線状のポリフェニレンサルファイドでは、チェーンはほとんど分岐を示さず、集まって、非常にきちんと並んだ規則格子を形成する。直線状のポリフェニレンサルファイドは、吹込み成形、押出成形又は射出成形によって複数のコンポーネントに形成される。約80%の直線状のポリフェニレンサルファイドのコンポーネントが射出成形により形成される。分岐したポリフェニレンサルファイドは、もっと制限された程度で加工を許容する。普通は、それは射出成形のみを許容し、非常に限られた程度でのみ押出成形される。大抵のポリサルファイド、特にポリフェニレンサルファイドなどのポリアリルサルファイドを熱硬化性特性を有する架橋された構成で作ることも可能である。しかしながら、このような構成は、それらのかなりより困難な加工性のために技術的に僅かな役割を果たすだけである。
【0015】
ポリサルファイド、及びしたがってポリフェニレンサルファイドも、特に良好な焼結可能な物質であると知られていない。本発明者らは今般初めて、ポリサルファイドフィルター本体粒子から、特にそこを通り抜ける流体の通過を可能とするように開いた細孔を有する空のポリサルファイドフィルター本体粒子から、固有に安定した多孔性の焼結構造を作ることに成功した。これらのポリサルファイド焼結構造のフィルター本体は、固有に安定した層状フィルター要素(lamellar filter element)としての使用に適している。フィルター要素は、十分な機械的安定性を有し、加圧空気パルスによるフィルター洗浄を可能にする。それは、特にフィルター要素に逆流原理に従う洗浄を繰り返し受けさせることで頻繁にフィルター装置で実践される。
【0016】
フィルター要素は、大部分又は根本的にポリサルファイド粒子で構成された、フィルター本体粒子で構成されたフィルター本体を有してもよい。原則として、全てのフィルター本体粒子はポリサルファイドを含んでもよい。少なくとも一部のフィルター本体粒子が完全にポリサルファイドから成ってもよく、すなわち少なくとも一部のフィルター本体粒子がポリサルファイドを100%含んでもよい。全てのフィルター本体粒子がポリサルファイドから成ること、すなわち全てのフィルター本体粒子がポリサルファイドを100%含むことも考えられる。ここで、全てのフィルター本体粒子がポリサルファイド粒子又はポリサルファイドから成ることを述べる場合、これは、焼結構造に組み込まれるがフィルター本体の焼結構造を形成するパウダー状出発材料の一部でない添加剤とは別に、フィルター本体の焼結構造がポリサルファイド粒子から成ることを意味する。そこから、このような添加剤は、パウダー状出発材料粒子からの焼結構造の構造・建設にあまり寄与しないことになる。
【0017】
フィルター要素の或る実施形態は、異なる構成の少なくとも2つのポリサルファイドを含むポリサルファイド粒子から構成されるフィルター本体を有してもよい。一方で、ポリサルファイド粒子の個々の粒子は、異なる構成の少なくとも2つのポリサルファイドを含んでもよい。他方で、フィルター本体は、第1構成ポリサルファイドを含む第1ポリサルファイド粒子と、第2構成ポリサルファイドを含む第2ポリサルファイド粒子により構成されてもよい。どちらのバリエーションも組み合わされてもよい。もちろん、全てのバリエーションで、異なる構成を有する更なるポリサルファイドが第1及び第2ポリサルファイドに加えて存在してもよい。異なる構成を有するポリサルファイドに言及すると、これは、その他の構成とは異なるポリサルファイドの任意の構成と理解される。異なる構成の2つのポリサルファイドも同じポリサルファイドタイプであってもよいが、異なる構成、例えばそれぞれ異なる構成を有する2つのポリフェニレンサルファイドの形態である。例えば、(ポリフェニレンサルファイドなどの)同一のポリサルファイドタイプが純粋な熱可塑性構成内に一度存在し、熱硬化性特性を既に示す既により架橋された構成内に一度存在してもよい。
【0018】
ポリサルファイド粒子は特に空のポリサルファイドを含むか、特に空のポリサルファイド粒子である。これは、焼結構造の製造のためのポリサルファイド出発材料は用語「配合(compounding)」により一般に知られている処理を受けないポリサルファイドであることを意味する。これは、特に添加剤、混和剤、フィラー、補助剤、繊維などが、焼結構造を製造するための出発材料を形成するポリサルファイド粒子を製造するためにポリサルファイド原料に組み込まれないことを意味する。しかしながら、焼結構造を製造するためのポリサルファイド出発材料は全く、処理されたポリサルファイド原料、例えば、以下でより詳細に記載するように、焼結工程のための出発材料としてポリサルファイド粒子の適切な粒径を製造するために機械的に処理されたポリサルファイド及び/又は熱処理されたポリサルファイド原料であってもよい。実験により、50%以上の空のポリサルファイド粒子の割合を有する安定した焼結構造を製造すること、特に完全に空のポリサルファイド粒子から焼結構造を製造することが可能であることが判明した。これは、フィルター本体が100%までポリサルファイド粒子を含んでもよいことを意味する。
【0019】
実験により、焼き戻されたポリサルファイドを含むポリサルファイド粒子が焼結されると、ポリサルファイド粒子の、フィルター本体のための固有に安定した多孔性の焼結構造への焼結がいっそう良くなることが証明された。焼き戻しの間、例えば細粒の形状のポリサルファイドは長めの時間の間融解温度より低い温度まで加熱される。よって、フィルター本体の焼結構造は焼き戻されたポリサルファイドを含むポリサルファイド粒子から形成する。ポリフェニレンサルファイドなどのポリサルファイドが焼き戻していない状態で焼結されるとき、固有に安定した焼結構造が形成される適切な温度の非常に小さいウィンドウだけが利用できると考えられる。例えばポリフェニレンサルファイドの場合、この温度ウィンドウは僅か3℃、すなわち300〜303℃である。他方で焼き戻されたポリサルファイド粒子が焼結されるとき、固有に安定した焼結構造が達成され、さらに多孔性の特性をも有するこの適切な焼結温度のウィンドウはかなり増加し、ポリフェニレンサルファイドの場合例えば60℃以上である。加えて、得られる焼結体の機械的特性、特にそれらの壊れやすさ・もろさは、焼き戻していないポリサルファイド出発材料でできた焼結体の特性よりも顕著に良い。ポリサルファイド粒子の焼き戻しは特に、酸化剤のあるところで空気循環炉で実行されてもよい。酸化剤は特に酸素、例えば雰囲気酸素であってもよい。他の酸化剤、例えば硫黄又は有機酸化剤も考えられる。一般に、ポリサルファイドを焼き戻した後、或るメルトフローインデックス還元が観察される。したがって、焼き戻されたポリサルファイドの融解物は原則として純粋なポリサルファイドの融解物よりずっとドロドロしている(粘性が高い)。焼き戻しの間の典型的な温度は、ポリサルファイドの融点又は融解範囲より僅かに低くてもよく、例えばポリフェニレンサルファイドの場合175℃〜280℃である。温度が高いほど、一般に焼き戻し時間はより短く選択できる。しかしながら、温度は常に、少なくとも、焼き戻し工程の間のフィルター本体粒子のくっつき合い又は凝集が回避される最低の融解温度より低いべきである。フィルター本体粒子の粉末状混合物は、焼き戻し工程後も粉末状のまま且つ注げるべきである。特に、フィルター本体粒子の粒径分布が焼き戻し工程の間著しく変化しないと望ましい。しばしば、焼き戻し工程の間ポリサルファイド粒子の色の変化が観察できる。例えば、もともとは白から黄色っぽいポリフェニレンサルファイド粒子が焼き戻し後に茶色がかった色から茶色になる。
【0020】
焼き戻されたポリサルファイド粒子が60分〜24時間の時間の間焼き戻し工程を受けていると、フィルター本体粒子の焼結のための特に良好な条件が達成できることが判明した。特に、2時間〜12時間、特に11時間〜12時間焼き戻し工程を受けた焼き戻されたポリサルファイド粒子に対して良好な焼結条件が存在する。既に述べたように、短めの焼き戻し時間が選択されるほど、焼き戻しの間の温度は高く選択される。11時間〜12時間の焼き戻し時間によれば、純粋なポリフェニレンサルファイドのフィルター粒子の場合、示した範囲の上限での温度、例えば略260℃〜280℃、特に略270℃が適切である。
【0021】
分子鎖が分岐する及び/又は長くなるので、焼き戻しは焼き戻された材料の分子量の増加を引き起こす。加えて、焼き戻しが酸化環境にて実行されると有益なようである。ゆえに、これはフィルター本体粒子の材料の熱酸化分子量増加と呼ばれる。これらの条件下で、ポリフェニレンサルファイドなどの元々熱可塑性のプラスチック材料が、より熱硬化性プラスチックの特徴を示す特性を取ることが考えられる。
【0022】
驚くべきことに、ポリサルファイド粒子が少なくとも1つの焼き戻されたポリサルファイド及び少なくとも1つの焼き戻されていないポリサルファイドを含むと、同時に複数の負荷を繰り返し受けられる特に強い焼結構造が製造できることが示された。例えば、ポリサルファイド粒子は、焼き戻されたポリサルファイド、特に焼き戻されたポリフェニレンサルファイドの構成を有する第1フィルター本体粒子と、焼き戻されていないポリサルファイド、特に焼き戻されていないポリフェニレンサルファイドの構成を有する第2ポリサルファイド粒子の混合物を有してもよい。その際、2つのポリサルファイドは協働し、生じる多孔性の焼結構造の構造が本質的に焼き戻されたポリサルファイドにより決定されるのに対し、焼き戻されていないポリサルファイドはフィルター本体粒子の互いの早くてしっかりした結合をもたらす。
【0023】
さらに、焼結工程を受けたフィルター本体粒子が多くても500g/10分、特に多くても250g/10分、特に多くても100g/10分のメルトフローインデックスを有すると、良好な焼結結果が達成できることが判明した。メルトフローインデックスは、10分の間に何グラムの成形材料がフィルター本体粒子の融解後に標準化押出成形工程の間に標準化ノズルを通過したかを示す。この工程は、ASTM D 1238−13、プロセスBで、特に温度と押出成形すべき成形材料に作用する付加に関して特定される。示される値は、焼結工程の始まりの直前のポリサルファイド粒子の状態、すなわち、焼き戻されたポリサルファイドのポリサルファイド粒子の場合、焼き戻された状態のポリサルファイド粒子を示す。
【0024】
少なくとも30%の多孔率であるフィルター本体を有する、十分固有に安定したフィルター要素が実現される。それどころか少なくとも50%、また70%までの多孔率を実現することも可能である。
【0025】
特に、異物負荷の無い流体流れにおいて、12.011m
3/(m
2×分)の体積流量で異物負荷の無い、4mm厚で256mm×256mmのフィルター本体の空気流通面積を有する空気流れに関して測定して、多くても2000Pa、特に多くても1000Pa、特に100〜2000Paの、フィルター本体にわたる圧力損失が決定されるように、フィルター本体が設計されたフィルター要素が製造できることが判明した。ここで、圧力損失の決定は、現実的な操作における異物を有するフィルター表面の増大する占有により安定して増大する圧力損失を排除するために、異物負荷の無い流体がフィルター要素に向かって流されるときに行われる。
【0026】
特にフィルター要素は、50〜500μm、特に100〜350μmの平均サイズを有するポリサルファイド粒子からできてもよい。サイズはここでは、焼結工程の直前のポリサルファイド粒子の平均サイズを意味する。焼き戻されたポリサルファイド粒子の場合、これはしたがって、焼き戻し工程後のポリサルファイド粒子の平均サイズである。
【0027】
既に述べたように、ポリサルファイド粒子に加えてフィルター本体がまだ更なる構成物質(constituent)を有することが全く考えられる。このような更なる構成物質は有機及び/又は無機物質であってもよい。例えば、中空ガラス小滴はフィルター本体の無機構成物質の意味で記載されてもよく、それは例えばフィルター本体の重量を減少させるよう機能する。さらに、フィルター本体は付加的な鉱物、例えばシリコン酸化物(silicon oxide)、カルシウム化合物、酸化アルミニウムを含んでもよい。有機構成物質、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子も考えられる。さらに、フィルター本体は静電荷に対する煤粒子を含んでもよい。このような付加的な構成物質は、フィルター本体において焼結構造を形成する複数のポリサルファイド粒子間に存在してもよい。
【0028】
付加的な構成物質は、原則として、焼結工程の始まりの前にポリサルファイド出発粒子に混ぜられ、それにより焼結構造が徐々に形成される間、それら構成物質はフィルター本体に組み込まれる。フィルター本体において、焼結構造を形成する粒子の割合は一般に、他の構成物質に対し優勢であろう。例えば、フィルター本体の質量に基づいて50%〜100%がポリサルファイド粒子によって形成されてもよい。したがって、更なる構成物質は一般に、フィルター本体の質量に関して50%〜0%を構成し、しばしば50%より著しく少ない値を構成し、特にフィルター本体の質量に関して0%〜20%の範囲又は0%〜10%の範囲であってもよい。
【0029】
フィルター本体は、フィルター要素の流入表面に適用されたコーティングを具備してもよい。コーティングは複数の粒子で構成されてもよい。特に、コーティングはフィルター本体より小さい孔径(pore size)を有する。このようなコーティングは、フィルター要素によりろ過されるべき固体粒子がフィルター要素の内側に入らないように表面ろ過を達成する。このようなコーティングされたフィルター要素は、コーティングされていないフィルター要素よりずっと容易に逆流クリーニング(counter cleaning)により清掃される。特に、コーティングはくっつかない材料、例えばPTFE粒子を含んでもよい。
【0030】
フィルター要素の一方の側のきれいな流体スペースがフィルター要素の反対側の未処理の流体スペースから分離されるように、フィルター装置に、例えば共通のキャリアに互いに平行に設置された本発明に従う幾つかのフィルター要素があってもよい。通常、吸込ファンがフィルター要素の下流できれいな流体側に配置される。さらに、フィルター要素がきれいな流体側からの加圧空気サージを受けるように設計された、フィルター要素の逆流圧力サージクリーニングのための装置が通常存在する。
【0031】
実験により、ここに記載する方法で、80mm/分のテスト速度でDIN EN ISO527−2(2012−06)に基づく引張試験において、少なくとも1N/mm
2、特に少なくとも2N/mm
2、特に少なくとも4N/mm
2、特に1N/mm
2〜25N/mm
2の引張強さを有するフィルター本体を有するフィルター要素が製造できることが判明した。この場合、この引張試験におけるフィルター本体の破壊時の伸長は少なくとも0.2mm、特に少なくとも0.5mm、特に少なくとも1mm、特に0.2mm〜10mmである。
【0032】
フィルター要素は、特に、貫流を可能とするために多孔性である固有に安定した層状フィルター要素として設計されてもよい。
【0033】
フィルター要素は、フィルター本体に成型されたフィルターヘッドを有してもよい。フィルターヘッドは主に、フィルター要素をフィルター装置に取り付け又は保持するために機能する。この理由のために、フィルターヘッドは十分な機械的安定性を保証すべきであり、またそれがフィルター要素全体を収容でき、場合によっては、クリーニングの間の加圧空気サージにより引き起こされるような操作負荷も収容できるように設計されるべきである。フィルターヘッドは、必ずしもフィルター本体と同程度に流れ多孔性である必要はない。それは全く多孔性でなくてもよい。より重要なのは、フィルターヘッドのための機械的安定性と、フィルター本体へのその接続である。フィルターヘッドは、耐熱接着剤によってフィルター本体に接続できる。フィルターヘッドは、任意の他の方法で、例えば、プリプレグ、鋳造又は射出成形によりフィルター本体に一体に形成されてもよい。フィルターヘッドは特に焼結された高温プラスチックで作られてもよく、また高温プラスチックの射出成形された部品として製造されてもよい。本発明に従うフィルター要素の場合、特に、フィルターヘッドもポリサルファイドを含んでもよく、特にフィルター本体と同じポリサルファイドを含んでもよい。フィルターヘッドがフィルター本体と同じ材料で作られるか、フィルター本体の材料に似た材料で作られると特に好都合である。フィルターヘッド及びフィルター本体のためになるべく同じ又は少なくとも似た材料を使用することで、フィルター要素の全ての部品の熱膨張挙動を調整できる。したがって、熱負荷による応力の発生が抑制される。この点において利用される効果は、ポリフェニレンサルファイドなどのポリサルファイドが慣用的なプラスチック成形又は成型工程で加工できることである。例えば、ポリフェニレンサルファイドで作られたフィルターヘッドは、射出成形により、焼結されたポリフェニレンのフィルター本体に成型される。
【0034】
フィルター要素が、フィルターヘッドに加えて、フィルター本体に成型されたフィルターフットも有する場合、このフィルターフットもポリサルファイドを含んでもよく、特にフィルター本体と同材料で作られてもよい。
【0035】
50〜200℃、特に80〜200℃、特に100〜200℃、特に120〜200℃の範囲の温度である連続的使用の温度のために設計された焼結されたフィルター要素を製造することが可能である。この点について、フィルター要素の全ての実施形態が50〜200℃の全温度範囲に適する必要はない。しかしながら、任意の耐熱性実施形態が、任意の具体的な温度で50〜200℃の範囲内である連続的使用の最大温度を有するべきである。ここに記載したフィルター要素は特に加水分解に抵抗力があると分かる。
【0036】
本発明の更なる側面は、固有の安定性を有し、貫流を可能にするために多孔性であるフィルター要素を製造する方法に関し、当該方法は、少なくとも部分的にポリサルファイド粒子であるフィルター本体粒子を提供し、及びフィルター本体粒子を多孔性の焼結構造に焼結して、フィルター要素のフィルター本体を形成する、ステップを有する。
【0037】
ポリサルファイドは、有機ポリサルファイド、特にポリフェニレンサルファイドなどのポリアリルサルファイドであってもよい。全てのフィルター本体粒子がポリサルファイドを含んでもよい。フィルター本体粒子の少なくとも一部が完全にポリサルファイドから成ってもよい。幾つかのケースでは、フィルター本体粒子の全てがポリサルファイドから成ってもよい。異なる構成の少なくとも2つのポリサルファイドがフィルター本体を構成するために使用されてもよい。
【0038】
フィルター本体粒子の焼結は周囲圧力にて実行されてもよい。これは、多孔性の焼結構造の製造を高め、従ってフィルター本体のための高い流体流量を可能にする。言い換えれば、操作の間にフィルター要素中で生じる圧力損失は比較的低い。
【0039】
得られる焼結構造の機械的特性のための良好な結果は、焼結が290℃〜350℃の温度、特に310℃〜320℃の温度で行われるときに実現される。これは特に、ポリサルファイド粒子がポリフェニレンサルファイド粒子である場合に有効である。
【0040】
フィルター本体の幾何学形状及び特に厚さに依存して、適切な焼結期間は3分〜180分、特に40分〜100分、特に60分〜80分である。
【0041】
ポリサルファイドを含むフィルター本体粒子の場合、ポリサルファイド粒子が焼結前に焼き戻し工程を受けると、焼結工程がより容易に制御できることが判明した。焼き戻し工程の間、ポリサルファイド粒子は上昇した温度に晒される。当該温度は一般に、ポリサルファイド粒子の溶融温度より僅かに低いか、又はポリサルファイド粒子の溶融範囲の下限である。例えば、255℃〜290℃、特に265℃〜275℃の温度でポリサルファイド粒子を焼き戻すと有益であると判明した。焼き戻し工程のために高めの温度が選択されるほど、焼き戻し工程のために必要とされる時間が短くなるという条件をつけて、焼き戻し工程のための適切な期間は7〜24時間である。温度が最も低い溶融温度より対応的にずっと十分低く設定されるとき、焼き戻し工程のためのかなり長めの期間が特に好ましいことが分かった。例えば、ポリサルファイド粒子は先に10〜12時間の間焼き戻されると特に良好に焼結され、機械的に安定した流れ多孔性のフィルター本体を形成することが分かった。
【0042】
焼き戻し工程は、ポリサルファイド粒子の凝集やくっつき合いをもたらすべきでない。しかしながら、それにもかかわらず或る付着が観察された場合、焼き戻し工程後のポリサルファイド粒子に例えば振動により解き工程を受けさせると有益である。ゆえに、焼き戻し後のポリサルファイド粒子の粒径分布は焼き戻し前の粒径分布と大きく異ならない。例えば、焼き戻し前のポリサルファイド粒子の50〜500μm、特に100〜350μmの平均サイズを有する良好な結果が得られた。
【0043】
ポリサルファイド粒子を提供するために異なる構成の少なくとも2つのポリサルファイドが工程にて使用されると非常に有利であることが判明した。例えば、少なくとも1つの焼き戻されたポリサルファイド及び少なくとも1つの焼き戻されていないポリサルファイドが、ポリサルファイド粒子を提供するために使用されてもよい。これは、例えば、出発材料として第1構成ポリサルファイド(例えば焼き戻されたポリフェニレンサルファイド)及び第2構成ポリサルファイド(例えば焼き戻されていないポリフェニレンサルファイド)が互いに混合され、混合物から第1構成ポリサルファイドと第2構成ポリサルファイドの両方を含むポリサルファイド粒子を形成することでもたらされる。第1構成(例えば焼き戻されたポリフェニレンサルファイド)のポリサルファイドを含む第1ポリサルファイド粒子を提供し、第2構成(例えば焼き戻されていないポリフェニレンサルファイド)のポリサルファイドを含む第2ポリサルファイド粒子を提供し、次いで第1及び第2ポリサルファイド粒子を混合して両者を共に焼結することでフィルター本体を形成することも可能である。両方のバリエーションが組み合わせられてもよく、更なる構成のポリサルファイドを有する又は有しない更なる構成物質がフィルター本体粒子に加えられてもよく、又は更なる構成のポリサルファイドを有する又は有しない付加的なフィルター本体粒子が使用できる。
【0044】
既に述べたように、更なる成分(components)、特に有機又は無機成分をポリサルファイド粒子に加えることは容易に可能である。ポリサルファイド粒子と他の成分の混合はポリサルファイド粒子の提供後に行われるが、全く、焼き戻し前に既に行われてもよい。フィラー又は添加物の特性の望まれない変化が焼き戻しのために危ぶまれる場合、他の成分の混合は焼き戻し後に行われてもよく、それで仕上がった混合物が焼結工程を実施するために提供される。
【0045】
記載した方法はさらに、フィルター本体より小さい孔径を有する粒子から成るコーティングをフィルター要素の流入表面に適用することを有してもよい。これは、表面ろ過に適したフィルター要素を創出する。
【0046】
ここに記載したフィルター要素は、50〜200℃で示される温度範囲での連続的使用の任意の具体的な温度が必要される実質的に全てのろ過作業に適する。それは、殊に燃焼排気ガスが高めの温度で発生するそれらの場合において、燃焼排気ガスをろ過するのに特に適している。ガス流れからの製品分離のための別な適用分野は、流体ベッドドライヤー、食品産業におけるドライヤー、洗剤産業における噴霧乾燥機、か焼炉、発熱粒子製造を含む。フィルター要素は、ガス流れからの貴重な材料の回復、好ましくは触媒流動床原子炉における触媒の回復と、好ましくは金属浴、金属溶解炉、ケイ酸ナトリウムを有する浴、クリンカー冷却器、光ファイバー製造におけるオーブン、食品業界における焙焼装置における排気ガス浄化にも適している。
【0047】
排気ガスの浄化に加えて、ここに記載したフィルター要素は液体流れをろ過する際に使用するのにも適している。
【0048】
フィラー及び添加物の選択に関して、適切な耐熱性及び/又は加水分解に対する耐性に留意される。
【0049】
本発明及び本発明の特定の実施形態を例示の実施形態に則して以下でより詳細に説明する。