(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記当接部が、前記クリップカートリッジ本体の前記第1の溝または前記クリップカートリッジカバーの前記クリップカートリッジ本体と対向する面に設けられている請求項6に記載のクリップカートリッジ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜4に開示されたクリップカートリッジを用いれば、ワイヤ等の線状物の遠位側に取り付けられた連結部あるいは連結フックをクリップに連結することができる。しかし、クリップの基端部を広げて線状物に連結する方式のクリップである場合、クリップカートリッジ内で、締付リングがクリップ本体の基端部に配置されている。つまり、締付リングの内側にクリップの基端部が配置されていると、クリップ本体の基端部が締付リングの内径に規制されて開きにくくなるため、線状物の連結部をクリップ本体の基端部に接続しにくくなる。また、クリップ本体の基端部に接続される線状物の連結部の大きさや形状も制限されるため、クリップと線状物の接続後に線状物を近位側に移動させたときにクリップが線状物から外れるおそれがある。
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、遠位側に連結部を有する線状物にクリップを連結しやすいクリップカートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成し得た本発明の医療用クリップカートリッジは、医療用のクリップを、遠位側に連結部を有する線状物の前記連結部と連結するためのものであって、線状物を挿入する挿入口と、挿入口から遠位側に向かって延びる挿入路と、挿入路の遠位側に連通し、クリップ本体を収納するクリップ本体収納部と、挿入路にクリップ本体を締め付ける締付リングを収納するリング収納部と、を有し、リング収納部は、締付リングの挿入路の延在方向への動きを制止するための当接部を備え、締付リングの遠位端がクリップ本体の近位端よりも近位側に配置されている点に要旨を有する。また、上記目的を達成し得た本発明の他の医療用クリップカートリッジは、医療用のクリップを、遠位側に連結部を有する線状物の前記連結部と連結するためのものであって、線状物を挿入する挿入口と、挿入口から遠位側に向かって延びる挿入路と、挿入路の遠位側に連通し、クリップ本体を収納するクリップ本体収納部と、挿入路にクリップ本体を締め付ける締付リングを収納するリング収納部と、を有し、リング収納部は、締付リングの挿入路の延在方向への動きを制止するための当接部を備え、リング収納部の遠位端がクリップ本体収納部の近位端よりも近位側に配置されている点に要旨を有する。
【0007】
本発明のクリップカートリッジは、当接部が締付リングに接触して締付リングの動きを制止するため、クリップ本体と締付リングとが接触することを防止できる。このため、締付リングがクリップ本体の近位端よりも遠位側に移動して締付リングの内側にクリップ本体の基端部が入ることを抑制でき、クリップ本体の基端部が、締付リングの内径に規制されずに開きやすくなる。したがって、線状物の連結部をクリップ本体の基端部に連結しやすくなる。
【0008】
当接部は、挿入路の内面から突出する突起部であることが好ましい。突起部が締付リングに当接することによって、締付リングの動きを制止することができる。
【0009】
突起部は、遠位側突起部と近位側突起部とからなり、遠位側突起部と近位側突起部との間にリング収納部が配置されていることが好ましい。遠位側突起部は締付リングのクリップ本体収納部側に向いている面と当接するため、締付リングが挿入路の遠位側に移動することを防げる。また、近位側突起部は、締付リングの挿入口側に向いている面と当接するため、締付リングが挿入路の近位側に移動することを防げる。
【0010】
挿入路の径方向において、遠位側突起部が近位側突起部よりも内方に突出していることが好ましい。これにより締付リングが遠位側に移動しにくくなる。
【0011】
遠位側突起部が複数設けられており、近位側突起部が1つのみ設けられていることが好ましい。線状物は基本的には遠位側に向かって移動するものであるため、締付リングが近位側に移動する可能性よりも、線状物の連結部に追随して遠位側に移動する可能性の方が高い。このため、遠位側に突起部を複数設けておくことで締付リングの動きを確実に制止できる。
【0012】
突起部は、挿入路から取り外し可能に形成されていることが好ましい。このように突起部が形成されていれば、線状物をクリップと連結させた後、クリップ装置をクリップカートリッジから取り出す際に、クリップ装置が突起部に引っ掛かっても、突起部を取り外すことでクリップ装置をクリップカートリッジから容易に取り出すことができる。
【0013】
クリップカートリッジは、クリップカートリッジ本体とクリップカートリッジカバーを有し、クリップカートリッジ本体は、挿入路形成用の第1の溝とクリップ本体収納部形成用の第2の溝を有し、クリップカートリッジ本体をクリップカートリッジカバーで覆うことにより、リング収納部とクリップ本体収納部がそれぞれ形成されていることが好ましい。このようにクリップカートリッジを構成すれば、クリップカートリッジの作製が容易になり、また、クリップカートリッジにクリップをセットしたり、線状物をクリップに連結したクリップ装置をクリップカートリッジから取り出すことが容易に行えるようになる。
【0014】
クリップカートリッジの構成を簡素化するためには、当接部がクリップカートリッジ本体の第1の溝またはクリップカートリッジカバーのクリップカートリッジ本体と対向する面に設けられていることが好ましい。
【0015】
本発明はまた、医療用クリップ装置にクリップを取り付けるための医療用クリップシステムであって、上記クリップカートリッジと、対象物を摘まむクリップ本体およびクリップ本体を締め付ける締付リングを有するクリップと、遠位側に連結部を有する線状物とを有し、クリップ本体は、遠位側に対象物を把持する把持部と、近位側に線状物の連結部と連結する基端部とを有するクリップシステムも提供する。
【0016】
上記クリップシステムにおいて、締付リングの内径が、連結部の最大外径よりも大きいものであることが好ましい。このようにクリップシステムを構成することより、線状物にクリップを連結する際に、連結部が締付リングの内腔をスムーズに通過することができる。
【0017】
上記クリップシステムにおいて、クリップ本体は;2つの把持部材が対向配置されることで形成されており;基端部であって、2つの把持部材の少なくともいずれか一方には、対向する把持部材側に突出している係合部が設けられており;基端部において、2つの把持部材は、少なくとも互いに離間する方向に移動可能であり;連結部が、クリップ本体の係合部と連結されることが好ましい。このようにクリップ本体の基端部が開く構成とすることにより、クリップ本体と線状物の連結を行いやすくなる。
【0018】
上記クリップシステムにおいて、一の把持部材の係合部が、他の把持部材側に突出している第1の爪であり、他の把持部材の係合部が、一の把持部材側に突出している第2の爪であり、以下の(1)式および(2)式を満たすことが好ましい。
0≦L
1/A
1≦0.87 (1)
0≦L
2/A
1≦0.87 (2)
ここで、L
1は基端部の開閉方向における第1の爪の最大長さであり、L
2は基端部の開閉方向における第2の爪の最大長さであり、A
1は基端部の開閉方向における基端部の係合部が設けられていない部分での把持部材間の最大離間距離である。このように係合部を爪にすることにより、クリップ本体と線状物が強固に連結されるため、係合部から連結部が外れにくくなる。
【0019】
上記クリップシステムにおいて、連結部には、クリップ本体の係合部と係合する係合受部が設けられることが好ましい。これにより、クリップと線状物の連結が容易に行える。
【0020】
上記クリップシステムは、以下の(3)式および(4)式を満たすことが好ましい。
A
2<R
1 (3)
0.13≦(A
2/R
1)≦0.50 (4)
ここで、A
2は係合部と係合受部が係合していない状態での、基端部の開閉方向における基端部の把持部材間の最小離間距離であり、R
1は係合受部の最大外径である。これにより、クリップ本体と線状物が強固に連結されるため、係合部から連結部が外れにくくなる。
【0021】
上記クリップシステムは、以下の(5)式および(6)式を満たすことが好ましい。
L
3<R
2 (5)
L
4>R
2 (6)
ここで、L
3は係合部と係合受部が係合していない状態での、基端部の開閉方向における基端部の最大長さであり、L
4は基端部の2つの把持部材の最大離間時の、基端部の開閉方向における基端部の最大長さであり、R
2は締付リングの内径である。すなわち、係合部と係合受部が係合していない状態では基端部は締付リングを通り、2つの把持部材の最大離間時には基端部は締付リングを通らないものである。このようにL
3を設定することにより、締付リングを基端部から把持部側に移動させることで、締付リングがクリップ本体の把持部を閉じることができる。また、上記のようにL
4を設定することで、クリップ本体の基端部が締付リングの内径を超えて大きく開くため、線状物の連結部をクリップ本体の基端部に連結しやすくなる。
【0022】
さらに、上記クリップシステムは、内腔に線状物を配置する内筒体を有しており、締付リングの内径が、内筒体の外径よりも小さく、締付リングの外径が、内筒体の内径よりも大きいことが好ましい。これにより、締付リングと内筒体とが接触し、締付リングがクリップ本体の遠位側に移動することでクリップ本体の把持部を閉じることができる。
【0023】
本発明はまた、上記クリップカートリッジを用いて、医療用クリップ装置を製造する方法も提供する。本発明のクリップ装置の製造方法は、対象物を摘まむクリップ本体およびクリップ本体を締め付ける締付リングを有するクリップと、遠位側に連結部を有する線状物と、を有し、クリップ本体は、遠位側に対象物を把持する把持部と、近位側に線状物の連結部と連結する基端部とを有するクリップ装置を準備する工程と、クリップカートリッジの挿入路に、遠位側に連結部を有する線状物を挿入して、締付リングの遠位端よりも遠位側で連結部をクリップ本体に連結する工程を有することが好ましい。
【0024】
本発明の他のクリップ装置の製造方法は、対象物を摘まむクリップ本体およびクリップ本体を締め付ける締付リングを有するクリップと、遠位側に連結部を有する線状物と、内腔に線状物を配置する内筒体と、を有し、クリップ本体は、遠位側に対象物を把持する把持部と、近位側に線状物の連結部と連結する基端部とを有するクリップ装置を準備する工程と、クリップカートリッジの挿入路に、遠位側に連結部を有する線状物を挿入して、締付リングの遠位端よりも遠位側で連結部をクリップ本体に連結する工程と、連結部を内筒体に対して近位側に移動させて、内筒体の内腔に配置する工程と、を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明のクリップカートリッジは、当接部が締付リングに接触して締付リングの動きを制止するため、クリップ本体と締付リングとが接触することを防止できる。このため、締付リングがクリップ本体の近位端よりも遠位側に移動して締付リングの内側にクリップ本体の基端部が入ることを抑制でき、クリップ本体の基端部が、締付リングの内径に規制されずに開きやすくなる。したがって、線状物の連結部をクリップ本体の基端部に連結しやすくなる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、医療用のクリップを、遠位側に連結部を有する線状物の前記連結部と連結するための医療用クリップカートリッジに関するものである。本発明のクリップカートリッジは、内視鏡下でクリップ装置を利用した処置を行うに当たり、クリップを線状物と連結するために用いられる。クリップを取り付けたクリップ装置を内視鏡の鉗子口から鉗子チャンネル内に挿入して、クリップを処置対象組織まで搬送することにより、患者の体内でクリップによる施術を行うことができる。本発明のクリップカートリッジを用いることができるクリップ装置は、少なくともクリップと線状物とを含み、線状物は少なくとも連結部と線状物本体とを含む。
【0028】
以下、下記実施の形態に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴を理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0029】
図1〜
図3には、クリップカートリッジの平面図を示す。
図1は、カバーをつけた状態のクリップカートリッジを表し、
図2は、
図1に示したクリップカートリッジのカバーを外した状態を表している。また、
図3には、クリップを収納した状態のクリップカートリッジ本体を示す。クリップカートリッジを用いてクリップを線状物に連結する際は、カートリッジ内に、クリップ本体と締付リングを配置した上で、クリップカートリッジ本体にカバーを取り付けて使用する。
【0030】
クリップカートリッジについて詳しく説明する前に、
図3〜
図7を参照して、クリップシステムの構成例をまず説明する。
図3は、クリップを収納した状態のクリップカートリッジ本体に、遠位側に連結部を有する線状物を挿入する様子を表し、
図4は、クリップ本体の側面図を表し、
図5は、
図4に示したクリップ本体の基端部の拡大図を表し、
図6は線状物の連結部の斜視図を表し、
図7は線状物の連結部の変形例を示す側面図を表している。
図3に示すように、クリップシステム20は;クリップカートリッジ1と;クリップ本体21と締付リング29を有するクリップと、遠位側に連結部32を有する線状物30とを有するクリップ装置40と;を備えることが好ましい。
【0031】
クリップ装置40は、線状物30の遠位側にクリップ本体21の近位側を連結し構成される。このとき、締付リング29は、線状物30の遠位側に位置する。締付リング29は、線状物本体31上にあってもよく、線状物本体31の遠位側に連結部32が設けられている場合はその近位側に重なっていてもよい。図示していないが、線状物30の近位側には、線状物30を操作するための操作部が設けられていることが好ましい。内視鏡下において、クリップ装置40の操作部を操作することにより、クリップの向きを変えたり、クリップの開閉を制御して、対象物をクリップにより把持することができる。クリップ装置40の線状物本体31の遠位側に連結部32を設けて線状物30とすることが好ましい。線状物30の連結部32をクリップと連結することにより、線状物30の遠位側にクリップ本体21を取り付けることができる。線状物本体31と連結部32は、別体とし線状物本体31の遠位側に連結部32を取り付けてもよく、線状物本体31の遠位側を連結部32としてもよい。なお、クリップ装置40あるいは線状物30の近位側とは、線状物30の軸方向(延在方向)に対して、装置使用者の手元側の方向を指し、遠位側とは近位側の反対方向(すなわち処置対象側の方向)を指す。
【0032】
クリップは、内視鏡下での処置の際、臓器の病変部等の対象物を封止したり、把持して反対牽引(カウンタートラクション)したり、止血、縫縮、マーキングのために対象物を摘まむ(クリッピングする)器具である。クリップは、対象物を摘まむクリップ本体21およびクリップ本体21を締め付ける締付リング29を有する。クリップ本体21は、近位側を支点として、締付リング29によって遠位側が開閉可能に構成される。
【0033】
図4に示すように、クリップ本体21は、遠位側に対象物を把持する把持部22と、近位側に線状物30の連結部32と連結する基端部23を有する。クリップ本体21は、2つの把持部材24(24A、24B)が対向配置されることで形成されている。その場合、基端部23であって、2つの把持部材24の少なくともいずれか一方には、対向する把持部材24側に突出している係合部25が設けられていることが好ましい。連結部32は、クリップ本体21の係合部25と連結される。2つの把持部材24は、基端部23において、少なくとも互いに離間する方向(好ましくは、互いに離間する方向および近づく方向)に移動可能である。クリップ本体21の基端部23が開く構成とすることにより、クリップ本体21と線状物30を連結しやすくなる。なお、連結部32と強固に連結するためには、2つの把持部材24に係合部25がそれぞれ設けられていることが好ましい。
【0034】
クリップ本体21の係合部25は、線状物30の連結部32と連結可能な形状であれば種々の形状を選択できる。クリップ本体21の係合部25の形状は、対向する把持部材24側に突出している爪状や、板状、半球状、半楕円球状、円柱状、角柱状、円錐状、角錐状等の形状の凸状部であってもよい。係合部25は、
図4〜
図5に示す基端部23のいずれかの箇所に設けることが好ましい。係合部25は、種々の形状、位置を選択できるが、中でも
図4〜
図5に示すように、クリップ本体21の近位端に設けられた爪26であることが好ましい。特に、一の把持部材24Aの係合部25が、他の把持部材24B側に突出している第1の爪26であり、他の把持部材24Bの係合部25が、一の把持部材24A側に突出している第2の爪26であることが好ましい。その場合、以下の(1)式および(2)式を満たすことが好ましい。
0≦L
1/A
1≦0.87 (1)
0≦L
2/A
1≦0.87 (2)
ここで、L
1は基端部23の開閉方向における第1の爪26の最大長さであり、L
2は基端部23の開閉方向における第2の爪26の最大長さであり、A
1は基端部23の開閉方向における基端部23の係合部25が設けられていない部分での把持部材24間の最大離間距離である。このように係合部25を爪26にすることにより、クリップ本体21と線状物30が強固に連結されるため、係合部25から連結部32が外れにくくなる。
【0035】
爪26の大きさや角度は、連結部32の形状に応じて適宜選択することができる。また、連結部32との接触により生じる摩擦を抑制するためには、係合部25は半球状や半楕円球状であってもよい。基端部23の開閉方向における係合部25における把持部材24の離間距離は、クリップ本体21の長軸方向において一定であってもよく、変化していてもよい。例えば、把持部材24の離間距離は遠位側に向かって小さくてもよい。その場合、近位側では把持部材24の離間距離が大きく形成されているため把持部材24の間に連結部32を挿入しやすい一方、遠位側では把持部材24の離間距離が小さく形成されているため、係合部25と連結部32が強固に係合される。
【0036】
クリップ本体21は、例えば、1枚の金属板をU字状やV字状に折り曲げることにより形成される。また、クリップ本体21は、対向配置した2枚の金属板を接続することにより形成されてもよい。
【0037】
図4〜
図5に示すように、クリップ本体21の基端部23での把持部材24の離間距離を一定に保持するために、一の把持部材24(24A)の基端部23と他の把持部材24(24B)の基端部23を互いに接続する補強部27が設けられていてもよい。クリップ本体21と連結部32の係合を阻害しないために、補強部27は基端部23の遠位側に設けられることが好ましい。クリップ本体21の基端部23で把持部材24A、24Bは対向していればよく、クリップ本体21の基端部23の開閉方向における基端部23での把持部材24の離間距離は、一定でもよく、変化していてもよい。例えば基端部23の遠位側に向かって狭くなっていたり、広がっていたりしてもよい。
図4では補強部27を含めてクリップ本体21が1枚の金属板から形成されているが、補強部27としてクリップ本体21と異なる部材が設けられていてもよい。補強部27は、把持部材24と同じまたは異なる材料から好ましく構成され、その厚さも把持部材24と同じであってもよく、異なっていてもよい。補強部27がクリップ本体21と異なる部材の場合、補強部27はねじ、カシメ等による機械的固定、溶接、接着等の方法により把持部材24に取り付けられる。
【0038】
クリップには、クリップ本体21の周囲を囲み、クリップ本体21を締め付ける締付リング29が設けられる。後述する内筒体37と締付リング29とを接触させるなどして、締付リング29をクリップ本体21の近位側から遠位側に移動させることにより、締付リング29がクリップ本体21の把持部22を閉じるように構成される。
【0039】
クリップ本体21や締付リング29は、高弾性と生体適合性を有する材料から構成されることが好ましい。クリップ本体21や締付リング29は、例えば、SUS301、SUS303、SUS304、SUS631等のステンレス鋼やNi−Ti合金等から構成されることが好ましい。
【0040】
図6に示すように、線状物30は、線状に形成されており、その遠位側に連結部32を有する。詳細には、線状物30は、線状物本体31と、線状物本体31の遠位側に設けられた連結部32を有する。線状物本体31は、体腔内の形状に沿って屈曲する可撓性と、処置対象組織まで確実に到達する剛性の両方をバランス良く兼ね備えていることが望ましい。線状物本体31としては、例えば、ステンレス鋼、炭素鋼等の金属線材や、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン)、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレンやポリプロピレン)、ポリエステル樹脂(例えば、PET)、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、PEEK)、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂(例えば、PTFE、PFA、ETFE)等の合成樹脂から形成された糸条を用いることができる。当該糸条は、モノフィラメント糸であってもよく、マルチフィラメント糸であってもよく、スパン糸であってもよい。
【0041】
連結部32は、生体適合性を有する材料から構成されることが好ましく、例えば、クリップ本体21や締付リング29と同様に、SUS301、SUS303、SUS304、SUS631等のステンレス鋼やNi−Ti合金等から構成されることが好ましい。また、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン)、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレンやポリプロピレン)、ポリエステル樹脂(例えば、PET)、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、PEEK)、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂(例えば、PTFE、PFA、ETFE)等の合成樹脂から構成されていてもよい。
【0042】
線状物30の連結部32には、クリップ本体21の係合部25と係合する係合受部33が設けられることが好ましい。これにより、クリップと線状物30の連結が容易に行える。係合受部33は、クリップ本体21の係合部25と係合可能であればその形状は特に制限されず、例えば、線状物本体31と同程度の外径を備えることが好ましい。係合受部33は、クリップ本体21の係合部25と係合するために、例えば爪、フック、凸状部、凹状部、貫通口またはこれらの組み合わせであることが好ましい。中でも、係合受部33は、クリップ本体21の係合部25と係合する貫通口33Aであることが好ましい。これにより、クリップ本体21と線状物30の連結が容易に行えるとともに、シンプルな構造であるため生産性を高められる。なお、
図6に示す実施態様では連結部32に係合受部33として貫通口33Aが設けられており、
図7に示す実施態様では連結部32に係合受部33として、貫通口33Aと該貫通口33Aよりも遠位側の凸状部33Bとが設けられている。
図7において、貫通口33Aのない態様も連結部の態様として好ましい。
【0043】
連結部32の長軸方向の長さは、挿入路3の長さを超えるものであってもよく、挿入路3より短くてもよい。連結部32の長軸方向の長さが挿入路3よりも短い場合、連結部32を先頭に連結部32と線状物本体31とが挿入路3に挿入される形態であってもよい。
【0044】
連結部32は、
図6に示すように遠位側に扁平部35を有していてもよい。連結部32の遠位側に扁平部35が形成されていれば、基端部23の2つの把持部材24が離間して配置されている部分にこの扁平部35を容易に挿入することができ、係合部25と連結部32とを係合させることで、連結部32とクリップ本体21とを連結させやすくなる。
図3および
図6に示したクリップ装置40および連結部32では、連結部32の扁平部35に貫通口33Aが設けられており、この貫通口33Aにクリップ本体21の基端部23を嵌め合わせることで、連結部32がクリップ本体21と連結できるようになっている。
【0045】
クリップ本体21の係合部25と線状物30の連結部32は、種々の組み合わせを用いることができる。例えば係合部25として爪を、連結部32には貫通口を設けるなどして、一方に設けられた爪と他方の貫通口が噛み合うようにしたり、両方に爪を設け爪どうしが噛み合うようにして連結することができる。
【0046】
図3に示すように、線状物30は、少なくとも一部が内筒体37内に配置されていることが好ましい。すなわち、クリップシステム20は、内腔に線状物30を配置する内筒体37を有することが好ましい。このようにクリップシステム20を構成することより、線状物30にクリップ本体21を連結して使用する際、線状物30を軸方向に対して近位側または遠位側に移動させることによって、クリップ本体21の把持部22の開度を調整することができる。例えば、線状物30を内筒体37に対して近位側に移動させることにより、締付リング29と内筒体37とが接触し、締付リング29がクリップ本体21の遠位側に移動することにより、クリップ本体21の把持部22を閉じることができる。また、線状物30の連結部32を、内筒体37から出し入れ自在に構成することもできる。締付リング29の内径が、連結部32の最大外径よりも大きいことが好ましい。このようにクリップシステム20を構成することより、線状物30にクリップ本体21を連結する際に、連結部32が締付リング29の内腔をスムーズに通過することができる。また、締付リング29の内径が、内筒体37の外径よりも小さく、締付リング29の外径が、内筒体37の内径よりも大きいことが好ましい。このようにクリップシステム20を構成することにより、締付リング29と内筒体37とが接触し、締付リング29がクリップ本体21の遠位側に移動することにより、クリップ本体21の把持部22を閉じることができる。
【0047】
内筒体37は、体腔内の形状に沿って屈曲する可撓性と、処置対象組織まで確実に到達する剛性の両方をバランス良く兼ね備えていることが望ましい。内筒体37は、例えば、コイル状の金属や合成樹脂によって形成された筒体や、短筒状の関節駒を軸方向に複数連結して回動可能にした筒体、合成樹脂から形成された筒体から構成することができる。
【0048】
図示していないが、クリップシステム20はさらに外筒体を有していてもよく、この場合、内筒体37が外筒体内に配置される。外筒体は、線状物30にクリップ本体21を連結した状態で、クリップ本体21が外筒体から出し入れ自在に形成されていることが好ましい。このようにクリップシステム20を構成することにより、クリップシステム20を内視鏡の鉗子口から鉗子チャンネル内に挿入し、クリップ本体21を対象組織の近くに搬送するまでの間に、外筒体によって、クリップ本体21が内視鏡内の鉗子チャンネルや病変部以外の体内組織等を傷付けることを防止することができる。
【0049】
外筒体は、体腔内の形状に沿って屈曲する可撓性と、処置対象組織まで確実に到達する剛性の両方をバランス良く兼ね備えていることが望ましい。外筒体は、例えば、合成樹脂から形成された筒体や、コイル状の金属や合成樹脂によって形成された筒体、短筒状の関節駒を軸方向に複数連結して回動可能にした筒体から構成することができる。なお外筒体としては、合成樹脂から形成された筒体が好ましく用いられ、また、外筒体と内筒体37との位置関係を使用者(術者)が目視で確認できるように、外筒体は透明または半透明な材料から形成されていることが好ましい。
【0050】
クリップシステム20へのクリップの取り付け作業を容易に行うために、クリップカートリッジ1が用いられる。
図1〜
図3に示すように、クリップカートリッジ1は、線状物30を挿入する挿入口2と、挿入口2から遠位側に向かって延びる挿入路3と、挿入路3の遠位側に連通し、クリップ本体21を収納するクリップ本体収納部4と、挿入路3にクリップ本体21を締め付ける締付リング29を収納するリング収納部5と、を有し、リング収納部5は、締付リング29の挿入路3の延在方向への動きを制止するための当接部6を備え、締付リング29の遠位端がクリップ本体21の近位端よりも近位側に配置されている。
【0051】
また、本発明の他のクリップカートリッジ1は、線状物30を挿入する挿入口2と、挿入口2から遠位側に向かって延びる挿入路3と、挿入路3の遠位側に連通し、クリップ本体21を収納するクリップ本体収納部4と、挿入路3にクリップ本体21を締め付ける締付リング29を収納するリング収納部5と、を有し、リング収納部5は、締付リング29の挿入路3の延在方向への動きを制止するための当接部6を備え、リング収納部5の遠位端がクリップ本体収納部4の近位端よりも近位側に配置されている。
【0052】
クリップカートリッジ1を使用する際は、クリップ本体収納部4にクリップ本体21を配置し、当接部6を締付リング29に当接させてリング収納部5に締付リング29を配置した上で、線状物30を挿入口2から挿入路3に挿入することにより、線状物30の遠位側に設けられた連結部32をクリップ本体21に適切に連結することができる。クリップカートリッジ1の使用時に、クリップをカートリッジ内に配置することに代えて、予めクリップ本体21および締付リング29が収納されたクリップカートリッジ1を用いることができる。なお、クリップカートリッジ1は、挿入口2側を近位側、クリップ本体21が収納される側を遠位側という。
【0053】
クリップ本体収納部4は、クリップ本体21を収納する空間である。クリップ本体21は把持部22が開いた状態でクリップ本体収納部4に収納される。クリップ本体収納部4は、クリップ本体21の基端部23(クリップ本体21の近位側)が挿入路3に向いて配置されるように、クリップカートリッジ1に形成される。本発明のクリップカートリッジ1には、クリップ本体収納部4にクリップ本体21が収納されたものも、収納されていないものも、いずれの態様も含まれる。なお、クリップ本体収納部4は、クリップ本体21の近位端よりも近位側に、線状物30の連結部32を配置できる空間が確保されていてもよい。
【0054】
クリップ本体収納部4には、クリップ本体21の動きを制止するための突起4Aが設けられていてもよい。例えば、クリップ本体21の補強部27と、突起4Aを当接させることによって、クリップ本体21が遠位側に移動しにくくなる。突起4Aの形状は、例えば、円形、楕円形、長方形や三角形等の多角形、またはこれらの組み合わせであってもよい。
図1〜
図3において突起4Aは、遠位側が円形に、近位側が円の中心から近位側に延在する細長い長方形に形成されているが、突起の形状は特に限定されない。
【0055】
挿入路3は、線状物30を挿入する通路であり、挿入口2とクリップ本体収納部4を繋ぐように形成される。挿入路3は、通常、挿入口2からクリップ本体収納部4まで真っ直ぐ延びるように形成されており、挿入路3の延在方向は、挿入口2からクリップ本体収納部4の入口に至る方向に相当し、挿入路3の延在方向の近位側とは挿入路3の挿入口2側であり、遠位側とはクリップ本体収納部4側である。挿入口2は挿入路3の入口に相当し、クリップカートリッジ1の外側面に形成される。
【0056】
リング収納部5は、クリップ本体21を締め付ける締付リング29を収納する空間であり、挿入路3の途中に設けられる。
図8〜
図11は、クリップカートリッジ内部を表し、
図3に示したVIII部分を拡大した平面図を表す。
図8〜
図11では、締付リング29は、径方向の中心軸が挿入路3の延在方向に沿った状態でリング収納部5に収納されている。本発明のクリップカートリッジ1には、リング収納部5に締付リング29が収納されたものも、リング収納部5に締付リング29が収納されていないものも、いずれの態様も含まれる。
【0057】
リング収納部5は、締付リング29の挿入路3の延在方向への動きを制止するための当接部6を備える。当接部6が締付リング29に接触して締付リング29の動きを制止することができるため、締付リング29がクリップ本体21の近位端よりも遠位側に移動して締付リング29の内側にクリップ本体21の基端部23が入ることを抑制でき、クリップ本体21の基端部23が、締付リング29の内径に規制されずに開きやすくなる。したがって、線状物30の連結部32をクリップ本体21の基端部23に連結しやすくなる。また、締付リング29が挿入路3の近位側や遠位側に移動してリング収納部5やクリップカートリッジ1から脱落することも防止できる。本発明では、クリップ本体収納部4がリング収納部5より遠位側に配置されるか、締付リング29の遠位端がクリップ本体21の近位端よりも近位側に配置されている。
【0058】
本発明のクリップカートリッジ1の動作の詳細について
図8〜
図11を用いて説明する。まず、
図8に示すように、クリップ本体収納部4にクリップ本体21、リング収納部5に締付リング29が配置されたクリップカートリッジ1を準備する。次いで、クリップカートリッジ1の挿入口2から挿入路3へ、遠位側に連結部32を有する線状物30を挿入する。
図8では、
図7で示した態様と同様に、連結部32に係合受部33として、貫通口33Aと、該貫通口33Aよりも遠位側に凸状部33Bが設けられているが、係合受部33の形状は特に限定されない。凸状部33Bは、遠位側に向かって突出し、遠位側に向かって先細りになるように形成されている。係合受部33は、貫通口33Aが設けられず、凸状部33Bのみからなる形状であってもよい。その場合、クリップ本体21の係合部25を、凸状部33Bに係合させることができる。
【0059】
図9に示すように、線状物30を遠位側に移動させて、線状物30に締付リング29を通し、次いで線状物30の連結部32の係合受部33をクリップ本体21の基端部23に連結する。具体的には、連結部32の凸状部33Bを把持部材24に設けられている係合部25(爪26)間に挿入すると、クリップ本体21の基端部23では、対向する把持部材24が互いに離間する方向に移動する。すなわち、連結部32により把持部材24の隙間が押し広げられて、クリップ本体21の基端部23がクリップ本体21の開閉方向に開く。このとき、線状物30によって、締付リング29が遠位側へ押されるが、締付リング29の遠位端と遠位側の当接部6である突起部7Aとが接触し、締付リング29の不用意な移動を抑止できる。締付リング29がクリップ本体21の係合部25を締付リング29の内部に含むように移動すると、基端部23の開閉方向における基端部23の把持部材間の最小離間距離(係合部25における最小離間距離)が十分に広がらず、係合部25が連結部32と連結することができなくなる。
【0060】
図10に示すように、線状物30を遠位側に移動させると、凸状部33Bによりさらに把持部材24の隙間が押し広げられる。
【0061】
図11に示すように、線状物30をさらに遠位側に移動させると、係合部25(爪26)が凸状部33Bの最大外径となる部分を乗り越え、爪26が凸状部33Bよりも近位側にある貫通口33Aと噛み合うことで係合する。
【0062】
以上のとおり、本発明のクリップカートリッジ1は、当接部6が締付リング29に接触して締付リング29の動きを制止するため、締付リング29の遠位端をクリップ本体21の近位側に配置することができる。このため、締付リング29がクリップ本体21の近位端よりも遠位側に移動してクリップ本体21の基端部23を囲むことを抑制でき、クリップ本体21の基端部23が、締付リング29の内径に規制されずに開きやすくなる。これにより、線状物30の連結部32をクリップ本体21の基端部23に連結しやすくなる。
【0063】
クリップカートリッジ1内でクリップ本体21の基端部23は締付リング29に覆われにくい。このため、例えば
図8〜
図11に示すように、2つの把持部材24の少なくともいずれか一方には、対向する把持部材24側に突出している係合部25が設けられており、連結部32には、クリップ本体21の係合部25と係合する係合受部33が設けられている場合、下記A
2およびR
1が以下の(3)式を満たすことが好ましい。
A
2<R
1 (3)
ここで、A
2は係合部25と係合受部33が係合していない状態での、基端部23の開閉方向における基端部23の把持部材24間の最小離間距離であり、R
1は係合受部33の最大外径である。これにより、クリップ本体21と線状物30が強固に連結されるため、係合部25から連結部32が外れにくくなる。
【0064】
また、上記A
2と上記R
1が、以下の(4)式を満たすことがより好ましい。
0.13≦(A
2/R
1)≦0.50 (4)
これにより、クリップ本体21と線状物30がより強固に連結される。
【0065】
線状物30の連結部32が係合受部33を有している場合、基端部23の2つの把持部材24の最大離間時の、基端部23の開閉方向における基端部23の最大長さL
4は、以下の式で表されることが好ましい。
L
4=(L
3+R
1)−A
2
ここで、L
3は係合部25と係合受部33が係合していない状態での、基端部23の開閉方向における基端部23の最大長さであり、L
3>A
2である。このようにクリップ本体21の基端部23が開く構成とすることで、線状物30の遠位端部が比較的大きいサイズであってもクリップ本体21と線状物30を強固に連結することができる。
【0066】
上記クリップシステムは、以下の(5)式および(6)式を満たすことが好ましい。
L
3<R
2 (5)
L
4>R
2 (6)
ここで、R
2は締付リング29の内径である。このようなクリップシステムは、係合部25と係合受部33が係合していない状態では基端部23は締付リング29を通り、2つの把持部材24の最大離間時には基端部23は締付リング29を通らないものである。このようにL
3を設定することにより、締付リング29を基端部23から把持部22側に移動させることで、締付リング29がクリップ本体21の把持部22を閉じることができる。また、上記のようにL
4を設定することで、クリップ本体21の基端部23が締付リング29の内径を超えて大きく開くため、線状物30の連結部32をクリップ本体21の基端部23に連結しやすくなる。
【0067】
当接部6は、挿入路3の内面から突出する突起部(例えば、図面における7、7A、7B)であることが好ましい。突起部は、その周囲の部分よりも挿入路3の内面から挿入路3の空間に突出して形成される。突起部が締付リング29に当接することによって、締付リング29の動きを制止することができる。締付リング29に接触して締付リング29の動きを制止する当接部6は、挿入路3の内面から突出する突起部である他に、後述する挿入路3の内面に設けられた凹部8であってもよい。締付リング29が凹部8に嵌って収納されている場合、締付リング29の遠位端と凹部の壁面とが接触して、締付リング29の動きを制止することができる。突起部について
図12〜
図14を用いて説明する。
【0068】
突起部の高さは、挿入路3の突起部が設けられた部分において、線状物30の連結部32が挿入路3を通るように形成されていれば、その高さは特に限定されないが、突起部は、挿入路3の断面の中心(もしくは重心)に達しない高さで、挿入路3内面から突出していることが好ましい。
【0069】
図12〜
図14に示すように、突起部は、遠位側突起部7Aと近位側突起部7Bとからなり、遠位側突起部7Aと近位側突起部7Bとの間にリング収納部5が配置されていることが好ましい。遠位側突起部7Aは締付リング29のクリップ本体収納部4側に向いている面と当接するため、締付リング29が挿入路3の遠位側に移動するのを防ぐ。また、近位側突起部7Bは、締付リング29の挿入口2側に向いている面と当接するため、締付リング29が挿入路3の近位側に移動するのを防ぐ。
【0070】
把持部材24の幅方向(
図12〜
図13では紙面上下方向、
図14では紙面垂直方向)において、突起部の長さは特に限定されず、例えば、
図12に示すように、締付リング29の外径よりも長くてもよく、
図13に示すように締付リング29の外径よりも短くてもよい。締付リング29の動きを確実に制止するためには、把持部材24の幅方向において突起部は締付リング29の最大肉厚よりも長いことが好ましい。
【0071】
遠位側突起部7Aと近位側突起部7Bはそれぞれ1つ又は複数設けることができる。この場合、遠位側突起部7Aと近位側突起部7Bの数は同じであってもよく、異なっていてもよい。
図12〜
図14ではいずれも遠位側突起部7Aが2つ、近位側突起部7Bが1つ設けられている。このように、遠位側突起部7Aが複数設けられており、近位側突起部7Bが1つのみ設けられていることが好ましい。クリップカートリッジ1を使用する際には、線状物30が挿入口2から遠位側に向かって挿入され、クリップ本体21の基端部23と線状物30の連結後には、クリップカートリッジカバー16(後述する)を取り外し、カバーが取付けられていた側に線状物30を持ち上げることによって、クリップ本体21をクリップカートリッジ1から取り外す。このように線状物30は基本的には遠位側に向かって移動するものであるため、締付リング29が近位側に移動する可能性よりも、線状物30の連結部32に追随して遠位側に移動する可能性の方が高い。このため、遠位側に突起部を複数設けておくことで締付リング29の動きを確実に制止できる。
【0072】
遠位側突起部7Aと近位側突起部7Bの高さは同じであってもよく、異なっていてもよい。中でも、挿入路3の径方向において、遠位側突起部7Aが近位側突起部7Bよりも内方に突出していることが好ましい。これにより締付リング29が遠位側に移動しにくくなる。ここで、突起部の高さとは、挿入路3の内面から挿入路3の断面の中心(もしくは重心)に向かう方向における長さである。挿入路3の径方向の内方とは、挿入路3の壁面から中心に向かう方向である。
【0073】
挿入路3の断面において、遠位側突起部7Aが複数設けられる場合、一の遠位側突起部7Aと、他の遠位側突起部7Aは、挿入路3の断面の中心を中心軸とする回転対称に配置されていてもよい。これにより、締付リング29は当接部6によりバランスよく支持されるため、線状物30が締付リング29に意図せず接触しても締付リング29の動きを制止することができる。なお、近位側突起部7Bが複数設けられる場合も同様に配置することができる。
【0074】
突起部の高さは、挿入路3の延在方向において一定でもよく、変化していてもよい。突起部には、遠位側または近位側に向かって高くなる傾斜面が形成されていてもよい。遠位側突起部7Aに設けられる傾斜面は、突起部の近位端を含む面であることが好ましい。これにより、突起部と締付リング29を当接させつつ、突起部と締付リング29の間に隙間を設けることができるため、リング収納部5に締付リング29を配置しやすくなる。なお、
図12〜
図13では遠位側突起部7Aに傾斜面が設けられている。
【0075】
遠位側突起部7Aが複数設けられる場合、複数の遠位側突起部7Aが、挿入路3の中心(重心)を中心軸とする回転対称に配置されていることが好ましい。これにより、線状物30の連結部32が遠位側突起部7Aに嵌まり込んで、連結部32が、クリップ本体収納部4に収納されたクリップ本体21に対して適切な角度や位置に配置されるようになる。このため、クリップ本体21と線状物30の連結を確実に行うことができ、誤操作を防ぐことができる。
【0076】
突起部の傾斜面は、直線的に傾斜するように形成されてもよく、曲線的に傾斜するように形成されてもよい。傾斜面は、例えば、挿入路3の延在方向に対して20°以上60°以下の角度を有するように形成されることが好ましい。傾斜面は、1つの突起部に対して複数設けられていてもよく、当接する締付リング29の形状に合わせて適宜変更できる。
【0077】
また、クリップカートリッジ1を容易に製造するためには、突起部は、挿入路3内面に対して階段状に形成されてもよい。
【0078】
挿入路3の延在方向における突起部の位置は特に限定されず、例えば、挿入路3の延在方向の中心よりも近位側であってもよく、遠位側であってもよい。突起部が、挿入路3の延在方向中心よりも近位側に設けられていれば、締付リング29が遠位側に移動してもクリップ本体収納部4に到達しにくくなる。突起部が挿入路3の延在方向中心よりも遠位側に設けられていれば、締付リング29が挿入口2から脱落しにくくなる。
【0079】
クリップカートリッジ1は、1つの部材から構成されていてもよく、2以上の部材から構成されていてもよい。なお、クリップカートリッジ1は内部に挿入路3とクリップ本体収納部4が形成されるものであり、これらの形成を容易にする点から、クリップカートリッジ1は少なくとも2以上の部材から構成されることが好ましい。例えば、クリップカートリッジ1はクリップカートリッジ本体15とクリップカートリッジカバー16の2部材から構成されてもよい。クリップカートリッジ本体15は、挿入路3形成用の第1の溝とクリップ本体収納部4形成用の第2の溝を有し、クリップカートリッジ本体15をクリップカートリッジカバー16で覆うことにより、クリップ本体収納部4とリング収納部5がそれぞれ形成される。なお、挿入路3形成用の第1の溝をクリップカートリッジカバー16で覆うことにより挿入口2と挿入路3とクリップ本体収納部4とリング収納部5が形成されるようにしてもよく、挿入口2用の溝を別途クリップカートリッジ本体15に形成してもよい。このようにクリップカートリッジ1を構成すれば、クリップカートリッジ1の作製が容易になり、また、クリップカートリッジ1にクリップ本体21をセットしたり、線状物30をクリップ本体21に連結したクリップ装置40をクリップカートリッジ1から取り出すことが容易に行えるようになる。
【0080】
クリップカートリッジカバー16は、クリップカートリッジ本体15の一部を覆うものであればよく、例えばクリップカートリッジ本体15に対してスライド可能な部材で構成される。クリップカートリッジカバー16は、クリップカートリッジ本体15の挿入路3形成用の第1の溝と収納部形成用の第2の溝を覆うことができるものであれば、その形状は特に限定されない。
図1〜
図2では、クリップカートリッジカバー16が筒状に形成され、クリップカートリッジ本体15を挿入路3の延在方向を軸として取り囲むように、クリップカートリッジ1が構成されている。なお、クリップカートリッジカバー16が板状に形成され、クリップカートリッジ本体15と重ね合わされるように構成されていてもよい。クリップカートリッジカバー16がクリップカートリッジ本体15と対向する面は、フラットに形成されていてもよく、挿入路3形成用の第1の溝とクリップ本体収納部4形成用の第2の溝がクリップカートリッジカバー16にも形成されていてもよい。
【0081】
当接部6は、
図12〜
図13に示すようにクリップカートリッジ本体15の第1の溝内に設けられてもよく、クリップカートリッジカバー16のクリップカートリッジ本体15と対向する面(図示せず)に設けられてもよい。これにより、クリップカートリッジ1の構成を簡素化することができる。また、当接部6は、クリップカートリッジ本体15およびクリップカートリッジカバー16とは別部材に設けられていてもよい。
【0082】
図示していないが、当接部6が、クリップカートリッジカバー16のクリップカートリッジ本体15と対向する面から突出する突起部である場合、突起部は1つ又は複数設けられてもよい。カバーに設けられる突起部は、クリップカートリッジ本体15の第1の溝内に設けられる突起部と同様に構成される。また、突起部は、クリップカートリッジカバー16をクリップカートリッジ本体15に取付けた状態で、締付リング29の外周面に当接するようにクリップカートリッジカバー16のクリップカートリッジ本体15と対向する面に設けられてもよい。突起部で締付リング29の外周面を押さえることによっても締付リング29の挿入路3の延在方向への動きを制止することができる。
【0083】
図2に示すように、クリップカートリッジカバー16のクリップカートリッジ本体15と対向する面には、クリップ本体21の動きを制止するための当接部6の突起部として、突起16Aが設けられていてもよい。突起16Aの形状は、例えば、円形、楕円形、長方形や三角形等の多角形、またはこれらの組み合わせであってもよい。
図2において、突起16Aはクリップ本体収納部4の遠近方向全体に延在する長方形に形成されているが、突起16Aの形状は特に限定されない。
【0084】
突起部は、挿入路3から取り外し可能に形成されていてもよい。例えば
図14では、遠位側突起部7Aが連結部32の挿入方向を規制する規制部材17に形成され、規制部材17が上方にスライド可能に形成されている。突起部の取り外しとは、クリップカートリッジ1の挿入路3内面から突起部が外れることをいい、突起部または突起部が設けられた部材(例えば規制部材17)がクリップカートリッジ1から分離してもよく、突起部または突起部が設けられた部材がクリップカートリッジ1にスライド可能に配置されていてもよい。このように突起部が形成されていれば、線状物30をクリップ本体21と連結させた後、クリップ装置40をクリップカートリッジ1から取り出す際に、クリップ装置40が突起部に引っ掛かっても、突起部を取り外すことでクリップ装置40をクリップカートリッジ1から容易に取り出すことができる。また、クリップ装置40をクリップカートリッジ1から取り出す際に、予め突起部を取り外すようにしてもよい。
図14に示すクリップカートリッジ本体15に、クリップカートリッジカバー16を装着した際に、規制部材17上の突起部(遠位側突起部7A)が挿入路3内面から突出するように構成することで、クリップカートリッジカバー16によって規制部材17の動きを規制することができる。
【0085】
突起部は、線状物30を挿入路3に挿入した際に、線状物30の連結部32が突起部に接触することで線状物30が軸回転し、連結部32の角度や位置などが制御されてもよい。突起部が、締付リング29の収納と線状物30の軸回転の両方の機能を兼ねることができ、クリップカートリッジ1の構成を簡素化できるため好ましい。
【0086】
図15〜
図16を用いて当接部6が凹部8である例について説明する。
図15は、クリップカートリッジ1に締付リング29を配置した状態を示し、
図16はクリップカートリッジ1から締付リング29を取り外した状態を示す。当接部6は、挿入路3の内面に設けられる凹部8であってもよい。この場合、凹部8に締付リング29を収納し、凹部8の内壁面に締付リング29が当接することで、締付リング29の挿入路3の延在方向への動きを制止できる。
【0087】
締付リング29を収納するために、挿入路3の延在方向において、凹部8は締付リング29よりも長く形成される。凹部8の最大深さD(挿入路3の内面を基準として締付リング29の径方向外側に向かう高さ)は、締付リング29の肉厚よりも大きいことが好ましい。これにより、締付リング29の動きを確実に制止できる。
【0088】
図6〜
図7に示すように、連結部32の近位側には、係合部25の最小外径よりも外径が大きい肉厚部36が形成されていてもよい。連結部32に肉厚部36が設けられる場合、凹部8の最大深さDは、以下の式を満たすことが好ましい。
D<(R
3−R
4)
ここで、R
3は締付リング29の外径、R
4は肉厚部36の最大外径である。
凹部8の最大深さDを上記範囲に設定すれば、締付リング29が凹部8に嵌まった状態でも肉厚部36が締付リング29の内側を通ることができる。
【0089】
凹部8の最大深さDは、例えば、締付リング29の外径R
3の30%以下の大きさであることが好ましく、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下の大きさであり、また、3%以上であることが好ましく、5%以上であることがさらに好ましい。
【0090】
凹部8は1つであってもよく、複数設けられていてもよい。例えば、凹部8を複数設ける場合には、クリップカートリッジ本体15の第1の溝と、クリップカートリッジカバー16のクリップカートリッジ本体15と対向する面に設けることができる。
【0091】
図17〜
図18は、クリップカートリッジの当接部を含む近位側の斜視図を表し、
図17は、クリップカートリッジ1に締付リング29を配置した状態を示し、
図18はクリップカートリッジ1から締付リング29を取り外した状態を示す。
図17〜
図18に示すように、当接部6は、挿入路3の内面から突出する突起部と、挿入路3の内面に設けられる凹部8の両方を備えていてもよい。これにより、締付リング29の挿入路3の延在方向への動きがより一層制止される。
【0092】
クリップカートリッジ本体15、クリップカートリッジカバー16、規制部材17の構成材料は特に限定されないが、精密加工が容易となり、また中に収納するクリップを衛生的に保ち、クリップの損傷を防ぐ点から、合成樹脂から形成されることが好ましい。またクリップカートリッジカバー16は、使用者(術者)が線状物30にクリップ本体21を連結する作業を目で見ながら確認できるように、透明または半透明な材料から形成されていることが好ましい。
【0093】
クリップカートリッジ1を用いれば、クリップ本体21を線状物30と連結して、クリップ装置40を簡単に製造することができる。例えば、対象物を摘まむクリップ本体21およびクリップ本体21を締め付ける締付リング29を有するクリップと、遠位側に連結部32を有する線状物30と、を有し、クリップ本体21は、遠位側に対象物を把持する把持部22と、近位側に線状物30の連結部32と連結する基端部23とを有するクリップ装置40を準備する工程と、クリップカートリッジ1の挿入路3に、遠位側に連結部32を有する線状物30を挿入して、締付リング29の遠位端よりも遠位側で連結部32をクリップ本体21に連結する工程を行うことにより、クリップ装置40を製造することができる。
【0094】
また、内筒体37を有するクリップ装置40は、対象物を摘まむクリップ本体21およびクリップ本体21を締め付ける締付リング29を有するクリップと、遠位側に連結部32を有する線状物30と、内腔に線状物30を配置する内筒体37と、を有し、クリップ本体21は、遠位側に対象物を把持する把持部22と、近位側に線状物30の連結部32と連結する基端部23とを有するクリップ装置40を準備する工程と、クリップカートリッジ1の挿入路3に、遠位側に連結部32を有する線状物30を挿入して、締付リング29の遠位端よりも遠位側で連結部32をクリップ本体21に連結する工程と、連結部32を内筒体37に対して近位側に移動させて、内筒体37の内腔に配置する工程を行うことにより、製造することができる。
【0095】
本願は、2016年12月28日に出願された日本国特許出願第2016−256524号に基づく優先権の利益を主張するものである。2016年12月28日に出願された日本国特許出願第2016−256524号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。