特許第6937334号(P6937334)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TOA株式会社の特許一覧

特許6937334音響信号形成装置、音響受信装置、および音響システム
<>
  • 特許6937334-音響信号形成装置、音響受信装置、および音響システム 図000002
  • 特許6937334-音響信号形成装置、音響受信装置、および音響システム 図000003
  • 特許6937334-音響信号形成装置、音響受信装置、および音響システム 図000004
  • 特許6937334-音響信号形成装置、音響受信装置、および音響システム 図000005
  • 特許6937334-音響信号形成装置、音響受信装置、および音響システム 図000006
  • 特許6937334-音響信号形成装置、音響受信装置、および音響システム 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6937334
(24)【登録日】2021年9月1日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】音響信号形成装置、音響受信装置、および音響システム
(51)【国際特許分類】
   H04H 20/61 20080101AFI20210909BHJP
   G10L 19/018 20130101ALI20210909BHJP
   H04B 11/00 20060101ALI20210909BHJP
   H04M 1/00 20060101ALI20210909BHJP
   H04M 11/00 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
   H04H20/61
   G10L19/018
   H04B11/00 A
   H04B11/00 B
   H04M1/00 U
   H04M11/00 302
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-64926(P2019-64926)
(22)【出願日】2019年3月28日
(65)【公開番号】特開2020-174224(P2020-174224A)
(43)【公開日】2020年10月22日
【審査請求日】2020年3月6日
【審判番号】不服2020-12621(P2020-12621/J1)
【審判請求日】2020年9月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000223182
【氏名又は名称】TOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100163979
【弁理士】
【氏名又は名称】濱名 哲也
(72)【発明者】
【氏名】野崎 保志
【合議体】
【審判長】 吉田 隆之
【審判官】 山中 実
【審判官】 佐藤 智康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−106100(JP,A)
【文献】 特開2018−81456(JP,A)
【文献】 特開2012−88795(JP,A)
【文献】 特開2002−217889(JP,A)
【文献】 特開平11−352881(JP,A)
【文献】 特開2003−177984(JP,A)
【文献】 特開2003−179573(JP,A)
【文献】 特開平11−145933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04H 20/61, G10L 19/018, H04B 11/00, H04M 1/00, H04M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響受信装置であって、
放送源から出される放送音を受信する受信部と、
前記放送源から出される放送音から情報を取得するために提供されるアプリケーションであって、前記音響受信装置に予めインストールされ、前記放送源に対応付けられる難読ファイルを復号する復号アプリケーションと、
前記受信部が受信した前記放送音から埋込情報を取り出す抽出部と、
前記放送源から出される前記放送音の取得のために提供される前記難読ファイルを記憶する記憶部とを備え、
前記難読ファイルは、前記放送源ごとに割り当てられて前記放送源ごとに異なる符号であって前記放送音から前記埋込情報を取り出すときに用いられる拡散符号を難読化処理することによって形成されたファイルであり、
前記抽出部は、前記復号アプリケーションにより前記難読ファイルを復号することによって前記拡散符号を取得し、取得した前記拡散符号に基づいて前記放送音から前記埋込情報を取り出す
音響受信装置。
【請求項2】
前記難読ファイルは、前記難読ファイルのエラーを検査するためのチェックデジットを含む
請求項1に記載の音響受信装置。
【請求項3】
放送源に設けられる音響信号形成装置であって、
音声信号を取得する第1取得部と、
埋込情報を取得する第2取得部と、
前記埋込情報を前記音声信号に埋め込むために提供されるファイルであって、前記放送源に対応付けられる難読ファイルを記憶する記憶部と、
前記埋込情報を前記音声信号に埋め込むために提供されるアプリケーションであって、前記音響信号形成装置に予めインストールされ、前記難読ファイルを復号する復号アプリケーションと、
前記第2取得部が取得した前記埋込情報を前記第1取得部が取得した前記音声信号に埋め込む埋込部とを備え、
前記難読ファイルは、前記放送源ごとに割り当てられて前記放送源ごとに異なる符号であって前記音声信号に前記埋込情報を埋め込むときに用いられる拡散符号を難読化処理することによって形成されたファイルであり、
前記埋込部は、前記復号アプリケーションにより前記難読ファイルを復号することによって前記拡散符号を取得し、取得された前記拡散符号に基づいて前記埋込情報を前記音声信号に埋め込む
音響信号形成装置。
【請求項4】
前記難読ファイルは、前記難読ファイルのエラーを検査するためのチェックデジットを含む
請求項3に記載の音響信号形成装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の音響信号形成装置を備える放送源と、前記放送源から出される放送音を受信する音響受信装置と、を備える音響システムであって、
前記音響受信装置は、
前記放送源から出される前記放送音を受信する受信部と、
前記放送源から出される前記放送音から情報を取得するために提供されるアプリケーションであって、前記音響受信装置に予めインストールされ、前記放送源に対応付けられる難読ファイルを復号する復号アプリケーションと、
前記受信部が受信した前記放送音から埋込情報を取り出す抽出部と、
前記難読ファイルを記憶する記憶部とを備え、
前記難読ファイルは、放送源ごとに割り当てられて前記放送源ごとに異なる符号であって前記放送音から前記埋込情報を取り出すときに用いられる拡散符号を難読化処理することによって形成されたファイルであり、
前記抽出部は、前記復号アプリケーションにより前記難読ファイルを復号することによって前記拡散符号を取得し、取得した前記拡散符号に基づいて前記放送音から前記埋込情報を取り出す
音響システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声とともに情報を伝える音響信号形成装置、音響受信装置、および音響システムに関する。
【背景技術】
【0002】
音響システムとして、特許文献1に記載の技術が知られている。同特許文献1に記載の音響システムは、識別情報を音響信号とともに放送し、この放送を受音(受信)した音響受信装置(携帯端末)は、放送音から識別情報を抽出してその識別情報に関連する情報をユーザーに提示する、ということを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−227921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数の放送源から放送が聞こえる場合、上記の受信装置はそれぞれから音響信号を受信することになる。そうすると、受信信号には、複数の識別情報(埋込情報)が混合することになり、受信信号から適切な識別情報を取り出せない虞がある。
【0005】
そこで、受信信号に複数の埋込情報が混合する場合でも、適切な埋込情報を取り出すことが出来る音響信号形成装置、音響受信装置、および音響システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記課題を解決する音響システムは、放送音に埋め込まれている埋込情報を音響受信装置に取得させる音響システムであって、前記放送音には、放送源ごとに異なる拡散符号に基づいて、前記埋込情報が埋め込まれる。
【0007】
上記構成によれば、埋込情報は、拡散符号に基づいて放送音に埋め込まれる。放送音に埋め込まれた埋込情報は、埋め込みに用いられた拡散符号によって抽出されるが、埋め込みに用いられていない拡散符号では、放送音に埋め込まれた埋込情報が抽出されない。さらに、上記構成では、拡散符号は、放送源ごとに異なる。したがって、複数の放送音が同一空間に伝播する場合でも、埋込情報の取り出しのときに所定の拡散符号が用いられることによって、所定の埋込情報だけを取り出すことができる。このようにして、埋込情報の混合を抑制できる。すなわち、複数の放送音が同一空間に伝播するとき、受信信号に複数の埋込情報が混合するが、このような場合でも、適切な埋込情報を取り出することが出来る。
【0008】
(2)上記課題を解決する音響受信装置は、放送音を受信する受信部と、前記放送音から埋込情報を取り出す抽出部と、放送源に割り当てられる符号であって前記放送音から埋込情報を取り出すときに用いられる拡散符号を記憶する記憶部とを備え、前記抽出部は、前記放送音から前記拡散符号に基づいて前記埋込情報を取り出す。この構成によれば、放送源ごとに個別の拡散符号が割り当てられるため、埋込情報の混合を抑制できる。
【0009】
(3)上記音響受信装置において、前記記憶部は、前記拡散符号の難読化処理によって形成された難読ファイルを記憶し、前記抽出部は、前記難読ファイルを復号することによって前記拡散符号を取得する。この構成によれば、拡散符号を秘密にできる。
【0010】
(4)上記音響受信装置において、前記難読ファイルは、前記難読ファイルのエラーを検査するためのチェックデジットを含む。この構成によれば、難読ファイルのエラーを検出できる。
【0011】
(5)上記課題を解決する音響信号形成装置であって、音声信号を取得する第1取得部と、埋込情報を取得する第2取得部と、放送源ごとに異なる符号であって放送音に埋込情報を埋め込むときに用いられる拡散符号を記憶する記憶部と、前記拡散符号に基づいて前記埋込情報を前記音声信号に埋め込む埋込部とを備える。この構成によれば、放送源ごとに異なる拡散符号に基づいて埋込情報が放送音に埋め込められるため、埋込情報の混合を抑制できる。
【0012】
(6)上記音響信号形成装置において、前記記憶部は、前記拡散符号の難読化処理によって形成された難読ファイルを記憶し、前記埋込部は、前記難読ファイルを復号することによって前記拡散符号を取得する。この構成によれば、拡散符号を秘密にできる。
【0013】
(7)上記音響信号形成装置において、前記難読ファイルは、前記難読ファイルのエラーを検査するためのチェックデジットを含む。この構成によれば、難読ファイルのエラーを検出できる。
【発明の効果】
【0014】
音響信号形成装置、音響受信装置、および音響システムは、埋込情報の混合を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】音響システムの模式図。
図2】管理事業者と放送源との関係を示す関係図。
図3】音響受信装置のブロック図。
図4】埋込情報と提供情報とを関係づける表。
図5】音響信号形成装置のブロック図。
図6】放送源と拡散符号と音声信号と埋込情報との関係を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1図6を参照して、音響システムについて説明する。
音響システム1は、放送音ASに埋め込まれている埋込情報SCを音響受信装置10に取得させる。放送音ASには、放送源CBごとに異なる拡散符号SDに基づいて、埋込情報SCが埋め込まれる。本実施形態では、埋込情報SCは、放送源CBの放送と関係づけられる提供情報と対応づけられている。音響受信装置10は、埋込情報SCを取得し、埋込情報SCに基づいて放送源CBの放送と関係づけられる提供情報を取得する。
【0017】
図1に示されるように、利用者は、音響受信装置10(後述参照)によって放送音ASを受信する。例えば、利用者は、音響受信装置10によって、駅のスピーカー2aから放送される第1の放送源CBの放送音ASを受信したり、店舗内のスピーカー2bから出される第2の放送源CBの放送音ASを受信したりする。音響受信装置10として、例えば、携帯電話、スマートフォン、ノートパソコンが挙げられる。音響受信装置10は、放送音ASに埋め込まれた埋込情報SCに基づいて、放送源CBの放送と関係づけられる提供情報を取得する。このようにして、音響受信装置10を利用する利用者は、放送源CBの放送と関係づけられる提供情報を受け取ることができる。
【0018】
放送源CBは、後述の拡散符号SDが割り当てられる団体または個人が提供するサービスに関する情報を管理し、供給する機器である。なお、1つの事業者に、複数の放送源CBが含まれてもよい。例えば、店舗を運営する事業者の各部署毎に放送源CBがあってもよい。
【0019】
提供情報は、放送源CBの放送に関係づけられる情報である。提供情報の保存場所は限定されない。一例では、提供情報は、インターネットIN上のサーバに記憶される。他の例では、提供情報は、音響受信装置10に記憶される。提供情報の例を次に挙げる。店舗運営で用いられる放送源CBの場合、提供情報は、店舗内の商品の詳細内容である。放送源CBが自治体で用いられる場合、提供情報は、災害時に避難する場所を示す地図である。放送源CBが展示を運営する事業者で用いられる場合、提供情報は、展示品の詳細を示す情報である。提供情報は、詳細な情報が保存されている場所を示すリンク情報(例えば、URL:Uniform Resource Locator)であってもよい。本実施形態では、提供情報は、インターネットIN上のURLとして利用者の音響受信装置10に出力される(図4参照)。
【0020】
放送源CBごとに1つの拡散符号SDが割り当てられる。拡散符号SDは、放送源CBと一対一の関係で対応付けられる。すなわち、放送源CBが有する拡散符号SDは、他の放送源CBが有する拡散符号SDのいずれとも異なる。1つの事業者に複数の拡散符号SDに割り当てられてもよい。この場合、1つの事業者内に、1つの拡散符号SDを有する複数の放送源CBが存在する。
【0021】
放送音ASは、可聴域の周波数を含む音波である。放送音ASには、埋込情報SCが電子透かしによって埋め込められる。放送音ASは、放送装置から放送される。放送音ASの例として、アナウンス、警報、一般用または視力障害者用の音サイン、BGM(バックグラウンドミュージック)、美術館や展示会において出力される説明の音声、番組の放送が挙げられる。
【0022】
埋込情報SCは、提供情報に対応付けられる情報である。埋込情報SCは、放送音ASに埋め込まれる。本実施形態では、埋込情報SCは、放送源CBの放送に関係づけられる提供情報とリンクづける識別情報である(図4参照)。
【0023】
拡散符号SDは、上述のとおり放送源CBに割り当てられる符号である。拡散符号SDは、放送音ASから埋込情報SCを取り出すときに使われる。埋め込み方法は限定されない。例えば、埋込情報SCは、エコー拡散法またはスペクトラム拡散法によって放送音ASに埋め込められる。本実施形態では、埋込情報SCは、エコー拡散法によって放送音ASに埋め込められる。拡散符号SDは、埋込情報SCが埋め込められた放送音ASから、埋込情報SCを取り出す際にも用いられる。埋込情報SCが埋め込められた放送音ASから埋込情報SCを取り出すときには、放送音ASに埋込情報SCを埋め込む際に用いられる拡散符号SDと同一の拡散符号SDが用いられる。
【0024】
拡散符号SDは、複数の放送源CBに対して異なるように割り当てられる符号であれば、どのような符号であってもよい。例えば、拡散符号SDとして、PN(Pseudo Noise)符号が用いられる。
【0025】
拡散符号SDは、難読化されることが好ましい。拡散符号SDが他人に知られると、悪意によって、改竄される虞があるからである。例えば、音響受信装置10において、埋込情報SCを取り出す際に用いられる拡散符号SDが改竄されると、放送音ASから埋込情報SCが取り出すことが出来なくなる。
【0026】
一例では、拡散符号SDは、難読化処理によって、読み取られ難いように難読化される。本実施形態では、拡散符号SDが難読化処理によって形成されたファイルを「難読ファイルFA」と呼ぶ。難読化処理は、拡散符号SDを難読化コードに変換することを示す。難読化コードの変換は、各種の難読化コードを作成するソフトを使うことによって行われる。
【0027】
難読ファイルFAは、チェックデジットを含むことが好ましい。チェックデジットは、難読ファイルFAのエラーを検出するためのコードである。拡散符号SDの使用のときには、チェックデジットによって難読ファイルFAのエラーが検査され、エラーがないときに難読ファイルFAが復号アプリケーションによって復号され、復号された情報から拡散符号SDが取り出される。
【0028】
難読ファイルFAは、1つの管理事業者CAによって管理されることが好ましい。管理事業者CAは、1つの事業体であってもよいし、複数の事業体が参加するコンソーシアムであってもよい。
【0029】
図2に示されるように、一例では、管理事業者CAは、難読ファイルFAを放送源CBに割り当てる。これによって、放送源CBごとに個別の拡散符号SDが割り当てられることになる。また、管理事業者CAは、難読ファイルFAとともに、難読ファイルFAを復号できる復号アプリケーションを提供することが好ましい。管理事業者CAは、放送音ASに埋込情報SCを埋め込むための音響形成アプリケーションを放送源CBにインストールしてもよい。
【0030】
図3および図4を参照して、音響受信装置10について説明する。
音響受信装置10は、放送音ASを受信する受信部11と、放送音ASから埋込情報SCを取り出す抽出部12と、記憶部13とを備える。
【0031】
記憶部13は、拡散符号SDを記憶する。本実施形態では、記憶部13は、難読ファイルFAを記憶する。また、記憶部13は、参照表(図4参照)を記憶する。参照表は、埋込情報SCと提供情報とを対応付ける表である。好ましくは、音響受信装置10は、さらに情報取得部14を備える。
【0032】
抽出部12は、埋込情報SCが埋め込められた放送音ASから拡散符号SDに基づいて埋込情報SCを取り出す。
抽出部12は、難読ファイルFAを復号することによって拡散符号SDを取得する。好ましくは、難読ファイルFAは、上述のように、チェックデジットを含む。この場合、抽出部12は、チェックデジットに基づいて前記難読ファイルFAをチェックする。
【0033】
抽出部12は、音響受信装置10にインストールされる復号アプリケーションと、音響受信装置10の演算装置とによって構成される。復号アプリケーションは、チェック部と、復号部と、デコード部とを含む。
【0034】
チェック部は、難読ファイルFAにエラーが含まれているか否かをチェックする。
復号部は、難読ファイルFAを復号し、復号された難読ファイルFAから拡散符号SDを取り出す。デコード部は、拡散符号SDに基づいて放送音ASから埋込情報SCを取り出す。エコー拡散法によって埋込情報SCが埋め込まれている場合、デコード部は、放送音ASをケプストラム変換し、ケプストラム変換後の信号と拡散符号SDとの相関とを取ることによって、埋込情報SCを取り出す。
【0035】
情報取得部14は、図4に示される参照表を参照して埋込情報SCに対応付けられる提供情報を取得する。具体的には、情報取得部14は、情報取得アプリケーションと、音響受信装置10の演算装置とによって構成される。情報取得アプリケーションは、参照表から埋込情報SCに対応する提供情報を取得する。
【0036】
参照表は、放送源CBごとに作成される。すなわち、図4に示されるように、参照表は、拡散符号SDごとに作成される。参照表における埋込情報SCとしての識別番号と提供情報との対応付けは、放送源CBによって設定される。一例では、災害警報として複数の放送音AS(例えば、津波警報、波浪警報、地震警報)があり、災害それぞれに対して提供情報(例えば、各災害に対応する避難場所を示すURL)が設定される場合、放送音ASと埋込情報SCとしての識別番号と提供情報とは次のように関係づけられる。放送音ASそれぞれに異なる識別番号が埋め込められる。識別番号と提供情報とは参照表によって対応付けられる。この構成によって、各種の放送音ASのそれぞれは、埋込情報SCを介して、提供情報と対応づけられる。
【0037】
図5を参照して、音響信号形成装置20について説明する。
音響信号形成装置20は、上述の音響システム1において用いられる放送音ASを形成する。放送音ASは、放送源CBごとに異なる拡散符号SDに基づいて埋込情報SCが埋め込まれている信号である。一例では、音響信号形成装置20は、放送音ASを音ファイルとして他の装置に出力する。音響信号形成装置20は、放送音ASを音波として出力する装置に内蔵されてもよい。例えば、音響信号形成装置20は、放送装置内に内蔵される。
【0038】
音響信号形成装置20は、音声信号BSを取得する第1取得部21と、埋込情報SCを取得する第2取得部22と、拡散符号SDを記憶する記憶部23と、拡散符号SDに基づいて埋込情報SCを音声信号BSに埋め込む埋込部24とを備える。
【0039】
記憶部23は、拡散符号SDの難読化処理によって形成された難読ファイルFAを記憶する。好ましくは、難読ファイルFAは、上述のように、チェックデジットを含む。記憶部23は、音声信号BSを記憶してもよい。
【0040】
埋込部24は、難読ファイルFAを復号することによって拡散符号SDを取得する。好ましくは、埋込部24は、チェックデジットに基づいて難読ファイルFAをチェックする。埋込部24は、音響信号形成装置20にインストールされる埋込アプリケーションと、音響信号形成装置20の演算装置とによって構成される。埋込アプリケーションは、チェック部と、復号部と、エンコード部とを含む。
【0041】
チェック部は、難読ファイルFAにエラーが含まれているか否かをチェックする。復号部は、難読ファイルFAを復号し、復号された難読ファイルFAから拡散符号SDを取り出す。エンコード部は、拡散符号SDに基づいて音声信号BSに埋込情報SCを埋め込む。エコー拡散法によって埋込情報SCを埋め込む場合、エンコード部は、拡散符号SDによって埋込情報SCを時間領域で拡散したカーネルを形成して、カーネルを音声信号BSに埋め込む。エンコード部は、埋込情報SCとしてのカーネルが埋め込まれた音声信号BSを放送音ASとして出力する。
【0042】
図6を参照して、放送源CBと、拡散符号SDと、音声信号BSと、埋込情報SCとの関係を説明する。
図6に示されるように、1つの放送源CBに1つの拡散符号SDが割り当てられる。音声信号BSは、放送源CBによって設定される。1つの放送源CBが使用する複数の音声信号BSについて、これらの音声信号BSの情報の埋め込みには、1つの拡散符号SDが用いられる。音声信号BSのそれぞれに対して個別の埋込情報SCが埋め込められる。なお、異なる音声信号BSに、同じ埋込情報SCが埋め込められてもよい。
【0043】
埋込情報SCとしての識別番号は、予め定められた範囲内で設定される。例えば、識別番号は、16ビットの符号列によって表される。この場合、放送源CBは、約64K個の識別番号を使うことができる。
【0044】
本実施形態の作用を説明する。
放送音ASに埋め込まれる埋込情報SCは、いずれの放送源CBにおいても、16ビットの符号列によって表される識別番号(埋込情報SC)が用いられる。したがって、複数の放送源CBが、同じ識別番号(埋込情報SC)を用いる場合も想定される。このような場合でも、1つの放送源CBが使用できる拡散符号SDは、他の放送源CBが使用する拡散符号SDのいずれとも異なる。このため、所定の拡散符号SDによって放送音ASからデコードすることによって、所定の拡散符号SDによって埋め込められた埋込情報SCだけを取り出すことが出来る。すなわち、特定の放送源CBが埋め込んだ埋込情報SCだけを取得できる。このように、複数の放送源CBが、同じ識別番号(埋込情報SC)を使用したとしても、放送音ASを受ける受側において、識別番号(埋込情報SC)が混合することが抑制される。
【0045】
本実施形態の効果を説明する。
(1)音響システム1は、放送音ASに埋め込まれている埋込情報SCを音響受信装置10に取得させるシステムである。放送音ASには、放送源CBごとに異なる拡散符号SDに基づいて、埋込情報SCが埋め込まれる。
【0046】
上記構成によれば、埋込情報SCは、拡散符号SDに基づいて放送音ASに埋め込まれる。放送音ASに埋め込まれた埋込情報SCは、埋め込みに用いられた拡散符号SDによって抽出されるが、埋め込みに用いられていない拡散符号SDでは、放送音ASに埋め込まれた埋込情報SCが抽出されない。さらに、上記構成では、拡散符号SDは、放送源CBごとに異なる。したがって、複数の放送音ASが同一空間に伝播する場合でも、埋込情報SCの取り出しのときに所定の拡散符号SDが用いられることによって、所定の放送源CBの埋込情報SCだけを取り出すことができる。このようにして、埋込情報SCの混合を抑制できる。すなわち、複数の放送音ASが同一空間に伝播するとき、受信信号に複数の埋込情報SCが混合するが、このような場合でも、適切な埋込情報を取り出することが出来る。
【0047】
(2)音響受信装置10は、受信部11と、放送音ASから埋込情報SCを取り出す抽出部12と、拡散符号SDを記憶する記憶部13とを備える。拡散符号SDは、放送源CBごとに割り当てられる。抽出部12は、放送音ASから、拡散符号SDに基づいて埋込情報SCを取り出す。この構成によれば、放送源CBごとに個別の拡散符号SDが割り当てられるため、埋込情報SCの混合を抑制できる。
【0048】
(3)音響受信装置10の記憶部13は、拡散符号SDの難読化処理によって形成された難読ファイルFAを記憶する。抽出部12は、難読ファイルFAを復号することによって拡散符号SDを取得する。この構成によれば、拡散符号SDを秘密にできる。
【0049】
(4)難読ファイルFAは、難読ファイルFAのエラーを検査するためのチェックデジットを含む。この構成によれば、難読ファイルFAのエラーを検出できる。
(5)音響信号形成装置20は、音声信号BSを取得する第1取得部21と、埋込情報SCを取得する第2取得部22と、拡散符号SDを記憶する記憶部23と、拡散符号SDに基づいて埋込情報SCを音声信号BSに埋め込む埋込部24とを備える。拡散符号SDは、放送源CBごとに異なる。この構成によれば、放送源CBごとに異なる拡散符号SDに基づいて埋込情報SCが放送音ASに埋め込められるため、埋込情報SCの混合を抑制できる。
【0050】
(6)音響信号形成装置20において、記憶部23は、拡散符号SDの難読化処理によって形成された難読ファイルFAを記憶する。埋込部24は、難読ファイルFAを復号することによって拡散符号SDを取得する。この構成によれば、拡散符号SDを秘密にできる。
【0051】
(7)上記音響信号形成装置20において、難読ファイルFAは、難読ファイルFAのエラーを検査するためのチェックデジットを含む。この構成によれば、難読ファイルFAのエラーを検出できる。
【0052】
<その他の実施形態>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0053】
・上記実施形態では、1つの音声信号BSに1つの埋込情報SCが埋め込められているが、1つの音声信号BSに複数の埋込情報SCが埋め込まれてもよい。
・上記実施形態では、1つの放送源CBに1つの拡散符号SDが割り当てられるが、複数の事業者に1つの拡散符号SDが割り当てられてもよい。この場合、本技術においては、複数の事業者は、共通の1つの拡散符号SDを用いることから、1つの放送源CBと見做される。
【符号の説明】
【0054】
AS…放送音、BS…音声信号、CA…管理事業者、CB…放送源、FA…難読ファイル、IN…インターネット、SC…埋込情報、SD…拡散符号、1…音響システム、2a…スピーカー、2b…スピーカー、10…音響受信装置、11…受信部、12…抽出部、13…記憶部、14…情報取得部、20…音響信号形成装置、21…第1取得部、22…第2取得部、23…記憶部、24…埋込部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6