特許第6937349号(P6937349)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6937349イメージングシステム、PET用ファントム、校正方法及び校正装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6937349
(24)【登録日】2021年9月1日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】イメージングシステム、PET用ファントム、校正方法及び校正装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/161 20060101AFI20210909BHJP
   G01T 1/20 20060101ALI20210909BHJP
   G01T 1/17 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
   G01T1/161 A
   G01T1/161 C
   G01T1/20 J
   G01T1/17 E
【請求項の数】29
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2019-197732(P2019-197732)
(22)【出願日】2019年10月30日
(62)【分割の表示】特願2014-108476(P2014-108476)の分割
【原出願日】2014年5月26日
(65)【公開番号】特開2020-34568(P2020-34568A)
(43)【公開日】2020年3月5日
【審査請求日】2019年11月5日
(31)【優先権主張番号】13/902,554
(32)【優先日】2013年5月24日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケント・シー・バー
(72)【発明者】
【氏名】シャオリ リ
(72)【発明者】
【氏名】ジン・チュン・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ホイニィ ドゥ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ガグノン
【審査官】 松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−228551(JP,A)
【文献】 特許第6615432(JP,B2)
【文献】 中国特許出願公開第104434160(CN,A)
【文献】 特開2010−091391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イメージングシステムを校正する校正方法であって、
円筒形状に形成された対消滅ターゲットに対して、内面に塗布される、内面に均一に堆積される、表面に含まれる、又は表面に塗布されるポジトロン放出放射性同位元素線源を前記イメージングシステムのイメージング領域の中または近傍に配置する第1のステップと、
前記対消滅ターゲットにおけるポジトロンの対消滅の結果生じる同時計数事象の対を前記イメージングシステムにおける検出器要素で検出する第2のステップと、
前記検出された同時計数事象の対に基づき前記検出器要素用の校正時間オフセットを計算する第3のステップと、
前記計算された校正時間オフセットで前記検出器要素に基づくタイミングを校正する第4のステップとを含む、
校正方法。
【請求項2】
前記第1のステップにおいて用いられる前記対消滅ターゲットの直径は、少なくとも10cm以上である、請求項1に記載の校正方法。
【請求項3】
前記第3のステップは、前記対消滅ターゲットの大きさに基づいて前記イメージング領域の大きさを決定することを含む、請求項1又は2に記載の校正方法。
【請求項4】
前記第3のステップは、前記検出された同時計数事象の対から少なくとも1つの対タイミング差ヒストグラムを生成するよう、かつ前記少なくとも1つの対タイミング差ヒストグラムを用いて、前記検出器要素用の前記校正時間オフセットを計算する、請求項1に記載の校正方法。
【請求項5】
前記第3のステップは、前記対タイミング差ヒストグラムの重心に対応する前記校正時間オフセットを計算する、請求項に記載の校正方法。
【請求項6】
前記第3のステップは、前記対タイミング差ヒストグラムの測定された重心と各検出器要素に対する予測される対のタイミング重心との差が予め設定された閾値未満になるまで、または各検出器要素に対する前記対タイミング差ヒストグラムの重心の絶対値が予め設定された閾値未満になるまで、検出器要素毎に前記校正時間オフセットを繰り返し更新する、請求項に記載の校正方法。
【請求項7】
前記第3のステップは、同時計数線毎に前記対タイミング差ヒストグラムを、それぞれが前記対消滅ターゲットと前記同時計数線の1つの交点を表す複数の領域に分割することを含む、請求項に記載の校正方法。
【請求項8】
前記第3のステップは、交点から前記同時計数線の端点を表す各検出器要素までの距離に基づき計算される異なる時間シフトを、各領域に適用することを含む、請求項に記載の校正方法。
【請求項9】
前記第3のステップは、前記対消滅ターゲットと任意の同時計数線の複数の交点が存在する場合、後続の交点との間隔が、前記対タイミング差ヒストグラムの検査から互いに異なる領域を識別することができるように十分に広くなるよう、同時計数対を形成するための前記イメージング領域を制限することを含む、請求項に記載の校正方法。
【請求項10】
前記第1のステップは、前記ポジトロン放出放射性同位元素線源としてGe−68/Ga−68、Na−22、F−18、FDGおよびRb−82のうちの1つを配置する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の校正方法。
【請求項11】
前記対消滅ターゲットの位置と向きを決定するために、前記対消滅ターゲットを画像化する第5のステップを更に含む、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の校正方法。
【請求項12】
前記第3のステップは、前記画像から決定された前記位置と向きを用いて、同時計数線毎に予測される対のタイミング差を計算することを含む、請求項11に記載の校正方法。
【請求項13】
前記第3のステップは、前記検出された同時計数事象の対を用いてウォーク補正係数を計算することを含み、
前記第4のステップは、前記ウォーク補正係数を用いて前記検出器要素に基づくタイミングを校正する、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の校正方法。
【請求項14】
前記第3のステップは、反対側の検出器対で検出された事象が個別に処理されるように、前記ウォーク補正係数の計算を並行処理にする、請求項13に記載の校正方法。
【請求項15】
円筒形状に形成された対消滅ターゲットに対して、内面に塗布される、内面に均一に堆積される、表面に含まれる、又は表面に塗布されるポジトロン放出放射性同位元素線源を含む、PET用ファントム。
【請求項16】
イメージング対象における第1の対消滅の結果生じる第1の同時計数事象の対を検出する検出器要素を備え、前記検出器要素で検出された前記第1の同時計数事象の対に基づいて前記イメージング対象をイメージングするイメージングシステムであって、
前記検出器要素は、前記イメージングシステムのイメージング領域の中または近傍に配置され円筒形状に形成された対消滅ターゲットに対して、内面に塗布される、内面に均一に堆積される、表面に含まれる、又は表面に塗布されるポジトロン放出放射性同位元素線源に基づいた第2の対消滅の結果生じる第2の同時計数事象の対を検出し、
前記検出された第2の同時計数事象の対に基づき前記検出器要素用の校正時間オフセットを計算する計算部と、
前記計算された校正時間オフセットで前記検出器要素に基づくタイミングを校正する校正部と、
を備える、イメージングシステム。
【請求項17】
前記計算部は、前記検出された第2の同時計数事象の対から少なくとも1つの対タイミング差ヒストグラムを生成するよう、かつ前記少なくとも1つの対タイミング差ヒストグラムを用いて、前記検出器要素用の校正時間オフセットを計算する、請求項16に記載のイメージングシステム。
【請求項18】
前記計算部は、前記対タイミング差ヒストグラムの重心に対応する前記校正時間オフセットを計算する、請求項17に記載のイメージングシステム。
【請求項19】
前記計算部は、前記対タイミング差ヒストグラムの測定された重心と各検出器要素に対する予測される対のタイミング重心との差が予め設定された閾値未満になるまで、または各検出器要素に対する前記対タイミング差ヒストグラムの重心の絶対値が予め設定された閾値未満になるまで、検出器要素毎に前記校正時間オフセットを繰り返し更新する、請求項18に記載のイメージングシステム。
【請求項20】
前記計算部は、同時計数線毎に前記対タイミング差ヒストグラムを、それぞれが前記対消滅ターゲットと前記同時計数線の1つの交点を表す複数の領域に分割する、請求項19に記載のイメージングシステム。
【請求項21】
前記計算部は、交点から前記同時計数線の端点を表す各検出器要素までの距離に基づき計算される異なる時間シフトを、各領域に適用する、請求項20に記載のイメージングシステム。
【請求項22】
前記計算部は、前記対消滅ターゲットと任意の同時計数線の複数の交点が存在する場合、後続の交点との間隔が、前記対タイミング差ヒストグラムの検査から互いに異なる領域を識別することができるように十分に広くなるよう、同時計数対を形成するための前記イメージング領域を制限する、請求項21に記載のイメージングシステム。
【請求項23】
前記ポジトロン放出放射性同位元素線源はGe−68/Ga−68、Na−22、F−18、FDGおよびRb−82のうちの1つである、請求項16乃至22のいずれか一項に記載のイメージングシステム。
【請求項24】
前記対消滅ターゲットの位置と向きを決定するために、前記対消滅ターゲットを画像化する処理部を更に備える、請求項16乃至23のいずれか一項に記載のイメージングシステム。
【請求項25】
前記計算部は、前記画像から決定された前記位置と向きを用いて、同時計数線毎に予測される対のタイミング差を計算する、請求項24に記載のイメージングシステム。
【請求項26】
前記計算部は、前記検出された第2の同時計数事象の対を用いてウォーク補正係数を計算し、
前記校正部は、前記ウォーク補正係数を用いて前記検出器要素に基づくタイミングを校正する、請求項16乃至25のいずれか一項に記載のイメージングシステム。
【請求項27】
前記ポジトロン放出放射性同位元素線源は、実質的に前記イメージングシステムのアイソセンタに配置され、
前記計算部は、前記ポジトロン放出放射性同位元素線源における、または線源ホルダーにおける前記第2の対消滅から生じる前記第2の同時計数事象の対を用いてウォーク補正係数を計算し、
前記校正部は、前記ウォーク補正係数を用いて前記検出器要素に基づくタイミングを校正する、請求項16又は17に記載のイメージングシステム。
【請求項28】
前記計算部は、反対側の検出器対で検出された事象が個別に処理されるように、前記ウォーク補正係数の計算を並行処理にする、請求項27に記載のイメージングシステム。
【請求項29】
イメージングシステムの検出器要素で検出された同時計数事象の対であって、円筒形状に形成された対消滅ターゲットに対して、内面に塗布される、内面に均一に堆積される、表面に含まれる、又は表面に塗布されるポジトロン放出放射性同位元素線源に基づいた対消滅の結果生じた同時計数事象の対を用いて、前記検出器要素用の校正時間オフセットを計算する計算部を含み、
前記ポジトロン放出放射性同位元素線源及び前記対消滅ターゲットは、前記イメージングシステムのイメージング領域の中又は近傍に配置されたものである、
校正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、イメージングシステム、ファントムおよび校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PET画像の品質は、飛行時間(Time-Of-Flight:TOF)ポジトロン放射断層撮影(Positron Emission Tomography:PET)技術を用いることにより改善されてきた。しかし、検出器の正確なタイミング校正は、TOF PETシステムにとって極めて重要である。正確な、ロバストな、そしてあまり時間を必要としない結晶ベースのタイミング校正法が、TOF PETのための最良のタイミング情報を得るために必要である。
【0003】
現在のタイミング校正法は、(1)光パルスを光電子増倍管(Photomultiplier Tube:PMT)に導入する方法または電気パルスをプリアンプに導入する方法と、(2)PMTに結合されたプラスチックシンチレータに埋め込まれた放射性線源を使用する方法と、(3)回転する線状放射性線源を使用する方法と、(4)散乱ファントム内の点状放射性線源を使用する方法とがある。
【0004】
図1は、放射性同位元素から放出されているポジトロンの例を示す。図1に示すように、従来のタイミング校正は、ポジトロン3と電子4が消滅(対消滅(annihilation))した後の同時発生の511keVのガンマ線5を用いて実行される。図1に示すように、ポジトロン3は、放射性同位元素2からかなり大きい運動エネルギーで放出され(通常、〜MeV)、対消滅前にいくらかの距離を移動する。従来技術では、一般的に、線源1および線源周りの材料は、放射性同位元素において、または通常ポジトロン放出同位元素2の数ミリメートル内にある周囲の材料において、対消滅が発生するように配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−281816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、効果的なタイミング校正を可能とするイメージングシステムおよび校正方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のイメージングシステムは、ポジトロン放出放射性同位元素線源と、対消滅ターゲットと、検出器要素と、計算部と、校正部とを含む。ポジトロン放出放射性同位元素線源は、イメージングシステムのイメージング領域の中または近傍に配置される。対消滅ターゲットは、円筒形状であり、ポジトロン放出放射性同位元素線源から所定の位置に配置される。検出器要素は、対消滅ターゲットにおけるポジトロンの対消滅の結果生じる同時計数事象の対を検出する。計算部は、検出された同時計数事象の対に基づき検出器要素用の校正時間オフセットを計算する。校正部は、計算された校正時間オフセットで検出器要素を校正する。ポジトロン放出放射性同位元素線源は円筒形状の対消滅ターゲットの内側に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、放射性同位元素から放出されているポジトロンの例を示す図である。
図2図2は、対消滅位置の分布に対応する1/10値幅プロットを図示した図である。
図3図3は、一実施形態によるポジトロン放出線源およびシールドを有するイメージングシステムを示す図である。
図4図4は、別の実施形態によるポジトロン放出線源およびシールドを有するイメージングシステムを示す図である。
図5図5は、別の実施形態によるポジトロン放出線源およびシールドを有するイメージングシステムを示す図である。
図6図6は、一実施形態による複数のポジトロン放出線源およびシールドを有するイメージングシステムを示す図である。
図7A図7Aは、複数の追加実施形態によるシールドおよびスキャナカバーを有していないイメージングシステムを示す図である。
図7B図7Bは、複数の追加実施形態によるシールドおよびスキャナカバーを有していないイメージングシステムを示す図である。
図8A図8Aは、ポジトロン放出線源が、イメージング装置の画像再構成領域のアイソセンタにある例を示す図である。
図8B図8Bは、異なる検出器対に対する飛行時間ヒストグラムを示す図である。
図9A図9Aは、同時計数線および対応する未校正タイミングスペクトル(対タイミング差ヒストグラム)の例を図示した図である。
図9B図9Bは、対消滅ターゲットの半径および同時計数対の画像再構成領域の半径を図示した図である。
図10A図10Aは、2つの起こり得る同時計数線を図示した図である。
図10B図10Bは、同時計数線に対応するタイミングスペクトル(対タイミング差ヒストグラム)を図示した図である。
図11図11は、一実施形態による方法を示したフローチャートを示す図である。
図12図12は、結晶毎のタイミングオフセットを計算するステップをより詳細に見て示したフローチャートを示す図である。
図13図13は、結晶毎のウォーク補正係数を計算するステップをより詳細に見て示したフローチャートを示す図である。
図14図14は、一実施形態によるイメージングシステムに対応するブロック図を示した図である。
図15図15は、一実施形態による計算装置を示すブロック図を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に記載の実施形態およびこれらに付随する多くの利点をより完全に理解することは、以下の詳細な説明を参照し添付図面と関連付けて考えれば、容易にできる。
【0010】
本実施形態は、概してポジトロン放出同位元素およびポジトロン対消滅ターゲット(「ターゲット」は「目標」とも表記する場合がある)を用いた飛行時間ポジトロン放射断層撮影(Positron Emission Tomography:PET)用のタイミング校正を行う装置および方法に関する。
【0011】
本実施形態は、イメージングシステムを校正する装置および方法を説明する。
【0012】
本明細書に開示する実施形態は、イメージングシステムを校正する方法を提供する。方法は、ポジトロン放出放射性同位元素線源をイメージングシステムのイメージング領域の中または近傍に配置するステップと、ポジトロン放出放射性同位元素線源から所定の距離だけ離れた位置に対消滅ターゲットを配置するステップと、対消滅ターゲットにおけるポジトロンの対消滅の結果生じる同時計数事象(event)の対を検出するステップと、検出された同時計数事象の対に基づきイメージングシステムにおける検出器要素用の校正時間オフセットを計算するステップと、完成した校正時間オフセットで検出器要素を校正するステップとを含む。
【0013】
別の実施形態の方法によると、方法は、検出された同時計数事象の対から少なくとも1つの対タイミング差ヒストグラムを生成するステップをさらに含む。
【0014】
別の実施形態の方法によると、計算ステップは、少なくとも1つの対タイミング差ヒストグラムを用いて、検出器要素用の校正時間オフセットを計算するステップをさらに含む。
【0015】
別の実施形態の方法によると、校正時間オフセットは、対タイミング差ヒストグラムの重心(質量中心(centroid))に対応する。
【0016】
別の実施形態の方法によると、校正時間オフセットを計算するステップは、差分最小化技術を適用するステップをさらに含む。
【0017】
別の実施形態の方法によると、方法は、各検出器要素に対する対タイミング差ヒストグラムの質量中心の絶対値が予め設定された閾値未満になるまで、各検出器要素に対する校正時間オフセットを繰り返し更新するステップをさらに含む。
【0018】
別の実施形態の方法によると、ポジトロン放出放射性同位元素線源は、点状線源および線状線源のうちの1つである。
【0019】
別の実施形態の方法によると、ポジトロン放出放射性同位元素線源は、イメージングシステムの画像再構成領域の外側にある。
【0020】
別の実施形態の方法によると、対消滅ターゲットは、イメージングシステムの内側のボアカバーであるか、あるいはイメージングシステム内の検出器の表面である。
【0021】
別の実施形態の方法によると、方法は、対消滅ターゲットをスキャナの画像再構成領域内に吊り下げるステップを含む。
【0022】
別の実施形態の方法によると、対消滅ターゲットは、円筒形シェルの形状をしている。
【0023】
別の実施形態の方法によると、方法は、ポジトロン放出放射性同位元素線源を円筒形シェル内に配置するステップをさらに含む。
【0024】
別の実施形態によると、方法は、ポジトロン放出放射性同位元素線源と対消滅ターゲットとの間の領域を部分的に真空状態にするステップをさらに含む。このステップは、ポジトロン飛程を延ばす効果があり、これにより対消滅ターゲットにおける対消滅事象の数が増加する。
【0025】
別の実施形態によると、方法は、対消滅ターゲットをポジトロン放出放射性同位元素線源から少なくとも5cmの位置に配置するステップをさらに含む。
【0026】
別の実施形態によると、方法は、同時計数線毎に対タイミング差ヒストグラムを少なくとも1つの領域に分割するステップをさらに含み、各領域は、対消滅ターゲットと同時計数線の1つの交点を表す。
【0027】
別の実施形態によると、方法は、交点から同時計数線の端点を表す各検出器要素までの距離に基づき計算される異なる時間シフトを、各領域に適用するステップをさらに含む。このステップにより、対消滅の実際の位置に対し補正することができる。
【0028】
別の実施形態の方法によると、方法は、ポジトロン放出放射性同位元素線源を円筒形シェルの内面上に実質的に均一に堆積させるステップをさらに含む。
【0029】
別の実施形態の方法によると、方法は、ポジトロン放出放射性同位元素線源を樹脂内に封入するステップをさらに含む。
【0030】
別の実施形態の方法によると、方法は、ポジトロン放出放射性同位元素線源を液体の状態で内面に塗布するステップをさらに含む。
【0031】
別の実施形態の方法によると、方法は、液状のポジトロン放出放射性同位元素線源をゼラチンと混合するステップ、粘着タイプの材料を液状のポジトロン放出放射性同位元素線源と混合するステップ、および内面を吸収材料から作るステップの少なくとも1つをさらに含む。
【0032】
別の実施形態の方法によると、方法は、対消滅ターゲットと任意の同時計数線の複数の交点が存在する場合、後続の交点との間隔が、対タイミング差ヒストグラムの検査から互いに異なる領域を識別することができるように十分に広くなるよう、同時計数対を形成するための画像再構成領域を配置するステップをさらに含む。対消滅ターゲットとの各交点のヒストグラムにおいて、1つの独立した「隆起部」があることになる。
【0033】
別の実施形態の方法によると、ポジトロン放出線源はGe−68/Ga−68である。この線源は、運動エネルギーが高く半減期が比較的長いため使用される。
【0034】
別の実施形態の方法によると、ポジトロン放出線源は、Na−22、F−18、FDG、またはRb−82のうちの1つである。
【0035】
別の実施形態の方法によると、方法は、対消滅ターゲットの位置と向きを決定するために、対消滅ターゲットをイメージングシステムで画像化するステップをさらに含む。画像化は、イメージングシステムがPET、PET/CT、またはPET/MRシステムであるかに応じて、PET、CTイメージング、またはMRであってもよい。
【0036】
別の実施形態の方法によると、方法は、3次元レーザースキャナを用いて、内側のボアカバーの位置と向きおよび検出器表面の位置と向きの少なくとも1つを決定するステップをさらに含む。
【0037】
別の実施形態の方法によると、方法は、画像から決定された位置と向きを用いて、同時計数線毎に予測される対のタイミング差を計算するステップをさらに含む。
【0038】
別の実施形態の方法によると、方法は、3次元レーザースキャナから決定された決定位置と向きを用いて、同時計数線毎に予測される対のタイミング差を計算するステップをさらに含む。
【0039】
別の実施形態の方法によると、方法は、検出された同時計数事象の対を用いてウォーク補正係数を計算するステップと、ウォーク補正係数を用いて検出器要素を校正するステップとをさらに含む。
【0040】
別の実施形態の方法によると、方法は、ポジトロン放出放射性同位元素線源を実質的にイメージングシステムのアイソセンタに配置するステップと、ポジトロン放出放射性同位元素線源における、または線源ホルダーにおける対消滅から生じる同時計数事象の対を用いてウォーク補正係数を計算するステップと、ウォーク補正係数を用いて検出器要素を校正するステップとをさらに含む。
【0041】
別の実施形態の方法によると、方法は、反対側の検出器対で検出された事象が個別に処理されるよう、ウォーク補正係数の計算を並列処理するステップをさらに含む。この考え方は、アイソセンタにおいて線源を使用することにより、反対側の検出器対からのデータだけを用いてウォーク補正係数を並列処理することが容易になるというものである。
【0042】
別の実施形態の方法によると、円筒形シェルの直径は少なくとも10cmである。この値は、後述の決定に、かつPETシステム用の最先端のタイミング分解能、例えば、目標の200ピコ秒に基づく。
【0043】
本明細書に開示する実施形態は、イメージングシステムを提供する。イメージングシステムは、イメージングシステムのイメージング領域の中または近傍に配置されたポジトロン放出放射性同位元素線源と、ポジトロン放出放射性同位元素線源から所定の距離だけ離れた位置に配置された対消滅ターゲットと、対消滅ターゲットにおけるポジトロンの対消滅の結果生じる同時計数事象の対を検出するよう構成されたイメージング装置と、検出された同時計数事象の対に基づきイメージング装置の検出器要素用の校正時間オフセットを計算するよう構成された計算回路と、完成した校正時間オフセットで検出器要素を校正するよう構成された校正回路とを含む。
【0044】
別の実施形態のシステムによると、計算回路は、検出された同時計数事象の対から少なくとも1つの対タイミング差ヒストグラムを生成するよう、かつ少なくとも1つの対タイミング差ヒストグラムを用いて、検出器要素用の校正時間オフセットを計算するようさらに構成される。
【0045】
別の実施形態のシステムによると、校正時間オフセットは、対タイミング差ヒストグラムの質量中心に対応する。
【0046】
別の実施形態のシステムによると、計算回路は、差分最小化技術を適用することにより校正時間オフセットを計算するようさらに構成される。
【0047】
別の実施形態のシステムによると、計算回路は、対タイミング差ヒストグラムの測定された質量中心と各検出器要素に対する予測される対のタイミング質量中心との差が予め設定された閾値未満になるまで、または各検出器要素に対する対タイミング差ヒストグラムの質量中心の絶対値が予め設定された閾値未満になるまで、検出器要素毎に校正時間オフセットを繰り返し更新するようさらに構成される。
【0048】
別の実施形態のシステムによると、ポジトロン放出放射性同位元素線源は、点状線源および線状線源のうちの1つである。
【0049】
別の実施形態のシステムによると、ポジトロン放出放射性線源は、イメージングシステムの画像再構成領域の外側にある。
【0050】
別の実施形態のシステムによると、対消滅ターゲットは、イメージングシステムの内側のボアカバーであるか、あるいはイメージングシステム内の検出器の表面である。
【0051】
別の実施形態のシステムによると、対消滅ターゲットは、スキャナの画像再構成領域内に吊り下げられる。
【0052】
別の実施形態のシステムによると、対消滅ターゲットは、円筒形シェルの形状をしている。
【0053】
別の実施形態のシステムによると、ポジトロン放出放射性同位元素線源は、円筒形シェル内に配置される。
【0054】
別の実施形態のシステムによると、ポジトロン放出放射性同位元素線源と対消滅との間の領域は、部分的に真空状態にされる。
【0055】
別の実施形態のシステムによると、対消滅ターゲットは、ポジトロン放出放射性同位元素線源から少なくとも5cmの位置に置かれる。
【0056】
別の実施形態のシステムによると、計算回路は、同時計数線毎に対タイミング差ヒストグラムを少なくとも1つの領域に分割するようさらに構成され、各領域は、対消滅ターゲットと同時計数線の1つの交点を表す。
【0057】
別の実施形態のシステムによると、計算回路は、交点から同時計数線の端点を表す各検出器要素までの距離に基づき計算される異なる時間シフトを、各領域に適用するようさらに構成される。
【0058】
別の実施形態のシステムによると、ポジトロン放出放射性同位元素線源は、円筒形シェルの内面上に実質的に均一に堆積させられる。
【0059】
別の実施形態のシステムによると、ポジトロン放出放射性同位元素線源は、樹脂内に封入される。
【0060】
別の実施形態のシステムによると、計算回路は、ポジトロン放出放射性同位元素線源を液体の状態で内面に塗布するようさらに構成される。
【0061】
別の実施形態のシステムによると、液状のポジトロン放出放射性同位元素線源が、ゼラチンまたは粘着タイプの材料と混合される、あるいは内面は吸収材料から作られる。
【0062】
別の実施形態のシステムによると、計算回路は、対消滅ターゲットと任意の同時計数線の複数の交点が存在する場合、後続の交点との間隔が、対タイミング差ヒストグラムの検査から互いに異なる領域を識別することができるように十分に広くなるよう、同時計数対を形成するための画像再構成領域を制限するようさらに構成される。
【0063】
別の実施形態のシステムによると、ポジトロン放出線源はGe−68/Ga−68である。
【0064】
別の実施形態のシステムによると、ポジトロン放出線源は、Na−22、F−18、FDG、またはRb−82のうちの1つである。
【0065】
別の実施形態のシステムによると、イメージング装置は、対消滅ターゲットの位置と向きを決定するために、対消滅ターゲットをイメージングシステムで画像化するようさらに構成される。
【0066】
別の実施形態のシステムによると、計算回路は、3次元レーザースキャナを用いて、内側のボアカバーの位置と向きおよび検出器表面の位置と向きの少なくとも1つを決定するようさらに構成される。
【0067】
別の実施形態のシステムによると、計算回路は、画像から決定された位置と向きを用いて、同時計数線毎に予測される対のタイミング差を計算するようさらに構成される。
【0068】
別の実施形態のシステムによると、計算回路は、3次元レーザースキャナから決定された決定位置と向きを用いて、同時計数線毎に予測される対のタイミング差を計算するようさらに構成される。
【0069】
別の実施形態のシステムによると、計算回路は、検出された同時計数事象の対を用いてウォーク補正係数を計算するようさらに構成され、かつ校正回路は、ウォーク補正係数を用いて検出器要素を校正するようさらに構成される。
【0070】
別の実施形態のシステムによると、ポジトロン放出放射性同位元素線源は、実質的にイメージングシステムのアイソセンタに配置され、計算回路は、ポジトロン放出放射性同位元素線源における、または線源ホルダーにおける対消滅から生じる同時計数事象の対を用いてウォーク補正係数を計算するようさらに構成され、かつ校正回路は、ウォーク補正係数を用いて検出器要素を校正するようさらに構成される。
【0071】
別の実施形態のシステムによると、計算回路は、反対側の検出器対で検出された事象が個別に処理されるように、ウォーク補正係数の計算を並行処理にするようさらに構成される。
【0072】
別の実施形態のシステムによると、円筒形シェルの直径は少なくとも10cmである。
【0073】
一実施形態によると、イメージングシステムは、イメージングシステムのイメージング領域の中または近傍に配置されたポジトロン放出放射性同位元素線源と、ポジトロン放出放射性同位元素線源から所定の位置に配置された対消滅ターゲットと、対消滅ターゲットにおけるポジトロンの対消滅の結果生じる同時計数事象の対を検出する検出器要素と、検出された同時計数事象の対に基づき前記検出器要素用の校正時間オフセットを計算する計算部と、計算した校正時間オフセットで前記検出器要素を校正する校正部とを含む。
【0074】
別の実施形態によると、計算部は、検出された同時計数事象の対から少なくとも1つの対タイミング差ヒストグラムを生成するよう、かつ少なくとも1つの対タイミング差ヒストグラムを用いて、検出器要素用の校正時間オフセットを計算する。
【0075】
別の実施形態によると、校正時間オフセットは、対タイミング差ヒストグラムの重心に対応する。
【0076】
別の実施形態によると、計算部は、差分最小化技術を適用することにより校正時間オフセットを計算する。
【0077】
別の実施形態によると、計算部は、対タイミング差ヒストグラムの測定された重心と各検出器要素に対する予測される対のタイミング重心との差が予め設定された閾値未満になるまで、または各検出器要素に対する対タイミング差ヒストグラムの重心の絶対値が予め設定された閾値未満になるまで、検出器要素毎に校正時間オフセットを繰り返し更新する。
【0078】
別の実施形態によると、ポジトロン放出放射性同位元素線源は、点状線源および線状線源のうちの1つである。
【0079】
別の実施形態によると、ポジトロン放出放射性線源は、イメージングシステムの画像再構成領域の外側にある。
【0080】
別の実施形態によると、対消滅ターゲットは、イメージングシステムの内側のボアカバーであるか、あるいはイメージングシステム内の前記検出器の表面である。
【0081】
別の実施形態によると、対消滅ターゲットは、円筒形状をしている。
【0082】
別の実施形態によると、ポジトロン放出放射性同位元素線源は、円筒形状内に配置される。
【0083】
別の実施形態によると、ポジトロン放出放射性同位元素線源と対消滅ターゲットとの間の領域は、部分的に真空状態にされる。
【0084】
別の実施形態によると、対消滅ターゲットは、ポジトロン放出放射性同位元素線源から少なくとも5cm以上離れた位置に置かれる。
【0085】
別の実施形態によると、計算部は、同時計数線毎に対タイミング差ヒストグラムを少なくとも1つの領域に分割し、各領域は、対消滅ターゲットと同時計数線の1つの交点を表す。
【0086】
別の実施形態によると、計算部は、交点から同時計数線の端点を表す各検出器要素までの距離に基づき計算される異なる時間シフトを、各領域に適用する。
【0087】
別の実施形態によると、ポジトロン放出放射性同位元素線源は、円筒形状の内面上に実質的に均一に堆積させられる。
【0088】
別の実施形態によると、液状のポジトロン放出放射性同位元素線源が、ゼラチンまたは粘着タイプの材料と混合される、あるいは円筒形状の内面は吸収材料から作られる。
【0089】
別の実施形態によると、計算部は、対消滅ターゲットと任意の同時計数線の複数の交点が存在する場合、後続の交点との間隔が、対タイミング差ヒストグラムの検査から互いに異なる領域を識別することができるように十分に広くなるよう、同時計数対を形成するための画像再構成領域を制限する。
【0090】
別の実施形態によると、ポジトロン放出放射性同位元素線源はGe−68/Ga−68、Na−22、F−18、FDG、またはRb−82のうちの1つである。
【0091】
別の実施形態によると、対消滅ターゲットの位置と向きを決定するために、対消滅ターゲットを画像化する処理部を更に備える。
【0092】
別の実施形態によると、計算部は、画像から決定された位置と向きを用いて、同時計数線毎に予測される対のタイミング差を計算する。
【0093】
別の実施形態によると、計算部は、検出された同時計数事象の対を用いてウォーク補正係数を計算し、かつ校正部は、ウォーク補正係数を用いて検出器要素を校正する。
【0094】
別の実施形態によると、ポジトロン放出放射性同位元素線源は、実質的にイメージングシステムのアイソセンタに配置され、計算部は、ポジトロン放出放射性同位元素線源における、または線源ホルダーにおける対消滅から生じる同時計数事象の対を用いてウォーク補正係数を計算し、かつ校正部は、ウォーク補正係数を用いて検出器要素を校正する。
【0095】
別の実施形態によると、計算部は、反対側の検出器対で検出された事象が個別に処理されるように、ウォーク補正係数の計算を並行処理にする。
【0096】
別の実施形態によると、円筒形状の直径は少なくとも10cm以上である。
【0097】
別の実施形態によると、イメージングシステムを校正する校正方法であって、ポジトロン放出放射性同位元素線源をイメージングシステムのイメージング領域の中または近傍に配置するステップと、ポジトロン放出放射性同位元素線源から所定の位置に対消滅ターゲットを配置するステップと、対消滅ターゲットにおけるポジトロンの対消滅の結果生じる同時計数事象の対を検出するステップと、検出された同時計数事象の対に基づき前記イメージングシステムにおける検出器要素用の校正時間オフセットを計算するステップと、計算した校正時間オフセットで前記検出器要素を校正するステップとを含む。
【0098】
本実施形態は、TOF PETスキャナによる再構成画像内の統計雑音の効果的な低減を可能とする優れたタイミング分解能を提供し、画像品質を向上させる。同時計数タイミングオフセットは、TOF PETスキャナのための優れたタイミング分解能を実現するために、個々の結晶毎に決定される。さらに、同時計数タイミングのエネルギー依存の特徴を表すウォーク補正係数は、TOF PETスキャナのためのタイミング分解能を最適化するために、個々の結晶毎に校正される。
【0099】
タイミングオフセットおよびウォーク補正係数は、個々の検出されたガンマ線の測定タイムスタンプを校正タイムスタンプに変換するために用いられる校正パラメータである。例えば、以下で表される。
校正=t測定+tオフセット+W×(E測定−E511keV) [式1]
ここで、
校正は校正されたタイムスタンプ、
測定は測定されたタイムスタンプ、
オフセットはタイミングオフセット、
Wはウォーク補正係数、
測定はガンマ線の測定された積算信号、
511keVは511keVのガンマ線に対する積算信号である。
【0100】
式1において、ウォーク補正が、測定エネルギーとタイムウォークとの間の線形依存性を示す単一の係数を用いて行われる。線形補正は一般的に良い結果が得られ、かつ関心エネルギー範囲(すなわち、PETにおける511keV近傍)にわたって十分である一方で、より高次の多項式または他の関数形式を用いてウォーク補正を行うことができる。
【0101】
タイミングオフセット校正は、1つの結晶が同時計数のガンマ光子により多数の他の結晶と対になる際に取得してもよい。この観点から、同時計数のガンマ光子の広く分布する線源により、各結晶が多数の他の結晶と確実に対になる。計数要求値を下げるために、同時計数ガンマ光子の線源は、関心の同時計数線(Line Of Response:LOR)に沿った方向に短い空間広がりを有してもよい。
【0102】
本実施形態において、同時計数ガンマ光子のそのように分布する線源は、ポジトロン放出線源および空間的に離された対消滅ターゲットを用いて作成される。線源とターゲットとの間の所望の離隔距離は、例えば、数10cmのオーダーである。対消滅ターゲットのいくつかの例は、1)放射線源の外側に置かれ、かつスキャナの画像再構成領域(Field Of View:FOV)内に吊り下げられたシールド、2)PETスキャナカバー、および3)PET検出器である。
【0103】
以下に説明するように、本実施形態を用いて同時計数ガンマ光子の分布線源を作成することで、先の実施形態より一定の利点がある。本実施形態ではポジトロンが、空間的に離れたターゲットにおいて対消滅する前に、相当な距離を一般的に空気または部分真空を通って移動するという事実により、本実施形態は先の実施形態と区別される。この文脈において空間的に離れたとは、例えば、ポジトロン放出線源から数センチメートル離れていることに相当する。本実施形態におけるポジトロン放出線源と対消滅ターゲットとの間の距離は、一般的に約5cm以上である。以前は、ポジトロン放出体は、水、アクリル(プラスチック)、アルミニウム、鋼鉄、または銅等の材料によって埋め込まれ、あるいは含まれ、ポジトロン対消滅のほぼ全てが、ポジトロン放出線源を直接取り囲む材料の中で発生していた。ポジトロンが対消滅の前に移動する固有の距離を、ポジトロン飛程と呼ぶ。ポジトロン飛程は、(放出されたポジトロンの平均運動エネルギーの違いにより)同位元素とポジトロンがその中を移動する(例えば、実効原子密度、実効原子量、および実効原子番号により示される)材料との両方に依存する。図2は、対消滅位置の分布に対応する1/10値幅プロットを図示したものである。例として図2に、いくつかのポジトロン放出放射性核種に対する水中でのポジトロン対消滅箇所の分布を示す。これらの分布から計算される1/10値幅(Full-Width-at-Tenth-Maximum:FWTM)が、ポジトロン飛程を説明する1つの方法である。また、例えば二乗平均距離を計算する等、他の技術を用いてポジトロン飛程を説明してもよい。以下の表1に、様々な材料についての、多数の異なる同位元素に対するFWTMにおけるポジトロン飛程の例を示す。
【0104】
【表1】
【0105】
上述のように、本実施形態では、ポジトロン放出線源と対消滅ターゲットの距離は、約5cm以上である。これが可能である理由は、本実施形態では、ポジトロンが、放出される非常に短い距離の中で空気または部分真空に到達することができるように、ポジトロン放出線源が実装されているからである。一旦ポジトロンが空気に到達すると、ポジトロン飛程は(表1に示されているように)メートルのオーダーであり、ほとんどが空間的に離された対消滅ターゲットに到達する。ポジトロン放出線源が固体状または液体状に埋め込まれる先の実施形態では、飛程はミリメートルのオーダーである。表1に挙げた最高のエネルギーの放出体(Ge−68/Ga−68)および最長の飛程を有する固体状または液体状の材料(水)を取り上げると、先の実施形態における放出と対消滅との間の最大距離は約5mm以下であり、これは本実施形態で通常用いられるポジトロン放出線源と対消滅ターゲットとの間の最小離隔距離の10分の1より小さい。
【0106】
十分な数のポジトロンが対消滅ターゲットに確実に到達するようにするため、ポジトロンを単に少し減衰させるよう線源ホルダーを設計してもよい。そのようなシステムの一例は、極薄肉のステンレス鋼の皮下注射針(16−RWゲージまたはより薄肉のもの等)である。さらに、放射性同位元素は、比較的長いポジトロン飛程(すなわち、Ge−68/Ga−68等の高い運動エネルギー)を有してもよい。放射性同位元素は、液体の状態で生成され、かつ(ポジトロンに対して)低減衰の材料(吸収紙等)内または別の材料の表面上に含まれてもよい。
【0107】
データ収集の後、対消滅位置補正をデータに適用することにより、タイミングオフセットを校正することができる。次に、対消滅位置補正およびタイミングオフセット補正をデータに適用することにより、タイミングウォークを校正することができる。
【0108】
タイミング校正は、放射性線源の外側のシールドにおいて発生するポジトロン対消滅より得られるデータを用いて、実行することができる。例えば、放射性線源がFOVの中に置かれる場合、放射性線源とシールドの距離は、線源(ホルダー)とシールドにおけるポジトロン対消滅が区別されるように十分に大きくとる必要がある。放射性線源の外側のシールドは、密封して真空状態にしてもよく、こうすることで空気中のポジトロン対消滅を減らし、シールドに到達するポジトロンの数を増やすことができる。
【0109】
図3は、一実施形態によるポジトロン放出線源およびシールドを有するイメージングシステムを示す。ここで図面を参照すると、同じ参照番号はいくつかの図面にわたり同一または対応する部品を示しており、図3はPETスキャナにおける検出器モジュール40の配置の例を示す。開示する実施形態の範囲内で、検出器モジュールをいくつでも使用することができる。図3に示す例では、シールド41が検出器40のリング内に配置される。シールド41と検出器40の間にスキャナカバー42がある。図3に示す例では、シールド41は対消滅ターゲットである。シールド内に、ポジトロン放出線源43およびホルダー44が置かれる。この例では、ポジトロンはホルダー44を離脱し、シールド41において対消滅45する。
【0110】
この図では、ポジトロン対消滅は、放射性線源の外側のシールド41の中で発生する。スキャナ中心に置いた線状線源を用いた。図3は、左にスキャナの正面図、右にスキャナの側面図を示している。上述のように、ポジトロン放出線源は、例えば、16RWゲージ(またはそれより薄肉の)ステンレス鋼皮下注射管の中に封入されたGe−68/Ga−68であってもよい。対消滅ターゲットを、(対消滅領域の小さい空間広がりのための)短い距離の後でポジトロンを停止させるために十分高い密度となるよう設計してもよいが、対消滅事象により放出される511keVガンマ線の減衰を最小限にするように設計してもよい。また対消滅ターゲットは、プラスチック(数mm)または薄い(〜mm)金属シリンダ(球形や直角プリズム等の他の形状も可能)であってもよい。
【0111】
図4は、別の実施形態によるポジトロン放出線源およびシールドを有するイメージングシステムを示す。図4に、PETにおける検出器モジュール40およびスキャナカバー42の配置の別の例示実施形態を示す。図4は、左にスキャナの正面図、右にスキャナの側面図を示している。ポジトロン対消滅は、放射性線源53の外側のシールド41において発生する。この例では、ポジトロン放出同位元素53が、対消滅目標41の内面に塗布されている。線源は、内面に均一に堆積させた、または表面の硬化樹脂/エポキシに含まれるGe−68/Ga−68であってもよく、あるいは表面に塗布されたフルオロデオキシグルコース(18)(Fluorodeoxyglucose:FDG)であってもよい。FDGの接着力を増すために、FDGをゼラチンに混合してもよく、またはターゲットの内面を吸収材料で作ってもよい。また、その他の液体線源も可能である。
【0112】
図5は、別の実施形態によるポジトロン放出線源およびシールドを有するイメージングシステムを示す。図5に、PETスキャナにおける検出器モジュール40およびスキャナカバー42の配置の別の例示実施形態を示す。図5は、左にスキャナの正面図、右にスキャナの側面図を示している。ポジトロン対消滅45は、放射性線源63の外側のシールド42において発生する。この例では、ポジトロン放出同位元素63が、スキャナの画像再構成領域の外側に置かれる。さらに、対消滅目標41を密閉し、密閉されたシールド(例えば、シリンダ)から空気を(少なくとも部分的に)真空引きするための手段を設けることもできる。これにより、ポジトロン飛程が延びることになり、(空気中ではなく)目標41において対消滅するポジトロンの数が増加する。シールドの密閉および真空引きは、他の実施形態にも同様に適用できる。
【0113】
図6は、一実施形態による複数のポジトロン放出線源およびシールドを有するイメージングシステムを示す。図6に、PETスキャナにおける検出器モジュール40およびスキャナカバー42の配置の別の例示実施形態を示す。図6は、左にスキャナの正面図、右にスキャナの側面図を示している。ポジトロン対消滅45は、放射性線源73の外側のシールド41において発生する。例えば、長いポジトロン飛程を有するあらゆるポジトロン放出線源を用いることができる。
【0114】
またタイミング校正は、スキャナカバーまたはPET検出器において発生するポジトロン対消滅からなるデータを用いて実行することもできる。図7Aおよび図7Bは、複数の追加実施形態によるシールドおよびスキャナカバーを有していないイメージングシステムを示す。図7Aおよび図7Bに、ポジトロン対消滅81/82がスキャナカバー81、またはPET検出器82のどれかにおいて発生する、この実施形態の例を示す。十分に長いポジトロン飛程を有するポジトロン放出線源を、この例で用いることができる。図7Aはスキャナカバーが含まれる例を示し、図7Bはスキャナカバーが取り除かれている例を示す。
【0115】
図8Aは、ポジトロン放出線源が、イメージング装置の画像再構成領域のアイソセンタにある例を示す。図8Bは、異なる検出器対に対する飛行時間ヒストグラムを示す。図8Aおよび図8Bに、シールドが所定の位置になく、対消滅がスキャナカバー91において発生する別の例を示す。この例では、点状線源92がスキャナFOVのアイソセンタに置かれる。スキャナカバーにおけるポジトロン対消滅93を、例えば、タイミングオフセット校正のために用いてもよい。線源/線源ホルダーにおけるポジトロン対消滅をタイミングウォーク校正のために用いてもよい。濃い線94で示すように、いくつかのポジトロンが線源(ホルダー)において対消滅し、一方薄い線95で示すように、いくつかのポジトロンがスキャナカバーにおいて対消滅する。
【0116】
図8Bは、様々な検出器対に対する飛行時間(Time Of Flight:TOF)ヒストグラム(対タイミング差ヒストグラム)を示している。線源(ホルダー)におけるポジトロン対消滅は、TOFヒストグラム(対タイミング差ヒストグラム)の中央のピークとして現れる。スキャナカバーにおけるポジトロン対消滅は、異なる距離(例えば、検出器差)を有する検出器対によって検出することができ、TOFヒストグラム(対タイミング差ヒストグラム)におけるサイドローブとして現れる。例えば、検出器差が長くなることで、検出器間を結ぶ直線がスキャナカバー91を通るようになると、そのスキャナカバー91で対消滅が生じることから、スキャナカバー91に対応するサイドロープがTOFヒストグラムに現れる。さらに、検出器間を結ぶ直線が点状線源92近傍を通るようになると、点状線源92近傍で生じる対消滅に対応したピークのあるTOFヒストグラムとなる。
【0117】
図9Aは、同時計数線および対応する未校正タイミングスペクトル(対タイミング差ヒストグラム)の例を図示したものである。図9Bは、対消滅ターゲットの半径および同時計数対の画像再構成領域の半径を図示したものである。図9Aに、同時計数線(Line Of Response:LOR)102および対応する(未校正の)タイミングスペクトル(対タイミング差ヒストグラム)の例を示す。図9Bは、3つのピークが中央のLOR105に沿って分解されるように対消滅ターゲット(r目標)の半径が選択される場合に、適当なFOV107が、r目標に等しい交点間の最短距離を有することに基づいて規定できることを示している。例えば、対消滅ターゲットを有する交点間の距離106がr目標に等しいとすると、rFOV=(√3)/2×r目標である。任意の所与のLORに沿って、対消滅ターゲット(または線源/線源ホルダー)との複数の交点が、未校正のタイミング分解能により決定される距離だけ離されることが好ましい。例えば、図9Aに示す2つのLOR102を考えると、この例において、3つの交点が線源/ホルダーを通過するLORに対して分解されるように対消滅ターゲットの半径が選択される場合に、図9Bは収集および分析のための適当なFOVをいかにして規定することができるかを示している(特により狭いその他のFOVも可能である)。
【0118】
結晶毎にタイミングオフセットを決定するためのデータの処理は、一般的に反復プロセスである。各繰り返しの間、タイミング差のヒストグラム(対タイミング差ヒストグラム)が、各結晶において検出された同時計数事象の全てに対して形成される。これは、測定された時間差と、形状が与えられた際に予測される時間差との間の差のヒストグラムである。例えば、スキャナの中央における1つの点状線源に対して、予測される時間差は、線源を通過する全てのLORに対して零である。他の線源位置に対して、予測される時間差を計算することができる(例えば、線源/ターゲットの位置/向きは周知で先験的なものにすることができ、あるいは位置/向きはイメージングにより、または3次元レーザ走査法により決定することができる)。(一般的に質量中心から)時間差のヒストグラム(対の時間差のヒストグラム)に基づき、各結晶のタイミングオフセットは各繰り返しにおいて更新され、例えば、a)一定の繰り返し数だけ、b)各繰り返しにおいて変化が前もって設定された閾値未満になるまで、またはc)全てのヒストグラムの質量中心の絶対値が前もって設定された閾値未満になるまで、繰り返しが継続される。
【0119】
図10Aは、2つの起こり得る同時計数線を図示したものである。図10Bは、同時計数線に対応するタイミングスペクトル(対タイミング差ヒストグラム)を図示したものである。図10Aに示すように、あるLORが対消滅ターゲット(または線源/線源ホルダー)との複数の交点を有している場合、異なる「予測された時間差」をタイミングスペクトルの異なる領域用に規定することができる。この例では、測定された時間差と「予測される時間差」の差を、LOR/ターゲットの形状およびタイミングスペクトルの領域(すなわち、「補正された時間差」)に基づき事象毎に計算することができる。次に、時間差スペクトルをLOR毎に生成して合計し、任意の結晶に対する最終の時間差スペクトルを形成することができ、または、任意の結晶における事象に対する「補正された時間差」の全てをヒストグラム化することにより、最終の時間差スペクトルを直接生成することができる。
【0120】
図10Aは、2つの起こり得るLOR111および112を例示している。LOR111はターゲットおよび/または線源/線源ホルダー115との3つの交点116〜118を有する。LOR112は、ターゲットおよび/または線源/線源ホルダー115との2つの交点119および120を有する。図10Bは対応するタイミングスペクトル(対タイミング差ヒストグラム)LOR113およびLOR114を示し、それぞれLOR111および112に対応する。さらに、各未校正タイミングスペクトル(対タイミング差ヒストグラム)113および114は、交点にそれぞれ対応する領域121〜125を有する。例えば、タイミングスペクトル(対タイミング差ヒストグラム)113における領域1は、交点118に対応する。さらに、図10Bにおける各領域は、異なる「予測されたタイミング差」を有する。
【0121】
図11は、一実施形態による方法を示したフローチャートを示す。図11に、一実施形態による結晶毎のタイミングオフセットおよびウォーク補正係数を計算する方法を示すフローチャートを示す。ステップS1001において、線源および対消滅ターゲットが準備される。線源および対消滅ターゲットの準備は、図3〜7に記載の実施形態のいずれに対応していてもよい。
【0122】
ステップS1002において、対消滅ターゲットがスキャナのFOVの中に置かれる。特に、ポジトロン放出線源を、スキャナのFOVの中または外側に置いてもよい。
【0123】
ステップS1003において、対消滅ターゲットの位置が測定される。例えば、線源(ホルダー)においてポジトロン対消滅を発生させる場合は、線源の正確な位置が、既知であるまたは決定されることが好ましい。例えば、位置をイメージングから決定することができる。シールドにおいてポジトロン対消滅を発生させる場合は、シールドを線源の外側に配置することが好ましい。シールドの形状および位置は、既知であるまたは決定されることが好ましい。例えば、形状および位置は、イメージングまたは3次元レーザースキャンから決定することができる。スキャナカバーにおいてポジトロン対消滅を発生させる場合、スキャナカバーの形状および位置は既知であることが好ましい。検出器においてポジトロン対消滅を発生させる場合、スキャナカバーは取り除かれ、検出器の位置は既知であることが好ましい。このように発生させることのそれぞれは、代替の実施形態では、対消滅ターゲットの位置の推定に基づき決定してもよい。この場合、推定の精度がタイミング校正の質に影響を及ぼすことになる。
【0124】
複数の対消滅位置が単一のLORに沿ってありうるなら、異なる位置で発生する事象をタイミングスペクトル(対タイミング差ヒストグラム)において区別できるように、対消滅位置となりうる異なる位置の間、例えば、線源とシールドの間、または線源とスキャナカバーの間に十分な空間があることが好ましい。
【0125】
ステップS1004において、データ収集が実行される。特に、十分な数の同時計数事象が、適切なFOVで取得される。データ収集FOVは、対消滅ターゲットとほぼ同じサイズかそれよりもわずかに大きくする必要がある。しかし、対消滅ターゲットの形状により単一のLORに沿って複数の対消滅が起こり得るなら、空間的に分離可能な事象のみを取得するようにFOVを制限することができる(例えば、図9Aおよび図9Bに関する説明を参照)。さらに、ポジトロン対消滅事象の数は、結晶のそれぞれに対してタイミング差のヒストグラム(対タイミング差ヒストグラム)からピーク位置を校正するのに十分多いことが好ましい。
【0126】
ステップS1001、S1002、およびS1004の結果が、生の同時計数リストモードデータ500である。このデータは、ステップS1005で使用され、事象毎に対消滅ターゲットと同時計数線との交点が計算される。ステップS1006において、適切な交点が、事象毎にタイミングに基づき対消滅位置として選択される。ステップS1007において、事象毎に対消滅位置補正がタイミングに適用される。これらのステップの結果が、対消滅位置に対して補正された補正同時計数リストモードデータ501である。
【0127】
このデータ501は、ステップS1008で使用され、結晶毎のタイミングオフセット503が計算される。図12は、結晶毎のタイミングオフセットを計算するステップをより詳細に見て示したフローチャートを示す。図12に、結晶毎のタイミングオフセットの計算のより詳細な図を示す。特に、図12は、結晶毎のタイミングオフセットを計算するための反復法を説明している。
【0128】
結晶毎のタイミングオフセットは、1つの結晶が反対側の多数の結晶と対になる際に、あらゆる位置で発生するポジトロン対消滅からなるデータから計算することができる。対消滅位置補正は、全ての事象のTOFの差に適用される(LORが複数の場所でターゲット/線源と交差するなら、時間差について異なる領域を規定する必要がある場合がある)。次に、結晶毎のタイミングオフセットが、結晶毎のTOFヒストグラム(対タイミング差ヒストグラム)のピーク位置を見つけることにより計算される。結晶毎のタイミングオフセットに対するTOFの差が計算され、シーケンスが収束するまでプロセスが繰り返される。結晶毎の最終のタイミングオフセットは、全ての繰り返しにおいて校正された結晶毎のタイミングオフセットにわたる合計である。
【0129】
このプロセスを図12に示す。特に、ステップS2001において、初期のタイミングヒストグラム(対タイミング差ヒストグラム)が結晶毎に生成される。ステップS2002において、結晶毎のタイミングオフセットが推定される。ステップS2003において、リストモードデータが、結晶毎のタイミングオフセットに基づき更新される。ステップS2004において、結晶毎のタイミングヒストグラム(対タイミング差ヒストグラム)が生成される。ステップS2005において、結晶毎の新たなタイミングオフセットが推定される。最後に、ステップS2006において、現在の繰り返しと前の繰り返しとの間のタイミングオフセット差が閾値よりも小さいか否か、または繰り返しの最大数に達したかどうかが判断される。これらの判断結果のいずれかが肯定的な結果であれば、結晶毎のタイミングオフセット503が生成される。これらの判断結果のいずれも肯定的な結果でなければ、フローはステップS2003に戻り、プロセスを繰り返す。
【0130】
一旦、結晶毎のタイミングオフセットが生成されると、フローは図11のステップS1009に進む。このステップにおいて、リストモードデータが、結晶毎の新たなタイミングオフセットに基づき更新される。これにより、対消滅位置およびタイミングオフセットに対して補正された同時計数リストモードデータ502が生成される。
【0131】
次に、このデータ502は、結晶毎のウォーク補正係数を計算するためにステップS1010で使用される。図13は、結晶毎のウォーク補正係数を計算するステップをより詳細に見て示したフローチャートを示す。図13に、結晶毎のウォーク補正係数の計算のより詳細な図を示す。特に、この図は、結晶毎のウォーク補正係数を計算するための多項式フィッティングについて説明している。
【0132】
結晶毎のタイミングウォーク補正係数は、対消滅位置補正およびタイミングオフセット補正を適用した後に、任意の位置で発生するポジトロン対消滅からなるデータから校正してもよい。データがスキャナのアイソセンタにおいて発生するポジトロン対消滅からなる場合、並列処理を用いてデータ解析プロセスをスピードアップしてもよい。例えば、データを多数の区分(例えば、40の検出器モジュールからなるシステムに対して20の検出器対)に分割してもよい。データの異なる区分に対するウォーク補正係数を、同時に校正することができる。データの区分毎に、対消滅位置補正およびタイミングオフセット補正をデータに適用してもよい。特定の結晶毎に、TOF対エネルギー曲線を生成してもよく、この特定の結晶と反対側の任意の結晶とを結ぶLORが考慮される。特定の結晶毎に、その結晶用のTOF対エネルギー曲線に適した多項式を適用することにより、結晶毎のウォーク補正係数が計算される。
【0133】
このプロセスは図13に示されている。特に、ステップS3001において、結晶毎のタイミング対エネルギー曲線が計算される。ステップS3002において、ウォーク補正係数が、各結晶に対してタイミング対エネルギー曲線に適した多項式を適用することにより計算される。これにより、結晶毎のウォーク補正係数504が生成される。
【0134】
図14は、一実施形態によるイメージングシステムに対応するブロック図を示したものである。図14に、イメージングシステムの例示実施形態を示す。この図では、イメージングシステムは、例えば、PETスキャナ内に検出器モジュール180を含む。必要に応じて、スキャナカバー184およびシールド181が含まれる。これらの要素(180、181、および184)のそれぞれが、対消滅目標183として機能してもよい。一旦、対消滅ターゲットにおけるポジトロンの対消滅の結果生じる同時計数事象の対が検出されると、この情報が計算回路185に入力される。計算回路185はこの情報を用いて、検出された同時計数事象の対に基づき、イメージングシステム内の検出器要素毎に校正時間オフセットを計算する。次に、完成した校正時間オフセットが校正回路186に入力され、校正回路186は、完成した校正時間オフセットで式1に基づいて検出器要素を校正する。例えば、結晶毎のオフセット値(およびウォーク係数)が、検出器内の回路内のメモリに読み込まれる。次に、検出された事象毎に、式1を用いて、測定されたタイムスタンプが「校正された」タイムスタンプに変換される。計算回路185および校正回路186は、マイクロプロセッサを有するプログラム式コンピュータにより、またはハードウェア回路により実装されてもよい。
【0135】
本実施形態により、これまで見られなかった大きな利点が得られる。例えば、光パルスをPMTに導入する場合と比べ、本実施形態では、追加のハードウェアが不要であり、検出器および電子システム全体が校正される。
【0136】
PMTに結合されたプラスチックシンチレータに埋め込まれた放射性線源を使用する場合と比べ、本実施形態では、追加の収集電子機器が不要であり、より正確なタイミング校正を実現することができる。
【0137】
回転する線状放射性線源を有するタイミング校正アルゴリズムを使用する場合と比べ、本実施形態では、静止線源を使用してもよいため、実装がより簡単である。つまり、電動式の線源回転装置は不要である。
【0138】
散乱ブロック内に点状線源を有するタイミング校正アルゴリズムを使用する場合と比べ、本実施形態により多数の利点が得られる。例えば、本実施形態では、臨床での利用と同じエネルギーウインドウをタイミング校正に使用することができ、これによりタイミング校正の精度を向上させることができる。さらに、同じデータをタイミングオフセット校正とウォーク補正係数校正の両方に使用してもよい。さらに、1つの結晶が、散乱ブロックを用いる場合よりも(高い統計データで)多くの結晶と対になるため、アルゴリズムがより早く収束する。例えば、点線源から所定の位置に配置された対消滅ターゲットにより生じる対消滅を検出し、タイミング校正を行うことができることから、点線源のみの対消滅を検出してタイミング校正を行う場合と比較して、タイミング校正に関する統計データの収集を効率的に行うことができる。これは、対消滅ターゲットにより生じる対消滅の事象を統計データとして活用でき、点線源のみの対消滅の事象を用いる場合よりも、高い統計データを収集しているとも言える。
【0139】
図14に示す計算回路および校正回路等の上で説明した処理と、図11のS1003においてPETイメージングにより対消滅ターゲットの位置を測定するために用いられる画像再構成との少なくとも特定の部分を、少なくとも1つのマイクロプロセッサを有するある形態のコンピュータを用いることにより、あるいはプロセッサを用いることにより、実装または支援することができる。当業者には自明であるが、コンピュータプロセッサは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)、または他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)等の個別論理ゲートとして実装することができる。FPGAまたはCPLDの実装は、VHDL、Verilogまたはその他のハードウェア記述言語でコード化してもよく、またそのコードを直接FPGAまたはCPLD内の電子メモリの中に、または別の電子メモリとして、格納してもよい。さらに電子メモリは、ROM、消去可能PROM(Erasable PROM:EPROM)、電気的消去可能PROM(Electrically Erasable PROM:EEPROM)、フラッシュメモリ等の不揮発性のものでもよい。また電子メモリは、スタティックまたはダイナミックRAMなどの揮発性のものでもよい。また、FPGAまたはCPLDと電子メモリの間の対話のみならず電子メモリを管理するためにマイクロコントローラやマイクロプロセッサ等のプロセッサを備えてもよい。
【0140】
あるいは、コンピュータプロセッサは、本明細書に記載の機能を実行する1組のコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラムであって、上記の非一時的電子メモリおよび/またはハードディスクドライブ、CD、DVD、フラッシュドライブ、もしくは他の任意の公知の記憶媒体のうちのいずれかに格納されているプログラムを実行してもよい。さらに、上記のコンピュータ可読命令は、米国インテル社によるXenon(登録商標)プロセッサまたは米国AMD社によるOpteron(登録商標)プロセッサ等のプロセッサ、ならびにMicrosoft VISTA(登録商標)、UNIX(登録商標)、Solaris(登録商標)、LINUX(登録商標)、Apple MAC−OSX(登録商標)、および当業者に公知の他のオペレーティングシステム等のオペレーティングシステムと一緒に実行する、ユーティリティアプリケーション、バックグラウンドデーモン、もしくはオペレーティングシステムの構成要素、またはそれらの組み合わせとして提供することができる。
【0141】
さらに、実施形態の特定の機能は、コンピュータを利用したシステム(図15)を用いて実現することができる。図15は、一実施形態による計算装置を示すブロック図を示したものである。コンピュータ1000は、情報を通信するためのバスBまたは他の通信機構と、情報を処理するためのバスBに結合されたプロセッサ/CPU1004とを含む。またコンピュータ1000は、プロセッサ/CPU1004により実行される情報および命令を格納するためのバスBに結合された、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)または他の動的記憶装置(例えば、ダイナミックRAM(Dynamic RAM:DRAM)、スタティックRAM(Static RAM:SRAM)、およびシンクロナスDRAM(Synchronous DRAM:SDRAM)等のメインメモリ/記憶装置1003を含む。さらに、記憶装置1003は、CPU1004による命令の実行の間に一時的変数または他の中間情報を格納するために用いてもよい。また、コンピュータ1000は、読み出し専用メモリ(Read Only Memory:ROM)または他の静的記憶装置(例えば、CPU1004のため静的情報および命令を格納するためのバスBに結合された、プログラマブルROM(Programmable ROM:PROM)、消去可能PROM(Erasable PROM:EPROM)、および電気的消去可能PROM(Electrically Erasable PROM:EEPROM))をさらに含んでもよい。
【0142】
またコンピュータ1000は、大容量記憶装置1002等の情報および命令を格納する1つ以上の記憶装置を制御するためにバスBに結合されたディスク制御部と、ドライブ装置1006(例えば、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、読み出し専用コンパクトディスクドライブ、読み出し/書き込みコンパクトディスクドライブ、コンパクトディスクジュークボックス、テープドライブ、およびリムーバブル光磁気ドライブ)とを含む。記憶装置は、適切なデバイスインタフェース(例えば、小型コンピュータシステムインタフェース(Small Computer System Interface:SCSI)、統合デバイスエレクトロニクス(Integrated Device Electronics:IDE)、拡張IDE(Enhanced-IDE:E−IDE)、直接メモリアクセス(Direct Memory Access:DMA)、またはウルトラDMA)を使用して、コンピュータシステム1000に追加されてもよい。
【0143】
またコンピュータシステム1000は、専用論理デバイス(例えば、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、または構成可能論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複雑プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))を含んでもよい。
【0144】
またコンピュータシステム1000は、コンピュータユーザに情報を表示するためのブラウン管(Cathode Ray Tube:CRT)等のディスプレイを制御する、バスBに結合されたディスプレイ制御部を含んでもよい。コンピュータシステムは、キーボードやポインティングデバイス等の、コンピュータユーザと対話するとともにプロセッサに情報を提供するための入力装置を含む。ポインティングデバイスは、例えば、プロセッサに指示情報やコマンド選択を伝達しかつディスプレイ上のカーソルの動きを制御するためのマウス、トラックボール、またはポインティングスティックであってよい。さらに、プリンタにより、コンピュータシステムによって格納および/または生成されたデータのリスト出力を印刷してもよい。
【0145】
コンピュータ1000は、記憶装置1003等のメモリに含まれる1つ以上の命令からなる1つ以上のシーケンスを実行するCPU1004に応じて、本発明の処理ステップの少なくとも一部を実行する。そのような命令は、大容量記憶装置1002やリムーバルブメディア1001等の別のコンピュータ可読媒体から記憶装置に読み込まれてもよい。記憶装置1003に含まれる命令シーケンスを実行するために、マルチプロセッシング構成の1つ以上のプロセッサを使用してもよい。他の実施形態では、ソフトウェア命令の代わりまたはソフトウェア命令との組み合わせで、ハードワイヤード回路を使用してもよい。したがって、実施形態は、ハードウェアの回路構成およびソフトウェアのいかなる特定の組み合わせにも限定されない。
【0146】
上述したように、コンピュータ1000は、本発明の教示に従ってプログラムされた命令を保持し、データ構造、表、記録、または本明細書に記載の他のデータを収容するための少なくとも1つのコンピュータ可読媒体1001またはメモリを含む。コンピュータ可読媒体の例として、コンパクトディスク、ハードディスク、フロッピーディスク、テープ、光磁気ディスク、PROM(EPROM、EEPROM、フラッシュEPROM)、DRAM、SRAM、SDRAM、または任意の他の磁気媒体、コンパクトディスク(例えば、CD−ROM)、またはコンピュータが読み出すことができる任意の他の媒体がある。
【0147】
コンピュータ可読媒体のいずれか1またはその組み合わせに格納されるものとして、本発明は、主処理装置1004を制御し、本発明を実現するための1または複数のデバイスを作動させ、主処理装置1004が人間ユーザと対話できるようにするための、ソフトウェアを含む。そのようなソフトウェアは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、開発ツール、およびアプリケーションソフトウェアを含んでもよいが、これらに限定されるものではない。そのようなコンピュータ可読媒体は、本発明を実現する際に実行される処理の全部または一部(処理が分散されている場合)を実行するための、本発明のコンピュータプログラム製品をさらに含む。
【0148】
本発明のコンピュータ可読媒体におけるコンピュータコード要素は、スクリプ卜、解釈可能なプログラム、ダイナミックリンクライブラリ(Dynamic Link Library:DLL)、Java(登録商標)クラス、および完全な実行可能プログラムを含むが、これらに限定されるものではなく、任意の解釈可能なまたは実行可能なコード機構であってもよい。さらに、性能、信頼性、および/またはコストを改善するために、本発明の処理の部分を分散させてもよい。
【0149】
本明細書で使用する用語「コンピュータ可読媒体」は、実行用のCPU1004に命令を与えることに関与する任意の媒体を指す。コンピュータ可読媒体は、不揮発性媒体または揮発性媒体を含むが、これらに限定されるものではなく、多くの形態を取ることができる。例えば、不揮発性媒体は、大容量記憶装置1002またはリムーバブルメディア1001等の光ディスク、磁気ディスク、および光磁気ディスクを含む。揮発性媒体は、記憶装置1003等のダイナミックメモリを含む。
【0150】
実行用のCPU1004に対する1つ以上の命令からなる1つ以上のシーケンスを実行する際に、様々な形態のコンピュータ可読媒体を用いてもよい。例えば、命令を、最初に、リモートコンピュータの磁気ディスクに収容してもよい。バスBに結合された入力は、データを受信し、データをバスBに乗せることができる。バスBは、データを記憶装置1003へ伝達し、そこからCPU1004は命令を取り出して実行する。記憶装置1003が受信した命令は、必要に応じて、CPU1004が実行する前後どちらにでも大容量記憶装置1002に格納してもよい。
【0151】
またコンピュータ1000は、バスBに結合された通信インタフェース1005も含む。通信インタフェース1004は、例えば、ローカルエリアネットワーク(Local Area Network:LAN)、またはインターネット等の別の通信ネットワークに接続されるネットワークにつながる双方向データ通信を可能にする。例えば、通信インタフェース1005は、任意のパケット交換LANに取り付けるネットワークインタフェースカードであってもよい。他の例として、通信インタフェース1005は、非対称デジタル加入回線(Asymmetrical Digital Subscriber Line:ADSL)カード、総合サービスデジタル網(Integrated Services Digital Network:ISDN)カード、または対応するタイプの通信回線へのデータ通信接続を可能にするモデムであってもよい。また無線リンクが実装されてもよい。そのような実施態様のいずれにおいても、通信インタフェース1005は、様々な種類の情報を表すデジタルデータストリームを搬送する電気信号、電磁信号、または光信号を送受信する。
【0152】
ネットワークは、一般的に、1つ以上のネットワークを介して他のデータデバイスへのデータ通信を可能にする。例えば、ネットワークは、ローカルネットワーク(例えば、LAN)を通じて、または通信ネットワークを介して通信サービスを提供するサービスプロバイダによって操作される機器を通じて、別のコンピュータに接続できるようにしてもよい。ローカルネットワークおよび通信ネットワークは、例えば、デジタルデータストリームを搬送する電気信号、電磁信号、または光信号、および関連する物理層(例えば、カテゴリ5ケーブル、同軸ケーブル、光ファイバ等)を使用する。さらに、ネットワークは、パーソナル携帯情報機器(Personal Digital Assistant:PDA)、ラップトップコンピュータ、または携帯電話等の携帯機器に接続できるようにしてもよい。
【0153】
上記説明において、フローチャートの中のいずれのプロセス、記述またはブロックも、プロセスにおける特定の論理機能またはステップを実行するための1つ以上の実行可能な命令を含むコードのモジュール、セグメントまたは一部を表すものとして理解されるべきである。当業者には自明であるが、代替の実施態様が本発明の例示実施形態の範囲に含まれ、関係する機能によっては実質的に同時にまたは逆の順序とすることも含め、先に示したまたは述べたものから順序を変えて機能を実行してもよい。
【0154】
以上、説明したとおり本実施形態によれば、効果的なタイミング校正を行うことができる。
【0155】
ある特定の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、単なる事例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。実際、本明細書で説明した新規の方法、装置、およびシステムは、様々な別の態様で具体化が可能である。さらには、本発明の要旨を逸脱することなく、本明細書で説明した方法、装置、およびシステムの態様において様々な省略、置換、および変更が可能である。添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物は、本発明の範囲や要旨に収まると考えられる態様または変更を有効範囲に含むためのものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15