【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例を通じてより詳しく説明するが、このような実施例の記載は本発明の実施を例示するためのものに過ぎず、このような実施例の記載によって本発明が限定されるわけではない。
【0047】
(マグネシウム合金板の製造)
実施例1〜
5、比較例1〜9
表1に記載の成分の重量%の検討に基づいて、CO
2とSF
6混合ガス雰囲気下で溶解してマグネシウム合金溶湯を製造し、このように用意された溶湯を用いて、双ロール式薄板鋳造装置により板状の鋳造材を製造した。溶湯が発火する前の温度(約950℃)を考慮して710℃に維持させながら、ノズルに移送されて2つの冷却ロールの間に注入された。この時、2つの冷却ロールの間の間隔は約4mmに維持し、ロールの回転速度を約5mpmに維持して、200〜300℃/sの冷却速度で鋳造された。このように鋳造された板材について、次の後続熱処理を行った。まず、鋳造された板材を440℃で1時間熱処理した。これは、鋳造組織と偏析を最大限除去するためである。
【0048】
次に、上記のように熱処理されたマグネシウム鋳造材を関係式(1)の値が1未満の素材とし、純アルミニウム板材を20を超える素材として、4000MPa級のマルテンサイト基地組織を有する変態強化鋼(Mart鋼)を拘束部材に適用した。また、関係式(1)により適正範囲に属する素材として、Mild鋼、STS304、TWIP鋼を拘束部材に選択し、構成素材間の厚さ比率を、マグネシウム鋳造板材基準4.5%から100%まで変化を与えながら圧延を実施した。圧延前、400℃で30分間予熱後に圧延を実施し、熱間圧延時、passあたり、400℃で5分間追加の予熱と圧延を繰り返し、拘束部材の除去後、最終的にマグネシウム合金板材を再結晶させるために、400℃で1時間仕上げ熱処理を施した。
【0049】
表1と表2はそれぞれ、マグネシウム鋳造材と拘束部材の成分、材質、および相互間の変形抵抗の差を示すMFS、そして関係式(1)の結果値を示している。TS、YS、Elは、常温で4mmの厚さの板状型マグネシウム鋳造材および多様な当該厚さの拘束部材に対するJIS5規格、C方向に対する引張材質であり、MFSは400℃で0.1s
−1の変形率付与時の測定結果である。表3は、圧延前の厚さ比率、圧延モード、累積圧下量、N
Reff、N
Rtotal、ε
eff値、および圧延後の最終圧延後の熱処理条件を示している。表4は、圧延後の拘束部材を除去し、残りの拘束圧延されたマグネシウム合金板材に対する常温引張材質と1/4tおよび1/2t地点の微細組織を、EBSD/OIMおよびTEM分析手法を利用して、I
ave(1/4t)(〜30°)、I
ave(1/2t)(〜30°)、c/a
(1/4t)、c/a
(1/2t)、c/aの偏差に対する結果値、そして限界ドーム高さ値を各実施および比較例によりまとめた。以上のように、製造された鋳造、圧延、後熱処理を終えたマグネシウム合金板材の成形性を評価するために、限界ドーム高さ試験を施した。限界ドーム高さ試験は、直径50mm、厚さ1〜1.5mmのディスク型試験片を作製した後、上部/下部ダイの間に試験片を挿入した後、5kNの力で試験片を固定し、27mmの直径を有する球形パンチを用いて、0.1mm/secの速度で変形を加え、ディスク型試験片の破断時までパンチを挿入した後、破断時の変形高さを測定する方式で行った。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
上記表1〜4において、c/a偏差値、△c/aは、1/4tおよび1/2t地点でTEM分析により測定されたc/a値に基づき、下記の式を用いて計算された。
【0055】
┃(c/a
(1/4t)−c/a
(1/2t))┃x(c/a
(1/2t))
−1x100≦5
c/a
(1/4t):厚さ方向の1/4t地点におけるHCP(Hexagonal Close Packed)格子構造のaspect ratio
c/a
(1/2t):厚さ方向の1/2t地点におけるHCP(Hexagonal Close Packed)格子構造のaspect ratio
【0056】
実施例1〜
5は、本発明で提示した変形抵抗の差に関する関係式(1)を考慮して選定された拘束部材と板状のマグネシウム鋳造材を適用し、ε
eff以上の圧下率で圧延したパス数および累積圧下量に対する相関関係式(2)と関係式(3)を満足して製造された結果である。
【0057】
表4を参照すれば、本発明で提示する非基底(non−basal)集合組織の形成挙動を満足し、(0002)面[0001]方向の基準方位差が30°以下の範囲内の集合組織の集合強度の平均値が3以下であることを確認することができる。また、板材内のHCP(Hexagonal Close Packed)結晶構造のc/a値の偏差が5以下を満足することを確認することができる。これにより、常温で限界ドーム高さ約10〜14mmを確保可能なマグネシウム合金圧延板材を最終的に製造することができた。
【0058】
比較例1〜3は、本発明で提示している拘束部材適用ベースの製造方式ではない、マグネシウム鋳造材のみを適用して、通常の圧延方式で製造された合金圧延板材に関する結果で、仕上げ熱処理後にも表4の(0002)面[0001]方向の基準方位差が30°以下の範囲内の集合強度の平均値から明らかなように、組織内の非基底(non−basal)集合組織が発達しないことを確認することができ、c/a偏差値から明らかなように、非基底(non−basal)集合組織の均一性も低下して、優れた冷間成形性を確保することができない。
【0059】
比較例4および5は、適用されたマグネシウム合金および拘束部材間の変形抵抗の差に対する関係式(1)の有効範囲を外れた場合である。より詳しくは、比較例4は、純アルミニウム板材を拘束部材に適用した場合で、圧延が行われた400℃の温度領域におけるMFSは約15MPaとマグネシウム鋳造材(120MPa)に比べて非常に低いことが分かり、関係式(1)に代入した結果、表2から確認できるように、約0.8程度と有効範囲未満であることが分かる。この場合、拘束部材の変形抵抗値が非常に小さく、小さい圧下量でも拘束部材の成形が過度に進行し、マグネシウム素材との界面からマグネシウム素材の中心部まで十分な拘束圧延効果を付与できず、厚さ方向の1/2tおよび1/4t地点で十分な非基底(non−basal)集合組織を確保することができず、厚さ方向にも集合組織の形成挙動が異なる。比較例5は、圧延が行われた400℃の温度領域におけるMFSが約3250MPaのMart鋼を拘束部材に適用した場合で、マグネシウム素材(120MPa)に比べて変形抵抗値が非常に高いことが分かる。この場合、拘束部材の変形抵抗がマグネシウム素材に比べて非常に大きく、マグネシウム素材の界面から多軸の拘束変形挙動が十分に形成/伝達されず、厚さ方向の1/2t地点まで拘束圧延の効果を効果的に付与できなかった。
【0060】
比較例6は、拘束圧延時、累積圧下量が30%未満で与えられ、マグネシウム合金圧延板材へ圧延時に十分な剪断変形が作用せず、マグネシウム合金圧延板材の1/2t地点では拘束圧延の効果があるが、厚さ方向の中心部には非基底(non−basal)集合組織の実現が十分でなく、結果的に厚さ方向に集合組織が不均一になって優れた冷間成形性の確保が難しい場合である。表4のように、圧延後の集合組織的特性をみた時、厚さ方向の1/4t地点における(0002)面[0001]方向の基準方位差が30°以下、つまり、I
ave(1/4t)(〜30°)値は3以下を満足するものの、1/2t地点では3を超えることが分かり、その結果、c/a偏差値から明らかなように、非基底(non−basal)集合組織の均一性に劣り、優れた冷間成形性を確保することができない。
【0061】
比較例7は、板状のマグネシウム鋳造材に比べて拘束部材の厚さ比率が5%を超えられない場合である。この場合、界面部では異なる変形抵抗挙動に起因した拘束圧延効果がある程度確保され、表4のように、I
ave(1/4t)(〜30°)値が一般圧延と比較して減少することが分かるが、その効果はわずかである。また、I
ave(1/2t)(〜30°)値は一般圧延と類似していることが分かり、拘束圧延の効果が表層部ではわずかに作用するものの、厚さ方向の中心部までは作用しなかったことを確認することができる。
【0062】
比較例8および9は、effective strain(ε
eff)値以上の変形が加えられる圧下率で圧延されるパス数(N
Reff)が、本発明で提示する範囲を外れた場合で、比較例8は、総12パスのうち1パスのみが有効圧下量以上に圧延された場合である。つまり、表4から明らかなように、最終厚さ1.2mmに圧延するために、関係式(3)の値が40を超えて特定パスで圧下量が適用された場合で、製造時、通板性の低下によりマグネシウム素材と拘束部材との間の界面で剥離現象が発生して、拘束圧延効果を低下させた。比較例9は、総36パスのうち1パスのみが有効圧下量以上に圧延された場合で、大部分のパスあたりの圧下率が関係式(3)で提示する値3未満に圧下量が適用された場合で、マグネシウム合金圧延板材内の非基底(non−basal)集合組織の形成が効果的でないことが分かり、厚さ方向にも集合組織が均一でない。
【0063】
実施例および比較例について、より詳しい集合組織および物性評価の結果を図面を参照して説明する。
【0064】
図1は、一般に、段階(a)〜(d)に従い、拘束圧延なしに、一般圧延工程で圧延された後と、段階(g)を経た後の比較例1に相当するマグネシウム合金圧延板材に対する結晶組織を、EBSD(Electron Backscatter Diffraction)を用いて観察した結果である。観察地域は、厚さ方向の1/4t地点である。
【0065】
図2は、拘束圧延を適用した場合で、イットリウムやカルシウムなどの特殊元素が添加されず、拘束部材STS304を用いて、累積圧下量70%で拘束圧延および圧延後、400℃で1時間熱処理および炉冷を経たマグネシウム合金圧延板材の、厚さ方向の1/4t地点の結晶組織を示しており、実施例1に相当する。
【0066】
図3は、実施例1と比較例1に相当するもので、拘束圧延適用の有無による熱処理後の厚さ方向の1/4t、1/2t地点における(0002)面の基準結晶方位分布を示している。
【0067】
上記
図1から明らかなように、拘束圧延を適用せずに圧延されたマグネシウム合金板材の結晶方位は、明確に(0002)面[0001]方向に結晶方位が集中した基底集合組織を呈しており、ダブルツインの分率が非常に低いことが分かる。しかし、
図2のように、拘束圧延を施す場合、非常に高い分率のダブルツインが確認され、結晶方位も(0002)面基準[0001]方位に集中程度が緩和することが分かる。
【0068】
また、熱処理後の組織を比較する時、一般圧延による組織は相対的に結晶粒の大きさが粗大である(平均直径30μm)ことが分かり、これは、再結晶温度以上での熱処理による結果と判断される。しかし、拘束圧延材の場合、平均直径が12μmであって、マグネシウム合金圧延板材の厚さが約1.2mmであることを勘案すると、非常に微細な組織が形成されたことが分かる。これは、イットリウムやカルシウムがなくても、拘束圧延中に発生したダブルツインが熱処理時に再結晶サイト(site)の役割を果たした結果と判断される。
【0069】
さらに、
図3から明らかなように、一般圧延材の場合、厚さ方向に(0002)面の基準結晶方位分布が異なることが分かるが、拘束圧延材は1/4t、1/2t地点とも基底集合組織が十分に緩和し、方位分布挙動も類似していることが分かる。
【0070】
本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造可能であり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施可能であることを理解するであろう。そのため、以上に述べた実施例は、あらゆる面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。