(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記正極前駆体表面の走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光法(SEM−EDX)により得られる酸素マッピングにおいて、輝度値の平均値を基準に二値化した酸素マッピングの面積をC1%とするとき、25.0≦C1≦76.0、かつ0.80≦C1/A3≦2.40を満たす、請求項1又は2に記載の正極前駆体。
ブロードイオンビーム(BIB)加工した前記正極前駆体断面の走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光法(SEM−EDX)により得られる酸素マッピングにおいて、輝度値の平均値を基準に二値化した酸素マッピングの面積をC2%とするとき、25.0≦C2≦76.0、かつ0.80≦C2/A3≦2.40を満たす、請求項1〜3のいずれか一項に記載の正極前駆体。
前記リチウム遷移金属酸化物が、層状系、スピネル系、及びオリビン系から成る群から選択される少なくとも一つの化合物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の正極前駆体。
請求項10〜12のいずれか一項に記載の非水系リチウム蓄電素子を含む、電力回生アシストシステム、電力負荷平準化システム、無停電電源システム、非接触給電システム、エナジーハーベストシステム、蓄電システム、太陽光発電蓄電システム、電動パワーステアリングシステム、非常用電源システム、インホイールモーターシステム、アイドリングストップシステム、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド自動車、電動バイク、急速充電システム、及びスマートグリッドシステムから成る群から選択される少なくとも一つの蓄電モジュール。
請求項10〜12のいずれか一項に記載の非水系リチウム蓄電素子と、鉛電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン二次電池又は燃料電池とを直列又は並列に接続した、蓄電システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)を詳細に説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。本実施形態の各数値範囲における上限値及び下限値は任意に組み合わせて任意の数値範囲を構成することができる。なお、本明細書における「〜」とは、特に断りがない場合、その前後に記載される数値を上限値及び下限値として含む意味である。
一般に、非水系リチウム蓄電素子は、正極と、負極と、セパレータと、電解液とを主な構成要素とする。電解液としては、アルカリ金属イオンを含む有機溶媒(以下、「非水系電解液」ともいう。)を用いる。
【0013】
<正極>
本実施形態における正極前駆体又は正極は、正極集電体と、その上に配置された(より詳細には、その片面又は両面上に設けられた)、正極活物質を含む正極活物質層とを有する。本実施形態に係る正極活物質層は、炭素材料、リチウム遷移金属酸化物及びアルカリ金属化合物を含むことを特徴とする。後述のように、本実施形態では、蓄電素子組み立て工程内で、負極にアルカリ金属イオンをプレドープすることが好ましく、そのプレドープ方法としては、アルカリ金属化合物を含む正極前駆体、負極、セパレータ、外装体、及び非水系電解液を用いて蓄電素子を組み立てた後に、正極前駆体と負極との間に電圧を印加することが好ましい。アルカリ金属化合物は、正極前駆体中にいかなる態様で含まれていてもよい。例えば、アルカリ金属化合物は、正極集電体と正極活物質層との間に存在してよく、正極活物質層の表面上に存在してよい。アルカリ金属化合物は正極前駆体の正極集電体上に形成された正極活物質層に含有されることが好ましい。
本明細書では、アルカリ金属ドープ工程前における正極を「正極前駆体」、アルカリ金属ドープ工程後における正極を「正極」と定義する。
【0014】
本明細書では、正極前駆体又は正極の製造用である塗工液を「正極塗工液」という。正極塗工液は、既知の塗工液の形態だけでなく、既知の懸濁液、分散液、乳化液、組成物又は混合物の形態も含んでよい。本実施形態に係る正極塗工液は、単に、スラリー、塗液等と呼ばれることがある。
【0015】
[正極塗工液]
本実施形態における正極塗工液は、分散溶媒中に、炭素材料と、リチウム遷移金属酸化物と、アルカリ金属化合物とをすべて含む固形分を含有する。これ以外に、必要に応じて、導電材、結着剤、分散剤、分散安定剤、pH調整剤等の任意成分を含んでいてもよい。
【0016】
[正極活物質層]
正極活物質層は、炭素材料及びリチウム遷移金属酸化物を含む正極活物質を含有することが好ましく、これ以外に、必要に応じて、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤、pH調整剤等の任意成分を含んでいてもよい。
また、正極活物質層は、正極前駆体の正極活物質層中又は正極活物質層表面に、アルカリ金属化合物が含有されることが好ましい。
【0017】
[正極活物質]
正極活物質は、炭素材料及びリチウム遷移金属酸化物を含むことが好ましい。この炭素材料としては、カーボンナノチューブ、導電性高分子、又は多孔性の炭素材料を使用することが好ましく、より好ましくは活性炭である。正極活物質には1種類以上の炭素材料を混合して使用してもよい。
リチウム遷移金属酸化物としては、リチウムイオン電池で使用される既知の材料を使用することができる。正極活物質には1種類以上のリチウム遷移金属酸化物を混合して使用してもよい。
【0018】
活性炭を正極活物質として用いる場合、活性炭の種類及びその原料には特に制限はないが、高い入出力特性と、高いエネルギー密度とを両立させるために、活性炭の細孔を最適に制御することが好ましい。具体的には、BJH法により算出した直径20Å以上500Å以下の細孔に由来するメソ孔量をV
1(cc/g)、MP法により算出した直径20Å未満の細孔に由来するマイクロ孔量をV
2(cc/g)とするとき、
(1)高い入出力特性のためには、0.3<V
1≦0.8、及び0.5≦V
2≦1.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が1,500m
2/g以上3,000m
2/g以下である活性炭(以下、活性炭1ともいう。)が好ましく、また、
(2)高いエネルギー密度を得るためには、0.8<V
1≦2.5、及び0.8<V
2≦3.0を満たし、かつ、BET法により測定される比表面積が2,300m
2/g以上4,000m
2/g以下である活性炭(以下、活性炭2ともいう。)が好ましい。
【0019】
本実施形態における活物質のBET比表面積及びメソ孔量、マイクロ孔量、平均細孔径は、それぞれ以下の方法によって求められる値である。試料を200℃で一昼夜真空乾燥し、窒素を吸着質として吸脱着の等温線の測定を行う。ここで得られる吸着側の等温線を用いて、BET比表面積はBET多点法又はBET1点法により、メソ孔量はBJH法により、マイクロ孔量はMP法により、それぞれ算出される。
BJH法は一般的にメソ孔の解析に用いられる計算方法で、Barrett,Joyner, Halendaらにより提唱されたものである(非特許文献1)。
また、MP法とは、「t−プロット法」(非特許文献2)を利用して、マイクロ孔容積、マイクロ孔面積、及びマイクロ孔の分布を求める方法を意味し、R.S.Mikhail, Brunauer,Bodorにより考案された方法である(非特許文献3)。
また、平均細孔径とは、液体窒素温度下で、各相対圧力下における窒素ガスの各平衡吸着量を測定して得られる、試料の質量あたりの全細孔容積を上記BET比表面積で除して求めたものを指す。
尚、上記のV
1が上限値でV
2が下限値である場合のほか、それぞれの上限値と下限値の組み合わせは任意である。
以下、前記(1)活性炭1及び前記(2)活性炭2について、個別に順次説明する。
【0020】
(活性炭1)
活性炭1のメソ孔量V
1は、正極材料を蓄電素子に組み込んだときの入出力特性を大きくする点で、0.3cc/gより大きい値であることが好ましい。V
1は、正極の嵩密度の低下を抑える点から、0.8cc/g以下であることが好ましい。V
1は、より好ましくは0.35cc/g以上0.7cc/g以下、更に好ましくは0.4cc/g以上0.6cc/g以下である。
活性炭1のマイクロ孔量V
2は、活性炭の比表面積を大きくし、容量を増加させるために、0.5cc/g以上であることが好ましい。V
2は、活性炭の嵩を抑え、電極としての密度を増加させ、単位体積当たりの容量を増加させるという点から、1.0cc/g以下であることが好ましい。V
2は、より好ましくは0.6cc/g以上1.0cc/g以下、更に好ましくは0.8cc/g以上1.0cc/g以下である。
マイクロ孔量V
2に対するメソ孔量V
1の比(V
1/V
2)は、0.3≦V
1/V
2≦0.9の範囲であることが好ましい。すなわち、高容量を維持しながら出力特性の低下を抑えることができる程度に、マイクロ孔量に対するメソ孔量の割合を大きくするという点から、V
1/V
2が0.3以上であることが好ましい。一方で、高出力特性を維持しながら容量の低下を抑えることができる程度に、メソ孔量に対するマイクロ孔量の割合を大きくするという点から、V
1/V
2は0.9以下であることが好ましい。より好ましいV
1/V
2の範囲は0.4≦V
1/V
2≦0.7、更に好ましいV
1/V
2の範囲は0.55≦V
1/V
2≦0.7である。
【0021】
活性炭1の平均細孔径は、得られる蓄電素子の出力を最大にする点から、17Å以上であることが好ましく、18Å以上であることがより好ましく、20Å以上であることが最も好ましい。また容量を最大にする点から、活性炭1の平均細孔径は25Å以下であることが好ましい。
活性炭1のBET比表面積は、1,500m
2/g以上3,000m
2/g以下であることが好ましく、1,500m
2/g以上2,500m
2/g以下であることがより好ましい。BET比表面積が1,500m
2/g以上の場合には、良好なエネルギー密度が得られ易く、他方、BET比表面積が3,000m
2/g以下の場合には、電極の強度を保つために結着剤を多量に入れる必要がないので、電極体積当たりの性能が高くなる。
【0022】
前記のような特徴を有する活性炭1は、例えば、以下に説明する原料及び処理方法を用いて得ることができる。
本実施形態では、活性炭1の原料として用いられる炭素源は、特に限定されるものではない。例えば、木材、木粉、ヤシ殻、パルプ製造時の副産物、バガス、廃糖蜜等の植物系原料;泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭、石油蒸留残渣成分、石油ピッチ、コークス、コールタール等の化石系原料;フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂、セルロイド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の各種合成樹脂;ポリブチレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン等の合成ゴム;その他の合成木材、合成パルプ等、及びこれらの炭化物が挙げられる。これらの原料の中でも、量産対応及びコストの観点から、ヤシ殻、木粉等の植物系原料、及びそれらの炭化物が好ましく、ヤシ殻炭化物が特に好ましい。
これらの原料を前記活性炭1とするための炭化及び賦活の方式としては、例えば、固定床方式、移動床方式、流動床方式、スラリー方式、ロータリーキルン方式等の既知の方式を採用できる。
これらの原料の炭化方法としては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、ネオン、一酸化炭素、燃焼排ガス等の不活性ガス、又はこれらの不活性ガスを主成分とした他のガスとの混合ガスを使用して、400〜700℃(好ましくは450〜600℃)程度において、30分〜10時間程度に亘って焼成する方法が挙げられる。
上記で説明された炭化方法により得られた炭化物の賦活方法としては、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて焼成するガス賦活法が好ましく用いられる。これらのうち、賦活ガスとして、水蒸気又は二酸化炭素を使用する方法が好ましい。
この賦活方法では、賦活ガスを0.5〜3.0kg/h(好ましくは0.7〜2.0kg/h)の割合で供給しながら、得られた炭化物を3〜12時間(好ましくは5〜11時間、更に好ましくは6〜10時間)掛けて800〜1,000℃まで昇温して賦活するのが好ましい。
更に、上記で説明された炭化物の賦活処理に先立ち、予め炭化物を1次賦活してもよい。この1次賦活では、通常、炭素材料を水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて、900℃未満の温度で焼成してガス賦活する方法が、好ましく採用できる。
【0023】
上記で説明された炭化方法における焼成温度及び焼成時間と、賦活方法における賦活ガス供給量、昇温速度及び最高賦活温度とを適宜組み合わせることにより、本実施形態において使用できる活性炭1を製造することができる。
活性炭1の平均粒子径は、2〜20μmであることが好ましい。平均粒子径が2μm以上であると、活物質層の密度が高いために電極体積当たりの容量が高くなる傾向がある。なお、平均粒子径が小さいと耐久性が低いという欠点を招来する場合があるが、平均粒子径が2μm以上であればそのような欠点が生じ難い。一方で、平均粒子径が20μm以下であると、高速充放電には適合し易くなる傾向がある。活性炭1の平均粒子径は、より好ましくは2〜15μmであり、更に好ましくは3〜10μmである。
【0024】
(活性炭2)
活性炭2のメソ孔量V
1は、正極材料を蓄電素子に組み込んだときの出力特性を大きくする観点から、0.8cc/gより大きい値であることが好ましい。V
1は、蓄電素子の容量の低下を抑える観点から、2.5cc/g以下であることが好ましい。V
1は、より好ましくは1.00cc/g以上2.0cc/g以下、更に好ましくは、1.2cc/g以上1.8cc/g以下である。
活性炭2のマイクロ孔量V
2は、活性炭の比表面積を大きくし、容量を増加させるために、0.8cc/gより大きい値であることが好ましい。V
2は、活性炭の電極としての密度を増加させ、単位体積当たりの容量を増加させるという観点から、3.0cc/g以下であることが好ましい。V
2は、より好ましくは1.0cc/gより大きく2.5cc/g以下、更に好ましくは1.5cc/g以上2.5cc/g以下である。
上述したメソ孔量及びマイクロ孔量を有する活性炭2は、従来の電気二重層キャパシタ又はリチウムイオンキャパシタ用として使用されていた活性炭よりもBET比表面積が高いものである。活性炭2のBET比表面積の具体的な値は、2,300m
2/g以上4,000m
2/g以下であることが好ましく、3,000m
2/g以上4,000m
2/g以下であることがより好ましく、3,200m
2/g以上3,800m
2/g以下であることが更に好ましい。BET比表面積が2,300m
2/g以上の場合には、良好なエネルギー密度が得られ易く、BET比表面積が4,000m
2/g以下の場合には、電極の強度を保つために結着剤を多量に入れる必要がないので、電極体積当たりの性能が高くなる。
【0025】
前記のような特徴を有する活性炭2は、例えば以下に説明するような原料及び処理方法を用いて得ることができる。
活性炭2の原料として用いられる炭素質材料としては、通常活性炭原料として用いられる炭素源であれば特に限定されるものではなく、例えば、木材、木粉、ヤシ殻等の植物系原料;石油ピッチ、コークス等の化石系原料;フェノール樹脂、フラン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂等の各種合成樹脂等が挙げられる。これらの原料の中でも、フェノール樹脂、及びフラン樹脂は、高比表面積の活性炭を作製するのに適しており特に好ましい。
これらの原料を炭化する方式、或いは賦活処理時の加熱方法としては、例えば、固定床方式、移動床方式、流動床方式、スラリー方式、ロータリーキルン方式等の公知の方式が挙げられる。加熱時の雰囲気は窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス、又はこれらの不活性ガスを主成分として他のガスとの混合したガスが用いられる。炭化温度は400〜700℃程度で0.5〜10時間程度焼成する方法が一般的である。
炭化物の賦活方法としては、水蒸気、二酸化炭素、酸素等の賦活ガスを用いて焼成するガス賦活法、及びアルカリ金属化合物と混合した後に加熱処理を行うアルカリ金属賦活法があるが、高比表面積の活性炭を作製するにはアルカリ金属賦活法が好ましい。
この賦活方法では、炭化物とKOH、NaOH等のアルカリ金属化合物との質量比が1:1以上(アルカリ金属化合物の量が、炭化物の量と同じかこれよりも多い量)となるように混合した後に、不活性ガス雰囲気下で600〜900℃の範囲において、0.5〜5時間加熱を行い、その後アルカリ金属化合物を酸及び水により洗浄除去し、更に乾燥を行う。
マイクロ孔量を大きくし、メソ孔量を大きくしないためには、賦活する際に炭化物の量を多めにしてKOHと混合するとよい。マイクロ孔量及びメソ孔量の双方を大きくするためには、KOHの量を多めに使用するとよい。また、主としてメソ孔量を大きくするためには、アルカリ賦活処理を行った後に水蒸気賦活を行うことが好ましい。
活性炭2の平均粒子径は2μm以上20μm以下であることが好ましい。より好ましくは3μm以上10μm以下である。
【0026】
(活性炭の使用)
活性炭1及び2は、それぞれ、1種の活性炭であってもよいし、2種以上の活性炭の混合物であって前記した各々の特性値を混合物全体として示すものであってもよい。
前記の活性炭1及び2は、これらのうちのいずれか一方を選択して使用してもよいし、両者を混合して使用してもよい。
正極活物質は、活性炭1及び2以外の材料(例えば、上記で説明された特定のV
1及び/若しくはV
2を有さない活性炭、又は活性炭以外の材料(例えば、導電性高分子等))を含んでもよい。例示の態様において、正極前駆体における正極活物質層中の活性炭1の含有量、活性炭2の含有量、又は活性炭1及び2の合計含有量、つまり正極活物質層中の炭素材料の質量割合をA
1とするとき、また、正極前駆体中に導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等が含まれる場合には、炭素材料とこれらの材料の合計量をA
1とするとき、A
1が15質量%以上65質量%以下であり、更に好ましくは20質量%以上50質量%以下である。A
1が15質量%以上であれば、電気伝導度の高い炭素材料とアルカリ金属化合物の接触面積が増えるため、プレドープ工程においてアルカリ金属化合物の酸化反応が促進し、短時間でプレドープをすることができる。A
1が65質量%以下であれば、正極活物質層の嵩密度が高まり高容量化できる。
正極塗工液中の全固形分に占める炭素材料の質量割合をX
1とするとき、X
1は15質量%以上65質量%以下であり、好ましくは20質量%以上50質量%以下である。なお、炭素材料の質量割合とは、すなわち、活性炭1及び/又は活性炭2、活性炭1及び2以外の活性炭などを含む、炭素材料の合計の質量割合である。
正極の正極活物質層中に占める活性炭1の含有量、活性炭2の含有量、又は活性炭1及び2の合計含有量、つまり正極活物質層中の炭素材料の質量割合をY
1とするとき、また、正極中に導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等が含まれる場合には、炭素材料とこれらの材料の合計量をY
1とするとき、Y
1は37.5質量%以上87.5質量%以下である。Y
1が37.5質量%以上であれば、充放電におけるイオンの吸脱着面積が大きくなるために低抵抗化できる。Y
1が87.5質量%以下であれば高容量化できる。
【0027】
(リチウム遷移金属酸化物)
リチウム遷移金属酸化物は、リチウムを吸蔵及び放出可能な遷移金属酸化物を含む。正極活物質として用いられる遷移金属酸化物には、特に制限はない。遷移金属酸化物としては、例えば、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、チタン(Ti)、及びクロム(Cr)から成る群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む酸化物が挙げられる。勿論、遷移金属酸化物の例は、これに限定されない。遷移金属酸化物として具体的には、下記式:
Li
xCoO
2{式中、xは0≦x≦1を満たす。}、
Li
xNiO
2{式中、xは0≦x≦1を満たす。}、
Li
xNi
yM
(1-y)O
2{式中、Mは、Co、Mn、Al、Fe、Mg、及びTiから成る群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、xは0≦x≦1を満たし、かつyは0.2<y<0.97を満たす。}、
Li
xNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2{式中、xは0≦x≦1を満たす。}、
Li
xMnO
2{式中、xは0≦x≦1を満たす。}、
α−Li
xFeO
2{式中、xは0≦x≦1を満たす。}、
Li
xVO
2{式中、xは0≦x≦1を満たす。}、
Li
xCrO
2{式中、xは0≦x≦1を満たす。}、
Li
xFePO
4{式中、xは0≦x≦1を満たす。}、
Li
xMnPO
4{式中、xは0≦x≦1を満たす。}、
Li
zV
2(PO
4)
3{式中、zは0≦z≦3を満たす。}、
Li
xMn
2O
4{式中、xは0≦x≦1を満たす。}、
Li
xM
yMn
(2-y)O
4{式中、Mは、Co、Mn、Al、Fe、Mg、及びTiから成る群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、xは0≦x≦1を満たし、かつyは0.2<y<0.97を満たす。}、
Li
xNi
aCo
bAl
(1-a-b)O
2{式中、xは0≦x≦1を満たし、かつa及びbは0.2<a<0.97と0.2<b<0.97を満たす。}、
Li
xNi
cCo
dMn
(1-c-d)O
2{式中、xは0≦x≦1を満たし、かつc及びdは0.2<c<0.97と0.2<d<0.97を満たす。}
で表される化合物等が挙げられる。これらの中でも、高容量、低抵抗、サイクル特性、アルカリ金属化合物の分解、及びプレドープ時の正極活物質の欠落の抑制の観点から、上記式Li
xNi
aCo
bAl
(1-a-b)O
2、Li
xNi
cCo
dMn
(1-c-d)O
2、Li
xCoO
2、Li
xMn
2O
4、Li
xFePO
4、Li
xMnPO
4、又はLi
zV
2(PO
4)
3で表される化合物が好ましい。
本実施形態では、正極活物質とは異なるアルカリ金属化合物が正極前駆体に含まれていれば、プレドープにてアルカリ金属化合物がアルカリ金属のドーパント源となり負極にプレドープができるため、遷移金属化合物に予めリチウムイオンが含まれていなくても(すなわちx=0、又はz=0であっても)、非水系リチウム蓄電素子として電気化学的な充放電をすることができる。
【0028】
リチウム遷移金属酸化物の平均粒子径は、0.1〜20μmであることが好ましい。平均粒子径が0.1μm以上であると、活物質層の密度が高いために電極体積当たりの容量が高くなる傾向がある。平均粒子径が小さいと耐久性が低いという欠点を招来する場合があるが、平均粒子径が0.1μm以上であればそのような欠点が生じ難い。平均粒子径が20μm以下であると、高速充放電には適合し易くなる傾向がある。リチウム遷移金属酸化物の平均粒子径は、より好ましくは0.5〜15μmであり、更に好ましくは1〜10μmである。
また、リチウム遷移金属酸化物の平均粒子径が、上記で説明された炭素材料の平均粒子径より小さいことが好ましい。リチウム遷移金属酸化物の平均粒子径が小さければ、平均粒子径の大きな炭素材料により形成される空隙にリチウム遷移金属酸化物が配置することができ、低抵抗化できる。
リチウム遷移金属酸化物の構造については、高容量、低抵抗、サイクル特性、アルカリ金属化合物の分解、プレドープ時のリチウム遷移金属酸化物の容量劣化抑制、及びプレドープ時の正極活物質の欠落の抑制の観点から、リチウム遷移金属酸化物が、層状系化合物、スピネル系化合物及びオリビン系化合物から成る群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0029】
(リチウム遷移金属酸化物の使用)
リチウム遷移金属酸化物は、1種であってもよいし、2種以上の材料の混合物であって前記した各々の特性値を混合物全体として示すものであってもよい。
正極活物質は、上記リチウム遷移金属酸化物以外の材料(例えば、導電性高分子等)を含んでもよい。例示の態様において、正極前駆体の正極活物質層中のリチウム遷移金属酸化物の含有量をA
2、正極塗工液中の全固形分に占めるリチウム遷移金属酸化物の含有量をX
2とするとき、A
2又はX
2が5質量%以上35質量%以下であり、更に好ましくは10質量%以上30質量%以下である。A
2又はX
2が5質量%以上であれば、正極活物質層の嵩密度が高まり高容量化できる。A
2又はX
2が35質量%以下であれば、電気伝導度の高い炭素材料とアルカリ金属化合物の接触面積が増えるため、プレドープ工程においてアルカリ金属化合物の酸化反応が促進し、短時間でプレドープをすることができる。
また、正極の正極活物質層中のリチウム遷移金属酸化物の含有量をY
2とするとき、Y
2が9.0質量%以上58.5質量%以下である。Y
2が9.0質量%以上であれば高容量化できる。Y
2が58.5質量%以下であれば、イオンの吸脱着する領域が大きくなるために低抵抗化できる。
【0030】
(正極活物質の使用)
本実施形態では、正極前駆体におけるリチウム遷移金属酸化物の質量割合A
2、又は正極塗工液の全固形分に占めるリチウム遷移金属酸化物の質量割合X
2と炭素材料の質量割合A
1、又は正極塗工液の全固形分に占める炭素材料の質量割合X
1との比A
2/A
1(又はX
2/X
1)は、0.10以上2.00以下であり、好ましくは0.20以上1.20以下であり、より好ましくは0.20以上1.10以下である。A
2/A
1(又はX
2/X
1)が0.10以上であれば正極活物質層の嵩密度を高め、高容量化できる。A
2/A
1(又はX
2/X
1)が2.00以下であれば活性炭間の電子伝導が高まるために低抵抗化でき、且つ活性炭とアルカリ金属化合物の接触面積が増えるためにアルカリ金属化合物の分解を促進できる。
また、正極におけるリチウム遷移金属酸化物の質量割合Y
2と炭素材料の質量割合Y
1との比Y
2/Y
1は、0.10以上1.90以下である。Y
2/Y
1が0.10以上であれば正極活物質層の嵩密度を高め、高容量化できる。Y
2/Y
1が1.90以下であれば活性炭間の電子伝導が高まるために低抵抗化できる。
【0031】
(アルカリ金属化合物)
本実施形態に係るアルカリ金属化合物としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、酸化リチウム及び水酸化リチウムが挙げられ、正極前駆体中で分解して陽イオンを放出し、負極で還元することでプレドープすることが可能である、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウムから選択されるアルカリ金属炭酸塩の1種以上が好適に用いられ、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムが、より好適に用いられ、単位重量当たりの容量が高いという観点から炭酸リチウムが更に好適に用いられる。
正極前駆体、及び正極塗工液中に含まれるアルカリ金属化合物は1種でもよく、2種以上のアルカリ金属化合物を含んでいてもよい。また、本実施形態に係る正極前駆体、及び正極塗工液としては、少なくとも1種のアルカリ金属化合物を含んでいればよく、Mをリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)から選ばれる1種以上として、M
2O等の酸化物、MOH等の水酸化物、MFやMCl等のハロゲン化物、RCOOM(式中、RはH、アルキル基、アリール基である。)等のカルボン酸塩を1種以上含んでいてもよい。また、本実施形態に係るアルカリ金属化合物は、BeCO
3、MgCO
3、CaCO
3、SrCO
3、及びBaCO
3から成る群から選ばれるアルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、又はアルカリ土類金属カルボン酸塩を1種以上含んでいてもよい。
【0032】
正極前駆体の正極活物質層に含まれるアルカリ金属化合物の質量割合A
3、又は正極塗工液の全固形分に占めるアルカリ金属化合物の質量割合X
3が、10質量%以上50質量%以下であるように正極前駆体を作製する。A
3、又はX
3が10質量%以上であれば負極に十分な量のアルカリ金属イオンをプレドープすることができ、非水系リチウム蓄電素子の容量が高まる。A
3、又はX
3が50質量%以下であれば、正極前駆体中の電子伝導を高めることができるので、アルカリ金属化合物の分解を効率よく行うことができる。
また、正極の正極活物質層に含まれるアルカリ金属化合物の質量割合Y
3が、0.6質量%以上6.3質量%以下である。Y
3が0.6質量%以上であれば高負荷充放電サイクルで生成するフッ素イオンを吸着することができ、高負荷充放電サイクル特性が向上する。Y
3が6.3質量%以下であれば、アルカリ金属化合物の分解によるガス発生を抑制することができ、高負荷充放電サイクル特性が向上する。
正極前駆体が、アルカリ金属化合物の他に上記2種以上のアルカリ金属化合物、又はアルカリ土類金属化合物を含む場合は、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の総量が、正極前駆体の片面当たり正極活物質層中に10質量%以上50質量%以下の割合であるように正極前駆体を作製することが好ましい。
正極塗工液が、アルカリ金属化合物の他に上記2種以上のアルカリ金属化合物、又はアルカリ土類金属化合物を含む場合は、アルカリ金属化合物、及びアルカリ土類金属化合物の総量が、正極塗工液中の全固形分に対し、10質量%以上50質量%以下の割合で含まれるように正極塗工液を調製することが好ましい。
正極が、アルカリ金属化合物の他に上記2種以上のアルカリ金属化合物、又はアルカリ土類金属化合物を含む場合は、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の総量が、正極の片面当たり正極活物質層中に0.6質量%以上6.3質量%以下含まれることが好ましい。
本実施形態では、上記で説明された炭素材料の含有量A
1又はX
1と、アルカリ金属化合物の含有量A
3又はX
2との比A
1/A
3又はX
1/X
3が、0.50以上3.00以下であり、0.55以上2.94以下であることが好ましく、0.65以上2.88以下であることがより好ましい。A
1/A
3又はX
1/X
3が0.50以上であれば、炭素材料の充放電に寄与する十分な量のアルカリ金属イオンが存在するために高容量化できる。また、炭素材料の表面でアルカリ金属化合物の分解が促進されるため、A
1/A
3又はX
1/X
3が3.00以下であればアルカリ金属化合物の分解が促進される。
また、上記で説明された炭素材料の含有量Y
1と、アルカリ金属化合物の含有量Y
3との比Y
1/Y
3が9.0以上100.0以下である。Y
1/Y
3が9.0以上であれば、高負荷充放電サイクルで生成するフッ素イオンを吸着することができ、高負荷充放電サイクル特性が向上する。Y
1/Y
3が100.0以下であれば、アルカリ金属化合物の分解によるガス発生を抑制することができ、高負荷充放電サイクル特性が向上する。
【0033】
(高負荷充放電特性)
非水系リチウム蓄電素子を充放電する際、電解液中のアルカリ金属イオン及びアニオンが充放電に伴って移動し、活物質と反応する。ここで、活物質へのイオンの挿入反応及び脱離反応の活性化エネルギーは、それぞれ異なる。そのため、特に充放電の負荷が大きい場合、イオンは充放電の変化に追従できず、活物質中に蓄積されてしまう。その結果、バルク電解液中の電解質濃度が下がるため、非水系リチウム蓄電素子の抵抗が上昇してしまう。
しかしながら、正極前駆体にアルカリ金属化合物を含有させると、該アルカリ金属化合物を酸化分解することにより、負極プレドープのためのアルカリ金属イオンが放出されるとともに、正極内部に電解液を保持できる良好な空孔が形成される。このような空孔を有する正極には、充放電中、活物質近傍に形成された空孔内の電解液からイオンが随時供給されるため、高負荷充放電サイクル特性が向上すると考えられる。
正極前駆体に含まれるアルカリ金属化合物は、非水系リチウム蓄電素子を形成したときに高電圧を印加することで酸化分解してアルカリ金属イオンを放出し、負極で還元することでプレドープが進行する。そのため、前記酸化反応を促進させることで前記プレドープ工程を短時間で行うことができる。前記酸化反応を促進させるためには、絶縁物であるアルカリ金属化合物を正極活物質と接触させて電子伝導を確保することと、反応して放出される陽イオンを電解液中に拡散させることが重要である。そのため、正極活物質表面を適度にアルカリ金属化合物が覆うことが重要である。
したがって、正極前駆体表面の走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光法(SEM−EDX)により得られる酸素マッピングにおいて、輝度値の平均値を基準に二値化した酸素マッピングの面積をC
1(%)とするときに25.0≦C
1≦76.0であり、かつ0.80≦C
1/A
3≦2.40を満足する場合に、アルカリ金属化合物の酸化分解が促進されるので好ましい。C
1が25.0%以上であればアルカリ金属化合物と正極活物質の電子伝導が確保されるためにプレドープが促進される。C
1が76.0%以下であれば電解液中のアルカリ金属イオンの拡散が促進されるためにプレドープが促進される。C
1/A
3が0.80以上であれば正極前駆体中の電解液の拡散が促進されるためにプレドープが促進される。C
1/A
3が2.40以下であればアルカリ金属化合物と正極活物質の電子伝導が確保されるためにプレドープが促進される。同様の観点から、より好ましくは、29.5≦C
1≦75.1、かつ/又は0.87≦C
1/A
3≦2.37である。
【0034】
また、ブロードイオンビーム(BIB)加工した正極前駆体断面のSEM−EDXにより得られる酸素マッピングにおいて、輝度値の平均値を基準に二値化した酸素マッピングの面積をC
2(%)とすると、25.0≦C
2≦76.0であり、かつ0.80≦C
2/A
3≦2.40であることが好ましい。C
2が25.0%以上であればアルカリ金属化合物と正極活物質の電子伝導が確保されるためにプレドープが促進される。C
2が76.0%以下であれば電解液中のアルカリ金属イオンの拡散が促進されるためにプレドープが促進される。C
2/A
3が0.80以上であれば正極前駆体中の電解液の拡散が促進されるためにプレドープが促進される。C
2/A
3が2.40以下であればアルカリ金属化合物と正極活物質の電子伝導が確保されるためにプレドープが促進される。同様の観点から、より好ましくは、25.6≦C
2≦75.6、かつ/又は0.81≦C
2/A
3≦2.38である。
C
1及びC
2の測定方法としては、正極前駆体表面及び正極前駆体断面のSEM−EDXにより得られる元素マッピングにおいて、輝度値の平均値を基準に二値化した酸素マッピングの面積として求められる。正極前駆体断面の形成方法については、正極前駆体上部からArビームを照射し、試料直上に設置した遮蔽板の端部に沿って平滑な断面を作製するBIB加工を用いることができる。
SEM−EDXの元素マッピングの測定条件は、特に限定されないが、画素数は128×128ピクセル〜512×512ピクセルの範囲であることが好ましく、マッピング像において最大輝度値に達する画素がなく、輝度値の平均値が最大輝度値の40%〜60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整することが好ましい。
【0035】
アルカリ金属化合物、及びアルカリ土類金属化合物の微粒子化には、様々な方法を用いることができる。例えば、ボールミル、ビーズミル、リングミル、ジェットミル、ロッドミル等の粉砕機を使用することができる。
上記アルカリ金属元素、及びアルカリ土類金属元素の定量は、ICP−AES、原子吸光分析法、蛍光X線分析法、中性子放射化分析法、ICP−MS等により算出できる。
本実施形態において、アルカリ金属化合物の平均粒子径は0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。平均粒子径が0.1μm以上であれば正極前駆体中での分散性に優れる。平均粒子径が10μm以下であれば、アルカリ金属化合物の表面積が増えるために分解反応が効率よく進行する。
また、アルカリ金属化合物の平均粒子径が、上記で説明された炭素材料の平均粒子径より小さいことが好ましい。アルカリ金属化合物の平均粒子径が炭素材料の平均粒子径より小さければ、正極活物質層の電子伝導が高まるために、電極体又は蓄電素子の低抵抗化に寄与することができる。
正極前駆体中におけるアルカリ金属化合物の平均粒子径の測定方法については特に限定されないが、正極断面のSEM画像、及びSEM−EDX画像から算出することができる。正極断面の形成方法については、正極上部からArビームを照射し、試料直上に設置した遮蔽板の端部に沿って平滑な断面を作製するBIB加工を用いることができる。
【0036】
(正極活物質層のその他の成分)
本発明における正極前駆体の正極活物質層には、必要に応じて、正極活物質及びアルカリ金属化合物の他に、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤、pH調整剤等の任意成分を含んでいてもよい。
前記導電性フィラーとしては、正極活物質よりも導電性の高い導電性炭素質材料を挙げることができる。このような導電性フィラーとしては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、気相成長炭素繊維、黒鉛、鱗片状黒鉛、カーボンナノチューブ、グラフェン、これらの混合物等が好ましい。
正極前駆体の正極活物質層における導電性フィラーの混合量は、正極活物質100質量部に対して、0〜20質量部が好ましく、1〜15質量部の範囲が更に好ましい。導電性フィラーは高入力の観点からは混合する方が好ましい。しかしながら、混合量が20質量部よりも多くなると、正極活物質層における正極活物質の含有割合が少なくなるために、正極活物質層体積当たりのエネルギー密度が低下するので好ましくない。
本発明においては、結着剤は単に結着の機能を発現させる以外に適度な添加によって、活性炭といった正極活物質、リチウム遷移金属酸化物、そしてアルカリ金属化合物といった電極成分の間に結着剤がうまく入り込むことによってイオンの通り道をも確保することができ、その結果、微短絡の抑制、高容量、サイクル後の内部抵抗維持といった顕著な効果を達成できると推定している。
従って上記正極活物質等を特定割合で混合し、さらに結着剤を最適添加して得られる正極前駆体の剥離強度の下限値は、0.02N/cm以上であり、好ましくは0.03N/cm以上であり、上限値は3.00N/cm以下であり、好ましくは2.76N/cm以下である。これによって上記効果を得ることが可能となる。
【0037】
結着剤としては、特に制限されるものではないが、例えばPVdF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体、フッ素ゴム、アクリル共重合体等を用いることができる。結着剤の使用量は、正極活物質100質量部に対して、好ましくは1質量部以上30質量部以下である。より好ましくは3質量部以上27質量部以下、更に好ましくは5質量部以上25質量部以下である。結着剤の量が1質量%以上であれば、十分な電極強度が発現される。一方で結着剤の量が30質量部以下であれば、正極活物質へのイオンの出入り及び拡散を阻害せず、高い入出力特性が発現される。
【0038】
分散安定剤としては、特に制限されるものではないが、例えばPVP(ポリビニルピロリドン)、PVA(ポリビニルアルコール)、セルロース誘導体等を用いることができる。分散安定剤の使用量は、正極活物質100質量部に対して、好ましくは0質量部以上10質量部以下である。分散安定剤の量が10質量部以下であれば、正極活物質へのイオンの出入り及び拡散を阻害せず、高い入出力特性が発現される。
【0039】
分散剤としては、特に制限されるものではないが、例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、及びポリビニルアセタールから成る群から選択される少なくとも一つを用いることができる。分散剤の使用量は、正極活物質100質量部に対して、好ましくは0質量部以上10質量部以下、より好ましくは0質量部より多く10質量部以下である。分散剤の量が10質量部以下であれば、正極活物質へのイオンの出入り及び拡散を阻害せず、高い入出力特性が発現される。
【0040】
正極塗工液の分散溶媒としては、水、N−メチル−2−ピロリドン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシド、リン酸トリメチル、アルコール、アセトン、トルエン、キシレン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、及びこれらの混合物等を用いることができる。
【0041】
塗工液の分散溶媒として水以外の有機溶媒を使用する場合には、分散溶媒中に含有される水分量は0質量%以上10質量%以下であることが好ましい。水分量が0質量%以上であれば(特に水分量が0質量%を超えれば)、アルカリ金属化合物が微量に溶解するため、正極活物質や導電材とアルカリ金属化合物の接触が高まり、プレドープが促進する。水分量が10質量%以下であれば塗工液の塩基性が高くなりすぎず、結着剤の変性を抑制できる。含有する水分量を10質量%以下に抑制する方法としては、硫酸マグネシウムやゼオライト等の脱水剤を添加する方法が挙げられる。
【0042】
塗工液の溶媒に水を使用する場合には、アルカリ金属化合物を加えることで塗工液がアルカリ性になることもあるため、必要に応じてpH調整剤を塗工液に添加してもよい。pH調整剤としては、特に制限されるものではないが、例えばフッ化水素、塩化水素、臭化水素等のハロゲン化水素、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸等のハロゲンオキソ酸、蟻酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、乳酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、二酸化炭素等の酸を用いることができる。
【0043】
[正極集電体]
本実施形態に係る正極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、電解液への溶出及び電解質又はイオンとの反応等による劣化が起こらない材料であれば特に制限はないが、金属箔が好ましい。本実施形態に係る非水系リチウム蓄電素子における正極集電体としては、アルミニウム箔がより好ましい。
金属箔は凹凸又は貫通孔を持たない通常の金属箔でもよいし、エンボス加工、ケミカルエッチング、電解析出法、ブラスト加工等を施した凹凸を有する金属箔でもよいし、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチング箔等の貫通孔を有する金属箔でもよい。
後述されるプロドープ処理の観点からは、無孔状のアルミニウム箔が更に好ましく、アルミニウム箔の表面が粗面化されていることが特に好ましい。
正極集電体の厚みは、正極の形状及び強度を十分に保持できれば特に制限はないが、例えば、1〜100μmが好ましい。
また前記金属箔の表面に、例えば黒鉛、鱗片状黒鉛、カーボンナノチューブ、グラフェン、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、気相成長炭素繊維等の導電性材料を含むアンカー層を設けることが好ましい。アンカー層を設けることで正極集電体と正極活物質層間の電気伝導が向上し、低抵抗化できる。アンカー層の厚みは、正極集電体の片面当たり0.1μm以上5μm以下であることが好ましい。
【0044】
[正極塗工液の製造]
本実施形態において、非水系リチウム蓄電素子の正極塗工液は、既知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等における塗工液の製造技術によって製造することが可能である。例えば、正極活物質及びアルカリ金属化合物、並びに必要に応じて使用されるその他の任意成分を、水又は有機溶剤中に任意の順序で分散又は溶解してスラリー状の塗工液を調製することができる。
【0045】
一実施形態において、本実施形態の正極塗工液の製造方法は、炭素材料と、リチウム遷移金属酸化物と、アルカリ金属化合物とを含む固形分を乾式混合し、その後、乾式混合された固形分と分散溶媒とを混合して、固形分を分散させることを含む。より具体的には、例えば、炭素材料と、リチウム遷移金属酸化物と、アルカリ金属化合物とを含む固形分の一部若しくは全部を乾式混合(「ドライブレンド」ともいう。)し、次いで、分散溶媒、及び/又は分散溶媒に結着剤や分散剤やpH調整剤が溶解又は分散した液状又はスラリー状の物質を追加して、正極塗工液を調製してもよい。また、分散溶媒中に結着剤や分散剤やpH調整剤が溶解又は分散した液状又はスラリー状の物質の中に、予め乾式混合した炭素材料とリチウム遷移金属酸化物とアルカリ金属化合物とを含む固形分を添加して調製してもよい。乾式混合する方法としては、限定されないが、例えばボールミル等を使用して行うことができる。
【0046】
他の実施形態において、炭素材料とアルカリ金属化合物とを乾式混合し、その後、他の固形分及び分散溶媒を任意の手順で混合して分散させてもよい。この手順によれば、炭素材料とアルカリ金属化合物とがより密接に混合されることにより、アルカリ金属化合物の電子伝導を高めることができ、プレドープ工程においてアルカリ金属化合物が分解し易くなるため好ましい。より具体的には、例えば、炭素材料とアルカリ金属化合物の一部若しくは全部を乾式混合し、次にリチウム遷移金属酸化物を加えて乾式混合し、その後、分散溶媒、及び/又は分散溶媒に結着剤や分散剤やpH調整剤が溶解又は分散した液状又はスラリー状の物質を追加して、正極塗工液を調製してもよい。また、分散溶媒中に結着剤や分散剤やpH調整剤が溶解又は分散した液状又はスラリー状の物質の中に、予め乾式混合した炭素材料及びアルカリ金属化合物、並びにリチウム遷移金属酸化物等を任意の手順で添加して調製してもよい。乾式混合する方法としては、限定されないが、例えばボールミル等を使用して行うことができる。
【0047】
更に他の実施形態において、導電材と前記アルカリ金属化合物とを乾式混合し、その後、他の固形分及び前記分散溶媒を任意の手順で混合して分散させてもよい。この手順によれば、導電性の低いアルカリ金属化合物に導電材がコーティングされることにより、アルカリ金属化合物の電子伝導を高めることができ、プレドープ工程においてアルカリ金属化合物が分解し易くなるため好ましい。より具体的には、例えば、導電材とアルカリ金属化合物の一部若しくは全部を乾式混合し、次に炭素材料及びリチウム遷移金属酸化物を加えて乾式混合し、その後、分散溶媒、及び/又は分散溶媒に結着剤や分散剤やpH調整剤が溶解又は分散した液状又はスラリー状の物質を追加して、正極塗工液を調製してもよい。また、分散溶媒中に結着剤や分散剤やpH調整剤が溶解又は分散した液状又はスラリー状の物質の中に、予め乾式混合した導電材及びアルカリ金属化合物、並びに炭素材料及びリチウム遷移金属酸化物等を任意の手順で添加して調製してもよい。乾式混合する方法としては、限定されないが、例えばボールミル等を使用して行うことができる。
【0048】
正極塗工液の固形分率は15%以上50%以下であることが好ましい。固形分率が15%以上であれば塗工時に穏やかな条件で乾燥することができる。固形分率が50%以下であれば塗工時の塗工スジやひび割れの発生を抑制できる。固形分率とは、塗工液の総重量に占める炭素材料、リチウム遷移金属酸化物、アルカリ金属化合物、及びその他結着剤や導電材等の固形分の合計重量の比率である。
【0049】
正極塗工液の調製における分散方法は、特に制限されるものではないが、好適にはビーズミル、ボールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、乳化分散機、自転・公転ミキサー、ホモディスパー、多軸分散機、プラネタリーミキサー、薄膜旋回型高速ミキサー等の分散機等を用いることができる。また、これらの分散機を複数組み合わせて分散することも可能である。良好な分散状態の塗工液を得るためには、例えば薄膜旋回型高速ミキサーを使用する場合には、周速1m/s以上50m/s以下で分散することが好ましい。周速1m/s以上であれば、各種材料が良好に溶解又は分散するため好ましい。また、50m/s以下であれば、分散による熱やせん断力により各種材料が破壊されることなく、再凝集が生じることがないため好ましい。分散の発熱による各種材料の破壊を抑制するため、冷却しながら塗工液を分散する方法が好ましい。
【0050】
塗工液の分散後、脱泡することが好ましい。脱泡の方法としては特に限定されないが、減圧環境下で塗工液を低速で撹拌する方法や、塗工液を静置する方法や、自転・公転ミキサーを用いて低速で撹拌する方法等が挙げられる。
また、分散後の塗工液についてフィルターで凝集物を取り除くことが好ましい。粒径の大きな凝集物を取り除くことで、塗膜のスジ発生等を抑制することができる。
【0051】
上記塗工液の分散度は、粒ゲージで測定した粒度が0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。分散度の上限としては、より好ましくは粒度が80μm以下、更に好ましくは粒度が50μm以下である。粒度が0.1μm以下では、正極活物質を含む各種材料粉末の粒径以下のサイズとなり、塗工液作製時に材料を破砕していることになり好ましくない。また、粒度が100μm以下であれば、塗工液吐出時の詰まりや塗膜のスジ発生等なく安定に塗工ができる。
【0052】
上記正極前駆体の塗工液の粘度(ηb)は、1,000mPa・s以上20,000mPa・s以下が好ましい。より好ましくは1,500mPa・s以上10,000mPa・s以下、更に好ましくは1,700mPa・s以上5,000mPa・s以下である。粘度(ηb)が1,000mPa・s以上であれば、塗膜形成時の液ダレが抑制され、塗膜幅及び厚みを良好に制御できる。また、20,000mPa・s以下であれば、塗工機を用いた際の塗工液の流路における圧力損失が少なく安定に塗工でき、また所望の塗膜厚み以下に制御できる。本実施形態において、正極塗工液の粘度をηb
1とし、ηb
1を測定してから24時間静置後の粘度をηb
2とするとき、ηb
2/ηb
1は、好ましくは0.40以上1.30以下である。ηb
2/ηb
1が0.50以上であれば、塗工液中の結着剤の偏在が抑制されているため、正極前駆体の剥離強度を高めることができ、プレドープ時の正極活物質層の欠落を抑制することができる。ηb
2/ηb
1が1.20以下であれば、アルカリ化合物による塗工液中の結着剤の変性が抑制されているため、正極前駆体の剥離強度を高めることができ、プレドープ時の正極活物質層の欠落を抑制することができる。一般に正極前駆体の塗工に要する時間は、電極1リール当たり24時間以内であることが多いため、ηb
1と、ηb
1を測定してから24時間後の粘度であるηb
2とを評価することで、塗工始点から塗工終点における目付や膜厚等の電極状態の均一性を確保することができる。
【0053】
本実施形態において、塗工液のTI値(チクソトロピーインデックス値)は、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.5以上である。TI値が1.1以上であれば、塗膜幅及び厚みを良好に制御できる。本実施形態において、正極塗工液のチクソトロピーインデックス値をTI
1とし、TI
1を測定してから24時間静置後のチクソトロピーインデックス値をTI
2とするとき、TI
2/TI
1は、0.50以上1.20以下である。TI
2/TI
1が0.50以上であれば、電極塗工時の液垂れを抑制することができ、正極活物質層の膜厚を均一化することで高容量化できる。TI
2/TI
1が1.20以下であれば、正極活物質層端部の局所的な厚膜化を抑制することができ、プレドープ時の正極活物質層の欠落を抑制することができる。TI
1と、TI
1を測定してから24時間後のTI値であるTI
2とを評価することで、塗工始点から塗工終点における塗膜端部の目付や膜厚の均一性を確保することができる。
【0054】
本実施形態における粘度(ηb)及びTI値は、それぞれ以下の方法により求められる値である。まず、E型粘度計を用いて温度25℃、ずり速度2s
-1の条件で2分以上測定した後の安定した粘度(ηa)を取得する。次いで、ずり速度を20s
-1に変更した他は上記と同様の条件で測定した粘度(ηb)を取得する。上記で得た粘度の値を用いてTI値は、TI値=ηa/ηbの式により算出される。ずり速度を2s
-1から20s
-1へ上昇させる際は、1段階で上昇させても良いし、上記の範囲で多段的にずり速度を上昇させ、適宜そのずり速度における粘度を取得しながら上昇させてもよい。本実施形態のTI
1及びηb
1は、自転・公転ミキサーを用いて600rpmの速度にて1分間分散した後に、上記方法で測定する。続いて25℃環境下、塗工液を密閉状態で24時間静置する。その後、再度上記方法で測定した値がTI
2及びηb
2である。測定に用いる正極塗工液の重量は特に制限されないが、測定のばらつきを軽減するという観点から10g以上100g以下であることが好ましい。重量が10g以上あれば測定の再現性が確保される。重量が100g以下であればサンプルの取扱い性に優れる。
【0055】
[正極前駆体の製造]
本実施形態において、非水系リチウム蓄電素子の正極となる正極前駆体は、既知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等における電極の製造技術によって製造することが可能である。例えば、上述の通りに塗工液を調製し、この塗工液を正極集電体上の片面又は両面に塗工して塗膜を形成し、これを乾燥することにより正極前駆体を得ることができる。更に得られた正極前駆体にプレスを施して、正極活物質層の膜厚又は嵩密度を調整してもよい。代替的には、溶剤を使用せずに、正極活物質及びアルカリ金属化合物、並びに必要に応じて使用されるその他の任意成分を乾式で混合し、得られた混合物をプレス成型した後、導電性接着剤を用いて正極集電体に貼り付ける方法、又は得られた混合物を正極集電体上に加熱プレスして正極活物質層を形成する方法も可能である。
【0056】
正極前駆体の塗膜の形成には、特に制限されるものではないが、好適にはダイコーター又はコンマコーター、ナイフコーター、グラビア塗工機等の塗工機を用いることができる。塗膜は単層塗工で形成してもよいし、多層塗工して形成してもよい。多層塗工の場合には、塗膜各層内のアルカリ金属化合物の含有量が異なるように塗工液組成を調整してもよい。正極集電体に塗膜を塗工する際、多条塗工してもよいし、間欠塗工してもよいし、多条間欠塗工してもよい。また、正極集電体の片面に塗工、乾燥し、その後もう一方の面に塗工、乾燥する逐次塗工を行ってもよいし、正極集電体の両面に同時に塗工液を塗工、乾燥する両面同時塗工を行ってもよい。正極集電体の両面に塗工液を塗工する際、表面と裏面との炭素材料、リチウム遷移金属酸化物、アルカリ金属化合物のそれぞれの比率は10%以下であることが好ましい。例えば、正極集電体の表面の炭素材料の質量比A
1(表)と裏面のA
1(裏)の比A
1(表)/A
1(裏)が0.9以上1.1以下である。また、正極集電体の表面と裏面の正極活物質層の厚みの比は10%以下であることが好ましい。表面と裏面の質量比、及び膜厚比が1.0に近いほど、一方の面に充放電の負荷が集中することないために高負荷充放電サイクル特性が向上する。
【0057】
また、正極活物質層のTD(機械方向MDに垂直な方向)において、中央部より端部を薄くすることが好ましい。後述する電極体を形成する際、端子部に近い部分では応力がかかるために正極活物質層が欠落し易い。そのため、端部の正極活物質層を薄くすることで応力を緩和し、正極活物質層の欠落を抑制することができる。端部を薄膜化する範囲については、正極活物質層のTDに沿って、正極活物質層の最長線分の端部から中央側に10%までの範囲内における正極活物質層の厚みが、正極活物質層の最長線分の中点における正極活物質層の厚みの90%以上100%未満であることがより好ましい。
塗工速度は0.1m/分以上100m/分以下であることが好ましい。より好ましくは0.5m/分以上70m/分以下、更に好ましくは1m/分以上50m/分以下である。塗工速度が0.1m/分以上であれば、安定に塗工できる。他方、100m/分以下であれば、塗工精度を十分に確保できる。
【0058】
本実施形態に係る正極前駆体の製造方法の一例は、以下の工程:
上記で得られた正極前駆体の塗膜を赤外線(IR)又は熱風で乾燥する工程;及び/又は
上記で得られた正極前駆体の塗膜をスリットしてからプレスする工程;
を含む。
【0059】
正極前駆体の塗膜の乾燥は、好ましくは熱風乾燥、赤外線(IR)乾燥等の乾燥方法を用いて、より好ましくは遠赤外線、近赤外線、又は80℃以上の熱風で行われる。塗膜の乾燥は、単一の温度で乾燥させてもよいし、多段的に温度を変えて乾燥させてもよい。また、複数の乾燥方法を組み合わせて乾燥させてもよい。乾燥温度は、25℃以上200℃以下であることが好ましい。より好ましくは40℃以上180℃以下、更に好ましくは50℃以上160℃以下である。乾燥温度が25℃以上であれば、塗膜中の溶媒を十分に揮発させることができる。他方、200℃以下であれば、急激な溶媒の揮発による塗膜のヒビ割れ又はマイグレーションによる結着剤の偏在、正極集電体又は正極活物質層の酸化を抑制できる。
乾燥後の正極前駆体に含まれる水分は、正極活物質層の質量を100%として0.1%以上10%以下であることが好ましい。水分が0.1%以上であれば、過剰な乾燥による結着剤の劣化を抑え、低抵抗化できる。水分が10%以下であれば、非水系リチウム蓄電素子におけるアルカリ金属イオンの失活を抑え、高容量化できる。
塗工液の調整にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いた場合、乾燥後の正極前駆体におけるNMPの含有量は、正極活物質層の質量を100%として0.1%以上10%以下であることが好ましい。NMPが0.1%以上であれば、過剰な乾燥による結着剤の劣化を抑え、低抵抗化できる。NMPが10%以下であれば、非水系リチウム蓄電素子の自己放電特性を改善することができる。
正極前駆体に含まれる水分は、例えばカールフィッシャー滴定法(JIS 0068(2001)「化学製品の水分測定方法」)により測定することができる。
また、正極前駆体に含まれるNMPは、25℃環境下、正極活物質層の50〜100倍の質量のエタノールに正極前駆体を24時間含侵させてNMPを抽出し、その後GC/MSを測定し、予め作成した検量線に基づいて定量することができる。
【0060】
正極前駆体のプレスには、好適には油圧プレス機、真空プレス機等のプレス機を用いることができる。正極活物質層の膜厚、嵩密度及び電極強度は、後述するプレス圧力、プレスロール間の隙間、プレス部の表面温度により調整できる。プレス圧力は0.5kN/cm以上20kN/cm以下が好ましく、より好ましくは1kN/cm以上10kN/cm以下、更に好ましくは2kN/cm以上7kN/cm以下である。プレス圧力が0.5kN/cm以上であれば、電極強度を十分に高くできる。他方、プレス圧力が20kN/cm以下であれば、正極前駆体に撓み又はシワが生じることがなく、所望の正極活物質層膜厚又は嵩密度に調整できる。また、プレスロール同士の隙間は所望の正極活物質層の膜厚又は嵩密度となるように乾燥後の正極前駆体膜厚に応じて任意の値を設定できる。更に、プレス速度は正極前駆体に撓み又はシワが生じない任意の速度に設定できる。また、プレス部の表面温度は室温でもよいし、必要により加熱してもよい。加熱する場合のプレス部の表面温度の下限は、使用する結着剤の融点マイナス60℃以上が好ましく、より好ましくは結着剤の融点マイナス45℃以上、更に好ましくは結着剤の融点マイナス30℃以上である。他方、加熱する場合のプレス部の表面温度の上限は、使用する結着剤の融点プラス50℃以下が好ましく、より好ましくは結着剤融点プラス30℃以下、更に好ましくは結着剤の融点プラス20℃以下である。例えば、結着剤にPVdF(ポリフッ化ビニリデン:融点150℃)を用いた場合、90℃以上200℃以下に加温することが好ましく、より好ましく105℃以上180℃以下、更に好ましくは120℃以上170℃以下に加熱することである。また、結着剤にスチレン−ブタジエン共重合体(融点100℃)を用いた場合、40℃以上150℃以下に加温することが好ましく、より好ましくは55℃以上130℃以下、更に好ましくは70℃以上120℃以下に加温することである。
結着剤の融点は、DSC(Differential Scanning Calorimetry、示差走査熱量分析)の吸熱ピーク位置で求めることができる。例えば、パーキンエルマー社製の示差走査熱量計「DSC7」を用いて、試料樹脂10mgを測定セルにセットし、窒素ガス雰囲気中で、温度30℃から10℃/分の昇温速度で250℃まで昇温したときに、昇温過程における吸熱ピーク温度が融点となる。
【0061】
また、プレス圧力、隙間、速度、プレス部の表面温度の条件を変えながら複数回プレスを実施してもよい。
正極前駆体を多条塗工した場合には、プレスの前にスリットすることが好ましい。多条塗工された正極前駆体をスリットせずにプレスした場合、正極活物質層が塗布されていない集電体部分に応力が掛かり、皺ができてしまう。また、プレス後に再度、正極前駆体をスリットすることもできる。
【0062】
本実施形態に係る正極活物質層の厚みは、正極集電体の片面当たり10μm以上200μm以下であることが好ましい。正極活物質層の厚さは、より好ましくは片面当たり20μm以上100μm以下であり、更に好ましくは30μm以上80μm以下である。この厚さが10μm以上であれば、十分な充放電容量を発現することができる。他方、この厚さが200μm以下であれば、電極内のイオン拡散抵抗を低く維持することができる。そのため、十分な出力特性が得られるとともに、セル体積を縮小することができ、従ってエネルギー密度を高めることができる。なお、集電体が貫通孔又は凹凸を有する場合における正極活物質層の厚さとは、集電体の貫通孔又は凹凸を有していない部分の片面当たりの厚さの平均値をいう。
【0063】
本実施形態に係る正極前駆体の正極活物質層の剥離強度は、0.02N/cm以上3.00N/cm以下である。剥離強度が0.02N/cm以上であれば、プレドープ工程におけるガス発生による正極活物質層の欠落を抑制し、微短絡を抑制することができる。剥離強度が3.00N/cm以下であれば、正極活物質層内に過剰な結着剤等が存在しないことを意味するため、電解液の拡散性が向上して低抵抗化できる。正極活物質層の剥離強度は、好ましくは0.03〜2.76N/cm、より好ましくは0.05〜1.64N/cmである。
正極前駆体の正極活物質層の剥離強度は、上述のプレス後に測定する値であり、複数回プレスをする場合は、最終プレス後に測定する値であり、プレスをせずに後述する電極体を作製する場合は、未プレスの状態で測定する値である。
正極活物質層の剥離強度は既知の方法で測定することができ、例えば、JIS Z0237(2009)「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準拠した剥離試験を用いるか、又は、後述する実施例で用いた試験方法を用いてよい。
本実施形態に係る正極の正極活物質層の剥離強度は、0.02N/cm以上2.40N/cm以下である。剥離強度が0.02N/cm以上であれば、正極活物質層の欠落を抑制し、微短絡を抑制することができる。剥離強度が2.40N/cm以下であれば、正極活物質層内に過剰な結着剤等が存在しないことを意味するため、電解液の拡散性が向上して低抵抗化できる。
正極の正極活物質層の剥離強度は、以下の通りに測定することができる。電圧を2.9Vに調整した非水系リチウム蓄電素子を解体して電極積層体を取り出し、電極積層体から正極を切り出して有機溶媒で洗浄する。有機溶媒としては、正極表面に堆積した電解液分解物を除去できればよく、特に限定されないが、リチウム化合物の溶解度が2%以下である有機溶媒を用いることでリチウム化合物の溶出が抑制される。そのような有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、アセトン、酢酸メチル等の極性溶媒が好適に用いられる。得られた正極を真空乾燥し、上述の方法で剥離強度を測定することができる。
【0064】
正極前駆体又は正極における孔量、マイクロ孔量、平均細孔径は、それぞれ以下の方法によって求められる値である。正極前駆体又は正極を200℃で一昼夜真空乾燥し、窒素を吸着質として吸脱着の等温線の測定を行う。ここで得られる吸着側の等温線を用いて、BET比表面積はBET多点法又はBET1点法により、メソ孔量はBJH法により、マイクロ孔量はMP法により、それぞれ算出される。得られたBET比表面積、メソ孔量、及びマイクロ孔量をそれぞれ正極前駆体面積、又は正極面積で除することにより、正極前駆体の単位面積当たりBET比表面積B
1(m
2/cm
2)又は正極の単位面積当たりBET比表面積B
2(m
2/cm
2)、正極前駆体の単位面積当たりメソ孔量D
1(μL/cm
2)又は正極の単位面積当たりメソ孔量D
2(μL/cm
2)、及び正極前駆体の単位面積当たりマイクロ孔量E
1(μL/cm
2)又は正極の単位面積当たりマイクロ孔量E
2(μL/cm
2)を算出することができる。
【0065】
本実施形態では、正極前駆体の単位面積当たりのBET比表面積B
1(m
2/cm
2)は0.20以上10.00以下であることが好ましい。B
1が0.20以上であれば正極前駆体中に非水系電解液が十分に含浸できるためにアルカリ金属化合物の反応が促進し、プレドープ工程を短時間で完了させることができる。B
1が10.00以下であれば、正極活物質とアルカリ金属化合物の接触面積が大きくなるためにアルカリ金属化合物の反応過電圧を小さくすることができる。より好ましくは0.28≦B
1≦9.54、更に好ましくは0.33≦B
1≦8.98である。正極前駆体の単位面積当たりのBET比表面積B
1は、正極前駆体の片面についてBET法により測定されるものである。
本実施形態では、正極前駆体の単位面積当たりメソ孔量D
1(μL/cm
2)は0.10以上5.00以下であることが好ましい。D
1が0.10以上であれば出力特性に優れる。D
1が5.00以下であれば正極前駆体の嵩密度を高めることができる。
更に、正極前駆体の単位面積当たりマイクロ孔量E
1(μL/cm
2)は0.20以上10.00以下であることが好ましい。E
1が0.20以上であればエネルギー密度を高めることができる。E
1が10.00以下であれば正極前駆体の嵩密度を高めることができる。
正極の単位面積当たりのBET比表面積B
2(m
2/cm
2)は0.20以上10.00以下であることが好ましい。B
2が0.20以上であればイオンの吸脱着可能な面積が大きくなるために高容量化できる。B
2が10.00以下であれば、イオンの拡散が向上するために低抵抗化できる。正極の単位面積当たりのBET比表面積B
2は、正極の片面についてBET法により測定されるものである。
本実施形態では、正極の単位面積当たりメソ孔量D
2(μL/cm
2)は0.10以上5.00以下であることが好ましい。D
2が0.10以上であれば出力特性に優れる。D
2が5.00以下であれば正極の嵩密度を高めることができる。
更に、正極の単位面積当たりマイクロ孔量E
2(μL/cm
2)は0.20以上10.00以下であることが好ましい。E
2が0.20以上であればエネルギー密度を高めることができる。E
2が10.00以下であれば正極の嵩密度を高めることができる。
上記で説明された観点から、本実施形態に係る正極前駆体又は正極に含まれる正極活物質層の嵩密度は、好ましくは0.4g/cc以上1.2g/cc以下、より好ましくは0.5〜1.1g/ccである。
なお、本実施形態に係る電極体は、上記で説明された正極前駆体と、所望により、後述される負極とを含む。
【0066】
本発明における分散度は、JIS K5600に規定された粒ゲージによる分散度評価試験により求められる値である。すなわち、粒のサイズに応じた所望の深さの溝を有する粒ゲージに対して、溝の深い方の先端に十分な量の試料を流し込み、溝から僅かに溢れさせる。次いで、スクレーパーの長辺がゲージの幅方向と平行になり、粒ゲージの溝の深い先端に刃先が接触するように置き、スクレーパーをゲージの表面になるように保持しながら、溝の長辺方向に対して直角に、ゲージの表面を均等な速度で、溝の深さ0(ゼロ)まで1〜2秒間掛けて引き、引き終わってから3秒以内に20°以上30°以下の角度で光を当てて観察し、粒ゲージの溝に粒が現れる深さを読み取る。
本発明における粘度(ηb)及びTI値は、それぞれ以下の方法により求められる値である。まず、E型粘度計を用いて温度25℃、ずり速度2s
-1の条件で2分以上測定した後の安定した粘度(ηa)を取得する。次いで、ずり速度を20s
-1に変更した他は上記と同様の条件で測定した粘度(ηb)を取得する。上記で得た粘度の値を用いてTI値はTI値=ηa/ηbの式により算出される。ずり速度を2s
-1から20s
-1へ上昇させる際は、1段階で上昇させてもよいし、上記の範囲で多段的にずり速度を上昇させ、適宜そのずり速度における粘度を取得しながら上昇させてもよい。
【0067】
<負極>
負極は、負極集電体と、その片面又は両面に存在する負極活物質層とを有する。
[負極活物質層]
負極活物質層は、アルカリ金属イオンを吸蔵・放出できる負極活物質を含み、これ以外に、必要に応じて、導電性フィラー、結着剤、分散安定剤等の任意成分を含んでよい。
【0068】
[負極活物質]
負極活物質は、アルカリ金属イオンを吸蔵・放出可能な物質を用いることができる。具体的には、炭素材料、チタン酸化物、ケイ素、ケイ素酸化物、ケイ素合金、ケイ素化合物、錫及び錫化合物等が例示される。好ましくは負極活物質の総量に対する炭素材料の含有率が50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。炭素材料の含有率が100質量%であってもよいが、他の材料の併用による効果を良好に得る観点から、例えば、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下でもよい。炭素材料の含有率の範囲の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。
炭素材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素材料;易黒鉛化性炭素材料;カーボンブラック;カーボンナノ粒子;活性炭;人造黒鉛;天然黒鉛;黒鉛化メソフェーズカーボン小球体;黒鉛ウイスカ;ポリアセン系物質等のアモルファス炭素質材料;石油系のピッチ、石炭系のピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、コークス、合成樹脂(例えばフェノール樹脂等)等の炭素前駆体を熱処理して得られる炭素質材料;フルフリルアルコール樹脂又はノボラック樹脂の熱分解物;フラーレン;カーボンナノフォーン;及びこれらの複合炭素材料を挙げることができる。
【0069】
複合炭素材料のBET比表面積は、100m
2/g以上350m
2/g以下であることが好ましく、より好ましくは150m
2/g以上300m
2/g以下である。BET比表面積が100m
2/g以上であれば、アルカリ金属イオンのプレドープ量を十分大きくできるため、負極活物質層を薄膜化することができる。また、BET比表面積が350m
2/g以下であれば、負極活物質層の塗工性に優れる。
複合炭素材料は、リチウム金属を対極に用いて、測定温度25℃において、電流値0.5mA/cm
2で電圧値が0.01Vになるまで定電流充電を行った後、電流値が0.01mA/cm
2になるまで定電圧充電を行った時の初回の充電容量が、前記複合炭素材料単位質量当たり300mAh/g以上1,600mAh/g以下であることが好ましく、より好ましくは、400mAh/g以上1,500mAh/g以下であり、更に好ましくは、500mAh/g以上1,450mAh/g以下である。初回の充電容量が300mAh/g以上であれば、アルカリ金属イオンのプレドープ量を十分大きくできるため、負極活物質層を薄膜化した場合であっても、高い出力特性を有することができる。また、初回の充電容量が1,600mAh/g以下であれば、前記複合炭素材料にアルカリ金属イオンをドープ・脱ドープさせる際の前記複合炭素材料の膨潤・収縮が小さくなり、負極の強度が保たれる。
【0070】
上述した負極活物質は、良好な内部抵抗値を得る観点から、下記の条件(1)及び(2)を満たす複合多孔質材料であることが特に好ましい。
(1)前述のBJH法で算出されたメソ孔量(直径が2nm以上50nm以下である細孔の量)Vm
1(cc/g)が、0.01≦Vm
1<0.10の条件を満たす。
(2)前述のMP法で算出されたマイクロ孔量(直径が2nm未満である細孔の量)Vm
2(cc/g)が、0.01≦Vm
2<0.30の条件を満たす。
【0071】
負極活物質は粒子状であることが好ましい。
前記ケイ素、ケイ素酸化物、ケイ素合金及びケイ素化合物、並びに錫及び錫化合物の粒子径は、0.1μm以上30μm以下であることが好ましい。この粒子径が0.1μm以上であれば、電解液との接触面積が増えるために非水系リチウム蓄電素子の抵抗を下げることができる。また、この粒子径が30μm以下であれば、充放電に伴う負極へのアルカリ金属イオンのドープ・脱ドープに起因する負極の膨潤・収縮が小さくなり、負極の強度が保たれる。
前記ケイ素、ケイ素酸化物、ケイ素合金及びケイ素化合物、並びに錫及び錫化合物は、分級機内臓のジェットミル、撹拌型ボールミル等を用いて粉砕することにより、微粒子化することができる。粉砕機は遠心力分級機を備えており、窒素、アルゴン等の不活性ガス環境下で粉砕された微粒子はサイクロン又は集塵機で捕集することができる。
負極前駆体の負極活物質層における負極活物質の含有割合は、負極活物質層の全質量を位基準として、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
【0072】
(負極活物質層のその他の成分)
本実施形態に係る負極活物質層は、必要に応じて、負極活物質の他に、結着剤、導電性フィラー、分散安定剤等の任意成分を含んでよい。
結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、ラテックス、アクリル重合体等を使用することができる。負極活物質層における結着剤の使用量は、負極活物質100質量部に対して、3〜25質量部が好ましく、5〜20質量部の範囲が更に好ましい。結着剤の量が3質量部未満の場合、負極(前駆体)における集電体と負極活物質層との間に十分な密着性を確保することができず、集電体と活物質層間との界面抵抗が上昇する。一方、結着剤の量が25質量部より大きい場合には、負極(前駆体)の活物質表面を結着剤が過剰に覆ってしまい、活物質細孔内のイオンの拡散抵抗が上昇する。
上記導電性フィラーは、負極活物質よりも導電性の高い導電性炭素質材料から成ることが好ましい。このような導電性フィラーとしては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、気相成長炭素繊維、黒鉛、カーボンナノチューブ、これらの混合物等が好ましい。
負極活物質層における導電性フィラーの混合量は、負極活物質100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、1〜15質量部の範囲がより好ましい。導電性フィラーは高入力の観点からは負極活物質層に混合した方が好ましいが、混合量が20質量部よりも多くなると、負極活物質層における負極活物質の含有量が少なくなるために、体積当たりのエネルギー密度が低下するので好ましくない。
【0073】
[負極集電体]
本実施形態に係る負極集電体を構成する材料としては、電子伝導性が高く、電解液への溶出及び電解質又はイオンとの反応等による劣化が起こらない金属箔であることが好ましい。このような金属箔としては、特に制限はなく、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔等が挙げられる。本実施形態に係る非水系リチウム蓄電素子における負極集電体としては、銅箔が好ましい。金属箔は凹凸又は貫通孔を持たない通常の金属箔でもよいし、エンボス加工、ケミカルエッチング、電解析出法、ブラスト加工等を施した凹凸を有する金属箔でもよいし、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチング箔等の貫通孔を有する金属箔でもよい。
負極集電体の厚みは、負極の形状及び強度を十分に保持できれば特に制限はないが、例えば、1〜100μmである。
【0074】
[負極の製造]
負極は、負極集電体の片面上又は両面上に負極活物質層を有して成る。典型的な態様において負極活物質層は負極集電体に固着している。
負極は、既知のリチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等における電極の製造技術によって製造することが可能である。例えば、負極活物質を含む各種材料を水又は有機溶剤中に分散又は溶解してスラリー状の塗工液を調製し、この塗工液を負極集電体上の片面又は両面に塗工して塗膜を形成し、これを乾燥することにより負極を得ることができる。更に得られた負極にプレスを施して、負極活物質層の膜厚又は嵩密度を調整してもよい。
負極活物質層の厚さは、好ましくは片面当たり10μm以上70μm以下であり、より好ましくは20μm以上60μm以下である。この厚さが10μm以上であれば、良好な充放電容量を発現することができる。他方、この厚さが70μm以下であれば、セル体積を縮小することができるから、エネルギー密度を高めることができる。集電体に孔がある場合には、負極の活物質層の厚さとは、それぞれ、集電体の孔を有していない部分の片面当たりの厚さの平均値をいう。
【0075】
<セパレータ>
正極前駆体及び負極は、セパレータを介して積層又は捲回され、正極前駆体、負極及びセパレータを有する電極積層体が形成される。
セパレータとしては、リチウムイオン二次電池に用いられるポリエチレン製の微多孔膜若しくはポリプロピレン製の微多孔膜、又は電気二重層キャパシタで用いられるセルロース製の不織紙等を用いることができる。これらのセパレータの片面又は両面に、有機又は無機の微粒子から成る膜が積層されていてもよい。また、セパレータの内部に有機又は無機の微粒子が含まれていてもよい。
セパレータの厚みは5μm以上35μm以下が好ましい。5μm以上の厚みとすることにより、内部のマイクロショートによる自己放電が小さくなる傾向があるため好ましい。他方、35μm以下の厚みとすることにより、蓄電素子の出力特性が高くなる傾向があるため好ましい。
また、有機又は無機の微粒子から成る膜の厚みは、1μm以上10μm以下が好ましい。1μm以上の厚みとすることにより、内部のマイクロショートによる自己放電が小さくなる傾向があるため好ましい。他方、10μm以下の厚みとすることにより、蓄電素子の出力特性が高くなる傾向があるため好ましい。
【0076】
<外装体>
外装体としては、金属缶、ラミネートフィルム等を使用できる。金属缶としては、アルミニウム製のものが好ましい。金属缶は、例えば、角形、丸型、円筒型などの形態でよい。ラミネートフィルムとしては、金属箔と樹脂フィルムとを積層したフィルムが好ましく、外層樹脂フィルム/金属箔/内装樹脂フィルムから成る3層構成のものが例示される。外層樹脂フィルムは、接触等により金属箔が損傷を受けることを防止するためのものであり、ナイロン又はポリエステル等の樹脂が好適に使用できる。金属箔は水分及びガスの透過を防ぐためのものであり、銅、アルミニウム、ステンレス等の箔が好適に使用できる。また、内装樹脂フィルムは、内部に収納する電解液から金属箔を保護するとともに、外装体のヒートシール時に溶融封口させるためのものであり、ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン等が好適に使用できる。
【0077】
[電解液]
本実施形態における電解液は非水系電解液である。すなわち、この電解液は、非水溶媒を含む。非水系電解液は、非水系電解液の総量を基準として、0.5mol/L以上のアルカリ金属塩を含有する。すなわち、非水系電解液は、アルカリ金属塩を電解質として含む。非水系電解液に含まれる非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等に代表される環状カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等に代表される鎖状カーボネートが挙げられる。
上記のような非水溶媒に溶解するアルカリ金属イオンを含む電解質塩としては、例えば、MをLi、Na、K、Rb又はCsとして、MFSI、MBF
4、MPF
6等を用いることができる。本実施形態における非水系電解液には少なくとも1種以上のアルカリ金属イオンを含有していればよく、2種以上のアルカリ金属塩を含有していてもよいし、アルカリ金属塩及びベリリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩から選ばれるアルカリ土類金属塩を含有していてもよい。非水系電解液中に2種以上のアルカリ金属塩を含有する場合、ストークス半径の異なる陽イオンが非水電解液中に存在することで低温下での粘度上昇を抑制することができるため、非水系リチウム蓄電素子の低温特性が向上する。非水電解液中に上記アルカリ金属イオン以外のアルカリ土類金属イオンを含有する場合、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオンが2価の陽イオンであるために非水系リチウム蓄電素子を高容量化することができる。
【0078】
上記2種以上のアルカリ金属塩を非水系電解液中に含有させる方法、又はアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩を非水系電解液中に含有させる方法は特に限定されないが、非水系電解液中に予め2種以上のアルカリ金属イオンから成るアルカリ金属塩を溶解することもできるし、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩を溶解することもできる。また、正極前駆体中に、下記式におけるMをNa、K、Rb、及びCsから選ばれる1種以上として、
M
2CO
3等の炭酸塩、
M
2O等の酸化物、
MOH等の水酸化物、
MFやMCl等のハロゲン化物、
RCOOM(式中、RはH、アルキル基、又はアリール基である)等のカルボン酸塩、及び/又は
BeCO
3、MgCO
3、CaCO
3、SrCO
3、又はBaCO
3から選ばれるアルカリ土類金属炭酸塩、並びにアルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、及びアルカリ土類金属カルボン酸塩を1種以上含有させ、後述のプレドープ工程にて分解する方法等が挙げられる。
電解液における電解質塩濃度は、0.5〜2.0mol/Lの範囲が好ましい。0.5mol/L以上の電解質塩濃度では、アニオンが十分に存在し、非水系リチウム蓄電素子の容量が維持される。一方で、2.0mol/L以下の電解質塩濃度では、塩が電解液中で十分に溶解し、電解液の適切な粘度及び伝導度が保たれる。
非水系電解液中に2種以上のアルカリ金属塩を含有する場合、又はアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩を含有する場合、これらの塩濃度の合計値が0.5mol/L以上であることが好ましく、0.5〜2.0mol/Lの範囲であることがより好ましい。
【0079】
<非水系リチウム蓄電素子の製造方法>
[組立工程 電極体の作製]
一実施形態の組立工程では、例えば、枚葉の形状にカットした正極前駆体及び負極を、セパレータを介して積層して成る積層体に、正極端子及び負極端子を接続して、電極積層体を作製する。別の実施形態では、正極前駆体及び負極を、セパレータを介して積層及び捲回した捲回体に正極端子及び負極端子を接続して、電極捲回体を作製してもよい。電極捲回体の形状は円筒型であっても、扁平型であってもよい。
正極端子及び負極端子の接続の方法は特に限定されないが、抵抗溶接、超音波溶接などの方法を用いることができる。
端子を接続した電極体(電極積層体、又は電極捲回体)を乾燥することで残存溶媒を除去することが好ましい。乾燥方法は限定されないが、真空乾燥などにより乾燥することができる。残存溶媒は、正極活物質層又は負極活物質層の合計質量当たり、1.5質量%以下であることが好ましい。残存溶媒が1.5質量%より多いと、系内に溶媒が残存し、自己放電特性を悪化させるため好ましくない。
乾燥した電極体は、好ましくは露点−40℃以下のドライ環境下にて、金属缶又はラミネートフィルムに代表される外装体の中に収納し、非水系電解液を注液するための開口部を1方だけ残して封止することが好ましい。露点が−40℃より高いと、電極体に水分が付着してしまい、系内に水が残存し、自己放電特性を悪化させるため好ましくない。外装体の封止方法は特に限定されないが、ヒートシール、インパルスシールなどの方法を用いることができる。
【0080】
[注液、含浸、封止工程]
組立工程後に、外装体の中に収納された電極体に、非水系電解液を注液する。注液後に、更に含浸を行い、正極、負極、及びセパレータを非水系電解液で十分に浸すことが望ましい。正極、負極、及びセパレータのうちの少なくとも一部に電解液が浸っていない状態では、後述するアルカリ金属ドープ工程において、アルカリ金属ドープが不均一に進むため、得られる非水系リチウム蓄電素子の抵抗が上昇したり、耐久性が低下したりする。含浸の方法としては、特に制限されないが、例えば、注液後の電極体を、外装体が開口した状態で、減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にし、再度大気圧に戻す方法等を用いることができる。含浸後に、外装体が開口した状態の電極体を減圧しながら封止することで密閉することができる。
【0081】
[アルカリ金属ドープ工程]
アルカリ金属ドープ工程では、正極前駆体と負極との間に電圧を印加して、正極前駆体中のアルカリ金属化合物を分解してアルカリ金属イオンを放出し、負極でアルカリ金属イオンを還元することにより負極活物質層にアルカリ金属イオンをプレドープすることが好ましい。
アルカリ金属ドープ工程において、正極前駆体中のアルカリ金属化合物の酸化分解に伴い、CO
2等のガスが発生する。そのため、電圧を印加する際には、発生したガスを外装体の外部に放出する手段を講ずることが好ましい。この手段としては、例えば、外装体の一部を開口させた状態で電圧を印加する方法;外装体の一部に予めガス抜き弁、ガス透過フィルム等の適宜のガス放出手段を設置した状態で電圧を印加する方法;等を挙げることができる。
【0082】
[エージング工程]
アルカリ金属ドープ工程後に、電極体にエージングを行うことが好ましい。エージング工程では、電解液中の溶媒が負極で分解し、負極表面にアルカリ金属イオン透過性の固体高分子被膜が形成される。
エージングの方法としては、特に制限されないが、例えば高温環境下で電解液中の溶媒を反応させる方法等を用いることができる。
【0083】
[ガス抜き工程]
エージング工程後に、更にガス抜きを行い、電解液、正極、及び負極中に残存しているガスを確実に除去することが好ましい。電解液、正極、及び負極の少なくとも一部にガスが残存している状態では、イオン伝導が阻害されるため、得られる非水系リチウム蓄電素子の抵抗が上昇してしまう。
ガス抜きの方法としては、特に制限されないが、例えば、外装体を開口した状態で電極積層体を減圧チャンバーに設置し、真空ポンプを用いてチャンバー内を減圧状態にする方法等を用いることができる。ガス抜き後、外装体をシールすることにより外装体を密閉し、非水系リチウム蓄電素子を作製することができる。
【0084】
<非水系リチウム蓄電素子の特性評価>
[静電容量]
本明細書では、容量Q(Ah)とは、以下の方法によって得られる値である。
先ず、非水系リチウム蓄電素子と対応するセルを25℃に設定した恒温槽内で、2Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電を行い、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分行う。その後、2.2Vまで2Cの電流値で定電流放電を施した際の容量をQ(Ah)とする。
ここで電流の放電レート(「Cレート」とも呼ばれる)とは、放電容量に対する放電時の電流の相対的な比率であり、一般に、上限電圧から下限電圧まで定電流放電を行う際、1時間で放電が完了する電流値のことを1Cという。本明細書では、上限電圧4.0Vから下限電圧2.2Vまで定電流放電を行う際に1時間で放電が完了する電流値のことを1Cとする。
【0085】
[内部抵抗]
本明細書では、内部抵抗Ra(Ω)とは、以下の方法によって得られる値である:
先ず、非水系リチウム蓄電素子を25℃に設定した恒温槽内で、20Cの電流値で4.0Vに到達するまで定電流充電し、続いて4.0Vの定電圧を印加する定電圧充電を合計で30分間行う。続いて、サンプリング間隔を0.05秒とし、20Cの電流値で2.2Vまで定電流放電を行って、放電カーブ(時間−電圧)を得る。この放電カーブにおいて、放電時間1秒及び2秒の時点における電圧値から、直線近似にて外挿して得られる放電時間=0秒における電圧をEoとしたときに、降下電圧ΔE=4.0−EoからRa=ΔE/(20Cの電流値)として算出される値である。
【0086】
[高負荷充放電サイクル試験]
本明細書では、高負荷充放電サイクル試験後の抵抗変化率は、以下の方法によって測定する。
(高負荷充放電サイクル後の抵抗変化率)
先ず、非水系リチウム蓄電素子と対応するセルを25℃に設定した恒温槽内で、200Cの電流値で3.8Vに到達するまで定電流充電し、続いて200Cの電流値で2.2Vに到達するまで定電流放電を行う。この高負荷充放電サイクルを60000回繰り返し、上記内部抵抗の測定方法に従い高負荷充放電サイクル後の内部抵抗Rbを測定する。Rb/Raを高負荷充放電サイクル後の抵抗変化率とする。
高負荷充放電サイクル試験後の抵抗変化率Rb/Raは、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.2以下である。高負荷充放電サイクル試験後の抵抗上昇率が2.0以下であれば、充放電を繰り返しても非水系リチウム蓄電素子の特性が維持される。そのため、長期間安定して優れた入出力特性を得ることができ、非水系リチウム蓄電素子の長寿命化につながる。Rb/Raの下限値は、好ましくは0.9以上である。
【0087】
[微短絡検査試験]
本明細書では、非水系リチウム蓄電素子の微短絡とは以下の手法により判断する。
先ず、電流値100mAで2.5Vまで定電流放電し、その後電流値100mAで電圧3.5Vまで定電流充電した後に続けて3.5V定電圧充電を2時間継続する手法により、電圧を3.5Vに調整する。続いて25℃に設定した恒温槽内で、電極体を10kPaの圧力で加圧した状態で1週間静置し、電圧が3.0V以下に低下したものを微短絡と判断する。
【0088】
<正極前駆体における正極活物質層中の炭素材料、リチウム遷移金属酸化物、アルカリ金属化合物の定量>
正極前駆体の正極活物質層中に含まれる炭素材料の質量割合A
1、リチウム遷移金属酸化物の質量割合A
2、及びアルカリ金属化合物の質量割合A
3の定量の方法は特に限定されないが、例えば下記の方法により定量することができる。
測定する正極前駆体の面積は特に制限されないが、測定のばらつきを軽減するという観点から5cm
2以上200cm
2以下であることが好ましく、より好ましくは25cm
2以上150cm
2以下である。面積が5cm
2以上あれば測定の再現性が確保される。面積が200cm
2以下であればサンプルの取扱い性に優れる。
まず、正極前駆体を上記面積に切断し、真空乾燥する。真空乾燥の条件としては、例えば、温度:100〜200℃、圧力:0〜10kPa、時間:5〜20時間の範囲で正極前駆体中の残存水分量が1質量%以下になる条件が好ましい。水分の残存量については、カールフィッシャー法により定量することができる。
真空乾燥後に得られた正極前駆体について、重量(M
0A)を測定する。続いて、正極前駆体の重量の100〜150倍の蒸留水に3日間以上浸漬させ、アルカリ金属化合物を水中に溶出させる。浸漬の間、蒸留水が揮発しないよう容器に蓋をすることが好ましい。3日間以上浸漬させた後、蒸留水から正極前駆体を取り出し、上記と同様に真空乾燥する。得られた正極前駆体の重量(M
1A)を測定する。続いて、スパチュラ、ブラシ、刷毛等を用いて正極集電体の片面、又は両面に塗布された正極活物質層を取り除く。残った正極集電体の重量(M
2A)を測定し、以下の(1)式でアルカリ金属化合物の質量割合A
3を算出する。
A
3=(M
0A−M
1A)/(M
0A−M
2A)×100 (1)式
続いて、A
1、A
2を算出するため、上記アルカリ金属化合物を取り除いて得られた正極活物質層について、以下の条件にてTG曲線を測定する。
・試料パン:白金
・ガス:大気雰囲気下、又は圧縮空気
・昇温速度:0.5℃/min以下
・温度範囲:25℃〜500℃以上リチウム遷移金属酸化物の融点マイナス50℃の温度以下
【0089】
得られるTG曲線の25℃の質量をM
3Aとし、500℃以上の温度にて質量減少速度がM
3A×0.01/min以下となった最初の温度における質量をM
4Aとする。
炭素材料は、酸素含有雰囲気(例えば、大気雰囲気)下では500℃以下の温度で加熱することですべて酸化・燃焼する。他方、リチウム遷移金属酸化物は酸素含有雰囲気下でもリチウム遷移金属酸化物の融点マイナス50℃の温度までは質量減少することがない。
そのため、正極活物質層におけるリチウム遷移金属酸化物の含有量A
2は以下の(2)式で算出できる。
A
2=(M
4A/M
3A)×{1−(M
0A−M
1A)/(M
0A−M
2A)}×100 (2)式
また、正極活物質層における炭素材料の含有量A
1は以下の(3)式で算出できる。
A
1={(M
3A−M
4A)/M
3A}×{1−(M
0A−M
1A)/(M
0A−M
2A)}×100 (3)式
なお、複数のアルカリ金属化合物が正極活物質層に含まれる場合;アルカリ金属化合物の他に、下記式におけるMをNa、K、Rb、及びCsから選ばれる1種以上として、M
2O等の酸化物、MOH等の水酸化物、MFやMCl等のハロゲン化物、M
2(CO
2)
2等の蓚酸塩、RCOOM(式中、RはH、アルキル基、又はアリール基である)等のカルボン酸塩を含む場合;並びに正極活物質層が、BeCO
3、MgCO
3、CaCO
3、SrCO
3、及びBaCO
3から選ばれるアルカリ土類金属炭酸塩、又はアルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属シュウ酸塩、若しくはアルカリ土類金属カルボン酸塩を含む場合には、これらの総量をアルカリ金属化合物量として算出する。
正極活物質層中に導電材、結着剤、増粘剤等が含まれる場合、炭素材料とこれらの材料の合計量をA
1として算出する。
【0090】
<正極塗工液中の炭素材料、リチウム遷移金属酸化物、アルカリ金属化合物の定量>
正極塗工液中に含まれる炭素材料の重量比X
1、リチウム遷移金属酸化物の重量比X
2、及びアルカリ金属化合物の重量比X
3の定量の方法は特に限定されないが、例えば下記の方法により定量することができる。
【0091】
測定する正極塗工液の重量は特に制限されないが、測定のばらつきを軽減するという観点から10g以上100g以下であることが好ましい。重量が10g以上あれば測定の再現性が確保される。重量が100g以下であればサンプルの取扱い性に優れる。
【0092】
まず、正極塗工液をホットプレート、熱天秤、熱風乾燥機、TG測定装置等を用いて200℃以下の温度で加熱し、分散溶媒を蒸発させ、乾燥させて炭素材料、リチウム遷移金属酸化物、及びアルカリ金属化合物を含む粉体を得る。必要に応じて、得られる粉体を更に真空乾燥してもよく、得られる粉体の残存水分量が1質量%以下になるまで乾燥する。水分の残存量については、カールフィッシャー法により定量することができる。その後、この粉体の質量M
1Xを測定する。次いで、この粉体をM
1Xの100倍の質量の蒸留水に浸し、25℃環境下で24時間撹拌する。その後、水溶液を濾過し、炭素材料とリチウム遷移金属酸化物の混合物である残渣物を水分が1%以下になるまで乾燥し、質量M
2Xを測定する。(4)式からアルカリ金属化合物の重量比X
3を算出する。
X
3=(M
1X−M
2X)/M
1X×100 (4)式
上述のA
2及びA
3の算出方法に従い、それぞれに対応するM
3X及びM
4Xを測定し、(5)式及び(6)式からX
2及びX
3を算出する。
X
2=(M
4X/M
3X)×{1−(M
1X−M
2X)/M
1X}×100 (5)式
X
1={(M
3X−M
4X)/M
3X}×{1−(M
1X−M
2X)/M
1X}×100 (6)式
【0093】
<正極における正極活物質層中の炭素材料、リチウム遷移金属酸化物、アルカリ金属化合物の定量>
正極の正極活物質層中に含まれる炭素材料の質量割合Y
1、リチウム遷移金属酸化物の質量割合Y
2、及びアルカリ金属化合物の質量割合Y
3の定量の方法は特に限定されないが、例えば下記の方法により定量することができる。
アルゴンボックス中で、電圧を2.9Vに調整した非水系リチウム蓄電素子を解体して電極積層体を取り出し、電極積層体から正極を切り出して有機溶媒で洗浄する。有機溶媒としては、正極表面に堆積した電解液分解物を除去できればよく、特に限定されないが、リチウム化合物の溶解度が2%以下である有機溶媒を用いることでリチウム化合物の溶出が抑制される。そのような有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、アセトン、酢酸メチル等の極性溶媒が好適に用いられる。測定する正極の面積は特に制限されないが、測定のばらつきを軽減するという観点から5cm
2以上200cm
2以下であることが好ましく、より好ましくは25cm
2以上150cm
2以下である。正極面積が5cm
2以上あれば測定の再現性が確保される。正極面積が200cm
2以下であればサンプルの取扱い性に優れる。
上述のA
1、A
2、及びA
3の定量方法に従い、対応するM
1Y、M
2Y、M
3Y、及びM
4Yを測定し、式(7)、式(8)、及び式(9)からY
1、Y
2、及びY
3を算出する。
Y
3=(M
0Y−M
1Y)/(M
0Y−M
2Y)×100 (7)式
Y
2=(M
4Y/M
3Y)×{1−(M
0Y−M
1Y)/(M
0Y−M
2Y)}×100 (8)式
Y
1={(M
3Y−M
4Y)/M
3Y}×{1−(M
0Y−M
1Y)/(M
0Y−M
2Y)}×100 (9)式
【0094】
<アルカリ金属の同定方法>
正極前駆体、正極塗工液、及び正極中に含まれるアルカリ金属化合物の同定方法は特に限定されないが、例えば下記の方法により同定することができる。アルカリ金属化合物の同定には、以下に記載する複数の解析手法を組み合わせて同定することが好ましい。
解析手法にてアルカリ金属化合物を同定できなかった場合、その他の解析手法として、
7Li−固体NMR、XRD(X線回折)、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)、AES(オージェ電子分光)、TPD/MS(加熱発生ガス質量分析)、DSC(示差走査熱量分析)等を用いることにより、アルカリ金属化合物を同定することもできる。
【0095】
[顕微ラマン分光]
アルカリ金属炭酸塩及び正極活物質は、観察倍率を1000倍〜4000倍にして測定した正極前駆体表面の炭酸イオンのラマンイメージングにより判別できる。測定条件の例として、励起光を532nm、励起光強度を1%、対物レンズの長作動を50倍、回折格子を1800gr/mm、マッピング方式を点走査(スリット65mm、ビニング5pix)、1mmステップ、1点当たりの露光時間を3秒、積算回数を1回、ノイズフィルター有りの条件にて測定することができる。測定したラマンスペクトルについて、1071〜1104cm
-1の範囲で直線のベースラインを設定し、ベースラインより正の値を炭酸イオンのピークとして面積を算出し、頻度を積算するが、この時にノイズ成分をガウス型関数で近似した炭酸イオンピーク面積に対する頻度を炭酸イオンの頻度分布から差し引く。
【0096】
[X線光電分光法(XPS)]
XPSにより電子状態を解析することによりアルカリ金属化合物の結合状態を判別することができる。測定条件の例として、X線源を単色化AlKα、X線ビーム径を100μmφ(25W、15kV)、パスエネルギーをナロースキャン:58.70eV、帯電中和を有り、スイープ数をナロースキャン:10回(炭素、酸素)20回(フッ素)30回(リン)40回(リチウム元素)50回(ケイ素)、エネルギーステップをナロースキャン:0.25eVの条件にて測定できる。XPSの測定前に正極の表面をスパッタリングにてクリーニングすることが好ましい。スパッタリングの条件として例えば、加速電圧1.0kV、2mm×2mmの範囲を1分間(SiO
2換算で1.25nm/min)の条件にて正極の表面をクリーニングすることができる。
得られたXPSスペクトルについて、
Li1sの結合エネルギー50〜54eVのピークをLiO
2又はLi−C結合;
55〜60eVのピークをLiF、Li
2CO
3、Li
xPO
yF
z(式中、x、y、及びzは、それぞれ1〜6の整数である);
C1sの結合エネルギー285eVのピークをC−C結合、286eVのピークをC−O結合、288eVのピークをCOO、290〜292eVのピークをCO
32-、C−F結合;
O1sの結合エネルギー527〜530eVのピークをO
2-(Li
2O)、531〜532eVのピークをCO、CO
3、OH、PO
x(式中、xは1〜4の整数である)、SiO
x(式中、xは1〜4の整数である)、533eVのピークをC−O、SiO
x(式中、xは1〜4の整数である);
F1sの結合エネルギー685eVのピークをLiF、687eVのピークをC−F結合、Li
xPO
yF
z(式中、x、y、及びzは、それぞれ1〜6の整数である)、PF
6-;
P2pの結合エネルギーについて、133eVのピークをPO
x(式中、xは1〜4の整数である)、134〜136eVのピークをPF
x(式中、xは1〜6の整数である);
Si2pの結合エネルギー99eVのピークをSi、シリサイド、101〜107eVのピークをSi
xO
y(式中、x、及びyは、それぞれ任意の整数である)
として帰属することができる。
得られたスペクトルについて、ピークが重なる場合には、ガウス関数又はローレンツ関数を仮定してピーク分離し、スペクトルを帰属することが好ましい。得られた電子状態の測定結果及び存在元素比の結果から、存在するアルカリ金属化合物を同定することができる。
【0097】
[イオンクロマトグラフィー]
正極前駆体、又は正極を蒸留水で洗浄し、洗浄した後の水をイオンクロマトグラフィーで解析することにより、水中に溶出した炭酸イオンを同定することができる。使用するカラムとしては、イオン交換型、イオン排除型、及び逆相イオン対型を使用することができる。検出器としては、電気伝導度検出器、紫外可視吸光光度検出器、電気化学検出器等を使用することができ、検出器の前にサプレッサーを設置するサプレッサー方式、又はサプレッサーを配置せずに電気伝導度の低い溶液を溶離液に用いるノンサプレッサー方式を用いることができる。また、質量分析計又は荷電化粒子検出器を検出器として組み合わせて、測定を行うこともできる。
サンプルの保持時間は、使用するカラム、溶離液等の条件が決まれば、イオン種成分毎に一定であり、またピークのレスポンスの大きさはイオン種毎に異なるが、イオン種の濃度に比例する。トレーサビリティーが確保された既知濃度の標準液を予め測定しておくことでイオン種成分の定性と定量が可能となる。
【0098】
<アルカリ金属元素の定量方法 ICP−MS>
測定試料について、濃硝酸、濃塩酸、王水等の強酸を用いて酸分解し、得られた溶液を2%〜3%の酸濃度になるように純水で希釈する。酸分解については、試料を適宜加熱、加圧することもできる。得られた希釈液をICP−MSにより解析するが、この際に内部標準として既知量の元素を加えておくことが好ましい。測定対象のアルカリ金属元素が測定上限濃度以上になる場合には、希釈液の酸濃度を維持したまま更に希釈することが好ましい。得られた測定結果に対し、化学分析用の標準液を用いて予め作成した検量線に基づいて、各元素を定量することができる。
【0099】
<非水系リチウム蓄電素子の用途>
本実施形態に係る非水系リチウム蓄電素子を含んで、蓄電モジュールを作製することができる。例えば、本実施形態に係る複数個の非水系リチウム蓄電素子を直列又は並列に接続することにより、所望の蓄電システムを作製することができる。
本実施形態に係る蓄電モジュールは、高い入出力特性と高温での安全性とを両立することができるので、電力回生アシストシステム、電力負荷平準化システム、無停電電源システム、非接触給電システム、エナジーハーベストシステム、蓄電システム、太陽光発電蓄電システム、電動パワーステアリングシステム、非常用電源システム、インホイールモーターシステム、アイドリングストップシステム、急速充電システム、スマートグリッドシステム等として使用されることができる。
蓄電システムは太陽光発電又は風力発電等の自然発電に、電力負荷平準化システムはマイクログリッド等に、無停電電源システムは工場の生産設備等に、それぞれ好適に利用される。非接触給電システムにおいて、非水系リチウム蓄電素子は、マイクロ波送電又は電界共鳴等の電圧変動の平準化及びエネルギーの蓄電のために、エナジーハーベストシステムにおいて、非水系リチウム蓄電素子は、振動発電等で発電した電力を使用するために、それぞれ好適に利用される。
【0100】
蓄電システムにおいては、セルスタックとして、複数個の非水系リチウム蓄電素子が直列又は並列に接続されるか、又は非水系リチウム蓄電素子と、鉛電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン二次電池又は燃料電池とが直列又は並列に接続される。
また、本実施形態に係る非水系リチウム蓄電素子は、高い入出力特性と高温での安全性とを両立することができるので、例えば、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド自動車、電動バイク等の乗り物に搭載されることができる。上記で説明された電力回生アシストシステム、電動パワーステアリングシステム、非常用電源システム、インホイールモーターシステム、アイドリングストップシステム、又はこれらの組み合わせが、乗り物に好適に搭載される。
【実施例】
【0101】
以下、実施例及び比較例を示して本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例及び比較例により何ら限定されるものではない。
【0102】
<実施例1>
<正極活物質の調製>
[調製例1a]
破砕されたヤシ殻炭化物を小型炭化炉内へ入れ、窒素雰囲気下、500℃で3時間炭化処理して炭化物を得た。得られた炭化物を賦活炉内へ入れ、予熱炉で加温した水蒸気を1kg/hで賦活炉内へ導入し、900℃まで8時間かけて昇温して賦活した。賦活後の炭化物を取り出し、窒素雰囲気下で冷却して、賦活された活性炭を得た。得られた賦活された活性炭を10時間通水洗浄した後に水切りし、115℃に保持された電気乾燥機内で10時間乾燥した後に、ボールミルで1時間粉砕を行うことにより、活性炭1を得た。
島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2000J)を用いて、活性炭1の平均粒子径を測定した結果、5.5μmであった。また、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いて、活性炭1の細孔分布を測定した。その結果、BET比表面積が2360m
2/g、メソ孔量(V
1)が0.52cc/g、マイクロ孔量(V
2)が0.88cc/g、V
1/V
2=0.59であった。
【0103】
[調製例2a]
フェノール樹脂を、焼成炉内へ入れ、窒素雰囲気下、600℃で2時間炭化処理を行った後、ボールミルで粉砕し、分級して平均粒子径7μmの炭化物を得た。得られた炭化物とKOHとを、質量比1:5で混合し、焼成炉内へ入れ、窒素雰囲下、800℃で1時間加熱して賦活した。賦活後の炭化物を取り出し、濃度2mol/Lに調整した希塩酸中で1時間撹拌洗浄し、蒸留水でpH5〜6の間で安定するまで煮沸洗浄した後に乾燥することにより、活性炭2を得た。
島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2000J)を用いて、活性炭2の平均粒子径を測定した結果、7.0μmであった。また、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いて、活性炭2の細孔分布を測定した。その結果、BET比表面積が3627m
2/g、メソ孔量(V
1)が1.50cc/g、マイクロ孔量(V
2)が2.28cc/g、V
1/V
2=0.66であった。
【0104】
<正極塗工液の製造>
活性炭1を正極活物質として用いて正極塗工液を製造した。
まず、ケッチェンブラック4.0質量部と炭酸リチウム31.5質量部を、プラネタリーミキサーを用いて20rpmの速度で15分間乾式混合した。活性炭1を41.5質量部加え、続けて20rpmの速度で15分間乾式混合した。続いてリチウム遷移金属酸化物として平均粒子径が3.5μmのLiFePO
4を13.5質量部加え、10rpmの速度で5分間乾式混合し、粉体混合物1を得た。
別の容器に、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.5質量部、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部、並びに固形分(活性炭1、炭酸リチウム、LiFePO
4、ケッチェンブラック、PVP、及びPVdFの合計量)の重量比が24.5%になるようにNMP(N−メチル−2−ピロリドン)を混合し、混合溶液1を得た。
上記得られた粉体混合物1に混合溶液1を5回に分けて添加し、20rpmの速度で合計50分間混合した。得られた混合物をPRIMIX社製の薄膜旋回型高速ミキサー「フィルミックス(登録商標)」を用いて、撹拌容器内の温度が10℃になるように冷却水で冷却しながら、周速20m/sの条件で3分間分散して正極塗工液1を得た。
得られた正極塗工液1の粘度(ηb
1)及びTI
1値を東機産業社のE型粘度計TVE−35Hを用いて、上述の方法にて測定した。その結果、粘度(ηb
1)は2,690mPa・s、TI
1値は6.6であった。また、得られた正極塗工液1の分散度をヨシミツ精機社製の粒ゲージを用いて測定した。その結果、粒度は23μmであった。また、上述の方法によりX
1、X
2、X
3を測定し、それぞれX
1=54.9、X
2=13.7、X
3=31.4と算出した。得られた正極塗工液1を密閉容器に20g量り取り、25℃環境下で24時間静置した後、再度粘度(ηb
2)及びTI
2値を測定したところ、粘度(ηb
2)は2,460mPa・s、TI
2値は6.3であり、TI
2/TI
1が0.95、ηb
2/ηb
1が0.91であった。
<正極前駆体の製造>
東レエンジニアリング社製の両面ダイコーターを用いて、厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に正極塗工液1を塗工速度1m/sの条件で塗工し、乾燥炉の温度を70℃、90℃、110℃、130℃の順番に調整し、その後IRヒーターで乾燥して正極前駆体1を得た。得られた正極前駆体1を、ロールプレス機を用いて圧力6kN/cm、プレス部の表面温度25℃の条件でプレスした。正極前駆体1の全厚を、小野計器社製膜厚計Linear Gauge Sensor GS−551を用いて、正極前駆体1の任意の10か所で測定した。得られた測定結果より、正極前駆体1の正極活物質層の片面あたり膜厚は60μmであった。
上述の方法によりA
1、A
2、A
3を測定し、それぞれA
1=54.7、A
2=13.6、A
3=31.7と算出した。
【0105】
<剥離強度の測定>
正極前駆体1を幅25mm、長さ120mm(100mmが正極活物質層、残りの20mmは正極活物質層が塗布されていない未塗工部である。)に切り取り、幅24mmのセロテープ(登録商標、ニチバン製 CT405AP−24)を100mmの長さに切り取り、正極活物質層に貼り付けた。テンシロン(株式会社エーアンドデイ製 STB−1225S)を用い、下部クリップジョウ側に正極集電体の未塗工部、上部クリップジョウ側にセロテープ(登録商標)の端部を挟み、以下の条件で剥離強度を測定した。セロテープ(登録商標)を正極活物質層に貼り付けてから、3分以内に剥離強度の測定を開始した。
・環境温度:25℃
・サンプル幅:25mm
・ストローク:100mm
・速度:50mm/min
・データ取得:25〜65mmの積分平均荷重
測定を合計3個のサンプルで行い、その平均値は0.56N/cmであった。
【0106】
<B
1、D
1、E
1の算出>
正極前駆体1を4.0cm×1.0cmの大きさに切断して試料1とし、試料1を150℃、3kPaの条件にて12時間真空乾燥した。真空乾燥後の試料1を0.5cm×0.5cmの大きさに8等分し、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いて細孔分布を測定した。その結果、BET比表面積が19.45m
2、メソ孔量が5.58μL、マイクロ孔量が8.21μLであり、B
1=4.86m
2/cm
2、D
1=1.40μL/cm
2、E
1=2.05μL/cm
2と算出できた。
<Cの算出>
[試料の調製]
正極前駆体1から1cm×1cmの小片を切り出し、10Paの真空中にて金をスパッタリングにより表面にコーティングした。
[表面SEM及びEDX測定]
前記作製した試料について、大気暴露下で正極表面のSEM、及びEDXを測定した。測定条件を以下に記す。
(SEM−EDX測定条件)
・測定装置:日立ハイテクノロジー製、電解放出型走査型電子顕微鏡 FE−SEM S−4700 堀場製 エネルギー分散型X線分析装置 EMAX
・加速電圧:10kV
・エミッション電流:10μA
・測定倍率:2000倍
・電子線入射角度:90°
・X線取出角度:30°
・デッドタイム:15%
・マッピング元素:C,O,F
・測定画素数:256×256ピクセル
・測定時間:60sec.
・積算回数:50回
・輝度値は最大輝度値に達する画素がなく、輝度値の平均値が最大輝度値の40%〜60%の範囲に入るように輝度及びコントラストを調整した。
【0107】
(SEM−EDXの解析)
得られた酸素マッピングに対し、画像解析ソフト(ImageJ)を用いて輝度値の平均値を基準に二値化した。この時の酸素マッピングの面積C
1は全画像に対して45.2%であった。
[断面SEM及びEDX測定]
正極前駆体1から1cm×1cmの小片を切り出し、日本電子製のSM−09020CPを用い、アルゴンガスを使用し、加速電圧4kV、ビーム径500μmの条件にて正極前駆体1の面方向に対して垂直な断面を作製した。その後、上述の方法により断面SEM及びEDXを測定した。
得られた正極前駆体の断面SEM−EDXについて、前記と同様に酸素マッピング及びフッ素マッピングを二値化した。この時の酸素マッピングの面積C
2は全画像に対して46.2%であった。
SEM−EDXの測定結果より、C
1/A
3=1.43、C
2/A
3=1.46と算出できた。
【0108】
<負極の製造>
平均粒子径4.5μmの人造黒鉛を84質量部、アセチレンブラックを10質量部、及びPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を6質量部、並びに固形分の質量割合が24.5%になるようにNMP(N−メチル−2−ピロリドン)を混合し、その混合物をPRIMIX社製の薄膜旋回型高速ミキサー「フィルミックス(登録商標)」を用いて、周速17m/sの条件で分散して負極塗工液を得た。
得られた負極塗工液の粘度(ηb)及びTI値を東機産業社のE型粘度計TVE−35Hを用いて測定した。その結果、粘度(ηb)は2,440mPa・s、TI値は4.1であった。
東レエンジニアリング社製のダイコーターを用いて厚さ10μmの電解銅箔の両面に負極塗工液を塗工速度1m/sの条件で塗工し、乾燥温度120℃で乾燥して負極1を得た。ロールプレス機を用いて圧力5kN/cm、プレス部の表面温度25℃の条件でプレスした。プレスされた負極1の全厚を、小野計器社製膜厚計Linear Gauge Sensor GS−551を用いて、負極1の任意の10か所で測定した。得られた測定結果より、負極1の負極活物質層の膜厚は片面あたり30μmであった。
【0109】
<電解液の調製>
有機溶媒として、エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)=33:67(体積比)の混合溶媒を用い、LiPF
6の濃度が1.2mol/Lとなるように電解質塩を溶解して非水系電解液1を得た。
【0110】
<非水系リチウム蓄電素子の作製>
得られた正極前駆体1を、正極活物質層が10.0cm×10.0cm(100cm
2)の大きさになるように20枚切り出した。続いて負極1を、負極活物質層が10.1cm×10.1cm(102cm
2)の大きさになるよう21枚切り出した。また、10.3cm×10.3cm(106cm
2)のポリエチレン製のセパレータ(旭化成製、厚み10μm)を40枚用意した。これらについて、負極1を最外層に配置し、正極前駆体11、セパレータ、負極1、セパレータ、の順に、セパレータを挟んで正極活物質層と負極活物質層とが対向するよう積層し、電極体を得た。得られた電極体に正極端子及び負極端子を超音波溶接し、アルミラミネート包材で形成された容器に入れ、電極端子部を含む3辺をヒートシールによりシールした。
アルミラミネート包材の中に収納された電極体に、大気圧下、温度25℃、露点−40℃以下のドライエアー環境下にて、非水系電解液1を約70g注入した。続いて、電極積層体及び非水系電解液を収納しているアルミラミネート包材を減圧チャンバーの中に入れ、大気圧から−87kPaまで減圧した後、大気圧に戻し、5分間静置した。その後、チャンバー内の包材を大気圧から−87kPaまで減圧した後、大気圧に戻す工程を4回繰り返した後、15分間静置した。更に、チャンバー内の包材を大気圧から−91kPaまで減圧した後、大気圧に戻した。同様に包材を減圧し、大気圧に戻す工程を合計7回繰り返した(大気圧から、それぞれ−95,−96,−97,−81,−97,−97,−97kPaまで減圧した)。以上の工程により、非水系電解液1を電極積層体に含浸させた。
その後、非水系電解液1を含浸させた電極積層体を減圧シール機に入れ、−95kPaに減圧した状態で、180℃で10秒間、0.1MPaの圧力でシールすることによりアルミラミネート包材を封止した。
【0111】
[アルカリ金属ドープ工程]
封止後に得られた電極体を、温度40℃、露点−40℃以下のドライボックス内に入れた。アルミラミネート包材の余剰部を切断して開封し、電流値500mAで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を10時間継続する手法により初期充電を行い、負極にアルカリ金属ドープを行った。アルカリ金属ドープ終了後、富士インパルス社製のヒートシール機(FA−300)を用いてアルミラミネートを封止した。
[エージング工程]
アルカリ金属ドープ後の電極体をドライボックスから取り出し、25℃環境下、100mAで電圧3.8Vに到達するまで定電流放電を行った後、3.8Vでの定電流放電を1時間行うことにより、電圧を3.8Vに調整した。続いて、電極体を60℃の恒温槽に48時間保管した。
[ガス抜き工程]
エージング後の電極体を、温度25℃、露点−40℃のドライエアー環境下でアルミラミネート包材の一部を開封した。続いて、減圧チャンバーの中に電極体を入れ、ダイヤフラムポンプを用いて大気圧から−80kPaまで3分間かけて減圧した後、3分間かけて大気圧に戻す工程を合計3回繰り返した。その後、減圧シール機に電極体を入れ、−90kPaに減圧した後、200℃で10秒間、0.1MPaの圧力でシールすることによりアルミラミネート包材を封止し、非水系リチウム蓄電素子を作製した。
[微短絡検査工程]
以上の工程により非水系リチウム蓄電素子を10個作製し、上述の微短絡検査試験を行ったところ、微短絡数は0個(すなわち、微短絡率は0%)であった。
[Y
1、Y
2、Y
3の測定]
得られた非水系リチウム蓄電素子の内の1個について、上述の方法により正極を取り出してY
1、Y
2、Y
3を測定したところ、それぞれY
1=54.7、Y
2=13.6、Y
3=31.7と算出した。
[正極剥離強度の測定]
上記得られた正極について、正極活物質層が塗布された塗工部を幅25mm、長さ100mmに切り取り、160℃で2時間真空乾燥した。その後、正極の剥離強度測定を合計3個のサンプルで行い、その平均値は0.44N/cmであった。
【0112】
<B
2、D
2、E
2の算出>
上記得られた正極を4.0cm×1.0cmの大きさに切断して試料2とし、試料2を150℃、3kPaの条件にて12時間真空乾燥した。真空乾燥後の試料2を0.5cm×0.5cmの大きさに8等分し、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いて細孔分布を測定した。
【0113】
<非水系リチウム蓄電素子の評価>
[容量Qの測定]
得られた非水系リチウム蓄電素子の内の1個について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス福島株式会社製の充放電装置(5V,360A)を用い、上述の方法により容量Qを測定したところ、容量は910mAhであった。
[内部抵抗Raの測定]
非水系リチウム蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス福島株式会社製の充放電装置(5V,360A)を用いて、上述の方法により内部抵抗Raを算出したところ、0.98mΩであった。
[高負荷充放電サイクル試験]
非水系リチウム蓄電素子について、25℃に設定した恒温槽内で、富士通テレコムネットワークス福島株式会社製の充放電装置(5V,360A)を用いて、200Cの電流値(160A)で3.8Vに到達するまで定電流充電し、続いて200Cの電流値で2.2Vに到達するまで定電流放電を行う充放電操作を休止なしの条件で60000回繰り返した。サイクル終了後に内部抵抗Rbを測定したところ1.08mΩであり、Rb/Ra=1.10であった。
【0114】
<実施例2>
活性炭1を44.0質量部、LiFePO
4を7.0質量部、炭酸リチウムを40.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を5.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0115】
<実施例3>
活性炭1を42.0質量部、LiFePO
4を6.0質量部、炭酸リチウムを38.5質量部、ケッチェンブラックを4.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.5質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0116】
<実施例4>
活性炭1を38.5質量部、LiFePO
4を19.0質量部、炭酸リチウムを30.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.5質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0117】
<実施例5>
活性炭1を28.0質量部、LiFePO
4を28.0質量部、炭酸リチウムを25.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を15.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0118】
<実施例6>
活性炭1を14.0質量部、LiFePO
4を35.0質量部、炭酸リチウムを42.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を5.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0119】
<実施例7>
活性炭1を16.0質量部、LiFePO
4を35.0質量部、炭酸リチウムを40.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を5.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0120】
<実施例8>
活性炭1を15.0質量部、LiFePO
4を33.0質量部、炭酸リチウムを43.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を5.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0121】
<実施例9>
活性炭1を52.0質量部、LiFePO
4を13.0質量部、炭酸リチウムを23.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0122】
<実施例10>
活性炭1を52.0質量部、LiFePO
4を12.0質量部、炭酸リチウムを24.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0123】
<実施例11>
活性炭1を50.0質量部、LiFePO
4を15.0質量部、炭酸リチウムを23.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0124】
<実施例12>
活性炭1を30.0質量部、LiFePO
4を10.0質量部、炭酸リチウムを48.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0125】
<実施例13>
活性炭1を28.0質量部、LiFePO
4を14.0質量部、炭酸リチウムを46.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0126】
<実施例14>
活性炭1を23.0質量部、LiFePO
4を35.0質量部、炭酸リチウムを33.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を5.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0127】
<実施例15>
活性炭1を34.0質量部、LiFePO
4を35.0質量部、炭酸リチウムを19.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0128】
<実施例16>
周速22m/sの条件で3分間分散して正極塗工液を作製したこと以外は、実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<実施例17>
周速20m/sの条件で2分間分散して正極塗工液を作製したこと以外は、実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<実施例18>
周速22m/sの条件で4分間分散して正極塗工液を作製したこと以外は、実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0129】
<比較例1>
活性炭1を7.0質量部、LiFePO
4を35.0質量部、炭酸リチウムを46.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0130】
<比較例2>
活性炭1を9.0質量部、LiFePO
4を35.0質量部、炭酸リチウムを44.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0131】
<比較例3>
活性炭1を7.0質量部、LiFePO
4を28.0質量部、炭酸リチウムを53.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0132】
<比較例4>
活性炭1を5.0質量部、LiFePO
4を28.0質量部、炭酸リチウムを55.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0133】
<比較例5>
活性炭1を2.0質量部、LiFePO
4を29.0質量部、炭酸リチウムを57.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0134】
<比較例6>
活性炭1を1.0質量部、LiFePO
4を28.0質量部、炭酸リチウムを59.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0135】
<比較例7>
活性炭1を58.0質量部、LiFePO
4を9.0質量部、炭酸リチウムを21.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0136】
<比較例8>
活性炭1を60.0質量部、LiFePO
4を10.0質量部、炭酸リチウムを18.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0137】
<比較例9>
活性炭1を65.0質量部、LiFePO
4を8.0質量部、炭酸リチウムを15.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0138】
<比較例10>
活性炭1を51.0質量部、LiFePO
4を5.0質量部、炭酸リチウムを32.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0139】
<比較例11>
活性炭1を53.0質量部、LiFePO
4を5.0質量部、炭酸リチウムを30.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0140】
<比較例12>
活性炭1を58.0質量部、LiFePO
4を3.0質量部、炭酸リチウムを27.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0141】
<比較例13>
活性炭1を60.0質量部、LiFePO
4を3.0質量部、炭酸リチウムを25.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0142】
<比較例14>
活性炭1を33.0質量部、LiFePO
4を3.0質量部、炭酸リチウムを52.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0143】
<比較例15>
活性炭1を30.0質量部、LiFePO
4を3.0質量部、炭酸リチウムを55.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を8.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0144】
<比較例16>
活性炭1を23.0質量部、LiFePO
4を28.0質量部、炭酸リチウムを25.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を20.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0145】
<比較例17>
活性炭1を20.0質量部、LiFePO
4を28.0質量部、炭酸リチウムを25.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を23.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0146】
<比較例18>
活性炭1を17.0質量部、LiFePO
4を28.0質量部、炭酸リチウムを28.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を23.0質量部用いたこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0147】
<比較例19>
活性炭1を44.0質量部、LiFePO
4を7.0質量部、炭酸リチウムを40.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を5.0質量部用い、周速25m/sの条件で5分間分散して正極塗工液を作製したこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0148】
<比較例20>
周速25m/sの条件で7分間分散して正極塗工液を作製したこと以外は、比較例19と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<比較例21>
活性炭1を46.5質量部、LiFePO
4を7.0質量部、炭酸リチウムを40.0質量部、ケッチェンブラックを3.0質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を1.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を2.5質量部用い、周速25m/sの条件で5分間分散して正極塗工液を作製したこと以外は実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<比較例22>
周速25m/sの条件で7分間分散して正極塗工液を作製したこと以外は、比較例21と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0149】
<比較例23>
活性炭1を24.0質量部、LiFePO
4を56.0質量部、アセチレンブラックを10.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を10.0質量部混合し、混合物をNMPで分散することで正極塗工液を作製したこと以外は、実施例1と同様の方法で正極前駆体2を作製した。
負極1について、リチウムイオンのプレドープ量が負極容量の約85%になるようにリチウム金属箔と負極1とを接触させ、正極前駆体2を用いて実施例1と同様の方法で電極体を組み立て、非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<比較例24>
活性炭1を28.0質量部、LiFePO
4を60.0質量部、アセチレンブラックを10.0質量部、及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を2.0質量部用いたこと以外は比較例23と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0150】
実施例1〜18と比較例1〜24の評価結果を表1〜2及び表3〜4に示す。
【0151】
【表1】
【表2】
【0152】
表1〜2より、A
2/A
1が0.10以上の場合、正極活物質層中のリチウム遷移金属酸化物の比率が高まるため、容量が増加する。また、A
2/A
1が2.00以下の場合、正極活物質層中のリチウム遷移金属酸化物の比率が高くなりすぎないため、炭酸リチウムの分解が促進して負極へのリチウムドープが十分に行われるために容量が増加すると考えられる。
A
1/A
3が0.50以上の場合、正極活物質層中の電子伝導が高まるために炭酸リチウムの分解が促進し、負極へのリチウムドープが十分に行われるために容量が増加すると考えられる。また、A
1/A
3が3.00以下の場合、正極活物質層中に炭酸リチウムが十分に存在するため、リチウムドープにより十分な量のリチウムイオンがプレドープされたために容量が増加したと考えられる。
TI
2/TI
1が0.50以上1.20以下である正極塗工液を用いることで正極活物質層の剥離強度を0.02N/cm以上3.0N/cm以下にすることができ、正極活物質層の剥離強度が0.02N/cm以上の場合、リチウムドープ後に正極活物質層の欠落が抑制でき、微短絡率が低下したと考えられる。また、正極活物質層の剥離強度が3.00N/cmの場合、正極活物質層中に過剰な結着剤等が存在しないために電解液の拡散性が向上し、低抵抗化したと考えられる。
【0153】
【表3】
【表4】
【0154】
<実施例19>
LiFePO
4の代わりにLiNi
0.80Co
0.15Al
0.05O
2を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<実施例20>
LiFePO
4の代わりにLiNi
0.33Co
0.33Mn
0.33O
2を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<実施例21>
LiFePO
4の代わりにLiCoO
2を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<実施例22>
LiFePO
4の代わりにLiMnPO
4を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<実施例23>
LiFePO
4の代わりにLiMn
2O
4を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<実施例24>
LiFePO
4の代わりにLi
3V
2(PO
4)
3を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0155】
<実施例25>
炭酸リチウムの代わりに炭酸ナトリウムを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<実施例26>
炭酸リチウムの代わりに炭酸カリウムを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<実施例27>
炭酸リチウムの代わりに炭酸ナトリウムと炭酸リチウムの質量比1:1の混合物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<実施例28>
炭酸リチウムの代わりに炭酸カリウムと炭酸リチウムの質量比1:1の混合物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0156】
<実施例29>
活性炭1の代わりに活性炭2を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<実施例30>
PVdFの代わりにアクリル重合体とカルボキシメチルセルロースの5:1の混合物を用い、NMPの代わりに水を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<実施例31>
PVdFの代わりにスチレン−ブタジエン共重合体とカルボキシメチルセルロースの4:1の混合物を用い、NMPの代わりに水を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<実施例32>
PVdFの代わりにポリイミドとカルボキシメチルセルロースの6:1の混合物を用い、NMPの代わりに水を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<実施例33>
PVdFの代わりにラテックスとカルボキシメチルセルロースの7:1の混合物を用い、NMPの代わりに水を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0157】
<実施例34>
正極塗工液に0.1mol/Lの硫酸を質量比で1%添加したこと以外は、実施例30と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<実施例35>
正極塗工液に0.1mol/Lの酢酸を質量比で5%添加したこと以外は、実施例30と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<実施例36>
正極塗工液に二酸化炭素を100cc/minの流量で10分間バブリングしたこと以外は、実施例30と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0158】
<比較例25>
LiFePO
4の代わりにLiNi
0.80Co
0.15Al
0.05O
2を用いたこと以外は、比較例5と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<比較例26>
LiFePO
4の代わりにLiNi
0.33Co
0.33Mn
0.33O
2を用いたこと以外は、比較例5と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<比較例27>
LiFePO
4の代わりにLiCoO
2を用いたこと以外は、比較例5と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<比較例28>
LiFePO
4の代わりにLiMnPO
4を用いたこと以外は、比較例5と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<比較例29>
LiFePO
4の代わりにLiMn
2O
4を用いたこと以外は、比較例5と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<比較例30>
LiFePO
4の代わりにLi
3V
2(PO
4)
3を用いたこと以外は、比較例5と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0159】
<比較例31>
炭酸リチウムの代わりに炭酸ナトリウムを用いたこと以外は、比較例5と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<比較例32>
炭酸リチウムの代わりに炭酸カリウムを用いたこと以外は、比較例5と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<比較例33>
炭酸リチウムの代わりに炭酸ナトリウムと炭酸リチウムの質量比1:1の混合物を用いたこと以外は、比較例5と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<比較例34>
炭酸リチウムの代わりに炭酸カリウムと炭酸リチウムの質量比1:1の混合物を用いたこと以外は、比較例5と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0160】
<比較例35>
活性炭1の代わりに活性炭2を用いたこと以外は、比較例5と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<比較例36>
PVdFの代わりにアクリル重合体とカルボキシメチルセルロースの5:1の混合物を用い、NMPの代わりに水を用いたこと以外は、比較例5と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<比較例37>
PVdFの代わりにスチレン−ブタジエン共重合体とカルボキシメチルセルロースの4:1の混合物を用い、NMPの代わりに水を用いたこと以外は、比較例5と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<比較例38>
PVdFの代わりにポリイミドとカルボキシメチルセルロースの6:1の混合物を用い、NMPの代わりに水を用いたこと以外は、比較例5と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<比較例39>
PVdFの代わりにラテックスとカルボキシメチルセルロースの7:1の混合物を用い、NMPの代わりに水を用いたこと以外は、比較例5と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0161】
<比較例40>
正極塗工液に0.1mol/Lの硫酸を質量比で1%添加したこと以外は、比較例36と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<比較例41>
正極塗工液に0.1mol/Lの酢酸を質量比で5%添加したこと以外は、比較例36と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
<比較例42>
正極塗工液に二酸化炭素を100cc/minの流量で10分間バブリングしたこと以外は、比較例36と同様の方法で非水系リチウム蓄電素子を作製した。
【0162】
実施例19〜36と比較例25〜42の評価結果を表5〜6に示す。
【0163】
【表5】
【表6】
【0164】
表5〜6より、リチウム遷移金属酸化物を変更した場合、アルカリ金属炭酸塩を変更した場合、活性炭を変更した場合、分散剤として水を使用した場合においても、A
2/A
1又はX
2/X
1が0.10以上2.00以下、かつA
1/A
3又はX
1/X
3が0.50以上3.00以下を満足することで高容量かつ低抵抗な非水系リチウム蓄電素子が作製できることを確認できた。
【0165】
<実施例37>
正極前駆体1を12.0cm×210.0cmの大きさに切断し(正極活物質層の大きさが10.0cm×210.0cmであり、かつ正極集電体上に正極活物質層が塗工されていない正極未塗工部が2.0cm×210.0cmである。)、負極1を12.1×220.0cmの大きさに切断し(負極活物質層の大きさが10.1cm×220.0cmであり、かつ負極集電体上に負極活物質層が塗工されていない負極未塗工部が2.0cm×220.0cmである。)、切り出された正極前駆体及び負極をポリエチレン製のセパレータ(旭化成株式会社製、厚み10μm)を介して捲回し、電極捲回体を作製した。
得られた電極捲回体に端子を接続し、アルミニウムから成る金属製角形缶に挿入し、封口した。前記金属製角形缶の開口部から電解液1を注液し、その後、着脱可能な逆止弁を取り付けた。得られた素子を温度40℃及び露点−40℃以下のドライボックス内に入れ、100kPaの圧力で加圧し、電流値500mAで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を10時間継続する手法により初期充電を行い、負極にアルカリ金属ドープを行った。続けて実施例1と同様の条件でエージングを行い、上記逆止弁を取り外した後に実施例1と同様の条件でガス抜きを行い、開口部を封口した。
実施例1と同様に評価を行ったところ、X
1=55.1、X
2=13.5、X
3=31.4、X
2/X
1=0.25、X
1/X
3=1.75、A
1=55.1、A
2=13.5、A
3=31.4、A
2/A
1=0.25、A
1/A
3=1.75、微短絡率0%、容量Q=901mAh、内部抵抗Ra=0.96mΩ、高負荷充放電サイクル後の内部抵抗Rb=1.06mΩ、Rb/Ra=1.10であった。