【実施例】
【0050】
次に、本実施形態の電流−電圧非直線抵抗体が持つ各特性について以下に具体的に説明する。
【0051】
(実施例1)
実施例1では、焼結体を作製する際の混合物において、酸化亜鉛原料の平均粒径(D50z)および、副成分の平均粒径(D50s)の酸化亜鉛原料の平均粒径(D50z)に対する相対比D50s/D50zが、電流−電圧非直線抵抗体のバリスタ電圧(V
1mA)、非直線抵抗特性およびエネルギ耐量特性に及ぼす影響について説明する。
【0052】
まず、電流−電圧非直線抵抗体を製造するにあたり、焼結体の原料の主成分として酸化亜鉛(ZnO)を用いた。副成分原料としては、酸化ビスマス(Bi
2O
3)を0.50mol%、三酸化アンチモン(Sb
2O
3)を2.00mol%、酸化マンガン(MnO)を0.50mol%、酸化コバルト(Co
2O
3)を1.00mol%、酸化ニッケル(NiO)を2.00mol%、希土類元素として酸化イットリウム(Y
2O
3)を0.30mol%、ホウ素(B
2O
3)を0.02wt%、銀(Ag
2O)を0.02wt%、および3価元素としてアルミニウムを水酸化アルミニウム(Al
2O
3)水溶液にし、0.005mol%添加するように調整し、酸化亜鉛原料とこれら副成分原料からなる混合物を作製した。なお、残部は、酸化亜鉛である。
【0053】
上記したように調整した混合物と、この混合物の含有率が40重量%となるように調整された、水および有機バインダからなるバインダ溶液を循環方式の湿式粉砕装置に投入した。また、湿式粉砕装置において、ジルコニアビーズの粒径、ベッセル内のビーズ充填率、攪拌用ロータの周速、循環流量、混合時間を調整することにより、主成分である酸化亜鉛の平均粒径(D50z)、全副成分の平均粒径(D50s)、および酸化亜鉛原料と副成分原料を含む全原料の平均粒径(D50t)が、表1に示す値となるように粉砕を制御した。この湿式粉砕装置における粉砕および混合処理によって、均一に混合されたスラリーを得た。
ここで、酸化亜鉛の平均粒径(D50z)と、全副成分の平均粒径(D50s)は、湿式粉砕装置から採取されたスラリーを、レーザ回折・散乱式の粒度分布測定装置(日機装社製の「マイクロトラックMT3000IIシリーズ」)を用いて測定した。また、この平均粒径は、メディアン径における平均粒径である。
【0054】
続いて、このスラリーをスプレードライヤで、累積平均粒径が45〜90μmとなるように噴霧造粒した。得られた造粒粉を、油圧式のプレス成形機によって、直径が125mm、厚さが30mmの円柱状の成形体とした。
【0055】
続いて、この成形体を第1の温度である500℃に加熱し、この温度に2時間維持して有機バインダなどを除去した。
次に、成形体を、第2の温度である1050℃に加熱し、この温度に3時間維持して焼成した。なお、焼成は、トンネル式の連続炉を使用して、ムライトの耐火物容器に成形体を設置して行った。また、第1の温度である500℃から第2の温度である1050℃の各焼成温度にするまでの加熱速度を100℃/時とした。
【0056】
第2の温度の維持時間経過後、焼成された成形体を750℃以下まで冷却した。なお、750℃以下の温度まで冷却する際の冷却速度を、100℃/時とした。この冷却工程を経て、焼結体を得た。
【0057】
続いて、冷却された成形体である焼結体の側面に、ガラスフリットを塗布し、500℃の温度で、2時間熱処理して、絶縁層を形成した。さらに、焼結体の上下両端面を研磨し、この研磨面に、アルミニウムを溶射して電極を形成し、電流−電圧非直線抵抗体を得た。
【0058】
得られた試料番号1〜試料番号12の電流−電圧非直線抵抗体について、バリスタ電圧(V
1mA)、非直線抵抗特性およびエネルギ耐量を評価した。
【0059】
1mAの商用周波の電流を通電したときの電圧であるバリスタ電圧(V
1mA)をJEC0202−1994に準じて測定した。このバリスタ電圧(V
1mA)の値が900V/mm以上であることを確認した。
【0060】
非直線抵抗特性の評価において、上記したバリスタ電圧(V
1mA)と、8×20μsインパルス電流を10kA流したときの電圧(V
10kA)とを測定し、これらの比(V
10kA/V
1mA)を非直線性係数として評価した。この非直線性係数の値が小さいほど、非直線抵抗特性が優れていることを示しており、本実施例1では非直線性係数が1.300以下のものを良好であると評価した。
【0061】
エネルギ耐量の評価において、バリスタ電圧(V
1mA)の1.3倍の商用周波電圧(50Hz)を印加し続け、電流−電圧非直線抵抗体が破壊するまでに吸収したエネルギ値(J/cc)を測定し、このエネルギ値(J/cc)に基づいて、エネルギ耐量を評価した。ここで、「破壊するまで」とは、AE検出器により電流−電圧非直線抵抗体に亀裂が発生したことが検出されるまでをいう。このエネルギ値(J/cc)の値が大きいほどエネルギ耐量に優れていることを示しており、本実施例ではエネルギ耐量が400J/cc以上のものを良好であると評価した。
なお、上記した各評価試験では、試料番号1〜12の各電流−電圧非直線抵抗体を10ピース作製し、10ピースについて試験を行いそれらの平均でもって評価した。
【0062】
表1には、試料番号1〜12の電流−電圧非直線抵抗体における、酸化亜鉛原料と副成分原料を含む全原料の平均粒径(D50t)、酸化亜鉛の平均粒径(D50z)、D50s/D50z、バリスタ電圧(V
1mA)、非直線性係数(V
10kA/V
1mA)およびエネルギ耐量を示す。なお、表1において、*印は本実施形態の範囲外である試料を示す比較例である。
また、
図2は、試料番号1〜12ついて、D50s/D50zと非直線性係数(V
10kA/V
1mA)との関係を示した図である。
【0063】
表1に示すように、本実施形態に係る電流−電圧非直線抵抗体においては、いずれも、バリスタ電圧(V
1mA)が900V/mm以上、非直線性係数(V
10kA/V
1mA)が1.300より小さく、エネルギ耐量が400J/ccよりも大きくなることがわかった。また、本実施形態に係る電流−電圧非直線抵抗体は、比較例と比較して、高抵抗化が図れ、優れた、非直線抵抗特性およびエネルギ耐量を有することがわかった。
【0064】
また、
図2に示すように、D50s/D50zを0.60以下とすることで、電流−電圧非直線抵抗体における非直線性係数(V
10kA/V
1mA)が小さくなった。
【0065】
以上の結果から、副成分原料の平均粒径(D50s)の酸化亜鉛原料の平均粒径(D50z)に対する相対比が、D50s/D50z≦0.60であり、かつ酸化亜鉛原料の平均粒径が700nm以下であり、ホウ素をB
2O
3に換算して0.005〜0.04wt%含み、銀をAg
2Oに換算して0.005〜0.04wt%含み、かつホウ素の銀に対する相対比が、0.125≦B
2O
3/Ag
2O≦1.00の関係を満たす混合物を焼成して得られる焼結体を備える電流−電圧非直線抵抗体では、高抵抗化が図れ、優れた、非直線抵抗特性およびエネルギ耐量が得られることがわかった。
【0066】
【表1】
【0067】
(実施例2)
実施例2では、焼結体を作製する際の混合物において、ホウ素と銀の成分含有量が電流−電圧非直線抵抗体のエネルギ耐量特性に及ぼす影響について説明する。
【0068】
まず、上記実施例1における試料番号4を作製するために用いた焼結体の原料成分のうち、ホウ素および銀以外の同様の成分組成を有する混合物に、ホウ素と銀を、表2に示す試料番号13〜試料番号24の値となるように調整し、酸化亜鉛原料とこれら副成分原料からなる混合物を作製した。
以後の電流−電圧非直線抵抗体を作製する工程は、前述した実施例1と同じ工程とし、電流−電圧非直線抵抗体を得た。
なお、いずれの試料も、全原料の平均粒径(D50t)は695nm、酸化亜鉛の平均粒径(D50z)は700nm、D50s/D50zは0.50となるよう、湿式粉砕装置における粉砕および混合処理条件を制御した。全原料の平均粒径(D50t)と酸化亜鉛の平均粒径(D50z)と、全副成分の平均粒径(D50s)は、実施例1と同法にて測定した。
【0069】
得られた試料番号13〜試料番号24の電流−電圧非直線抵抗体について、バリスタ電圧(V
1mA)、非直線抵抗特性およびエネルギ耐量を評価した。なお、バリスタ電圧(V
1mA)、非直線抵抗特性およびエネルギ耐量の評価における実験条件や実験方法、評価基準は、前述した実施例1の実験条件や実験方法と同じとした。
なお、上記した各評価試験では、試料番号13〜24の各電流−電圧非直線抵抗体を10ピース作製し、10ピースについて試験を行いそれらの平均でもって評価した。
【0070】
表2には、試料番号4(表1参照)、試料番号13〜試料番号24の電流−電圧非直線抵抗体における、ホウ素、銀の組成成分、バリスタ電圧(V
1mA)、非直線性係数(V
10kA/V
1mA)およびエネルギ耐量を示す。なお、表2において、*印は本実施形態の範囲外である試料を示す比較例である。
【0071】
表2に示すように、本実施形態に係る電流−電圧非直線抵抗体においては、いずれも、バリスタ電圧(V
1mA)が900V/mm以上、非直線性係数(V
10kA/V
1mA)が1.300より小さく、エネルギ耐量が400J/ccよりも大きくなることがわかった。また、本実施形態に係る電流−電圧非直線抵抗体は、比較例と比較して、高抵抗化が図れ、優れた、非直線抵抗特性およびエネルギ耐量を有することがわかった。
【0072】
以上の結果から、副成分原料の平均粒径(D50s)の酸化亜鉛原料の平均粒径(D50z)に対する相対比が、D50s/D50z≦0.60であり、かつ酸化亜鉛原料の平均粒径が700nm以下であり、副成分原料として、ホウ素をB
2O
3に換算して、0.005〜0.04wt%含み、銀をAg
2Oに換算して、0.005〜0.04wt%含み、かつホウ素の銀に対する相対比が、0.125≦B
2O
3/Ag
2O≦1.00の関係を満たす混合物を焼成して得られる焼結体を備える電流−電圧非直線抵抗体では、高抵抗化が図れ、優れた、非直線抵抗特性およびエネルギ耐量が得られることがわかった。
【0073】
【表2】
【0074】
(実施例3)
実施例3では、焼結体を作製する際の混合物において、酸化亜鉛(ZnO)を主成分とし、副成分としてビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)の各含有量が、電流−電圧非直線抵抗体の特性に及ぼす影響について説明する。
【0075】
まず、上記実施例1における試料番号4を作製するために用いた焼結体の副成分原料のうち、イットリウム、ホウ素、銀およびアルミニウムは同様の含有量とし、その他の副成分(Bi
2O
3、Sb
2O
3、MnO、Co
2O
3、NiO)を、表3に示す試料番号25〜試料番号48の値となるように調整した。
以後の電流−電圧非直線抵抗体を作製する工程は、前述した実施例1と同じ工程とし、電流−電圧非直線抵抗体を得た。
なお、いずれの試料も、全原料の平均粒径(D50t)は695nm、酸化亜鉛の平均粒径(D50z)は700nm、D50s/D50zは0.50となるよう、湿式粉砕装置における粉砕および混合処理条件を制御した。全原料の平均粒径(D50t)と酸化亜鉛の平均粒径(D50z)と、全副成分の平均粒径(D50s)は、実施例1と同法にて測定した。
【0076】
得られた試料番号25〜試料番号48の電流−電圧非直線抵抗体について、バリスタ電圧(V
1mA)、非直線抵抗特性およびエネルギ耐量を評価した。なお、バリスタ電圧(V
1mA)、非直線抵抗特性およびエネルギ耐量の評価における実験条件や実験方法、評価基準は、前述した実施例1の実験条件や実験方法と同じとした。
なお、上記した各評価試験では、試料番号25〜48の各電流−電圧非直線抵抗体を10ピース作製し、10ピースについて試験を行いそれらの平均でもって評価した。
【0077】
表3には、試料番号4(表1参照)、試料番号25〜試料番号48の電流−電圧非直線抵抗体における、混合物のうちの副成分の組成成分(原料添加量)、バリスタ電圧(V
1mA)、非直線性係数(V
10kA/V
1mA)およびエネルギ耐量を示す。なお、表3において、*印は本実施形態の範囲外である試料を示す比較例である。
【0078】
表3に示すように、本実施形態に係る電流−電圧非直線抵抗体においては、いずれも、バリスタ電圧(V
1mA)が900V/mm以上、非直線性係数(V
10kA/V
1mA)が1.300より小さく、エネルギ耐量が400J/ccよりも大きくなることがわかった。また、本実施形態に係る電流−電圧非直線抵抗体は、比較例と比較して、高抵抗化が図れ、優れた、非直線抵抗特性およびエネルギ耐量を有することがわかった。
【0079】
以上の結果から、酸化亜鉛を主成分として含み、副成分として、それぞれBi
2O
3、Sb
2O
3、Co
2O
3、MnO、NiOに換算して、Bi
2O
3を0.30〜0.80mol%、Sb
2O
3を1.50〜3.50mol%、MnOを0.50〜2.00mol%、Co
2O
3を0.30〜1.50mol%、NiOを1.50〜3.50mol%、ホウ素をB
2O
3に換算して、0.005〜0.04wt%含み、銀をAg
2Oに換算して、0.005〜0.04wt%含み、かつホウ素の銀に対する相対比が、0.125≦B
2O
3/Ag
2O≦1.00の関係を満たし、副成分原料の平均粒径(D50s)の酸化亜鉛原料の平均粒径(D50z)に対する相対比が、D50s/D50z≦0.60であり、かつ酸化亜鉛原料の平均粒径が700nm以下である混合物を焼成して得られる焼結体を備える電流−電圧非直線抵抗体では、高抵抗化が図れ、優れた、非直線抵抗特性およびエネルギ耐量が得られることがわかった。
【0080】
【表3】
【0081】
(実施例4)
実施例4では、焼結体を作製する際の混合物において、希土類元素の添加が、電流−電圧非直線抵抗体の特性に及ぼす影響について説明する。
【0082】
まず、上記実施例1における試料番号4を作製するために用いた焼結体の副成分のうち、希土類元素以外の同様の成分組成を有する混合物に、希土類元素を、表4に示す試料番号49〜試料番号80の値となるように調整し、酸化亜鉛原料とこれら副成分原料からなる混合物を作製した。
以後の電流−電圧非直線抵抗体を作製する工程は、前述した実施例1と同じ工程とし、電流−電圧非直線抵抗体を得た。
なお、いずれの試料も、全原料の平均粒径(D50t)は695nm、酸化亜鉛の平均粒径(D50z)は700nm、D50s/D50zは0.50となるよう、湿式粉砕装置における粉砕および混合処理条件を制御した。全原料の平均粒径(D50t)と酸化亜鉛の平均粒径(D50z)と、全副成分の平均粒径(D50s)は、実施例1と同法にて測定した。
【0083】
得られた試料番号49〜試料番号80の電流−電圧非直線抵抗体について、バリスタ電圧(V
1mA)、非直線抵抗特性およびエネルギ耐量を評価した。なお、バリスタ電圧(V
1mA)、非直線抵抗特性およびエネルギ耐量の評価における実験条件や実験方法、評価基準は、前述した実施例1の実験条件や実験方法と同じとした。
なお、上記した各評価試験では、試料番号49〜80の各電流−電圧非直線抵抗体を10ピース作製し、10ピースについて試験を行いそれらの平均でもって評価した。
【0084】
表4には、試料番号4(表1参照)、試料番号49〜試料番号80の電流−電圧非直線抵抗体における、希土類元素の組成成分、バリスタ電圧(V
1mA)、非直線性係数(V
10kA/V
1mA)およびエネルギ耐量を示す。なお、表4において、*印は本実施形態の範囲外である試料を示す比較例である。
【0085】
表4に示すように、本実施系形態に係る電流−電圧非直線抵抗体においては、いずれも、バリスタ電圧(V
1mA)が900V/mm以上、非直線性係数(V
10kA/V
1mA)が1.300より小さく、エネルギ耐量が400J/ccよりも大きくなることがわかった。また、本実施形態に係る電流−電圧非直線抵抗体は、比較例と比較して、高抵抗化が図れ、優れた、非直線抵抗特性およびエネルギ耐量を有することがわかった。
【0086】
以上の結果から、副成分原料の平均粒径(D50s)の酸化亜鉛原料の平均粒径(D50z)に対する相対比が、D50s/D50z≦0.60であり、かつ酸化亜鉛原料の平均粒径が700nm以下であり、副成分原料として、ホウ素をB
2O
3に換算して、0.005〜0.04wt%含み、銀をAg
2Oに換算して、0.005〜0.04wt%含み、かつホウ素の銀に対する相対比が、0.125≦B
2O
3/Ag
2O≦1.00の関係を満たし、さらに副成分原料として、イットリウム(Y)、ユウロピウム(Eu)、エリビウム(Er)、ツリウム(Tm)、ガドリニウム(Gd)、ジスプロジウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、イッテリビウム(Yb)のうち少なくとも一種の希土類元素Rを用い、かつR
2O
3に換算して0.10〜0.50mol%含む混合物を焼成して得られる焼結体を備える電流−電圧非直線抵抗体では、高抵抗化が図れ、優れた、非直線抵抗特性およびエネルギ耐量が得られることがわかった。
【0087】
【表4】
【0088】
(実施例5)
実施例5では、焼結対を作製する際の混合物において、3価元素の添加が電流−電圧非直線抵抗体の特性に及ぼす影響について説明する。
【0089】
まず、上記実施例1における試料番号4を作製するために用いた焼結体成分のうち、3価元素であるアルミニウム以外の同様の成分組成を有する混合物に、3価元素(アルミニウム、ガリウム、インジウム)を、表5に示す試料番号81〜試料番号94の値となるように調整し、酸化亜鉛原料とこれら副成分原料からなる混合物を作製した。
以後の電流−電圧非直線抵抗体を作製する工程は、前述した実施例1と同じ工程とし、電流−電圧非直線抵抗体を得た。
なお、いずれの試料も、全原料の平均粒径(D50t)は695nm、酸化亜鉛の平均粒径(D50z)は700nm、D50s/D50zは0.50となるよう、湿式粉砕装置における粉砕および混合処理条件を制御した。全原料の平均粒径(D50t)と酸化亜鉛の平均粒径(D50z)と、全副成分の平均粒径(D50s)は実施例1と同法にて測定した。
【0090】
得られた試料番号81〜試料番号94の電流−電圧非直線抵抗体について、バリスタ電圧(V
1mA)および非直線抵抗特性を評価した。なお、バリスタ電圧(V
1mA)および非直線性の評価における実験条件や実験方法、評価基準は前述した実施例1の実験条件や実験方法と同じとした。 なお、上記した各評価試験では、試料番号81〜試料番号94の各電流−電圧非直線抵抗体を10ピース作製し、10ピースについて試験を行いそれらの平均でもって評価した。
【0091】
表5には、試料番号4(表1参照)、試料番号81〜試料番号94の電流−電圧非直線抵抗体における、3価元素の組成成分、バリスタ電圧(V
1mA)および非直線性係数(V
10kA/V
1mA)を示す。なお、表5において、*印は本実施形態の範囲外である試料を示す比較例である。
【0092】
表5に示すように、本実施形態に係る電流−電圧非直線抵抗体においては、いずれも、バリスタ電圧(V
1mA)が900V/mm以上、非直線性係数(V
10kA/V
1mA)が1.300より小さくなることがわかった。また本実施形態に係る電流−電圧非直線抵抗体は、比較例として、高抵抗化が図られ、優れた、非直線抵抗特性を有することがわかった。
【0093】
以上の結果から、副成分原料の平均粒径(D50s)の酸化亜鉛原料の平均粒径(D50z)に対する相対比が、D50s/D50z≦0.60であり、かつ酸化亜鉛原料の平均粒径が700nm以下であり、副成分原料として、ホウ素をB
2O
3に換算して、0.005〜0.04wt%含み、銀をAg
2Oに換算して、0.005〜0.04wt%含み、かつホウ素の銀に対する相対比が、0.125≦B
2O
3/Ag
2O≦1.00の関係を満たし、さらに副成分原料として、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)のうち少なくとも一種以上の3価元素を用い、それぞれAl
3+、Ga
3+、In
3+に換算して、0.003〜0.010mol%含む混合物を焼成して得られる焼結体を備える電流−電圧非直線抵抗体では、高抵抗化が図られ、優れた、非直線抵抗特性が得られることがわかった。
【0094】
【表5】
【0095】
(実施例6)
実施例6では、焼結体の機械強度の50%破壊強度が、電流−電圧非直線抵抗体のエネルギ耐量特性に及ぼす影響について説明する。
【0096】
上記実施例1における試料番号1、3、4、7、8および10を作製するために用いた焼結体の原料と同様の成分組成を有する混合物となるように調整した。
以後の焼結体を作製する工程は、前述した実施例1と同じ工程であるが、得られた造粒粉を、油圧式のプレス成形機によって、成形する工程においてのみ違いがあり、直径が40mm、厚さが40mmの円柱状の成形体とし、焼結体を作製した。
作製した6種類の焼結体を、それぞれ試料番号95〜100とし、それらについて、焼結体の機械強度の測定を行った。
【0097】
ここで、焼結体の機械強度は、それぞれの焼結体から3×4×38mmの試験片を加工し、JIS R1604に準拠して4点曲げ試験により曲げ強度を測定した。また、それぞれの焼結体から各10ピースの試験片を加工し、それらの50%破壊強度の平均値を各々の焼結体の機械的強度とした。
【0098】
また、エネルギ耐量の評価においては、4/10μsのインパルス電流を、400J/ccから、約50J/ccずつ破壊するまでエネルギを上げて試験を行った。印加間は、室温まで冷却を行った。破壊までの最低エネルギ(破壊エネルギ)が大きいほど、エネルギ耐量が優れていることを示す。なお、エネルギ耐量試験では、各焼結体を10ピース作製し、10ピースについてそれぞれ試験を行い、得られた破壊エネルギ値の平均値を「破壊平均エネルギ」として評価した。
【0099】
表6には、試料番号95〜試料番号100の焼結体における、50%破壊強度(MPa)、エネルギ耐量試験における破壊平均エネルギ(μ:J/cc)を示す。なお、表5において、*印は本実施形態の範囲外である試料を示す比較例である。
【0100】
表6に示すように、焼結体の機械強度の50%破壊強度が140MPa以上になると、破壊までの平均エネルギが700J/cc以上となり、優れたエネルギ耐量が得られることがわかった。
【0101】
以上の結果から、焼結体の機械強度の50%破壊強度が140MPa以上とすることによりエネルギ耐量を向上させることができる。すなわち、電流−電圧非直線抵抗体の構成部材として、50%破壊強度に優れた焼結体を搭載することにより電流−電圧非直線抵抗体エネルギ耐量をさらに高めることが可能であることがわかった。
【0102】
【表6】
【0103】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。