(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る薬液ポンプ及び薬液投与装置の第1実施形態について図面を参照して説明する。
【0030】
(薬液投与装置)
図1に示すように、本実施形態の薬液投与装置1は、薬液Wが充填されるシリンジ10から薬液Wを吐出させる薬液ポンプ2と、薬液ポンプ2を内部に収容すると共にユーザの体表面(本発明に係る生体表面)Sに装着可能とされた本体ケース3と、を備えている。
なお、薬液Wとしては特に限定されるものではないが、例えばインスリンが挙げられる。この場合、薬液投与装置1はインスリン投与装置として機能すると共に、薬液ポンプ2はインスリンポンプとして機能する。
【0031】
本体ケース3は、例えばケース本体及び蓋部材が組み合わされた構成とされ、ユーザの予め決められた装着箇所(例えば腹部周辺)に装着することが可能とされている。本実施形態では、図示を簡略化するために、本体ケース3を箱型の直方体状に形成しているが、本体ケース3の形状はこの場合に限定されるものではない。例えば、本体ケース3を平面視円形状、楕円状、多角形状等に形成しても構わない。
【0032】
本体ケース3をユーザの体表面Sに装着する装着方法については、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用して構わない。例えば、粘着テープ等を利用して本体ケース3を体表面Sに貼着しても構わないし、クリップや装着ベルト等の図示しない装着部材を本体ケース3に組み合わせ、装着部材を介して本体ケース3を体表面Sに装着しても構わない。
【0033】
本体ケース3には、押し込み操作可能な図示しない操作部材によって、体内側に向けて飛び出し可能な留置針4が設けられている。
留置針4は、例えばプラスチック製のカニューレタイプとされ、図示しない内針と共に体内に穿刺可能とされていると共に、内針の引き抜きによって体表面Sに留置可能とされている。これにより、留置針4は、本体ケース3を体表面Sに装着している間、体内に穿刺された状態で体表面Sに留置可能とされている。
【0034】
留置針4は、例えば可撓性を有するチューブ5等を通じてシリンジ10内に接続されている。従って、薬液ポンプ2を利用してシリンジ10内から薬液Wを吐出することで、吐出した薬液Wを留置針4に導入することができると共に、留置針4を通じて薬液Wをユーザに投与することが可能とされている。
【0035】
(薬液ポンプ)
図1〜
図4に示すように薬液ポンプ2は、本体ケース3内に固定された平板状のベース板20を備えている。薬液ポンプ2を構成する各構成品は、このベース板20上に実装されている。なお、
図2は、薬液ポンプ2の構成を簡略化した簡易ブロック図である。
本実施形態では、ベース板20の厚さ方向を上下方向L1といい、体表面Sから離間する方向を上方、その反対方向を下方という。さらにベース板20の面内において、互いに直交し合う一方向を前後方向L2、他方向を左右方向L3という。
【0036】
(シリンジ)
はじめに、薬液ポンプ2にセットされるシリンジ10について簡単に説明する。
図1及び
図5に示すように、シリンジ10は、いわゆる薬液容器であって、内部に摺動可能に配置されたプランジャ12を備えている。シリンジ10は、シリンジ軸線Rが前後方向L2に対して平行となるように、後述する保持部材21に保持される。
【0037】
シリンジ10は、前後方向L2に沿って延びると共に、シリンジ軸線Rを中心とした円筒状に形成され、内部に薬液Wを充填することが可能とされている。
なお、前後方向L2のうち、シリンジ10内にプランジャ12が押し込まれる方向を前方(本発明に係る第1方向)といい、その反対方向を後方(本発明に係る第2方向)という。さらに、前後方向L2から見て、シリンジ軸線Rに対して交差する方向を径方向といい、シリンジ軸線R回りを周回する方向を周方向という。
【0038】
シリンジ10の後端部側には開口部が形成されている。そのため、シリンジ10は、薬液ポンプ2にセットされたときに後方側に開口している。シリンジ10の前端部側には、留置針4に繋がるチューブ5等が接続可能とされている。これにより、チューブ5等を通じてシリンジ10内と留置針4内とを連通させることができ、シリンジ10内から留置針4に薬液Wを供給することが可能とされている。
【0039】
プランジャ12は、シリンジ10の開口部を通じて後方からシリンジ10内に挿入されている。プランジャ12は、前後方向L2に沿って延びるプランジャ軸13と、プランジャ軸13の前端部に一体に形成された円柱状のガスケット部14と、プランジャ軸13の後端部に一体に形成された連結片15と、を備えている。
【0040】
ガスケット部14は、シリンジ軸線Rに沿ってシリンジ10内を前後摺動可能とされている。なお、ガスケット部14の外周面には、Oリング等のシール部材16が固定されている。これにより、ガスケット部14とシリンジ10との間は、密(液密、気密)にシールされている。
【0041】
連結片15は、プランジャ軸13の後端部から径方向の外側に向けて突出するように形成されていると共に、周方向に間隔をあけて複数形成されている。図示の例では、連結片15は、シリンジ軸線Rを中心として放射状に配置されるように、周方向に等間隔をあけて4つ形成されている。
ただし、連結片15の形状や個数等は、この場合に限定されるものではない。例えば、プランジャ軸13の後端部から径方向の外側に向けて全周に亘って突出する環状の連結片15としても構わない。
【0042】
上述のように構成されたシリンジ10は、例えば予め薬液Wが充填された図示しないバイアル(またはアンプルともいう)から薬液Wを移し替えて或いは吸い上げることで、該薬液Wを充填することが可能とされている。
【0043】
(薬液ポンプ)
図1〜
図4に示すように、薬液ポンプ2は、シリンジ10を保持する保持部材21と、所定の駆動力F1でプランジャ12を押圧してプランジャ12をシリンジ10内に向かう前方に向けて移動させる駆動部22と、プランジャ12が駆動力F1で移動するように、プランジャ12の移動を調整する調整機構23と、を備えている。
これら保持部材21、駆動部22及び調整機構23は、先に述べたようにベース板20の上面側に実装されている。
【0044】
図6に示すように、保持部材21は、ベース板20における前縁部寄りに配置された保持台21aと、保持台21aに組み合わされる図示しない保持具と、を備えている。
保持台21aは、上面視で外形が正方形或いは長方形状に形成され、そのサイズはシリンジ10の直径及び長さに対応している。保持台21aの上面は、シリンジ10の外径に対応した曲率で左右方向L3に湾曲した円弧面とされている。これにより、保持台21aの上面に、シリンジ10を左右方向L3に位置決めした状態で載置することが可能とされている。
【0045】
保持具は、保持台21aに組み合わされることで、保持台21aに載置されたシリンジ10を保持することが可能とされている。これにより、保持部材21を利用して、シリンジ10を安定且つ確実に保持することが可能とされている。
【0046】
図1〜
図4に示すように、駆動部22は、弾性復元力を利用して駆動力F1を発生させる渦巻きばね(本発明に係るばね部材)30と、渦巻きばね30を内部に収容すると共に前方に向けて移動可能に配置された可動ケース31と、可動ケース31を移動可能に案内する案内プレート35と、を備えている。
【0047】
図6に示すように、案内プレート35は、保持部材21よりも後方側に配置され、ベース板20に対して一体的に組み合わされている。
案内プレート35は、ベース板20に重なるように配置された平板状のプレート本体36と、プレート本体36から上方に向かって突出すると共に、前後方向L2に沿って延びるように形成された一対の案内レール37と、を備えている。
【0048】
プレート本体36は、例えば前後方向L2に沿った長さが左右方向L3に沿った長さよりも長い平面視長方形状に形成されている。プレート本体36の前端部は、保持台21aの後端部に対して当接或いは近接している。なお、プレート本体36の上面は、平滑に形成されているうえ、例えば摩擦抵抗が低いすべり面とされている。
一対の案内レール37は、プレート本体36において左右方向L3の両側に位置する側縁部にそれぞれ形成され、プレート本体36の全長に亘って形成されている。そのため、一対の案内レール37は、左右方向L3に向かい合った状態で互いに平行に配置されている。なお、一対の案内レール37のうち、互いに向かい合った対向面(内面)は、平滑に形成されているうえ、例えば摩擦抵抗が低いすべり面とされている。
【0049】
図4〜
図7に示すように、可動ケース31は、外側ケース40と、外側ケース40の内側に収容された内側ケース50と、を備え、案内プレート35におけるプレート本体36の上面に載置されている。
外側ケース40は、前後方向L2に向かい合うように配置された外側前壁41及び外側後壁42と、左右方向L3に向かい合うように配置された一対の外側側壁43と、を備え、上方及び下方に開口した枠状に形成されている。図示の例では、外側ケース40の外形形状は、前後方向L2に沿った長さが左右方向L3に沿った長さよりも長い平面視長方形状とされている。
【0050】
一対の外側側壁43は、一対の案内レール37の内側に配置されていると共に、案内レール37に対して接触或いは近接している。これにより、可動ケース31の全体は、一対の案内レール37によってガイドされながら、プレート本体36の上面を前後方向L2にがたつき少なく移動可能とされている。そのため、可動ケース31の全体を優れた直進性で前後方向L2に移動させることが可能とされている。
【0051】
外側前壁41には、該外側前壁41を前後方向L2に貫通すると共に、上方及び下方に開口した挿通孔45が形成されている。プランジャ軸13は、この挿通孔45を通じて外側ケース40内に後方から入り込んでいる。これにより、プランジャ軸13の後端部に形成された連結片15は、外側ケース40の内側に配置されている。なお、連結片15は外側前壁41に対して後方側から接触している。
【0052】
内側ケース50は、外側ケース40の外側前壁41に対して隙間をあけた状態で前後方向L2に向かい合う内側前壁51と、左右方向L3に向かい合うように配置された一対の内側側壁52と、を備え、上方、下方及び後方に開口した平面視C形状の枠状に形成されている。図示の例では、内側ケース50の外形形状は、外側ケース40に対応して前後方向L2に沿った長さが左右方向L3に沿った長さよりも長く形成されている。
【0053】
一対の内側側壁52は、一対の外側側壁43の内側に配置されている。これにより、内側ケース50の全体は、外側ケース40の内側に収容されており、外側ケース40と共に前後方向L2に移動可能とされている。
内側前壁51は、外側前壁41との間でプランジャ12における連結片15を挟み込んで固定している。これにより、プランジャ軸13の後端部及び可動ケース31は、一体に組み合わされ、互いに連結されている。従って、プランジャ軸13及び可動ケース31は、一体となって前後方向L2に移動可能とされている。
【0054】
図7に示すように、渦巻きばね30は、厚みが薄く、且つ所定の幅を有する長尺な帯状の素材(例えば金属製)を渦巻き状に巻回することで構成されている。渦巻きばね30は、中心線が左右方向L3に平行となる姿勢で内側ケース50内に収容されている。この際、
図6に示すように、渦巻きばね30の外端部30a側は、内側ケース50及び外側ケース40の下方から可動ケース31の前方に向けて引き出されると共に、保持部材21における保持台21aに対して接続されている。
従って、渦巻きばね30には、外端部30a側を巻き取って、元の状態に復元するような弾性復元力が作用している。
【0055】
上述のように構成された駆動部22は、渦巻きばね30が外端部30a側を巻き取って元の状態に復元変形しようとするので、渦巻きばね30のうち内側ケース50内に収容されている巻回部分側を弾性復元力によって前方側に移動させることができる。これにより、可動ケース31の全体を前方に向けて移動させることができ、渦巻きばね30の弾性復元力に起因する駆動力F1によって、プランジャ12を前方に向けて移動させ、プランジャ12をシリンジ10内に押し込むことが可能とされている。
【0056】
なお、渦巻きばね30は、例えばコイルばね等に比べて、伸びた状態から巻回によって元の状態に復元する間の弾性復元力がほぼ一定となる特性を有しており、いわゆる定荷重ばねとして好適に利用することが可能とされている。従って、本実施形態では、予め決められた一定の駆動力(定圧駆動力)F1でプランジャ12を押圧可能とされている。
【0057】
図2に示すように、調整機構23は、シリンジ10内でのプランジャ12の移動に起因して生じる抵抗力と、駆動部22による駆動力F1との差分に応じて、プランジャ12に対して前方に向けて補助力F2(プラスの推力)を付与、或いはプランジャ12に対して後方に向けて反力F3(マイナスの推力)を付与する機構とされている。
以下に詳細に説明する。
【0058】
図1〜
図4に示すように、調整機構23は、プランジャ12に連動して移動可能に配置された送りねじ(本発明に係る可動体)60と、送りねじ60を前方に向きて所定の速度で移動させると共に、送りねじ60を介してプランジャ12に補助力F2を付与させる送り機構61と、プランジャ12に対して送りねじ60を介して後方に反力F3を付与する制動部63と、を備えている。
【0059】
送りねじ60は、可動ケース31よりも後方側に配置されていると共に、シリンジ軸線Rと同軸に配置された第1軸線(本発明に係る軸線)O1に沿って前後方向L2に移動可能に配置されている。
送りねじ60の外周面には、全長に亘って雄ねじ部60aが形成されている。さらに送りねじ60の前端部は、外側ケース40の外側後壁42に対して連結ナット65を介して一体的に組み合わされている。そのため、送りねじ60は、可動ケース31を介してプランジャ12と直列に繋がっており、プランジャ12に連動して前後方向L2に移動可能とされている。
さらに送りねじ60は、可動ケース31に対して組み合わされていることで、第1軸線O1回りの回転が規制された状態とされている。
【0060】
上述のように構成された送りねじ60は、ベース板20の上面に立設された第1支持部70に設けられた第1ガイド部材72、及びベース板20の上面に立設された第2支持部80に設けられた第2ガイド部材82によってガイドされている。
【0061】
図8に示すように、第1支持部70は、外側ケース40における外側後壁42よりも後方側に配置された第1支持台71と、第1支持台71に保持された第1ガイド部材72と、第1ガイド部材72を上方から押え込む第1カバー73と、を備えている。
【0062】
第1支持台71は、第1ガイド部材72を上方に向けて離脱可能に下方から保持している。また、第1支持台71の上端部には、第1ガイド部材72に対して後方から接触する第1規制壁71aが形成されている。そのため、第1ガイド部材72は、第1規制壁71aによって後方に移動することが規制された状態で第1支持台71に保持されている。第1ガイド部材72は、送りねじ60を挿通させる挿通孔が形成された環状に形成され、送りねじ60をガイドしている。
なお、第1ガイド部材72は、例えば内輪、外輪及び複数のボールを有するボールベアリング等とされている。ただし、第1ガイド部材72はボールベアリングに限定されるものではない。なお、各図面では、第1ガイド部材72を簡略化して図示している。
【0063】
図3及び
図9に示すように、第2支持部80は、第1支持台71との間に間隔をあけた状態で第1支持台71よりも後方側に配置された第2支持台81と、第2支持台81に保持された第2ガイド部材82と、第2ガイド部材82を上方から押え込む第2カバー83と、を備えている。
【0064】
第2支持台81は、第2ガイド部材82を上方に向けて離脱可能に下方から保持している。また、第2支持台81の上端部には、第2ガイド部材82に対して前方から接触する第2規制壁81aが形成されている。そのため、第2ガイド部材82は、第2規制壁81aによって前方に移動することが規制された状態で第2支持台81に保持されている。第2ガイド部材82は、送りねじ60を挿通させる挿通孔が形成された環状に形成され、送りねじ60をガイドしている。
なお、第2ガイド部材82は、例えば内輪、外輪及び複数のボールを有するボールベアリング等とされている。ただし、第2ガイド部材82はボールベアリングに限定されるものではない。なお、各図面では、第2ガイド部材82を簡略化して図示している。
【0065】
上述のように送りねじ60が構成されているので、例えば組み立て時、可動ケース31における外側ケース40に連結ナット65を利用して送りねじ60を一体に組み合わせると共に、送りねじ60に第1ガイド部材72及び第2ガイド部材82を取り付ける。その後、第1ガイド部材72を第1支持台71に対して上方から組み込み、且つ第2ガイド部材82を第2支持台81に対して上方から組み込みながら、可動ケース31を案内プレート35上にセットする。その後、第1支持台71に第1カバー73を組み合わせると共に、第2支持台81に第2カバー83を組み合わせることで、互いに一体に組み合わされた可動ケース31及び送りねじ60の組み立てを行うことが可能となる。
【0066】
図10及び
図11に示すように、送り機構61は、送りねじ60の雄ねじ部60aに螺合する図示しない雌ねじ部を有し、送りねじ60に螺着されたナット部材90と、ナット部材90を回転させるための動力(回転トルク)を発生させるぜんまい(本発明に係る駆動源)91と、ぜんまい91からの動力をナット部材90に伝達する輪列機構92と、輪列機構92を調速する調速機構93と、を備えている。
【0067】
図10に示すように、ナット部材90は、送りねじ60のうち第1支持部70と第2支持部80との間に位置する部分に螺着されていると共に、第1軸線O1回りに回転可能に配置された送り車100と一体に形成されている。これにより、ナット部材90は、送り車100の回転に伴って第1軸線O1回りを回転可能とされている。
【0068】
なお、図示の例では、ナット部材90は送り車100と第2支持部80との間に配置されている例を示している。ただし、この場合に限定されるものではなく、送り車100と第1支持部70との間に、ナット部材90を設けても構わない。
特に、ナット部材90及び送り車100は、第1支持部70と第2支持部80との間に挟まるように配置されることで、前後方向L2への移動が規制されている。
【0069】
図10及び
図11に示すように、輪列機構92は、ぜんまい91からの動力によって第2軸線O2回りを回転する駆動車101と、駆動車101の回転に伴って第3軸線O3回りを回転する第1中間車102と、第1中間車102の回転に伴って第4軸線O4回りを回転する傘歯車103と、傘歯車103と共に第4軸線O4回りを回転する第2中間車104と、を備えている。
ただし、輪列機構92を構成する各車の数や配置関係等は、この場合に限定されるものではなく、適宜変更して構わない。
【0070】
駆動車101は、上下方向L1に対して第2軸線O2を平行とした状態でベース板20の上面に配置されている。図示の例では、駆動車101は、案内プレート35に対して左右方向L3に離間した位置に配置されている。駆動車101は、駆動軸部101aと、駆動軸部101aに一体に形成された駆動歯車101bと、を備えている。駆動歯車101bの下方には、ぜんまい91が配置されている。
【0071】
ぜんまい91は、機械式時計において利用されるものと同等とされ、渦巻き状に形成されていると共に、巻き解けによって動力を発生させることが可能とされている。
ぜんまい91は、機械式時計における香箱車のような図示しない収容部内に収容されていると共に、その外端部が収容部の内側に取り付けられている。ぜんまい91の内端部は、駆動軸部101aに係止されている。これにより、駆動軸部101aを第2軸線O2回りに回転させることで、ぜんまい91を縮径させるように巻き上げることが可能とされている。
さらに、駆動軸部101aにぜんまい91の内端部が係止されているので、ぜんまい91が拡径するように巻き解けることで、駆動車101の全体を第2軸線O2回りに回転させることが可能とされている。
【0072】
なお、駆動軸部101aと駆動歯車101bとの間には、ぜんまい91を巻き上げる方向に駆動軸部101aを回転させたときに、駆動歯車101bに対して駆動軸部101aを空回りさせ、且つぜんまい91の巻き解けに伴って駆動軸部101aが回転したときに、駆動歯車101bと駆動軸部101aとを共回りさせるワンウェイクラッチ等の図示しないクラッチ機構が設けられている。これにより、駆動歯車101bは、ぜんまい91が巻き解ける場合にのみ回転可能とされている。
【0073】
第1中間車102は、上下方向L1に対して第3軸線O3を平行とした状態でベース板20の上面に配置されている。図示の例では、第1中間車102は、駆動軸部101aよりも後方側に位置し、且つ案内プレート35と駆動車101との間に位置するように配置されている。第1中間車102は、駆動車101における駆動歯車101bに噛み合っている。これにより、第1中間車102は、駆動車101の回転に伴って第3軸線O3回りを回転可能とされている。
【0074】
傘歯車103は、ベース板20に上面に立設された台座105に固定された回転軸部106に回転可能に取り付けられている。台座105は、第1支持部70に対して左右方向L3に間隔をあけて隣り合うように配置されている。回転軸部106は、前後方向L2に平行となるように配置され、台座105に片持ち支持されている。なお、回転軸部106の中心線が第4軸線O4とされている。
【0075】
傘歯車103は、第1中間車102に噛み合った状態で回転軸部106に回転可能に取り付けられている。これにより、傘歯車103は、第1中間車102の回転に伴って第4軸線O4回りを回転可能とされている。
【0076】
第2中間車104は、傘歯車103と一体に組み合わされた状態で回転軸部106に回転可能に取り付けられている。そのため、第2中間車104は、傘歯車103の回転に伴って、第4軸線O4回りを共回り可能とされている。そして、第2中間車104は、送り車100に対して噛み合っている。
【0077】
上述のように輪列機構92が構成されているので、ぜんまい91の巻き解けによって発生する動力を、駆動車101、第1中間車102、傘歯車103及び第2中間車104を介して送り車100に伝達することができ、送り車100をナット部材90と共に第1軸線O1回りに回転させることが可能とされている。
【0078】
図10及び
図11に示すように、調速機構93は、上述した輪列機構92の回転を制御する脱進機110と、脱進機110を調速する調速機120と、を備えている。これら脱進機110及び調速機120は、機械式時計に一般的に用いられるものと同等の構成とされている。そのため、脱進機110及び調速機120についての詳細な説明は省略する。
【0079】
脱進機110は、駆動車101の回転に伴って第5軸線O5回りを回転する中間車111と、中間車111の回転に伴って第6軸線O6回りを回転するがんぎ車112と、がんぎ車112を脱進させて規則正しく回転させるアンクル113と、を備え、後述するてんぷ122からの規則正しい振動で輪列機構92を制御することが可能とされている。
【0080】
中間車111は、上下方向L1に対して第5軸線O5が平行とされた状態でベース板20の上面に配置されている。図示の例では、中間車111は、駆動軸部101aよりも前方側に位置し、且つ案内プレート35と駆動車101との間に位置するように配置されている。中間車111は、駆動車101における駆動歯車101bに噛み合う中間かな111aと、中間歯車111bとを有している。これにより、中間車111は、駆動車101の回転に伴って第5軸線O5回りを回転可能とされている。
なお、中間車111は必須なものではなく、具備しなくても構わない。例えば、駆動車101の回転に伴ってがんぎ車112が回転するように構成しても構わない。
【0081】
がんぎ車112は、上下方向L1に対して第5軸線O5が平行とされた状態で中間車111よりも前方側に配置されている。がんぎ車112は、中間歯車111bに噛み合うがんぎかな112aと、複数のがんぎ歯を有するがんぎ歯車112bとを備えている。これにより、がんぎ車112は、中間車111の回転に伴って第6軸線O6回りを回転可能とされている。
【0082】
アンクル113は、がんぎ車112よりも前方側に配置され、てんぷ122の往復回転に基づいて回動可能(揺動可能)とされていると共に、がんぎ車112におけるがんぎ歯に対して係脱可能な入爪石113a及び出爪石113bを有している。入爪石113a及び出爪石113bは、アンクル113の回動に伴ってがんぎ歯に対して交互に係脱可能とされている。
従って、アンクル113の回動に伴って入爪石113a及び出爪石113bががんぎ歯に対して交互に係脱することで、がんぎ車112の回転を制御することが可能とされると共に、がんぎ車112に伝わった動力を、アンクル113及び振り石114を介しててんぷ122に伝えて、てんぷ122に回転エネルギーを補充することが可能とされている。
【0083】
調速機120は、ひげぜんまい121と、ひげぜんまい121を動力源として、定常振幅(振り角)で第7軸線O7回りを往復回転(正逆回転)するてんぷ122と、を備えている。
てんぷ122は、上下方向L1に対して第7軸線O7が平行とされた状態でアンクル113よりも前方側に配置されている。てんぷ122は、第7軸線O7と同軸に配置されたてん輪122aとを備えている。
【0084】
ひげぜんまい121は、第7軸線O7を中心として渦巻き状に形成され、拡縮するように弾性変形可能とされている。ひげぜんまい121の内端部は、図示しない振り座を介しててんぷ122に係止されている。これにより、てんぷ122は、ひげぜんまい121を動力源として、第7軸線O7回りを往復回転可能とされている。
【0085】
上述のように構成された脱進機110及び調速機120を有する調速機構93を備えているので、ぜんまい91の巻き解けによって発生する動力を利用して、送り車100を所定の回転速度で第1軸線O1回りに回転させることが可能とされている。
これにより、第1軸線O1回りの回転が規制された送りねじ60を前方に向けて所定の速度で移動させることができ、可動ケース31を介してプランジャ12に補助力F2を付与することが可能とされている。
【0086】
なお、送りねじ60にはナット部材90が螺着されており、雄ねじ部60aと雌ねじ部とが噛み合っている。そのため、例えば送りねじ60が駆動部22によって前方に引っ張られた場合には、ナット部材90の雌ねじ部に対して送りねじ60の雄ねじ部60aが前方側に押付けられた状態となる。従って、上述した輪列機構92における各歯車同士の噛み合い力に加えて、ナット部材90及び送りねじ60の噛み合い力を反力F3として利用することが可能とされている。
従って、
図2及び
図10に示すように、少なくとも送りねじ60の雄ねじ部60a、及びナット部材90の雌ねじ部は、プランジャ12に対して送りねじ60を介して後方に反力F3を付与する制動部63として機能する。
【0087】
(薬液投与装置の作用)
次に、上述のように構成された薬液投与装置1を使用して、ユーザの体内に薬液Wを投与する場合について説明する。
【0088】
なお、この場合の初期状態として、
図1に示すように薬液投与装置1がユーザの体表面Sに装着され、留置針4が体内に穿刺された状態で体表面Sに留置されているものとする。さらに、薬液Wが充填されたシリンジ10が薬液ポンプ2の保持部材21にセットされているものとする。さらに、可動ケース31が案内プレート35の後方側に位置して、プランジャ12が押し込み開始位置にセットされていると共に、ぜんまい91が適切に巻き上げられて動力を蓄えているものとする。
【0089】
上述の初期状態のもと、薬液Wの投与を開始すると、
図2及び
図3に示すように、駆動部22によってプランジャ12を所定の駆動力F1(予め決められた一定の駆動力F1)で前方に向けて押圧することができると共に、送りねじ60を前方に向けて所定の速度で移動させることで、可動ケース31を介してプランジャ12を前方に向けて押圧することができる。
【0090】
具体的に説明する。
まず、駆動部22における渦巻きばね30が外端部30a側を巻き取って元の状態に復元変形しようとする。このとき、渦巻きばね30の外端部30a側が保持台21aに接続されているので、外端部30a側を基点として、渦巻きばね30のうち内側ケース50内に収容されている巻回部分側を弾性復元力によって前方に向けて移動させることができる。これにより、可動ケース31の全体を前方に向けて移動させることができ、渦巻きばね30の弾性復元力に起因する駆動力F1によって、プランジャ12を前方に向けて移動させることができる。
その結果、プランジャ12をシリンジ10内に押し込むことができ、シリンジ10内の薬液Wを留置針4側に吐出することができる。
【0091】
特に、駆動力F1を利用してプランジャ12を押圧する際、調整機構23が、シリンジ10内のプランジャ12の移動に起因して生じる抵抗力と駆動力F1との差分に応じて、プランジャ12がシリンジ10内に向かう前方に補助力F2を付与する、或いはその反対の後方に反力F3を付与する。
【0092】
例えば、一定の駆動力F1を利用してプランジャ12を前方に向けて押圧する際、
図12に示す実線のように、理想的には単位時間当たりの移動速度が一定とされ、プランジャ12の移動量が直線性を有することが好ましい。
しかしながら、実際にはプランジャ12の移動に起因して生じる抵抗力(例えばシリンジ10とプランジャ12との間に生じる摺動抵抗や薬液Wの粘性抵抗等)が変化するので、
図12に示す点線のように、一定の駆動力F1でプランジャ12を押圧したとしても、抵抗力に対応して単位時間当たりの移動速度が変化し、移動量が変化してしまう。
【0093】
すなわち、上記抵抗力が大きい場合には、プランジャ12の移動速度が遅くなってしまい、
図12に示す区間T1のように単位時間あたりのプランジャ12の移動量が低下してしまう。その反対に、上記抵抗力が小さい場合には、プランジャ12の移動速度が速くなってしまい、
図12に示す区間T2、T3のように単位時間あたりのプランジャ12の移動量が増加してしまう。
【0094】
本実施形態では、調整機構23を具備しているので、上述の区間T1では、プランジャ12に対して前方に補助力F2(すなわち、プラスの推力)を付与して、プランジャ12の移動速度を速めることができる。その反対に、上述の区間T2、T3では、プランジャ12に対して後方に反力F3(すなわち、マイナスの推力)を付与して、プランジャ12の移動速度を抑制させることができる。
【0095】
このように、調整機構23がシリンジ10内でのプランジャ12の移動に起因して生じる抵抗力と駆動力F1との差分に応じて、補助力F2或いは反力F3をプランジャ12に付与して、抵抗力の影響を相殺するように補正することができる。従って、駆動部22からの駆動力F1でプランジャ12を移動させることができる。
【0096】
その結果、
図12に示す実線のように、一定の移動量でプランジャ12を移動させることができ、薬液Wを一定の吐出量(定量)で精度良くシリンジ10から吐出することが可能となる。従って、優れた吐出精度を具備する薬液ポンプ2とすることができる。
従って、薬液ポンプ2を具備する本実施形態の薬液投与装置1によれば、留置針4を通じて決まった量の薬液Wを、例えば体内に定期的に投与することができる。
【0097】
なお、例えば渦巻きばね30の曲率や、輪列機構92の減速比等を調整することで、駆動力F1及び補助力F2を適宜調整することが可能であるので、用途や薬液Wの種類等に応じて、薬液投与時のプランジャ12の移動速度を変更することも可能である。
【0098】
以上説明したように、本実施形態の薬液投与装置1、及び薬液ポンプ2によれば、薬液Wを一定の吐出量で精度良く吐出することができる。そのため、例えば吐出精度、及び吐出の信頼性の高いインスリンポンプ及びインスリン投与装置等として好適に使用することができる。
【0099】
なお、送りねじ60を利用して、補助力F2及び反力F3をプランジャ12に付与することについて詳細に説明する。
図11に示すように、ぜんまい91の巻き解けによって動力が発生すると、該動力によって駆動車101が回転するので、駆動車101の回転に伴って、第1中間車102、傘歯車103及び第2中間車104を順次回転させることができ、最終的に送り車100を回転させることができる。これにより、送り車100をナット部材90と共に第1軸線O1回りに回転させることができる。送りねじ60は、第1軸線O1回りの回転が規制されているので、ナット部材90の回転に共回りすることがない。従って、ナット部材90の回転に伴って、送りねじ60を第1軸線O1に沿って前方に移動させることができる。
【0100】
この際、輪列機構92は、脱進機110及び調速機120を有する調速機構93によって調速されているので、ぜんまい91の巻き解けによって発生する動力を利用して、送り車100及びナット部材90を所定の回転速度で第1軸線O1回りに回転させることができる。従って、送りねじ60を前方に向けて所定の速度で移動させることができる。
【0101】
このように送りねじ60を所定の速度で前方に移動させることで、可動ケース31を介してプランジャ12に補助力F2を付与することが可能である。
【0102】
さらに、例えばプランジャ12の移動に起因して生じる抵抗力が小さく、これによって送りねじ60が前方に引っ張られた場合には、ナット部材90の雌ねじ部に対して送りねじ60の雄ねじ部60aが前方側に押し付けられた状態となる。従って、輪列機構92における各歯車同士の噛み合い力に加えて、送りねじ60及びナット部材90の噛み合い力を利用して、プランジャ12に対して後方に反力F3を付与することができ、プランジャ12の移動速度が速くなることを抑制することができる。
【0103】
特に、本実施形態の薬液ポンプ2及び薬液投与装置1によれば、渦巻きばね30を利用して駆動力F1を発生させていると共に、ぜんまい91の巻き解けによってナット部材90を回転させる駆動力を発生させている。そのため、薬液Wを吐出するにあたって、電池等の電力が不要である。従って、電力を利用しない分、低コスト化を図り易いうえ、安全性を向上させることができる。
さらに、渦巻きばね30を利用するだけの簡便な構成で、駆動部22を構成することができるので、この点においても低コスト化及び構成の簡略化を図り易い。
【0104】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る薬液ポンプの第2実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0105】
図13に示すように、本実施形態の薬液ポンプ130は、ぜんまい91からナット部材90への動力の伝達の停止と開始とを切り換える切換機構131を備えている。
切換機構131は、いわゆるスタート・ストップ機能を付加する機構であって、ぜんまい91で発生した動力からナット部材90に伝わるまでの伝達経路の途中に設けられている。本実施形態では、切換機構131は、調速機120を構成するてんぷ122に隣接して設けられている。
【0106】
図14及び
図15に示すように、切換機構131は、てんぷ122に隣接して配置されている共に、ベース板20の上面に揺動可能に支持された揺動プレート132と、揺動プレート132の揺動を制御する作動部133と、を備えている。
【0107】
揺動プレート132は、例えば金属材料によって形成され、磁性体とされている。揺動プレート132は、上下方向L1に沿って延びるように形成され、下端部側に揺動軸部135が設けられている。揺動プレート132は、揺動軸部135を中心としててんぷ122に対して接近した
図16及び
図17に示すストップ位置P1(ロック位置)と、てんぷ122から離間した
図18に示すスタート位置P2(ロック解除位置)との間を往復するように揺動可能とされている。
なお、
図13〜
図18では、てんぷ122の図示を簡略化しており、主にてん輪122aを図示している。
【0108】
図14及び
図15に示すように、揺動プレート132の上端部には、てん輪122a側を向いた第1作動面132a、及び第1作動面132aとは反対側を向いた第2作動面132bが形成されている。第1作動面132aには、揺動プレート132がストップ位置P1に位置したときに、てん輪122aに対して吸着する第1磁石136が取り付けられている。
さらにベース板20には、揺動プレート132を間にしててんぷ122とは反対側に位置するように、保持壁部137が設けられている。保持壁部137には、揺動プレート132がスタート位置P2に位置したときに、第2作動面132bを吸着する第2磁石138が取り付けられている。
【0109】
上述のように揺動プレート132が構成されているので、該揺動プレート132をストップ位置P1に位置させた場合には、第1磁石136とてん輪122aとの間に作用する磁力によって、てんぷ122の回転を停止させることができると共に、揺動プレート132をストップ位置P1に位置決めした状態を維持することが可能とされている。
さらに、揺動プレート132をスタート位置P2に位置させた場合には、第2磁石138と第2作動面132bとの間に作用する磁力によって、揺動プレート132をスタート位置P2に位置決めした状態を維持することが可能とされている。
【0110】
図14に示すように、作動部133は、揺動プレート132を揺動軸部135回りに揺動させて、揺動プレート132をストップ位置P1或いはスタート位置P2のいずれかに位置させる役割を果たしている。なお、
図14及び
図15では、揺動プレート132が、ストップ位置P1とスタート位置P2との間に位置している移行状態を図示している。
【0111】
作動部133は、揺動プレート132に接続された第1形状記憶合金ワイヤ140及び第2形状記憶合金ワイヤ141と、これら第1形状記憶合金ワイヤ140及び第2形状記憶合金ワイヤ141に所定のパルス電圧を印加して、通電を制御する制御部142と、備えている。
【0112】
第1形状記憶合金ワイヤ140及び第2形状記憶合金ワイヤ141は、例えばニッケル−チタン合金製のワイヤとされ、例えば通電によって加熱することで瞬間的に収縮し、放熱に伴って伸長するワイヤとされている。
第1形状記憶合金ワイヤ140は、一端部側が揺動プレート132に接続され、収縮することで揺動プレート132をストップ位置P1側に引っ張り、該揺動プレート132をストップ位置P1に移行させることが可能とされている。第2形状記憶合金ワイヤ141は、一端部側が揺動プレート132に接続され、収縮することで揺動プレート132をスタート位置P2側に引っ張り、該揺動プレート132をスタート位置P2に移行させることが可能とされている。
【0113】
なお、第1形状記憶合金ワイヤ140及び第2形状記憶合金ワイヤ141は、制御部142に電気的接続されており、該制御部142から個別に所定の電圧が印加される。また、揺動プレート132は、第1形状記憶合金ワイヤ140及び第2形状記憶合金ワイヤ141よりも熱伝導率が高い材料で形成されている。これにより、揺動プレート132は、第1形状記憶合金ワイヤ140及び第2形状記憶合金ワイヤ141を放熱させる放熱体としても機能する。そのため、第1形状記憶合金ワイヤ140及び第2形状記憶合金ワイヤ141は、加熱によって収縮した後、速やかに放熱されることで収縮が解け、伸長した状態(緩んだ状態)に移行することが可能とされている。
【0114】
制御部142は、第1形状記憶合金ワイヤ140及び第2形状記憶合金ワイヤ141のそれぞれに対して、例えばパルス電圧を瞬間的に印加して、急激な加熱を行わせることが可能とされている。これにより、任意のタイミングで揺動プレート132を揺動させて、ストップ位置P1或いはスタート位置P2に移動させることが可能とされている。
【0115】
(薬液ポンプの作用)
上述のように構成された本実施形態の薬液ポンプ130によれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができることに加え、さらに以下の作用効果を奏功することができる。
【0116】
すなわち、本実施形態の薬液ポンプ130の場合には、切換機構131を利用して、ぜんまい91からナット部材90への動力の伝達の停止と開始とを切り換えることができるので、例えば任意のタイミングでナット部材90を回転させることや、ナット部材90を回転させる時間等を調整することができる。特に、ナット部材90の回転を停止させることで、プランジャ12に連動する送りねじ60自体の移動を停止することができるので、シリンジ10内へのプランジャ12の移動を停止させることができる。
従って、シリンジ10からの薬液Wの吐出タイミングや吐出時間等を調整することが可能となり、使い易く、吐出性能に優れた薬液ポンプ130とすることができる。
【0117】
詳細に説明する。
初期状態として、
図16及び
図17に示すように、揺動プレート132がストップ位置P1に位置していることで、第1磁石136とてん輪122aとの間の磁力によっててんぷ122全体の回転を規制することができる。そのため、駆動車101の回転を規制することができ、同様に送り車100及びナット部材90の回転を規制することができる。これにより、薬液ポンプ130の作動を停止した状態を維持できる。
従って、例えば本体ケース3を体表面Sに装着した状態のまま、投薬を停止した状態を維持することができる。
【0118】
上述の初期状態から投薬を開始する場合には、制御部142によって第2形状記憶合金ワイヤ141に対してパルス電圧を瞬間的に印加して、第2形状記憶合金ワイヤ141を急激に加熱させる。これにより、
図18に示すように、第2形状記憶合金ワイヤ141を収縮させることができ、揺動プレート132をストップ位置P1からスタート位置P2に向けて揺動させることができる。これにより、第1磁石136をてん輪122aから離すことができると共に、第2磁石138と第2作動面132bとの間の磁力により、揺動プレート132をスタート位置P2に位置決めすることができる。
【0119】
なお、揺動プレート132が磁力によってスタート位置P2に位置決めされた後、第2形状記憶合金ワイヤ141は、放熱されるので収縮した状態から緩んだ状態に移行する。
【0120】
揺動プレート132がスタート位置P2に位置して、第1磁石136がてん輪122aから離れることで、ひげぜんまい121の動力によっててんぷ122の回転を開始させることができると共に、ぜんまい91の動力によって駆動車101の回転を開始させることができる。これにより、輪列機構92を調速した状態で作動させることができるので、送り車100及びナット部材90を回転させて、送りねじ60を前方に向けて所定の速度で移動させることができる。
その結果、第1実施形態と同様に、プランジャ12の移動を調整機構23で調整しながら、駆動力F1に基づいたプランジャ12の前方移動を行うことができ、薬液Wを一定量の吐出量で吐出して、体内に投与することが可能となる。
【0121】
このように、本実施形態の薬液ポンプ130によれば、任意のタイミングで作動を開始させることができるので、例えば
図19に示すように、本体ケース3を装着してから、所定時間PTだけ経過した後に、プランジャ12の移動を開始して薬液Wの連続投与を行うといった使い方を行うことができる。
【0122】
さらには
図20に示すように、薬液Wの連続投与ではなく、断続的な間欠投与を行うことも可能である。
この場合には、先に述べた初期状態から、
図21に示すように、制御部142によって第2形状記憶合金ワイヤ141に対してパルス電圧を瞬間的に印加して、第2形状記憶合金ワイヤ141を収縮させる。これにより、揺動プレート132をストップ位置P1からスタート位置P2に向けて揺動させ、該スタート位置P2に位置決めすることができるので、てんぷ122及び駆動車101の回転を開始させることができる。これにより、上述したように、送りねじ60を前方に向けて所定の速度で移動させることができ、薬液Wを一定量の吐出量で投与することができる。
【0123】
次いで、一定の投与時間が経過した後、制御部142によって第1形状記憶合金ワイヤ140に対してパルス電圧を瞬間的に印加して、第1形状記憶合金ワイヤ140を収縮させる。これにより、揺動プレート132をスタート位置P2からストップ位置P1に向けて揺動させることができる。そのため、第1磁石136とてん輪122aとの間の磁力によって、てんぷ122の回転を停止させることができると共に、揺動プレート132をストップ位置P1に位置決めすることができる。これにより、てんぷ122及び駆動車101の回転を停止させて、薬液ポンプ130の作動を停止させることができるので、薬液Wの投与を停止させることができる。
【0124】
次いで、一定の薬液投与停止時間が経過した後、上述した薬液Wの投与開始及び投与停止を繰り返し行うことで、
図20及び
図21に示すように、時間をあけて複数回(2回目、3回目)の薬液投与を繰り返し行うといった、断続的な間欠投与を行うことができる。
なお、複数回の薬液投与を、時間をあけて繰り返し行う際、例えば
図22に示すように、2回目の投与時間を長くして、薬液Wを変則に投与させる変則投与といった使い方を行うことも可能である。
【0125】
このように、本実施形態の薬液ポンプ130によれば、切換機構131を備えているので、シリンジ10からの薬液Wの吐出タイミングや吐出時間等を調整することが可能となり、非常に使い易く、各種の用途に応じた多様な使い方を行える薬液ポンプ130とすることができる。
【0126】
(第2実施形態の変形例)
上記第2実施形態において、第2磁石138を保持壁部137側に取り付けたが、この場合に限定されるものではなく、例えば第1磁石136と同様に、揺動プレート132の第2作動面132bに第2磁石138を取り付けても構わない。この場合には、保持壁部137側を磁性体とすれば良い。
【0127】
さらに上記第2実施形態では、第1磁石136とてん輪122aとの間の磁力を利用しててんぷ122の回転を規制する構成としたが、磁力を利用する場合に限定されるものではない。例えば、第1磁石136を省略して、第1作動面132aをてん輪122aの外周面に押し付け、第1作動面132aとてん輪122aとの間に作用する摩擦力を利用して、てんぷ122の回転を規制しても構わない。
【0128】
さらに上記第2実施形態では、第1形状記憶合金ワイヤ140及び第2形状記憶合金ワイヤ141の伸縮を利用して揺動プレート132を揺動させた構成としたが、この場合に限定されるものでない。ストップ位置P1とスタート位置P2との間で揺動プレート132を揺動させることができれば、形状記憶合金ワイヤを利用することなく、作動部133を適宜構成して構わない。
【0129】
さらに上記実施形態では、てんぷ122の回転を規制、及びその規制を解除することで、ぜんまい91からナット部材90への動力の伝達の停止と開始とを切り換える構成としたが、てんぷ122を利用する場合に限定されるものではなく、ナット部材90への動力の伝達経路の途中に切換機構131を設ければ良い。この場合であっても、同様の作用効果を奏功することができる。
ただし、てんぷ122は小さな回転トルクで回転する構成部品であるので、てんぷ122の回転を規制するため要する保持力が小さくて済む。従って、切換機構131自体が大型化することを抑制することができると共に、構成の簡略化を図り易い。
【0130】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る薬液ポンプの第3実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第3実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0131】
第1実施形態では、調速機構93ががんぎ車112及びアンクル113等を有する脱進機110、並びにてんぷ122等を有する調速機120を利用して輪列機構92の調速を行ったが、本実施形態では羽根車を利用して輪列機構92の調整を行っている。
【0132】
図23に示すように、本実施形態の薬液ポンプ150は、調速機構151が、第8軸線O8回りに回転可能に配置されたウォーム軸152と、ウォーム軸152の回転に伴って第8軸線O8回りに回転すると共に、ウォーム軸152の回転に回転抵抗を付与する羽根車153と、中間車111の回転に伴って第9軸線O9回りを回転すると共にウォーム軸152を回転させるウォーム車154と、を備えている。
【0133】
ウォーム軸152は、中間車111よりも前方側に配置され、左右方向L3に対して第8軸線O8が平行となるようにベース板20の上面に配置されている。ウォーム軸152の両端部は、ベース板20上に固定された一対の軸受台155によって軸支されている。これにより、ウォーム軸152は、がたつき少なく安定して第8軸線O8回りに回転可能とされている。なお、ウォーム軸152の外周面には、その全長に亘って螺旋状のウォーム溝152aが形成されている。
【0134】
羽根車153は、ウォーム軸152に一体に組み合わされていると共に、一対の羽根板153aを具備している。そのため羽根車153は、ウォーム軸152の回転に伴って羽根車153による空気抵抗を受けながら回転する。これにより羽根車153は、ウォーム軸152の回転に回転抵抗を付与することが可能とされている。なお、羽根板153aの数は、一対に限定されるものではなく、1つでも構わないし、3つ以上の複数であっても構わない。
【0135】
ウォーム車154は、第1実施形態におけるがんぎ車112に代えて配置され、上下方向L1に対して第9軸線O9が平行とされた状態でベース板20の上面に配置されている。ウォーム車154は、中間歯車111bに噛み合う図示しないウォームかなと、ウォーム溝152aに噛み合うウォーム歯車154aとを備えている。これにより、ウォーム車154は、中間車111の回転に伴って第9軸線O9回りを回転すると共に、ウォーム軸152を第8軸線O8回りに回転させることが可能とされている。
【0136】
(薬液ポンプの作用)
上述のように構成された本実施形態の薬液ポンプ150であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。
特に、ぜんまい91の巻き解けによる動力によって駆動車101が回転すると、これに伴って、中間車111及びウォーム車154を回転させることができる。そのため、ウォーム車154の回転に伴ってウォーム軸152を回転させることができると共に、羽根車153を回転させることができる。羽根車153は、ウォーム軸152の回転速度に応じた空気抵抗を、羽根板153aを介して受けるので、ウォーム軸152の回転速度を例えば一定速度に調速することが可能である。
【0137】
その結果、本実施形態の場合であっても、羽根車153による空気抵抗を利用して輪列機構92を調速でき、ぜんまい91の巻き解けによって発生する動力を利用して、送り車100及びナット部材90を所定の回転速度で第1軸線O1回りに回転させることができる。従って、送りねじ60を前方に向けて所定の速度で移動させることができ、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。
【0138】
さらに第1実施形態の場合には、輪列機構92の調速を行うにあたって、てんぷ122の振り石114とアンクル113とが衝突する構成であるので、衝突音が生じてしまう。これに対して、本実施形態の場合には、羽根車153が回転するだけであるので、いわゆる風切り音程度の音しか発生せず、第1実施形態における衝突音に比べて、発生音を小さくすることができる。従って、静音性に優れた薬液ポンプ150とすることができる。
【0139】
(第3実施形態の変形例)
上記第3実施形態において、羽根車153を、例えば所定の粘性を有するシリコンオイル等の粘性流体中で回転するように構成しても構わない。この場合には、羽根車153を、いわゆるオイルロータとして機能させることができ、ウォーム軸152の回転速度に応じた回転抵抗(粘性抵抗)を発生させることができる。従って、この場合であっても、空気抵抗を利用した場合と同様の作用効果を奏功することができる。
【0140】
(第4実施形態)
次に、本発明に係る定量送り機構の第4実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第4実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0141】
第1実施形態では、調速機構93ががんぎ車112及びアンクル113等を有する脱進機110、並びにてんぷ122等を有する調速機120を利用して輪列機構92の調速を行ったが、本実施形態では羽根車を利用して輪列機構の調速を行っている。さらに、切換ぜんまいの巻き解けに伴う動力を利用して羽根車の回転を制御することで、ナット部材90への動力の伝達の停止と開始とを切り換える切換機構を備えている。
【0142】
図24〜
図28に示すように、本実施形態の薬液ポンプ(本発明に係る定量送り機構)200は、送り機構201が、ナット部材90を回転させるための動力を発生させるぜんまい(本発明に係る駆動源)210と、ぜんまい210からの動力をナット部材90に伝達する輪列機構202と、輪列機構202を調速する調速機構203と、を備えている。
【0143】
輪列機構202は、ぜんまい210からの動力によって第10軸線O10回りを回転すると共に、送り車100に噛み合う伝達車211を有している。
【0144】
ぜんまい210は、第2支持部80に一体的に組み合わされた固定プレート212に固定された箱状の収容部213内に収容されている。ぜんまい210は、第1実施形態におけるぜんまい91と同様に機械式時計において利用されるものと同等とされ、渦巻き状に形成されていると共に、巻き解けによって動力を発生させることが可能とされている。
【0145】
ぜんまい210は、その外端部が収容部213の内側に取り付けられていると共に、内端部が収容部213を前後方向に貫く駆動軸部214に係止されている。駆動軸部214は、第10軸線O10と同軸に配置されている。これにより、ぜんまい210の巻き解けによって、駆動軸部214を第10軸線O10回りに回転させることが可能とされている。
【0146】
伝達車211は、収容部213よりも前方側に配設され、第10軸線O10と同軸に配置された連結軸部215に固定されている。連結軸部215は、収容部213内において駆動軸部214に連結されている。これにより、ぜんまい210の巻き解けに伴う動力によって、駆動軸部214及び連結軸部215を介して伝達車211を第10軸線O10回りに回転させることができ、送り車100及びナット部材90を第1軸線回りに回転させることが可能である。
なお、本実施形態では、ナット部材90は第1支持部70と送り車100との間に配置されている。
なお、駆動軸部214のうち収容部213よりも後方側に突出した後端部側を回転させることで、ぜんまい210を縮径させるように巻き上げることが可能とされている。この際、連結軸部215は、駆動軸部214と同一軸の為、駆動軸部214による巻き上げ時に連結軸部215も回転させることができ、プランジャ12を駆動方向と逆方向に戻すことができる。
【0147】
調速機構203は、収容部213の上方に配設され、駆動軸部214の回転に伴って上下方向に平行な軸線回りに回転する第1中間車220と、第1中間車220の回転に伴って回転する第2中間車221と、第2中間車221の回転に伴って回転する第3中間車223と、第3中間車223の回転に伴って前後方向に平行な第11軸線O11回りに回転するウォーム軸224と、ウォーム軸224の回転に伴って第11軸線O11回りに回転すると共に、ウォーム軸224の回転に回転抵抗を付与する羽根車225と、を備えている。
【0148】
第1中間車220は、図示しない傘歯車等を介して駆動軸部214に噛み合っている。これにより、第1中間車220は、第10軸線O10に対して直交する軸線回りに回転可能とされている。なお、第1中間車220と駆動軸部214との間には、ぜんまい210を巻き上げる方向に駆動軸部214を回転させたときに、第1中間車220に対して駆動軸部214を空回りさせ、且つぜんまい210の巻き解けに伴って駆動軸部214が回転したときに、駆動軸部214と第1中間車220とを共回りさせる図示しないクラッチ機構が設けられている。これにより、第1中間車220は、ぜんまい210が巻き解ける場合にのみ回転可能とされている。
【0149】
第2中間車221は、第1中間車220に噛み合う第2中間かな221aと、第2中間歯車221bとを備えている。第3中間車223は、第2中間歯車221bに噛み合う第3中間かな223aと、ウォーム軸224に噛み合う第3中間歯車223bとを備えている。なお、第2中間車221及び第3中間車223は、図示しない連結片を介して固定プレート212に支持されている。
【0150】
ウォーム軸224は、前端部が固定プレート212に回転可能に軸支され、後端部が固定プレート212に取り付けられた連結片226に回転可能に軸支されている。ウォーム軸224の外周面には、その全長に亘って螺旋状のウォーム溝が形成されている。このウォーム溝に、上記第3中間歯車223bが噛み合っている。なお、
図26では、連結片226の図示を省略している。
【0151】
羽根車225は、ウォーム軸224に一体に組み合わされていると共に、一対の羽根板225aを具備している。そのため羽根車225は、ウォーム軸224の回転に伴って羽根板225aによる空気抵抗を受けながら回転する。これにより羽根車225は、ウォーム軸224の回転に回転抵抗を付与することが可能とされている。なお、羽根板225aの数は、一対に限定されるものではなく、1つでも構わないし、3つ以上の複数であっても構わない。
特に、羽根車225は、ウォーム軸224の回転速度に応じた空気抵抗を、羽根板225aを介して受けるので、輪列機構202の全体を調速することが可能とされている。
【0152】
さらに本実施形態の送り機構201は、ぜんまい210からナット部材90への動力の伝達の停止と開始とを切り換える切換機構230を備えている。
切換機構230は、巻き解けによって切換動力を発生させるぜんまい(本発明に係る切換ぜんまい)231と、切換動力によって羽根車225から離間した離間位置P3(
図24参照)と、羽根車225に接触して羽根車225の回転を停止させる停止位置P4(
図24参照)との間を移動する可動ピン(本発明に係る可動部材)232と、を備えている。
【0153】
ぜんまい231は、ベース板20上に固定された箱状の収容部233内に収容されている。ぜんまい231は、第1実施形態におけるぜんまい91と同様に機械式時計において利用されるものと同等とされ、渦巻き状に形成されていると共に、巻き解けによって切換動力を発生させることが可能とされている。
【0154】
ぜんまい231は、その外端部が収容部233の内側に取り付けられていると共に、内端部が収容部233を上下方向に貫く図示しない駆動軸部に係止されている。駆動軸部は、第12軸線O12と同軸に配置されている。これにより、ぜんまい231の巻き解けによって、駆動軸部を第12軸線O12回りに回転させることが可能とされている。
【0155】
なお、ベース板20には、収容部233の下方に位置する部分に、駆動軸部の下端部を収容する図示しない開口部が形成されている。そして、この開口部内に位置する駆動軸部の下端部を回転させることで、ぜんまい231を縮径させるように巻き上げることが可能とされている。
【0156】
駆動軸部には、収容部233よりも上方に突出する連結軸部235が第12軸線O12と同軸に配置されている。連結軸部235は、収容部233内において駆動軸部に連結されている。これにより、ぜんまい231の巻き解けに伴う動力によって駆動軸部及び連結軸部235を第12軸線O12回りに回転させることが可能とされている。なお、連結軸部235には、連結歯車216が固定されている。
【0157】
収容部233と可動ケース31との間には、駆動軸部の回転に伴って左右方向に平行な軸線回りに回転する第1中間車240が配設されている。なお、第1中間車240は、ベース板20に固定された連結片241に軸支されている。
【0158】
第1中間車240は、図示しない傘歯車等を介して駆動軸部に噛み合っている。これにより、第1中間車240は、第12軸線O12に対して直交する軸線回りに回転可能とされている。なお、第1中間車240と駆動軸部との間には、ぜんまい231を巻き上げる方向に駆動軸部を回転させたときに、第1中間車240に対して駆動軸部を空回りさせ、且つぜんまい231の巻き解けに伴って駆動軸部が回転したときに、駆動軸部と第1中間車240とを共回りさせる図示しないクラッチ機構が設けられている。これにより、第1中間車240は、ぜんまい231が巻き解ける場合にのみ回転可能とされている。
【0159】
また、ベース板20上には、第1中間車240の回転に伴って回転する第2中間車242と、第2中間車242の回転に伴って回転する第3中間車243と、第3中間車223の回転に伴って上下方向に平行な第13軸線O13回りに回転するウォーム軸244と、ウォーム軸244の回転に伴って第13軸線O13回りに回転すると共に、ウォーム軸244の回転に回転抵抗を付与する羽根車245と、が設けられている。
【0160】
第2中間車242は、第1中間車240に噛み合う第2中間かな242aと、第2中間歯車242bとを備えている。第3中間車243は、第2中間歯車242bに噛み合う第3中間かなと243aと、ウォーム軸244に噛み合う第3中間歯車243bとを備えている。なお、第2中間車242及び第3中間車243は、図示しない連結片を介してベース板20上に支持されている。
【0161】
ウォーム軸244は、下端部がベース板20に回転可能に軸支され、上端部がベース板20上に取り付けられた連結片246に回転可能に軸支されている。ウォーム軸244の外周面には、その全長に亘って螺旋状のウォーム溝が形成されている。このウォーム溝に、上記第3中間歯車243bが噛み合っている。
【0162】
羽根車245は、ウォーム軸244に一体に組み合わされていると共に、一対の羽根板245aを具備している。そのため羽根車245は、ウォーム軸244の回転に伴って羽根板245aによる空気抵抗を受けながら回転する。これにより羽根車245は、ウォーム軸244の回転に回転抵抗を付与することが可能とされている。なお、羽根板245aの数は、一対に限定されるものではなく、1つでも構わないし、3つ以上の複数であっても構わない。
特に、羽根車245は、ウォーム軸244の回転速度に応じた空気抵抗を、羽根板245aを介して受けるので、連結歯車216を調速することが可能とされている。
【0163】
連結歯車216には、ベース板20に軸支されたカム歯車250が噛み合っている。カム歯車250は、上下方向に平行な第14軸線O14回りを回転可能とされ、連結歯車216に噛み合う被連結歯車251と、被連結歯車251と一体に形成されたカムプレート252と、を備えている。
従って、カム歯車250は、ぜんまい231の巻き解けに伴う動力によって回転し、且つ羽根車245によって回転が調速された連結歯車216の回転に伴って回転可能とされている。
【0164】
カムプレート252は、外径の異なる2つの外周部、すなわち第1外周部252a及び第2外周部252bが周方向に繋がった円板状に形成されている。図示の例では、第1外周部252aの外径は、第2外周部252bよりも大きく形成されている。なお、第1外周部252aにおける周方向の長さと、第2外周部252bにおける周方向の長さとは同等とされている。
ただし、この場合に限定されるものではなく、第1外周部252aにおける周方向の長さと、第2外周部252bにおける周方向の長さとの比率は、適宜変更して構わない。
【0165】
可動ピン232は、固定プレート212を前後方向に貫通する貫通孔212a内に、前後方向L2にスライド移動可能に挿入されている。この際、可動ピン232は、前端部がカムプレート252の後方に位置し、且つ後端部が羽根車225における羽根板225aの前方に位置するように配置されている。なお、可動ピン232の前端面及び後端面は、ともに平坦なフラット面とされている。
【0166】
可動ピン232は、図示しないコイルばね等の付勢部材によって、後方側(カムプレート252側)に向けて常に付勢されている。そのため、可動ピン232の前端部は、カムプレート252における第1外周部252a又は第2外周部252bのいずれかに後方から接触している。
可動ピン232は、前端部が外径の大きい第1外周部252aに接触している場合には、後端部が羽根車225に対して前方から接触し、前端部が外径の小さい第2外周部252bに接触している場合には、後端部が羽根車225に対して離間するように構成されている。
【0167】
従って、可動ピン232の前端部が第1外周部252aに接触する位置が上述した停止位置P4とされ、可動ピン232の前端部が第2外周部252bに接触する位置が上述した離間位置P3とされている。
【0168】
(薬液ポンプの作用)
上述のように構成された本実施形態の薬液ポンプ200であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。
それに加え、本実施形態の場合には、調速機構203及び切換機構230のいずれもがぜんまい210、231を具備しているので、第2実施形態と同様に風切り音程度しか発生せず、静音性に優れた薬液ポンプ200とすることができる。
【0169】
さらに、切換機構230を備えているので、シリンジ10からの薬液Wの吐出タイミングや吐出時間等を調整することが可能となり、非常に使い易く、各種の用途に応じた多様な使い方を行える薬液ポンプ200とすることができる。しかも、切換機構230はぜんまい231の動力を利用して作動するので、電力が不要である。従って、電力を利用せずに薬液Wの吐出タイミング等を制御でき、非常に使い易い薬液ポンプ200とすることができる。
【0170】
詳細に説明する。
図28に示すように、可動ピン232の前端部がカムプレート252における第1外周部252aに接触している場合には、可動ピン232が停止位置P4に位置しているので、可動ピン232の後端部が羽根車225に接触している。そのため、羽根車225を停止させることができ、これに伴って輪列機構202の全体(第1中間車220、第2中間車221及び第3中間車223)を停止させることができる。そのため、伝達車211(輪列機構202)を停止させることができ、送り車100及びナット部材90を停止させた状態に維持することができる。そのため、プランジャ12の移動を停止させて、薬液Wの吐出動作を停止した状態に維持することができる。
【0171】
一方、切換機構230における連結歯車216は、ぜんまい231の巻き解けに伴う動力によって第12軸線O12回りを回転する。この際、連結歯車216は、羽根車245の回転によって調速され、一定の回転速度で回転を行う。そのため、カム歯車250は、連結歯車216の回転に伴って一定の回転速度で第12軸線O12回りを回転する。
【0172】
そして、カム歯車250の回転によって可動ピン232の前端部に接触する部分が第1外周部252aから第2外周部252bに切り替わると、第1外周部252aよりも第2外周部252bの方が、外径が小さいので、可動ピン232が付勢部材による付勢力によって前方側に移動する。これにより、可動ピン232は、前端部が第2外周部252bに接触し、且つ後端部が羽根車225から離間した離間位置P3に移行する。
【0173】
これにより、調速機構203の羽根車225を回転させることができ、輪列機構202を調速しながら、ぜんまい210の巻き解けに伴う動力を、伝達車211を介して送り車100及びナット部材90に伝えることができる。これにより、プランジャ12を定量送りして、薬液Wの吐出を行うことができる。
【0174】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0175】
例えば、上記各実施形態では、薬液ポンプが収容された本体ケースに留置針が設けられた薬液投与装置を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではない。例えば、本体ケースとは別に、留置針を具備するパッチ部を設け、本体ケースとパッチ部とを可撓性のチューブで接続した薬液投与装置としても構わない。
【0176】
さらに上記各実施形態では、送りねじを、可動ケースを介してプランジャに直列に繋げる構成としたが、この場合に限定されるものではなく、例えばプランジャ12に対して、可動ケースと送りねじとが並列に繋がるように構成しても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏功することが可能である。
【0177】
さらに、上記各実施形態では、ナット部材の回転によって送りねじを前方に向けて移動させる、いわゆるリードスクリュー方式を採用したが、この場合に限定されるものではない。
【0178】
例えば
図29に示すように、可動ケース31の後方側に配置されると共に、可動ケース31を介してプランジャ12に連動して移動するラック部(本発明に係る可動体)161と、ラック部161を前方に向けて所定の速度で移動させ、ラック部161を介してプランジャ12に補助力F2を付与させる送り機構162と、を備える調整機構160としても構わない。
送り機構162は、ラック部161におけるラック歯に噛み合うピニオン163と、ピニオン163の回転速度を調速する調速レバー164と、を備えている。
【0179】
この場合には、いわゆるラック・ピニオン方式で調整機構160を構成することができ、この場合であっても同様の作用効果を奏功することができる。なお、この場合において、ピニオン163とラック歯との噛み合い力を反力F3として利用することができる。従って、ピニオン163及びラック部161を制動部165として機能させることができる。
【0180】
さらに
図30に示すように、可動ケース31の後方側に配置されると共に、可動ケース31を介してプランジャ12に連動して移動する可動ロッド(本発明に係る可動体)171と、可動ロッド171を前方に向けて所定の速度で移動させ、可動ロッド171を介してプランジャ12に補助力F2を付与させる送り機構172と、を備える調整機構170としても構わない。
送り機構172は、回転軸線回りに回転することで可動ロッド171を押圧する偏心カム173と、偏心カム173を回転させると共に回転速度を調速する調速部174と、を備えている。
【0181】
この場合には、いわゆるカム方式で調整機構170を構成することができ、同様の作用効果を奏功することができる。なお、この場合においては、可動ロッド171と偏心カム173の周面との摩擦力を反力F3として利用することが可能である。従って、可動ロッド171及び偏心カム173を制動部175として機能させることができる。
【0182】
また、偏心カム173に代えて、例えば回転軸線に対して傾斜した傾斜カムを利用し、傾斜カムの回転によって可動ロッド171を押圧しても構わないし、回転軸線を中心として傾く傾斜レバーによって可動ロッド171を押圧しても構わない。
【0183】
さらに
図31に示すように、可動ケース31の後方側に配置されると共に、可動ケース31を介してプランジャ12に連動して移動する可動ロッド(本発明に係る可動体)181と、可動ロッド181を前方に向けて所定の速度で移動させ、可動ロッド181を介してプランジャ12に補助力F2を付与させる送り機構182と、を備える調整機構180としても構わない。
送り機構182は、可動ロッド181に対してリンクロッド183を介して連結されると共に、回転軸線回りに回転する回転板184を備えている。
【0184】
この場合には、いわゆる歯車方式で調整機構180を構成することができ、同様の作用効果を奏功することができる。なお、この場合においては、例えば回転板184の回転抵抗等を反力F3として利用することが可能である。
【0185】
さらに
図32に示すように、可動ケース31の後方側に配置されると共に、可動ケース31を介してプランジャ12に連動して移動する可動ロッド(本発明に係る可動体)191と、可動ロッド191を前方に向けて所定の速度で移動させ、可動ロッド191を介してプランジャ12に補助力F2を付与させる送り機構192と、を備える調整機構190としても構わない。
送り機構192は、第1ローラ193及び第2ローラ194に巻回され、両ローラ193、194の回転によって所定の速度で移動する駆動ベルト195と、駆動ベルト195に設けられると共に、駆動ベルト195の移動に伴って可動ロッド191を移動させる移動片196と、を備えている。
【0186】
この場合には、いわゆるベルト駆動方式で調整機構190を構成することができ、同様の作用効果を奏功することができる。なお、この場合においては、第1ローラ193及び第2ローラ194と駆動ベルト195との摩擦力を反力F3として利用することが可能である。従って、第1ローラ193、第2ローラ194及び駆動ベルト195を制動部197として機能させることができる。
【0187】
上述のように、
図29〜
図32を参照してプランジャの移動を調整する調整機構の例をそれぞれ説明したが、これらの場合に限定されるものではなく、適宜変更して構わない。
【0188】
さらに上記各実施形態では、渦巻きばねの弾性復元力を駆動力として利用してプランジャを押圧した場合を例に挙げて説明したが、渦巻きばねに限定されるものではない。例えば、板ばね、コイルばね、トーションばね、皿ばね、タケノコばね等、渦巻きばね以外の各種のばね部材の弾性復元力を駆動力として利用しても構わない。
さらには、これらばね部材に限定されるものではなく、例えば圧縮ガスや圧縮液体等の圧縮流体を利用し駆動力を発生させても構わないし、形状記憶合金ワイヤの伸縮を利用して駆動力を発生させても構わないし、磁力による反発力を利用して駆動力を発生させても構わない。
【0189】
さらに、上記2実施形態では、第1形状記憶合金ワイヤ及び第2形状記憶合金ワイヤの伸縮による揺動プレートの揺動を利用して、ぜんまいからナット部材への動力の停止と開始とを切り換えたが、この場合に限定されるものではなく、例えば歯車の噛み合いを利用して動力が開始されるように構成しても構わない。
例えば、ぜんまいからナット部材に動力を伝達する伝達経路の途中に、ぜんまいからの動力に基づいて回転する揺動車と、揺動車が噛み合ったときに、揺動車側からナット部材側に動力を伝える従動車と、所定時間経過後に揺動車を揺動させて従動車に噛み合わせる揺動レバーと、を備えた切換機構としても構わない。
【0190】
この場合には、例えばぜんまいによる動力によって駆動車が回転を開始したとしても、所定時間が経過する前の段階では、ナット部材に動力が伝わることを防止することが可能である。そして、所定時間が経過して、投薬が必要なタイミングに至ったときに、揺動レバーが揺動車を揺動させて従動車に噛み合わせる。これにより、ぜんまいからの動力を、揺動車及び従動車を介してナット部材に伝えることができ、投薬を開始することが可能となる。
従って、第2実施形態と同様の作用効果を奏功することができる。特に、このように構成した場合には、第2実施形態とは異なり、形状記憶合金ワイヤへの通電等といった電力が不要になる。従って、電力を用いることなく、薬液の投薬タイミング等を制御することが可能になる。