特許第6937401号(P6937401)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6937401加熱式エアロゾル発生装置、及び一貫した特性のエアロゾルを発生させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6937401
(24)【登録日】2021年9月1日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】加熱式エアロゾル発生装置、及び一貫した特性のエアロゾルを発生させる方法
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/57 20200101AFI20210909BHJP
【FI】
   A24F40/57
【請求項の数】22
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-28146(P2020-28146)
(22)【出願日】2020年2月21日
(62)【分割の表示】特願2017-23191(P2017-23191)の分割
【原出願日】2013年12月17日
(65)【公開番号】特開2020-74797(P2020-74797A)
(43)【公開日】2020年5月21日
【審査請求日】2020年3月23日
(31)【優先権主張番号】12199708.4
(32)【優先日】2012年12月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】クチャ アルカディウス
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−041654(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/015918(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00−47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱要素による固体エアロゾル形成基材の加熱中に前記固体エアロゾル形成基材の変化に対して補償する方法であって、
前記変化は、前記固体エアロゾル形成基材が温まること及び前記固体エアロゾル形成基材が枯渇することを含み、
複数回のユーザの吸煙にわたり前記加熱要素の加熱を低減させることによって前記固体エアロゾル形成基材が温まることに対して補償する段階と、
前記固体エアロゾル形成基材が温まることに対して補償した後に、複数回の更なるユーザの吸煙にわたり前記加熱要素の加熱を次第に増加させることによって前記固体エアロゾル形成基材が枯渇することに対して補償する段階と、
を備えた方法。
【請求項2】
前記複数回のユーザの吸煙中及び前記複数回の更なるユーザの吸煙中に、一定量のエアロゾル成分が送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エアロゾル成分はニコチンを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数回のユーザの吸煙中及び前記複数回の更なるユーザの吸煙中に送達されるエアロゾルの特性は一貫している、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記特性は、前記エアロゾルの香り、味及び感覚を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記複数回のユーザの吸煙中に送達されるエアロゾルは、前記複数回の更なるユーザの吸煙中に送達されるエアロゾルとほぼ同程度である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記加熱要素の加熱を低減させることは、前記加熱要素に供給される電力を低減させて前記加熱要素の温度を第1の温度に低下させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記加熱要素の加熱を増加させることは、前記加熱要素に供給される電力を増加させて前記加熱要素の温度を前記第1の温度よりも高い第2の温度に高めることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記加熱要素の加熱を低減させることは、前記加熱要素に供給される電流のデューティサイクルを変化させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記加熱要素の加熱を増加させることは、前記加熱要素に供給される前記電流の前記デューティサイクルを更に変化させることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記加熱要素に供給される前記電力は、前記加熱要素の電気抵抗に基づいて制御される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
加熱要素による固体エアロゾル形成基材の加熱中に前記固体エアロゾル形成基材の変化に対して補償するためのシステムであって、
前記変化は、前記固体エアロゾル形成基材が温まること及び前記固体エアロゾル形成基材が枯渇することを含み、
前記システムは、前記加熱要素と、コントローラとを備え、該コントローラは、
複数回のユーザの吸煙にわたり前記加熱要素の加熱を低減させることによって前記固体エアロゾル形成基材が温まることに対して補償する段階と、
前記固体エアロゾル形成基材が温まることに対して補償した後に、複数回の更なるユーザの吸煙にわたり前記加熱要素の加熱を次第に増加させることによって前記固体エアロゾル形成基材が枯渇することに対して補償する段階と、
を含む動作を実行するように構成される、システム。
【請求項13】
前記複数回のユーザの吸煙中及び前記複数回の更なるユーザの吸煙中に、一定量のエアロゾル成分が送達される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記エアロゾル成分はニコチンを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記複数回のユーザの吸煙中及び前記複数回の更なるユーザの吸煙中に送達されるエアロゾルの特性は一貫している、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記特性は、前記エアロゾルの香り、味及び感覚を含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記複数回のユーザの吸煙中に送達されるエアロゾルは、前記複数回の更なるユーザの吸煙中に送達されるエアロゾルとほぼ同程度である、請求項12に記載のシステム。
【請求項18】
前記加熱要素の加熱を低減させることは、前記加熱要素に供給される電力を制御して加熱要素の温度を第1の温度に低下させることを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項19】
前記加熱要素の加熱を増加させることは、前記加熱要素に供給される電力を制御して前記加熱要素の前記温度を前記第1の温度よりも高い第2の温度に高めることを含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記加熱要素の加熱を低減させることは、前記加熱要素に供給される電流のデューティサイクルを変化させることを含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
前記加熱要素の加熱を増加させることは、前記加熱要素に供給される前記電流の前記デューティサイクルを更に変化させることを含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記加熱要素に供給される前記電力は、前記加熱要素の電気抵抗に基づいて制御される、請求項18に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル発生装置、及びエアロゾル形成基材を加熱することによってエアロゾルを発生させる方法に関する。特に、本発明は、エアロゾル形成基材の連続的又は反復的加熱期間にわたって一貫した所望の特性のエアロゾルをエアロゾル形成基材から発生させるための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当業では、エアロゾル形成基材を加熱することによって動作する、例えば加熱式喫煙装置を含むエアロゾル発生装置が知られている。国際公開第2009/118085号には、基材の燃焼を防ぐのに望ましい温度範囲内に温度を制御しながら基材を加熱してエアロゾルを発生させる加熱式喫煙装置が記載されている。
【0003】
エアロゾル発生装置は、時間経過にわたって一貫したエアロゾルを生成できることが望ましい。このことは、加熱式喫煙装置のようにエアロゾルが人間に消費される場合、特に当てはまる。枯渇性の基材が一定時間にわたって連続的又は反復的に加熱される装置では、基材に残っているエアロゾル形成成分の量及び分布、並びに基材の温度の両方に関連して、連続的又は反復的加熱と共にエアロゾル形成基材の特性が大幅に変化する場合があるので、一貫したエアロゾルの生成は困難になり得る。特に、連続的又は反復的加熱装置のユーザは、ニコチンや、場合によっては香味料を伝達するエアロゾル形成体が基材から枯渇するにつれ、エアロゾルの香り、味及び感覚が薄れていくのを体験することがある。従って、動作中に最初に送達されるエアロゾルが最後に送達されるエアロゾルとほぼ同程度になるように、時間経過にわたって一貫したエアロゾル送達を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/118085号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、エアロゾル形成基材の連続的又は反復的加熱期間にわたって特性がより一貫したエアロゾルを提供するエアロゾル発生装置及びシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様では、本開示は、エアロゾル発生装置におけるエアロゾルの発生を制御する方法を提供し、この装置は、
エアロゾル形成基材を加熱するように構成された少なくとも1つの加熱要素を含むヒータと、
加熱要素に電力を供給するための電源と、
を備え、上記方法は、加熱要素に供給される電力を、第1段階において加熱要素の温度が初期温度から第1の温度に上昇するように電力が供給され、第2段階において加熱要素の温度が第1の温度よりも低い第2の温度に低下するように電力が供給され、第3段階において加熱要素の温度が第2の温度よりも高い第3の温度に上昇するように電力が供給されるよう制御するステップを含む。
【0007】
本明細書で使用する「エアロゾル発生装置」は、エアロゾル形成基材と相互作用してエアロゾルを発生させる装置に関連する。エアロゾル形成基材は、例えば喫煙物品の一部などの、エアロゾル発生物品の一部とすることができる。エアロゾル発生装置は、エアロゾル発生物品のエアロゾル形成基材と相互作用して、ユーザの口を通じてユーザの肺に直接吸入できるエアロゾルを発生させる喫煙装置とすることができる。エアロゾル発生装置は、ホルダーとすることができる。
【0008】
本明細書で使用する「エアロゾル形成基材」という用語は、エアロゾルを形成できる揮発性化合物を放出することが可能な基材に関連する。このような揮発性化合物は、エアロゾル形成基材を加熱することによって放出することができる。エアロゾル形成基材は、便宜上、エアロゾル発生物品又は喫煙物品の一部とすることができる。
【0009】
本明細書で使用する「エアロゾル発生物品」及び「喫煙物品」という用語は、エアロゾルを形成できる揮発性化合物を放出することが可能なエアロゾル形成基材を含む物品を意味する。例えば、エアロゾル発生物品は、ユーザの口を通じてユーザの肺に直接吸入できるエアロゾルを発生させる喫煙物品とすることができる。エアロゾル発生物品は、使い捨てとすることができる。以下では、一般に「喫煙物品」という用語を使用する。喫煙物品は、タバコスティックとすることができ、或いはタバコスティックを含むことができる。
【0010】
通常、反復的又は連続的に基材を加熱することによってエアロゾルを発生させる既存のエアロゾル発生装置は、時間経過にわたって単一の一定温度を達成するように制御される。しかしながら、エアロゾル形成基材は加熱によって枯渇し、すなわち基材における主要エアロゾル成分の量が減少し、このことは、所与の温度のエアロゾル発生が減少することを意味する。さらに、エアロゾル形成基材の温度が定常状態に達すると、熱拡散効果が低下することによってエアロゾルの送達が減少する。この結果、加熱式喫煙装置の場合にはニコチンなどの、主要エアロゾル成分に関して測定したエアロゾルの送達が時間と共に減少する。加熱過程の最終段階中に加熱要素の温度を上昇させると、時間経過に伴うエアロゾル送達の減少を軽減又は防止することができる。
【0011】
本文脈では、連続的又は反復的加熱とは、通常は5秒よりも長く、場合によっては30秒よりも長い持続時間にわたって基材又は基材の一部を加熱してエアロゾルを発生させることを意味する。加熱式喫煙装置、又はユーザが吸煙を行って装置からエアロゾルを吸引する他の装置の文脈では、このことが、ユーザが装置の吸煙を行っているか否かに関わらず、ユーザによる複数回の吸煙を含む期間にわたってエアロゾルが連続的に発生するように基材を加熱することを意味する。本文脈では、基材の枯渇が重要な問題になる。このことは、ユーザによる吸煙毎に別個の基材又は基材の一部が加熱され、持続時間が約2〜3秒の長さである1回の吸煙よりも長く基材部分が加熱されない瞬間的加熱とは対照的である。
【0012】
本明細書では、「吸煙」という用語と「吸入」という用語を同義的に使用し、これらは、ユーザが口又は鼻を通じて自分の体内にエアロゾルを吸い込む動作を意味するものである。吸入は、エアロゾルがユーザの肺に吸い込まれた状況、さらにはエアロゾルがユーザの体から排出される前にユーザの口又は鼻腔のみに吸い込まれた状況を含む。
【0013】
第1、第2及び第3段階中に連続的にエアロゾルが発生するように、第1、第2及び第3の温度を選択する。第1、第2及び第3の温度は、基材内に存在するエアロゾル形成体の揮発温度に対応する温度範囲に基づいて決定されることが好ましい。例えば、エアロゾル形成体としてグリセリンを使用する場合には、摂氏290度〜320度以上の温度(すなわち、グリセリンの沸点よりも高い温度)を使用する。第2段階中には、温度が最低許容温度を下回らないことを確実にするための電力を加熱要素に供給することができる。
【0014】
第1段階では、加熱要素の温度を、エアロゾル形成基材からエアロゾルが発生する第1の温度に上昇させる。多くの装置、特に加熱式喫煙装置では、装置の作動後にできるだけ早く所望の成分を含むエアロゾルを発生させることが望ましい。加熱式喫煙装置の消費者体験を満足のいくものにするには、「最初の吸煙までの時間」が極めて重要と考えられる。消費者は、装置が作動してから最初の吸煙までに長い時間待つ必要があることを望まない。このため、第1段階では、加熱要素をできるだけ速く第1の温度に上昇させるための電力を加熱要素に供給することができる。第1の温度は、許容温度範囲内に収まるように選択することができるが、消費者への最初の送達として満足できる量のエアロゾルを発生させるために、最大許容温度の近くを選択することができる。装置の最初の動作時間中には、装置内の凝縮によってエアロゾルの送達が減少する。
【0015】
許容温度範囲は、エアロゾル形成基材に依存する。エアロゾル形成基材は、異なる温度において様々な範囲の揮発性化合物を放出する。エアロゾル形成基材から放出される揮発性化合物の中には、加熱過程を通じてしか形成されないものもある。各揮発性化合物は、固有の放出温度以上で放出される。最大動作温度をいくつかの揮発性化合物の放出温度未満に制御することにより、これらの揮発性化合物の成分の放出又は形成を回避することができる。最大動作温度は、通常の動作条件下では基材の燃焼が起きないことを確実にするように選択することもできる。
【0016】
許容温度範囲は、摂氏240度〜摂氏340度の下限と、摂氏340度〜摂氏400度の上限とを有することができ、好ましくは摂氏340度〜摂氏380度とすることができる。第1の温度は、摂氏340度〜摂氏400とすることができる。第2の温度は、摂氏240度〜摂氏340度、好ましくは摂氏270度〜摂氏340度とすることができ、第3の温度は、摂氏340度〜摂氏400度、好ましくは摂氏340度〜摂氏380度とすることができる。第1、第2及び第3の温度の最大動作温度は、いずれも従来の着火端部付きシガレットに存在する望ましくない化合物の燃焼温度又は約摂氏380度を超えないことが好ましい。
【0017】
第2段階及び第3段階では、加熱要素に供給される電力を制御するステップを、加熱要素の温度を許容温度範囲又は所望の温度範囲内に維持するように行うことが有利である。
【0018】
第1段階から第2段階にいつ遷移すべきか、同様に第2段階から第3段階にいつ遷移すべきかについての決定には多くの可能性がある。1つの実施形態では、第1段階、第2段階及び第3段階の各々が、所定の持続時間を有することができる。この実施形態では、装置の作動後の時間を使用して第2及び第3段階をいつ開始していつ終了するかを決定する。別の例では、加熱要素が第1の目標温度に達したらすぐに第1段階を終了することもできる。さらに別の例では、加熱要素が第1の目標温度に達した後の所定の時間に基づいて第1段階が終了する。別の例では、作動後に加熱要素に送達された総エネルギーに基づいて第1段階及び第2段階を終了することができる。さらに別の例では、装置を、例えば専用の流量センサを用いてユーザによる吸煙を検出するように構成することができ、所定の吸煙回数後に第1及び第2段階を終了することができる。これらの選択肢の組み合わせを用いて、いずれか2つの段階の遷移に適用できることが明らかであろう。加熱要素の動作段階が3つよりも多くの異なるものであってよいことも明らかであろう。
【0019】
第1段階が終了すると第2段階が開始し、加熱要素の温度が第1の温度よりも低い温度ではあるが許容温度範囲内の第2の温度に低下するように加熱要素への電力を制御する。この加熱要素の温度の低下が望ましい理由は、装置及び基材が温まると、所定の加熱要素の温度で凝縮が抑えられてエアロゾルの送達が増加するからである。第1段階後には、基材が燃焼する可能性を抑えるためにも加熱要素の温度を低下させることが望ましい。また、加熱要素の温度を低下させると、エアロゾル発生装置が消費するエネルギーの量も減少する。さらに、装置の動作中に加熱要素の温度を変化させることにより、時間変調型の温度勾配を基材に導入できるようになる。
【0020】
第3段階では、加熱要素の温度を上昇させる。第3段階中には、基材がますます枯渇するにつれて継続的に温度を高めることが望ましい。第3段階中に加熱要素の温度を上昇させることにより、基材の枯渇及び熱拡散の低下に起因するエアロゾル送達の減少が補償される。しかしながら、第3段階中における加熱要素の温度の上昇は、あらゆる所望の時間的プロファイルを有することができ、装置及び基材の形状、機材の組成、並びに第1及び第2段階の持続時間に依存することができる。加熱要素の温度は、第3段階全体を通じて許容範囲内に保たれることが望ましい。1つの実施形態では、加熱要素への電力を制御するステップが、第3段階中に加熱要素の温度を継続的に上昇させるように行われる。
【0021】
加熱要素への電力を制御するステップは、加熱要素の温度又は加熱要素の近くの温度を測定して測定温度を提供し、測定温度と目標温度の比較を行い、この比較結果に基づいて、加熱要素に供給する電力を調整するステップを含むことができる。目標温度は、装置の作動後の第1、第2及び第3段階がもたらされる時間と共に変化することが好ましい。例えば、第1段階中には、目標温度を第1の目標温度とすることができ、第2段階中には、目標温度を第2の目標温度とすることができ、第3段階中には、目標温度を第3の目標温度とすることができ、第3の目標温度は時間と共に次第に上昇する。目標温度は、第1、第2及び第3の動作段階の制約範囲内であらゆる所望の時間的プロファイルを有するように選択できることが明らかであろう。
【0022】
加熱要素は、電気抵抗性加熱要素とすることができ、加熱要素に供給される電力を制御ステップは、加熱要素の電気抵抗を測定し、この測定した電気抵抗に依存して加熱要素に供給される電流を調整するステップを含むことができる。加熱要素の電気抵抗は加熱要素の温度を示し、従って測定された電気抵抗を目標電気抵抗と比較し、これに応じて供給電力を調整することができる。測定温度を目標温度に導くためには、PID制御ループを使用することができる。さらに、加熱要素の電気抵抗を検出する以外に、バイメタル板、熱電対又は専用サーミスタ、或いは加熱要素から電気的に分離された電気抵抗素子などの、温度を検知するための機構を使用することもできる。これらの選択的な温度検知機構は、加熱要素の電気抵抗をモニタすることによる温度測定に加えて、又はその代わりに使用することができる。例えば、加熱要素の温度が許容温度範囲を超えた時に加熱要素への電力を削減するための制御機構内で別個の温度検知機構を使用することができる。
【0023】
方法は、エアロゾル形成基材の特性を識別するステップをさらに含むことができる。その後、この識別された特性に依存して、電力を制御するステップを調整することができる。例えば、異なる基材には異なる目標温度を使用することができる。
【0024】
本発明の第2の態様では、電気作動式エアロゾル発生装置を提供し、この装置は、
エアロゾル形成基材を加熱してエアロゾルを発生させるように構成された少なくとも1つの加熱要素と、
加熱要素に電力を供給するための電源と、
電源から少なくとも1つの加熱要素への電力の供給を制御するための電気回路と、
を備え、この電気回路は、加熱要素に供給される電力を、第1段階において加熱要素の温度が初期温度から第1の温度に上昇し、第2段階において加熱要素の温度が第1の温度未満に低下し、第3段階において加熱要素の温度が再び上昇し、第1、第2及び第3段階中に継続的に電力が供給されるように制御するよう構成される。
【0025】
各段階の持続時間及び各段階中の加熱要素の温度についての選択肢は、第1の態様に関連して説明した通りである。電気回路は、第1段階、第2段階及び第3段階の各々が一定の持続時間を有するように構成することができる。電気回路は、加熱要素に供給される電力を、第3段階中に加熱要素の温度が継続的に上昇するように制御するよう構成することができる。
【0026】
この回路は、加熱要素に電力を電流パルスとして供給するように構成することができる。そして、加熱要素に供給される電力は、電流のデューティサイクルを調整することによって調整することができる。このデューティサイクルは、パルス幅又はパルスの周波数、或いはこれらの両方を変更することによって調整することができる。或いは、この回路を、加熱要素に電力を連続DC信号として供給するように構成することもできる。
【0027】
電気回路は、加熱要素の温度又は加熱要素の近くの温度を測定して測定温度を提供するように構成された温度検知手段を含むことができるとともに、測定温度と目標温度の比較を行い、この比較に基づいて、加熱要素に供給される電力を調整するように構成することができる。目標温度は、電子メモリに記憶することができ、装置の作動後の第1、第2及び第3段階がもたらされる時間と共に変化することが好ましい。
【0028】
温度検知手段は、サーミスタなどの専用電気部品、又は加熱要素の電気抵抗に基づいて温度を測定するように構成された回路とすることができる。
【0029】
電気回路は、装置内のエアロゾル形成基材の特性を識別する手段と、電力制御命令及び対応するエアロゾル形成基材の特性のルックアップテーブルを保持するメモリとをさらに含むことができる。
【0030】
本発明の第1及び第2の態様では、いずれも加熱要素が電気抵抗材料を含むことができる。好適な電気抵抗材料としては、以下に限定されるわけではないが、ドープセラミック、(例えば二珪化モリブデンなどの)「導電性」セラミック、炭素、黒鉛、金属、金属合金、及びセラミック材料と金属材料から成る複合材料などの半導体が挙げられる。このような複合材料は、ドープセラミック又は非ドープセラミックを含むことができる。好適なドープセラミックの例としては、ドープ炭化珪素が挙げられる。好適な金属の例としては、チタン、ジルコニウム、タンタル、白金、金及び銀が挙げられる。好適な金属合金の例としては、ステンレス鋼、ニッケル含有合金、コバルト含有合金、クロム含有合金、アルミニウム含有合金、チタン含有合金、ジルコニウム含有合金、ハフニウム含有合金、ニオブ含有合金、モリブデン含有合金、タンタル含有合金、タングステン含有合金、スズ含有合金、ガリウム含有合金、マンガン含有合金、金含有合金及び鉄含有合金、及びニッケル、鉄、コバルト、ステンレス鋼、Timetal(登録商標)に基づく超合金、並びに鉄−マンガン−アルミニウム基合金が挙げられる。複合材料では、エネルギー伝達の動力学及び必要な外部的物理化学的特性に依存して、任意に電気抵抗材料を絶縁材料に埋め込み、又は絶縁材料で封入又は被膜することができ、或いはこの逆も可能である。
【0031】
本発明の第1及び第2の態様では、いずれもエアロゾル発生装置が、内部加熱要素又は外部加熱要素、或いはこれらの両方を含むことができ、この場合、「内部」及び「外部」はエアロゾル形成基材に関するものである。内部加熱要素は、あらゆる好適な形をとることができる。例えば、内部加熱要素は、加熱ブレードの形をとることができる。或いは、この内部ヒータは、異なる導電性部分を有するケーシング又は基材、或いは電気抵抗性金属チューブの形をとることもできる。或いは、内部加熱要素は、エアロゾル形成基材の中心を通る1又はそれ以上の加熱針又はロッドとすることもできる。他の選択肢としては、例えば、Ni−Cr(ニッケルクロム)、白金、タングステン、又は合金ワイヤなどの加熱ワイヤ又はフィラメント、或いは加熱プレートが挙げられる。任意に、内部加熱要素は、剛性キャリア材料内又は剛性キャリア材料上に堆積させることもできる。このような1つの実施形態では、規定の温度−抵抗率関係を有する金属を用いて電気抵抗性加熱要素を形成することができる。このような例示的な装置では、セラミック材料などの好適な絶縁材料上のトラックとして金属を形成し、ガラスなどの別の絶縁材料に挟み込むことができる。このようにして形成したヒータを用いて、動作中に加熱要素の加熱と温度のモニタの両方を行うことができる。
【0032】
外部加熱要素は、あらゆる好適な形をとることができる。例えば、外部加熱要素は、ポリイミドなどの誘電体基板上の1又はそれ以上の可撓性加熱ホイルの形をとることができる。この可撓性ホイルは、基材受け入れキャビティの外周に適合するように成形することができる。或いは、外部加熱要素は、1又は複数の金属グリッド、フレキシブル回路基板、成形相互接続デバイス(MID)、セラミックヒータ、可撓性炭素繊維ヒータの形をとることもでき、或いはプラズマ蒸着などのコーティング技術を用いて好適な成形基板上に形成することもできる。外部加熱要素は、規定の温度−抵抗率関係を有する金属を用いて形成することもできる。このような例示的な装置では、この金属を2つの好適な絶縁材料の層間のトラックとして形成することができる。このようにして形成した外部加熱要素を用いて、動作中に外部加熱要素の加熱と温度のモニタの両方を行うことができる。
【0033】
内部又は外部加熱要素は、ヒートシンク、又は熱を吸収して蓄えた後に時間と共にエアロゾル形成基材に熱を放出できる材料を含む蓄熱体を含むことができる。ヒートシンクは、好適な金属又はセラミック材料などのあらゆる好適な材料で形成することができる。1つの実施形態では、この材料が高熱容量を有し(顕熱蓄熱材)、又は熱を吸収した後に高温相変化などの可逆過程を通じて熱を放出できる材料である。好適な顕熱蓄熱材としては、シリカゲル、アルミナ、炭素、ガラスマット、ガラス繊維、鉱物類、アルミニウムや銀又は鉛などの金属又は合金、及び紙などのセルロース材料が挙げられる。可逆相変化を通じて熱を放出する他の好適な材料としては、パラフィン、酢酸ナトリウム、ナフタレン、蝋、ポリエチレンオキシド、金属、金属塩、共晶塩の混合物、又は合金が挙げられる。ヒートシンク又は蓄熱体は、エアロゾル形成基材と直接接触して、蓄えた熱を直接基材に伝達できるように構成することができる。或いは、ヒートシンク又は蓄熱体に蓄えられた熱は、金属チューブなどの熱導体を用いてエアロゾル形成基材に伝達することもできる。
【0034】
加熱要素は、熱伝導によってエアロゾル形成基材を加熱することが有利である。加熱要素は、基材、又は基材が堆積された担体と少なくとも部分的に接触することができる。或いは、内部又は外部加熱要素のいずれかからの熱を、熱伝導要素によって基材に伝導することもできる。
【0035】
本発明の第1及び第2の態様では、いずれも動作中にエアロゾル形成基材をエアロゾル発生装置に完全に収容することができる。この場合、ユーザは、エアロゾル発生装置のマウスピースを吹かすことができる。或いは、動作中、エアロゾル形成基材を含む喫煙物品をエアロゾル発生装置に部分的に収容することもできる。この場合、ユーザは、喫煙物品を直接吹かすことができる。加熱要素は、装置のキャビティ内に位置することができ、このキャビティは、使用時に加熱要素がエアロゾル形成基材内に存在するようにエアロゾル形成基材を受け入れるよう構成される。
【0036】
喫煙物品は、実質的に円筒形状とすることができる。喫煙物品は、実質的に細長とすることができる。喫煙物品は、長さと、この長さに対して実質的に垂直な外周とを有することができる。エアロゾル形成基材は、実質的に円筒形状とすることができる。エアロゾル形成基材は、実質的に細長とすることができる。エアロゾル形成基材も、長さと、この長さに対して実質的に垂直な外周とを有することができる。
【0037】
喫煙物品は、約30mm〜約100mmの全長を有することができる。喫煙物品は、約5mm〜約12mmの外径を有することができる。喫煙物品は、フィルタプラグを含むことができる。フィルタプラグは、喫煙物品の下流端に位置することができる。フィルタプラグは、セルロースアセテートフィルタプラグとすることができる。フィルタプラグは、1つの実施形態では長さが約7mmであるが、約5mm〜約10mmの長さを有することができる。
【0038】
1つの実施形態では、喫煙物品が、約45mmの全長を有する。喫煙物品は、約7.2mmの外径を有することができる。さらに、エアロゾル形成基材は、約10mmの長さを有することができる。或いは、エアロゾル形成基材は、約12mmの長さを有することができる。さらに、エアロゾル形成基材の直径は、約5mm〜約12mmとすることができる。喫煙物品は、外側紙ラッパを含むことができる。さらに、喫煙物品は、エアロゾル形成基材とフィルタプラグの間に分離距離を有することができる。この分離距離は、約18mmとすることができるが、約5mm〜約25mmであってよい。この分離距離は、エアロゾルが喫煙物品内を基材からフィルタプラグに通過する際にエアロゾルを冷却する熱交換器によって喫煙物品内で満たされることが好ましい。熱交換器は、例えば、皺寄せしたPLA材料などの高分子フィルタとすることができる。
【0039】
本発明の第1及び第2の態様では、いずれもエアロゾル形成基材を固体エアロゾル形成基材とすることができる。或いは、エアロゾル形成基材は、固体成分と液体成分の両方を含むこともできる。エアロゾル形成基材は、加熱時に基材から放出される揮発性タバコ香味化合物を含むタバコ含有材料を含むことができる。或いは、エアロゾル形成基材は、非タバコ材料を含むこともできる。エアロゾル形成基材は、エアロゾル形成体をさらに含むことができる。好適なエアロゾル形成体の例には、グリセリン及びプロピレングリコールがある。
【0040】
エアロゾル形成基材が固体エアロゾル形成基材である場合、固体エアロゾル形成基材は、例えば、ハーブ葉、タバコ葉、タバコ茎の断片、再構成タバコ、均質化タバコ、抽出タバコ、成型葉タバコ及び膨張タバコのうちの1つ又はそれ以上を含む粉末、顆粒、ペレット、小片、細糸、条片又はシートのうちの1つ又はそれ以上を含むことができる。固体エアロゾル形成基材は、バラバラの形であっても、又は好適な容器又はカートリッジに入れて提供することもできる。任意に、固体エアロゾル形成基材は、基材の加熱時に放出される追加のタバコ又は非タバコ揮発性香味化合物を含むこともできる。固体エアロゾル形成基材は、追加のタバコ又は非タバコ揮発性香味化合物を含むカプセルを含むこともでき、このようなカプセルは、固体エアロゾル形成基材の加熱中に溶解することができる。
【0041】
本明細書で使用する均質化タバコとは、粒子状タバコを塊にすることによって形成される材料を意味する。均質化タバコは、シートの形をとることができる。均質化タバコ材料は、5乾燥重量%を上回るエアロゾル形成体含有量を有することができる。或いは、均質化タバコ材料は、5〜30乾燥重量%のエアロゾル形成体含有量を有することもできる。均質化タバコ材料のシートは、タバコ葉の葉身とタバコ葉の茎の一方又は両方をすり潰し又は別様に粉砕することによって得られる粒子状タバコを塊にすることによって形成することができる。これとは別に、又はこれに加えて、均質化タバコ材料のシートは、例えばタバコの処理、取り扱い及び出荷中に副産物として形成されるタバコくず、タバコ粉末及びその他の粒子状タバコのうちの1つ又はそれ以上を含むこともできる。均質化タバコ材料のシートは、粒子状タバコを塊にする支援となるように、タバコの内部を発生源とする1又はそれ以上の内因性バインダ、タバコの外部を発生源とする1又はそれ以上の外因性バインダ、又はこれらの組み合わせを含むことができ、またこれとは別に、又はこれに加えて、均質化タバコ材料のシートは、以下に限定されるわけではないが、タバコ及び非タバコ繊維、エアロゾル形成体、保湿剤、可塑剤、香味料、充填剤、水性及び非水性溶媒、並びにこれらの組み合わせを含む他の添加物を含むこともできる。
【0042】
任意に、固体エアロゾル形成基材は、熱的に安定した担体上に提供し、又はこの担体に埋め込むことができる。この担体は、粉末、顆粒、ペレット、小片、細糸、条片又はシートの形をとることができる。或いは、この担体は、その内面又は外面、或いはこれらの両方に固体基材の薄層が堆積した管状担体とすることもできる。このような管状担体は、例えば、用紙又は用紙状材料、不織性炭素繊維マット、低質量網目金属スクリーン又は有孔金属ホイル、或いは他のいずれかの熱的に安定した高分子マトリックスで形成することができる。
【0043】
固体エアロゾル形成基材は、例えば、シート、泡、ゲル又はスラリの形で担体の表面に堆積させることができる。固体エアロゾル形成基材は、担体の表面全体に堆積させることもでき、或いは使用中に不均一な香味送達が行われるように一定パターンで堆積させることもできる。
【0044】
以上、固体エアロゾル形成基材について言及したが、当業者には、他の実施形態では他の形のエアロゾル形成基材を使用できることが明らかであろう。例えば、エアロゾル形成基材は、液体エアロゾル形成基材であってもよい。液体エアロゾル形成基材を提供する場合、エアロゾル発生装置は、液体を保持する手段を有することが好ましい。例えば、液体エアロゾル形成基材は、容器内に保持することができる。これとは別に、又はこれに加えて、液体エアロゾル形成基材を多孔性担体材料に吸収させることもできる。多孔性担体材料は、例えば、発泡金属又はプラスチック材料、ポリプロピレン、テリレン、ナイロン繊維又はセラミックなどのあらゆる好適な吸収プラグ又は吸収体から形成することができる。液体エアロゾル形成基材は、エアロゾル発生装置の使用前に多孔性担体材料内に保持することができ、或いは、液体エアロゾル形成基材材料を使用中又は使用直前に多孔性担体材料内に放出することもできる。例えば、液体エアロゾル形成基材は、カプセルに入れて提供することができる。カプセルの殻は、加熱時に溶解して、液体エアロゾル形成基材を多孔性担体材料内に放出することが好ましい。カプセルは、任意に液体と組み合わせて固体を含むこともできる。
【0045】
或いは、この担体は、タバコ成分が組み込まれた不織布又は繊維束とすることもできる。この不織布又は繊維束は、例えば、炭素繊維、天然セルロース繊維又はセルロース派生繊維を含むことができる。
【0046】
本発明の第1及び第2の態様では、いずれもエアロゾル発生装置が、加熱要素に電力を供給するための電源をさらに備えることができる。この電源は、例えばDC電圧源などのあらゆる好適な電源とすることができる。1つの実施形態では、電源がリチウムイオン電池である。或いは、電源は、ニッケル水素電池、ニッカド電池、又は、例えばリチウムコバルト電池、リン酸鉄リチウム電池、チタン酸リチウム電池又はリチウムポリマー電池などのリチウムベースの電池とすることができる。
【0047】
本発明の第3の態様では、本発明の第1の態様の方法を実行するように構成された、電気作動式エアロゾル発生装置のための電気回路を提供する。
【0048】
本発明の第4の態様では、電気作動式エアロゾル発生装置のためのプログラム可能な電気回路上で実行された時に、このプログラム可能な電気回路に本発明の第1の態様の方法を実行させるコンピュータプログラムを提供する。本発明の第5の態様では、本発明の第4の態様によるコンピュータプログラムを記憶したコンピュータ可読記憶媒体を提供する。
【0049】
異なる態様を参照しながら本開示について説明したが、本開示の1つの態様に関連して説明した特徴を、本開示の他の態様にも適用できることが明らかであろう。
【0050】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態をほんの一例として詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本発明による電気加熱式喫煙装置の概略図である。
図2図1に示すタイプの装置の第1の実施形態の前端部の概略断面図である。
図3】加熱要素の平坦な温度プロファイルの概略図である。
図4】平坦な温度プロファイルによってエアロゾル送達が減少している概略図である。
図5】本発明の実施形態による加熱要素の温度プロファイルの概略図である。
図6】本発明の実施形態による一定したエアロゾル送達の概略図である。
図7】本発明の1つの実施形態による、加熱要素の温度調整を行うために使用する制御回路を示す図である。
図8】本発明によるいくつかの別の目標温度プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1に、電気加熱式エアロゾル発生装置100の実施形態の構成要素を単純化した形で示す。詳細には、図1では、電気加熱式エアロゾル発生装置100の要素を縮尺通りに示していない。図1では、本実施形態の理解と関係のない要素については単純化のために省略している。
【0053】
電気加熱式エアロゾル発生装置100は、ハウジング10と、例えばシガレットなどのエアロゾル形成基材12とを備える。エアロゾル形成基材12は、ハウジング10の内部に押し込まれて加熱要素14と熱的に近接する。エアロゾル形成基材12は、異なる温度において様々な範囲の揮発性化合物を放出する。電気加熱式エアロゾル発生装置100の動作温度をいくつかの揮発性化合物の放出温度未満になるように制御することにより、これらの揮発性化合物の成分の放出又は形成を回避することができる。
【0054】
ハウジング10内には、例えば充電式リチウムイオン電池などの電気エネルギー供給源16が存在する。加熱要素14、電気エネルギー供給源16、及び、例えばボタン又はディスプレイなどのユーザインターフェイス20には、コントローラ18が接続される。コントローラ18は、加熱要素14の温度を調整するために、加熱要素14に供給される電力を制御する。通常、エアロゾル形成基材は、摂氏250度〜摂氏450度の温度に加熱される。
【0055】
説明する実施形態では、加熱要素14が、セラミック基板上に堆積された1又は複数の電気抵抗トラックである。セラミック基板はブレードの形をとり、使用時にはエアロゾル形成基材12に挿入される。図2は、装置の前端部の概略図であり、装置内を流れる空気流を示している。なお、図2では、装置の要素の相対的寸法を正確に示していない。エアロゾル形成基材12を含む喫煙物品102は、装置100のキャビティ22内に受け入れられる。装置内には、ユーザが喫煙物品102のマウスピース24を吸引する動作によって空気が吸い込まれる。空気は、ハウジング10の近位面を形成する入口26を通じて吸い込まれる。装置内に吸い込まれた空気は、キャビティ22の外側周囲の空気チャネル28を通過する。吸い込まれた空気は、キャビティ22内に設けられたブレード状の加熱要素14の近位端に隣接する喫煙物品102の遠位端においてエアロゾル形成基材12に入り込む。吸い込まれた空気は、エアロゾル形成基材12内を進み、エアロゾルを同伴して、喫煙物品102の唇側端部に至る。エアロゾル形成基材12は、タバコベースの材料の円筒形プラグである。
【0056】
図3に示すように、現行のエアロゾル発生装置は、動作中に一定の温度をもたらすように構成されている。装置の作動後には、目標温度50に達するまで加熱要素に電力が供給される。目標温度50に達すると、加熱要素は、装置が停止するまでこの温度に維持される。図4は、図3に示す平坦な温度プロファイルを用いた主要エアロゾル成分の送達を示す概略図である。線52は、装置の作動中に送達されるグリセロール又はニコチンなどの主要エアロゾル成分の量を表す。成分の送達はピークを迎え、その後、基材が枯渇して熱拡散効果が弱まるにつれ、時間と共に低下することが分かる。
【0057】
図5は、本発明の実施形態による加熱要素の温度プロファイルの概略図である。線60は、経時的な加熱要素の温度を表す。
【0058】
第1段階70では、加熱要素の温度が大気温度から第1の温度62に上昇する。温度62は、最低温度66と最高温度68の間の許容温度範囲内にある。許容温度変化は、基材から所望の揮発性化合物は揮発するものの、さらなる高温で揮発する望ましくない化合物は揮発しないように設定される。また、許容温度範囲は、通常の動作条件下、すなわち通常の温度、圧力、湿度、ユーザの吸煙動作及び空気組成で基材の燃焼が生じ得る温度未満でもある。
【0059】
第2段階72では、加熱要素の温度が第2の温度に低下する。第2の温度は、許容温度範囲内にあるが、第1の温度よりも低い。
【0060】
第3段階74では、加熱要素の温度が、停止時間76まで次第に上昇する。加熱要素の温度は、第3段階全体を通じて許容温度範囲内に保たれる。
【0061】
図6は、図5に示す加熱要素の温度プロファイルによる主要エアロゾル成分の送達プロファイルの概略図である。加熱要素の作動後の初期送達増加後、送達は、加熱要素が停止するまで一定を保つ。第3段階における温度の上昇が、基材のエアロゾル形成体の枯渇を補償する。
【0062】
図7には、本発明の1つの実施形態による、説明した温度プロファイルを実現するために使用する制御回路を示す。
【0063】
ヒータ14は、接続部42を介して電池に接続される。この電池(図7には図示せず)は、電圧V2を供給する。加熱要素14と直列に、既知の抵抗rのさらなる抵抗器44が挿入され、接地と電圧V2の中間の電圧V1に接続される。電流の周波数変調はマイクロコントローラ18によって制御され、そのアナログ出力47を介して、単純なスイッチとして機能するトランジスタ46に送達される。
【0064】
この調整は、マイクロコントローラ18に組み込まれたソフトウェアの一部であるPIDレギュレータに基づく。加熱要素の温度(又は温度の指示)は、加熱要素の電気抵抗を測定することによって求められる。加熱要素を目標温度に保持するために、又は加熱要素の温度を目標温度に向けて調整するために、この求められた温度を用いて、加熱要素に供給される電流のパルスのデューティサイクル(この例では周波数変調)を調整する。温度は、デューティサイクルの制御に適合するように選択された頻度で求められ、100ms毎に1回の頻度で求めることができる。
【0065】
マイクロコントローラ18へのアナログ入力48は、抵抗44の電圧を収集するために使用されるとともに、加熱要素を流れる電流の画像を提供する。バッテリ電圧V+及び抵抗器44の電圧を使用して、加熱要素の抵抗変動及び/又はその温度を計算する。
【0066】
特定の温度で測定されるヒータの抵抗をRheaterとする。マイクロプロセッサ18がヒータ14の抵抗Rheaterを測定するには、ヒータ14の電流及びヒータ14の電圧の両方を求めればよい。この結果、以下の周知の式を用いて抵抗を求めることができる。
(1)
【0067】
図6では、ヒータの電圧がV2−V1であり、ヒータの電流がIである。従って、以下の式が得られる。
(2)
【0068】
抵抗rが既知であるさらなる抵抗器44を用いて、再び上記の(1)を使用して電流Iを求める。抵抗器44の電流はIであり、抵抗器24の電圧はV1である。従って、以下の式が得られる。
(3)
【0069】
よって、(2)と(3)を組み合わせると、以下の式が得られる。
(4)
【0070】
このように、マイクロプロセッサ18は、エアロゾル発生システムが使用されている時にV2及びV1を測定することができ、rの値が既知であることにより、特定の温度におけるヒータの抵抗Rheaterを求めることができる。
【0071】
ヒータの抵抗は、温度と相関性がある。線形近似を用いて、温度Tと、温度Tにおいて測定値された抵抗Rheaterとを以下の式に従って関連付けることができる。
(5)
式中、Aは、加熱要素材料の熱抵抗率係数であり、R0は、室温T0における加熱要素の抵抗である。
【0072】
単純な線形近似が動作温度の範囲にわたって十分でない場合、抵抗と温度の関係を近似させるための他のさらに複雑な方法を使用することもできる。例えば、別の実施形態では、各々が異なる温度範囲をカバーする2又はそれ以上の線形近似の組み合わせに基づいて関係を導出することができる。このスキームは、ヒータの抵抗を測定する3又はそれ以上の温度校正点に依拠する。これらの校正点の中間の温度では、校正点の値から抵抗値が補間される。校正点温度は、動作中のヒータの予想温度範囲をカバーするように選択される。
【0073】
これらの実施形態の利点は、大型で高価になり得る温度センサを必要としない点である。また、PIDレギュレータが、温度の代わりに直接抵抗値を使用することができる。この抵抗値が、方程式(5)に示すように加熱要素の温度に直接相関付けられる。従って、測定した抵抗値が所望の範囲内である場合、加熱要素の温度も所望の範囲内である。従って、実際の加熱要素の温度を計算する必要がない。しかしながら、別個の温度センサを用いてマイクロコントローラに接続し、必要な温度情報を提供することも可能である。
【0074】
図8に、3つの動作段階をはっきりと確認できる目標温度プロファイルの例を示す。第1段階70では、目標温度がT0に設定される。加熱要素の温度をできるだけ速くT0に上昇させるように加熱要素に電力を供給する。上述したように、PIDレギュレータを用いて、装置の動作全体を通じて加熱要素の温度をできるだけ目標温度の近くに保持する。時刻t1において目標温度がT1に変化しており、これは第1段階70が終了して第2段階が開始したことを意味する。目標温度は、時刻t2までT1に維持される。時刻t2において、第2段階が終了して第3段階74が開始する。第3段階74中には、目標温度が時刻t3まで時間の増加と共に線形的に上昇し、時刻t3において目標温度がT2になり、これ以上加熱要素に電力が供給されなくなる。
【0075】
図8に示す形状の目標温度プロファイルは、図5に示す形状の実際の温度プロファイルをもたらす。T0、T1、T2の値は、特定の基材及び特定の装置、加熱要素及び基材形状に適するように調整することができる。同様に、t1、t2及びt3の値も、状況に適するように選択することができる。
【0076】
1つの例では、第1段階が45秒の長さであってT0が360℃に設定され、第2段階が145秒の長さであってT1が320℃であり、第3段階が170秒の長さであってT2が380℃である。喫煙体験は、合計360秒にわたって続く。
【0077】
別の例では、第1段階が60秒の長さであってT0が340℃に設定され、第2段階が180秒の長さであってT1が320℃であり、第3段階が120秒の長さであってT2が360℃である。この場合も、加熱サイクル又は喫煙体験は、合計360秒にわたって続く。
【0078】
さらに別の例では、第1段階が30秒の長さであってT0が380℃に設定され、第2段階が110秒の長さであってT1が300℃であり、第3段階が220秒の長さであってT2が340℃である。
【0079】
各動作段階の持続時間及び温度目標は、コントローラ18内のメモリに記憶される。この情報は、マイクロコントローラによって実行されるソフトウェアの一部とすることができる。一方、この情報は、マイクロコントローラが異なるプロファイルを選択できるようにルックアップテーブルに記憶することもできる。消費者は、ユーザの好み又は加熱する特定の基材に基づいて、ユーザインターフェイスを介して異なるプロファイルを選択することができる。装置は、光学リーダなどの基材識別手段、及び識別された基材に基づいて自動的に選択される加熱プロファイルを含むことができる。
【0080】
別の実施形態では、目標温度T0、T1及びT2のみがメモリに記憶され、各段階間の遷移が吸煙回数によって引き起こされる。例えば、マイクロコントローラは、流量センサから吸煙回数データを受け取ることができ、2回の吸煙後に第1段階を終了し、さらなる5回の吸煙後に第2段階を終了するように構成することができる。
【0081】
上述した実施形態の各々では、図3に示す平坦な加熱プロファイルと比較した場合、基材の加熱中にエアロゾルがより均等に送達されるようになる。最適な加熱プロファイルは複数の要因に依存し、所与の装置、基材の形状及び基材の組成に関して実験的に求めることができる。例えば、装置は、1つよりも多くの加熱要素を含むことができ、加熱要素の構成は、基材の枯渇及び熱拡散効果に影響を与える。各加熱要素は、異なる加熱プロファイルを有するように制御することができる。加熱要素に対する基材の形状及びサイズも重要な因子である。
【0082】
上述の例示的な実施形態は例示的なものであって限定的なものではないことが明らかであろう。上述した例示的な実施形態を考慮すれば、当業者には、これらの例示的な実施形態に従う他の実施形態が既に明らかであろう。
【符号の説明】
【0083】
60 線
62 第1の温度
66 最低温度
68 最高温度
70 第1段階
72 第2段階
74 第3段階
76 停止時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8