特許第6937405号(P6937405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6937405
(24)【登録日】2021年9月1日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】顧客推定装置及び顧客推定方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/02 20120101AFI20210909BHJP
【FI】
   G06Q30/02 470
   G06Q30/02
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-54650(P2020-54650)
(22)【出願日】2020年3月25日
【審査請求日】2020年10月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591101434
【氏名又は名称】株式会社ビデオリサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 正晃
(72)【発明者】
【氏名】田村 玄
【審査官】 樋口 龍弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−140490(JP,A)
【文献】 特許第6591644(JP,B1)
【文献】 特開2006−172082(JP,A)
【文献】 特開2020−016943(JP,A)
【文献】 特開2019−174977(JP,A)
【文献】 特開2016−224693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客が保有する顧客保有項目と、特定若しくは不特定の者を対象に実施した調査又はその者の履歴情報から取得され、当該その者の少なくとも属性、価値観、嗜好、消費行動、行動パターンの何れかが反映されたソースデータのソースデータ項目とを対応させる項目対応手段と、
前記顧客保有項目と対応する前記ソースデータ項目を入力データとして機械学習させた機械学習モデルと、
指標化すべき指標化項目の内容に応じて、第1の前記機械学習モデルを用いて将来的に需要がある対象顧客の推定に必要な要素となる前記顧客保有項目を分類し、第1の分類項目を作成する第1の分類項目作成手段と、
前記第1の分類項目作成手段が作成した前記第1の分類項目に、前記第1の機械学習モデルを用いて所定の規則に基づいて第1のスコアを付与する第1のスコア付与手段と、
前記第1の分類項目の作成とは別機会に、前記ソースデータの更新に伴い更新された第2の前記機械学習モデルを用いて前記対象顧客の推定に必要な要素となる前記顧客保有項目を分類し、第2の分類項目を作成する第2の分類項目作成手段と、
前記第2の分類項目作成手段が作成した前記第2の分類項目に、前記第2の機械学習モデルを用いて前記所定の規則に基づいて第2のスコアを付与する第2のスコア付与手段と、
を備えることを特徴とする顧客推定装置。
【請求項2】
第n(n≧2の自然数)の分類項目の作成とは別機会に、前記ソースデータの更新に伴い、第(n+1)の前記機械学習モデルを用いて前記顧客保有項目を分類し、第(n+1)の分類項目を作成する第(n+1)の分類項目作成手段と、
前記第(n+1)の分類項目作成手段が作成した前記第(n+1)の分類項目に、前記第(n+1)の機械学習モデルを用いて前記所定の規則に基づいて第(n+1)のスコアを付与する第(n+1)のスコア付与手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の顧客推定装置。
【請求項3】
対象顧客と判定するための前記スコアの閾値を設定し、
前記第1のスコアから前記第(n+1)のスコアを前記顧客のそれぞれに付与し、当該スコアが特定の期間に前記閾値を超えた回数に基づいて、当該顧客を対象顧客と判定する第1の対象顧客判定手段を備えることを特徴とする請求項2に記載の顧客推定装置。
【請求項4】
前記第1のスコアから前記第(n+1)のスコアを前記顧客のそれぞれに付与し、特定の期間における前記スコアの推移に基づいて前記顧客を対象顧客と判定する第2の対象顧客判定手段を備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の顧客推定装置。
【請求項5】
前記スコア付与手段が付与した第1のスコアに第1の係数を乗じ、前記スコア付与手段が付与した第(n+1)のスコアに第(n+1)の係数を乗じ、これらを合算して前記顧客のそれぞれに加重スコアを付与する加重スコア付与手段と、
特定の期間において、前記加重スコア付与手段が付与した前記加重スコアに基づいて、当該顧客を対象顧客と判定する第3の対象顧客判定手段を備えることを特徴とする請求項2〜4の何れか1項に記載の顧客推定装置。
【請求項6】
第n(n≧1の自然数)の分類項目に第nのスコアが付与された後、所定条件を満たす前記顧客に新たなスコアを付与する特別スコア付与手段を備えることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の顧客推定装置。
【請求項7】
機械学習モデルを備えるコンピュータを用いて、商品又はサービスに興味のある対象顧客を推定する顧客推定方法であって、
前記コンピュータのデータ処理部が、顧客が保有する顧客保有項目と、特定若しくは不特定の者を対象に実施した調査又はその者の履歴情報から取得され、当該その者の少なくとも属性、価値観、嗜好、消費行動、行動パターンの何れかが反映されたソースデータのソースデータ項目とを対応させる項目対応ステップと、
前記顧客保有項目と対応する前記ソースデータ項目を入力データとして機械学習させ、機械学習モデルを作成する機械学習モデル作成ステップと、
前記データ処理部が、指標化すべき指標化項目の内容に応じて、第1の前記機械学習モデルを用いて将来的に需要がある対象顧客の推定に必要な要素となる前記顧客保有項目を分類し、第1の分類項目を作成する第1の分類項目作成ステップと、
前記データ処理部が、前記第1の分類項目作成ステップで作成された前記第1の分類項目に、前記第1の機械学習モデルを用いて所定の規則に基づいて第1のスコアを付与する第1のスコア付与ステップと、
前記データ処理部が、前記第1の分類項目の作成とは別機会に、前記ソースデータの更新に伴い更新された第2の前記機械学習モデルを用いて前記対象顧客の推定に必要な要素となる前記顧客保有項目を分類し、第2の分類項目を作成する第2の分類項目作成ステップと、
前記データ処理部が、前記第2の分類項目作成ステップで作成された前記第2の分類項目に、前記第2の機械学習モデルを用いて前記所定の規則に基づいて第2のスコアを付与する第2のスコア付与ステップと、
を備えることを特徴とする顧客推定方法。
【請求項8】
顧客が保有する顧客保有項目と、特定若しくは不特定の者を対象に実施した調査又はその者の履歴情報から取得され、当該その者の少なくとも属性、価値観、嗜好、消費行動、行動パターンの何れかが反映されたソースデータのソースデータ項目とを対応させる項目対応手段と、
前記顧客保有項目と対応する前記ソースデータ項目を入力データとして機械学習させた機械学習モデルと、
指標化すべき指標化項目の内容に応じて、前記機械学習モデルを用いて将来的に需要がある対象顧客の推定に必要な要素となる前記顧客保有項目を分類し、分類項目を作成する分類項目作成手段と、
前記分類項目作成手段が作成した前記分類項目に、前記機械学習モデルを用いて所定の規則に基づいて第1のスコアを付与する第1のスコア付与手段と、
前記分類項目に前記第1のスコアが付与された後、前記機械学習モデル所定条件を満たすと判断した顧客に限り、前記機械学習モデルを用いて前記所定の規則に基づいて前記顧客に新たなスコアを付与する特別スコア付与手段と、
を備えることを特徴とする顧客推定装置。
【請求項9】
前記所定条件は、前記顧客保有項目のデータの変更に伴い定められる条件であることを特徴とする請求項6又は8に記載の顧客推定装置。
【請求項10】
機械学習モデルを備えるコンピュータを用いて、商品又はサービスに興味のある対象顧客を推定する顧客推定方法であって、
前記コンピュータのデータ処理部が、顧客が保有する顧客保有項目と、特定若しくは不特定の者を対象に実施した調査又はその者の履歴情報から取得され、当該その者の少なくとも属性、価値観、嗜好、消費行動、行動パターンの何れかが反映されたソースデータのソースデータ項目とを対応させる項目対応ステップと、
前記顧客保有項目と対応する前記ソースデータ項目を入力データとして機械学習させ、機械学習モデルを作成する機械学習モデル作成ステップと、
前記データ処理部が、指標化すべき指標化項目の内容に応じて、前記機械学習モデルを用いて将来的に需要がある対象顧客の推定に必要な要素となる前記顧客保有項目を分類し、分類項目を作成する分類項目作成ステップと、
前記データ処理部が、前記分類項目作成ステップで作成された前記分類項目に、前記機械学習モデルを用いて所定の規則に基づいて第1のスコアを付与する第1のスコア付与ステップと、
前記データ処理部が、前記分類項目に前記第1のスコアが付与された後、前記機械学習モデルが所定条件を満たすと判断した顧客に限り、前記機械学習モデルを用いて前記所定の規則に基づいて前記顧客に新たなスコアを付与する特別スコア付与ステップと、
を備えることを特徴とする顧客推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象顧客を精度良く推定することができる顧客推定装置及び顧客推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウェブのアクセスログを利用して、新規の顧客に対して商品やサービスの広告を配信したり、提案したりするシステムが知られている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1の会員向けターゲティング広告提供システムでは、会員専用サイト運営会社が運営している会員専用サイトAの会員は、コンピュータ、スマートフォン等の利用者端末から、インターネットを介して会員専用サイトメインサーバにアクセスする。会員は、利用者端末から会員IDとパスワードを入力して会員専用サイトAにログインし、会員向けの情報提供ページを閲覧することができる。
【0004】
そして、利用者端末が、会員専用サイトAと切り離された会員専用サイト外対応サーバのクッキーIDを広告配信会社の広告配信サーバに渡すことで、会員専用サイトA内での履歴が外部に流出することを防ぎながら、会員の属性に合ったターゲティング広告を提供する。
【0005】
また、会員は、利用者端末からインターネットを介して、ウェブサイト運営会社が運営しているウェブサイトBにアクセスすると、広告配信の委託を受けたウェブサイトBの広告枠に広告が配信されるようになる(段落0017〜0027、図1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5843983号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のシステムでは、クッキーIDから得られる情報に基づいて広告が配信されるため、ユーザが購入した商品の関連商品等、関連性の強い商品、サービスの広告しか行えないという問題があった。また、ユーザのニーズや興味は日々変化しているため、このことに対応し、潜在的に抱えている課題を解決するような提案を行うことが難しかった。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、対象顧客を精度良く推定することができる顧客推定装置を提供することを目的とする。
【0009】
なお、本件は、出願済みの顧客推定装置(特願2019−162873号)に関連する出願であり、当該装置の実用性及び拡張可能性を説明する目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明の顧客推定装置は、顧客が保有する顧客保有項目と、特定若しくは不特定の者を対象に実施した調査又はその者の履歴情報から取得され、当該その者の少なくとも属性、価値観、嗜好、消費行動、行動パターンの何れかが反映されたソースデータのソースデータ項目とを対応させる項目対応手段と、前記顧客保有項目と対応する前記ソースデータ項目を入力データとして機械学習させた機械学習モデルと、指標化すべき指標化項目の内容に応じて、第1の前記機械学習モデルを用いて将来的に需要がある対象顧客の推定に必要な要素となる前記顧客保有項目を分類し、第1の分類項目を作成する第1の分類項目作成手段と、前記第1の分類項目作成手段が作成した前記第1の分類項目に、前記第1の機械学習モデルを用いて所定の規則に基づいて第1のスコアを付与する第1のスコア付与手段と、前記第1の分類項目の作成とは別機会に、前記ソースデータの更新に伴い更新された第2の前記機械学習モデルを用いて前記対象顧客の推定に必要な要素となる前記顧客保有項目を分類し、第2の分類項目を作成する第2の分類項目作成手段と、前記第2の分類項目作成手段が作成した前記第2の分類項目に、前記第2の機械学習モデルを用いて前記所定の規則に基づいて第2のスコアを付与する第2のスコア付与手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の顧客推定装置においては、項目対応手段が顧客の性別、年齢等の顧客保有項目とソースデータ項目とを対応させることで両項目の紐付けが行われる。また、第1の分類項目作成手段は、販売する商品、提供するサービス等に関する指標化項目の内容に応じて、顧客保有項目を分類して第1の分類項目を作成する。さらに、第1のスコア付与手段は、所定の規則に基づいて各分類項目に対して第1のスコアを付与する。
【0012】
また、第2の分類項目作成手段は、前記第1の分類項目の作成とは別機会に、ソースデータの更新に伴い、改めて第2の分類項目を作成する。ソースデータが更新された場合、第1の分類項目とは異なる第2の分類項目が作成される。また、第2のスコア付与手段により、今回の各分類項目に対して新たなスコアが付与される。従って、本装置は、複数の機会で分類項目の数を調整し、スコアの傾向を考慮して対象顧客を精度良く推定することができる。
【0013】
第1発明の顧客推定装置において、第n(n≧2の自然数)の分類項目の作成とは別機会に、前記ソースデータの更新に伴い、第(n+1)の前記機械学習モデルを用いて前記顧客保有項目を分類し、第(n+1)の分類項目を作成する第(n+1)の分類項目作成手段と、前記第(n+1)の分類項目作成手段が作成した前記第(n+1)の分類項目に、前記第(n+1)の機械学習モデルを用いて前記所定の規則に基づいて第(n+1)のスコアを付与する第(n+1)のスコア付与手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、第nの分類項目を作成したときからソースデータが更新された場合に、第(n+1)の分類項目作成手段によって、第nの分類項目とは異なる分類項目が作成される。また、第(n+1)のスコア付与手段により、第nの分類項目にスコアが付与される。これにより、付与されたスコアの推移を確認しながら、対象顧客を精度良く推定することができる。
【0015】
また、第1発明の顧客推定装置において、対象顧客と判定するための前記スコアの閾値を設定し、前記第1のスコアから前記第(n+1)のスコアを前記顧客のそれぞれに付与し、当該スコアが特定の期間に前記閾値を超えた回数に基づいて、当該顧客を対象顧客と判定する第1の対象顧客判定手段を備えるようにしてもよい。
【0016】
この構成によれば、第1の対象顧客判定手段は、各顧客に第1から第(n+1)のスコアを付与し、特定の期間において、当該スコアが閾値を超えた回数をカウントする。そして、その回数に基づいて対象顧客の判定を行う。これにより、対象顧客を正確に推定することができる。
【0017】
また、第1発明の顧客推定装置において、前記第1のスコアから前記第(n+1)のスコアを前記顧客のそれぞれに付与し、特定の期間における前記スコアの推移に基づいて前記顧客を対象顧客と判定する第2の対象顧客判定手段を備えるようにしてもよい。
【0018】
この構成によれば、第2の対象顧客判定手段は、各顧客に第1から第(n+1)のスコアを付与し、その推移を調べ、当該スコアに基づいて(例えば、スコアが上昇傾向)にある顧客を対象顧客と判定する。これによっても、対象顧客を正確に推定することができる。
【0019】
また、第1発明の顧客推定装置において、前記スコア付与手段が付与した第1のスコアに第1の係数を乗じ、前記スコア付与手段が付与した第(n+1)のスコアに第(n+1)の係数を乗じ、これらを合算して前記顧客のそれぞれに加重スコアを付与する加重スコア付与手段と、特定の期間において、前記加重スコア付与手段が付与した前記加重スコアに基づいて、当該顧客を対象顧客と判定する第3の対象顧客判定手段を備えるようにしてもよい。
【0020】
この構成によれば、加重スコア付与手段は、第1のスコアに第1の係数を乗じ、第(n+1)のスコアに第(n+1)の係数を乗じ、これらを合算して各顧客に加重スコアを付与する。そして、第3の対象顧客判定手段は、特定の期間における加重スコアに基づいて、対象顧客の判定を行う。これによっても、対象顧客を正確に推定することができる。
【0021】
また、第1発明の顧客推定装置において、第n(n≧1の自然数)の分類項目に第nのスコアが付与された後、所定条件を満たす前記顧客に新たなスコアを付与する特別スコア付与手段を備えるようにしてもよい。
【0022】
第n(n≧1の自然数)の分類項目に第nのスコアが付与された後、特別スコア付与手段は、所定条件を満たす顧客に新たなスコアを付与する。これによっても、スコアの推移を確認しながら、対象顧客を精度良く推定することができる。
【0023】
第2発明の顧客推定方法は、機械学習モデルを備えるコンピュータを用いて、商品又はサービスに興味のある対象顧客を推定する顧客推定方法であって、前記コンピュータのデータ処理部が、顧客が保有する顧客保有項目と、特定若しくは不特定の者を対象に実施した調査又はその者の履歴情報から取得され、当該その者の少なくとも属性、価値観、嗜好、消費行動、行動パターンの何れかが反映されたソースデータのソースデータ項目とを対応させる項目対応ステップと、前記顧客保有項目と対応する前記ソースデータ項目を入力データとして機械学習させ、機械学習モデルを作成する機械学習モデル作成ステップと、前記データ処理部が、指標化すべき指標化項目の内容に応じて、第1の前記機械学習モデルを用いて将来的に需要がある対象顧客の推定に必要な要素となる前記顧客保有項目を分類し、第1の分類項目を作成する第1の分類項目作成ステップと、前記データ処理部が、前記第1の分類項目作成ステップで作成された前記第1の分類項目に、前記第1の機械学習モデルを用いて所定の規則に基づいて第1のスコアを付与する第1のスコア付与ステップと、前記データ処理部が、前記第1の分類項目の作成とは別機会に、前記ソースデータの更新に伴い、第2の前記機械学習モデルを用いて前記対象顧客の推定に必要な要素となる前記顧客保有項目を分類し、第2の分類項目を作成する第2の分類項目作成ステップと、前記データ処理部が、前記第2の分類項目作成ステップで作成された前記第2の分類項目に、前記第2の機械学習モデルを用いて前記所定の規則に基づいて第2のスコアを付与する第2のスコア付与ステップと、を備えることを特徴とする。
【0024】
本発明の顧客推定方法は、項目対応ステップにて、顧客保有項目とソースデータ項目とを対応させることで両項目の紐付けが行われ、第1の分類項目作成ステップにて、指標化項目に応じて顧客保有項目を分類して、第1の分類項目が作成される。
【0025】
また、第2の分類項目作成ステップにて、前記第1の分類項目の作成とは別機会に、前記ソースデータの更新に伴い、改めて第2の分類項目が作成される。ソースデータが更新された場合、第1の分類項目とは異なる第2の分類項目が作成される。また、第2のスコア付与ステップにて、今回の各分類項目に対して新たなスコアが付与される。従って、本方法は、複数の機会で分類項目の数を調整し、スコアの傾向を考慮して対象顧客を精度良く推定することができる。
【0026】
第3発明の顧客推定装置は、顧客が保有する顧客保有項目と、特定若しくは不特定の者を対象に実施した調査又はその者の履歴情報から取得され、当該その者の少なくとも属性、価値観、嗜好、消費行動、行動パターンの何れかが反映されたソースデータのソースデータ項目とを対応させる項目対応手段と、前記顧客保有項目と対応する前記ソースデータ項目を入力データとして機械学習させた機械学習モデルと、指標化すべき指標化項目の内容に応じて、前記機械学習モデルを用いて将来的に需要がある対象顧客の推定に必要な要素となる前記顧客保有項目を分類し、分類項目を作成する分類項目作成手段と、前記分類項目作成手段が作成した前記分類項目に、前記機械学習モデルを用いて所定の規則に基づいて第1のスコアを付与する第1のスコア付与手段と、前記分類項目に前記第1のスコアが付与された後、前記機械学習モデル所定条件を満たすと判断した顧客に限り、前記機械学習モデルを用いて前記所定の規則に基づいて前記顧客に新たなスコアを付与する特別スコア付与手段と、を備えることを特徴とする。
【0027】
本発明の顧客推定装置では、項目対応手段が顧客保有項目とソースデータ項目とを対応させることで両項目の紐付けが行われる。また、第1の分類項目作成手段は、指標化項目の内容に応じて、顧客保有項目を分類して分類項目を作成する。さらに、第1のスコア付与手段は、所定の規則に基づいて分類項目のそれぞれに対して第1のスコアを付与する。
【0028】
また、第1の分類項目に第1のスコアが付与された後、特別スコア付与手段が所定条件を満たす顧客に新たなスコアを付与する。これにより、本装置は、スコアの推移を確認しながら、対象顧客を精度良く推定することができる。
【0029】
第1発明、第3発明の顧客推定装置において、前記所定条件は、前記顧客保有項目のデータの変更に伴って定められる条件としてもよい。
【0030】
顧客保有項目のデータ(例えば、顧客保有項目「年齢」の数値)は変更されることがあるため、当該変更に関連した条件を所定条件と定める。顧客保有項目のデータが変更された顧客を当該条件を満たすとして、新たなスコアを付与すれば、改めて顧客推定装置の再実行をする必要がなくなる。
【0031】
第4発明の顧客推定方法は、機械学習モデルを備えるコンピュータを用いて、商品又はサービスに興味のある対象顧客を推定する顧客推定方法であって、前記コンピュータのデータ処理部が、顧客が保有する顧客保有項目と、特定若しくは不特定の者を対象に実施した調査又はその者の履歴情報から取得され、当該その者の少なくとも属性、価値観、嗜好、消費行動、行動パターンの何れかが反映されたソースデータのソースデータ項目とを対応させる項目対応ステップと、前記顧客保有項目と対応する前記ソースデータ項目を入力データとして機械学習させ、機械学習モデルを作成する機械学習モデル作成ステップと、前記データ処理部が、指標化すべき指標化項目の内容に応じて、前記機械学習モデルを用いて将来的に需要がある対象顧客の推定に必要な要素となる前記顧客保有項目を分類し、分類項目を作成する分類項目作成ステップと、前記データ処理部が、前記分類項目作成ステップで作成された前記分類項目に、前記機械学習モデルを用いて所定の規則に基づいて第1のスコアを付与する第1のスコア付与ステップと、前記データ処理部が、前記分類項目に前記第1のスコアが付与された後、前記機械学習モデルが所定条件を満たすと判断した顧客に限り、前記機械学習モデルを用いて前記所定の規則に基づいて前記顧客に新たなスコアを付与する特別スコア付与ステップと、を備えることを特徴とする。
【0032】
本発明の顧客推定方法は、項目対応ステップにて、顧客保有項目とソースデータ項目とを対応させることで両項目の紐付けが行われ、分類項目作成ステップにて、指標化項目に応じて顧客保有項目を分類して、分類項目が作成される。
【0033】
また、前記分類項目に第1のスコアが付与された後、特別スコア付与ステップにて、所定条件を満たす顧客に新たなスコアが付与される。従って、本方法は、スコアの推移を確認しながら、対象顧客を精度良く推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の第1実施形態に係る顧客推定装置の概要を説明する図。
図2A】顧客推定装置が作成した分類項目(旧日付け)の例を説明する図。
図2B】顧客推定装置が作成した分類項目(新日付け)の例を説明する図。
図3】スコアを付与した顧客リストの例を説明する図。
図4】重み付けを付与した顧客リストの例を説明する図。
図5】顧客推定装置を利用して対象顧客を推定するフローチャート。
図6】第2実施形態の顧客推定装置が作成した分類項目の例を説明する図。
図7】スコアを付与した顧客リストの例を説明する図。
図8】第3実施形態の顧客推定装置が作成した分類項目、顧客リストの例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下では、図面を参照しながら、本発明の顧客推定装置の詳細を説明する。
【0036】
[第1実施形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る顧客推定装置1の概要を説明する。本実施形態において、顧客推定装置1は、デスクトップPC、ノートPC、タブレット端末等にインストールされた、サービス提供会社X(以下、会社Xという)が所有する装置端末である。
【0037】
以下では、会社Xのクライアント企業であって、顧客推定装置1のサービス提供先Y(以下、会社Yとする)が、新たに開発したサプリメントについて、DM(ダイレクトメール)の配信やネット広告を開始するため、健康食品に関心がある人を特定したいという需要があった場合を例に説明する。
【0038】
会社Yは、顧客DB(データベース)20を有しており、顧客リストの顧客情報として、少なくとも「性別」、「年代」を保有している。しかしながら、肝心な「健康食品に関心があり」といった直接的な情報は保有していない。
【0039】
このような場合、会社Y(ユーザ)は、「健康食品に関心があり」という指標化すべき項目(指標化項目)と、「性別」及び「年代」の顧客保有項目とを会社Xに送付し、会社Xの担当者が顧客推定装置1にこれらの項目を入力する。ここで、顧客保有項目の「性別」は男性/女性の情報であり、「年代」は10代/20代/30代/40代/50代/60代といった情報であり、必ずしも「顧客AAAは、女性、35歳」といった個人情報でなくてもよい。
【0040】
担当者がこれらの項目を顧客推定装置1に入力すると、全顧客の中から指標化項目に関する見込顧客のみならず、現状では可能性が低いものの、将来的には需要があると推察される対象顧客(潜在顧客又はターゲット顧客)を抽出することができる。
【0041】
指標化項目の取得は、顧客推定装置1の指標化項目取得部2で行われる。また、顧客保有項目の取得は、顧客推定装置1の顧客保有項目取得部3で行われる。
【0042】
顧客推定装置1に指標化項目及び顧客保有項目が入力されると、顧客推定装置1の項目対応部4(本発明の「項目対応手段」に相当)が、市場全体を推定可能なエリアランダムサンプリングを採用したシングルソースデータ(以下、ソースデータSという)と項目のマッチングを行う。さらに、顧客推定装置1は顧客保有項目を分類して、各分類項目にスコアを付与する。
【0043】
顧客保有項目の分類は、顧客推定装置1の分類項目作成部5(本発明の「分類項目作成手段」に相当)で行われる。また、スコアの付与は、顧客推定装置1のスコア付与部6(本発明の「スコア付与手段」に相当)で行われる。なお、分類項目作成部5及びスコア付与部6は、当該ソースデータSを入力データとして機械学習させた機械学習モデルである。
【0044】
本実施形態では、ソースデータSが更新されたとき、顧客推定装置1が改めて分類項目の作成を行うと、分類項目の内容や数について異なる結果が得られ、スコアも変更される。
【0045】
ここで、ソースデータSとは、市場全体を推定可能なエリアランダムサンプリングを採用したシングルソースデータであり、アンケートによって特定又は不特定の生活者の意識、属性、商品関与、メディア接触等を網羅的に調査した情報である。すなわち、ソースデータは、「人」、「モノ」、「メディア」の3つの観点で生活者をとらえた、いわば生活者の行動パターンを強く反映した情報である。
【0046】
なお、上述の「意識」とは、生活者の価値観、嗜好、消費行動等を意味する。また、「属性」とは、正確には人口統計学的属性であり、性別、年齢(年代)、住んでいる地域、社会人であれば業種や年収、未婚か既婚か、子供が何人いるか等の社会経済的な特性データを意味する。
【0047】
また、上述の「商品関与」とは、衣服、電化製品等のブランド、趣味や特技等のデータを意味し、「メディア接触」とは、情報を取得するため利用する媒体がインターネットか新聞か、又は雑誌か等のデータを意味する。
【0048】
このソースデータSは、東京エリア(東京50km圏内)、関西地区、名古屋地区、北部九州地区、札幌地区、仙台地区、広島地区の日本の主要マーケットである7地区において、抽出した約1万人に調査専用タブレットを貸与、実施して得られたものである。ソースデータSはアンケートの回答に限られず、視聴率のような視聴ログデータ(履歴情報)が含まれていてもよい。
【0049】
また、顧客推定装置1は、最終的に対象顧客と判定する対象顧客判定部8を備えている。対象顧客判定部8は、付与したスコアが所定の閾値を超えた顧客(又は分類項目)に対して、例えば「○」を付与し、対象顧客と判定する。
【0050】
さらに、顧客推定装置1は、加重スコア付与部10(本発明の「加重スコア付与手段」に相当)を備えている。加重スコア付与部10は、顧客推定装置1が別機会の複数回に亘って分類項目の作成、スコアの付与を行った場合に、第1のスコアに第1の係数を乗じ、第2のスコアに第2の係数を乗じる。その後、加重スコア付与部10は、これらを合算して加重スコアを算出し、各顧客に当該加重スコアを付与する。
【0051】
加重スコア付与部10は、例えば、古いソースデータSによる分類項目に対して小さい係数を乗じ(重み付け小)、最新のソースデータSによる分類項目に対して大きい係数を乗じて(重み付け大)、これらを合算して加重スコアを算出する。これにより、より現状に近い、トレンドを反映したスコアに調整することができる。
【0052】
特別スコア付与部12は、所定条件を満たすか否かを判定し、当該条件を満たす分類項目又は顧客に対して、新たなスコアを付与する。特別スコア付与部12については、第2実施形態にて詳細を後述する。
【0053】
次に、図2A図2Bを参照して、顧客推定装置1によって異なる日に作成した分類項目の一例を説明する。なお、顧客推定装置1の実行の詳細は、特願2019−162873号を参照されたい。
【0054】
図2Aは、2020年3月1日に、顧客推定装置1の実行により作成された分類項目(一覧表15A)を示している。顧客推定装置1は、指標化項目(具体的には、健康食品への関心度合)に対して、上述の分類項目作成部5(機械学習モデルが有する規則)により顧客保有項目を分類していく。
【0055】
この作業により、分類項目の1番目の「性別[男性]&年代[50代以上]」、分類項目の2番目の「性別[男性]&年代[40代]」、分類項目の3番目の「性別[男性]&年代[10〜30代]」、及び分類項目の4番目の「性別[女性](年代不問)」の4項目が作成される。
【0056】
また、顧客推定装置1のスコア付与部6は、各分類項目に対してスコアを付与する。このスコアは、顧客全体を対象とした基準値を算出してこれを1としたとき、当該基準値に対する各分類項目の数値から算出する(相対評価)。例えば、分類項目の1番目は、基準値の2.2倍の大きな数値を示すグループであり、基本的には、指標化項目と相関があるスコアが高いグループと推定される。
【0057】
図2Bは、2020年3月2日に、顧客推定装置1の実行により作成された分類項目(一覧表15B)を示している。なお、ここでは、前回の実行日からソースデータSが更新されているものとする。
【0058】
図示するように、今回、分類項目の1番目の「性別[男性]&年代[60代]」、
分類項目の2番目の「性別[男性]&年代[50代]」、分類項目の3番目の「性別[男性]&年代[40代]」、分類項目の4番目の「性別[男性]&年代[20〜30代]」、分類項目の5番目の「性別[男性・女性]&年代[10代]」、及び分類項目の6番目の「性別[女性]&年代[20代以上]」の6項目が作成される。
【0059】
今回、ソースデータSが変更された影響で分類項目の数が増加している。また、各分類項目にスコアが付与されるが、一覧表15Aと同じ分類項目(「性別[男性]&年代[40代]」)であっても、スコアは異なる値となっている。
【0060】
ここでは、日々ソースデータSが変更される場合の例を示したが、ソースデータSは半日に1回更新されることもあり得る。このため、顧客推定装置1の再実行は、最初の実行時と比較してソースデータSが変更された別の機会であればよい。
【0061】
次に、図3を参照して、複数の日に亘り顧客推定装置1によるスコアの付与までを実行し、その結果を反映させた顧客リスト16について説明する。
【0062】
図示する顧客リスト16は、会社Yが所有する顧客リストに顧客推定装置1の7日間に亘るスコアを入力して、その推移を確認することができるもの(更新版)である。会社Xは、顧客リスト16(更新前)を入手し、各顧客IDに日別のスコアを入力していくことで、対象顧客を推定することができる。今回、「閾値」及び、又は「加速度」で対象顧客を判定する。
【0063】
「閾値」については、特定の期間に閾値を1回でも超えた場合(同値を含む)に「〇」を付与し、閾値を超えなかった場合に「×」を付与する。本実施形態では、閾値を「1.5」とし、特定の期間を「直近の3日間」とする。
【0064】
また、「加速度」については、特定の期間にスコアの推移が上昇傾向にある場合に「↑(上昇)」を付与し、下降傾向にある場合に「↓(下降)」を付与し、ほとんど変化していない場合に「→(維持)」を付与する。ここでも、特定の期間を「直近の3日間」とする。
【0065】
顧客ID「AAA」は、直近3日間(3月5日〜3月7日)のスコアが「1.8」、「1.5」、「1.4」と推移しているため、「閾値」は「〇」が付与され、「加速度」は「↓(下降)」が付与されている。
【0066】
また、顧客ID「CCC」は、直近3日間のスコアが「0.8」、「0.9」、「1.3」と推移しているため、「閾値」は「×」が付与され、「加速度」は「↑(上昇)」が付与されている。なお、3月1日のスコアは「3.3」と閾値を超えているが、特定の期間外であるため、「閾値」は「×」となる。
【0067】
また、顧客ID「FFF」は、直近3日間のスコアが「1.7」、「NULL」、「NULL」と推移している。「NULL」は、顧客推定装置1のエラー等によりスコアが得られなかった(スコア欠損)ことを意味する。この場合、「閾値」は「〇」が付与されるが、「加速度」の判定は即座に行えない。
【0068】
このような場合、他の顧客IDのスコアの推移傾向を分析して係数λを決定し、「NULL」の項目を補う。これにより、「加速度」が決定される。例えば、係数λを算出するため、平均値を算出する。
【0069】
顧客リスト16において、3月5日のスコアの平均は「1.53」であり、3月6日のスコアの平均は「1.36」である。このとき、λ=0.89(≒1.36/1.53)として、顧客ID「FFF」の3月6日のスコアを、「1.5(≒1.7λ)」と決定することができる。
【0070】
同様に、3月6日のスコアの平均は「1.36」であり、3月7日のスコアの平均は「1.38」である。このとき、λ=1.01(≒1.38/1.36)として、顧客ID「FFF」の3月7日のスコアを、「1.5(≒1.7λλ)」と決定することができる。以上により、「加速度」は、ほとんど変化していない「→(維持)」を付与する。
【0071】
「NULL」の項目は、例えば、顧客全体の平均スコアが「2.0」、「1.4」、「1.6」と推移していた場合、3日間の平均スコア(≒1.7)を適用してもよい。また、前2日の平均と後2日の平均の平均値を適用してもよい。さらに、平均値に限らず、中間値を用いてもよいし、前日のスコアをそのまま用いてもよい。
【0072】
また、スコアは第n番目(n≧1の自然数)まであってよく、特定の期間も適宜変更することができる。特定の期間は、連続日に限られず、一日おきでも二日おきでもよい。
【0073】
対象顧客の判定は、「閾値」が「〇」の顧客、又は「加速度」の推移に基づいて行うことが好ましい。例えば、「加速度」が維持以上の傾向、すなわち、「↑(上昇)」及び「→(維持)」の顧客を対象顧客とすることができる。また、上記の両条件を満たす顧客や、「閾値」が予め定めた所定回数を超えた顧客を対象顧客と判定してもよい。詳細は後述するが、日別のスコアに重み付けを行い、加重スコアによって対象顧客を決定してもよい。
【0074】
図4は、図3の直近3日間のスコアに重み付けを行った場合の顧客リスト17を示している。
【0075】
顧客推定装置1において、加重スコア付与部10は、スコア算出式を用いて、各顧客IDに対して加重スコアを算出し、付与する。顧客リスト17は、顧客リスト16の直近3日間のスコアに基づいて作成される。
【0076】
加重スコア付与部10は、直近3日前の各スコアに係数αを乗じ、直近2日前の各スコアに係数βを乗じ、直近1日前の各スコアに係数γを乗じ(ただし、α+β+γ=1)、これらを合算する。例えば、顧客ID「AAA」については、直近3日間のスコアが「1.8」、「1.5」、「1.4」であるため、スコア算出式は、「1.8α+1.5β+1.4γ」となる。
【0077】
指標化項目に依存するが、例えば、最も新しいスコアに対する係数γを最も大きな値とし(例えば、γ=0.5)、係数α及び係数βは小さな値(例えば、α=β=0.25)とすることが好ましい。これにより、当該指標化項目を他の2つの指標化項目の結果で補正したスコア(加重スコア)が得られる。
【0078】
他の顧客IDに対しても、直近3日間のスコアから同様に算出する。ここで、対象顧客と判定する閾値を予め決定しておくことで、対象顧客判定部8は、顧客リスト17において、加重スコアが所定の閾値以上となった顧客IDを対象顧客と判定する(判定は図示省略)。このような作業によっても、顧客推定装置1から対象顧客を推定することができる。
【0079】
最終的に対象顧客と判定された顧客に対して、指標化項目(健康食品に興味あり)に応じた商品の紹介、販売等を行うとよい。このように、顧客推定装置1を利用することで、個人情報、クッキー情報等を入手しなくても、リアルタイムの状況変化を加味しつつ、顧客のプロフィールを精度良く推測することができる。
【0080】
今回、直近3日前の第1のスコア、直近2日前の第2のスコア及び直近1日前の第3のスコアがあり、第1のスコアに第1の係数(係数1)を乗じ、第2のスコアに第2の係数(係数2)を乗じ、第3のスコアに第3の係数(係数3)を乗じて、これらを合算して加重スコアとした。
【0081】
しかしながら、スコアは第n番目(n≧1の自然数)まであってよく、第nのスコアには第nの係数(係数n)を乗じて、同じく合算する。従って、顧客推定装置1は、目的に応じた精度の高い判定を行うことができる。
【0082】
次に、図5を参照して、顧客推定装置1を利用して対象顧客の情報を取得するまでの一般的なフローチャートを説明する。
【0083】
まず、会社Yのユーザは、指標化項目を選定する(STEP10)。指標化項目は、担当者がソースデータの項目の中から選択してもよいし、会社Yが行う商品やサービスの提供に関することに限られず、同じ趣味を持つ人がいるかどうかといった幅広いテーマであってもよい。
【0084】
次に、会社Xの担当者が指標化項目と顧客保有項目とを顧客推定装置1に入力する(STEP20)。ここで、顧客保有項目は、「性別」、「年齢(年代)」の他、「最終学歴」、「学生/社会人」、「住んでいる地域」等が挙げられ、項目数が多いほどソースデータ項目とマッチング(対応)する可能性が高くなり、推定の精度が向上する。
【0085】
また、必要に応じて、顧客保有項目とソースデータ項目の調整を行う。ソースデータ項目の調整とは、例えば、両項目が完全に対応していないが、類似項目がある場合に、意味合いを揃える作業を行う。
【0086】
次に、顧客推定装置1は、機械学習により分類規則を作成する(STEP30)。これにより、指標化項目に対する分類項目(第1の分類項目)が作成される。続いて、顧客推定装置1は、当該規則に基づいて第1のスコアを集計する(STEP40)。以上が、1回目の実行である。
【0087】
ここで、ソースデータが更新されたか否かが判定される(STEP50)。ソースデータSが更新された場合にはSTEP60に進み、未だ更新されていない場合には更新されるまで待機する。
【0088】
次に、担当者が再び指標化項目と顧客保有項目とを顧客推定装置1に入力する(STEP60)。本STEPから2回目(1回目とは別機会)の実行となるが、指標化項目については1回目と同じ項目である。なお、顧客保有項目については、顧客DB20が更新された場合、新たな顧客保有項目に変更される(第2実施形態)。
【0089】
次に、顧客推定装置1は、機械学習により分類規則を作成する(STEP70)。これにより、第2の分類項目が作成される。続いて、顧客推定装置1は、当該規則に基づいて第2のスコアを集計する(STEP80)。以上が、2回目の実行である。もちろん、ソースデータSが更新される度に、以上の作業をn(n≧3)回繰り返してもよい。
【0090】
次に、顧客推定装置1は、加重スコアを算出する(STEP90)。具体的には、第1のスコアに第1の係数(例えば、係数α)を乗じ、第2のスコアに第2の係数(例えば、係数β)を乗じ、これらを合算した加重スコアを算出する。
【0091】
最後に、顧客推定装置1は、対象顧客の判定を行う(STEP100)。対象顧客の判定は、顧客IDに付与したスコア又は加重スコアが予め定めた「閾値」を超えたこと、「加速度」が維持以上の傾向であること等を条件とすればよい。なお、加重スコアを判定に使用しない場合には、上記STEP90はスキップしてよい。以上で、顧客推定装置1による一連の処理を終了する。
【0092】
その後、会社Xの担当者は、会社Yに更新版の顧客リスト16を送付する。会社Yは、判定された対象顧客に対してサプリメントのDM配信等を行うとよい。顧客推定装置1は、取扱いが難しい個人情報、クッキー情報等を入手しなくても、リアルタイムの状況変化を加味しつつ、顧客のプロフィールを精度良く推測することができる点で有益である。
【0093】
[第2実施形態]
次に、図6図7を参照して、本発明の第2実施形態の顧客推定装置1の利用方法について説明する。
【0094】
上述の第1実施形態では、ソースデータSが更新されたとき指標化項目に対する分類項目を改めて作成し、スコアを付与する態様であった。しかしながら、同日の実行(同じソースデータSを使用)であっても、顧客DB20が更新され顧客保有項目のデータが変更されれば、異なる結果が得られると予想される。
【0095】
図6は、2020年3月8日に、顧客推定装置1が顧客保有項目から作成した分類項目(一覧表15C)を示している。顧客推定装置1は、指標化項目(具体的には、健康食品への関心度合)に対して、上述の分類項目作成部5(機械学習モデルが有する規則)により顧客保有項目を分類していく。
【0096】
この作業により、分類項目の1番目の「性別[男性]&年代[60代以上]」、分類項目の2番目の「性別[男性]&年代[50代]」、分類項目の3番目の「性別[男性]&年代[40代]」、分類項目の4番目の「性別[男性]&年代[10〜30代]」、分類項目の5番目の「性別[女性]&年代[40代以上]」、及び分類項目の6番目の「性別[女性]&年代[10〜30代]」の6項目が作成される。
【0097】
また、顧客推定装置1のスコア付与部6は、各分類項目に対してスコアを付与する。このスコアは、顧客全体を対象とした基準値を算出してこれを1としたとき、当該基準値に対する各分類項目の数値から算出する(相対評価)。
【0098】
第2実施形態では、顧客推定装置1による分類項目の作成は初回(3月8日)のみとなるが、顧客DB20が更新されると、特別スコア付与部12(本発明の「特別スコア付与手段」)が新たなスコアを付与する。例えば、顧客DB20が更新され、顧客保有項目「年齢」について、データ(実際の数値)が変更されたとき、該当する顧客のスコアが変化する。
【0099】
図7は、第2実施形態の顧客推定装置1によるスコアの付与を実行した結果を各顧客に反映させた顧客リスト18を示している。
【0100】
顧客リスト18は、会社Yが所有する顧客リストに顧客推定装置1の初回(3月8日)のスコアが入力したものであるが、その後(3月13日)のスコアは、顧客DB20の更新に伴って、特別スコア付与部12が付与したスコアである。
【0101】
例えば、39歳の男性(顧客ID「DDD」)が3月9日に誕生日を迎え、40歳になったとする。3月8日の時点では、一覧表15C(図6参照)の分類項目「性別[男性]&年代[10〜30代]」に属するため、スコアは「0.9」である。
【0102】
そして、この男性は、3月9日に40歳となるため、3月13日の時点において、一覧表15Cの分類項目「性別[男性]&年代[40代]」に属することになる。従って、スコアは「1.2」に変更される。
【0103】
一方、顧客ID「AAA」については、3月8日と3月13日の間の期間において、上述したような条件(年齢の変化)を満たしていないとする。この場合、顧客ID「AAA」の3月8日のスコアは「1.5」であるが、3月13日のスコアとして、同じ値の「1.5」が付与される。
【0104】
この結果に基づいて、第1実施形態と同様に「閾値」、「加速度」又は「加重スコア」が得られるので、対象顧客を判定することができる。「閾値」及び「加重スコア」については、対象顧客と判定する閾値以上を対象顧客とすればよいし、「加速度」については、その推移に基づいて、例えば、「↑(上昇)」のみを対象顧客とすればよい。
【0105】
また、第1実施形態のソースデータSと第2実施形態の顧客DB20とが、両方とも更新される場合も考えられる。この場合、顧客IDの日別(別機会)のスコアが複雑に推移する可能性がある。
【0106】
[第3実施形態]
最後に、図8を参照して、本発明の第3実施形態の顧客推定装置1の利用方法について説明する。以下では、ソースデータSと顧客DB20の両方が更新された場合のスコアの推移を説明する。
【0107】
まず、図8の顧客リスト20Aは、2020年3月1日時点での顧客DB20の顧客リストを示している。ユーザは、同日に顧客リスト20Aのデータからなる顧客保有項目及び指標化項目(具体的には、健康食品への関心度合)を入力して、顧客推定装置1を実行する。これにより、分類項目作成部5によって、分類項目が作成される。
【0108】
具体的には、分類項目の1番目の「男性 50代以上」、分類項目の2番目の「男性 40代」、分類項目の3番目の「男性 10〜30代」、及び分類項目の4番目の「女性(年代不問)」の4項目が作成される。
【0109】
その後、スコア付与部6によって各分類項目にスコアが付与され、一覧表25Aが得られる。さらに、顧客リスト21Aは、当該スコアを各顧客に反映させたものである。ここで、顧客ID「AAA」、「BBB」は何れも男性50代であるため、「2.2」のスコアが付与され、顧客ID「CCC」は男性40代であるため、「1.8」のスコアが付与される。
【0110】
次に、翌日の2020年3月2日に、改めて顧客推定装置1を実行したとする。なお、2020年3月2日は、前日と比較してソースデータSと顧客DB20の両方が更新されている。
【0111】
顧客リスト20Bは、2020年3月2日時点での顧客DB20の顧客リストを示している。図示するように、顧客ID「AAA」は、この日に誕生日を迎え、「年齢」が「60」になり、「年代」も「60代」に変更されている。
【0112】
ユーザは、同日に顧客リスト20Bのデータからなる顧客保有項目及び指標化項目を入力して顧客推定装置1を実行する。これにより、分類項目作成部5によって、分類項目が作成される。
【0113】
具体的には、分類項目の1番目の「男性 60代」、分類項目の2番目の「男性 50代」、分類項目の3番目の「男性 40代」、分類項目の4番目の「男性 20〜30代」、分類項目の5番目の「男女 10代」、及び分類項目の6番目の「女性 20代以上」の6項目が作成される。
【0114】
その後、スコア付与部6によって各分類項目にスコアが付与され、一覧表25Bが得られる。さらに、顧客リスト21Bは、スコアを各顧客に反映させたものである。ここで、顧客ID「AAA」は男性60代になったため、「2.4」のスコアが付与される。また、顧客ID「BBB」は男性50代であるため、「2.0」のスコアが付与され、顧客ID「CCC」は男性40代であるため、「1.7」のスコアが付与される。
【0115】
3月1日と3月2日との間の顧客ID「BBB」のスコア変化(2.2→2.0)は、ソースデータSの更新によって生じたものである。また、この間の顧客ID「AAA」のスコア変化(2.2→2.4)は、ソースデータS及び顧客DB20の両方の更新が影響して生じたものである。今回、2日間のスコアの変化を示したが、さらに長期間に亘ってスコアの推移を調べることで、その傾向から対象顧客を推定することができる。
【0116】
第3実施形態においても、1日のうちのソースデータS及び顧客DB20の更新の前後で顧客推定装置1を実行してもよい。この場合にも、当該更新の影響でスコアが変化するため、日別の実行には限られない。
【0117】
上述した実施形態における一覧表の内容、スコアの算出方法等は一例に過ぎず、用途、目的等に応じて適宜変更することができる。
【0118】
図3図4の例では、「特定の期間」を3日間として、その間の「閾値」や「加速度」で対象顧客を判定したが、これに限られない。「特定の期間」は、指標化項目の内容等に応じて変更可能である。
【符号の説明】
【0119】
1…顧客推定装置、2…指標化項目取得部、3…顧客保有項目取得部、4…項目対応部、5…分類項目作成部(機械学習モデル)、6…スコア付与部、8…対象顧客判定部、10…加重スコア付与部、12…特別スコア付与部、15,15A〜15C,25A,25B…一覧表、16〜18,20A,20B,21A,21B…顧客リスト、20…顧客DB。
【要約】      (修正有)
【課題】対象顧客を精度良く推定することができる顧客推定装置を提供する。
【解決手段】顧客推定装置1は、分類項目作成部5が指標化項目の内容に応じて顧客保有項目を分類して第1の分類項目を作成し、スコア付与部6が第1の分類項目に所定の規則に基づいて第1のスコアを付与する。さらに、分類項目作成部5が第1の分類項目の作成とは別機会に、ソースデータSの変更に伴い第2の分類項目を作成し、スコア付与部6が第2の分類項目に第2のスコアを付与する。
【選択図】図1
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8