(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、前述した合金部材(I)において、以下のような改良や変更を加えることができる。
(i)前記母相の組織は、平均粒径100μm以下の柱状晶が林立した局所急冷凝固組織である。
(ii)前記析出相は、前記Ni成分、前記Ti成分および前記Al成分が前記母相の結晶よりも濃化している結晶性粒子である。
(iii)前記化学組成は、前記Coを20原子%以上30原子%以下で、前記Crを10原子%以上25原子%以下で、前記Feを10原子%以上25原子%以下で、前記Niを20原子%以上30原子%以下で、前記Tiを2原子%以上10原子%以下で、前記Alを2原子%以上10原子%以下で含み、残部が前記不可避不純物からなる。
(iv)前記化学組成は、前記Coを25原子%以上30原子%以下で、前記Crを15原子%以上23原子%以下で、前記Feを15原子%以上23原子%以下で、前記Niを25原子%以上30原子%以下で、前記Tiを1原子%以上5原子%以下で、前記Alが1原子%以上10原子%以下で、前記Moを1原子%以上3原子%以下で含み、残部が前記不可避不純物からなる。
(v)引張強さが1000 MPa以上であり、破断伸びが5%以上である。
(vi)前記母相の結晶構造が単純立方晶(SC)である。
【0017】
本発明は、前述した合金部材を用いた製造物(III)において、以下のような改良や変更を加えることができる。
(vii)前記製造物は、前記インペラを組み込んだ遠心圧縮機である。
【0018】
(本発明の基本思想)
前述したように、ハイエントロピー合金(HEA)は、従来合金では得られない魅力的な特徴(例えば、高硬度、焼き戻し軟化抵抗性)を有しているが、難加工性であり、所望形状部材を作製することが難しいという問題があった。
【0019】
本発明者等は、HEAとしての特徴を犠牲にすることなく、形状制御性や延性に優れるHEA部材を開発すべく、合金組成と形状制御方法について鋭意研究を重ねた。その結果、Co-Cr-Fe-Ni-Ti-Al-(Mo)系合金の粉末を用いた金属粉末積層造形法により合金積層造形体を形成することで、特許文献1のような普通鋳造HEA材よりも形状制御性や延性に優れるHEA部材を得られる可能性が見出された。
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら合金部材の製造手順に沿って説明する。ただし、本発明は、ここで取り挙げた実施形態に限定されるものではなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で公知技術と適宜組み合わせたり公知技術に基づいて改良したりすることが可能である。
【0021】
[合金部材の製造方法]
図1は、本発明に係る合金部材の製造方法の一例を示す工程図である。
図1に示したように、本発明の製造方法は、原料混合溶解工程とアトマイズ工程と積層造形工程と取出工程を有する。以下、本発明の実施形態をより具体的に説明する。
【0022】
(原料混合溶解工程)
まず、所望のHEA組成(Co-Cr-Fe-Ni-Ti-Al-(Mo))となるように原料を混合・溶解して溶湯10を形成する原料混合溶解工程を行う。原料の混合方法や溶解方法に特段の限定はなく、高強度・高耐食性合金の製造における従前の方法を利用できる。例えば、溶解方法として真空溶解を好適に利用できる。また、真空炭素脱酸法などを併用して、溶湯10を精錬することが好ましい。
【0023】
本発明のHEA組成は、主要成分としてCo、Cr、Fe、Niの4元素をそれぞれ5原子%以上35原子%以下の範囲で含み、かつTiおよびAlをそれぞれ1原子%以上10原子%以下の範囲で含み、かつMoを5原子%以下の範囲で含み、残部が不可避不純物からなるものである。
【0024】
より具体的には、Coが20原子%以上30原子%以下で、Crが10原子%以上25原子%以下で、Feが10原子%以上25原子%以下で、Niが20原子%以上30原子%以下で、Tiが2原子%以上10原子%以下で、Alが2原子%以上10原子%以下であることがより好ましい。これらの組成範囲に制御することにより、延性の向上と機械的強度の向上とを両立することができる。言い換えると、各成分がそれぞれの好ましい組成範囲を外れると、望ましい特性の達成が困難になる。
【0025】
また、耐食性の向上をより優先する場合、Moを添加するのが好ましく、Coが25原子%以上30原子%以下で、Crが15原子%以上23原子%以下で、Feが15原子%以上23原子%以下で、Niが25原子%以上30原子%以下で、Tiが1原子%以上5原子%以下で、Alが1原子%以上10原子%以下で、前記Moが1原子%以上3原子%以下であることがより好ましい。
【0026】
なお、本発明において、不可避不純物とは、完全に排除することは困難な成分であるが、種々の特性に特段の悪影響を及ぼさない程度に含有される成分と定義する。例えば、O(酸素)、N(窒素)、C(炭素)等が挙げられる。
【0027】
(アトマイズ工程)
次に、溶湯10から合金粉末20を形成するアトマイズ工程を行う。アトマイズ方法に特段の限定はなく、従前の方法を利用できる。例えば、高純度・均質組成・球形状粒子が得られるガスアトマイズ法や遠心力アトマイズ法を好ましく用いることができる。
【0028】
合金粉末20の平均粒径は、ハンドリング性や充填性の観点から、10μm以上500μm以下が好ましく、20μm以上200μm以下がより好ましい。平均粒径が10μm未満になると、次工程の積層造形工程において合金粉末20が舞い上がり易くなり、合金積層造形体の形状精度が低下する要因となる。一方、平均粒径が500μm超になると、次工程の積層造形工程において合金積層造形体の表面粗さが増加したり合金粉末20の溶融が不十分になったりする要因となる。
【0029】
(積層造形工程)
次に、上記で用意した合金粉末20を用いた金属粉末積層造形法により、所望形状を有する合金積層造形体230を形成する積層造形工程を行う。焼結ではなく溶融・凝固によってニアネットシェイプの金属部材を造形する金属粉末積層造形法の適用により、鋳造材と同等以上の機械的強度が得られると共に、複雑形状を有する三次元部材を作製することができる。積層造形方法に特段の限定はなく、従前の方法を利用できる。例えば、電子ビーム溶融(Electron Beam Melting:EBM)法や選択的レーザ溶融(Selective Laser Melting:SLM)法を用いた金属粉末積層造形法を好適に利用できる。
【0030】
EBM法を例にとって積層造形工程を説明する。
図2は、EBM法の粉末積層造形装置の構成および積層造形方法の例を示す断面模式図である。
図2に示したように、EBM粉末積層造形装置100は、電子ビーム制御部110と粉末制御部120とに大別され、全体が真空チャンバーになっている。
【0031】
1)造形しようとする合金積層造形体230の1層厚さ分(例えば、約30〜200μm)でステージ121を下降させる。ステージ121上面上のベースプレート122上にパウダーホッパー123から合金粉末20を供給し、レーキアーム124により合金粉末20を平坦化して粉末床210(層状粉末)を形成する(粉末床形成工程)。
【0032】
2)加熱されたタングステンフィラメント111(例えば、2500℃以上)から熱電子が放出され、アノ−ド112により加速されて(例えば、光速の半分程度)、電子ビーム113を形成する。加速された電子ビーム113は、非点補正装置114で真円化され、フォーカスコイル115により粉末床210へ集束される。
【0033】
3)比較的弱い(緩い)集束ビームを偏向コイル116により走査して粉末床210全体を予備加熱し、粉末床の仮焼結体を形成する。EBM方式では、粉末床を局所溶融・凝固する前に、粉末床の仮焼結体を形成する工程(粉末床仮焼工程)を行うことが好ましい。これは、局所溶融のための集束ビーム照射によって、合金粉末の帯電による粉末床の飛散を防ぐためである。また、本工程の加熱によって、その後の合金積層造形体230の変形が抑制される付加的な作用効果もある。
【0034】
粉末床210の仮焼温度は、750℃以上1200℃以下が好ましい。仮焼温度が750℃未満になると、合金粉末粒子同士の焼結がほとんど進行せず、仮焼結体の形成が困難になる。一方、仮焼温度が1200℃超になると、合金粉末同士の焼結が進行し過ぎて、合金積層造形体230の取り出し(合金積層造形体230と仮焼結体との分離)が困難になる。
【0035】
4)粉末床の仮焼結体に対し、造形しようとする合金積層造形体230の3D-CADデータから変換された2Dスライスデータに基づいて、局所溶融のための強い集束ビームを照射して合金の微小溶融池を形成すると共に、該集束ビームを走査して微小溶融池を移動・逐次凝固させることにより、2Dスライス形状の凝固層220を形成する(局所溶融・凝固層形成工程)。
【0036】
5)上記1)〜4)を繰り返して、所望形状を有する合金積層造形体230を造形する。
【0037】
(取出工程)
上記工程で造形した合金積層造形体230は仮焼結体中に埋没しているため、次に、合金積層造形体230を取り出す取出工程を行う。合金積層造形体230の取り出し方法(合金積層造形体230と仮焼結体との分離方法、合金積層造形体230とベースプレート122との分離方法)に特段の限定はなく、従前の方法を利用できる。例えば、合金粉末20を用いたサンドブラストを好ましく用いることができる。合金粉末20を用いたサンドブラストは、除去した仮焼結体を吹き付けた合金粉末20と共に解砕することで、合金粉末20として再利用することができる利点がある。
【0038】
[合金部材]
取出工程の後、合金積層造形体230から微細組織観察用の試料を採取し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、該試料の微細組織を観察した。
図3Aは、本発明における合金積層造形体の縦断面(積層方向に沿った面、積層方向に垂直な法線を有する面)の微細組織例を示すSEM観察像であり、
図3Bは、当該合金積層造形体の横断面(積層方向に垂直の面、積層方向が法線となる面)の微細組織例を示すSEM観察像である。
【0039】
図3A〜
図3Bに示したように、合金積層造形体230の母相は、微細な柱状晶(平均粒径100μm以下)が合金積層造形体230の積層方向に沿って林立した組織(いわゆる、急冷凝固組織)を有することが確認される。なお、本発明において、柱状晶の結晶粒径は、柱状の短軸方向(積層方向に垂直方向)の長さと定義する。
【0040】
さらに、合金積層造形体230の微細組織をより詳細に調査するために、透過型電子顕微鏡(TEM)および走査透過型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光分析器(STEM-EDX)を用いて微細組織観察を行った。その結果、合金積層造形体230は、その母相結晶中に平均粒径500 nm以下のサイコロ状のFCC(面心立方晶)の析出相が分散している様子が観察された。
【0041】
図4は、本発明における合金積層造形体の微細組織の一例を示すTEM観察結果であり、(a)析出相を含む明視野像、(b)a中の析出相から得られた電子線回折パターン、(c)a中の母相から得られた電子線回折パターンである。
図4(b)に示した電子線回折パターンにおけるサテライトスポットの強度が、
図4(c)に示した母相(マトリクス)の電子線回折パターンに比して増大していることから、
図4(b)のサテライトスポットは微細析出物に起因していると考えられると共に、該微細析出物はマトリクスに対して整合析出していると考えられる。
【0042】
また、
図4(b)におけるサテライトスポットの指数付けにより、析出相の結晶構造はFCC(a≒0.359 nm)と同定された。
図4(c)におけるマトリクス由来のメインスポットの指数付けにより、マトリクスの結晶構造は単純立方晶(SC、a≒0.358 nm)と同定された。
【0043】
図5は、本発明に係る合金積層造形体における析出相周辺の高角散乱環状暗視野走査透過型電子顕微鏡像(HAADF-STEM像)およびSTEM-EDXによる元素マッピング像である。なお、個々の元素マッピング像において、白色に近いほど原子濃度が相対的に高く、黒色に近いほど原子濃度が相対的に低いことを示す。
【0044】
図5に示したように、Ni、TiおよびAlが濃化している粒径200〜300 nm程度のサイコロ状の析出相の他に、NiとTiとが濃化している極微細な析出相も存在することが確認された。極微細な析出相の結晶構造は、TEMの電子線回折パターンの指数付けにより、サイコロ状の析出相と同じFCC(a≒0.359 nm)と同定された。
【0045】
[合金部材を用いた製造物]
図6は、本発明に係る合金部材を用いた製造物の一例であり、流体機械のインペラを示す写真である。本発明の合金製造物は金属粉末積層造形法により製造されることから、
図6に示したような複雑形状物でも容易に造形することができる。また、本発明の合金部材を用いたインペラは、高い機械的特性と高い耐食性とを兼ね備えることから、厳しい応力・腐食環境下でも優れた耐久性を示すことができる。
【0046】
図7は、本発明に係る合金部材を用いた製造物の他の一例であり、本発明のインペラが組み込まれた遠心圧縮機を示す断面模式図である。厳しい応力・腐食環境下でも優れた耐久性を示す本発明のインペラを使用することにより、遠心圧縮機の長期信頼性の向上に寄与することができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
[実験1]
(HEA粉末P-1〜P-6の用意)
表1に示す名目組成で原料を混合し、真空溶解法により溶解して溶湯を形成する原料混合溶解工程を行った。次に、ガスアトマイズ法により、溶湯から合金粉末を形成するアトマイズ工程を行った。次に、得られた合金粉末に対して、ふるいによる分級を行って粒径45〜105μmに選別してHEA粉末P-1〜P-6を用意した。レーザ回折式粒度分布測定装置を用いて、P-1〜P-6の粒度分布を測定したところ、それぞれの平均粒径は約70μmであった。
【0049】
【表1】
【0050】
[実験2]
(積層造形による合金部材AM-1〜AM-6の作製)
実験1で用意したHEA粉末P-1〜P-6に対し、
図2に示したような粉末積層造形装置(Arcam AB社製、型式:A2X)を用いて、積層造形工程の手順に沿ってEBM法による合金積層造形体(直径14 mm×高さ85 mmの円柱材、高さ方向が積層方向)を造形した。粉末床の仮焼温度は850〜980℃とした。
【0051】
積層造形工程の後、合金積層造形体の周囲の仮焼結体を、HEA粉末を用いたサンドブラストにより除去する取出工程を行って、積層造形による合金部材AM-1〜AM-6を取り出した。
【0052】
[実験3]
(熱間鍛造による合金部材FM-1〜FM-6の作製)
実験1で用意したHEA粉末P-1〜P-6に対し、銅製の水冷鋳型を用いたアーク溶解法により、鋳造材(幅14 mm×長さ80 mm×高さ15 mmの角柱材)を用意した。次に、該鋳造材に対して、大気中で加熱(1160℃×15分間保持)した後にプレス加工(圧下率:30%、圧下速度:30 mm/s)を行う熱間鍛造工程を2回繰り返して、熱間鍛造材を用意した。
【0053】
さらに、該熱間鍛造材に対して、溶体化処理(大気中1170℃×3時間保持後、水冷)と、EBMの仮焼工程を模擬した時効処理(大気中980℃×15時間保持)とを施して、熱間鍛造による合金部材FM-1〜FM-6を作製した。これら熱間鍛造による合金部材は、積層造形工程を行っていない試料であり、金属粉末積層造形による作用効果を確認するための基準試料となる。
【0054】
[実験4]
(合金部材の微細組織観察)
上記で作製した各合金部材から微細組織観察用の試験片を採取し、各種電子顕微鏡(SEM、STEM-EDX)およびX線回折(XRD)装置を用いて、微細組織観察を行った。各合金部材の作製仕様と共に、微細組織観察結果を表2、
図8、
図3A〜
図3Bに示す。
【0055】
図8は、熱間鍛造による合金部材の微細組織例であり、FM-2の微細組織を示すSEM観察像である。前述した
図3A〜
図3Bは、積層造形による合金部材AM-2の微細組織を示すSEM観察像である。
【0056】
【表2】
【0057】
表2、
図8に示したように、熱間鍛造による合金部材FM-1〜FM-6では、母相組織が等軸晶からなる組織(いわゆる鍛造組織)を有しており、平均粒径が約400μmであった。XRD測定およびSTEM観察の結果、当該等軸晶の結晶構造は、単純立方晶(SC)からなるとほぼ見なすことができた。また、FM-1〜FM-6での析出物は、FCC結晶構造のNi
3(Ti,Al)相であった。ただし、当該析出物の分散形態は、不均一に分散析出していた。
【0058】
これらに対し、表2、
図3A〜
図3Bに示したように、積層造形による合金部材AM-1〜AM-6では、微細な柱状晶(平均粒径100μm以下)が積層造形体の積層方向に沿って林立した組織(いわゆる急冷凝固組織)を有していた。XRD測定およびSTEM観察の結果、当該柱状晶の結晶構造も、SCからなるとほぼ見なすことができた。また、AM-1〜AM-6での析出物は、FCC結晶構造のNi
3(Ti,Al)相であり、ほぼ均等に分散析出しているように観察された。
【0059】
[実験5]
(合金部材の機械的特性および耐食性の測定)
上記で作製した各合金部材から引張試験用の試験片(平行部直径:4 mm、平行部長さ:20 mm)を採取した。なお、積層造形による合金部材は、試験片長手方向が積層造形方向と一致するように採取した。
【0060】
各試験片に対して、材料万能試験機を用いて室温引張試験を行い(JIS Z 2241に準拠、ひずみ速度:5×10
-5 s
-1)、引張強さと破断伸びとを測定した。引張試験の測定結果は、10測定のうちの最大値と最小値とを除いた8測定の平均値として求めた。引張強さの評価は、1000 MPa以上を「合格」と判定し、1000 MPa未満を「不合格」と判定した。また、破断伸びの評価は、5%以上を「合格」と判定し、5%未満を「不合格」と判定した。結果を後述する表3に示す。
【0061】
また、上記で作製した各合金部材から孔食試験用の分極試験片(縦15 mm×横15 mm×厚さ2 mm)を採取した。孔食試験は、各分極試験片に対してJIS G 0577に準拠して行った。具体的には、「試験面積:1 cm
2、分極試験片にすきま腐食防止電極を装着、参照電極:飽和銀塩化銀電極、試験溶液:アルゴンガス脱気した3.5%塩化ナトリウム水溶液、試験温度:80℃、電位掃引速度:20 mV/min」の条件下で分極試験片のアノード分極曲線を測定して、電流密度100μA/cm
2に対応する孔食発生電位を求めた。孔食発生電位の評価は、0.50 V以上を「合格」と判定し、0.50 V未満を「不合格」と判定した。孔食試験の結果を表3に併記する。
【0062】
【表3】
【0063】
表3に示したように、積層造形工程を行っていない試料である熱間鍛造による合金部材FM-1〜FM-6は、引張強さが1000 MPa未満かつ破断伸びが5%未満であり、機械的特性が不合格であった。一方、積層造形による合金部材AM-1〜AM-6は、1000 MPa以上の引張強さを有し、破断伸びは5%以上であった。
【0064】
耐食性については、HEA粉末P-1〜P-3を用いた合金部材において、熱間鍛造による合金部材と積層造形による合金部材との間で差異がみられた。具体的には、熱間鍛造による合金部材FM-1〜FM-3は耐食性評価が不合格であったのに対し、同じ粉末を用いた積層造形による合金部材AM-1〜AM-3は、耐食性評価が合格であった。この結果から、本発明に係る合金部材は、優れた耐食性を有することが確認された。
【0065】
また、Mo成分を含むHEA粉末P-4〜P-6を用いた合金部材(FM-4〜FM-6、AM-4〜AM-6)は、いずれも良好な耐食性を有していた。この結果から、本発明に係る合金部材は、その元素の組み合わせ自体(Co-Cr-Fe-Ni-Ti-Al-Mo)によって、優れた耐食性を示すことが確認された。
【0066】
[実験6]
(合金部材を用いた製造物の作製・検査)
積層造形による合金部材AM-2の製造方法と同様の手順により、
図7に示したインペラを作製した。得られたインペラに対して、X線CTスキャンによる内部欠陥検査と、寸法測定とを行った。その結果、機械的特性に悪影響を及ぼすような内部欠陥は認められず、設計寸法に対する変形も認められなかった。本実験から、本発明の有効性が確認された。
【0067】
上述した実施形態や実施例は、本発明の理解を助けるために説明したものであり、本発明は、記載した具体的な構成のみに限定されるものではない。例えば、実施形態の構成の一部を当業者の技術常識の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に当業者の技術常識の構成を加えることも可能である。すなわち、本発明は、本明細書の実施形態や実施例の構成の一部について、発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、削除・他の構成に置換・他の構成の追加をすることが可能である。