(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の第1の穿刺器具または穿刺装置の説明において、本明細書の「遠位端」とは、第1の管状体の端部のうち、術者が穿刺装置(穿刺器具)の穿刺先端を術部へ穿刺する際、術者側からみて遠い側の端部を言う。
【0028】
本発明の第1の穿刺器具または穿刺装置の説明において、本明細書の「近位端」とは、第1の管状体の端部のうち、術者が穿刺装置(穿刺器具)の穿刺先端部を術部へ穿刺する際、術者側からみて近い側の端部を言う。
【0029】
本発明の骨髄穿刺器具または骨髄穿刺装置の説明において、本明細書の「遠位端」とは、管状体の端部のうち、術者が骨髄穿刺装置(骨髄穿刺器具)の先端を骨髄腔へ挿入する際、術者側からみて遠い側の端部を言う。本発明の骨髄穿刺器具または骨髄穿刺装置の説明において、本明細書の「遠位側」とは、術者側からみて管状体の遠位端面よりも遠い側を言う。本発明の骨髄穿刺器具または骨髄穿刺装置の説明において、本明細書の「近位側」とは、術者側からみて管状体の近い側を言う。
【0030】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0031】
(骨髄穿刺システムの構成)
図面を参照しつつ、骨髄穿刺システム100の構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態の骨髄穿刺システム100を模式的に示す図である。
図2は、骨髄穿刺システム100の構成を示すブロック図である。なお、
図1、
図2においては後述するナビゲーションに関係する部分は省略している。
【0032】
図1および
図2に示すように、骨髄穿刺システム100は、骨髄穿刺装置10と、タンク110と、制御ユニット120と、真空発生器130と、スイッチ部140と、シリンジポンプ150と、パーソナルコンピューター(以下、PCとする)190とを備えている。
【0033】
穿刺装置の一例としての骨髄穿刺装置10は、筐体10aを備えており、筐体10aの内部には、後述する骨髄穿刺部1と、図示を省略するモーターを含めた駆動部とが備えられている。筐体10aには、術者が操作し易いように、把手部10bが形成されている。
【0034】
図1に示すように、筐体10aからは、後述する骨髄穿刺部1の第1の管状体3と第2の管状体4とを覆う外套部(外側管状体)5が突出しており、外套部5に覆われる第1の管状体3の先端には、穿刺先端部2が取り付けられている。第1の管状体3、第2の管状体4、外套部5、および穿刺先端部2を含めた筐体10aからの突出部分の長さはL1となっている。第1の管状体3および第1の管状体3を覆う外套部5は、
図1に点線で示すように可撓性を有している。この可撓性を有する部分の長さはL2となっている。外套部5に覆われる第1の管状体3、第2の管状体4、および穿刺先端部2は、反時計方向または時計方向に回転可能となっている。穿刺先端部2、第1の管状体3、第2の管状体4、および外套部5を備える骨髄穿刺部1の詳細については後述する。
【0035】
タンク110は、骨髄穿刺装置10によって吸引した骨髄液を貯蔵する容器であり、骨髄穿刺装置10と接続されている。また、タンク110は、制御ユニット120の吸引制御部125と接続されており、タンク110およびタンク110に接続される骨髄穿刺装置10の吸引圧の圧力値および吸引圧のオン/オフが、吸引制御部125によって制御されている。
【0036】
制御ユニット120は、図示を省略するCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read only memory)、およびRAM(Random access memory)等を備えており、吸引制御部125、および動作制御部126として機能する。吸引制御部125は、真空発生器130およびスイッチ部140と接続されている。吸引装置としての真空発生器130は、所定の負圧を発生させる。上記所定の負圧は、例えば、−90kpa以上、0kpa未満である。
【0037】
スイッチ部140は、術者の近くに設置されており、吸引のオン/オフ用のスイッチと、モーターのオン/オフ用のスイッチとを備えている。なお、
図1においてはスイッチ部140の図示を省略している。なお、スイッチ部140は、骨髄穿刺装置10と別体としてもよいし、骨髄穿刺装置10と一体としてもよい。スイッチ部140を骨髄穿刺装置10と別体に構成する場合には、例えば、フットスイッチとして設けてもよい。スイッチ部140を骨髄穿刺装置10と一体に構成する場合には、例えば、把手部10bにスイッチ部140を設けてもよい。
【0038】
吸引制御部125は、図示を省略する弁を備えており、術者の操作によりスイッチ部140から吸引のオン/オフ信号を受信すると、弁のオン/オフを行う。上記弁は、例えば、制御ユニット120内に真空発生器130と接続する内部タンクを設け、内部タンクに設けてもよい。これにより、骨髄穿刺装置10における吸引圧のオン/オフが制御される。また、制御ユニット120には、ノブ120aが設けられており、ノブ120aを回すことにより、吸引圧の圧力値の調整が可能となっている。吸引制御部125は、例えば、オフ信号を受信すると、所定時間後に弁のオフを行なってもよい。これにより、吸引制御部125は、例えば、骨髄穿刺部1に供給された抗凝固剤が管体20の開口20bから漏れ出すことを防止できる。
【0039】
動作制御部126は、骨髄穿刺装置10の駆動部、およびスイッチ部140と接続されている。術者の操作によりスイッチ部140からモーターのオン/オフ信号を受信すると、駆動部のモーターに対して、オン/オフの信号を送信する。これにより、骨髄穿刺装置10における骨髄穿刺部1の回転および停止が制御される。制御ユニット120には、ノブ120bが設けられており、ノブ120bを回すことにより、モーターの回転速度の調整が可能となっている。モーターの回転速度、トルク等は、例えば、骨髄腔内の組織を穿刺可能な回転速度、回転トルク等である。回転速度は、例えば、60〜150rpmである。また、回転トルクは、例えば、500mN・m以下、300mN・m以下である。骨髄穿刺部1の推進力は、例えば、15〜20N程度である。骨髄穿刺部1の推進速度は、例えば、1mm/秒程度である。本実施形態においては、一例として、回転速度は、120rpmに設定されており、ノブ120bにより、例えば、90rpm、120rpmまたは150rpmと設定することができる。動作制御部126は、例えば、皮質骨の外側への穿孔、第1の管状体3の破損を防止するため、例えば、第1の管状体3の変形限界の回転トルクに基づき、駆動部のモーターの電流量を算出してもよい。この場合、動作制御部126は、上記電流値を超える電流が要求される過負荷時には駆動部のモーターに対して、オフの信号を送信してもよい。すなわち、動作制御部126は、モーターの駆動を遮断してもよい。また、駆動部のモーターの軸にトルクリミッター等の過負荷保護装置が装着されている場合、動作制御部126は、過負荷保護装置に対して、回転速度を抑制する信号を送信してもよい。すなわち、動作制御部126は、過負荷保護装置を通じて、駆動部のモーターの過負荷を機械的に遮断してもよい。また、動作制御部126は、例えば、駆動部のモーターの回転トルク、電流値の状況をランプの点滅、警告音等により術者に報知してもよい。また、動作制御部126は、例えば、過負荷が解消された場合、駆動部のモーターに対して、オンの信号を送信して再駆動してもよい。
【0040】
シリンジポンプ150は、骨髄穿刺装置10に薬液としての抗凝固剤を供給するポンプである。シリンジポンプ150は、骨髄穿刺装置10と接続されている。シリンジポンプ150には、ノブ150aが設けられており、ノブ150aを回すことにより、抗凝固剤の供給速度が調整可能となっている。本実施形態においては、一例として、40μl/秒(sec)の速度で、ヘパリン等の抗凝固剤が供給される。抗凝固剤の供給系統についての詳細は後述する。本実施形態では、抗凝固剤を、シリンジポンプ150を用いて供給したが、本発明は、これに限定されず、例えば、リングポンプ等の他の送液手段により、送液してもよい。
【0041】
PC190は、制御ユニット120と接続されており、制御ユニット120に対するコマンドの出力や、セッティング用のデータの出力が可能になっている。PC190は、例えば、CPU、メインメモリ(ROM、RAM等)、補助記憶デバイス(ハードディスク、フラッシュメモリ等、以下、「記録部」ともいう)、ビデオコーデック、I/O(input-output)インターフェイス等を含み、これらがコントローラ(システムコントローラ、I/Oコントローラ等)により制御され、連携動作する。PC190は、例えば、入力手段(キーボード等)、出力手段(液晶ディスプレイ等のディスプレイ、プリンター等)を備えてもよい。本実施形態において、PC190は、パーソナルコンピューターとしたが、サーバコンピュータ、ワークステーション等と類似する構成としてもよい。また、PC190は、例えば、携帯端末(スマートフォン、タブレット等)、スマートスピーカー等で構成してもよい。
【0042】
図21は、変形例の骨髄穿刺システム200を模式的に示す図である。
図22は、変形例の骨髄穿刺システム200の構成を示すブロック図である。なお、
図21、
図22においては後述するナビゲーションに関係する部分は省略している。
【0043】
図21および
図22に示すように、骨髄穿刺システム200は、骨髄穿刺システム100の構成に加え、ろ過装置210を備える。また、制御ユニット120は、吸引制御部125および動作制御部126に加え、送液制御部127を有する。シリンジポンプ150は、制御ユニット120と電気的に接続されている。
【0044】
ろ過装置210は、骨髄穿刺装置10によって吸引した骨髄液をろ過する装置であり、骨髄液の海綿骨を除去する。ろ過装置210は、例えば、市販のフィルター、ハウジング等を使用できる。ろ過装置210は、骨髄穿刺装置10およびタンク110と接続されている。ろ過装置210と接続されるタンク110は、前述のように、制御ユニット120の吸引制御部125と接続されている。このため、タンク110、ろ過装置210およびタンク110に接続される骨髄穿刺装置10の吸引圧の圧力値および吸引圧のオン/オフは、吸引制御部125によって制御されている。
【0045】
制御ユニット120は、吸引制御部125、動作制御部126および送液制御部127として機能する。
【0046】
送液制御部127は、スイッチ部140およびシリンジポンプ150と接続されている。送液制御部127は、術者の操作によりスイッチ部140から送液のオン/オフ信号を受信すると、シリンジポンプ150に対して、送液のオン/オフの信号を送信する。これにより、シリンジポンプ150の送液の開始および停止が制御される。これにより、シリンジポンプ150からの送液のオン/オフが、骨髄穿刺装置10の吸引圧のオン/オフと同期して制御されるため、骨髄穿刺部1に供給された抗凝固剤が管体20の開口20bから漏れ出すことを防止できる。シリンジポンプ150は、前述のように、ノブ150aが設けられており、ノブ150aを回すことにより、抗凝固剤の供給速度が調整可能となっている。ただし、本発明は、これに限定されず、例えば、送液制御部127が、抗凝固剤等の薬液の供給速度を調整可能としてもよい。
【0047】
変形例の骨髄穿刺システム200において、吸引制御部125、動作制御部126および送液制御部127は、スイッチ部140と接続しているが、これに代えて、スイッチ部140を動作制御部126と接続し、動作制御部126を吸引制御部125および送液制御部127と接続してもよい。この場合、動作制御部126が、術者の操作によりスイッチ部140からモーターのオン/オフ信号、吸引のオン/オフ信号および送液のオン/オフ信号を受信すると、動作制御部126が、吸引のオン/オフ信号および送液のオン/オフ信号を吸引制御部125および送液制御部127に送信する。そして、動作制御部126が、駆動部のモーターに対して、オン/オフの信号を送信する。吸引制御部125が、骨髄穿刺装置10における吸引圧のオン/オフを制御する。送液制御部127が、シリンジポンプ150における送液のオン/オフを制御する。なお、骨髄穿刺システム100の制御ユニット120についても、同様に構成してもよい。
【0048】
(骨髄穿刺部の構成)
図面を参照しつつ、骨髄穿刺装置10における骨髄穿刺部1の構成について説明する。
図3は、本実施形態に係る骨髄穿刺装置10における骨髄穿刺部1を模式的に示す断面図である。なお、
図3は、骨髄穿刺部1を模式的に示す図であり、実際の長さ、厚さ、あるいは比率を表すものではない。
【0049】
図3に示すように、本実施形態における骨髄穿刺部1は、穿刺先端部2と、第1の管状体3と、第2の管状体4と、外套部5と、第1シャフト6と、ギア7と、第2シャフト8と、タンク接続部9とを備えている。骨髄穿刺部1の穿刺先端部2、第1の管状体3、第2の管状体4、および外套部5(以下、「骨髄穿刺針」または「穿刺針」ともいう)は、第1シャフト6、ギア7および第2のシャフト8内に着脱可能に取付けられてもよい。なお、
図3では後述するナビゲーションに利用する磁気センサーについては省略している。
【0050】
穿刺先端部2は、管体20と、先端回転部としての円板状部21と、連結部22とを備えている。管体20は、後述する
図5、
図7、および
図8に示すように、開口20bを備えている。ここで管体20は、第1の管状体3、第2の管状体4とともに管状体を形成しており、開口20bはその管状体の遠位端面に設けられている。円板状部21は、管体20の中心軸Cと一致する径方向の中心軸C1を有し、矢印Zで示す穿刺方向の先端に位置している。なお、本明細書において、「穿刺方向」とは、骨髄を穿孔(穿刺)する骨髄穿刺装置10の穿刺先端部2が骨髄内を進行する方向を言う。連結部22は、管体20の先端面20a(管状体の遠位端面)の一部と、円板状部21とを連結している。穿刺先端部2における管体20と、円板状部21と、連結部22とは、ステンレス、チタン合金、貴金属合金、コバルト合金等の金属(以下、「ステンレス等の金属」ともいう)製であり、削り出し等により一体に形成されている。なお、円板状部21と、連結部22とを削り出し等により一体に形成し、連結部22と、管体20とを接合するようにしてもよい。あるいは、管体20と、円板状部21と、連結部22とのそれぞれを削り出し等により形成し、それぞれを接合するようにしてもよい。穿刺先端部2の詳細については後述する。
【0051】
第1の管状体3は、穿刺先端部2の管体20と接続される管体であり、長手方向に沿った軸の周りに回転可能に形成されている。第1の管状体3は、例えば、長手方向軸を中心として、その周囲を回転可能な管体ともいえる。第1の管状体は、例えば、ステンレス等の丸線のコイル体であり、上記丸線をコイル状に巻くことで形成されている。前記コイル体は、チタン合金、貴金属合金、コバルト合金等のステンレス以外の金属等で形成されてもよい。また、前記コイル体は、平角線等の丸線以外の線材のコイル体でもよい。第1の管状体3の巻き方向は、第1の管状体3の回転方向(例えば、反時計回りの方向または時計まわりの方向(CW))と一致している。第1の管状体3は、コイル状に形成されているため、可撓性を有しており、かつ、丸線同士の隙間(例えば、浸透孔)から抗凝固剤等の薬液が浸透可能に形成されている。第1の管状体3の外径は、外套部5の内径よりも小さく形成されており、第1の管状体3は、外套部5内で回転可能となっている。また、第1の管状体3の外周面と、外套部5の内周面との間には、薬液供給路5aが形成される。第1の管状体3および第1の管状体3を覆う外套部5の部分は長さL2を有しており、この長さL2を有する部分は、
図1に示す長さL2の可撓性を有する部分に対応している。
【0052】
第2の管状体4は、第1の管状体3と接続される剛体の円筒管であり、例えば、ステンレス等の金属により形成される。第2の管状体4の外径は、外套部5の内径よりも小さく形成されており、第2の管状体4は、第1の管状体3と共に、外套部5内で回転可能となっている。また、第2の管状体4の外周面と、外套部5の内周面との間には、薬液供給路5aが形成されており、薬液供給路5aは、第1の管状体3の外周面と、外套部5の内周面との間に形成された薬液供給路5aと連続して形成されている。第2の管状体4の長さは、例えば、後述の案内管内において、骨髄穿刺針を遠位端方向に移動させた際に、第2の管状体4が案内管の遠位端から露出しない長さが好ましい。すなわち、
図3における長さL5が、後述の
図4に示す長さL4の長さ以下であることが好ましい。長さL5は、例えば、第2の管状体4において第1シャフト6から突出し、かつ第1の管状体3との接続部を除く領域の長手方向の長さということもできる。これにより、第2の管状体4により穿刺先端部2を案内管の軸方向に押し出すことができるため、骨髄穿刺部1の穿刺先端部2の穿刺方向が、例えば、案内管の軸方向と一致する。したがって、第2の管状体4の長さを上記構成とすることにより、例えば、骨髄穿刺装置10の穿刺方向を、容易に設定できる。
【0053】
外套部5は、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のプラスチック、樹脂等で形成された円筒管であり、第1の管状体3の全体と、第2の管状体4の一部とを覆う長さを有している。外套部5は、可撓性である。上述したように、外套部5の内径は、第1の管状体3および第2の管状体4の外径よりも大きく形成されている。外套部5の内部において、第1の管状体3および第2の管状体4は回転可能になっている。また、外套部5の内周面と、第1の管状体3および第2の管状体4の外周面との間には、薬液供給路5aが形成されている。外套部5の一端は、穿刺先端部2の回転の妨げとならない程度に穿刺先端部2の管体20の端面に接しており、外套部5の他端は、第1シャフト6に挿入される。つまり、外套部5自体は回転しないように構成されている。このように構成することにより、外套部5の回転による摩擦の発生を防止することができ、摩擦による熱の発生や、回転負荷の増加を防ぐことができる。
【0054】
第1シャフト6から突出した第2の管状体4の部分、および第1の管状体3を覆う外套部5の部分と、穿刺先端部2とを合わせた部分の長さはL1となっており、この長さL1を有する部分は、
図1に示す長さL1の突出部分に対応している。
【0055】
第1シャフト6は、例えば、ステンレス等の金属、プラスチック、樹脂等により形成された非回転体であり、軸受60を介して第2の管状体4の外周に取り付けられる。また、第1シャフト6と第2の管状体4との間には、オーリング61が取り付けられており、第1シャフト6と第2の管状体4との間の軸受60側に対する密閉性が確保されている。第1シャフト6には、抗凝固剤等の薬液の供給口6aが形成されており、供給口6aには、
図1および
図2に示す薬液供給部としてのシリンジポンプ150から抗凝固剤等の薬液が矢印B方向に供給される。供給口6aの近傍における第1シャフト6の内周と、第2の管状体4の外周との間には、薬液供給路6bが形成されており、薬液供給路6bは、上述した薬液供給路5aと連続している。したがって、供給口6aから供給される薬液は、薬液供給路6bおよび薬液供給路5aを介して第1の管状体3の外周へと搬送され、第1の管状体3の丸線同士の隙間から第1の管状体3の内部へと浸透する。
【0056】
ギア7は、例えば、炭素鋼、ステンレス等の金属、プラスチック、樹脂等により形成されており、第2の管状体4に嵌合される。ギア7には、図示を省略するピニオンギア等を介して、図示を省略するモーターの回転力が伝達され、第2の管状体4が回転する。その結果、第2の管状体4と共に、第1の管状体3および穿刺先端部2が回転する。本実施形態では、一例として、第2の管状体4、第1の管状体3および穿刺先端部2の回転数は、120rpmに設定されている。ギア7のギア比は、特に制限されず、駆動部の設置方法に応じて、適宜設定できる。
【0057】
第2シャフト8は、例えば、ステンレス等の金属、プラスチック、樹脂等により形成された非回転体であり、軸受80を介して第2の管状体4の外周に取り付けられる。また、第2シャフト8と第2の管状体4との間には、オーリング81が取り付けられており、第2シャフト8と第2の管状体4との間の軸受80側に対する密閉性が確保されている。第2シャフト8の内部には、第2の管状体4の後端開口4aと連通する連通孔8aが形成されている。
【0058】
タンク接続部9は、例えば、プラスチック、樹脂等で形成され、第2シャフト8に取り付けられる。タンク接続部9と第2シャフト8との間には、オーリング90が設けられており、タンク接続部9と第2シャフト8との間の密閉性が確保されている。タンク接続部9の内部には、第2シャフト8の連通孔8aと連通する連通孔9aが形成されている。タンク接続部9は、
図1および
図2に示すタンク110と接続されており、タンク110には、
図1および
図2真空発生器130が接続されている。
【0059】
真空発生器130により吸引圧としての負圧を発生させると、タンク、タンク接続部9の連通孔9a、第2の管状体4の中空部、および第1の管状体3の中空部にも負圧が発生する。また、第2の管状体4、第1の管状体3、および穿刺先端部2を回転させながら、骨髄穿刺部1の全体を穿刺方向に進行させることにより、穿刺先端部2によって穿孔された骨髄腔内を、穿刺先端部2、外套部5、外套部5に覆われた第1の管状体3が進む。この過程で、骨髄液は、上記負圧によって、穿刺先端部2の開口20b、第1の管状体3の中空部、第2の管状体4の中空部、およびタンク接続部9の連通孔9aを通って矢印A方向に吸引され、例えば、その移送中に骨髄穿刺装置10の外部に暴露されることなく無菌的にタンク110内に蓄積される。また、穿刺先端部2の開口20bから吸引された直後の骨髄液には、第1の管状体3を介して抗凝固剤が供給されるため、骨髄液は、凝固することなく、タンク110内に蓄積される。
【0060】
本実施形態において、上記骨髄穿刺針は、例えば、第1シャフト6、ギア7および第2のシャフト8から取り外された状態において、開口20b、後端開口4a、および薬液供給路5aと薬液供給路6aとの接続部が、キャップ等の封止部材、カバー等のカバー部材により封止または被覆されてもよい。これにより、骨髄穿刺針は、例えば、滅菌可能となるため、骨髄穿刺針内を無菌状態にでき、骨髄穿刺システム100の無菌性を保持できる。また、タンク110の開口部もキャップ等の封止部材、カバー等のカバー部材により封止または被覆されてもよい。これによりタンク110は、例えば、滅菌可能となるため、タンク110内およびキャップ表面を無菌状態にでき、骨髄液を採取後もカバーを被せて無菌状態を保持して処理施設まで移送することが出来る。
【0061】
図23、
図24、
図25を参照しつつ、変形例の骨髄穿刺部1’を含む骨髄穿刺装置10について説明する。
図23は、骨髄穿刺装置10の斜視図である。
図24は、
図23におけるA−A’方向の断面図である。
図25は、
図23における骨髄穿刺部1’の拡大図である。なお、
図23、
図24、
図25では後述するナビゲーションに利用する磁気センサーについては省略している。
【0062】
図23、
図24に示すように、骨髄穿刺装置10は、筐体10aを備えており、筐体10aの内部には、後述する骨髄穿刺部1’と、モーター71a等を含む駆動部71とが備えられている。筐体10aには、術者が操作し易いように、把手部10bが形成されている。把持部10bには、スイッチ部140が設けられている。筐体10aの上部には、上蓋10cが着脱可能に取付けられている。上蓋10cを筐体10aから外した状態で、骨髄穿刺部1’は、筐体10a内に着脱可能である。これにより、骨髄穿刺装置10は、骨髄穿刺部1’の第1の管状体3または第2の管状体4内で詰まりが生じた際に、骨髄穿刺部1’を容易に交換できる。
【0063】
図24に示すように、駆動部71は、モーター71a、モーター固定部71b、ジョイント71c、ギア71d、およびラジアル軸受71eを有する。モーター71aは、プラスチック、樹脂等で形成されたモーター固定部71bにネジ等の固定部材により固定される。モーター71aの軸と、ギア71dの軸とは、ジョイント71cで接続される。ギア71dは、その固定部により軸締め付けで固定し、軸端をラジアル軸受71eに収容する。これにより、モーター71aが回転すると、その回転力が、ジョイント71cを介して、ギア71dに伝達される。ギア71dは、骨髄穿刺部1’のギア7と嵌合し、モーター71aから伝達された回転力を、ギア7に伝達する。
【0064】
図25に示すように、骨髄穿刺部1’は、第2の管状体4と、外套部5と、穿刺接続部62と、第1シャフト6に対応する第1軸受ユニット63と、ギア7と、第2シャフト8に対応する第2の軸受ユニット82と、タンク接続部9とを備えている。なお、骨髄穿刺部1’の穿刺先端部2と、第1の管状体3とは、骨髄穿刺部1の穿刺先端部2と、第1の管状体3と同様の構成を有するため、図示していない。
【0065】
穿刺接続部62は、例えば、プラスチック、樹脂等で形成され、第1軸受ユニット63に着脱可能に取り付けられる。第2の管状体4と穿刺接続部62と第1軸受ユニット63との間には、オーリング64が設けられており、第2の管状体4と穿刺接続部62と第1軸受ユニット63との間の密閉性が確保されている。すなわち、薬液供給路6bの液密が、確保されている。穿刺接続部62には、抗凝固剤等の薬液の供給口6aと、穿刺接続部62の中空部とを連通する連通孔62aが形成されている。連通孔62aには、
図1および
図2に示す薬液供給部としてのシリンジポンプ150から抗凝固剤等の薬液が、供給口6aを介して矢印B方向に供給される。連通孔62aの近傍における穿刺接続部62の内周と、第2の管状体4の外周との間には、薬液供給路6bが形成されており、薬液供給路6bは、上述した薬液供給路5aと連続している。したがって、供給口6aから供給される薬液は、連通孔62a、薬液供給路6bおよび薬液供給路5aを介して第1の管状体3の外周へと搬送され、第1の管状体3の丸線同士の隙間から第1の管状体3の内部へと浸透する。
【0066】
第1軸受ユニット63は、第1軸受ハウジング63aと、第1ラジアル軸受60aと、軸受保持部631とを備える。第1軸受ハウジング63aは、例えば、プラスチック、樹脂等により形成された非回転体であり、第1ラジアル軸受60aを介して、管壁の保護部材である保護鞘4aに被覆された第2の管状体4の外周に取り付けられる。第1ラジアル軸受60aは、隣接する軸受保持部631により、第1軸受ハウジング63a内で保持されている。第1軸受ハウジング63aには、供給口6aが形成されており、例えば、ルアロックコネクター等の接続コネクター65を介して、シリンジポンプ150と接続している。供給口6aと、接続コネクター65との間は、オーリング66が設けられ、第1軸受ハウジング63aと接続コネクター65との間の密閉性が確保されている。第1軸受ハウジング63aと第1ラジアル軸受60aとの間、第1ラジアル軸受60aと軸受保持部631との間には、例えば、面圧を分散するために、ワッシャ等を配置してもよい。
【0067】
ギア7は、例えば、炭素鋼、ステンレス等の金属、プラスチック、樹脂等により形成されており、管壁保護のため保護鞘4aに被覆された第2の管状体4の外周に嵌合される。ギア7には、駆動部71のギア71dを介して、モーター71aの回転力が伝達され、第2の管状体4が回転する。
【0068】
第2軸受ユニット82は、第2軸受ハウジング82aと、スラスト軸受80bと、第2ラジアル軸受80cと、軸受保持部821とを備える。第2軸受ハウジング82aは、例えば、プラスチック、樹脂等により形成された非回転体であり、第2ラジアル軸受80cを介して保護鞘4aに被覆された第2の管状体4の外周に取り付けられる。また、第2軸受ハウジング82a内には、スラスト軸受80bが配置されている。スラスト軸受80bおよび第2ラジアル軸受80cは、隣接する軸受保持部821により、第2軸受ハウジング82a内で保持されている。第2軸受ハウジング82aと第2ラジアル軸受80cとの間、第2ラジアル軸受80cと軸受保持部821との間、スラスト軸受80bとギア7との間には、例えば、面圧を分散するために、ワッシャ等を配置してもよい。
【0069】
タンク接続部9は、例えば、プラスチック、樹脂等で形成され、第2軸受ユニット82に着脱可能に取り付けられる。第2の管状体4とタンク接続部9と第2軸受ユニット82との間には、オーリング91が設けられており、タンク接続部9と第2軸受ユニット82との間の密閉性が確保されている。タンク接続部9の内部には、第2の管状体4と連通する連通孔9aが形成されている。タンク接続部9は、
図1および
図2に示すタンク110と接続されており、タンク110には、
図1および
図2に示す真空発生器130が接続されている。
【0070】
骨髄穿刺部1’は、第1ラジアル軸受60aと、ギア7と、スラスト軸受80bと、第2ラジアル軸受80cとを備える。このため、骨髄穿刺部1’の回転方向の軸回転に対する抗力は、第2の管状体4に間接的に取付けられた第1ラジアル軸受60aと、ギア7と、第2ラジアル軸受80cとによって受け止められる。また、骨髄穿刺部1’の推進力に対する抗力は、スラスト軸受80bで受け止められる。このため、骨髄穿刺部1’によれば、穿刺中に受ける各種の抗力を骨髄穿刺部1’全体で受け止めることができ、より安全に操作および穿刺できる。骨髄穿刺部1’の使用方法は、骨髄穿刺部1の使用方法と同様である。
【0071】
骨髄穿刺部1’では、穿刺時に生じる回転方向(ラジアル)から受ける抗力および推進方向(アキシアル)から受ける抗力を、それぞれ、異なる軸受けを設け、受け止めたが、本発明はこれに限定されず、回転方向から受ける抗力および推進方向から受ける抗力を1つの軸受を用いて受け止めてもよい。また、軸受としては、潤滑性軸受等を用いてもよい。
【0072】
骨髄穿刺部1’では、駆動部71の回転力を、ギア7を介して第2の管状体4に伝達していたが、本発明はこれに限定されず、駆動部71の回転力を直接的に第2の管状体4に伝達してもよい。具体例として、モーター71aは、例えば、第2の管状体4を直接回転してもよい。
【0073】
骨髄穿刺部1’の各開口および接続部は、例えば、キャップ等の封止部材、カバー等のカバー部材により封止または被覆されてもよい。これにより、骨髄穿刺針は、例えば、滅菌可能となるため、骨髄穿刺針内を無菌状態にでき、骨髄穿刺システム100の無菌性を保持できる。
【0074】
(案内管の構成)
図面を参照しつつ、案内管30の構成について説明する。
図4は、案内管を示す図であり、(A)は、外針に内針を挿入した案内管の全体を示す平面図、(B)は(A)の断面図、(C)は、外針を示す平面図、(D)は、内針を示す平面図、(E)は、(D)の断面図である。なお、
図4では後述するナビゲーションに使用する磁気センサーについては省略している。
【0075】
本実施形態の骨髄穿刺システム100においては、まず案内管30をドナーの皮膚の上から腸骨等に刺し入れ、次に、案内管30の中空部に骨髄穿刺部1の長さL1を有する突出部分を挿入して、骨髄の穿刺を行う。
【0076】
案内管30は、
図4(A)、(B)に示すように、内針31と、外針32とが組み合わされて構成される。案内管30の材質は、例えば、準オーステナイト系ステンレスが用いられる。しかし、案内管30の材質として、非磁性金属や高張力鋼を使用してもよい。また、案内管30の材質として、非金属を用いることも考えられる。
【0077】
図4(B)、(C)に示すように、内針31は、内針部31aと、リング部31bと、内針ホルダー部31cとを備える。内針部31aは、鋭利な先端部を有する棒状体であり、内針ホルダー部31cに支持される。リング部31bは、回転可能に内針ホルダー部31cに取り付けられており、リング部31bを回転させることにより、内針31の外針32に対する装着と取り外しが可能になっている。
【0078】
図4(B)、(D)、(E)に示すように、外針32は、外針部32aと、外針ホルダー部32bとを備える。外針ホルダー部32bは、中空部を備え、外針部32aは、この中空部内に支持されている。外針部32aは、中空の円筒体である。
【0079】
案内管30を組み立てる際には、まず、
図4(E)に示す外針ホルダー部32bの後端の開口32cと、外針部32aの後端の開口32dとから、内針部31aを挿入する。次に、リング部31bを回転させることにより、外針ホルダー部32bを、内針ホルダー部31cによって締め付け、外針32と内針31とが一体となった案内管30を組み立てる。
【0080】
骨髄の穿刺を行う際には、まず、外針32と内針31とが一体となった案内管30を、ドナーの皮膚の上から腸骨等に刺し入れる。案内管30を刺し入れる際の内針31の回転数は、例えば、最大で1000rpm程度である。腸骨等に刺し入れる部分は、
図4(A)に示す長さL3の部分である。次に、リング部31bを回転させることにより、内針ホルダー部31cによる外針ホルダー部32bへの締め付けを弛め、外針32から内針31を取り外す。したがって、内針31が腸骨等に刺し入られた状態で留置されることになる。腸骨等に刺し入られる部分は、
図4(D)に示す長さL4の部分である。この状態で、外針部32aの後端の開口32dから、外針部32aの中空部に骨髄穿刺部1の長さL1を有する突出部分を挿入して、骨髄の穿刺を行う。
【0081】
本実施形態では、後述するように同じ穿刺孔(皮膚に開けた孔)に差し入れた案内管30から様々な角度で骨髄穿刺部1を挿入して、骨髄の穿刺、骨髄液の採取を行うことができる。また、本実施形態では、同じ穿刺孔(皮質骨に刺した(開けた)孔)に、案内管30を様々な角度で再挿入(穿刺)し、新たな骨髄の穿刺、骨髄液の採取を行なうこともできる。
【0082】
(穿刺先端部の構成)
次に、穿刺先端部2の詳細について、図面を参照しつつ説明する。
図5は、穿刺先端部2を示す斜視図である。
図6は、穿刺先端部2を示す側面図である。
図7は、穿刺先端部2を示す平面図である。
図8は、穿刺先端部2を示す正面図である。
図9は、人腸骨の皮質骨・海綿骨と同等の硬度を有するプラスチック製ブロックによるシミュレーションにおいて、本実施形態の骨髄穿刺部1を用いて穿刺を行った場合の穿刺跡を示す図である。
図9(A)は、入射角度5度で穿刺を行った場合、
図9(B)は、入射角度10度で穿刺を行った場合、および
図9(C)は、入射角度15度で穿刺を行った場合のそれぞれの穿刺跡を示す図である。
【0083】
穿刺先端部2は、上述したように、管体20と、円板状部21と、連結部22とを備えている。管体20は、中空円筒である。
図6に示すように、管体20の先端面20aと管体20の中心軸Cとのなす角度θは、鋭角に設定されている。本実施形態では、角度θは、例えば、50度〜60度に設定されている。
図5、
図7および
図8に示すように、先端面20aには、管体20の中心軸Cと交差する開口20bを備えている。このように、開口20bは、管体20の中心軸Cとのなす角度θが鋭角の先端面20aに形成されているので、中心軸Cに対して垂直な先端面に開口を形成する場合に比べて、開口20bを大きくすることができる。その結果、骨髄液を効率よく採取することができる。また、穿刺先端部2では、このように開口20bが大きく形成されており、かつ開口が1箇所に形成されているため、穿刺先端部2により穿刺された海綿骨を管体20内に吸引した際に、開口20bに負圧を集中でき、開口20bへの海綿骨の詰まりを防止できる。その結果、骨髄液を効率よく採取できることができる。
【0084】
また、
図5に示すように、管体20の後端面20cには、開口20dが形成されている。したがって、骨髄液は、大きく形成された開口20bを通り、管体20の中空部および開口20dを介して、第1の管状体3側へと吸引される。
【0085】
円板状部21は、管体20の中心軸Cと一致する径方向の中心軸C1を有している。つまり、円板状部21は、管体20の中心軸C上に、円板状部21の径方向(Z方向)の中心軸C1を有し、矢印Zで示す穿刺方向の先端に位置している。管体20は、中心軸Cの周りに、例えば、反時計方向または時計方向に回転するが、円板状部21の径方向の中心軸C1と、管体20の中心軸Cとが一致しているため、偏心がなく、円滑な回転が行われることになる。また、骨髄腔内の組織(海綿骨等)は、円板状部21の回転により穿孔されるが、円板状部21の偏心のない回転により、
図2に示す円板状部21の直径Rに対応した必要最小限の穿孔(穿刺孔)が形成される。さらに、穿刺方向の先端となる円板状部21の周縁は、円弧状であり、鋭利な部位が存在していない。その結果、円板状部21が皮質骨に到達しても、皮質骨を損傷することがなく、穿刺方向の先端となる円板状部21が骨髄腔の中から外に穿刺(穿孔)することを防止することができる。また、円板状部21が海綿骨を穿孔(穿刺)できるため、穿刺先端部2によれば、例えば、海綿骨からも効率よく骨髄液を回収できる。円板状部21の周縁部では、円板状部21の円板の面と、側面とが直交方向で交差しているが、本発明はこれに限定されず、円板状部21の周縁部は、Rを持たせる、すなわち、曲面としてもよい。これにより、円板状部21は、穿孔性を維持でき、かつ円板状部21の周縁部に、鋭利な部位が存在なるため、円板状部21が皮質骨に到達しても、皮質骨を損傷することがなく、穿刺方向の先端となる円板状部21が骨髄腔の中から外に穿刺(穿孔)することをより効果的に防止することができる。
【0086】
なお、先端回転部としての円板状部21は、円板の一部が切り欠かれた形状に限定される訳ではなく、穿刺方向の先端の形状が円弧状であれば、楕円板の一部が切り欠かれた形状であってもよいし、円板または楕円板と他の形状の板が組み合わされた形状であってもよい。先端回転部は、他にもさまざまな形状を取ることができるが、皮質骨の損傷を防止するためには最先端(遠位端)面が曲面状であることが好ましく、また、骨髄腔内の組織の穿孔性(穿刺性能)を向上させるために、中心軸C1に垂直な方向の厚みの薄い板状であることが好ましい。
【0087】
さらに、
図7に示すように、円板状部21の直径Rは、管体20の中心軸Cに直交する方向であるY方向の幅Wよりも大きく形成されている。したがって、円板状部21により形成された穿孔(穿刺孔)内を、管体20、外套部5、および外套部5に覆われた第1の管状体3が円滑に進行することができる。直径Rの大きさは、例えば、後述の案内管の内径に応じて、適宜設定できる。直径Rの大きさは、例えば、8G(ゲージ)前後である。
【0088】
管体20は第2の管状体4、第1の管状体3と連続して構成される管状体の先端部であり、
図5、6、7、8に示すように、管状体の遠位端面にあたる先端面20aに開口20bを備えている。
【0089】
骨髄孔における骨髄液は、吸引ポイントのごく近傍からのみ採取できることが分かっている。本実施形態では、先端回転部(円板状部21)の後ろに配置された管状体の先端面(遠位端面)20aの開口20bから吸引するため、穿孔(穿刺)された広い領域から効率よく骨髄液を採取することができる。
【0090】
また、先端面20aと管体20の中心軸Cとのなす角度θは、垂直ではなく鋭角に設定されおり、このため開口20bは管状体(20、3、4)の中心軸と直交せずに交差している。本実施形態では、角度θは、例えば、50度〜60度に設定されている。
【0091】
このように、開口は、管状体(20、3、4)の中心軸Cとのなす角度θが垂直ではなく鋭角の先端面20aに形成されているので、中心軸Cに対して垂直な先端面に開口を形成する場合に比べて、開口20bを大きくすることができる。その結果、骨髄液を効率よく採取することができる。
【0092】
また、
図5に示すように、管体20の後端面20cには、開口20dが形成されている。したがって、骨髄液は、大きく形成された開口20bを通り、管体20の中空部および開口20dを介して、第1の管状体3側へと吸引される。
【0093】
連結部22には、
図5および
図7に示すように、管体20の開口20bと連続する溝22aが形成されている。したがって、円板状部21によって穿孔(穿刺)される骨髄は、溝22aから開口20bへと導かれ、管体20内に発生している負圧により、第1の管状体3側に吸引される。
【0094】
図9に、人腸骨の皮質骨・海綿骨と同等の硬度を有するプラスチック製ブロックにおいて、本実施形態の骨髄穿刺部1を用いて穿刺を行った場合の穿刺跡を示す。
図9(A)から
図9(C)において、プラスチック製ブロックは、骨髄に相当する発泡部200と、皮質骨に相当する積層板状部201を備えている。
図9(A)から
図9(C)に示すように、入射角度が5度から15度のいずれの場合も、穿刺跡203は皮質骨に相当する積層板状部201に侵入しておらず、発泡部200の中に形成されていることが分かる。特に、
図9(C)に示すように、入射角度が15度の場合には、穿刺跡203は、積層板状部201に侵入する角度で積層板状部201側に進むものの、積層板状部201の手前で屈曲し、積層板状部201の表面に沿って進行していることが分かる。これは、穿刺方向の先端となる円板状部21の周縁に鋭利な部位がなく、かつ、第1の管状体3がコイル状に形成されて可撓性を有しているためである。
【0095】
図20に、
図9と同じプラスチック製ブロックにおいて、比較例の骨髄穿刺部を用いて穿刺を行った場合の穿刺跡を示す。
図20(A)は、入射角度5度で穿刺を行った場合、
図20(B)は、入射角度10度で穿刺を行った場合、および
図20(C)は、入射角度20度で穿刺を行った場合のそれぞれの穿刺跡を示す図である。比較例の骨髄穿刺部は、鋭利な形状の穿刺先端部を有し、穿刺先端部に連続する管状体は全て剛体で形成されたものを用いた。
【0096】
図20(A)に示すように、入射角度が5度の場合には、穿刺跡203は積層板状部201に侵入することはないことが分かる。しかしながら、
図20(A)、(B)に示すように、入射角度が10度および20度の場合には、穿刺跡203は屈曲することなく積層板状部201側に進行していることが分かる。したがって、このまま比較例の骨髄穿刺部を進行させた場合には、穿刺方向の先端が積層板状部201に侵入する危険性があることが理解される。
【0097】
以上のように、本実施形態によれば、骨髄穿刺装置における骨髄穿刺部1の穿刺先端部2を、先端面20aに開口20bを備える管体20と、穿刺方向の先端に位置する円板状部21と、先端面20aの一部と円板状部21とを連結する連結部22とを備えて構成した。その結果、穿刺方向の先端によって骨髄腔等の中から外に穿刺(穿孔)することがなく、かつ、効率良く骨髄液を吸引することが可能な骨髄穿刺装置を提供することができる。また、本実施形態において、骨髄穿刺装置(骨髄穿刺針)における第1の管状体3が可撓性である。このため、本実施形態によれば、穿刺先端部2が骨髄腔内において皮質骨に接触しても、第1の管状体3が屈曲するため、穿刺方向の先端によって骨髄腔等の中から外への穿刺(穿孔)等の皮質骨の損傷リスクを低減できる。
【0098】
なお、管体20の側壁に開口20bとは別の開口を設けてもよい。但し、この場合には、管体20内の負圧の低下等により、側壁に設けた別の開口が詰まり易くなるため、骨髄液を良好に吸引する観点からは、開口20bのみを骨髄液採取用の開口として用いることが好ましい。
【0099】
(第1の管状体および薬液供給路の構成)
次に、第1の管状体3および薬液供給路5aの構成について詳しく説明する。
図10は、第1の管状体3の一部を拡大して示す側面図である。
【0100】
図10に示すように、第1の管状体3はステンレス等の丸線をコイル状に巻いて形成され、丸線の巻き方向は、第1の管状体3の回転方向と一致している。したがって、第1の管状体3が回転すると、コイル状の丸線は締まる方向に回転することになり、第1の管状体3の外径が回転によって増大することがない。その結果、第1の管状体3は、外套部5との間の薬液供給路5aを確保しつつ、外套部5内で良好に回転可能となっている。
【0101】
本実施形態においては、
図1に示す第1シャフト6の供給口6aに、
図1および
図2に示すシリンジポンプ150が接続されており、シリンジポンプ150からは、例えば、40μl/秒(sec)の速度で、ヘパリン等の抗凝固剤が供給される。供給口6aから供給された抗凝固剤は、薬液供給路6bおよび薬液供給路5aを介して、
図10に示す矢印Z方向に搬送され、第1の管状体3の表面に供給される。
【0102】
第1の管状体3の表面に供給された抗凝固剤は、
図7に矢印Cで示すように、丸線同士の隙間に進入し、コイル状に巻かれた丸線の巻き方向に沿って矢印Z方向に搬送される。また、一部の抗凝固剤は、丸線同士の隙間から、第1の管状体3の中空部に進入し、中空部内で吸引される骨髄液と混合されることになる。また、矢印Z方向に搬送された抗凝固剤は、管体20と接続部付近において、丸線同士の隙間から第1の管状体3の中空部に進入し、管体20の開口20bから吸引された直後の骨髄液と混合することになる。また、第1の管状体3がらせん状に回転することにより、吸引直後の骨髄液および吸引後、第1の管状体3内を吸引される骨髄液と抗凝固剤とが効率よく混合されるため、骨髄液の凝固を確実に防ぐことができる。
【0103】
以上のように、本実施形態によれば、第1の管状体3をコイル状に巻かれた丸線で形成したので、薬液としての抗凝固剤が第1の管状体3の表面から第1の管状体3の中空部に浸透可能となっている。その結果、薬液供給用のチューブ等を設けることなく、骨髄液の吸引経路となる第1の管状体3の中空部に確実に抗凝固剤を供給することができる。したがって、骨髄液を採取するための穿孔(穿刺孔)を必要以上に大きくすることなく、かつ、骨髄液の吸引経路を充分に確保しつつ、骨髄液の凝固を確実に防ぐことができる。
【0104】
また、本実施形態によれば、第1の管状体3の外径を、外套部5の内径よりも小さくしたので、第1の管状体3は外套部5の内部で回転可能とすることができ、コイル状に巻かれた丸線の巻き方向に沿って抗凝固剤を管体20の近傍まで搬送することができる。その結果、管体20の開口20bから吸引された直後の骨髄液と、抗凝固剤とを混合させることができ、骨髄液の凝固を確実に防ぐことができる。
【0105】
さらに、本実施形態によれば、第1の管状体3の外径を、外套部5の内径よりも小さくしたので、第1の管状体3の外周面と、外套部5の内周面との間に、薬液供給路5aを設けることができ、抗凝固剤を第1の管状体3の表面に確実に供給することができる。
【0106】
また、本実施形態によれば、外套部5は、第1の管状体3と接続される剛体の第2の管状体4の一部も覆い、第2の管状体4の外径は、外套部5の内径よりも小さくなっている。その結果、第2の管状体4の外周面と、外套部5の内周面との間にも、薬液供給路5aを設けることができ、供給口6aから供給された抗凝固剤を、薬液供給路5aから第1の管状体3の表面に確実に供給することができる。
【0107】
なお、上述したように、第1の管状体3の中空部内には、ポンプにより負圧が発生しているので、抗凝固剤が管体20の開口20bから外部に漏れ出すことはない。
【0108】
また、第1の管状体3を、コイル状に巻いた丸線で形成したことにより、第2の管状体4から受ける回転力を、確実に管体20に伝えることができ、管体20において必要なトルクを発生させることができる。さらに、本実施形態においては、図示を省略するトロッカーと呼ばれる案内管に骨髄穿刺部1を挿入し、第1の管状体3および第1の管状体3を覆う外套部5の部分並びに穿刺先端部2のみが、トロッカーの先端開口から突出するように構成する。したがって、骨髄穿刺部1において骨髄腔内に挿入される部分は、コイル状に巻いた丸線で形成した第1の管状体3により可撓性を有するので、
図9に示したように、穿刺先端部2による皮質骨等の穿孔を防止することができる。
【0109】
なお、本実施形態においては、第1の管状体3を、コイル状に巻いた丸線で形成した例について説明したが、本発明はこのような例に限定される訳ではない。薬液が浸透可能であって、管体20にトルクを確実に伝えることができる材質であれば、他の構成でもよく、例えば、丸線を編み込んだ構成であってもよいし、一部に浸透孔を有する部材により形成してもよい。しかし、本実施形態のようにコイル状に形成すれば、薬液の先端領域への運搬を補助できるため好ましい。
【0110】
また、本実施形態においては、薬液として抗凝固剤を用いた例について説明したが、本発明はこのような例に限定される訳ではない。必要に応じて、抗凝固剤以外の他の薬液を用いることができる。
【0111】
さらに、本実施形態においては、コイル状に巻いた丸線で形成した第1の管状体3および外套部5を、骨髄穿刺装置に用いた例について説明したが、このような第1の管状体3および外套部5は、他の装置にも適用可能である。例えば、血液採取を行うカテーテル等の内部に、第1の管状体3および外套部5を設け、抗凝固剤等の薬液を供給することも可能である。
【0112】
また、本実施形態では、外套部5が第1の管状体3と第2の管状体4の一部を覆っているが、この形態に限るものではなく、例えば、第1の管状体3の一部のみを覆っている形態でもよい。ただし、外套部5は穿刺先端部2の近傍まで延びていることが、穿刺先端部2による処置領域まで薬液を効率的に供給できる点で好ましい。
【0113】
さらに、本実施形態では、薬液供給路5aは、外套部5と第1の管状体3との間の空隙で形成され、第1の管状体3の長手方向に垂直な方向での断面が環状の経路となっているが、これに限るものではなく、構造が複雑になるが、例えば、外套部5内に設けた直線上の薬液供給路であってもよい。
【0114】
図11は、第1の管状体3の変形例を示す断面図である。
図12は、第1の管状体3の変形例を示す正面図である。
図11および
図12に示すように、第1の管状体3の内周に、PTFE等のプラスチック、樹脂等で形成した内套部50を設けてもよい。内套部50は、例えば、可撓性の円筒管である。この場合には、第1の管状体3と内套部50とにより、本発明の第1の管状体が構成されることになる。このように構成する場合には、
図8および
図9に示すように、内套部50の複数箇所に開口50aを形成すればよい。この場合でも、骨髄液を採取するための穿孔(穿刺孔)を必要以上に大きくすることなく、かつ、骨髄液の吸引経路を充分に確保しつつ、骨髄液の凝固を確実に防ぐことが可能である。なお、第1の管状体3の内周に内套部50を設ける場合を例にあげたが、コイル状の第1の管状体3に代えて、内套部50を第1の管状体3として設けてもよい。この場合、内套部50の遠位端が、例えば、管体20と接続する。また、内套部50の外周面と、外套部5の内周面との間の空間が薬液供給路5aとなる。
【0115】
本実施形態では、第1の管状体3の外周に薬液供給路5aを設けているが、本発明はこれに限定されず、薬液供給路5aを設けなくてもよい。この場合、第1の管状体3は、例えば、その内周に薬剤配置部を有することが好ましい。薬剤配置部は、例えば、ゲル、ポリマー等の徐放性付与物質と、抗凝固剤等の薬剤との混合物が配置されている。薬剤配置部は、例えば、上記混合物が塗布されているということもできる。このような構成により、骨髄液の吸引時に、薬剤配置部から抗凝固剤等の薬剤を放出できるため、例えば、薬剤供給路5a、6a、6bおよびシリンジポンプ150を省略することができる。このため、骨髄穿刺装置10の構成を簡易にできる。
【0116】
表1は本実施形態の骨髄穿刺部1および薬液供給路5aを有する骨髄穿刺装置10より、ブタの腸骨から骨髄液を採取した結果を示す表である。表1において、従来法とは、腸骨に開けた孔から既製の穿刺針を挿入して、その穿刺針の先から骨髄液を吸引したものであり、本実施形態のように穿刺先端を進行させながら骨髄液を吸引するものではない。
【0117】
表1においてCD34+、CD45dim領域細胞の割合とは、採取した骨髄液中のリンパ球・単球分画(MNC分画)中のCD34+、CD45dim領域の細胞の割合をフローサイトメトリにより求めた値である。ここから分かるように、本実施形態の骨髄穿刺部1および手法によれば、造血幹細胞のマーカーとなるCD34+、CD45dim領域の細胞の割合を向上させることができる。つまり、本実施形態の骨髄穿刺部1および手法によれば、骨髄移植に必要な造血幹細胞の割合を向上させることができ、効率的な採取を実現できている。このため、本実施形態の骨髄穿刺部1および手法によれば、例えば、採取時間を短縮でき、かつ穿孔(穿刺)回数を低減できるため、ドナーに対する侵襲性を大幅に低減でき、局所麻酔での骨髄液採取を可能とする。
【0119】
また、表1と同様の方法により、従来法および本実施形態の方法により、ブタ1匹の左右の腸骨から得られる骨髄液量、総白血球数(WBC)および総CD34+、CD45dim細胞数を比較した。この結果を表2に示す。
【0121】
細胞治療の中で、造血幹細胞移植がもっとも骨髄液量および幹細胞数を必要とする。骨髄穿刺部1および薬液供給路5aを有する骨髄穿刺装置10を用いた採取方法により採取された120〜140mLの骨髄液に含まれるCD34+、CD45dimの造血幹細胞数は、従来法により採取されたヒト腸骨骨髄液の平均値927±163mLおよび骨髄液に含まれる造血幹細胞数の平均値89.6±76.1(×10
6)に匹敵した。骨髄穿刺部1および薬液供給路5aを有する骨髄穿刺装置10によれば、従来法と比較して、遙かに少ない骨髄液量で、造血幹細胞移植に必要な造血幹細胞を採取できる。また、骨髄穿刺部1および薬液供給路5aを有する骨髄穿刺装置10によれば、1回の穿刺により得られる骨髄液量が15〜20mLであり、ブレが少ない。このため、穿刺回数を調整することにより、骨髄液の採取量を調整できる。また、採取に要する時間は、約2分程度であり、両側腸骨で8〜10回の穿刺回数で17〜20分と、極めて短時間で採取できた。
【0122】
つぎに、表2で得られた骨髄液について、CFU-F(colony forming unit-fibroblast)アッセイを実施した。この結果を、下記表3に示す。
【0124】
表3に示すように、骨髄穿刺装置10を用いた採取方法により採取した骨髄液は、従来法により採取した骨髄液と比較して、6〜13倍のCFU−Fコロニー数を示した。この結果から、骨髄穿刺装置10を用いた採取方法により採取した骨髄液は、従来法により採取した骨髄液と比較して、高濃度の造血幹細胞を含むだけでなく、高濃度の間葉系幹細胞を含むことがわかった。
【0125】
(ナビゲーション)
次に、ナビゲーションについて図面を参照しつつ説明する。
図13〜
図19は、ナビゲーションを説明する図であり、
図13は、骨髄穿刺装置10における骨髄穿刺部1を模式的に示す断面図である。
図14は、案内管30を示す平面図である。
図15は、骨髄穿刺システム100を模式的に示す図である。
図16は、骨髄穿刺システム100の構成を示すブロック図である。
図17から
図19は、骨髄穿刺システムにおけるナビゲーションの動作を説明する模式図である。
【0126】
本実施形態は、
図13に示すように、骨髄穿刺部1の第2シャフト8に第1の磁気センサー40を取り付ける。また、
図14に示すように、案内管30の外針部32aに第2の磁気センサー41を取り付ける。
【0127】
図15および
図16に示す骨髄穿刺システム100は、第1の磁気センサー40および第2の磁気センサー41と接続されるトラッキング部160、カメラ部170、およびMRI部180を備えているところが、
図1および
図2に示す骨髄穿刺システム100と異なる。なお、カメラ部170、およびMRI部180は、
図15における図示を省略している。また、
図15および
図16に示す骨髄穿刺システム100においては、PC190は、表示制御部196、および表示部197として機能する。
【0128】
トラッキング部160は、骨髄穿刺装置10に取り付けた第1の磁気センサー40、および案内管30に取り付けた第2の磁気センサー41と接続されており、第1の磁気センサー40および第2の磁気センサー41から出力される位置および角度のデータを受信する。トラッキング部160は、受信した位置および角度のデータを、PC190に表示可能な位置および角度のデータに変換する。トラッキング部160は、PC190と接続されており、変換した位置および角度のデータをPC190に送信する。
【0129】
カメラ部170は、骨髄穿刺を行うドナーの腸骨等の周辺を撮影する。ドナーの腸骨等の周辺には、マーカーが、例えば、3箇所に付けられており、骨髄穿刺を行う箇所は、これらのマーカーに囲まれた箇所とされている。カメラ部170は、これらのマーカー、およびマーカーに囲まれた箇所を撮影する。カメラ部170は、PC190と接続されており、撮影データをPC190に送信する。
【0130】
MRI部180は、核磁気共鳴画像法(Magnetic Resonance Imaging)により撮像した、骨髄穿刺を行うドナーの腸骨等のMRI画像に基づいて、腸骨等の3次元の3Dモデルを作成する。MRI画像の撮像は、上述したように腸骨等の周辺にマーカーを付けた状態で行い、マーカーについてもMRI画像として撮像される。腸骨等の3Dモデルにおいてもマーカーの位置が確認可能となっている。MRI部180は、PC190と接続されており、腸骨等の3DモデルデータをPC190に送信する。
【0131】
PC190は、解析部195、表示制御部196、および表示部197として機能する。解析部195は、第1の磁気センサー40の出力に基づいて、穿刺先端部2の位置を算出する位置算出部として機能する。また、解析部195は、第2の磁気センサー41の出力に基づいて、穿刺先端部2の軌道の予測、および穿刺先端部2の皮質骨との接触位置の予測を行う予測部として機能する。さらに、解析部195は、位置算出部の機能により算出した穿刺先端部2の位置の時間的変化に基づいて、穿刺先端部2の移動速度を算出する移動速度算出部として機能する。また、解析部195は、位置算出部の機能により算出した穿刺先端部2の位置に基づいて、穿刺先端部2の既往軌道を記録する記録部として機能する。
【0132】
表示制御部196は、解析部195によって算出された穿刺先端部2の位置を、表示部197に随時表示させる。また、表示制御部196は、記録部として機能する解析部195により記録した穿刺先端部2の既往軌道を表示部197に表示させる。さらに、表示制御部196は、予測部として機能する解析部195により予測した穿刺先端部2の軌道および穿刺先端部2の皮質骨との接触位置を表示部197に表示させる。また、表示制御部196は、移動速度算出部として機能する解析部195により算出した穿刺先端部2の移動速度を報知する移動速度報知部としても機能する。
【0133】
表示部197は、液晶ディスプレイ等のディスプレイであり、穿刺先端部2の位置、既往軌道、予測された軌道、予測された穿刺先端部2の皮質骨との接触位置、穿刺先端部2の移動速度等を表示する。
【0134】
次に、本実施形態の骨髄穿刺システム100におけるナビゲーションについて説明する。一例として、ドナーの腸骨から骨髄採取を行うものとする。ドナーの腸骨は、予めMRI撮像しておき、この際、穿刺を行う箇所の周辺の皮膚に上述した3つのマーカーを貼り付けておく。マーカーは、MRI画像に映り込むものを用いる。
【0135】
撮像した腸骨のMRI画像は、MRI部180によって、腸骨の3Dモデルが作成される。この3Dモデルには、上記マーカーも含まれる。腸骨の3Dモデルは、予め、MRI部180からPC190に送信される。
【0136】
骨髄穿刺を行う場合には、上記マーカーを貼り付けた箇所を含む所定範囲の領域を、カメラ部170によって撮影し、撮影された画像はカメラ部170からPC190に送信される。PC190の解析部195は、予め受信しておいた腸骨の3Dモデルと、カメラ部170によって撮影された画像とを対応させる。対応させる際には、3Dモデルのマーカーを、カメラ部170によって撮影された画像のマーカーに一致させるようにする。
【0137】
次に、術者が、内針31と外針32が一体となった案内管30の先端部を、マーカーによって囲まれた領域における所定の箇所に皮膚の上から腸骨に刺し入れ、内針31を抜いて外針32を腸骨に留置させる。この時、案内管30に取り付けた第2の磁気センサー41から送信される位置および角度のデータが、トラッキング部160によって、表示可能な位置および角度のデータに変換され、PC190に送信される。PC190の解析部195は、受信した案内管30の位置および角度のデータに基づいて、3Dモデル上に案内管30の画像データを重畳する。また、解析部195は、案内管30の位置および角度のデータに基づいて、骨髄穿刺部1における穿刺先端部2の予測される軌道の画像データと、穿刺先端部2の予測される皮質骨との接触位置の画像データとを作成し、上記画像データに重畳する。解析部195は、このようにして作成した画像データを表示制御部196に出力する。表示制御部196は、入力した画像データに基づいて表示部197に画像を表示させる。
【0138】
図17は、表示部197に表示される画像の一例を示す図である。
図17においては、腸骨の3Dモデル画像G1、案内管30の外針32に対応する画像G2、穿刺先端部2の予測される軌道の画像G3、穿刺先端部2の予測される皮質骨との接触位置の画像G4が表示されている。
【0139】
このように、本実施形態によれば、穿刺先端部2の予測される軌道の画像G3を、腸骨の3Dモデル画像G1上に表示するので、超音波装置の使用が困難な腸骨内の骨髄腔における穿刺先端部2の予測軌道を術者が確認することができる。表示された予測軌道が所望の位置にない場合には、術者が案内管30の外針32の角度を変更することにより、新たな穿刺先端部2の予測される軌道の画像G3等が表示される。したがって、術者は、これらの画像を参照することにより、所望の軌道で骨髄の穿刺を行うことができる。
【0140】
術者が穿刺先端部2の予測軌道を確認し、この予測軌道に沿って骨髄の穿刺を行うことを決めた場合には、案内管30の外針32の中空部に、骨髄穿刺装置10の長さL1の突出部分を挿入していく。この時、骨髄穿刺装置10の骨髄穿刺部1に取り付けた第1の磁気センサー40から送信される位置および角度のデータが、トラッキング部160によって、表示可能な位置および角度のデータに変換され、PC190に送信される。PC190の解析部195は、受信した骨髄穿刺部1の位置および角度のデータに基づいて、3Dモデル上に骨髄穿刺部1における穿刺先端部2の位置の画像データを重畳する。第1の磁気センサー40は、本実施形態では第2シャフト8に取り付けられているが、第1の磁気センサー40の取り付け位置から穿刺先端部2までの長さは既知なので、上記位置および角度のデータに基づいて穿刺先端部2の位置を算出することができる。解析部195は、このようにして作成した画像データを表示制御部196に出力する。表示制御部196は、入力した画像データに基づいて表示部197に画像を表示させる。
【0141】
図18は、表示部197に表示される画像の一例を示す図である。
図18においては、
図17に示す画像に加えて、穿刺先端部2の位置の画像データG5が表示されている。このように、本実施形態によれば、穿刺先端部2の現在の位置の画像G5を、腸骨の3Dモデル画像G1上に表示するので、超音波装置の使用が困難な腸骨内の骨髄腔における穿刺先端部2の位置を術者が確認することができる。したがって、術者は、この画像を参照することにより、所望の軌道で骨髄の穿刺を行うことができる。また、上述のように穿刺先端部2の予測される皮質骨との接触位置の画像G4も腸骨の3Dモデル画像G1上に表示されているので、穿刺先端部2と皮質骨との接触を防止することができる。
【0142】
図18においては、穿刺先端部2の既往軌道を示す画像G6も、腸骨の3Dモデル画像G1上に表示されている。解析部195は、穿刺先端部2の現在の位置を逐次記憶し、記憶したデータに基づいて、既往軌道の画像データを作成する。解析部195は、作成した既往軌道の画像データを表示制御部196に出力し、表示制御部196は既往軌道の画像G6を表示部197に表示させる。
図18の例では、3つの既往軌道が画像G6として表示されている。したがって、術者は、既往軌道を確認しながら次の穿刺を行う軌道を決めることができるので、骨髄の穿刺箇所の重複を防止することができる。
【0143】
図19は、腸骨の3Dモデル画像G1を、矢印Z1の断面方向から表示された例である。
図19に示すように、案内管30の外針32がP1およびP2に示す位置および角度で刺し入れられた場合には、穿刺先端部2の予測される皮質骨との接触位置の画像G4が表示される。しかし、案内管30の外針32がP3に示す位置および角度で刺し入れられた場合には、穿刺先端部2の予測される皮質骨との接触位置の画像は表示されない。これは、
図1等に示す骨髄穿刺部1の突出部分の長さがL1であることが既知であり、腸骨の骨髄腔の厚さ等も3Dモデルに基づいて算出できるからである。このように、本実施形態によれば、穿刺先端部2の予測される皮質骨との接触位置の画像が表示されない軌道を選択することにより、安全に骨髄の穿刺を行うことができる。
【0144】
また、解析部195は、第1の磁気センサー40から得られる位置および角度データの時間的な変化を算出することにより、穿刺先端部2の移動速度を算出する。解析部195は、算出した移動速度のデータを表示制御部196に出力し、表示制御部196は移動速度を表示部197に表示させる。したがって、術者は、穿刺先端部2の移動速度を確認しながら骨髄の穿刺を行うことができる。骨髄液の採取品質を良好に保つためには、穿刺先端部2を吸引速度(吸引圧)と関連付けられた適切な速度で進入させる必要があるが、本発明によれば、穿刺先端部2の移動速度を確認することができるので、術者によらず、骨髄液の採取品質を良好に保つことができる。ここで、穿刺先端部2の移動速度は、吸引速度(吸引圧)が一定の場合には一定速度とし、吸引速度(吸引圧)を変化させる場合にはそれに伴って変化させるようにしてもよい。
【0145】
本実施形態では、移動速度報知部として表示制御部196を用いたが、本発明はこのような態様に限定される訳ではない。例えば、移動速度報知部として、ブザー等の音の出力を制御する制御部を用いてもよい。この場合には、吸引速度(吸引圧)と関連付けられた所定の移動速度と穿刺先端部2の移動速度を比較部(図示せず)にて比較し、穿刺先端部2の移動速度が適切な速度の範囲外になった場合に、ブザー等の音を出力させるという態様が考えられる。また、移動速度の表示は、移動速度の値を直接表示する場合だけでなく、インジケーター等により適切な速度の範囲を表示するようにしてもよい。あるいは、これらの態様のすべて、もしくはいくつかを適宜組み合わせてもよい。
【0146】
さらに、穿刺先端部2の移動速度が適切な速度の範囲外になった場合には、PC190から制御ユニット120にフィードバック信号を送信し、骨髄穿刺装置10におけるモーターの駆動を停止させるようにしてもよい。
【0147】
以上のように、本実施形態によれば、穿刺先端部2の既往軌道、予測軌道、現在の位置を腸骨の3Dモデル画像上に表示するので、骨髄採取を一度行った箇所と同じ箇所に穿刺先端部2を進入させてしまうことを防止することができる。特に、超音波装置の使用が困難な腸骨等の骨の内部の骨髄腔において、穿刺先端部2の既往軌道、予測軌道、現在の位置を術者に知らせることができるので、本発明は骨髄穿刺に極めて有効である。その結果、骨髄採取の効率を向上させることができる。
【0148】
特に、同じ穿刺孔(皮膚に開けた孔または皮質骨に開けた孔)に差し入れた案内管30から骨髄穿刺部1を挿入する場合には、既往軌道を通ってしまう可能性が高いため、本実施形態のナビゲーションは有効である。
【0149】
さらに、穿刺先端部2の現在位置または予測軌道が、記録されている既往軌道上にあるまたは既往軌道に近い場合に、ブザー等の音など警告を出力させてもよい。これは例えば、サンプリングモニターしている現在位置の連続する数点(例えば、5点)がある既往軌道上または既往軌道付近にあるときや、予測軌道や予測される皮質骨との接触位置が既往軌道上または既往軌道付近にあるときに警告を出力することで実現できる。
【0150】
また、本実施形態によれば、骨髄採取箇所の重複を確実に防止することができるので、短い時間で効率良く骨髄液の採取を行うことができ、品質の良い骨髄液を採取し、かつ、ドナーへの負担を軽減することができる。
【0151】
さらに、穿刺先端部2の移動速度を確認しながら骨髄の穿刺を行うことができるので、術者によらず骨髄液の採取品質を良好に保つことができる。
【0152】
なお、上述した実施形態においては、骨髄の採取箇所を腸骨とした場合について説明したが、腸骨以外の他の箇所に対しても上述と同様に本発明を適用することが可能である。
【0153】
また、例えば、ナビゲーションにおける移動速度制御や、既往軌道との別軌道への制御は、体内を進行すると同時に体組織に対して所定の処置を行う他の穿刺装置にも適用できる。ここで所定の処置とは組織の採取・吸引、組織の焼灼、薬液の供給を含むが、体組織に変化を与えない単なる撮像などは含まないものである。
【0154】
また、上述したナビゲーションでは、第1の磁気センサーや第2の磁気センサーを用いたが、これに限るものではなく、超音波による位置モニタリングなども使用し得る。ただし、磁気センサーを用いる方が装置の小型化や位置モニタリングの精度の点で好ましい。
【0155】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以下のように、さまざまな態様で実施可能である。また、それぞれの態様を組み合わせて実施することも可能である。
【0156】
本発明は、例えば、穿刺先端部と、遠位端にて上記穿刺先端部に接続される第1の管状体と、上記第1の管状体の少なくとも一部を覆う外側管状体と、を備え、上記第1の管状体は、長手方向に沿った軸の周りに回転可能に形成されており、上記第1の管状体の外径は、上記外側管状体の内径よりも小さく、上記第1の管状体の外側に、薬液供給路が設けられている、ことを特徴する。本発明では、上記第1の管状体は、例えば、上記薬液供給路と上記第1の管状体の中空部(内部)とを連通する連通部を有する。上記連通部は、例えば、上記第1の管状体の穿刺先端部側に形成されている。
【0157】
上記本発明によれば、例えば、第1の管状体の外側に設けられた薬液供給路を介して、薬液が第1の管状体の外側表面に搬送される。第1の管状体の外側表面に搬送された薬液は、穿刺先端部側へ搬送され、穿刺先端部によって採取された組織、例えば、骨髄液等と混合される。また、第1の管状体の外径は、外側管状体の内径よりも小さく、第1の管状体が長手方向に沿った軸の周りに回転可能なので、第1の管状体の外側表面に搬送された薬液は、第1の管状体の回転によって、穿刺先端部側へ搬送され、穿刺先端部によって採取された直後の骨髄液等と薬液とが混合される。薬液として抗凝固剤を用いた場合には、骨髄液等の凝固が確実に防止される。また、薬液を搬送する第1の管状体は、外側管状体内に収納されているので、骨髄液等を採取するための穿孔(穿刺孔)を必要以上に大きくすることなく、かつ、骨髄液等の吸引経路を充分に確保することができる。
【0158】
本発明の別の態様では、上記薬液供給路は、例えば、上記第1の管状体の長手方向に垂直な面における断面が、環状に形成されている、ことを特徴とする。上記薬液供給路は、例えば、上記第1の管状体の長手方向に垂直な面における断面が、環状である。
【0159】
この態様によれば、薬液供給路は、例えば、第1の管状体の長手方向に垂直な面における断面が環状なので、薬液が第1の管状体の外側表面の全体に行き渡り、穿刺先端部側へ確実に搬送される。
【0160】
また、本発明の別の態様では、上記薬液供給路は、例えば、上記外側管状体の内周面と上記第1の管状体の外周面との間の空隙を含む、ことを特徴とする。
【0161】
この態様によれば、薬液供給路は、例えば、外側管状体の内周面と第1の管状体の外周面との間の空隙を含むので、薬液供給用の管状部材等を別途配置する必要がなく、外側管状体の外径の大径化を防ぐことができる。
【0162】
また、本発明の別の態様では、上記薬液供給路は、例えば、上記穿刺先端部近傍まで延びている、ことを特徴とする。
【0163】
この態様によれば、薬液供給路は、例えば、穿刺先端部近傍まで延びているので、薬液が穿刺先端部近傍において供給され、採取した直後の骨髄液等と混合される。
【0164】
また、本発明の別の態様では、上記第1の管状体は、例えば、外側の上記外側管状体に対して、上記外側管状体の内側で回転可能である、ことを特徴とする。
【0165】
この態様によれば、上記第1の管状体は、例えば、外側の上記外側管状体に対して、上記外側管状体の内側で回転可能なので、回転トルクを確実に穿刺先端部に伝達し、かつ、薬液供給路に供給される薬液を回転の力によって搬送することができる。
【0166】
また、本発明の別の態様では、上記第1の管状体の近位端には、例えば、剛体の第2の管状体が接続されている、ことを特徴とする。
【0167】
この態様によれば、剛体の第2の管状体に回転力が与えられると、例えば、その回転力は第2の管状体の近位端に接続される第1の管状体に伝えられ、さらに第1の管状体に接続される穿刺先端部に伝えられる。また、第1の管状体が回転することにより、例えば、上述のように薬液の搬送が行われる。
【0168】
さらに、本発明の別の態様では、上記外側管状体は、例えば、上記第2の管状体の少なくとも一部を覆い、上記第2の管状体の外径は、上記外側管状体の内径よりも小さく、上記第2の管状体が上記第1の管状体と共に上記外側管状体の内部で回転可能であり、上記薬液供給路は、上記第1の管状体の外周面と上記外側管状体の内周面との間に連続して、上記第2の管状体の外周面と上記外側管状体の内周面との間にも設けられている、ことを特徴する。
【0169】
この態様では、薬液供給路は、例えば、第2の管状体の外周面と外側管状体の内周面との間にも設けられ、第1の管状体の外周面と外側管状体の内周面との間に設けられた薬液供給路と連続している。したがって、第2の管状体の外周面に薬液が供給されると、薬液は、上記薬液供給路を介して、確実に第1の管状体の外側表面に供給される。
【0170】
また、本発明の別の態様では、上記第1の管状体は、例えば、コイル状に形成されている、ことを特徴とする。
【0171】
この態様では、第1の管状体は、例えば、コイル状に形成されているので、第1の管状体の外側表面に供給された薬液は、第1の管状体の中空部に浸透自在であり、かつ、第1の管状体の回転に伴って、穿刺先端部側に確実に搬送される。また、第1の管状体をコイル状に形成したことにより、穿刺先端部への回転トルクを確実に伝えることができる。
【0172】
また、本発明の別の態様では、上記コイル状の上記第1の管状体の巻き方向は、例えば、上記第1の管状体の回転方向と一致している、ことを特徴とする。
【0173】
この態様では、コイル状の第1の管状体の巻き方向は、例えば、第1の管状体の回転方向と一致しているので、第1の管状体が回転すると、コイル状の第1の管状体は締まる方向に回転し、第1の管状体の外径が大きくなることがない。その結果、上述した薬液供給路が確保され、かつ、外套部(外側管状体)内で円滑に第1の管状体の回転が行われる。
【0174】
また、本発明の別の態様では、例えば、上記第1の管状体の内部を吸引する吸引装置を有し、上記第1の管状体は、上記薬液供給路の薬液が内部に浸透可能に形成されている、ことを特徴とする。
【0175】
この態様では、穿刺先端部によって採取した骨髄液等は、例えば、吸引装置によって、第1の管状体の内部から吸引される。この際、第1の管状体は、薬液供給路の薬液が内部に浸透可能なので、薬液と骨髄液等とが混合される。
【0176】
また、本発明の別の態様では、例えば、上記吸引装置は骨髄液を吸引し、上記薬液供給路は抗凝固剤を供給する、ことを特徴とする。
【0177】
この態様によれば、穿刺先端部によって採取した骨髄液は、例えば、吸引装置によって、第1の管状体の内部から吸引される。この際、薬液供給路によって供給される抗凝固剤が骨髄液と混合される。その結果、採取した骨髄液の凝固が防止される。
。
【0178】
本発明は、例えば、少なくとも先端が骨髄腔へと挿入され、骨髄液を採取する骨髄穿刺装置において、遠位端を有し、遠位端面に開口を有する管状体と、上記管状体の上記遠位端面よりも遠位側に配置され、上記管状体とともに回転し、骨髄腔内の組織を穿孔(穿刺)する先端回転部(例えば、上記穿刺先端部)と、上記管状体と上記先端回転部とを連結する連結部と、を備えることを特徴とする。本発明の骨髄穿刺器具(骨髄穿刺装置)は、例えば、開口を有する管状体と、上記管状体とともに回転し、骨髄腔内の組織を穿孔(穿刺)可能な先端回転部と、上記管状体と上記先端回転部とを連結する連結部とを備え、上記先端回転部、上記連結部および上記管状体がこの順序で配置されている、ことを特徴とする。上記連結部は、例えば、上記管状体の開口周囲の開口面(遠位端面)と連結している。
【0179】
上記本発明によれば、例えば、管状体とともに回転する先端回転部により骨髄腔内の組織を穿孔(穿刺)し、先端回転部から連結部により連結される管状体の遠位端面には、開口が備えられているので、先端回転部により穿孔(穿刺)した骨髄腔内の組織から骨髄液を効率よく吸引することができる。
【0180】
また、本発明の他の態様では、上記管状体は、例えば、上記先端回転部および上記連結部と一体に形成され、上記開口を有する管体と、上記管体の近位側に配置された可撓性の第1の管状体と、を少なくとも含む、ことを特徴とする。本発明の他の態様は、例えば、上記管状体は、上記開口を有する管体と、可撓性の第1の管状体を含み、上記管体は、上記先端回転部および上記連結部と一体的に形成され、上記先端回転部、上記連結部、上記管体および上記第1の管状体は、この順序で配置されている。
【0181】
上記態様によれば、管状体は、例えば、可撓性を有する第1の管状体と開口を有する管体とを少なくとも含むので、先端回転部が皮質骨に到達しても、第1の管状体の可撓性により、皮質骨を損傷することがない。
【0182】
本発明の別の態様では、上記先端回転部は、例えば、上記管状体の長手方向に延びる中心軸上に径方向の中心軸を有する円板状部を含む、ことを特徴とする。
【0183】
上記態様によれば、例えば、先端回転部が円板状部を含むので、先端に鋭利な部位が存在せず、穿刺方向の先端が骨髄腔の中から外に穿刺(穿孔)することがなく、重大な事故の発生を防止することができる。また、円板状部の径方向の中心軸は、例えば、管状体の長手方向に延びる中心軸上に存在しているので、円板状部は管状体の中心軸に対して偏心なく回転することになり、回転が円滑に行われ、かつ、必要最小限の穿孔(穿刺孔)が形成されることになる。
【0184】
また、本発明の別の態様では、上記連結部には、例えば、上記開口と連続する溝が形成されていることを特徴とする。
【0185】
この態様によれば、例えば、先端回転部と、開口を備える管状体とを連結する連結部には、開口と連続する溝が形成されているので、先端回転部により穿孔(穿刺)した骨髄を、連結部の溝を介して効率よく開口に運ぶことができる。
【0186】
さらに、本発明の別の態様では、例えば、上記遠位端面と上記管状体の長手方向は直交していない、ことを特徴する
【0187】
この態様では、遠位端面は、例えば、管状体の長手方向と直交していないので、管状体に備えられる開口は、管状体の長手方向に対して垂直な遠位端面に備えられる場合(例えば、開口)に比べて大きくなる。その結果、先端回転部により穿孔(穿刺)した骨髄を、開口を通じて効率良く吸引することができる。
【0188】
また、本発明の別の態様では、例えば、上記管状体の長手方向に直交する方向の幅は、上記先端回転部の方が上記管状体よりも大きいことを特徴とする。
【0189】
この態様では、先端回転部が回転することにより形成される穿孔の大きさは、例えば、管状体の長手方向に直交する方向の管状体の幅よりも大きいので、先端回転部により形成される穿孔(穿刺孔)内を、管状体が円滑に進行することができる。
【0190】
本発明の別の態様では、上記穿刺先端部(例えば、先端回転部)および上記管状体(例えば、第1の管状体、第2の管状体および/または外側管状体(外套部)が挿通されることにより上記穿刺先端部(例えば、先端回転部)および上記管状体を案内する案内管を有してもよい。上記管状体は、例えば、可撓性の第1の管状体および剛体の第2の管状体を有し、第2の管状体の長さは、案内管の長さ以下である。上記穿刺先端部、第1の管状体および第2の管状体は、例えば、遠位端から近位端方向に向かって、この順序で配置されている。本発明によれば、例えば、案内管により、上記穿刺先端部および上記管状体の穿刺方向を制御できる。
【0191】
本発明の管状体の駆動装置は、例えば、管状体を保持する保持部と、上記管状体を回転させる駆動部と、上記管状体に薬液を供給する薬液供給部とを、備える、ことを特徴とする。上記管状体は、例えば、上記本発明の穿刺器具(穿刺針)または骨髄穿刺器具(骨髄穿刺針)である。本発明によれば、例えば、管状体の回転および薬液の供給を効率よく実施できる。保持部、駆動部および薬液供給部は、例えば、筐体内に配置されてもよい。
【0192】
本発明の別の態様では、上記管状体は、薬液を導液する第1の薬液供給路を有し、上記薬液供給部は、例えば、管状体の第1の薬液供給路と連通していることが好ましい。薬液供給部は、薬液を導液する第2の薬液供給路を有し、第2の薬液供給路は、保持部の内周面と上記管状体の外周面との間の空間であり、上記第2の薬液供給路は、上記第1の薬液供給路と連通している。本発明によれば、例えば、駆動装置外から供給された薬液を、管状体に効率よく供給できる。
【0193】
本発明の別の態様では、例えば、上記管状体の軸受部を備え、保持部は、軸受部を介して管状体を保持する。具体的には、上記管状体の外周には、例えば、軸受部が配置され、軸受部の外周には、保持部が配置される。軸受部は、例えば、回転方向(ラジアル)から受ける抗力に対する第1の軸受部と上記管状体の推進方向(アキシアル、軸方向)から受ける抗力に対する第2の軸受部とを有する。本発明の別の態様では、例えば、上記管状体の保護部(例えば、保護鞘)を備えてもよい。この場合、保持部は、保護部および軸受部を介して管状体を保持する。具体的には、上記管状体の外周には、保護部が配置され、保護部の外周には、軸受部が位置され、軸受部の外周には、保持部が配置される。本発明によれば、例えば、管状体の駆動時に発生する抗力を駆動装置により吸収することができるため、駆動装置を簡便に操作できる。また、本発明によれば、例えば、回転時に管状体が破損することを防止できる。
【0194】
本発明は、例えば、穿刺先端部と、上記穿刺先端部に接続された管状体と、を備え、体内を進行しながら体組織に対して所定の処置を行う穿刺部と、上記穿刺部の移動速度を算出する移動速度算出部と、を備える、ことを特徴とする。
【0195】
本発明によれば、例えば、体内を進行する穿刺部の位置が移動すると、移動速度算出部により穿刺部の移動速度が算出される。したがって、本発明によれば、例えば、算出された穿刺部の移動速度を参照することにより、穿刺部の移動速度を適正範囲とすることができ、術者の経験によらずに処置の品質を一定に保つことが可能となる。
【0196】
本発明の別の態様では、例えば、上記移動速度算出部により算出された移動速度と所定の移動速度とを比較する比較部を備えることを特徴とする。
【0197】
この態様では、例えば、比較部により、算出された移動速度と所定の移動速度との比較が行われるので、穿刺部の移動速度と所定の移動速度との比較結果を参照することにより、穿刺部の移動速度を適正範囲とすることができ、術者の経験によらずに処置の品質を一定に保つことが可能となる。
【0198】
また、本発明の別の態様では、例えば、上記比較部の比較結果に基づき、上記穿刺部の移動速度に関する報知を行う報知部を備えることを特徴とする。
【0199】
この態様では、例えば、報知部により、比較部の比較結果に基づいた穿刺部の移動速度に関する報知が行われるので、術者は、所定の移動速度に対する穿刺部の移動速度に関する情報を知ることができる。その結果、この態様によれば、例えば、穿刺部の移動速度を適正範囲とすることができ、術者の経験によらずに処置の品質を一定に保つことが可能となる。
【0200】
本発明は、例えば、穿刺先端部と、上記穿刺先端部に接続された管状体と、を備え、体内を進行しながら体組織に対して所定の処置を行う穿刺部と、上記穿刺先端部の位置を算出する位置算出部と、上記穿刺先端部の既往軌道を記録する記録部と、を備える、ことを特徴とする。
【0201】
本発明によれば、例えば、体内を進行する穿刺部の位置が移動すると、穿刺先端部の位置は、位置算出部により算出される。したがって、本発明によれば、例えば、算出された穿刺先端部の位置に基づいて、採取箇所の重複を防止することができ、処置の効率を向上させることができる。また、本発明によれば、例えば、穿刺先端部の既往軌道は記録部によって記録されるので、術者は、記録された既往軌道を知ることにより、処置を行う箇所の重複を防止することができ、処置の効率を向上させることができる。また、本発明によれば、例えば、処置の効率向上によって、処置に要する時間を短縮することができる。
【0202】
本発明の別の態様は、例えば、上記穿刺先端部の位置を随時表示させると共に、上記記録部により記録した上記既往軌道を表示させる表示制御部と、を備えることを特徴とする。
【0203】
この態様によれば、例えば、記録された既往軌道が表示制御部によって表示されるので、術者は、既往軌道を確認しながら、現在の穿刺先端部の位置を確認することができる。その結果、この態様によれば、例えば、処置の箇所の重複をより一層効果的に防止することができ、処置の効率を向上させることができる。また、この態様によれば、例えば、処置の効率向上によって、処置に要する時間を短縮することができる。
【0204】
本発明の別の態様は、例えば、上記穿刺先端部の軌道の予測を行う予測部、を備え、上記表示制御部は、上記予測部により予測した上記穿刺先端部の軌道をさらに表示させる、ことを特徴とする。本発明の別の態様は、例えば、上記穿刺先端部の軌道の予測を行う予測部と、上記予測部により予測した上記穿刺先端部の軌道を表示させる表示制御部と、を備えることを特徴とする。
【0205】
この態様では、例えば、予測部より、穿刺先端部の軌道の予測が行われる。予測された穿刺先端部の軌道は、例えば、表示制御部によって表示される。したがって、術者は、例えば、予測された穿刺先端部の軌道を確認しながら、穿刺先端部を体内に進入させることができるので、処置の箇所の重複をより一層効果的に防止することができ、処置の効率を向上させることができる。また、この態様によれば、例えば、処置の効率向上によって、処置に要する時間を短縮することができる。
【0206】
本発明の別の態様は、例えば、上記穿刺先端部の移動軌道と、上記記録部により記録した上記既往軌道を比較して、ほぼ同一または同一軌道であるときに報知する報知部を、備えることを特徴とする。
【0207】
この態様では、例えば、穿刺先端部の移動軌道と、記録した既往軌道とが、ほぼ同一または同一軌道であることが、報知部により報知される。したがって、この態様によれば、例えば、処置の箇所の重複をより一層効果的に防止することができ、処置の効率を向上させることができる。また、この態様によれば、例えば、処置の効率向上によって、処置に要する時間を短縮することができる。
【0208】
本発明の別の態様は、例えば、上記予測部により予測した穿刺先端部の軌道と、上記記録部により記録した上記既往軌道を比較して、ほぼ同一または同一軌道であるときに報知する報知部を、備えることを特徴とする。
【0209】
この態様では、例えば、予測された穿刺先端部の移動軌道と、記録した既往軌道とが、ほぼ同一または同一軌道であることが、報知部により報知される。したがって、この態様によれば、例えば、処置の箇所の重複をより一層効果的に防止することができ、処置の効率を向上させることができる。また、この態様によれば、例えば、処置の効率向上によって、処置に要する時間を短縮することができる。
【0210】
本発明の別の態様は、例えば、上記穿刺部に取り付けられた第1の磁気センサーを備えることを特徴とする。
【0211】
本発明の別の態様は、例えば、上記穿刺部が挿通されることにより上記穿刺部を案内する案内管と、上記案内管に取り付けられた第2の磁気センサーを、備えることを特徴とする。
【0212】
本発明は、例えば、穿刺先端部と、上記穿刺先端部に接続された管状体と、を備え、体内を進行しながら骨髄液を吸引する骨髄穿刺部と、上記骨髄穿刺部を案内する案内管と、上記案内管を通って前進する上記骨髄穿刺部の移動速度を算出する移動速度算出部と、を備えることを特徴する。
【0213】
本発明によれば、例えば、体内を進行する骨髄穿刺部の位置が移動すると、移動速度算出部により骨髄穿刺部の移動速度が算出される。したがって、本発明によれば、例えば、算出された骨髄穿刺部の移動速度を参照することにより、骨髄穿刺部の移動速度を適正範囲とすることができ、術者の経験によらずに骨髄採取の品質を一定に保つことが可能となる。
【0214】
本発明の別の態様は、例えば、上記移動速度算出部により算出された移動速度と、上記骨髄液の吸引速度と関連付けられた所定の移動速度と、を比較する比較部を備えることを特徴とする。
【0215】
この態様では、例えば、比較部により、算出された移動速度と、骨髄液の吸引速度と関連付けられた所定の移動速度との比較が行われる。したがって、骨髄穿刺部の移動速度と上記所定の移動速度との比較結果を参照することにより、骨髄穿刺部の移動速度を適正範囲とすることができ、術者の経験によらずに骨髄採取の品質を一定に保つことが可能となる。
【0216】
本発明は、例えば、穿刺先端部と、上記穿刺先端部に接続された管状体と、を備え、体内を進行しながら骨髄液を吸引する骨髄穿刺部と、上記穿刺部を案内する案内管と、上記穿刺先端部の位置を算出する位置算出部と、上記穿刺先端部の既往軌道を記録する記録部と、を備えることを特徴とする。
【0217】
本発明によれば、例えば、体内を進行する骨髄穿刺部の位置が移動すると、穿刺先端部の位置は、位置算出部により算出される。したがって、本発明によれば、例えば、算出された穿刺先端部の位置に基づいて、骨髄の採取箇所の重複を防止することができ、骨髄採取の効率を向上させることができる。また、本発明によれば、例えば、穿刺先端部の既往軌道は記録部によって記録されるので、術者は、記録された既往軌道を知ることにより、骨髄採取を行う箇所の重複を防止することができ、骨髄採取の効率を向上させることができる。また、本発明によれば、例えば、骨髄採取の効率向上によって、骨髄採取に要する時間を短縮することができる。
【0218】
本発明の別の態様は、例えば、上記穿刺先端部の位置を随時表示させると共に、上記記録部により記録した上記既往軌道を表示させる表示制御部と、を備えることを特徴とする。
【0219】
この態様によれば、例えば、記録された既往軌道が表示制御部によって表示されるので、術者は、既往軌道を確認しながら、現在の穿刺先端部の位置を確認することができる。その結果、この態様によれば、例えば、骨髄採取の箇所の重複をより一層効果的に防止することができ、骨髄採取の効率を向上させることができる。また、この態様によれば、例えば、骨髄採取の効率向上によって、骨髄採取に要する時間を短縮することができる。
【0220】
本発明の別の態様は、例えば、上記穿刺先端部の軌道の予測、および上記穿刺先端部の皮質骨との接触位置の予測を行う予測部を備え、上記表示制御部は、上記予測部により予測した上記穿刺先端部の軌道および上記接触位置をさらに表示させる、ことを特徴とする。本発明の別の態様は、例えば、上記穿刺先端部の軌道の予測、および上記穿刺先端部の皮質骨との接触位置の予測を行う予測部と、上記予測部により予測した上記穿刺先端部の軌道および上記接触位置を表示させる表示制御部と、を備えることを特徴とする。
【0221】
この態様によれば、例えば、記録された既往軌道が表示制御部によって表示されるので、術者は、既往軌道を確認しながら、現在の穿刺先端部の位置を確認することができる。その結果、この態様によれば、例えば、骨髄採取の箇所の重複をより一層効果的に防止することができ、骨髄採取の効率を向上させることができる。また、この態様によれば、例えば、骨髄採取の効率向上によって、骨髄採取に要する時間を短縮することができる。
【0222】
本発明の別の態様は、例えば、上記表示制御部は、上記穿刺部が挿通している穿刺孔と同じ穿刺孔から挿入された上記穿刺先端部の既往軌道を表示する、ことを特徴する。本発明の別の態様は、例えば、上記穿刺部が挿通している穿刺孔と同じ穿刺孔から挿入された上記穿刺先端部の既往軌道を表示する表示制御部を備えることを特徴する。
【0223】
この態様によれば、例えば、記録された既往軌道が表示制御部によって表示されるので、術者は、既往軌道を確認しながら、現在の穿刺先端部の位置を確認することができる。その結果、この態様によれば、例えば、骨髄採取の箇所の重複をより一層効果的に防止することができ、骨髄採取の効率を向上させることができる。また、この態様によれば、例えば、骨髄採取の効率向上によって、骨髄採取に要する時間を短縮することができる。
【0224】
以上、実施形態および様々な態様を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態および様々な態様に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【0225】
<付記>
上記の実施形態および実施例の一部または全部は、以下の付記のように記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
穿刺先端部と、
遠位端にて上記穿刺先端部に接続される第1の管状体と、
上記第1の管状体の少なくとも一部を覆う外側管状体と、を備え、
上記第1の管状体は、長手方向に沿った軸の周りに回転可能に形成されており、
上記第1の管状体の外径は、上記外側管状体の内径よりも小さく、
上記第1の管状体の外側に、薬液供給路が設けられている、
ことを特徴する穿刺器具。
(付記2)
上記薬液供給路は、上記第1の管状体の長手方向に垂直な面における断面が、環状に形成されている、付記1記載の穿刺器具。
(付記3)
上記薬液供給路は、上記外側管状体の内周面と上記第1の管状体の外周面との間の空隙を含む、付記1または2記載の穿刺器具。
(付記4)
上記薬液供給路は、上記穿刺先端部近傍まで延びている、付記1から3のいずれかに記載の穿刺器具。
(付記5)
上記第1の管状体は、外側の上記外側管状体に対して、上記外側管状体の内側で回転可能である、付記1から4のいずれかに記載の穿刺器具。
(付記6)
上記第1の管状体の近位端には、剛体の第2の管状体が接続されている、付記1から5のいずれかに記載の穿刺器具。
(付記7)
上記外側管状体は、上記第2の管状体の少なくとも一部を覆い、
上記第2の管状体の外径は、上記外側管状体の内径よりも小さく、上記第2の管状体が上記第1の管状体と共に上記外側管状体の内部で回転可能であり、
上記薬液供給路は、上記第1の管状体の外周面と上記外側管状体の内周面との間に連続して、上記第2の管状体の外周面と上記外側管状体の内周面との間にも設けられている、付記6記載の穿刺器具。
(付記8)
上記第1の管状体は、コイル状に形成されている、付記1から7のいずれかに記載の穿刺器具。
(付記9)
上記コイル状の上記第1の管状体の巻き方向は、上記第1の管状体の回転方向と一致している、付記8記載の穿刺器具。
(付記10)
上記第1の管状体の内部を吸引する吸引装置を有し、
上記第1の管状体は、上記薬液供給路の薬液が内部に浸透可能に形成されている、付記1から9のいずれかに記載の穿刺器具。
(付記11)
上記吸引装置は骨髄液を吸引し、
上記薬液供給路は抗凝固剤を供給する、
ことを特徴とする付記10記載の穿刺器具。
(付記12)
上記穿刺先端部は、
遠位端を有し、遠位端面に開口を有する管体と、
上記管体の上記遠位端面よりも遠位側に配置され、上記管体とともに回転し、骨髄腔内の組織を穿孔(穿刺)する先端回転部と、
上記管体と上記先端回転部とを連結する連結部とを有する、付記1から11のいずれかに記載の穿刺器具。
(付記13)
上記開口を有する管体は、上記先端回転部および上記連結部と一体に形成され、
上記第1の管状体は、可撓性であり、上記管体の近位側に配置される、付記12記載の穿刺器具。
(付記14)
上記先端回転部は、上記管体の長手方向に延びる中心軸上に径方向の中心軸を有する円板状部を含む、付記12または13記載の穿刺器具。
(付記15)
上記連結部には、上記開口と連続する溝が形成されている、付記12から14のいずれかに記載の穿刺器具。
(付記16)
上記遠位端面と上記管体の長手方向は直交していない、付記12から15のいずれかに記載の穿刺器具。
(付記17)
上記管体の長手方向に直交する方向の幅は、上記先端回転部の方が上記管体よりも大きい、付記12から16のいずれかに記載の穿刺器具。
(付記18)
上記穿刺器具は、骨髄穿刺器具である、付記1から17のいずれかに記載の穿刺器具。
(付記19)
付記1から18のいずれかに記載の穿刺器具と、
上記穿刺器具の移動速度を算出する移動速度算出部と、を備える、
ことを特徴する穿刺装置。
(付記20)
上記移動速度算出部により算出された移動速度と所定の移動速度とを比較する比較部を備える、付記19記載の穿刺装置。
(付記21)
上記比較部の比較結果に基づき、上記穿刺装置の移動速度に関する報知を行う報知部を備える、付記20に記載の穿刺装置。
(付記22)
上記穿刺先端部の位置を算出する位置算出部と、
上記穿刺先端部の既往軌道を記録する記録部と、を備える、付記19から22のいずれかに記載の穿刺装置。
(付記23)
上記穿刺先端部の位置を随時表示させると共に、上記記録部により記録した上記既往軌道を表示させる表示制御部と、を備える、付記22記載の穿刺装置。
(付記24)
上記穿刺先端部の軌道の予測を行う予測部、を備え、
上記表示制御部は、上記予測部により予測した上記穿刺先端部の軌道をさらに表示させる、付記23記載の穿刺装置。
(付記25)
上記予測部により予測した穿刺先端部の軌道と、上記記録部により記録した上記既往軌道を比較して、ほぼ同一または同一軌道であるときに報知する報知部を、備える、付記24記載の穿刺装置。
(付記26)
上記穿刺先端部の移動軌道と、上記記録部により記録した上記既往軌道を比較して、ほぼ同一または同一軌道であるときに報知する報知部を、備える、付記22から25のいずれかに記載の穿刺装置。
(付記27)
上記穿刺装置に取り付けられた第1の磁気センサーを、備える、付記19から26のいずれかに記載の穿刺装置。
(付記28)
付記1から18のいずれかに記載の穿刺器具が挿通されることにより上記穿刺装置を案内する案内管と、
上記案内管に取り付けられた第2の磁気センサーを、備える、付記27記載の穿刺装置。
(付記29)
付記1から18のいずれかに記載の穿刺器具と、
上記穿刺器具を案内する案内管と、
上記案内管を通って前進する上記穿刺器具の移動速度を算出する移動速度算出部と、を備える、
ことを特徴する穿刺装置。
(付記30)
上記移動速度算出部により算出された移動速度と、上記骨髄液の吸引速度と関連付けられた所定の移動速度と、を比較する比較部を備える、付記29記載の穿刺装置。
(付記31)
付記1から18のいずれかに記載の穿刺器具と、
上記穿刺器具を案内する案内管と、
上記穿刺先端部の位置を算出する位置算出部と、
上記穿刺先端部の既往軌道を記録する記録部と、を備える、
ことを特徴とする穿刺装置。
(付記32)
上記穿刺先端部の位置を随時表示させると共に、上記記録部により記録した上記既往軌道を表示させる表示制御部を、備える、付記31記載の穿刺装置。
(付記33)
上記穿刺先端部の軌道の予測、および上記穿刺先端部の皮質骨との接触位置の予測を行う予測部、を備え、
上記表示制御部は、上記予測部により予測した上記穿刺先端部の軌道および上記接触位置をさらに表示させる、付記32記載の穿刺装置。
(付記34)
上記表示制御部は、上記穿刺器具が挿通している穿刺孔と同じ穿刺孔から挿入された上記穿刺先端部の既往軌道を表示する、付記31から33のいずれかに記載の穿刺装置。
(付記35)
少なくとも先端が骨髄腔へと挿入され、骨髄液を採取する骨髄穿刺装置において、
遠位端を有し、遠位端面に開口を有する管状体と、
上記管状体の上記遠位端面よりも遠位側に配置され、上記管状体とともに回転し、骨髄腔内の組織を穿孔(穿刺)する先端回転部と、
上記管状体と上記先端回転部とを連結する連結部と、
を備えることを特徴する穿刺器具。
(付記36)
上記管状体は、
上記先端回転部および上記連結部と一体に形成され、上記開口を有する管体と、
上記管体の近位側に配置された可撓性の第1の管状体と、
を少なくとも含む、付記35記載の穿刺器具。
(付記37)
上記先端回転部は、上記管状体の長手方向に延びる中心軸上に径方向の中心軸を有する円板状部を含む、付記35または36記載の穿刺器具。
(付記38)
上記連結部には、上記開口と連続する溝が形成されている、
ことを特徴とする付記35から37のいずれかに記載の穿刺器具。
(付記39)
上記遠位端面と上記管状体の長手方向は直交していない、
ことを特徴とする付記35から38のいずれかに記載の穿刺器具。
(付記40)
上記管状体の長手方向に直交する方向の幅は、上記先端回転部の方が上記管状体よりも大きい、
ことを特徴とする付記35から39のいずれかに記載の穿刺器具。
(付記41)
上記穿刺器具は、骨髄穿刺器具である、付記35から40のいずれかに記載の穿刺器具。
(付記42)
付記35から41のいずれかに記載の穿刺器具と、
上記穿刺器具の移動速度を算出する移動速度算出部と、を備える、
ことを特徴する穿刺装置。
(付記43)
上記移動速度算出部により算出された移動速度と所定の移動速度とを比較する比較部を備える、付記42記載の穿刺装置。
(付記44)
上記比較部の比較結果に基づき、上記穿刺部の移動速度に関する報知を行う報知部を備える、付記43記載の穿刺装置。
(付記45)
付記35から41のいずれかに記載の穿刺器具と、
上記穿刺先端部の位置を算出する位置算出部と、
上記穿刺先端部の既往軌道を記録する記録部と、を備える、
ことを特徴する穿刺装置。
(付記46)
上記穿刺先端部の位置を随時表示させると共に、上記記録部により記録した上記既往軌道を表示させる表示制御部と、を備える、付記45記載の穿刺装置。
(付記47)
上記穿刺先端部の軌道の予測を行う予測部、を備え、
上記表示制御部は、上記予測部により予測した上記穿刺先端部の軌道をさらに表示させる、付記46記載の穿刺装置。
(付記48)
上記予測部により予測した穿刺先端部の軌道と、上記記録部により記録した上記既往軌道を比較して、ほぼ同一または同一軌道であるときに報知する報知部を、備える、付記47記載の穿刺装置。
(付記49)
上記穿刺先端部の移動軌道と、上記記録部により記録した上記既往軌道を比較して、ほぼ同一または同一軌道であるときに報知する報知部を、備える、付記45から48のいずれかに記載の穿刺装置。
(付記50)
上記穿刺部に取り付けられた第1の磁気センサーを、備える、付記42から49のいずれかに記載の穿刺装置。
(付記51)
上記穿刺部が挿通されることにより上記穿刺部を案内する案内管と、
上記案内管に取り付けられた第2の磁気センサーと、を備える、付記50記載の穿刺装置。
(付記52)
付記35から41のいずれかに記載の穿刺器具と、
上記骨髄穿刺部を案内する案内管と、
上記案内管を通って前進する上記骨髄穿刺部の移動速度を算出する移動速度算出部と、を備える、
ことを特徴する穿刺装置。
(付記53)
上記移動速度算出部により算出された移動速度と、上記骨髄液の吸引速度と関連付けられた所定の移動速度と、を比較する比較部を備える、付記52記載の穿刺装置。
(付記54)
付記35から41のいずれかに記載の穿刺器具と、
上記穿刺部を案内する案内管と、
上記穿刺先端部の位置を算出する位置算出部と、
上記穿刺先端部の既往軌道を記録する記録部と、を備える、
ことを特徴とする穿刺装置。
(付記55)
上記穿刺先端部の位置を随時表示させると共に、上記記録部により記録した上記既往軌道を表示させる表示制御部と、を備える、付記54記載の穿刺装置。
(付記56)
上記穿刺先端部の軌道の予測、および上記穿刺先端部の皮質骨との接触位置の予測を行う予測部、を備え、
上記表示制御部は、上記予測部により予測した上記穿刺先端部の軌道および上記接触位置をさらに表示させる、付記55記載の穿刺装置。
(付記57)
上記表示制御部は、上記穿刺部が挿通している穿刺孔と同じ穿刺孔から挿入された上記穿刺先端部の既往軌道を表示する、付記55または56記載の穿刺装置。
(付記58)
穿刺先端部と、上記穿刺先端部に接続された管状体と、を備え、体内を進行しながら体組織に対して所定の処置を行う穿刺部と、
上記穿刺部の移動速度を算出する移動速度算出部と、を備える、
ことを特徴する穿刺装置。
(付記59)
上記移動速度算出部により算出された移動速度と所定の移動速度とを比較する比較部を備える、付記58に記載の穿刺装置。
(付記60)
上記比較部の比較結果に基づき、上記穿刺部の移動速度に関する報知を行う報知部を備える、付記60記載の穿刺装置。
(付記61)
穿刺先端部と、上記穿刺先端部に接続された管状体と、を備え、体内を進行しながら体組織に対して所定の処置を行う穿刺部と、
上記穿刺先端部の位置を算出する位置算出部と、
上記穿刺先端部の既往軌道を記録する記録部と、を備える、
ことを特徴する穿刺装置。
(付記62)
上記穿刺先端部の位置を随時表示させると共に、上記記録部により記録した上記既往軌道を表示させる表示制御部と、を備える、付記61記載の穿刺装置。
(付記63)
上記穿刺先端部の軌道の予測を行う予測部、を備え、
上記表示制御部は、上記予測部により予測した上記穿刺先端部の軌道をさらに表示させる、付記62記載の穿刺装置。
(付記64)
上記予測部により予測した穿刺先端部の軌道と、上記記録部により記録した上記既往軌道を比較して、ほぼ同一または同一軌道であるときに報知する報知部を、備える、付記63記載の穿刺装置。
(付記65)
上記穿刺先端部の移動軌道と、上記記録部により記録した上記既往軌道を比較して、ほぼ同一または同一軌道であるときに報知する報知部を、備える、付記61から64のいずれかに記載の穿刺装置。
(付記66)
上記穿刺部に取り付けられた第1の磁気センサーを、備える、付記58から65のいずれかに記載の穿刺装置。
(付記67)
上記穿刺部が挿通されることにより上記穿刺部を案内する案内管と、
上記案内管に取り付けられた第2の磁気センサーと、を備える、付記66記載の穿刺装置。
(付記68)
穿刺先端部と、上記穿刺先端部に接続された管状体と、を備え、体内を進行しながら骨髄液を吸引する骨髄穿刺部と、
上記骨髄穿刺部を案内する案内管と、
上記案内管を通って前進する上記骨髄穿刺部の移動速度を算出する移動速度算出部と、を備える、
ことを特徴する穿刺装置。
(付記69)
上記移動速度算出部により算出された移動速度と、上記骨髄液の吸引速度と関連付けられた所定の移動速度と、を比較する比較部を備える、付記68記載の穿刺装置。
(付記70)
穿刺先端部と、上記穿刺先端部に接続された管状体と、を備え、体内を進行しながら骨髄液を吸引する骨髄穿刺部と、
上記穿刺部を案内する案内管と、
上記穿刺先端部の位置を算出する位置算出部と、
上記穿刺先端部の既往軌道を記録する記録部と、を備える、
ことを特徴とする穿刺装置。
(付記71)
上記穿刺先端部の位置を随時表示させると共に、上記記録部により記録した上記既往軌道を表示させる表示制御部と、を備える、付記70に記載の穿刺装置。
(付記72)
上記穿刺先端部の軌道の予測、および上記穿刺先端部の皮質骨との接触位置の予測を行う予測部、を備え、
上記表示制御部は、上記予測部により予測した上記穿刺先端部の軌道および上記接触位置をさらに表示させる、付記71記載の穿刺装置。
(付記73)
上記表示制御部は、上記穿刺部が挿通している穿刺孔と同じ穿刺孔から挿入された上記穿刺先端部の既往軌道を表示する、付記71または72記載の穿刺装置。
【0226】
この出願は、2017年1月31日に出願された日本出願特願2017−015764、日本出願特願2017−015767および日本出願特願2017−015795を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。