【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「戦略的省エネルギー技術革新プログラム/省エネルギー技術開発事業の重要技術に係る周辺技術・関連課題の検討/プラント内配電利用のための低コスト型三相同軸超電導ケーブルシステム導入のためのケーススタディー」、産業技術力強化法第19条の規定の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
超電導ケーブルを冷却する際、冷媒として液体窒素等の液体冷媒が使用されるが、通電に伴う発熱及び機器外部からの熱侵入によって昇温し、超電導ケーブル内で気化することを防ぐため、予め冷凍機で冷却し、過冷却状態とした後に導入される。
【0003】
液体冷媒を、飽和温度以下の過冷却状態とする際には、従来は冷凍機が主に用いられている。液体冷媒を過冷却状態に冷却するための冷凍機として、スターリング冷凍機、GM(ギフォード・マクマホン)冷凍機、パルス管冷凍機、ブレイトン冷凍機等が開発されている。
【0004】
例えば、下記特許文献1では冷凍機、下記特許文献2ではブレイトン冷凍機を用いた冷却方法が開示されている。しかしながら、これらの冷凍機は、液体冷媒を過冷却状態に冷却する際、冷凍機のエネルギー消費効率を表すCOP(Coefficient Of Performance)の値が小さく、液体冷媒の冷却に多くのエネルギーを要するという課題がある。例えば、下記非特許文献2によれば、ブレイトン冷凍機を用いた場合のCOPの値は、一般的に0.08程度とされている。
【0005】
下記非特許文献3には、COPの目標値として0.10の値が掲げられており、当該目標値はブレイトン冷凍機の実験機では達成されていることが報告されている。しかしながら、下記非特許文献4に開示されているように、ブレイトン冷凍機を商用機として用いた場合には装置サイズ及びコストの抑制が優先されるため、COPの値は0.08にとどまっている。そのため、冷凍機を使用しない冷却方法により、COPの値の向上を図ることが検討されている。
【0006】
冷凍機を使用しない超電導ケーブルの冷却方法として、例えば下記非特許文献1にはサブクーラーユニットを用いた冷却システム(あるいはN
2放散方式と呼ばれる)が開示されている。この冷却システムによれば、サブクーラーとしての熱交換器を用いて、65〜70K程度の飽和液体窒素と熱交換することにより過冷却状態の液体窒素を製造し、その上で、当該過冷却状態の液体窒素により超電導ケーブルを冷却している。しかしながらこの方式においては、排気ポンプがサブクーラーに接続されており、熱交換により気化した前記飽和液体窒素は大気中へ放散される。大気への放散により、当該飽和液体窒素が消費されるため、ローリーなどの輸送手段を用いて、定期的な飽和液体窒素の補充が必要となるという課題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、従来の冷凍機を使用した超電導ケーブル用冷却装置を上回るエネルギー消費効率を達成すると共に、大気への放散による冷媒消費の低減を可能とする超電導ケーブル用冷却装置及びそれを用いた超電導ケーブルの冷却方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題は、以下に述べる発明により解決される。
即ち、本発明に係る超電導ケーブル用冷却装置は、前記の課題を解決する為に、超電導ケーブルを冷却する超電導ケーブル用冷却装置であって、前記超電導ケーブルを、過冷却状態の液体冷媒で冷却する超電導ケーブル冷却ユニットと、前記液体冷媒を熱交換により過冷却状態に冷却するための液体状態の第1冷媒を、前記超電導ケーブル冷却ユニットに供給する第1供給ユニットと、前記第1冷媒を熱交換により冷却するための第2冷媒を、前記第1供給ユニットに供給する第2供給ユニットと、を少なくとも備え、前記第1供給ユニットは、液体状態の前記第1冷媒を貯留する貯留部と、前記液体状態の第1冷媒が、前記液体冷媒との熱交換により当該液体冷媒を過冷却状態に冷却させ、これにより気体状態となった当該第1冷媒を圧縮させる圧縮部と、前記気体状態の第1冷媒と前記第2冷媒とを熱交換させ、当該第1冷媒を冷却して液化させる第1熱交換器と、前記貯留部、前記圧縮部及び前記第1熱交換器を接続し、かつ前記第1冷媒を循環させる循環路と、を少なくとも備える。
【0011】
前記構成によれば、本発明の超電導ケーブル用冷却装置は、前記超電導ケーブル冷却ユニットにおいて、過冷却状態の液体冷媒を用いて、当該超電導ケーブル冷却ユニットに設けられた超電導ケーブルの、冷却を行うものである。ここで本発明は、前記構成の通り、前記液体冷媒を過冷却状態に冷却する手段として、ブレイトン冷凍機等の従来の冷凍機を用いるものではない。本発明は、第1供給ユニット内を循環する第1冷媒を用いて、当該液体冷媒を過冷却状態に冷却するものである。そのため、冷凍機を用いた従来の超電導ケーブル用冷却装置と比較して、COPの値を向上させることができる。
【0012】
また、第1冷媒を第1供給ユニット内で循環させるにあたって、本発明は次に述べる通り各構成要素を動作させることによって、第1冷媒の大幅な消費を抑制している。すなわち、先ず貯留部から供給された液体状態の第1冷媒は、液体冷媒との熱交換後、気体状態となって圧縮部に送られる。圧縮部では、気体状態の第1冷媒を圧縮することにより、当該気体状態の第1冷媒の沸点を上昇させる。この圧縮された気体状態の第1冷媒は、第1熱交換器において、前記第2供給ユニットから供給される第2冷媒との熱交換により冷却され液体状態となる。その後、液体状態の第1冷媒は貯留部に送られ、当該貯留部において貯留される。この様に本発明は、液体冷媒の冷却に使用した第1冷媒を系外に排出せずに第1供給ユニット内で循環させ、再び液体冷媒の冷却に再利用可能な様に稼働させる。そのため、第1冷媒の消費を大幅に抑制することが可能になる。
【0013】
また前記構成では、使用後の第1冷媒(すなわち、圧縮部により圧縮された気体状態の第1冷媒)を、再び液体冷媒の冷却に利用可能にするために、第2供給ユニットを備える。この第2供給ユニットは、使用後の第1冷媒との熱交換により冷却を可能にする第2冷媒を第1熱交換器に供給するユニットである。従って、例えば第2冷媒として、従来冷熱エネルギーの利用がされてこなかった液化天然ガス等を用いた場合には、当該冷熱エネルギーの利用が可能となる。
【0014】
前記構成において、前記第1供給ユニットは、前記貯留部と前記超電導ケーブル冷却ユニットとの間に第2熱交換器を備えており、前記第2熱交換器は、前記貯留部から供給される前記液体状態の第1冷媒と、前記液体冷媒との熱交換により気体状態となった前記第1冷媒とを熱交換し、さらに熱交換後の当該液体状態の第1冷媒を前記超電導ケーブル冷却ユニットに供給するものであることが好ましい。
【0015】
前記構成によれば、前記貯留部と前記超電導ケーブル冷却ユニットとの間に第2熱交換器を設けることにより、熱交換前と比較して、前記貯留部から供給される前記液体状態の第1冷媒が冷却されるため、当該液体状態の第1冷媒はより低い温度で超電導ケーブル冷却ユニットに供給される。これにより、前記液体状態の冷却に使用できる冷熱エネルギーが増加するため、COPの値が向上する。
【0016】
さらに、前記構成においては、前記液体冷媒及び前記第1冷媒として、窒素、酸素又はアルゴンの少なくとも何れかからなるものを用いることが好ましい。
【0017】
また、前記構成においては、前記第2冷媒として、その温度が圧縮により沸点を上昇させた前記気体状態の第1冷媒の沸点よりも低い冷媒を用いることができる。これにより、第1熱交換器における第2冷媒との熱交換で、圧縮された気体状態の第1冷媒をその沸点よりも低い温度に冷却し、液体状態にすることができる。その結果、第1冷媒を液体冷媒の冷却のために再利用可能な状態にする。
【0018】
また、前記構成において、前記第2冷媒が液化天然ガス、液化メタン、液化窒素、液化酸素又は液化アルゴンの少なくとも何れか1つを用いることが好ましい。
【0019】
本発明の超電導ケーブルの冷却方法は、前記課題を解決するために、超電導ケーブル用冷却装置を用いた超電導ケーブルの冷却方法であって、前記超電導ケーブル用冷却装置は、前記超電導ケーブルを、過冷却状態の液体冷媒で冷却する超電導ケーブル冷却ユニットと、前記液体冷媒を熱交換により過冷却状態に冷却するための液体状態の第1冷媒を、前記超電導ケーブル冷却ユニットに供給する第1供給ユニットと、前記第1冷媒を熱交換により冷却するための第2冷媒を、前記第1供給ユニットに供給する第2供給ユニットと、を少なくとも備えるものであり、前記第1供給ユニットにおいて貯留されている前記液体状態の第1冷媒を、前記超電導ケーブル冷却ユニットに供給し、前記液体状態の第1冷媒を用いて、前記液体冷媒との熱交換により当該液体冷媒を過冷却状態に冷却し、前記液体冷媒との熱交換により気体状態となった前記第1冷媒を圧縮し、前記気体状態の第1冷媒と前記第2冷媒とを熱交換させ、当該第1冷媒を冷却して液体状態にし、さらに、液体状態となった前記第1冷媒を前記第1供給ユニット内で貯留させることにより、当該第1冷媒を第1供給ユニット内で循環させるものである。
【0020】
前記方法によれば、本発明の冷却方法は、前記超電導ケーブル冷却ユニットにおいて過冷却状態の液体冷媒を用いて、超電導ケーブルの冷却を行うものである。ここで本発明は、前記方法の通り、前記液体冷媒を過冷却状態に冷却する手段として、ブレイトン冷凍機等の従来の冷凍機を用いるものではない。本発明は、第1供給ユニット内を循環する第1冷媒を用いて、当該液体冷媒を過冷却状態に冷却するものである。そのため、冷凍機を用いた従来の超電導ケーブル用冷却装置と比較して、COPの値を向上させることができる。
【0021】
また、第1冷媒を第1供給ユニット内で循環させるにあたって、本発明は次に述べる方法によって、第1冷媒の大幅な消費を抑制している。すなわち、先ず貯留されている前記液体状態の第1冷媒を供給し、液体冷媒との熱交換後、気体状態となって前記超電導ケーブル冷却ユニットより排出された前記第1冷媒を圧縮し、気体状態の当該第1冷媒の沸点を上昇させる。この圧縮された気体状態の第1冷媒を、前記第2供給ユニットから供給される第2冷媒との熱交換により冷却し、液化させる。その後、液体状態の第1冷媒を第1供給ユニット内で貯留させる。この様に本発明は、液体冷媒の冷却に使用した第1冷媒を系外に排出せずに第1供給ユニット内で循環させ、再び液体冷媒の冷却に再利用可能な様に稼働させる。そのため、第1冷媒の消費を大幅に抑制することが可能になる。
【0022】
また前記方法では、使用後の第1冷媒(すなわち、前記圧縮された気体状態の第1冷媒)を、再び液体冷媒の冷却に利用可能にするために、前記第2供給ユニットから前記第2冷媒を供給する。すなわち、第2冷媒を第1供給ユニットに供給し、当該第2冷媒と使用後の第1冷媒との熱交換により、当該第1冷媒を再び液体状態にする。これにより、例えば第2冷媒として、従来冷熱エネルギーの利用がされてこなかった液化天然ガス等を用いた場合には、当該冷熱エネルギーの利用が可能となる。
【0023】
前記方法においては、前記超電導ケーブル冷却ユニットに供給される直前の前記液体状態の第1冷媒と、前記液体冷媒との熱交換により気体状態となった前記第1冷媒とを熱交換した後、当該液体状態の第1冷媒を前記超電導ケーブル冷却ユニットに供給することが好ましい。
【0024】
前記方法によれば、前記超電導ケーブル冷却ユニットに供給される直前の前記液体状態の第1冷媒と、前記液体冷媒との熱交換により気体状態となった前記第1冷媒とを熱交換することにより、熱交換前と比較して、前記液体状態の第1冷媒は冷却されるため、当該液体状態の第1冷媒はより低い温度で超電導ケーブル冷却ユニットに供給される。これにより、前記液体状態の冷却に使用できる冷熱エネルギーが増加するため、COPの値が向上する。
【0025】
さらに、前記方法においては、前記液体冷媒及び前記第1冷媒として、窒素、酸素又はアルゴンの少なくとも何れかからなるものを用いることが好ましい。
【0026】
また、前記方法においては、前記第2冷媒として、その温度が圧縮により沸点を上昇させた前記気体状態の第1冷媒の沸点よりも低い冷媒を用いることができる。これにより、第2冷媒との熱交換で、圧縮された気体状態の第1冷媒をその沸点よりも低い温度に冷却し、液体状態にすることができる。その結果、第1冷媒を液体冷媒の冷却のために再利用可能な状態にする。
【0027】
また、前記方法においては、前記第2冷媒が液化天然ガス、液化メタン、液化窒素、液化酸素又は液化アルゴンの少なくとも何れか1つを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、前記に説明した手段により、以下に述べるような効果を奏する。
本発明の超電導ケーブル用冷却装置は第1供給ユニットおよび第2供給ユニットを備えており、そのため、冷凍機等を使用せずに超電導ケーブルを冷却することができ、かつ、第1冷媒が第1供給ユニット内を循環することができるため、従来の冷凍機を使用した超電導ケーブル用冷却装置を上回るエネルギー消費効率を達成すると共に、大気への放散による冷媒消費を防止する効果を奏する。また、例えば、第2冷媒として、従来は冷熱エネルギーが廃棄されている液化天然ガスを用いる場合、さらにエネルギー消費効率を向上させることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(実施の形態1)
<超電導ケーブル用冷却装置>
本実施の形態1に係る超電導ケーブル用冷却装置について
図1を参照しながら以下に説明する。
図1は実施の形態1に係る超電導ケーブル用冷却装置を表す概略説明図である。
【0031】
図1に示すように、本実施の形態1の超電導ケーブル用冷却装置1は、超電導ケーブル14を冷却する超電導ケーブル冷却ユニット10と、前記超電導ケーブル冷却ユニット10に第1冷媒を供給する第1供給ユニット20と、前記第1供給ユニット20に第2冷媒を供給する第2供給ユニット30と、を少なくとも備える。
【0032】
超電導ケーブル冷却ユニット10は液体冷媒循環路11と、過冷却器12と、送液ポンプ13と、超電導ケーブル14とを少なくとも備え、超電導ケーブルを冷却するユニットである。
【0033】
液体冷媒循環路11は過冷却器12、送液ポンプ13及び超電導ケーブル14を接続しており、超電導ケーブル冷却ユニット10内で液体冷媒の循環を可能にする。尚、液体冷媒循環路11は断熱性を有するものが好ましい。これにより、液体冷媒循環路11外部からの侵入熱による、液体冷媒循環路11内部を循環する前記液体冷媒の温度上昇を低減することが可能である。
【0034】
過冷却器12は、本体部12a及び投げ込み式熱交換器12bで構成されており、投げ込み式熱交換器12bが本体12a内部に設置されているものである。
【0035】
過冷却器12の本体部12aは第1冷媒循環路(循環路)21に接続されており、当該第1冷媒循環路21から供給される液体状態の前記第1冷媒を内部に貯留する。尚、本体部12aは断熱性を有するものが好ましい。これにより、本体部12a外部からの侵入熱による、本体部12a内部に貯留される前記液体状態の第1冷媒の温度上昇を低減することが可能である。
【0036】
投げ込み式熱交換器12bは、本体部12a内部において、前記液体状態の第1冷媒に浸漬された状態で収容されている。投げ込み式熱交換器12bは、本体部12aに貯留されている液体状態の第1冷媒と、当該投げ込み式熱交換器12b内部を流れる液体冷媒との熱交換を行う。これにより、液体冷媒を過冷却状態に冷却することができる。尚、投げ込み式熱交換器12b内部を流れる液体冷媒とは、より詳細には超電導ケーブル14の冷却を終えた液体冷媒をいう。また、投げ込み式熱交換器12bの種類としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
【0037】
前記液体冷媒は、本体部12a内に貯留される前記液体状態の第1冷媒との熱交換により、冷却され、過冷却状態となる。したがって、前記液体冷媒の冷却に冷凍機を用いないため、COPの値の向上が可能になる。尚、本明細書において、「過冷却」とは液体冷媒の飽和温度より低い温度まで冷却されることを意味し、「過冷却状態」とは、液体冷媒がそのような過冷却の状態に維持されていることを意味する。さらに、飽和温度とは液体冷媒が沸騰する温度(例えば、大気圧下における液体窒素の場合は約−196℃)を意味する。また、「COP」とは、第1供給ユニットによる、液体冷媒を冷却するためのエネルギー消費効率(単位消費エネルギー当たりの冷却能力)を意味し、(COP)=(第1供給ユニットによる液体冷媒を冷却する冷却能力(kW))/(第1供給ユニットの駆動に要する全エネルギー(kW))で計算される。
【0038】
送液ポンプ13は過冷却器12の下流側に設けられており、前記液体冷媒を液体冷媒循環路11内で圧送循環させる。尚、送液ポンプ13は超電導ケーブル14の下流側であって、超電導ケーブル14と過冷却器12との間に設けられていてもよい。また、送液ポンプ13の種類としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
【0039】
超電導ケーブル14は、送液ポンプ13の下流側に設けられている。また、超電導ケーブル14は高温超電導線を使用するケーブルであり、例えば、高温超電導層を有するケーブルコアと、当該ケーブルコアを内部に収容する断熱管とを少なくとも備える構成である。前記断熱管には、液体冷媒が流動可能なように液体冷媒循環路11が接続されており、これにより、断熱管内に収容されているケーブルコアの冷却を可能にしている。
【0040】
尚、前記液体冷媒としては特に限定されず、例えば、液体窒素、液体酸素、液体アルゴン等が挙げられるが、これらのうち本実施の形態においては、液体窒素が好ましい。
【0041】
第1供給ユニット20は第1冷媒循環路(循環路)21、第1冷媒貯槽(貯留部)23、圧縮機(圧縮部)26、及び第1熱交換器27を主として備え、超電導ケーブル冷却ユニット10に液体状態の第1冷媒を供給するユニットである。また、第1供給ユニット20は、排出路22、加温器24、真空ポンプ25、流量調節弁28及び減圧弁29をさらに備える。
【0042】
第1冷媒貯槽23は液体状態の前記第1冷媒を貯留する。また、第1冷媒貯槽23には、前記液体状態の第1冷媒が気化したものが貯留されていてもよい。尚、第1冷媒貯槽23は断熱性を有するものが好ましい。これにより、第1冷媒貯槽23外部からの侵入熱による、第1冷媒貯槽23内部に貯留される前記液体状態の第1冷媒の温度上昇を低減することが可能であり、液化ガスが気化して蒸発ガス(BOG:Boil Off Gas)が発生するのを抑制することができる。また、前記第1冷媒としては特に限定されず、例えば窒素、酸素又はアルゴンの少なくとも何れかからなるものが挙げられる。
【0043】
第1冷媒循環路21は第1冷媒貯槽23、流量調節弁28、過冷却器12、加温器24、真空ポンプ25、圧縮機26、第1熱交換器27及び減圧弁29を接続しており、前記第1冷媒が第1供給ユニット20内を循環することを可能とする。尚、第1冷媒循環路21は断熱性を有するものが好ましい。これにより、第1冷媒循環路21外部からの侵入熱による、第1冷媒循環路21内部を循環する前記第1冷媒の温度上昇を低減することが可能である。
【0044】
排出路22は第1冷媒貯槽23に接続されており、かつ、第1熱交換器27を介して、第1冷媒循環路21における真空ポンプ25及び圧縮機26の間に合流するように連通している。これにより、排出路22は、第1冷媒貯槽23に存在する気体状態の前記第1冷媒を第1熱交換器27へ供給し、第1熱交換器27を通過後、圧縮機26の前段に供給することを可能にする。尚、排出路22は断熱性を有するものが好ましい。これにより、排出路22外部からの侵入熱による、排出路22内部を流通する前記気体状態の第1冷媒の温度上昇を低減することが可能である。
【0045】
流量調節弁28は第1冷媒貯槽23及び過冷却器12の間に設けられており、第1冷媒貯槽23から供給される液体状態の前記第1冷媒の流量を調節することができる。これにより、本体部12aに必要な冷熱エネルギーに応じた量の第1冷媒を供給することが可能となる。また、流量調節弁28の種類としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
【0046】
加温器24は過冷却器12の下流側に設けられており、過冷却器12より排出される気体状態の前記第1冷媒の温度を上昇させることができる。これにより、真空ポンプ25の吸込温度が常温付近となり、当該真空ポンプ25として、汎用的なものを選定することができる。また、加温器24の種類としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
【0047】
真空ポンプ25は加温器24の下流側に設けられており、過冷却器12の本体部12a内に存在する気体状態の前記第1冷媒を排出させ、圧縮機26に圧送することができる。また、真空ポンプ25の種類としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
【0048】
圧縮機26は真空ポンプ25の下流側に設けられており、前記気体状態の第1冷媒を圧縮することができる。前記気体状態の第1冷媒は、圧縮により、圧縮前と比較して沸点が上昇する。そのため、圧縮前よりも高い温度での前記気体状態の第1冷媒の液化が可能となる。また、圧縮機26の種類としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
【0049】
第1熱交換器27は圧縮機26の下流側に設けられており、圧縮機26により圧縮された前記気体状態の第1冷媒と、第2冷媒貯槽32より供給される前記第2冷媒とを熱交換することができる。それにより、前記気体状態の第1冷媒は冷却され、液体状態となる。また、第1熱交換器27には、気体状態の第1冷媒との熱交換に使用された第2冷媒を排出するための第2冷媒排出路35(詳細については後述する。)が接続されている。さらに、第1熱交換器27には排出路22も接続されている。排出路22は第1冷媒貯槽23内に貯留されている前記液体状態の第1冷媒が気化したものを第1熱交換器27に供給するものである。そして、第1熱交換器27は、この気化した前記第1冷媒も圧縮機26により圧縮された前記気体状態の第1冷媒と熱交換させる。また、第1熱交換器27の種類としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
【0050】
減圧弁29は第1熱交換器27と第1冷媒貯槽23の間に設けられており、第1熱交換器27より排出された液体状態の前記第1冷媒の圧力を減少させることができる。これにより、第1冷媒循環路21内であって、圧縮機26及び減圧弁29の間の区間を、第1冷媒貯槽23内部よりも高い圧力とすることが可能となる。また、減圧弁29の種類としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
【0051】
第2供給ユニット30は第2冷媒供給路31、第2冷媒貯槽32、蒸発器33、分岐路34及び第2冷媒排出路35を少なくとも備え、第1供給ユニット20に第2冷媒を供給するユニットである。
【0052】
第2冷媒貯槽32は、前記第2冷媒としての液化ガスを貯留する。尚、第2冷媒貯槽32は断熱性を有するものが好ましい。これにより、第2冷媒貯槽32外部からの侵入熱による、第2冷媒貯槽32内部に貯留される液化ガスの温度上昇を低減することが可能であり、液化ガスが気化して蒸発ガス(BOG:Boil Off Gas)が発生するのを抑制することができる。
【0053】
液化ガスとしては特に限定されず、例えば、液化天然ガス(沸点−162℃(大気圧101.325kPa))、液化メタン(沸点−161.49℃(大気圧101.325kPa))、液化窒素(沸点−195.8℃(大気圧101.325kPa))、液化酸素(沸点−182.96℃(大気圧101.325kPa))、又は液化アルゴン(沸点−185.8℃(大気圧101.325kPa))の少なくとも何れかが挙げられる。これらのうち、冷熱エネルギーの回収の観点からは、液化天然ガスが好ましい。天然ガスにおいては、液体から気体への相変化に伴い発生する、冷熱エネルギーの多くが廃棄されている。このため、本実施の形態の第2冷媒に液化天然ガスを適用することで、第1冷媒の冷却に廃冷熱エネルギーの利用が可能となる。尚、天然ガスは、産出地により、含有窒素の割合などの組成が種々異なるが、本発明においては当該産出地の異同にかかわらず、その効果を奏することができる。
【0054】
第2冷媒供給路31は第2冷媒貯槽32と第1熱交換器27を接続しており、第2冷媒を第2冷媒貯槽32から第1熱交換器27へ供給することを可能にする。尚、第2冷媒供給路31は断熱性を有するものが好ましい。これにより、第2冷媒供給路31外部からの侵入熱による、第2冷媒供給路31を流れる液体状態の前記第2冷媒の温度上昇を低減することが可能である。
【0055】
分岐路34は、第2冷媒供給路31から分岐するものであり、第2冷媒貯槽32に貯留されている第2冷媒の少なくとも一部を蒸発器33に供給することができる。
【0056】
蒸発器33は分岐路34の途中に設けられており、供給される第2冷媒を蒸発させ、気体状態にすることができる。これにより、例えば、第2冷媒として液化天然ガスを用いる場合、第2冷媒供給ユニット30内において、液化天然ガスは、第1熱交換器27及び蒸発器33により、全て気化するため、気体状態として第2冷媒供給ユニット30より排出される。このため、排出された天然ガスを所望の用途に使用可能となる。尚、蒸発器33の種類としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
【0057】
第2冷媒排出路35は、第1熱交換器27と、分岐路34における蒸発器33の下流側とを連通して接続するものである。第2冷媒排出路35を設けることにより、第1熱交換器27で使用され、気体状態となった第2冷媒を第2冷媒供給ユニット30から排出することが可能になる。
【0058】
<超電導ケーブルの冷却方法>
次に、本実施の形態1に係る超電導ケーブル用冷却装置1を用いた超電導ケーブルの冷却方法について、
図1を参照しながら以下に説明する。
【0059】
超電導ケーブル14の冷却は、超電導ケーブル冷却ユニット10において以下のように行われる。すなわち、まず、過冷却器12において、液体冷媒が、第1供給ユニット20より供給される液体状態の第1冷媒との熱交換により過冷却状態に冷却される。
過冷却器12で過冷却状態に冷却された前記液体冷媒は、送液ポンプ13により、液体冷媒循環路11内を圧送循環される。液体冷媒循環路11における送液ポンプ13の下流には超電導ケーブル14が接続されているので、これにより超電導ケーブル14が冷却される。液体冷媒として液体窒素を用いる場合、液体冷媒循環路11内を流れる液体窒素の流量は特に限定されないが、通常は30L/min〜100L/minの範囲内である。
【0060】
次に、前記液体冷媒の冷却に使用される第1冷媒の超電導ケーブル冷却ユニット10への供給について説明する。第1冷媒の供給は、第1供給ユニット20において、以下の様に行われる。すなわち、先ず、流量調節弁28を介して供給される液体状態の第1冷媒は、真空ポンプ25により減圧された過冷却器12に導入され、これに伴い温度が低下する。
【0061】
一方、過冷却器12の下流側に設けられた真空ポンプ25を稼働させることにより、第1冷媒循環路21における、流量調節弁28と真空ポンプ25の間の区間を第1冷媒貯槽23よりも低い圧力とする。これにより、当該区間における第1冷媒の沸点が降下する。
【0062】
本体部12a内の圧力は特に限定されない。ここで、本体部12a内に貯留されている第1冷媒は気液平衡状態にあり、本体部12a内の圧力によって一義的に第1冷媒の温度も定まる。そのため、本体部12a内部の第1冷媒の温度を、液体冷媒の温度よりも低温となる様に、本体部12a内の圧力を調節することにより、液体冷媒を超電導ケーブルが性能を発揮できる温度以下に冷却することができる。例えば、第1冷媒として窒素を用いた場合、本体部12a内の圧力を−78kPaG未満とすることによって、当該窒素の温度を液体冷媒の温度よりも低温にし、その結果、液体冷媒を−205℃に冷却することが可能となる。
【0063】
続いて、過冷却器12において、液体冷媒との熱交換により、使用された液体状態の第1冷媒は気化し、気体状態の第1冷媒となって第1冷媒循環路21を介して加温器24に供給される。そして、当該加温器24において気体状態の第1冷媒は加熱される。
【0064】
加温器24で加熱された前記気体状態の第1冷媒は、真空ポンプ25を介して圧縮機26へと供給される。なお、第1冷媒は加温器24により予め加温されているので、真空ポンプの吸込温度が常温付近となり、真空ポンプ25として、汎用的な真空ポンプを選定することができる。そして、当該圧縮機26において気体状態の第1冷媒は圧縮される。
【0065】
ここで圧縮機26による圧縮後の前記気体状態の第1冷媒の圧力は、前記圧縮後の気体状態の第1冷媒の沸点が第1熱交換器27に供給される前記第2冷媒の温度より高くなる圧力以上の圧力とする必要がある。前記沸点が前記第2冷媒の温度よりも高いことで、第1熱交換器27において前記気体状態の第1冷媒の液化が可能となる。圧縮機26による圧縮後の圧力は、第1冷媒の種類及び第2冷媒の種類と圧力条件によって変化する。例えば、第1冷媒として窒素を用い、第2冷媒として液化天然ガスを用いて、第2冷媒貯槽32内の液化天然ガス圧力を0.03MPaGとした場合、第1熱交換器27に供給される液化天然ガスの温度は−160℃程度であるため、圧縮後の窒素の圧力を2MPaG以上とすることによって、第1熱交換器27で窒素を液化することが可能となる。その一方、圧縮機26の消費電力を低くするためには、圧縮後の第1冷媒の圧力は、低いほど好ましい。従って、その様な観点からは、前記条件の場合、圧縮後の窒素の圧力は、2.3〜2.5MPaGとすることが好ましい。
【0066】
次に、圧縮後の前記気体状態の第1冷媒は、第1熱交換器27に供給される。その後、圧縮された気体状態の第1冷媒は、第1熱交換器27において、第2供給ユニット30から供給される第2冷媒との熱交換により冷却される。これにより、第1冷媒は液化される。
【0067】
第1熱交換器27で熱交換され、液体状態となった第1冷媒は、減圧弁29により、減圧された後、第1冷媒貯槽23に還流される。
【0068】
以上により、本実施の形態の第1供給ユニット20は、液体冷媒の冷却で使用した後においても、第1冷媒を系外に排出させずに循環させることで、当該第1冷媒の消費を大幅に抑制することが可能になる。また、冷凍機を用いずに液体冷媒の過冷却状態での冷却を可能にするので、COPの値の向上も可能にする。
【0069】
尚、第1供給ユニット20においては、第1冷媒貯槽23内に貯留されている液体状態の第1冷媒が気化したものも、第1熱交換器27での圧縮後の気体状態の第1冷媒との熱交換に利用される。より具体的には、第1冷媒貯槽23内に貯留されている前記液体状態の第1冷媒が気化したものを、排出路22から排出して第1熱交換器27に供給する。第1熱交換器27では、この気化した前記第1冷媒を圧縮後の前記気体状態の第1冷媒との熱交換に用いる。熱交換後の気化した前記第1冷媒はその温度が上昇した状態となっている。
【0070】
さらに、熱交換後の気化した第1冷媒は、排出路22を介して第1冷媒循環路21に合流する。気化した第1冷媒の第1冷媒循環路21への合流位置は、真空ポンプ25と圧縮機26の間である。その後、圧縮機26において、加温器24から流れてくる気体状態の第1冷媒と共に圧縮され、再び第1熱交換器27での熱交換に再利用される。このように、第1冷媒貯槽23内で発生する、気化した第1冷媒も第1熱交換器27での熱交換に利用することで、エネルギー消費効率の一層の向上が図られる。
【0071】
次に、気体状態の第1冷媒の冷却に使用される第2冷媒の第1供給ユニット20への供給について説明する。第2冷媒の供給は第2供給ユニット30において行われ、より具体的には、第2冷媒貯槽32に貯留される第2冷媒(液体状態)を、第2冷媒供給路31を介して第1熱交換器27に供給することにより行われる。そして、第1熱交換器27での熱交換後は、前記第2冷媒は気体状態となり、第1熱交換器27の第2冷媒排出路35から排出される。
【0072】
尚、第2冷媒供給路31から分流して分岐路34を流れる第2冷媒は、その後、蒸発器33において気体状態となり、他の用途に使用可能である。また、分岐路34には、第1熱交換器27で使用された、気体状態の第2冷媒が合流する。このため、例えば、第2冷媒に液化天然ガスを用いた場合には、分岐路34から気体状態の天然ガスを取り出すことが可能なため、燃料又は原料等の所望の用途に利用可能である。尚、第2冷媒供給路31内を流れる第2冷媒の流量は、第1冷媒の種類と流量及び第2冷媒の種類と圧力によって決定されるものであり、特に限定されないが、第1熱交換器27において圧縮後の第1冷媒を液化できる量であることが好ましい。例えば、第1冷媒として窒素を用い、第2冷媒として液化天然ガスを用いて、圧縮後の第1冷媒の流量を104Nm
3/h、第2冷媒貯槽32内の液化天然ガス圧力を0.03MPaGとした場合、第2冷媒供給路31内を流れる液化天然ガスの流量は、38kg/h必要となる。
【0073】
(実施の形態2)
<超電導ケーブル用冷却装置>
本実施の形態2に係る超電導ケーブル用冷却装置について
図2を参照しながらに説明する。
図2は実施の形態2に係る超電導ケーブル用冷却装置を表す概略説明図である。尚、前記実施の形態1の超電導ケーブル用冷却装置1と同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0074】
本実施の形態2の超電導ケーブル用冷却装置2は、
図2に示すように、実施の形態1の超電導ケーブル用冷却装置1と比較して、第1供給ユニット200に第2熱交換器210を備える点が異なる。
【0075】
具体的には、第1供給ユニット200は前記実施の形態1の第1供給ユニット20の構成に加えて、第1冷媒貯槽23及び流量調節弁28の間に第2熱交換器210を備える。
【0076】
第2熱交換器210は第1冷媒貯槽23から供給される液体状態の前記第1冷媒と、過冷却器12より排出される気体状態の第1冷媒とを熱交換することができる。これにより、前記液体状態の第1冷媒は冷却されると共に、前記気体状態の第1冷媒は温度上昇し、実施の形態1と比較して、前記液体状態の第1冷媒はより低い温度で過冷却器12へ供給され、前記気体状態の第1冷媒はより高い温度で加温器24へ供給される。また、第2熱交換器210の種類としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
【0077】
<超電導ケーブルの冷却方法>
次に、本実施の形態2に係る超電導ケーブル用冷却装置2による超電導ケーブルの冷却方法について
図2を参照しながら以下に説明する。
【0078】
超電導ケーブル冷却ユニット10は、実施の形態1と同様の方法により、超電導ケーブル14を冷却する。また、第2供給ユニット30は、実施の形態1と同様の方法により、第2冷媒を第1供給ユニット200に供給する。
【0079】
第1供給ユニット200における第1冷媒の超電導ケーブル冷却ユニット10への供給は、以下の通り行われる。すなわち、前記実施の形態1の第1供給ユニット20の構成に加えて、第1冷媒貯槽23及び流量調節弁28の間に第2熱交換器210を備える。
【0080】
第1冷媒貯槽23から第1冷媒循環路21を介して供給される液体状態の第1冷媒は、先ず第2熱交換器210において、過冷却器12から排出される気体状態の第1冷媒と熱交換される。第1冷媒貯槽23から供給される液体状態の第1冷媒の温度は、過冷却器12から排出される気体状態の第1冷媒の温度よりも高い。そのため、前記熱交換においては、前記液体状態の第1冷媒が冷却され、前記気体状態の第1冷媒が加熱されることになる。これにより、第2熱交換器210を設置していない実施の形態1と比較して、温度が一層低い状態で前記液体状態の第1冷媒を過冷却器12に供給することが可能になり、また、温度が高い状態で前記気体状態の第1冷媒を加温器24に供給することができる。
【0081】
過冷却器12においては、実施の形態1の場合と同様に、第1冷媒は、真空ポンプ25により減圧された過冷却器12に導入されることで、圧力が低下し、これに伴い温度が低下する。尚、第1冷媒は圧力の低下に伴い一部が気化する。このため、液体状態の第1冷媒をより低い温度で過冷却器12供給することにより、液体状態の当該第1冷媒の冷却に要する冷熱エネルギーを減少させ、液体冷媒の冷却に使用できる冷熱エネルギーを増加させることができる。
【0082】
また、加温器24においては、実施の形態1の場合と同様に、過冷却器12より排出された前記気体状態の第1冷媒の温度を上昇させ、当該気体状態の第1冷媒を常温付近とすることで、当該真空ポンプ25として、汎用的なものを選定できるようにする。このため、前記気体状態の第1冷媒をより高い温度で加温器24に供給することにより、加温器24で廃棄される冷熱エネルギーの低減が図れる。
【0083】
以上より、本実施の形態2においては、第1供給ユニット200おいて、第1冷媒貯槽23と流量調節弁28の間に第2熱交換器210を設けることにより、実施の形態1と比較して、COPの値を一層向上させることが可能になる。
【実施例】
【0084】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、下記の実施例に記載されている組成、圧力条件、物性推算法等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定するものではない。
【0085】
(実施例1)
本実施例1においては、
図1に示す超電導ケーブル用冷却装置1の構成を用いて、プロセスシミュレーションを行った。このとき、液体冷媒としては液体窒素を、第1冷媒としては窒素を、第2冷媒としては液化天然ガスを用いた。また、液化天然ガスの組成は以下の通りとした。
CH
4:88.75体積%
C
2H
6:7.19体積%
C
3H
8:2.88体積%
C
4H
10:1.12体積%
C
5H
12:0.05体積%
N
2:0.01体積%
【0086】
<シミュレーション条件>
シミュレーション条件は下記のとおりとした。
過冷却器12から超電導ケーブル14に供給される液体冷媒の温度及び圧力:−205℃、300kPaG
第1冷媒貯槽23内部の圧力:200kPaG
本体部12a内部の圧力:−80kPaG
圧縮機26により圧縮された気体状態の第1冷媒の圧力:2500kPaG
第1熱交換器27に供給される液化天然ガスの温度:−157℃
第2冷媒貯槽内部の圧力:30kPaG
第1供給ユニットにより液体冷媒を冷却する能力:5kW
【0087】
窒素及び天然ガスの物性推算法としてPeng−Robinson状態方程式を用いた。圧力2500kPaGでの、窒素の沸点は−155℃であるため、液化天然ガスによる窒素の液化が可能である。
【0088】
上記のシミュレーションの結果から、第2供給ユニット30から第1供給ユニット20へ供給される天然ガスの流量は47.3kg/hであった。本プロセスにあっては、従来海水中等へ廃棄されていた液化天然ガスの冷熱エネルギーを、液体窒素の冷却に使用したのみであるため、冷熱エネルギーを回収した後の天然ガスは所望の用途に利用可能である。また、日本において、数十ヶ所存在する液化天然ガスのサテライト基地では、液化天然ガスを数百kg/hの速度で気化しているため、使用する天然ガスはサテライト基地で使用される量で賄うことが可能である。
【0089】
上記のシミュレーションの結果から、第1供給ユニット20において必要な動力としては、真空ポンプ25で10.4kWであり、圧縮機26で38.9kWであった。したがって、COPの値は5kW÷(10.4kW+38.9kW)=0.10となった。
【0090】
(結果)
液体窒素を−205℃程度の過冷却状態に冷却する際のCOPの値は、ブレイトン冷凍機を使用する場合は0.08程度であるが、本実施例1の場合は0.10であり、ブレイトン冷凍機を使用する場合を上回るエネルギー消費効率を達成した。また、本実施例1で使用した超電導ケーブル用冷却装置1は、非特許文献1に開示されている冷却システム(N
2放散方式)のように、超電導ケーブル冷却用液体窒素を冷却するための液体窒素を、使用後に放出することがない。そのため、本実施例においては、液体窒素の製造コスト及び定期的な液体窒素の補充を不要にすることができる。