(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記取付部は、前記インナーパイプによる前記押込部の押圧により、前記押込部材が前記ロックボルト側へスライドするように、前記外装体に取り付けられている、請求項3又は4に記載のステアリングロック装置。
前記ロックボルトは、電動モータの駆動によって進退可能なスライダの凹部に配置され、付勢部材によって前記退避位置から前記アンロック位置に向けて付勢されている、請求項1から8のいずれか1項に記載のステアリングロック装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るステアリングロック装置30を示す。このステアリングロック装置30は、ステアリングコラム1に取り付けられ、ステアリングホイール(図示せず)を回転可能なアンロック状態と回転不可能なロック状態とに切り換えるステアリングロックユニットを構成する。
【0013】
(ステアリングロック装置の概要)
図1及び
図2に示すように、ステアリングロック装置30は、ステアリングコラム1の外装パイプ21に取り付けられる外装体31を備える。
図3を併せて参照すると、外装体31の内部には、電動モータ41、ウォーム43、ギア部材45、スライダ47、ロックボルト50、及び制御基板58が配置されている。電動モータ41は、制御基板58に電気的に接続され、この制御基板58が車両のECU(Electronic Control Unit)に電気的に接続されている。ECUの指令によって電動モータ41は、正転(ロック駆動)及び逆転(アンロック駆動)される。
【0014】
以下の説明では、ステアリングシャフト10(シャフト本体12)の軸線A1が延びる方向をX方向、ロックボルト50が進退する方向をY方向、X方向及びY方向に対して直交する方向をZ方向と言うことがある。但し、これらの方向は、車両への組付状態の姿勢を意図するものではない。
【0015】
電動モータ41がロック駆動されると、電動モータ41に取り付けられたウォーム43の回転に連動して、ウォームホイール45aを備えるギア部材45が回転する。すると、ネジ部45b,47aによってギア部材45に螺合されたスライダ47は、
図1においてY方向上向きに移動する。この移動に連動してロックボルト50は、外装体31の挿通孔32からY方向上向きに進出し、先端の係止突起51で外装パイプ21内のステアリングシャフト10を係止する。その結果、
図4に示すように、ロックボルト50によって、軸線A1(X方向)回りのステアリングシャフト10の回転が規制される(ロック状態)。
【0016】
電動モータ41がアンロック駆動されると、ウォーム43とギア部材45が逆向きに回転し、スライダ47が
図1においてY方向下向きに移動する。この移動に連動してロックボルト50は、外装体31側へY方向下向き後退し、ステアリングシャフト10の係止を解除する。その結果、
図5に示すように、ロックボルト50によるステアリングシャフト10の回転規制が解除される(アンロック状態)。
【0017】
(ステアリングコラムの詳細)
ステアリングコラム1は、ステアリングホイールに衝突した運転者に加わる衝撃を吸収する機能を有する。この機能は、ステアリングシャフト10の軸線A1に沿って、ステアリングシャフト10をX方向に収縮可能とすることで、構成されている(コラップス構造)。
【0018】
詳しくは、
図1及び
図4に示すように、ステアリングシャフト10は、シャフト本体12、スライドシャフト15、及びロックカラー18を備える。ステアリングシャフト10を取り囲む外装パイプ21は、インナーパイプ23、及びアウターパイプ25を備える。シャフト本体12に対してスライドシャフト15は、シャフト本体12の軸線A1に沿ってX方向に移動可能に配置されている。インナーパイプ23に対してアウターパイプ25は、インナーパイプ23の軸線A2に沿ってX方向に移動可能に配置されている。以下、これらの具体的構成について説明する。
【0019】
シャフト本体12は、車体に回転可能に配置された中実の回転軸であり、図示しない一端側が車両のステアリングギアボックスに連結されている。
図1に最も明瞭に示すように、シャフト本体12の外周には、シャフト本体12の径方向外向きに突出する凸部13が、周方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0020】
スライドシャフト15は、図示しない左端(他端)にステアリングホイールが固定され、このステアリングホイールの操作によってシャフト本体12を一体に回転させるものである。スライドシャフト15は、シャフト本体12と同軸の円筒部材からなる。
図1において右側に位置するスライドシャフト15の接続端(一端)15a側が、シャフト本体12に接続されている。シャフト本体12に対してスライドシャフト15は、シャフト本体12の軸線A1に沿ってスライド可能に接続されている。スライドシャフト15の内周には、シャフト本体12の軸線A1に沿って延び、凸部13がスライド可能に嵌合される凹溝16が、周方向に間隔をあけて複数設けられている。凸部13と凹溝16の嵌合によって、シャフト本体12に対するスライドシャフト15の相対的な回転が防止されている。
【0021】
ロックカラー18は、ロックボルト50が係止されることで、ステアリングシャフト10をロックするものである。ロックカラー18は、スライドシャフト15と同軸の円筒部材からなり、スライドシャフト15の外周に固定されている。ロックカラー18の外周には、シャフト本体12の軸線A1に沿って延び、ロックボルト50の係止突起51が係止する係止溝19が、周方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0022】
インナーパイプ23は、シャフト本体12を覆い隠すもので、シャフト本体12を取り囲むように、車体に固定されている。インナーパイプ23は、軸線A2がシャフト本体12の軸線A1と同軸になるように配置されている。インナーパイプ23のアウターパイプ25側の端は、シャフト本体12のスライドシャフト15側の端と概ね同じ位置に配置されている。
【0023】
アウターパイプ25は、スライドシャフト15を覆い隠すもので、スライドシャフト15を取り囲むように、スライドシャフト15と同軸に配置されている。
図1において右側に位置するアウターパイプ25の装着端(一端)25a側は、インナーパイプ23の外側に嵌合されている。
【0024】
アウターパイプ25は、車体に位置決めするためのブラケット26を備える。ブラケット26は、設定値以上の衝撃が加わることで、破断又は車体から離脱する構成である。つまり、アウターパイプ25は、ブラケット26に設定値以上の衝撃が加わることで、インナーパイプ23の軸線A2に沿って移動できるように、車体に取り付けられている。
【0025】
アウターパイプ25には、定常の組立状態で、ロックカラー18(スライドシャフト15)を取り囲む部分(他端側)に、貫通孔27が設けられている。貫通孔27は、アウターパイプ25の外側から内側へ径方向に貫通し、インナーパイプ23の軸線A2に沿って延びる長溝である。インナーパイプ23の軸線A2に沿った貫通孔27の全長は、シャフト本体12の軸線A1に沿ったロックカラー18の全長よりも長い。
【0026】
このようにしたステアリングコラム1では、シャフト本体12に対してスライドシャフト15が軸線A1に沿って収縮する向きに移動可能であり、インナーパイプ23に対してアウターパイプ25が軸線A2に沿って収縮する向きに移動可能である。よって、ステアリングホイールに衝突した運転者に加わる衝撃を、効果的に吸収できる。
【0027】
(ステアリングロック装置の詳細)
図1に示すように、ステアリングロック装置30の外装体31は、ロックボルト50が貫通孔27に位置するように、アウターパイプ25に固定される。この固定は、図示しない半円環状のブラケットをアウターパイプ25の外周に配置し、このブラケットを外装体31のネジ止め部33(
図2参照)にネジ止めすることで行われる。2個のネジ止め部33の間は、半円形状の装着溝34を構成する。装着溝34の内径は、アウターパイプ25の外径と同じである。
図2及び
図4に示すように、装着溝34内には、貫通孔27内に嵌合される嵌合凸部35が設けられている。ロックボルト50が挿通される挿通孔32は、嵌合凸部35内に形成されている。
【0028】
図5に示すように、アンロック状態では、ロックボルト50の係止突起51は、ロックカラー18から離反していれば、アウターパイプ25の外側まで後退させる必要はない。逆に、係止突起51がアウターパイプ25内に位置する
図5の状態をアンロック位置として設定する方が、アンロック位置とロック位置の間のロックボルト50の作動ストロークと作動時間を短縮できるため、好ましい。しかし、このアンロック状態では、アウターパイプ25がインナーパイプ23側へ移動すると、ロックボルト50とインナーパイプ23が当接するため、それ以上のパイプ23,25の相対移動は不可能である。
【0029】
そこで、本実施形態のステアリングロック装置30では、ロックボルト50を、
図4に示すロック位置、
図5に示すアンロック位置、及び
図7に示す退避位置に移動可能としている。また、電動モータ41によるロックボルト50の移動は、ロック位置とアンロック位置の間だけとし、アンロック位置から退避位置までの移動は、押込部材60によって行うようにしている。
【0030】
(ロックボルトの詳細)
図3から
図5に示すように、ロックボルト50は、Z方向の寸法(幅)が他のX,Y方向の寸法よりも小さい四角柱形状である。このロックボルト50には、ロックボルト50を退避位置に移動させるための切り欠き(傾斜面)は無い。ロックボルト50が進出する向き(Y方向上向き)の先端には、係止溝19に係止する係止突起51が設けられている。係止突起51は、シャフト本体12の軸線A1に沿ってX方向に延びている。
【0031】
ロックボルト50には、係止突起51の反対側に、Y方向下向きに突出する差込部52が設けられ、この差込部52に挿通溝53が設けられている。差込部52をスライダ47の凹部48に上方から差し込み、挿通溝53を貫通するように連結ピン55をスライダ27に取り付けることで、スライダ47にロックボルト50が取り付けられている。挿通溝53は、スライダ47に対してロックボルト50がY方向へ移動できるように、Y方向に細長い長円孔によって構成されている。ロックボルト50は、凹部48内に配置されたスプリング(付勢部材)56によって、退避位置からアンロック位置に向けて、スライダ47から進出する向き(Y方向上向き)に付勢されている。
【0032】
図5に示すように、アンロック位置のロックボルト50は、ロックカラー18から離反し、スライドシャフト15の回転規制を解除している。ロックボルト50の係止突起(一部)51は、アウターパイプ25内に位置し、インナーパイプ23が移動する軌道上に位置している。スライダ47に対してロックボルト50は、スプリング56の付勢力によって最も進出している。
【0033】
図4に示すように、ロック位置のロックボルト50は、アウターパイプ25内においてロックカラー18を係止し、スライドシャフト15の回転を規制している。ロックボルト50は、アンロック位置よりも外装体31から進出し、インナーパイプ23が移動する軌道上に位置している。スライダ47に対してロックボルト50は、アンロック状態の場合よりも、スプリング56の付勢力に抗してY方向下向きに後退している。
【0034】
図7に示すように、退避位置のロックボルト50は、ロックカラー18から離反し、スライドシャフト15の回転規制を解除している。ロックボルト50は、押込部材60によってY方向下向きに移動されることで、アンロック位置よりも外装体31側へ後退している。ロックボルト50の係止突起51は、貫通孔27からアウターパイプ25外へ離反し、インナーパイプ23が移動する軌道上から離れている。アンロック状態と退避状態では、スライダ47のY方向の位置は同じである。つまり、スライダ47に対してロックボルト50は、アンロック状態の場合よりも、スプリング56の付勢力に抗してY方向下向きに後退している。
【0035】
(押込部材の詳細)
図5から
図7に示すように、押込部材60は、アンロック位置のロックボルト50を退避位置に移動させるもので、外装体31の嵌合凸部35に配置されている。押込部材60は、インナーパイプ23側へのアウターパイプ25の移動により、インナーパイプ23によって押圧されることで、ロックボルト50をY方向下向きに移動させる。
【0036】
図2、
図3、及び
図8に示すように、押込部材60は、ロックボルト50を移動させるための押込部61と、外装体31に取り付けるための取付部65と、押込部61と取付部65を連続させる接続部68とを備える。
【0037】
押込部61は、インナーパイプ23からの押圧によって、アンロック位置のロックボルト50に当接し(
図6参照)、ロックボルト50を退避位置へ後退させる(
図7参照)。
図5を参照すると、押込部61は、アウターパイプ25の貫通孔27内に配置され、インナーパイプ23よりもスライドシャフト15側へ突出されている。
【0038】
図4及び
図5を参照すると、定常の組立状態で押込部61は、インナーパイプ23が相対的に移動するX方向左側に向けて、ロックカラー18に近づくようにY方向上向きに傾斜されている。つまり、押込部61は平板状であり、接続部68の湾曲によって、取付部65に対して傾斜されている。定常の組立状態で押込部61のロックボルト50側の端は、ロックボルト50に対してX方向に間隔をあけて位置する。
【0039】
図8を参照すると、押込部61のZ方向の寸法(幅)W1は、挿通孔32のZ方向の寸法W2よりも小さい。
図3を併せて参照すると、押込部61のZ方向の両側には、ロックボルト50の押込量を確保するためのリブ62が、湾曲部63を介して設けられている。つまり、本実施形態では、インナーパイプ23はリブ62の縁に当接する。リブ62のZ方向の両端には、インナーパイプ23の引っ掛かりを防止し、インナーパイプ23の移動阻害を防ぐための切欠部64が設けられている。
【0040】
図2、
図3、及び
図8に示すように、取付部65は、四角形状の板体からなる。取付部65は、インナーパイプ23によって押込部61がX方向左向きに押圧されることで、押込部材60全体がロックボルト50側へスライドするように、外装体31に取り付けられている。
【0041】
図8を参照すると、取付部65のZ方向の寸法(幅)W3は、押込部61のZ方向の寸法W1よりも大きい。これにより取付部65には、押込部材60がスライドする向きであるX方向左側の端に、押込部61よりもZ方向両側へ突出する突出部66が形成されている。また、取付部65には、押込部材60がスライドする向きの反対側(X方向右側)を開放した取付溝67が形成されている。ロックボルト50が進退するY方向上側から見た取付溝67は、U字形状である。
【0042】
接続部68は、押込部61と取付部65を回転可能に接続するものである。接続部68は、押込部61をアウターパイプ25内に位置させ、取付部65をアウターパイプ25外(貫通孔27内)に位置させるように、湾曲している。接続部68のZ方向の寸法(幅)は、押込部61のZ方向の寸法W1よりも小さい。これにより、接続部68の変形が容易に行われるように構成されている。
【0043】
(押込部材の取付構造)
図6及び
図7に示すように、外装体31の嵌合凸部35は、インナーパイプ23に干渉しない寸法で突出されている。
図2及び
図8に示すように、嵌合凸部35には、取付部65をスライド可能に配置する溝状の配置部36が設けられている。配置部36には、押込部材60を保持するネジ(保持部材)70が配置されるとともに、押込部材60のスライドを止めるストッパ部38が形成されている。
【0044】
配置部36は、インナーパイプ23側からロックボルト50に向けて、取付部65がスライドする向き(X方向)に延びる四角形状の窪みである。配置部36のX方向の寸法(長さ)L1は、取付部65のX方向の寸法L2よりも長い。配置部36のZ方向の寸法は、取付部65のZ方向の寸法W3と概ね同一である。配置部36の深さDは、取付部65がインナーパイプ23に干渉しないように、取付部65の厚みTよりも深く設定されている。
【0045】
保持部材を構成するネジ70は、配置部36のインナーパイプ23側(X方向右側)に配置されている。配置部36にはネジ孔37が設けられている。取付溝67を貫通させたネジ70をネジ孔37に締め付け、ネジ70の頭部71と配置部36の底との間に取付部65を挟み込むことで、定められた取付位置に押込部材60を保持している。定められた取付位置とは、
図4及び
図5に示すように、ロックボルト50から押込部61がX方向に離反し、配置部36に対して取付部65がロックボルト50に向けてスライド可能な位置である。
【0046】
ストッパ部38は、配置部36のロックボルト50側の端に形成された段部によって構成されている。詳しくは、配置部36の挿通孔32側の端には、押込部61を挿通孔32内に回転させるための連通溝39が設けられている。連通溝39のZ方向の寸法は、挿通孔32のZ方向の寸法W2と同一である。連通溝39のZ方向の寸法(W2)は、配置部36のZ方向の寸法(W3)よりも小さい。これにより、配置部36の挿通孔32側の端には、ストッパ部38を構成する段部が形成されている。ストッパ部38に取付部65の突出部66が当接することで、押込部材60のX方向左向きのスライドを停止できる。
【0047】
このステアリングロック装置30は、外装体31に押込部材60を配置した状態で、アウターパイプ25に装着される。この際、押込部材60は、ネジ70によって外装体31に保持されているため、外装体31から脱落することはない。押込部61がロックボルト50に干渉しないように、押込部材60をアウターパイプ25の所定位置に同時に配置できる。また、押込部材60のスライドにより押込部61をロックボルト50に近づけて当接可能にできるため、押込部61は、定常時にはロックボルト50に干渉しない短い全長で形成できる。よって、アウターパイプ25内の狭い空間に無理なく押込部61を配置できる。
【0048】
次に、ステアリングロック装置30の動作について説明する。
【0049】
前述のように、定常時には、ECUの指令によって電動モータ41が駆動され、ロックボルト50がロック位置とアンロック位置に移動される。この定常時の状態では、押込部材60の押込部61は、ロックボルト50から離反し、ロックボルト50に干渉しないため、ロックボルト50のロック作動及びアンロック作動を阻害することはない。また、ロックボルト50は、電動モータ41によってロック位置とアンロック位置の間だけ移動されるため、ロック作動時及びアンロック作動時のストロークと時間を短縮できる。
【0050】
図5に示すアンロック状態で、ステアリングホイールに運転者が衝突すると、スライドシャフト15とアウターパイプ25にX方向右向きの負荷が加わる。すると、アウターパイプ25のブラケット26が車体から離脱し、スライドシャフト15とアウターパイプ25がX方向右向きに移動する。これによりステアリングロック装置30は、アウターパイプ25と一緒にX方向右側へ移動する。
【0051】
図6に示すように、アウターパイプ25が移動すると、相対移動するインナーパイプ23は、押込部材60の押込部61に当接し、押込部61をX方向左向きに押圧する。これにより押込部材60全体がロックボルト50側にスライドし、ネジ70から取付部65が離脱する。そして、
図6のように押込部61がロックボルト50(係止突起51)の上端に当接する。
【0052】
押込部材60のスライドは、取付部65の突出部66がストッパ部38に当接することで停止する。この状態で押込部61は、インナーパイプ23が更に移動(押圧)することで、接続部68が変形し、取付部65に対して回転する。これにより押込部61は、
図7に示すように、ロックボルト50を挿通孔32内に押し込むとともに、押込部61自体も挿通孔32内に進入する。その結果、ロックボルト50(係止突起51)はアウターパイプ25外に離反した退避位置に移動する。また、押込部61によってアウターパイプ25とインナーパイプ23の相対移動を妨げることなく、貫通孔27を越える位置までインナーパイプ23を移動できる。よって、運転者に加わる衝撃を、効果的に吸収できる。
【0053】
このように、本実施形態のステアリングロック装置30では、インナーパイプ23側へのアウターパイプ25の移動により、押込部材60によってアンロック位置のロックボルト50を退避位置へ移動できる。よって、ロックボルト50には切り欠き(傾斜面)を設ける必要がないため、ロックボルト50とスライドシャフト15との係止面積を確保でき、ステアリングシャフト10をロックする強度を確保できる。
【0054】
(第2実施形態)
図9から
図11は第2実施形態のステアリングロック装置30を示す。この第2実施形態では、外装体31に対して押込部材60をスライド不可能に固定した点で、第1実施形態と相違する。
【0055】
押込部材60の取付部65には、円形状の取付孔75が形成されている。
図10に最も明瞭に示すように、押込部材60の押込部61は、定常状態で回転によってロックボルト50に当接可能な全長で形成されている。
【0056】
外装体31の配置部36は、X方向とZ方向の寸法が取付部65のX方向とZ方向の寸法と同じ四角形状の窪みからなる。配置部36には、取付孔75と対応する位置にネジ孔37が設けられている。また、連通溝39の挿通孔32側の端には、配置部36側から挿通孔32に向けて、Y方向下向きに傾斜する傾斜部76が設けられている。
図11に示すように、傾斜部76は、押込部61によるロックボルト50の押込量を確保する機能と、インナーパイプ23に対する押込部61自体の退避領域を確保する機能とを備える。
【0057】
この第2実施形態のステアリングロック装置30では、外装体31からの押込部材60の離脱を確実に防止できる。また、インナーパイプ23の移動(押圧)によって押込部材60はスライドしないが、第1実施形態と同様に、押込部材60によってアンロック位置のロックボルト50を退避位置へ確実に移動できる。
【0058】
(第3実施形態)
図12から
図15は第3実施形態のステアリングロック装置30を示す。この第3実施形態では、第1実施形態と同じ押込部材60を用い、押込部61の傾斜(傾斜面61a)によって、アンロック位置のロックボルト50を退避位置へ移動させるようにした点で、第1実施形態と相違する。
【0059】
図12に示すように、外装体31の配置部36は、押込部材60がスライドする向きの端を、挿通孔32のX方向の概ね中央まで延ばして形成し、連通溝39を設けないようにした点で、第1実施形態と相違する。
【0060】
押込部材60の押込部61は、ロックボルト50に当接する傾斜面61aを有する。傾斜面61aは、取付部65がスライドする向きに向けて、スライドシャフト15に近づく向きに傾斜している。
【0061】
図13に示すアンロック状態で、アウターパイプ25がX方向右向きに移動すると、相対移動するインナーパイプ23が押込部61に当接し、押込部材60全体がロックボルト50側にスライドする。そして、押込部61の傾斜面61aがロックボルト50(係止突起51)の上端に当接し、傾斜面61aの傾斜によってロックボルト50をY方向下向きに移動させる。
【0062】
図14に示すように、押込部材60のスライドは、取付部65の突出部66が配置部36の端のストッパ部38に当接することで停止する。この状態では、取付部65の一部がロックボルト50上に位置し、ロックボルト50を退避位置に保持している。この状態で押込部61は、インナーパイプ23が更に移動(押圧)することで、取付部65に対して回転する。これにより押込部61は、
図15に示すように、ロックボルト50を挿通孔32内に更に押し込むとともに、押込部61自体も挿通孔32内に進入する。これにより、貫通孔27を越える位置までインナーパイプ23が移動可能になる。
【0063】
このように、第3実施形態のステアリングロック装置30では、押込部61の傾斜面61aによって、第1実施形態と同様に、アンロック位置のロックボルト50を退避位置へ確実に移動できる。また、アンロック位置から退避位置へのロックボルト50の移動と、取付部65に対する押込部61の回転とは、時間が異なるため、両方を同時に行う場合よりも、軽い力でロックボルト50を退避位置へ移動できる。
【0064】
なお、本発明のステアリングロック装置30は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0065】
例えば、押込部61による退避位置へのロックボルト50の移動は、第1実施形態と第2実施形態では回転により行い、第3実施形態では傾斜面61aの傾斜によって行うようにしたが、移動を実現できる構成であれば、必要に応じて変更が可能である。また、押込部材60は、貫通孔27を通してアウターパイプ25内に押込部61を配置できる構成であれば、必要に応じて変更が可能である。