特許第6937665号(P6937665)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6937665
(24)【登録日】2021年9月2日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】コーヒー焙煎装置
(51)【国際特許分類】
   A23N 12/10 20060101AFI20210909BHJP
【FI】
   A23N12/10 Z
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-213411(P2017-213411)
(22)【出願日】2017年11月6日
(65)【公開番号】特開2019-83716(P2019-83716A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】390008497
【氏名又は名称】日本電熱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100163061
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】小池 幸司
(72)【発明者】
【氏名】西原 剛
【審査官】 杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−279151(JP,A)
【文献】 実開昭61−31090(JP,U)
【文献】 特開平3−164161(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1359355(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23N 12/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背板と、
焙煎時には前記背板を正回転させ、焙煎終了時には前記背板を逆回転させる回転機構と、
前記背板に対向するように配置されたドラム底面部と、前記ドラム底面部の外周縁を起点として前記背板から離れる方向に延在するドラム側面部と、を有し、前記焙煎時において、前記ドラム底面部と前記ドラム側面部とによって区画された内部領域に収容されたコーヒー豆に熱風が供給されるとともに、前記ドラム底面部の第1係合孔が前記背板の突起部に係合することで前記背板の正回転に伴って正回転する焙煎ドラムと、
前記焙煎終了時において前記ドラム側面部のソレノイド係合突部に当接して前記焙煎ドラムを前記背板から離れる方向に変位させることで前記第1係合孔と前記突起部との係合を解除させるソレノイドと、を備え、
前記背板は、前記焙煎時において前記ドラム底面部のコーヒー豆排出孔を閉塞する背板閉塞部と、前記焙煎終了時に前記第1係合孔と前記突起部との係合が解除された後に前記背板が逆回転した場合に前記コーヒー豆排出孔に連通することで前記コーヒー豆排出孔を開状態にする背板開口部と、を備えるコーヒー焙煎装置。
【請求項2】
前記ドラム底面部は、前記焙煎終了時において前記背板開口部が前記コーヒー豆排出孔を開状態にした場合に、前記背板の前記突起部が係合する第2係合孔を備える請求項1記載のコーヒー焙煎装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコーヒー焙煎装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コーヒー豆が入れられた焙煎ドラムを回転させながら焙煎ドラム内に熱風を供給することにより、コーヒー豆を高温に熱して、コーヒー豆を焙煎するコーヒー焙煎装置が知られている。このようなコーヒー焙煎装置において、焙煎後のコーヒー豆は高温になっている。このため、焙煎後のコーヒー豆を焙煎ドラムから手(具体的には皮手袋着用の手)で取り出すことは、火傷のおそれがあるため、必ずしも安全な作業であるとはいえない。
【0003】
これに関して、例えば特許文献1には、焙煎時においては、コーヒー豆が入れられた焙煎ドラム(焙煎容器)のボトムカバーに設けられたコーヒー豆排出孔をシャッターによって閉塞させつつ、焙煎ドラムを正回転させながらコーヒー豆を熱風によって焙煎し、焙煎終了時においては、シャッターを焙煎ドラムに対して逆回転させることでコーヒー豆排出孔を開状態にして、コーヒー豆を焙煎ドラムから排出できる状態にする技術が開示されている。このような技術によれば、焙煎時においては、コーヒー豆が焙煎ドラムから排出されることを抑制しつつ、焙煎ドラムを正回転させながらコーヒー豆を熱風で焙煎することができ、焙煎終了時には、コーヒー豆をコーヒー豆排出孔から排出できる状態にすることができるので、焙煎後のコーヒー豆を焙煎ドラムから安全に排出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−279151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような特許文献1に例示される従来の焙煎装置は、複雑な部品構成を用いて、上記のコーヒー豆の焙煎を実現している。仮に焙煎装置の構成を簡素化することができれば、例えばコーヒー焙煎装置を組み立てる際に、各構成部材の位置関係を調整することが容易になる点で好ましい。しかしながら、これまで、簡素な構成でコーヒー豆の焙煎を安全に行うことができるコーヒー焙煎装置は開発されていなかった。
【0006】
そこで、本発明は、構成の簡素化を図りつつ、焙煎後のコーヒー豆を焙煎ドラムから安全に排出することができるコーヒー焙煎装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るコーヒー焙煎装置は、背板と、焙煎時には前記背板を正回転させ、焙煎終了時には前記背板を逆回転させる回転機構と、前記背板に対向するように配置されたドラム底面部と、前記ドラム底面部の外周縁を起点として前記背板から離れる方向に延在するドラム側面部と、を有し、前記焙煎時において、前記ドラム底面部と前記ドラム側面部とによって区画された内部領域に収容されたコーヒー豆に熱風が供給されるとともに、前記ドラム底面部の第1係合孔が前記背板の突起部に係合することで前記背板の正回転に伴って正回転する焙煎ドラムと、前記焙煎終了時において前記ドラム側面部のソレノイド係合突部に当接して前記焙煎ドラムを前記背板から離れる方向に変位させることで前記第1係合孔と前記突起部との係合を解除させるソレノイドと、を備え、前記背板は、前記焙煎時において前記ドラム底面部のコーヒー豆排出孔を閉塞する背板閉塞部と、前記焙煎終了時
に前記第1係合孔と前記突起部との係合が解除された後に前記背板が逆回転した場合に前記コーヒー豆排出孔に連通することで前記コーヒー豆排出孔を開状態にする背板開口部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、焙煎時には、背板閉塞部によってドラム底面部のコーヒー豆排出孔を閉塞することができる。これにより、焙煎時において、コーヒー豆がコーヒー豆排出孔から排出されることが抑制されている。そして、焙煎時には、焙煎ドラムに係合した背板の正回転に伴って焙煎ドラムも正回転し、且つ、コーヒー豆を熱風によって焙煎することができる。一方、焙煎終了時には、ソレノイドによって焙煎ドラムを背板から離れる方向に変位させることで、焙煎ドラムの第1係合孔と背板の突起部との係合を解除させる。そして、背板が逆回転することで、背板開口部によってコーヒー豆排出孔を開状態にすることができる。これにより、コーヒー豆をコーヒー豆排出孔から排出できる状態にすることができる。
【0009】
以上のように、本発明によれば、上記のような背板、回転機構、焙煎ドラム、及びソレノイドといった簡素な構成によって、焙煎時には焙煎ドラムのコーヒー豆排出孔を閉塞させつつ、焙煎ドラムを正回転させながら熱風によってコーヒー豆を焙煎し、焙煎終了時にはコーヒー豆排出孔を開状態にしてコーヒー豆を焙煎ドラムから排出できる状態にすることができる。したがって、構成の簡素化を図りつつ、焙煎後のコーヒー豆を焙煎ドラムから安全に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1(a)は実施形態に係るコーヒー焙煎装置の主要部の模式的斜視図である。図1(b)はコーヒー焙煎装置の模式的正面図である。
図2図2(a)はコーヒー焙煎装置のA−A線断面を模式的に示す模式的断面図である。図2(b)は背板と焙煎ドラムと回転機構の軸部との位置関係を説明するための模式的分解断面図である。なお、図2(b)の焙煎ドラムは図2(a)の焙煎ドラムがさらに簡略化されて図示されている。
図3図3(a)は背板の模式的斜視図である。図3(b)は背板に焙煎ドラムが係合した状態を説明するための模式的断面図である。図3(c)は図3(b)の締結ボルトの近傍部分(C部分)を拡大した模式的拡大断面図である。なお、図3(b)の焙煎ドラムは図2(a)の焙煎ドラムがさらに簡略化されて図示されている。
図4図4(a)及び図4(b)は焙煎ドラムの模式的斜視図である。図4(c)は焙煎ドラムの模式的背面図である。図4(d)は焙煎ドラムのB−B線断面を模式的に示す模式的断面図である。
図5図5(a)はソレノイドが焙煎ドラムのソレノイド係合突部に係合する前の状態を示す模式図である。図5(b)はソレノイドがソレノイド係合突部に係合した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係るコーヒー焙煎装置1について図面を参照しつつ説明する。なお、図面に関しては、構成が分かり易いように模式的に図示されており、図面上の各部位の寸法比は必ずしも実物と一致しておらず、また図面間の寸法比等も必ずしも一致していない。なお、主な図面には、参考用としてX−Y−Zの直交座標が図示されている。このY軸は、後述する焙煎ドラム60の軸線100に平行な軸である。
【0012】
図1(a)及び図1(b)に示すように、コーヒー焙煎装置1は、焙煎本体部10、熱風供給装置20、回転機構30、及びソレノイド40を備えている。また、図2(a)及び図2(b)に示すように、コーヒー焙煎装置1は、焙煎本体部10の内部に配置された
背板50及び焙煎ドラム60を備えている。
【0013】
図1(a)及び図1(b)を参照して、熱風供給装置20は、焙煎ドラム60に対して、コーヒー豆の焙煎時に熱風を供給するための装置である。具体的には、本実施形態に係る熱風供給装置20は、一例として、ヒータ21とファン22とを備えている。ヒータ21及びファン22の動作は、コーヒー焙煎装置1の制御装置(図示せず)によって制御されている。焙煎時において、ヒータ21が発熱し、ファン22はヒータ21に風を送る。これにより、熱風が焙煎ドラム60に供給される。なお、熱風の温度は、熱風によってコーヒー豆を焙煎できる温度以上であれば特に限定されるものではないが、例えば250℃以上の温度を用いればよい。
【0014】
図2(a)に示すように、背板50及び焙煎ドラム60は、焙煎本体部10の内部に設けられた収容部11に収容されている。具体的には、背板50及び焙煎ドラム60は、焙煎ドラム60の軸線100が水平方向に対して斜め上方側にα度傾斜するようにして、収容部11に収容されている。
【0015】
また、図2(a)に示すように、コーヒー焙煎装置1は、焙煎後のコーヒー豆を焙煎本体部10から排出するための排出口13と、この排出口13を開閉するための排出口用蓋14とを備えている。排出口用蓋14の開閉動作は、コーヒー焙煎装置1の制御装置によって制御されている。
【0016】
また、コーヒー焙煎装置1は、視認窓12を備えている。なお、視認窓12は、図2(a)において二点鎖線で図示されており、前述した図1において視認窓12の図示は省略されている。視認窓12は、コーヒー豆の焙煎時において焙煎ドラム60の内部領域を視認するための覗き窓であり、本実施形態においては、ガラス窓によって構成されている。この視認窓12は、コーヒー焙煎装置1の焙煎本体部10から容易に取り外すことができるような態様で焙煎本体部10に取り付けられている(すなわち、脱着可能に取り付けられている)。この具体例として、本実施形態に係る視認窓12は、ボルト等の脱着可能な締結部材によって焙煎本体部10に取り付けられている。
【0017】
なお、視認窓12は、例えば開閉式の視認窓であってもよい。この一例を挙げると、例えば視認窓12は、視認窓12を回転可能に接続する接続部材(例えばヒンジ等)によって、焙煎本体部10に取り付けられていてもよい。この場合、視認窓12は、この接続部材を回転軸として回転することで開閉する。
【0018】
回転機構30は、背板50を正回転(Fr)及び逆回転(Br)させるための機構である。具体的には、本実施形態に係る回転機構30は、一例として、軸部31と、軸部31を回転させるモータ32とを備えている。図2(a)及び図2(b)に示すように、軸部31の−Y方向に向けて突出した先端部は、背板50の背板軸孔52及び焙煎ドラム60のドラム軸孔66に挿通される。
【0019】
図2(b)に示すように、背板50は、締結ボルト33a及び締結ボルト33bによって、回転機構30の軸部31に締結されている。具体的には、締結ボルト33a及び締結ボルト33bは、それぞれ背板50のボルト挿通孔53a及びボルト挿通孔53bを挿通して、軸部31のネジ孔35a及びネジ孔35bに螺合している。このようにして、本実施形態に係る背板50は軸部31に接続されている。これにより、背板50は軸部31と一体となって回転する。
【0020】
一方、焙煎ドラム60は、締結ボルト33a,33bによって軸部31に締結されておらず、焙煎ドラム60の後述する第1係合孔67(図4(c))に背板50の後述する突
起部54(図3(a))が係合するようにして、背板50上に配置されている。例えば焙煎ドラム60を清掃するために、焙煎ドラム60を収容部11から取り出す際には、まず、視認窓12を取り外し(又は開状態にし)、次いで、焙煎ドラム60を収容部11から取り出せばよい。このように、本実施形態に係るコーヒー焙煎装置1は、焙煎ドラム60をコーヒー焙煎装置1から容易に取り出すことができる構成になっている。
【0021】
モータ32は、コーヒー焙煎装置1の制御装置によって制御されることで、正回転(Fr)と逆回転(Br)とを切り替えることができる電動モータである。制御装置は、コーヒー豆の焙煎を開始させる旨の焙煎開始指令を受信した場合にモータ32を正回転させ、コーヒー豆の焙煎を終了させる旨の焙煎終了指令を受信した場合にモータ32を逆回転させる。これにより、モータ32及び背板50は、コーヒー豆の焙煎時には正回転し、焙煎終了時には逆回転する。
【0022】
続いて、背板50の詳細について説明する。図3(a)及び図3(b)に示すように、背板50は、円板形状を有する背板本体部51を有している。背板本体部51の中央部には、前述した回転機構30の軸部31が挿通される背板軸孔52が設けられている。また、背板本体部51には、前述した締結ボルト33a,33bが挿通されるボルト挿通孔53a,53bが設けられている。なお、図3(c)に示すように、締結ボルト33a,33bによって背板50が軸部31に締結された状態において、締結ボルト33a,33bのボルト頭部34は、焙煎ドラム60の後述する長孔70a,70b内にそれぞれ配置されている。
【0023】
また、背板50の背板本体部51には、焙煎ドラム60の後述するドラム底面部61の側(−Y方向側)に向けて突出した突起部54が設けられている。突起部54は、焙煎時においては、ドラム底面部61の後述する第1係合孔67に係合し、焙煎終了後においては、ドラム底面部61の後述する第2係合孔68に係合する(図4(c))。
【0024】
また、背板本体部51は、背板開口部55及び背板閉塞部56を備えている。背板開口部55は、焙煎終了時において第1係合孔67と突起部54との係合が解除された後に背板50が逆回転した場合に、焙煎ドラム60の後述するコーヒー豆排出孔69(図4)に連通することでコーヒー豆排出孔69を開状態にする部位である。背板閉塞部56は、焙煎時においてコーヒー豆排出孔69を閉塞する部位である。なお、本実施形態に係る背板閉塞部56は、背板本体部51の開口していない部位(具体的には、軸線100からの距離が背板開口部55と同じ円周上に位置する、背板開口部55以外の部位)によって構成されている。
【0025】
続いて、焙煎ドラム60の詳細について説明する。図4(a)〜図4(d)に示すように、焙煎ドラム60は、ドラム底面部61、ドラム側面部62、及び羽根64を備えている。ドラム底面部61は、背板50に対向するようにして、背板50の−Y方向側に配置されている(前述した図2参照)。
【0026】
ドラム側面部62は、ドラム底面部61の外周縁を起点として背板50から離れる方向(−Y方向)に延在している。ドラム側面部62には、熱風供給装置20から供給された熱風が通過するための熱風通過孔65が設けられている。コーヒー豆の焙煎時において、焙煎ドラム60のドラム底面部61とドラム側面部62とによって区画された内部領域には、コーヒー豆が入れられる。そして、焙煎時において、熱風供給装置20からの熱風は、この熱風通過孔65を通過して、この内部領域に供給される。これにより、コーヒー豆が焙煎される。
【0027】
また、ドラム側面部62には、ソレノイド係合突部63が設けられている。具体的には
、ソレノイド係合突部63は、焙煎ドラム60の径方向で外側に向けて突出するように、ドラム側面部62に設けられている。ソレノイド係合突部63の機能等は、後述する図5で説明する。
【0028】
図4(c)に示すように、ドラム底面部61の中央部には、ドラム軸孔66が設けられている。このドラム軸孔66には、前述した回転機構30の軸部31の先端部が挿通される。
【0029】
また、ドラム底面部61には、背板50の突起部54が係合する孔である第1係合孔67が設けられている。焙煎時において、焙煎ドラム60は、ドラム底面部61の第1係合孔67に背板50の突起部54が係合するようにして(具体的には、突起部54が第1係合孔67に嵌るようにして)、コーヒー焙煎装置1の収容部11に配置されている。これにより、焙煎時において、背板50が正回転(Fr)することに伴って、焙煎ドラム60も正回転する。すなわち、本実施形態に係る焙煎ドラム60は、焙煎時において、正回転しながらコーヒー豆を焙煎している。
【0030】
焙煎ドラム60の羽根64は、このコーヒー豆の焙煎時に、コーヒー豆をかき混ぜるために設けられている部材である。具体的には、焙煎時に焙煎ドラム60が正回転することによって、羽根64も軸線100を回転中心として正回転する。これにより、焙煎ドラム60の内部領域のコーヒー豆は、羽根64によってかき混ぜられる。この羽根64の取り付け位置や、角度、寸法等は、羽根64によってコーヒー豆を効果的にかき混ぜることができるように設定されている。
【0031】
図4(b)及び図4(c)に示すように、ドラム底面部61にはコーヒー豆排出孔69が設けられている。このコーヒー豆排出孔69は、焙煎ドラム60の内部領域に収容されたコーヒー豆を内部領域から排出するための孔である。本実施形態に係るコーヒー豆排出孔69は、一例として、2箇所に設けられている。また、この2つのコーヒー豆排出孔69は、一例として、軸線100を挟んで対称的な位置に設けられている。但し、コーヒー豆排出孔69の個数や配置箇所は、これに限定されるものではない。
【0032】
焙煎時において、コーヒー豆排出孔69は、背板50の背板閉塞部56によって閉塞されている。これにより、焙煎時においてコーヒー豆がコーヒー豆排出孔69から排出されないようになっている。一方、焙煎終了時にドラム底面部61の第1係合孔67と背板50の突起部54との係合が解除された後に背板50が逆回転した場合において、コーヒー豆排出孔69は、背板50の背板開口部55がコーヒー豆排出孔69に連通することで、開状態になる。これにより、焙煎後のコーヒー豆をコーヒー豆排出孔69から焙煎ドラム60の外部へ排出できるようになる。
【0033】
また、図4(c)に示すように、ドラム底面部61には第2係合孔68が設けられている。この第2係合孔68には、焙煎終了時において背板開口部55がコーヒー豆排出孔69を開状態にした場合に、背板50の突起部54が係合する。この第2係合孔68の機能については後述する。
【0034】
また、ドラム底面部61には、周方向に円弧状に延在するように設けられた長孔70a及び長孔70bが設けられている。焙煎ドラム60が背板50上に配置された場合、長孔70aには、前述した締結ボルト33aのボルト頭部34(図3(c)参照)が配置され、長孔70bには締結ボルト33bのボルト頭部34が配置される。
【0035】
焙煎ドラム60を背板50上に配置する際には、締結ボルト33a,33bのボルト頭部34がそれぞれ長孔70a,70bに配置されるように、焙煎ドラム60を背板50上
に配置し、必要であれば焙煎ドラム60を少し回転(正転又は逆転)させることで、焙煎ドラム60の第1係合孔67に背板50の突起部54を係合させることができる。すなわち、締結ボルト33a,33bは、背板50を回転機構30に締結する締結部材としての機能のみならず、焙煎ドラム60を背板50上に配置する際における焙煎ドラム60の位置決め用の目印としての機能も有している。これにより、本実施形態によれば、焙煎ドラム60の背板50に対する位置決めを容易に行うことができる。
【0036】
また、締結ボルト33a,33bのボルト頭部34がそれぞれ長孔70a,70bに配置されることで、背板50が焙煎ドラム60に対して相対的に回転した際の相対的な回転角度を、長孔70a,70bの長手方向の長さの範囲内に制限することができる。すなわち、締結ボルト33a,33bは、背板50と焙煎ドラム60との相対的な回転角度範囲を規定する部材としての機能も有している。
【0037】
具体的には、背板50の突起部54が焙煎ドラム60の第1係合孔67に係合した場合、締結ボルト33a,33bのボルト頭部34はそれぞれ長孔70a,70bの長手方向の「一方の端部」に当接する。一方、背板50が焙煎ドラム60に対して相対的に逆回転して背板50の突起部54が焙煎ドラム60の第2係合孔68に係合した場合、締結ボルト33a,33bのボルト頭部34はそれぞれ長孔70a,70bの長手方向の「他方の端部」に当接する。このように、本実施形態に係る突起部54、第1係合孔67、第2係合孔68、締結ボルト33a,33b、及び長孔70a,70bの位置関係は設定されている。
【0038】
続いて、ソレノイド40及びソレノイド係合突部63の構成と、焙煎時から焙煎終了時におけるコーヒー焙煎装置1の動作を説明する。図5(a)及び図5(b)に示すように、ソレノイド40は、ソレノイド本体部41と、このソレノイド本体部41から焙煎ドラム60のドラム側面部62に近づく方向へ突出するソレノイド突出部42と、を備えている。なお、ソレノイド40の動作は、コーヒー焙煎装置1の制御装置が制御している。
【0039】
前述したように、焙煎時においては、焙煎ドラム60のコーヒー豆排出孔69が背板50によって閉塞されており、且つ、焙煎ドラム60が正回転(Fr)しながら焙煎ドラム60内のコーヒー豆が熱風によって焙煎される。この焙煎時において、ソレノイド40は、ソレノイド突出部42を突出しない状態(非突出状態)にしている。すなわち、焙煎時において、ソレノイド40はソレノイド係合突部63に当接しない状態(係合しない状態)になっており、これにより、焙煎ドラム60の回転がソレノイド40によって阻害されることが防止されている。
【0040】
一方、焙煎終了時においては、前述したように、回転機構30が背板50を逆回転(Br)させる。この背板50の逆回転に伴って、背板50に係合した焙煎ドラム60も逆回転する。そして、焙煎終了時において、ソレノイド40は、ソレノイド突出部42を突出させる。この結果、ソレノイド突出部42はソレノイド係合突部63に当接する。
【0041】
ここで、ソレノイド係合突部63は、ソレノイド突出部42がソレノイド係合突部63に当接した状態で焙煎ドラム60が逆回転した場合に、焙煎ドラム60が背板50から離れる方向(−Y方向)に所定距離変位するように、その形状が設定されている。
【0042】
したがって、焙煎終了時においてソレノイド突出部42がソレノイド係合突部63に当接し、この状態で背板50が逆回転することで焙煎ドラム60も逆回転した場合、焙煎ドラム60は、このソレノイド突出部42からの力を受けて、背板50から離れる方向(−Y方向)に変位する。このように焙煎ドラム60が変位することで、図5(b)に示すように、焙煎ドラム60の第1係合孔67が背板50の突起部54から外れる。すなわち、
第1係合孔67と突起部54との係合が解除される。
【0043】
そして、上記のように焙煎終了時において第1係合孔67と突起部54との係合が解除された後に、背板50が逆回転し続けることで、背板50は焙煎ドラム60に対して相対的に逆回転する。この結果、背板50の背板開口部55が焙煎ドラム60のコーヒー豆排出孔69を開状態にする。そして、背板開口部55がコーヒー豆排出孔69を開状態にした場合、背板50の突起部54は焙煎ドラム60の第2係合孔68に係合する(突起部54が第2係合孔68に嵌る)。これにより、背板開口部55がコーヒー豆排出孔69を開状態にした状態で、背板50と焙煎ドラム60との相対的な回転位置が確実に固定される。
【0044】
なお、背板50の突起部54が焙煎ドラム60の第2係合孔68に係合した場合、締結ボルト33a,33bのボルト頭部34は、それぞれ焙煎ドラム60の長孔70a,70bの長手方向の他方の端部に当接する。
【0045】
背板50の突起部54が焙煎ドラム60の第2係合孔68に係合した後においても、本実施形態に係る背板50は逆回転を続ける。これにより、背板50に係合した焙煎ドラム60も、背板50とともに逆回転を続ける。
【0046】
次いで、ソレノイド40は、ソレノイド突出部42の突出を終了させる。次いで、コーヒー焙煎装置1の制御装置は、排出口用蓋14(図2(a))を制御して、排出口13を開状態にする。これにより、焙煎ドラム60内のコーヒー豆は、コーヒー豆排出孔69及び排出口13を通過して、コーヒー焙煎装置1の外部に排出される。具体的には、焙煎ドラム60が逆回転を続けながら、焙煎ドラム60の内部領域のコーヒー豆がコーヒー豆排出孔69に落ちていくようにしてコーヒー豆排出孔69から排出され、次いでコーヒー豆は、排出口13を通過してコーヒー焙煎装置1の外部に排出される。次いで、コーヒー焙煎装置1の制御装置は、回転機構30の回転を停止させる。この結果、背板50及び焙煎ドラム60の回転も停止する。
【0047】
以上のような本実施形態に係るコーヒー焙煎装置1によれば、上記のような簡素な構成によって、焙煎時には焙煎ドラム60のコーヒー豆排出孔69を閉塞させつつ、焙煎ドラム60を正回転させながら熱風によってコーヒー豆を焙煎し、焙煎終了時にはコーヒー豆排出孔69を開状態にしてコーヒー豆を焙煎ドラム60から排出できる状態にすることができる。これにより、焙煎後のコーヒー豆を焙煎ドラム60から手(具体的には皮手袋着用の手)で排出する必要がないので、焙煎後のコーヒー豆を焙煎ドラム60から排出する際に火傷が生じるおそれがない。すなわち、本実施形態によれば、構成の簡素化を図りつつ、焙煎後のコーヒー豆を焙煎ドラム60から安全に排出することができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、上述したように、構成が簡素であるので、コーヒー焙煎装置1の組み立て時において、構成部材の位置関係を容易に調整することができる。具体的には、焙煎ドラム60の第1係合孔67が背板50の突起部54に係合するように焙煎ドラム60を背板50上に配置するという簡単な位置関係の調整で済むので、焙煎ドラム60と背板50との位置関係の調整が容易である。
【0049】
また、本実施形態によれば、焙煎時には背板50の突起部54が焙煎ドラム60の第1係合孔67に係合することで、背板50と焙煎ドラム60との相対的な回転位置を確実に固定することができる。これにより、焙煎時における焙煎ドラム60の正回転中に、コーヒー豆排出孔69を背板閉塞部56によって確実に閉塞させることができるので、焙煎時においてコーヒー豆排出孔69が意図せずに開状態になってしまうことを防止することができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、焙煎終了時には、背板50の突起部54が焙煎ドラム60の第2係合孔68に係合することで、背板50と焙煎ドラム60との相対的な回転位置を確実に固定することができる。この結果、焙煎終了時においてコーヒー豆排出孔69が意図せずに閉塞されてしまうことを防止することができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、焙煎ドラム60をコーヒー焙煎装置1から容易に取り出すことができる構成になっているので、焙煎ドラム60の清掃作業を容易に行うことができる。
【0052】
また、図2(a)で前述したように、本実施形態に係る焙煎ドラム60は、その軸線100が水平方向に対して斜め上方側に傾斜するようにして、コーヒー焙煎装置1の収容部11に収容されているので、焙煎時において斜め上方側から、視認窓12を介して、焙煎ドラムの内部領域を視認することができる。これにより、焙煎時におけるコーヒー豆の焙煎状態を容易に視認(目視)することができる。
【0053】
なお、焙煎ドラム60の素材は金属であることが好ましい。この構成によれば、焙煎ドラム60の耐久性を高めることができる。この金属の具体的な種類は特に限定されるものではないが、例えばステンレス鋼等を用いることができる。
【0054】
以上本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 コーヒー焙煎装置
10 焙煎本体部
12 視認窓
20 熱風供給装置
30 回転機構
40 ソレノイド
50 背板
51 背板本体部
54 突起部
55 背板開口部
56 背板閉塞部
60 焙煎ドラム
61 ドラム底面部
62 ドラム側面部
63 ソレノイド係合突部
67 第1係合孔
68 第2係合孔
69 コーヒー豆排出孔
図1
図2
図3
図4
図5