(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6937666
(24)【登録日】2021年9月2日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】施設管理装置、施設管理システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20210909BHJP
G06Q 50/16 20120101ALI20210909BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20210909BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20210909BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q50/16 300
G08B25/00 510M
G08B25/04 A
H04Q9/00 301C
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-219569(P2017-219569)
(22)【出願日】2017年11月15日
(65)【公開番号】特開2019-91246(P2019-91246A)
(43)【公開日】2019年6月13日
【審査請求日】2020年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 嘉人
【審査官】
青柳 光代
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−066308(JP,A)
【文献】
特開2013−101463(JP,A)
【文献】
特開2006−059185(JP,A)
【文献】
特開平03−225600(JP,A)
【文献】
特開2013−101462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
G16H 10/00 − 80/00
G08B 25/00
G08B 25/04
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設の管理を行う施設管理装置であって、
前記施設の所定位置にそれぞれ設置される複数の撮影手段それぞれが撮影して得られる撮像データを受信する受信手段と、
前記受信手段により受信された撮像データを解析することで、当該撮像データに対応する前記撮影手段における撮影範囲内において発生している事象を検出する解析処理手段と、
所定の事象に対応するメッセージが予め登録されているメッセージ情報記憶手段と、
前記解析処理手段により検出された事象が前記所定の事象のいずれかに合致する場合、前記施設の図面データ上における、前記所定の事象のいずれかに合致する事象を撮影した前記撮影手段の設置位置を特定する位置特定手段と、
前記施設の図面データ上の前記位置特定手段により特定された位置近傍に、前記所定の事象のいずれかに合致する事象に対応するメッセージを重畳させて前記施設の状況を表す施設管理図面を生成する図面生成手段と、
を有することを特徴とする施設管理装置。
【請求項2】
前記図面生成手段は、前記解析処理手段により前記所定の事象のいずれかに合致する事象が検出されなくなると、当該事象に対応するメッセージを消去することを特徴とする請求項1に記載の施設管理装置。
【請求項3】
施設の管理を行う施設管理装置と、
前記施設の状況を表す施設管理図面を表示する表示手段と、
前記施設の所定位置にそれぞれ設置される複数の撮影手段と、
前記撮影手段それぞれが撮影して得られる撮像データを前記施設管理装置へ送信する送信手段と、
を有し、
前記施設管理装置は、
前記撮像データを受信する受信手段と、
前記受信手段により受信された撮像データを解析することで、当該撮像データに対応する前記撮影手段における撮影範囲内において発生している事象を検出する解析処理手段と、
所定の事象に対応するメッセージが予め登録されているメッセージ情報記憶手段と、
前記解析処理手段により検出された事象が前記所定の事象のいずれかに合致する場合、前記施設の図面データ上における、前記所定の事象のいずれかに合致する事象を撮影した前記撮影手段の設置位置を特定する位置特定手段と、
前記施設の図面データ上の前記位置特定手段により特定された位置近傍に、前記所定の事象のいずれかに合致する事象に対応するメッセージを重畳させて前記施設管理図面を生成する図面生成手段と、
を有することを特徴とする施設管理システム。
【請求項4】
施設の管理を行う施設管理装置を形成し、所定の事象に対応するメッセージが予め登録されているメッセージ情報記憶手段にアクセス可能なコンピュータを、
前記施設の所定位置にそれぞれ設置される複数の撮影手段それぞれが撮影して得られる撮像データを受信する受信手段、
前記受信手段により受信された撮像データを解析することで、当該撮像データに対応する前記撮影手段における撮影範囲内において発生している事象を検出する解析処理手段、
前記解析処理手段により検出された事象が前記所定の事象のいずれかに合致する場合、前記施設の図面データ上における、前記所定の事象のいずれかに合致する事象を撮影した前記撮影手段の設置位置を特定する位置特定手段、
前記施設の図面データ上の前記位置特定手段により特定された位置近傍に、前記所定の事象のいずれかに合致する事象に対応するメッセージを重畳させて前記施設の状況を表す施設管理図面を生成する図面生成手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施設管理装置、施設管理システム及びプログラム、特にビル等の施設の状況表示に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カメラを利用してビルを監視するビル管理システムが提供されている。例えば、ビルの内外に複数のカメラを散在設置し、各カメラに所定の範囲を撮影させる。複数の監視カメラにて撮影された画像は、管理装置に収集され、管理装置に接続された画面内のサブ画面にそれぞれ表示される。ビル管理者は、サブ画面の映像を見て不正侵入者や火災等の異常な状況を発見する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−066308号公報
【特許文献2】特開2011−113255号公報
【特許文献3】特開2006−099726号公報
【特許文献4】特開2017−092808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の監視の方法では、複数の映像に視線を移しながら撮影範囲における状況を把握する必要があるため、何らかの異常が発生していても、その異常の発見に時間がかかる場合があり、場合によっては見落としてしまう可能性も生じてくる。また、同時多発的に異常な事象が発生した場合、その異常事象に迅速に対応できるとは限らない。
【0005】
本発明は、施設に設置した撮影手段の撮像データから施設における状況把握を迅速に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る施設管理装置は、施設の管理を行う
施設管理装置であって、前記施設の所定位置にそれぞれ設置される複数の撮影手段それぞれが撮影して得られる撮像データを受信する受信手段と、前記受信手段により受信された撮像データを解析することで、当該撮像データに対応する前記撮影手段における撮影範囲内において発生している事象を検出する解析処理手段と、所定の事象に対応するメッセージが予め登録されているメッセージ情報記憶手段と、前記解析処理手段により検出された事象が前記所定の事象のいずれかに合致する場合、前記施設の図面データ上における
、前記所定の事象のいずれかに合致する事象を撮影した前記撮影手段の設置位置を特定する位置特定手段と、前記施設の図面データ上の前記位置特定手段により特定された位置近傍に、前記
所定の事象のいずれかに合致する事象に対応するメッセージを重畳させて前記施設の状況を表す施設管理図面を生成する図面生成手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、前記図面生成手段は、
前記解析処理手段により前記所定の事象のいずれかに合致する事象が検出されなくなると、当該事象に対応するメッセージを消去することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る施設管理システムは、施設の管理を行う
施設管理装置と、前記施設の状況を表す施設管理図面を表示する表示手段と、前記施設の所定位置にそれぞれ設置される複数の撮影手段と、前記撮影手段それぞれが撮影して得られる撮像データを前記
施設管理装置へ送信する送信手段と、を有し、前記
施設管理装置は、前記撮像データを受信する受信手段と、前記受信手段により受信された撮像データを解析することで、当該撮像データに対応する前記撮影手段における撮影範囲内において発生している事象を検出する解析処理手段と、所定の事象に対応するメッセージが予め登録されているメッセージ情報記憶手段と、前記解析処理手段により検出された事象が前記所定の事象のいずれかに合致する場合、前記施設の図面データ上における
、前記所定の事象のいずれかに合致する事象を撮影した前記撮影手段の設置位置を特定する位置特定手段と、前記施設の図面データ上の前記位置特定手段により特定された位置近傍に、前記
所定の事象のいずれかに合致する事象に対応するメッセージを重畳させて前記施設管理図面を生成する図面生成手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係るプログラムは、施設の管理を行う
施設管理装置を形成
し、所定の事象に対応するメッセージが予め登録されているメッセージ情報記憶手段にアクセス可能なコンピュータを、前記施設の所定位置にそれぞれ設置される複数の撮影手段それぞれが撮影して得られる撮像データを受信する受信手段、前記受信手段により受信された撮像データを解析することで、当該撮像データに対応する前記撮影手段における撮影範囲内において発生している事象を検出する解析処理手段、前記解析処理手段により検出された事象が前記所定の事象のいずれかに合致する場合、前記施設の図面データ上における
、前記所定の事象のいずれかに合致する事象を撮影した前記撮影手段の設置位置を特定する位置特定手段、前記施設の図面データ上の前記位置特定手段により特定された位置近傍に、前記
所定の事象のいずれかに合致する事象に対応するメッセージを重畳させて前記施設の状況を表す施設管理図面を生成する図面生成手段、として機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、施設に設置した撮影手段の撮像データから施設における状況把握を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態における施設管理システムの全体構成及び管理装置のブロック構成を示す図である。
【
図2】本実施の形態におけるビル側の概略的な平面図である。
【
図3】本実施の形態における管理装置のハードウェア構成図である。
【
図4】本実施の形態における管理装置において実施される表示処理を示すフローチャートである。
【
図5】本実施の形態においてビルの状況を表すビル管理図面の表示例を示す図である。
【
図6】本実施の形態においてビルの状況を表すビル管理図面の他の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態におけるビル管理システムの全体構成及び管理装置のブロック構成を示す図である。また、
図2は本実施の形態における管理装置10が監視対象とするビル1におけるある階の平面図である。これらの図を用いて本システムの構成について説明する。
【0014】
ビル1は、管理装置10が監視対象とする施設の一形態である。本実施の形態におけるビル管理システムは、例えばビル等の複数階建築設備の監視制御システムであるBEMS(Building and Energy Manegement System)で構成してもよい。ビル1の中には、居室内や廊下、階段等、監視対象としたい場所の天井付近などの所定の位置に撮影手段としてのカメラ2a〜2kが設置されている。なお、カメラ2a〜2kを区別することなく説明する場合には「カメラ2」と記載する。
図2に示すカメラ2の設置位置や台数は、一例であってこれに限定するものではない。本実施の形態では、ビル1内にカメラ2が設置されているものとして説明するが、例えば、駐車場や玄関前などビル付近を撮影するようカメラ2を設置してもよい。
図1に示すように、各カメラ2と管理装置10とは、インターネット等のネットワーク3を介して通信可能に接続される。
【0015】
本実施の形態においては、カメラ2それぞれが撮影して得られた撮像データをリアルタイムに管理装置10へ送る必要がある。これは、各カメラ2から管理装置10へ直接送信するようにしてもよいし、各カメラ2からの撮像データを有線又は無線通信により収集し、まとめて管理装置10へ送信する機能を有する情報処理装置を別個に用意してもよい。カメラ2の撮影範囲は変更可能であり、カメラ2の焦点や画角等の設定情報は、変更されると撮像データに付加して管理装置10へ逐次送信される。もちろん、他の方法であってもよいが、いずれにしても管理装置10は、各カメラ2の撮影範囲を常に把握しているものとする。
【0016】
図3は、本実施の形態における管理装置10のハードウェア構成図である。本実施の形態における管理装置10は、従前から存在する汎用的なコンピュータのハードウェア構成で実現できる。すなわち、管理装置10は、
図3に示したようにCPU21、ROM22、RAM23、ハードディスクドライブ(HDD)24、入力手段として設けられたマウス25とキーボード26、及び表示装置として設けられたディスプレイ27をそれぞれ接続する入出力コントローラ28、通信手段として設けられたネットワークインタフェース(IF)29を内部バス30に接続して構成される。なお、マウス25、キーボード26及びディスプレイ27に代えてタッチパネルでユーザインタフェースを構成してもよい。
【0017】
管理装置10は、監視センターに設置され、ビル1に設置されている設備機器の監視等を行う。監視対象の設備機器は、例えば照明機器、空調機器、昇降機器、衛生機器、防犯機器、防災機器等である。管理装置10は、
図1に示すように、受信部11、解析処理部12、図面生成部13、ユーザインタフェース(UI)部14、通知部15、撮像データ蓄積部16、判定情報記憶部17、ビル情報記憶部18及びメッセージ情報記憶部19を有している。なお、本実施の形態の説明に用いない構成要素については、図から省略している。
【0018】
受信部11は、カメラ2から送信されてくる撮像データを受信し、撮像データ蓄積部16に保存する。解析処理部12は、解析処理手段として設けられ、撮像データ蓄積部16に蓄積されている撮像データを解析することで、当該撮像データに対応するカメラ2における撮影範囲内において発生している事象を検出する。本実施の形態では、異常と判断される事象を想定して説明するが、必ずしも異常に限定する必要はない。更に、解析処理部12は、位置特定手段としても設けられ、検出した事象がメッセージ情報記憶部19に登録されている所定の事象のいずれかに合致する場合、ビル1の図面データ上における当該撮像情報に対応する前記撮影手段の設置位置を特定する。図面生成部13は、ビル1の図面データ上の解析処理部12により特定されたカメラ2の位置近傍に、解析処理部12により検出された事象に対応するメッセージを重畳させてビル1の状況を表すビル管理図面を生成する。ユーザインタフェース(UI)部14は、マウス25やキーボード26を用いてユーザにより入力された情報を受け付け、また図面生成部13により生成されたビル管理図面等の画像をディスプレイ27に表示する。
【0019】
撮像データ蓄積部16には、受信部11により受信された撮像データが蓄積される。解析処理部12は、撮像データを解析することで、ビル1で発生している事象を検出するが、判定情報記憶部17には、その事象を特定するための判定条件が予め設定されている。具体的には、ビル1で発生しうる事象と、当該事象を特定するために用いられる判定条件と、が対応付けて設定される。判定情報記憶部17に設定する事象は、メッセージ情報記憶部19と同一とする。例えば、「火災」という事象には、撮影範囲内(撮像データ)が閾値以上の炎と煙の色で占められる等の判定条件が対応付けられる。また、「逃走中」という事象には、撮像データ内に検出された移動体が人間と識別されること、所定の閾値以上の速度で移動したこと、等の判定条件が対応付けられる。一の事象に対して複数の判定条件を対応付けてよく、当該事象と認定するには、対応付けた判定条件の全て若しくは一部を満たす場合としてもよい。判定条件は、事象に応じて適宜設定すればよい。
【0020】
また、カメラ2が通常時に撮影する撮像データ(何の事象も発生していない画像、状況が変化していない画像)をマスタ画像として判定情報記憶部17に予め登録しておいてもよい。マスタ画像には、カメラIDが対応付けされている。営業日/非営業日、時間帯、時節等によって撮影される状況が異なる場合には、それぞれの状況に応じたマスタ画像を用意しておくのが好適である。
【0021】
本実施の形態における解析処理部12は、判定情報記憶部17に基づき撮像データを解析することで事象を検出するが、特に断らない限り検出する事象は異常事象と限定して説明する。
【0022】
ビル情報記憶部18には、ビル1に関する種々の情報が記憶されている。例えば、ビル1の経緯度情報、ビル1の立面図や平面図を含む図面データが記憶される。図面データは、3D−CADデータであってもよいし、BIM(Building Information Modeling)データであってもよい。また、監視対象の設備機器の設置位置情報が記憶されている。
【0023】
また、ビル情報記憶部18には、カメラ2やビル1で従事しているスタッフに関する情報が含まれている。カメラ2に関する情報として、具体的には、カメラ2に関する情報として、各カメラ2のカメラID、機種、設置位置、撮影範囲等が設定される。カメラ2の設置位置は、ビル1の図面データが三次元座標データで表現される場合、図面データ上における三次元座標データで特定される。また、スタッフに関する情報として、各スタッフの職種や連絡先情報(スタッフが携行する無線通信機器(スマホやタブレット端末)のメールアドレス等)が設定されている。
【0024】
メッセージ情報記憶部19には、ビル1で発生した事象あるいは当該事象を解消するための指示に相当する内容を文字にてビル管理画面に表示するためのメッセージが予め設定されている。具体的には、事象と、当該事象の種類と、メッセージと、が対応付けられたメッセージ情報が設定登録される。本実施の形態における事象の種類は、当該事象が警備あるいは設備等何に関連する事象なのかを示す情報である。本実施の形態では、警備、清掃、設備管理等スタッフの職種に対応付けて分類している。
【0025】
管理装置10における各構成要素11〜15は、管理装置10を形成するコンピュータと、コンピュータに搭載されたCPU21で動作するプログラムとの協調動作により実現される。また、各記憶手段16〜19は、管理装置10に搭載されたHDD24にて実現される。あるいは、RAM23又は外部にある記憶手段をネットワーク経由で利用してもよい。
【0026】
また、本実施の形態で用いるプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CD−ROMやUSBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して提供することも可能である。通信手段や記録媒体から提供されたプログラムはコンピュータにインストールされ、コンピュータのCPU21がプログラムを順次実行することで各種処理が実現される。
【0027】
以下、本実施の形態における管理装置10において実施される表示処理について
図4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0028】
カメラ2が所定の撮影範囲を常時撮影しており、撮影により得られる撮像データは、管理装置10へ逐次送信される。管理装置10における受信部11は、送信されてくる撮像データを受信すると、カメラ2毎に分類して撮像データ蓄積部16に保存する(ステップ111)。
【0029】
解析処理部12は、撮像データ蓄積部16に蓄積される各撮像データに対して以下に説明する解析を行うことで、当該カメラ2の撮影範囲内において発生している事象を検出する(ステップ112)。「事象」とは、出来事や事柄を意味する。事象は、移り変わる物事の、その時々のありさまを意味する「状況」の変化により検出される。なお、解析処理部12は、各撮像データに対して同等の処理を行うので、ここでは、1つの撮像データに着目して説明する。
【0030】
例えば、解析処理部12は、判定情報記憶部17に含まれているマスタ画像と、受信された撮像データとを比較することによって、状況の変化、すなわち何らかの事象が発生していると抽出できる。ここで抽出される事象は、異常とは限らない。そして、撮像データの画像を、判定情報記憶部17に設定されている判定条件と照合することで、撮影範囲内において判定情報記憶部17に設定されている異常事象が発生しているかどうかを判定する。また、解析処理部12は、マスタ画像との比較ではなく、設定されている判定条件に従い撮像データの時系列変化によっても異常事象を検出できる。このような解析処理部12が異常事象を検出するための画像解析の内容は、一例であってこれに限る必要はない。解析処理部12における画像解析自体は、既存の画像解析技術を利用して異常事象を検出すればよい。
【0031】
本実施の形態では、撮像データの内容が判定条件に合致した場合に、事象が検出されるものとする。従って、撮像データを解析した結果、判定条件に合致しないことで事象が検出されない場合もありうる。ここでは、説明の便宜上、事象が検出されるとしても、一の撮像データからは一の事象のみが検出されるものとする。また、判定情報記憶部17には、異常に該当する事象のみが登録されていることから、上記の通り解析処理部12が検出した事象は異常事象に該当するものとする。
【0032】
解析処理部12は、判定情報記憶部17を参照するなどして処理対象の撮像データを得たカメラ2における撮影範囲内において、何らかの異常を検出した場合(ステップ113でY)、当該撮像データを得たカメラのカメラIDに基づきビル情報記憶部18に設定されているカメラ2に関する情報を参照することによって、ビル1の図面データ上における当該カメラ2の設置位置を特定する(ステップ114)。
【0033】
続いて、図面生成部13は、解析処理部12により検出された事象に対応するメッセージを、メッセージ情報記憶部19から読み出し取得する(ステップ115)。そして、図面生成部13は、ビル1の図面データ上のカメラ2の設置位置近傍に、取得したメッセージを重畳させてビル管理図面を生成する(ステップ116)。そして、ユーザインタフェース部14は、生成された図面データをディスプレイ27に表示する(ステップ117)。
【0034】
図5は、ビル管理図面の表示例を示す図であり、
図2に対応するビル1の平面図である。また、
図6は、ビル管理図面の他の表示例を示す図であり、ビル1の立面図である。表示するビル管理図面は、ビル管理者の選択操作に応じて適宜切り替え表示可能である。
【0035】
図5には、カメラ2a,2h,2lの各設置位置に対応させてメッセージが表示されている例が示されている。上記説明に従うと、カメラ2a,2h,2lの各撮像データを解析することで異常が検出されたことになるが、この表示例から明らかなように、本実施の形態では、ビル1の図面データ上に、発生した異常をまとめて表示するようにしたので、カメラ2a〜2kそれぞれの映像を見て異常を検出しなくてもよい。すなわち、一図面データを参照するだけで異常発生の有無を容易かつ迅速に確認することができる。また、一図面データ上に異常の発生場所及び発生した異常に関する情報をメッセージにて表示するようにしたので、異常の内容の特定も極めて簡単になる。
【0036】
ところで、
図5に示すように、異常を検出したカメラ2a,2h,2lの各設置位置には、記号画像31,32,33がそれぞれ表示されている。記号画像は、事象の種類を示している。事象の種類は、メッセージ情報記憶部19に各事象に対応付けして設定されている。例えば、所定速度以上の速さで人間が移動していることから不正侵入者が逃走しているという異常が発生している場合、ビル管理画面を見ているビル管理者は、メッセージを参照することでこの異常を容易に認識できるが、記号画像31を参照することでこの異常は警備に関連する事象と認識し、この異常を解消するためには警備員に通報するのが好ましいと認識できる。また、通常運用時と比較して撮影範囲内が暗く、所定の閾値以上に撮像データの輝度が低いことから照明設備の異常(蛍光管切れ)が確認される場合、ビル管理者は、記号画像33を参照することでこの異常は設備に関連する事象と認識し、この異常を解消するためには設備管理者に通報するのが好ましいと認識できる。
【0037】
なお、本実施の形態では、事象の種類を示すために記号画像を表示させた。記号画像は、例示した“○”、“□”のような図形ではなく文字でもよい。また、記号画像で事象の種類を表すのではなく、例えば、異常のレベル(重度)を表すようにしてもよい。異常のレベルは、各事象に対応させてメッセージ情報記憶部19に設定登録しておく。もちろん、レベル毎に異なる記号画像を用いる。このように、ビル1の図面データ上に異常の重度がわかるように記号画像を表示することによって、ビル管理者は、重度の異常から対処することが可能となる。
【0038】
なお、解析処理部12が撮像データから異常事象を検出しない場合(ステップ113でN)、図面生成部13がビル1の図面データに重畳表示させるメッセージや記号画像がないので、ユーザインタフェース部14は、メッセージや記号画像を含まないビル1の図面データのみを表示することになる。
【0039】
本実施の形態では、以上のようにしてビル1の図面データにメッセージ等を重畳表示する。
図4では、ビル管理画面を表示することで処理を表示するように図示したが、撮像データは、ビル1側から逐次送られてくるので、前述した処理は、常時繰り返し実行されることになり、ビル管理図面は、逐次更新されることになる。そして、カメラ2の撮影範囲が通常運用時に戻ると事象が検出されなくなり、メッセージ等は消去される。ただ、上記例示した不正侵入者の逃走の場合は、逃走経路に合わせてメッセージの表示位置も移動することになる。
【0040】
ところで、本実施の形態では、異常が検出されたときに異常を通知する通知機能を提供している。すなわち、通知部15は、解析処理部12により異常が検出されると、ビル情報記憶部18を参照して、検出された異常への対応に適したスタッフに通知する。上記例示したように、警備に関する異常事象であれば警備員に、設備に関する異常事象であれば設備管理者に、それぞれ通知する。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態においては、異常事象を検出した場合を例にして説明したが、必ずしも異常事象に限定して検出する必要はない。例えば、撮像データを解析することで把握した撮影範囲(居室)内にいる人数が所定人数を超えている場合、室温が上昇する可能性が高いので、夏場では空調設備の設定温度を下げることを推奨するメッセージを表示するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 ビル、2a〜2k カメラ、3 ネットワーク、10 管理装置、11 受信部、12 解析処理部、13 図形生成部、14 ユーザインタフェース(UI)部、15 通知部、16 撮像データ蓄積部、17 判定情報記憶部、18 ビル情報記憶部、19 メッセージ情報記憶部、21 CPU、22 ROM、23 RAM、24 ハードディスクドライブ(HDD)、25 マウス、26 キーボード、27 ディスプレイ、28 入出力コントローラ、29 ネットワークインタフェース(IF)、30 内部バス。