(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ローラが前記第1位置に位置するとき、前記コードを前記ローラが挟着し、前記ローラが前記第2位置に位置するとき、前記コードが非屈曲状態で解除されるように構成される、
請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載の制動装置。
前記ローラが前記第2位置に位置するときに前記ローラと前記コードとの間に作用する摩擦力が、前記ローラが前記第1位置に位置するときに前記ローラと前記コードとの間に作用する摩擦力よりも小さくなるように前記ローラが移動するように構成される、
請求項6又は請求項7に記載の制動装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る制動装置、及び、それを用いた日射遮蔽装置の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
1.第1実施形態
<制動装置>
図1は、本発明の第1実施形態に係る制動装置を示す斜視図であり、
図2は、
図1の制動装置を別の角度から見る図である。
図1、
図2に示すように、本実施形態の制動装置BDは、運動変換部DTと抵抗付与部RAとが前後方向に連結されて成る。ここで、
図1に示すように、抵抗付与部RAから運動変換部DTに至る方向を前側とし、前後方向を基準として、左右方向(幅方向)、上下方向を定める。ただし、これらの方向は本明細書において便宜的に使用するものであり、制動装置の使用状態がこれらの方向通りになっていることを意味するものではない。
【0013】
運動変換部DTは筐体の一部を形成するベース70と、ベース70に固定され筐体の他の一部を形成するカバー10を備える。
【0014】
ベース70は、概ね平板状の部材とされ、外形が概ね正方形の形状とされる。ベース70の角部には、ねじ孔が形成されている。
【0015】
カバー10は、外形がベース70よりも小さな概ね正方形の天壁部11と、天壁部11の外周全体に接続され天壁部11から下側に延在する側壁部12と、側壁部12の天壁部11側と反対側である下側の縁に接続される鍔部13と、鍔部13に連結される固定用支柱18とを主な構成として有する。
【0016】
側壁部12のうち前方の部位には、複数のガイド孔14a〜14cが形成されている。また、側壁部12のうち後方の部位には、複数のガイド孔15a〜15cが形成されており、複数のガイド孔15a〜15cは複数のガイド孔14a〜14cと前後方向に対向している。これらのガイド孔14a〜14c及びガイド孔15a〜15cはコードCDが前後方向に挿通されるための孔であり、ガイド孔14aとガイド孔15aとにコードCDが挿通されても良く、ガイド孔14bとガイド孔15bとにコードCDが挿通されても良く、ガイド孔14cとガイド孔15cとにコードCDが挿通されても良い。また、上記ガイド孔の組み合わせの2つ以上のそれぞれにコードCDが挿通されても良い。なお、
図1、
図2では、ガイド孔14aとガイド孔15aとに破線で示すコードCDが挿通されている様子を示している。
【0017】
天壁部11には、第1天壁溝16と第2天壁溝17とが形成されており、本実施形態では、第1天壁溝16及び第2天壁溝17は溝状に形成された開口とされる。第1天壁溝16と第2天壁溝17は、それぞれコードCDの長手方向すなわち前後方向に対して斜めに形成されており、コードCDの一方の長手方向である前方に向かうにつれて、第1天壁溝16と第2天壁溝17との距離が小さくされている。また、第1天壁溝16は、円弧状に形成されており、第2天壁溝17は直線状に形成されている。なお、第2天壁溝17の形状は直線状に限定されず、曲線状にしてもよい。また、第1天壁溝16と略同一形状とし、互いに同じ向きに湾曲するように設けても良い。
【0018】
鍔部13は、側壁部12から外周側に延在する部位であり、外周の形及び大きさがカバー10のベース70の外周の形及び大きさと概ね一致する。また鍔部13のそれぞれの角部には、ねじ孔13Hが形成されている。
【0019】
また、鍔部13のそれぞれの角部には固定用支柱18が接続されている。固定用支柱18には、不図示のねじ孔が上下方向に形成されており当該ねじ孔は、鍔部13に形成されるねじ孔13Hと貫通している。そして、
図1、
図2に示すように、固定用ねじS1がベースを介して固定用支柱18に螺合しており、カバー10はベース70上に固定されている。
【0020】
また、運動変換部DTと抵抗付与部RAとは、連結プレートCPが運動変換部DT及び抵抗付与部RAに連結用ねじS2で固定されることにより、互いに固定されている。
【0021】
図3は、
図1に示すカバー10を外した様子を示す図であり、
図4は、
図3を
図2と概ね同じ視点から見た図である。
図3、
図4に示すようにカバー10内には、張力伝達ローラ30と、支柱としてのアイドルローラ40と、張力伝達ローラ30及びアイドルローラ40を保持するブラケット20(スライダー20とも言う。以下、スライダー20という用語を用いて説明する)とが収納されている。
【0022】
図5はスライダー20を示す斜視図である。
図3〜
図5に示すように、スライダー20は、天壁部21と、天壁部21に連結される奥側壁部22及び前側壁部24と、奥側壁部22及び前側壁部24のそれぞれに連結される底壁部23とを有する。
【0023】
天壁部21は概ね矩形の形状に一対の溝が形成された形状とされる。これら一対の溝はそれぞれ第1天壁溝26及び第2天壁溝27とされる。第1天壁溝26及び第2天壁溝27は、それぞれ幅方向に沿って延在する直線状の溝とされ、互いに直線上に並んでいる。
【0024】
本実施形態では、底壁部23は概ね天壁部21と同じ形状とされる。なお、当然の事ながら、底壁部23と天壁部21を異なる形状としてもよい。従って、底壁部23にも幅方向に直線上に並んで形成される一対の溝が形成されており、これら一対の溝はそれぞれ第1底壁溝28及び第2底壁溝29とされる。第1底壁溝28が第1天壁溝26と上下方向に対向しており、第2底壁溝29が第2天壁溝27と上下方向に対向している。なお、第1天壁溝26、第2天壁溝27、第1底壁溝28及び第2底壁溝29の少なくとも1つを、天壁部21又は底壁部23の側面まで切り欠かない孔としてもよい。この場合、軸芯31又は軸芯41をその孔に差し込むようにして部材を組み立てることとなる。
【0025】
奥側壁部22には、貫通孔25が形成されている。貫通孔25は、奥側壁部22の幅方向の略中央において奥側壁部22を前後方向に貫通する。孔の形状は、上下方向に長い略長方形の形状とされる。また、
図4に示すように、貫通孔25の両脇には、奥側壁部22の外側面から形成される非貫通孔22Hが形成されている。非貫通孔22Hは、概ね円形の形状とされる。なお、非貫通孔22Hの形状はこれに限定されず、コイルスプリングSPを挿入したときに凹まないような構造であれば任意の形状とすることができる。それぞれの非貫通孔22H内には、コイルスプリングSPが挿入されており、コイルスプリングSPの一端は非貫通孔22Hから突出している。なお、
図4ではコイルスプリングSPの非貫通孔22Hから突出している部分を省略している。
【0026】
前側壁部24の幅は、天壁部21及び奥側壁部22の幅の半分以下とされる。従って、スライダー20における天壁部21と奥側壁部22とで挟まれる前側壁部24の横の領域は大きく開口している。
【0027】
このような形状のスライダー20の幅方向の大きさは、カバー10の幅方向の内壁間の距離と概ね同じであり、スライダー20の前後方向の大きさは、カバー10の前後方向の内壁間の距離よりも小さくされる。従って、スライダー20がカバー10の空間内に配置されると、スライダー20の天壁部21及び底壁部23の側面がスライダー20の幅方向において内壁面に当接して、スライダー20はカバー10に対して幅方向に動きが規制される。この状態において、カバー10のガイド孔14a〜14c及びガイド孔15a〜15cと貫通孔25とが互いに前後方向に並ぶ。つまり、貫通孔25は、コードCDをスライダー20内に挿通するための孔である。一方、スライダー20がカバー10の空間内に配置された状態で、スライダー20とカバー10の内壁面との間には、前後方向に隙間が生じ、スライダー20はカバー10に対して前後方向に動くことができる。また、スライダー20がカバー10の空間内に配置された状態で、スライダー20の奥側壁部22の非貫通孔22Hから突出するコイルスプリングSPがカバー10の後方の内壁を押圧する。従って、スライダー20がカバー10の空間内に配置された状態で、スライダー20は、前方側に位置して、側壁部12のガイド孔14a〜14cが形成されている側の内壁に押圧された状態となる。
【0028】
図6は、
図3のスライダー20を外した様子を示す図であり、
図7は、
図6の平面図である。
図6、
図7に示すように、張力伝達ローラ30は、軸芯31と軸芯31の外周面を覆うローラ部32とを有する。ローラ部32の外周面は金属の平坦な面よりも摩擦係数が高い状態とされる。このような状態とされるには、例えば、ローラ部32の外周面がゴム等の摩擦係数の高い素材から形成されたり、ローラ部32の外周面にローレット加工が施されたりする。軸芯31の両端部は、ローラ部32から露出している。
【0029】
また、アイドルローラ40は、張力伝達ローラ30の軸芯31と平行な軸芯41と、軸芯41の外周面を覆うローラ部42とを有する。従って、張力伝達ローラ30の回転軸とアイドルローラ40の回転軸とは互いに平行とされる。アイドルローラ40のローラ部42の外径は、張力伝達ローラ30のローラ部32の外径よりも大きくされている。アイドルローラ40のローラ部42の外周面は、張力伝達ローラ30のローラ部32の外周面と同様にして、金属の平坦な面よりも摩擦係数が高い状態とされる。また、軸芯41の両端部は、ローラ部42から露出している。
【0030】
また、
図3、
図4に示すように、張力伝達ローラ30のローラ部32及びアイドルローラ40のローラ部42は、スライダー20に収容される。つまり、ローラ部32及びローラ部42は、スライダー20の天壁部21と底壁部23とにより挟まれる。この状態で、張力伝達ローラ30の軸芯31の一端側はスライダー20の第1天壁溝26内に移動可能に嵌まると共にスライダー20の天壁部21から上方に突出し、軸芯31の他端側はスライダー20の第1底壁溝28内に移動可能に嵌まると共にスライダー20の底壁部23から下方に突出する。また、上記状態で、アイドルローラ40の軸芯41の一端側はスライダー20の第2天壁溝27内に移動可能に嵌まると共にスライダー20の天壁部21から上方に突出し、軸芯41の他端側はスライダー20の第2底壁溝29内に移動可能に嵌まると共にスライダー20の底壁部23から下方に突出する。上記のように、第1天壁溝26、第2天壁溝27、第1底壁溝28、第2底壁溝29は、幅方向に直線上に延在するため、第1天壁溝26と第1底壁溝28に軸芯31が移動可能に嵌まる張力伝達ローラ30は、スライダー20に対し幅方向に移動することができ、同様に第2天壁溝27と第2底壁溝29に軸芯41が移動可能に嵌まるアイドルローラ40は、スライダー20に対し幅方向に移動することができる。
【0031】
なお、特に図示しないが、張力伝達ローラ30のローラ部32と天壁部21や底壁部23との間、アイドルローラ40のローラ部42と天壁部21や底壁部23との間には、摩擦を低減するためのポリスライダー等が介在しても良い。
【0032】
また、張力伝達ローラ30のローラ部32及びアイドルローラ40のローラ部42が上記のようにスライダー20に収容された状態で、上記のようにスライダー20がカバー10の空間内に収容されると、
図1、
図2に示すように、張力伝達ローラ30の軸芯31の一端がカバー10の天壁部11に形成された第1天壁溝16内に移動可能に嵌まり、アイドルローラ40の軸芯41の一端がカバー10の天壁部11に形成された第2天壁溝17内に移動可能に嵌まる。
【0033】
図6、
図7に示すように、張力伝達ローラ30の軸芯31における他端側には、ピニオンギア50が固定されている。当該固定は圧入等によりなされている。従って、ピニオンギア50は、張力伝達ローラ30の回転軸を中心として張力伝達ローラ30と共に回転する。また、ピニオンギア50と張力伝達ローラ30との間はスライダー20の底壁部23が介在できる程度に離間しており、上記のように張力伝達ローラ30のローラ部32がスライダー20に収容された状態で、ピニオンギア50はスライダー20の外に位置する。なお、特に図示しないが、ピニオンギア50とスライダー20の底壁部23との間には、摩擦を低減するためのポリスライダー等が介在しても良い。
【0034】
図8は、
図7の状態から張力伝達ローラ30及びアイドルローラ40を外した様子を示す平面図である。
図8に示すように、ベース70には、第1ベース溝76及び第2ベース溝77が形成されており、本実施形態では、第1ベース溝76及び第2ベース溝77は共に溝状の開口とされる。第1ベース溝76は、カバー10の天壁部11に形成される第1天壁溝16と対向し第1天壁溝16と同一形状とされ、第2ベース溝77は、カバー10の天壁部11に形成される第2天壁溝17と対向し第2天壁溝17と同一形状とされる。
【0035】
ベース70上にはリングギア60が配置される。ベース70には不図示の円形の溝が形成されており、リングギア60は当該円形の溝に沿って回動可能とされる。従って、リングギア60は前後方向や幅方向に移動することが妨げられている。また、リングギア60を平面視する場合に、リングギア60の内周面は、カバー10の天壁部11に形成された第1天壁溝16及びベース70に形成される第1ベース溝76に沿っている。つまり、リングギア60を平面視する場合に、第1天壁溝16及び第1ベース溝76の円弧の中心と、リングギア60の内周面の中心とが互いに一致する。また、リングギア60の内周面には内周ギア61が設けられており、リングギア60の外周面には外周ギア62が設けられている。つまり、上記内周面は内周ギア61の基準円とされる。
【0036】
また、ベース70の角部にはねじ孔73が形成されている。このねじ孔73に
図1、
図2に示すように固定用ねじS1が螺入されて、上記のように固定用ねじS1がカバー10の固定用支柱18に螺合して、カバー10はベース70上に固定される。上記のように張力伝達ローラ30のローラ部32及びアイドルローラ40のローラ部42が収容されたスライダー20がカバー10内に収容され、カバー10がベース70上に固定されると、ピニオンギア50がリングギア60の内周ギア61に歯合すると共に、張力伝達ローラ30の軸芯31の他端がベース70に形成された第1ベース溝76内に移動可能に嵌まる。更に、この状態で、アイドルローラ40の軸芯41の他端がベース70に形成された第2ベース溝77内に移動可能に嵌まる。なお、上記のように、リングギア60の内周がカバー10の第1天壁溝16及びベース70の第1ベース溝76に沿っているため、張力伝達ローラ30の軸芯31が第1天壁溝16内及び第1ベース溝76内を移動する場合であっても、ピニオンギア50とリングギア60の内周ギア61との歯合は維持される。ここで、リングギア60の内周がカバー10の第1天壁溝16及びベース70の第1ベース溝76に沿っている例について説明したが、リングギア60の内周が第1天壁溝16及び第1ベース溝76が全範囲に渡って沿っている必要はない。例えば、後述する
図9において、少なくとも張力伝達ローラ30とアイドルローラ40が近接したときにピニオンギア50とリングギア60が歯合するように、リングギア60の内周が第1天壁溝16及びベース70の第1ベース溝76の少なくとも前方の一部に沿っている構成としてもよい。
【0037】
抵抗付与部RAは、上記のように運動変換部DTに連結プレートCPにより連結されている。抵抗付与部RAは、ベース80と、天板83と、ベース80と天板83との間に配置されるギア82とを備える。また、抵抗付与部RAは、ベース80と天板83との間に不図示のトルク付与部が設けられており、ギア82にはトルク付与部から回転抵抗が付与される。例えば、抵抗付与部RAは、ギア82に常に回転抵抗が付与される構成とされ、例えば回転ダンパとされる。回転ダンパの構成としては、ギア82の外周で囲まれる領域に粘性オイルが封止されており、ギア82が回転すると当該粘性オイルのせん断抵抗により回転抵抗がギア82に付与される構成を挙げることができる。また例えば、抵抗付与部RAは、ギア82の回転速度が所定値以上となる場合に回転抵抗が付与される構成とされ、例えば遠心ブレーキとされる。遠心ブレーキとしては、ギア82の外周内にギア82と共に回転するブレーキシューが径方向に移動可能に設けられ、ギア82が所定の速度以上で回転する場合に遠心力でブレーキシューが外周側に移動して、ブレーキシューと他の部材と摩擦力等により回転抵抗が付与される構成を挙げることができる。
【0038】
また、抵抗付与部RAと運動変換部DTとが連結された状態で、ギア82とリングギア60の外周ギア62とが歯合している。従って、リングギア60が回転する場合、抵抗付与部RAのギア82が回転することで、ギア82からリングギア60に回転抵抗が付与される。
【0039】
<制動装置BDの動作>
次に、制動装置BDの動作について説明する。
【0040】
まず、コードCDに何ら張力が与えられない状態とする。上記のように、コイルスプリングSPは、カバー10の後方の内壁とスライダー20とを押圧して、カバー10に対してスライダー20を前方に付勢する。従って、スライダー20はカバー10内の前方に位置する。スライダー20がカバー10の前方に位置する場合、スライダー20と共に張力伝達ローラ30及びアイドルローラ40もカバー10内の前方に位置する。上記のように、第1天壁溝16と第2天壁溝17とは、前方に向かうにつれて距離が小さくされ、第1ベース溝76と第2ベース溝77とは、第1天壁溝16及び第2天壁溝17と同様に前方に向かうにつれて距離が小さくされる。従って、スライダー20がカバー10内の前方に位置することで、軸芯31が第1天壁溝16及び第1ベース溝76に嵌まっている張力伝達ローラ30と、軸芯41が第2天壁溝17及び第2ベース溝77に嵌まっているアイドルローラ40との距離も小さくなる。つまり、第1天壁溝16及び第1ベース溝76は、張力伝達ローラ30の軸芯31が移動可能に嵌合し張力伝達ローラ30の溝に沿わない動きを規制する規制溝と理解でき、第2天壁溝17及び第2ベース溝77は、アイドルローラ40の軸芯41が移動可能に嵌合しアイドルローラ40の溝に沿わない動きを規制する規制溝と理解できる。また、第1天壁溝16及び第1ベース溝76は、リングギア60の内周面と平面視において同心円上に形成されるため、軸芯31がそれぞれの溝内を移動しても、ピニオンギア50はリングギア60の内周ギア61に歯合し続けることができる。
【0041】
このように張力伝達ローラ30とアイドルローラ40との距離が小さくなると、張力伝達ローラ30はアイドルローラ40に押圧され、張力伝達ローラ30のローラ部32とアイドルローラ40のローラ部42とにコードCDが狭持される。つまり、本実施形態では、コイルスプリングSPは、張力伝達ローラ30がアイドルローラ40に押圧されるように張力伝達ローラ30を常時付勢する付勢部材と理解することができる。なお、コードCDが張力伝達ローラ30とアイドルローラ40とにより狭持された状態で、コードCDの径だけ張力伝達ローラ30とアイドルローラ40とが離間する。このため、第1天壁溝16及び第2天壁溝17の構造、及び、第1ベース溝76及び第2ベース溝77の構造により、スライダー20は僅かに後方に位置する。
【0042】
なお、コードCDが張力伝達ローラ30とアイドルローラ40とに狭持されていない場合、カバー10のガイド孔14から治具を挿入して張力伝達ローラ30とアイドルローラ40とを離間したり、カバー10の第1天壁溝16や第2天壁溝17及びベース70の第1ベース溝76や第2ベース溝77から露出する軸芯31,41をコイルスプリングSPの力に抗して後方に移動させて、張力伝達ローラ30とアイドルローラ40とを離間したり、ガイド孔14a〜14cからガイド孔15a〜15cにコードCDを挿入する。
【0043】
図9は、制動装置BDの動作を示す図である。上記のように、コードCDに何ら張力が与えられない状態から、コードCDに張力を与えて、
図9において矢印Aで示すように、コードCDを長手方向に沿って前方に移動させる。つまり、コードCDを前方に引っ張る。すると、コイルスプリングSPの押圧力によりコードCDを狭持する張力伝達ローラ30およびアイドルローラ40が回転する。張力伝達ローラ30が回転すると、
図9において矢印Bで示すように、ピニオンギア50も回転し、ピニオンギア50がリングギア60の内周に沿った一方の回転方向(上記ピニオンギア50が回転する回転方向とは逆側の回転方向)に沿って移動する。ただし、コードCDに何ら張力が与えられない状態において、張力伝達ローラ30とアイドルローラ40でコードCDを狭持しているため、ピニオンギア50の当該移動量は僅かである。張力伝達ローラ30が移動すると、第1天壁溝16及び第2天壁溝17の構造、及び、第1ベース溝76及び第2ベース溝77の構造により、張力伝達ローラ30とアイドルローラ40とが互いに近づき合いより強固にコードCDを狭持する。このとき、張力伝達ローラ30が僅かに前方に移動することにより、スライダー20が僅かに前方に移動する場合には、アイドルローラ40が第2天壁溝17及び第2ベース溝77に沿って、張力伝達ローラ30側に移動する。
【0044】
そして、張力伝達ローラ30とアイドルローラ40が限界まで近づくと、張力伝達ローラ30の回転は続くものの、張力伝達ローラ30の位置はそのままとなる。このため、ピニオンギア50の矢印B方向の回転により、リングギア60が矢印C方向に回転する。上記のように抵抗付与部RAのギア82に常に回転抵抗が付与される場合には、リングギア60が回転すると、リングギア60には抵抗付与部RAから回転抵抗が付与され、リングギア60からピニオンギア50に回転抵抗が付与される。また、上記のように抵抗付与部RAのギア82の回転速度が所定値以上となる場合にギア82に回転抵抗が付与される場合には、リングギア60が回転し始めても暫くはリングギア60に回転抵抗は付与されないが、コードCDが速く移動することにより張力伝達ローラ30が速く回転してリングギア60の回転速度が所定値以上となると、ギア82に回転抵抗が付与される。その結果、リングギア60に当該回転抵抗が付与され、リングギア60からピニオンギア50に回転抵抗が付与される。こうして、いずれの場合であっても、張力伝達ローラ30にも回転抵抗が付与される。このため、コードCDには制動力が付与される。
【0045】
一方、コードCDを後方に向かって引っ張ると、張力伝達ローラ30及びアイドルローラ40は、上記と逆の回転方向に回転する。従って、ピニオンギア50も矢印B方向とは逆側の回転方向に回転する。このため、リングギア60の内周ギア61に歯合するピニオンギア50はリングギア60の内周に沿った他方の回転方向に沿って移動する。このため、張力伝達ローラ30とアイドルローラ40とが離間する。そのため、コードCDに加えられる制動力が解除され、コードCDは自由に動くことができる。なお、ピニオンギア50の他方の回転方向に沿った移動により、張力伝達ローラ30が後方に移動して、張力伝達ローラ30の後方への移動によりスライダー20も後方に移動し、アイドルローラ40も後方に移動しても良い。このように張力伝達ローラ30及びアイドルローラ40が後方に移動すると、第1天壁溝16及び第2天壁溝17の構造、及び、第1ベース溝76及び第2ベース溝77の構造により、張力伝達ローラ30とアイドルローラ40とを適切に離間することができる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の制動装置BDは、アイドルローラ40と、アイドルローラ40との間でコードCDを狭持すると共に、コードCDの長手方向の移動により回転する張力伝達ローラ30と、張力伝達ローラ30の回転軸を中心として張力伝達ローラ30と共に回転するピニオンギア50と、内周面にピニオンギア50と歯合する内周ギア61が形成されるリングギア60と、リングギア60に回転抵抗を付与する抵抗付与部RAと、を備え、ピニオンギア50は、リングギア60の内周面に沿って移動可能とされ、張力伝達ローラ30は、ピニオンギア50がリングギア60の内周面の一方の回転方向に沿って移動する場合にアイドルローラ40に押圧される。
【0047】
従って、本実施形態の制動装置BDによれば、コードCDが一方の方向に引かれると、張力伝達ローラ30がピニオンギア50と共にコードCDの動きに沿って回転し、ピニオンギア50のリングギア60の内周面に沿った一方の回転方向への移動により、張力伝達ローラ30がアイドルローラ40に押圧される。つまり、コードCDに張力が加わりコードCDが一方の長手方向に移動する場合に、コードCDは自身の張力による力によりアイドルローラ40と張力伝達ローラ30とに強固に狭持されることになる。従って、コードCDが一方の長手方向に引かれる場合に、コードCDが引かれない場合よりも、強い力でコードCDは狭持される。このため、コードCDが張力伝達ローラ30に対して滑ることが抑制される。そして、さらにコードCDが引かれることで、ピニオンギア50と内周ギア61で歯合するリングギア60が回転し、抵抗付与部RAからリングギア60に付与される回転抵抗が張力伝達ローラ30に伝わる。このように、コードCDが張力伝達ローラ30に対して滑ることが抑制され、張力伝達ローラ30にピニオンギア50を介してリングギア60から回転抵抗が付与されるため、本実施形態の制動装置BDは、コードCDに対して適切に制動力を加えることができる。
【0048】
また、上記のようにアイドルローラ40が、ピニオンギア50のリングギア60の内周面の一方の回転方向に沿った移動と共に張力伝達ローラ30側に移動する場合には、張力伝達ローラ30の移動量を少なくして、適切にコードCDを狭持することができる。
【0049】
また、上記実施形態の制動装置BDでは、張力伝達ローラ30がアイドルローラ40に押圧されるように張力伝達ローラ30を常時付勢する付勢部材としてのコイルスプリングSPを備える。従って、コードCDに張力が加えられていない状態であっても、張力伝達ローラ30とアイドルローラ40とでコードCDを狭持することができる。従って、コードCDを引く初期状態においても、コードCDと張力伝達ローラ30とが滑ることを抑制し、コードCDの張力を適切に張力伝達ローラ30に伝えることができる。
【0050】
また、上記実施形態の制動装置BDでは、リングギア60には外周面に外周ギア62が形成され、外周ギア62が抵抗付与部RAのギア82に歯合する。そして、外周ギア62が回転抵抗を付与する回転ダンパ等に歯合する場合には、リングギア60の回転時に常にリングギア60に回転抵抗が付与される。この場合、コードCDの引き始めから常にコードCDに制動力を加えることができる。また、回転ダンパを交換することで、リングギア60に付与される回転抵抗を調整することができる。また、外周ギア62が回転速度が所定値以上となる場合に回転抵抗が付与される遠心ブレーキ等に歯合する場合には、リングギア60が所定の回転速度以上となる場合にリングギア60に回転抵抗が付与される。従って、コードCDの引き始めにはコードCDに制動力が加えられないもののコードCDが所定の移動速度で引かれる場合にコードCDに制動力を加えることができる。また、この場合、遠心ブレーキを交換することにより、コードCDに制動力が付与されるコードCDの移動速度やリングギア60に付与される回転抵抗を調整することができる。
【0051】
以上より、第1実施形態に係る制動装置BDは、コードの移動を他の部材の運動に変換する運動変換部を備え且つコードの移動を制動する制動装置であって、運動変換部は、コードを挟着する挟着体を備え、挟着体は、コードと挟着体が一方向に相対移動するときコードを挟着し、コードと挟着体が他方向へ相対移動するときコードが非屈曲状態で解除されるように挟着状態が変化するように構成される、制動装置と捉えることができる。ここで、第1実施形態では、張力伝達ローラ30及びアイドルローラ40が挟着体を構成する。また、制動装置BDは、コードが一方向に相対移動するときに、コードの移動に伴って抵抗力を発生させる抵抗付与部を備える。また、張力伝達ローラ30は、コードに接触可能な位置に設けられ且つ予め定められた範囲を移動可能であり、アイドルローラ40は、張力伝達ローラ30とコードを挟んで位置する。そして、張力伝達ローラ30は、コードと張力伝達ローラ30が一方向に相対移動するときに第1位置に移動し、コードと張力伝達ローラ30が他方向へ相対移動するときに第2位置に移動するように構成される。また、張力伝達ローラ30が第1位置に位置するとき、コードを張力伝達ローラ30が挟着し、張力伝達ローラ30が第2位置に位置するとき、コードが非屈曲状態で解除されるように構成される。ここで、コードが解除されるとは、コードの移動を許容する状態のことであり、コードと挟着体の接触・非接触を問わない。
【0052】
以上、本発明の制動装置BDについて上記実施形態を例に説明したが、本発明の制動装置は上記実施形態に限定されるものではない。
【0053】
例えば、上記実施形態では、支柱として、移動可能に保持され、張力伝達ローラ30の回転軸と平行な回転軸を有するアイドルローラ40が用いられた。しかし、支柱は、張力伝達ローラ30との間でコードCDを狭持し、コードCDが移動可能なものであれば、アイドルローラ40に限らない。例えば、支柱は、表面が滑り易い構成とされ、回転しなくても良い。例えば、表面が平滑に加工された金属から成る支柱であっても良い。ただし、
上記実施形態のように、アイドルローラ40が用いられる場合には、コードCDに凹凸がある場合であっても、アイドルローラ40の回転により当該凹凸をアイドルローラが乗り越えて、当該凹凸が引っ掛かることを抑制できるため好ましい。また、支柱は移動しないものであっても良い。この場合であっても、張力伝達ローラ30の移動により、コードCDを狭持することができる。
【0054】
また、上記実施形態では、張力伝達ローラ30がアイドルローラ40に押圧されるようにスライダー20を介して張力伝達ローラ30を常時付勢する付勢部材としてのコイルスプリングSPが配置された。しかし、コイルスプリングSPは、例えば、張力伝達ローラ30を直接付勢しても良い。また、付勢部材はコイルスプリングSPでなくても良い。さらに、このような付勢部材が無くても良い。ただし、コードCDの引き始めに適切に張力伝達ローラ30とアイドルローラ40とでコードCDを狭持するために、制動装置BDは付勢部材を備えることが好ましい。
【0055】
また、上記実施形態では、リングギア60の外周面に外周ギア62が形成され、外周ギア62は回転抵抗を付与する回転ダンパや遠心ブレーキ等に歯合するものとされた。しかし、例えば、回転ダンパや遠心ブレーキ等のようにリングギア60に回転抵抗を付与する抵抗付与部が、リングギア60とベース70との間、またはリングギア60とカバー10との間に設けられても良い。すなわち、抵抗付与部がリングギア60と重なる位置に設けられても良い。この場合、例えば、抵抗付与部がリングギア60の内周ギア61に歯合してリングギア60に回転抵抗を付与しても良く、リングギア60の外周ギア62は無くても良い。抵抗付与部がリングギア60と重なる位置に設けられる場合、制動装置BDを小型にすることができる。なお、抵抗付与部がリングギア60とカバー10との間に設けられる場合、抵抗付与部は張力伝達ローラ30やアイドルローラ40の移動を阻害しない位置に設けられる。すなわち、抵抗付与部は、ヘッドボックス内において回転軸を鉛直・水平・斜めに向けて配置することができる。
【0056】
また、上記実施形態では、ベース70に形成される第1ベース溝76及びカバー10に形成される第1天壁溝16に、張力伝達ローラ30の軸芯31が移動可能に嵌められており、張力伝達ローラ30と回転軸を共にするピニオンギア50がリングギア60の内周面に沿って移動するものとされた。しかし、張力伝達ローラ30及びピニオンギア50の動きを規制する手段は、他の構成とされても良い。
【0057】
<日射遮蔽装置>
図10は、本実施形態の日射遮蔽装置を示す図である。
図10に示すように、本実施形態の日射遮蔽装置100は、日射遮蔽部材101と、昇降コード102と、ロック部104と、制動装置BDと、コードCDと、筐体106と、固定部材107とを主な構成として備える。
【0058】
筐体106は、略直方体の形状をしており、固定部材107により、壁等に固定される。また、筐体106内には、ロック部104、制動装置BDが配置されている。本実施形態の日射遮蔽部材101は、折畳み癖の付けられた生地であり、上端が筐体106内に固定されることで吊持されている。日射遮蔽部材101の下端には、一組の昇降コード102のそれぞれの一方の端部が固定されている。また、それぞれの昇降コード102は、筐体106内に引き込まれている。そして、各昇降コード102が筐体106内にさらに引き込まれることで、それぞれの昇降コード102の一方の端部が上昇して、日射遮蔽部材101の下端が上昇し、日射遮蔽部材101は全体が折り畳まれながら上昇する。
【0059】
操作コードであるコードCDは、
図10に示すようにロック部104、制動装置BDに挿通された状態でそれぞれの昇降コード102に接続されている。本実施形態では、昇降コード102が2本であるため、コードCDは2本とされ、一方のコードCDが一方の昇降コード102に接続され、他方のコードCDが他方の昇降コード102に接続される。また、このようにコードCDが2本であるため、例えば、コードCDの一方は、制動装置BDのカバー10におけるガイド孔14a及びガイド孔15aに挿通され、コードCDの他方は、制動装置BDのカバー10におけるガイド孔14c及びガイド孔15cに挿通される。また、それぞれのコードCDと昇降コード102は結び目や継ぎ目が無く接続されることが好ましい。つまり、一方のコードCDと一方の昇降コード102とが1本のコードから成り、他方のコードCDと他方の昇降コード102とが1本のコードから成ることが好ましい。
【0060】
ロック部104は、コードCDの動作により、コードCDを動かしたりロックしたりする。例えば、コードCDを鉛直下方向に引いた状態で、当該鉛直下方向へ引く力を緩めると、コードCDをロックし、コードCDを斜め下方向に引いた状態で、当該斜め下方向へ引く力を緩めても、コードCDをロックしない構成とされる。
【0061】
制動装置BDは、筐体106内において、
図1に示す前方が昇降コード102側を向き、後方がロック部104側を向くように配置される。従って、日射遮蔽部材101が下降しきった状態、すなわち日射遮蔽装置100の閉状態において、一組のコードCDを下方に引っ張ると、コードCDは
図1に示す後方に引かれる。このとき、アイドルローラ40との間にコードCDを狭持する張力伝達ローラ30は、コードCDとの摩擦力により、
図9において矢印Bで示す回転方向と逆側の回転方向に回転する。従って、ピニオンギア50は、リングギア60の内周を他方の回転方向側に移動して、張力伝達ローラ30とアイドルローラ40とが離間する。このため、コードCDを小さな抵抗力で引くことができる。コードCDが引かれると、コードCDに接続されるそれぞれの昇降コード102が筐体内に引き込まれて日射遮蔽部材101は上昇する。
【0062】
一方、日射遮蔽部材101が下降しきっていない状態において、ロック部104によりコードCDがロックされていない状態でコードCDを離す。すると、日射遮蔽部材101は自重により下降する。このため、昇降コード102は筐体106内から引き出される。従って、昇降コード102に接続されるコードCDは、制動装置BDの前方に向かって引かれる。すると、
図9を用いて説明したように、コードCDには制動力が付与される。従って、日射遮蔽部材101の下降速度が抑えられる。このため、日射遮蔽部材101の下降速度が超過することによる破損等を抑制することができる。
【0063】
以上説明したように本実施形態の日射遮蔽装置100によれば、日射遮蔽部材101を昇降可能とするコードCDの長手方向の移動に対して、制動装置BDにより適切に制動力が付与されるため、例えば、上記のように日射遮蔽部材101が自重により下降する場合であっても、日射遮蔽部材101の下降速度を抑えることができる。また、抵抗付与部RAがリングギアの回転時に常にリングギア60に回転抵抗を付与する回転ダンパ等から成る場合には、日射遮蔽部材101の下降速度を下降当初から抑えることができる。一方、抵抗付与部RAがリングギア60が所定の回転速度以上となる場合にリングギア60に回転抵抗を付与する遠心ブレーキ等から成る場合には、日射遮蔽部材101の下降当初には下降速度を抑えず、当該下降速度が所定の速度以上となる場合に下降速度を抑えることができる。
【0064】
また、制動装置BDを上記とは逆向きに取り付けることにより、コードCDを強くひいても、コードCDが勢いよく移動することを抑制して、日射遮蔽部材101が過度な勢いで上昇することを抑制することができる。さらに、ブレーキとして機能する機構を複数設けてもよい。例えば、ピニオンギア50を2つ利用したブレーキと、遊星ギアを用いたブレーキを重ねて利用してもよい。これにより、より強固にコードCDの移動に対してブレーキをかける事が可能となる。
【0065】
以上、本発明の日射遮蔽装置100について、上記実施形態を例に説明したが、本発明の日射遮蔽装置は、上記実施形態の日射遮蔽装置100と異なる構成であっても良い。自動動作を、スプリングにより上昇方向としてもよい。例えば、本発明の日射遮蔽装置は、横型ブラインドやロールスクリーンとすることもできる。ロールスクリーンの場合は昇降コードを使用しないが操作コードの動きを本制動装置で制動することもできる。横へ動作する縦型ブラインドやカーテン、アコーデオンカーテン、プリーツ間仕切りでも横方向にバネ・錘・レールの傾斜等により半自動移動する装置において、自動動作時連動する駆動コードに対し本制動装置で制動することができる。
【0066】
<作用・効果>
第1実施形態に係る制動装置BDにより、以下のような作用・効果を得ることができる。
(1)コードCDの自由移動時において屈曲しない(非屈曲)ために、屈曲抵抗が小さくなり、よりスムーズにコードCDが移動することが可能になる。
(2)引き操作時において操作力を低減し、自動動作(自動降下)時に確実にコードCDを挟着し、意図しない落下を防止することができる。
【0067】
2.第2実施形態
次に、
図11〜
図29を用いて、本発明の第2実施形態に係る制動装置1000について説明する。第2実施形態に係る制動装置1000は、コードの移動を制動する制動装置である点においては第1実施形態の制動装置BDと共通するが、その構成が異なる点がある。具体的には、第1実施形態に係る制動装置BDでは、運動変換部DTと抵抗付与部RAが略水平面上に設けられていたが、第2実施形態に係る制動装置1000では、運動変換部DTに相当する機構と抵抗付与部RAに相当する機構が略垂直に位置するように設けられる点が異なる。ここで、第2実施形態においては、スライダー220、コイルスプリングSP、軸芯41及びローラ部42からなるアイドルローラ40、ローレット240、ピニオンギア50、軸芯31、ワッシャー241、内歯付キャリア260が運動変換部DTを構成し、ウェイト340、太陽歯車付ウェイトホルダ320及びケース10Aが抵抗付与部RAを構成する。以下、第1実施形態と同一の部材については同一の符号を付し、その相違点を中心に説明する。
【0068】
2−1<全体構成>
図11及び
図12は、第2実施形態に係る制動装置1000の分解斜視図である。制動装置1000は、整列部材200、ケース10A、スライダー220、コイルスプリングSP、軸芯41及びローラ部42からなるアイドルローラ40、ローレット240、ピニオンギア50、ローレット240及びピニオンギア50を挿通する軸芯31、ワッシャー241、内歯付キャリア260、遊星歯車280、プレート300、太陽歯車付ウェイトホルダ320、ウェイト340及びベース70により構成される。
【0069】
第2実施形態において、アイドルローラ40及びローレット240がコードを挟着する挟着体に相当する。また、アイドルローラ40が支柱に、ローレット240がコードの長手方向の移動により回転するローラに相当する。また、スライダー220が第1実施形態のスライダー20に相当する。
【0070】
図11及び
図12に示されるように、第2実施形態では、内歯付キャリア260に4つの遊星歯車280が設けられ、太陽歯車付ウェイトホルダ320に8つのウェイト340が保持される。以下、各部材について説明する。
【0071】
2−1−1<整列部材200>
図14(a),(b)に示されるように、整列部材200は、コードCDを挿通し、コードCDの向きを整えるものである。また、複数のコードCDを互いに同じ向きに整列させるものである。整列部材200は、例えば、樹脂で形成することができる。ここで、
図14(a)に示されるように、矢印の向きをそれぞれ前後、左右、上下とする。すなわち、第1天壁溝16と第2天壁溝17の距離が狭くなる向きを前方とし、左右方向(幅方向)、上下方向を定める。
【0072】
図20(a)に示されるように、整列部材200は、前方壁部205と、前方壁部205に連結される右側壁部207及び左側壁部208と、右側壁部207及び左側壁部208のそれぞれに連結される後方壁部206と、を有する。前方壁部205、右側壁部207、左側壁部208及び後方壁部206の形状は任意であるが、第2実施形態では、それぞれ概ね矩形の形状とされる。また、第2実施形態では、前方壁部205及び後方壁部206は、略対称形状である。
【0073】
前方壁部205には第1前方溝201、第1前方コード挿入部201A、第2前方溝202及び第2前方コード挿入部202Aが形成される。また、後方壁部206には、第1後方溝203、第1後方コード挿入部203A、第2後方溝204及び第2後方コード挿入部204Aが形成される。
【0074】
第1前方コード挿入部201A及び第2前方コード挿入部202Aは、制動装置1000の組立後にコードCDを整列部材200に挿通するためのものである。第1前方コード挿入部201Aは、第1前方溝201よりも幅広に形成される。また、第2前方コード挿入部202Aは、第2前方溝202よりも幅広に形成される。したがって、第1前方コード挿入部201A及び第2前方コード挿入部202AにコードCDを挿通し、そのまま第1前方溝201及び第2前方溝202の方へコードCDをスライドさせることで、コードCDをスムーズに挿通することが可能となる。
【0075】
また、第1後方コード挿入部203A及び第2後方コード挿入部204Aは、前方壁部205に挿通されたコードCDが後述するスライダー220の前後の貫通孔225(
図23参照)を通過し、かかるコードCDを後方壁部206から外部に引き出すためのものである。第1後方コード挿入部203Aは、第1後方溝203よりも幅広に形成される。また、第2後方コード挿入部204Aは、第2後方溝204よりも幅広に形成される。したがって、第1後方コード挿入部203A及び第2後方コード挿入部204AにコードCDを挿通し、そのまま第1後方溝203及び第2後方溝204の方へコードCDをスライドさせることで、コードCDをスムーズに挿通することが可能となる。
【0076】
なお、第1前方コード挿入部201A、第2前方コード挿入部202A、第1後方コード挿入部203A及び第2後方コード挿入部204Aの形状は任意であり、
図20に示した形状に限定されない。例えば、略円形でもよく、縦長形状から斜め形状を経て第1前方溝201(その他の溝でも同じ)に接続されてもよい。さらに、第2実施形態では、第1前方コード挿入部201Aと第1前方溝201の間に段差210が設けられているが、かかる段差210を設けず、前方壁部205(又は後方壁部206)を略矩形としてもよい。
【0077】
図20(b)に示されるように、第2実施形態では、前方壁部205及び後方壁部206は正面視において略同一形状とされる。従って、第1前方コード挿入部201Aから挿通されたコードCDは第1後方コード挿入部203Aを通過し、第2前方コード挿入部202Aから挿通されたコードCDは第2後方コード挿入部204Aを通過する。換言すると、第1前方溝201及び第1前方コード挿入部201Aと第1後方溝203及び第1後方コード挿入部203Aがそれぞれ対応する一対の溝であり、第2前方溝202及び第2前方コード挿入部202Aと第2後方溝204及び第2後方コード挿入部204Aがそれぞれ対応する一対の溝である。
【0078】
ここで、
図20(a)に示されるように、整列部材200の右側壁部207には、制動装置1000の組立時においてケース10Aの上方から被せるようにして一体化するときに、後述するケース10Aの係合孔19(
図21参照)と係合し、整列部材200をケース10Aに固定するための爪部209が設けられる。なお、
図20において表れていないが、左側壁部208の内方の面にも同様の爪部209が対向するように設けられる。これにより、右側壁部207と左側壁部208が外方向に弾性変形しながらケース上部10Aが入り、整列部材200に設けられた2つの爪部209とケース10Aの左右に設けられた2つの係合孔19とが弾性的に係合することが可能となる。
【0079】
2−1−2<ケース10A>
次に、
図21(a),(b)及び
図22を用いてケース10Aについて説明する。なお、以下、
図22において左向きを前方、右向きを後方、上向きを右側、下向きを左側として説明する。ケース10Aは、ベース70とともに筐体を構成し、その内部にスライダー220、コイルスプリングSP、軸芯41及びローラ部42からなるアイドルローラ40、ローレット240、ピニオンギア50、軸芯31、ワッシャー241、内歯付キャリア260、遊星歯車280、プレート300、太陽歯車付ウェイトホルダ320及びウェイト340を保持する。
【0080】
また、ケース10Aは、例えば
図25に示されるベース70とともに制動装置1000の筐体を構成するものである。また、例えば
図25に示される太陽歯車付ウェイトホルダ320及びウェイト340とともに、抵抗付与部RAを構成するものである。
【0081】
図21に示されるように、ケース10Aは、外形が概ね正方形の天壁部11と、前側壁部12fと、前側壁部12f及び天壁部11に連結される右側壁部12r及び左側壁部12lと、右側壁部12r及び左側壁部12lのそれぞれに連結される後側壁部12bと、
天壁部11に対向し、前側壁部12f、後側壁部12b、前側壁部12f及び左側壁部12lから径方向側に向かって延在する鍔部13と、鍔部13に連結される円筒部13Cと、円筒部13Cに連結されるカバー部112とを主な構成として有する。
【0082】
前側壁部12f及び後側壁部12bには、ガイド溝113が形成されている。これら2つのガイド溝113は、互いに前後方向に対向している。これらのガイド溝113はコードCDが前後方向に挿通されるための溝である。ここで、ガイド溝113に挿通するコードCDの数は特に限定されないが、第2実施形態では3本のコードCDが縦方向に挿通された例について示している(
図14参照)。
【0083】
また、右側壁部12r及び左側壁部12lには、係合孔19が設けられる。係合孔19は、すでに述べた通り、整列部材200の爪部209と係合し、整列部材200をケース10Aに固定するものである。
【0084】
さらに、左右の係合孔19の上方には支持溝114が設けられる。支持溝114は、
図14に示されるように、ケース10Aがスライダー220を内部に保持するにあたり、スライダー220に設けられる突起230を支持するものである。これにより、スライダー220を浮き状態で支持することができる。なお、詳細は後述する。
【0085】
天壁部11には、第1天壁溝16と第2天壁溝17とが形成されている。
図22(a)に示されるように、第1天壁溝16及び第2天壁溝17は、それぞれコードCDの長手方向すなわち前後方向に対して斜めに形成されており、コードCDの一方の長手方向である前方に向かうにつれて、第1天壁溝16と第2天壁溝17との距離が小さくされている。また、第1天壁溝16は円弧状に形成されており、第1天壁溝16の円弧は、
図17に示される内歯付キャリア260の内周面と平面視において同心円上となるように形成される。一方、第2天壁溝17は緩やかなカーブを描いた形状に形成されている。具体的には、第2天壁溝17は、前方側が略直線状の形状とされ、後方に向かうにつれて、第1天壁溝16から離れる向きに湾曲している。これは、第2天壁溝17を略直線状とした場合、第1天壁溝16は後方から前方に向かってコードCDに近づくような円弧であるので、例えば軸芯31及び軸芯41がそれぞれ第1天壁溝16及び第2天壁溝17に沿って移動するときに、コードCDに対する垂直方向の変位が、軸芯31と軸芯41とで異なってしまうことを防ぐためである。つまり、一方が円弧であるのに対し、他方が略直線状であると、前後方向においてコードCDへの垂直距離が異なるためである。このように、軸芯31及び軸芯41のコードCDの鉛直方向に対する変位を近接させることにより、ローレット240及びローラ部42が適切にコードCDを挟着することが可能となる。なお、第2天壁溝17はこれに限定されず、例えば、第1天壁溝16と略同一形状の溝を、コードCD側に向かって湾曲する配置としてもよい。これにより、CDに対する鉛直方向の変位を、軸芯31と軸芯41とで略同一にすることができ、コードCDの摩耗を低減することが可能となる。ここで、第2実施形態では、CDに対する鉛直方向の変位を、軸芯31と軸芯41とでなるべく同じにすることに加え、他の部材の移動等による相互作用等を考慮し、
図22(a)に示される形状を採用した。
【0086】
第1天壁溝16の縁には、
図21(a),(b)、
図22(a)に示されるように、ケース10Aの平面視において、第1天壁溝16におけるケース10Aの外側の縁に沿った位置の少なくとも一部に、第1天壁溝16から上方に突出する第1ガイド壁16Aが設けられる。第2実施形態では、第1ガイド壁16Aは、第1天壁溝16に対して略90度となるように設けられる。第1ガイド壁16Aは、第1天壁溝16に沿って移動する軸芯31の面圧を下げることを目的としている。つまり、第1ガイド壁16Aを設けることにより、軸芯31と接触する面積が増大することにより、軸芯31の面圧を低減するものである。これは、コードCDに張力が与えられ、制動装置1000が作用している間は軸芯31の面圧が第1天壁溝16の内面に加わっており、かかる面圧により第1天壁溝16の内面が削れると、ローレット240とローラ部42の間隔が変化して、ローレット240への回転伝達が不十分になる恐れがあるためである。第1ガイド壁16Aを設けることにより、軸芯31からの圧力によりケース10Aが削れることを防止することが可能となる。なお、第1ガイド壁16Aの肉厚は任意であるが、ケース10Aの素材、軸芯31の移動速度等を考慮して適宜設計すればよい。
【0087】
また、ケース10Aの平面視において、第2天壁溝17におけるケース10Aの外側の縁に沿った位置には、ケース10Aの中心から遠方に位置する縁に沿った位置の少なくとも一部に、第2天壁溝17から上方に突出する第2ガイド壁17Aが設けられる。第2実施形態では、第2ガイド壁17Aは、第2天壁溝17に対して略90度となるように設けられる。第2ガイド壁17Aは、第2天壁溝17に沿って移動する軸芯41の面圧を下げることを目的としている。つまり、第2ガイド壁17Aを設けることにより、軸芯41と接触する面積が増大することにより、軸芯41の面圧を低減するものである。これは、コードCDに張力が与えられ、制動装置1000が作用している間は軸芯41の面圧が第2天壁溝17の内面に加わっており、かかる面圧により第2天壁溝17の内面が削れると、ローレット240とローラ部42の間隔が変化して、ローレット240への回転伝達が不十分になる恐れがあるためである。第2ガイド壁17Aを設けることにより、軸芯41からの圧力によりケース10Aが削れることを防止することが可能となる。なお、第2ガイド壁17Aの肉厚は任意であるが、ケース10Aの素材、軸芯41の移動速度等を考慮して適宜設計すればよい。
【0088】
なお、ケース10Aを金属等の強固な材料で成形した場合には、第1ガイド壁16A及び第2ガイド壁17Aを設けなくてもよい。これは、ケース10Aが堅牢であるので、軸芯31及び軸芯41からの圧力によりケース10Aがほとんど削れることがないためである。
【0089】
鍔部13は、天壁部11に対向し、前側壁部12f、後側壁部12b、前側壁部12f及び左側壁部12lから径方向側に向かって延在する部位であり、第2実施形態では略円形とされる。
【0090】
円筒部13Cは、鍔部13に連結され、内周ギア115の外側に位置する。第2実施形態では、円筒部13Cは、略円筒状の形状とされる。
【0091】
カバー部112は、円筒部13Cに連結され、ベース70と嵌合する箇所である。第2実施形態では、カバー部112の外縁は略正方形とされる。そして、カバー部112は、左右の側面の両端にそれぞれ2つの第1係合溝111Aが設けられる。そして、前端部の両端に2つの第2係合溝111Bが設けられ、後端部の略中央に1つの第2係合溝111Bが設けられる。第1係合溝111Aは、
図16に示されるベース70の第1係合板部701Aと係合するものである。また、第2係合溝111Bは、ベース70の第2係合板部701Bと係合するものである。これにより、ケース10Aとベース70が係合され、筐体を形成する。
【0092】
次に、
図22(b)及び
図24を用いて、ケース10Aの内部構造について説明する。ケース10Aの内部には、
図26に示されるように、遊星歯車280と歯合するリング状の内周ギア115が形成される。そして、内周ギア115の上部には、平面視において略リング状の波形部116が形成される。波形部116は、内周ギア115の中心を通る円の中心からの水平距離が小さい部分及び大きい部分が交互に並んでおり、平面視においてジグザグ形状となる形状である。具体的には、多数の直線を結んでできる多角形状をなしている。さらに、鍔部13の内面側の面には、段差117が設けられる。波形部116及び段差117を設けることにより、例えば内歯付キャリア260等の他の部材の位置決めを容易にし且つ摩擦抵抗を低減することができる。
【0093】
また、
図24に示されるように、ケース10Aの左右の内側面には、4つの溝118が形成される。溝118は、制動装置1000を組み立てる又は分解する際に、後述するスライダー220の突起230を通すためのものである。第2実施形態では、スライダー220の突起230が4つであるため、ケース10Aにも4つの溝118を設けている。
【0094】
2−1−3<スライダー220>
次に、
図23を用いてスライダー220について説明する。スライダー220は、アイドルローラ40及びローレット240を内部に保持し且つアイドルローラ40及びローレット240と共に移動する移動部材に相当する。スライダー220は、天壁部221と、天壁部221に連結される後側壁部222及び前側壁部224と、後側壁部222及び前側壁部224のそれぞれに連結される底壁部223とを有する。
【0095】
天壁部221は概ね矩形の形状に一対の溝が形成された形状とされる。これら一対の溝はそれぞれ第1天壁溝226及び第2天壁溝227とされる。第1天壁溝226及び第2天壁溝227は、それぞれ左右方向に沿って延在する直線状の溝とされ、互いに直線上に並んでいる。
【0096】
底壁部223は天壁部221と対向する。第2実施形態では、底壁部223は、概ね天壁部221と同じ形状とされる。しかし、天壁部221と底壁部223を異なる形状としてもよい。底壁部223にも左右方向に直線上に並んで形成される一対の溝が形成されており、これら一対の溝はそれぞれ第1底壁溝228及び第2底壁溝229とされる。第1底壁溝228が第1天壁溝226と上下方向に対向しており、第2底壁溝229が第2天壁溝227と上下方向に対向している。したがって、スライダー220を平面視すると、
図23(c)に示されるように、上下の溝が重なって見える。
【0097】
ここで、第1天壁溝226及び第1底壁溝228の幅の大きさは、軸芯31の直径が収まる程度の大きさである。また、第2天壁溝227及び第2底壁溝229の幅の大きさは、軸芯41が収まる程度の大きさである。
【0098】
また、天壁部221には、その四隅に天壁部221の左右へ突出するように突起230が設けられる。
図14に示されるように、突起230は、ケース10Aの支持溝114に収められ、ケース10Aの内部にスライダー220を浮き状態で支持するためのものである。すなわち、スライダー220が、下方に位置する内歯付キャリア260と非接触状態で保持される。
【0099】
前側壁部224及び後側壁部222には、貫通孔225が形成されている。貫通孔225は、前側壁部224及び後側壁部222の幅方向の略中央において前側壁部224及び後側壁部222を前後方向に貫通する。孔の形状は任意であるが、少なくともコードCD1本が挿通可能な程度である。好ましくは、複数本のコードCDが縦方向に整列した状態で挿通可能な形状である。なお、第2実施形態では、上下方向に長い略長円形の形状とされる。
【0100】
また、
図23(b)に示されるように、後側壁部222には、貫通孔225の両脇に、後側壁部222の外側面から形成される凹部231が形成されている。凹部231の形状は任意であり、
図23(b)に示されるような貫通孔225から側面側にかけて切り欠かれた形状でもよく、略円形、略矩形の凹み等であってもよい。また、第2実施形態では、左側の凹部231内にコイルスプリングSPが配置されており、コイルスプリングSPの一端は凹部231から突出している。そして、制動装置1000の組立時において、ケース10Aの内壁と当接し、スライダー220を前方に付勢する。なお、
図23ではコイルスプリングSPの凹部231から突出している部分を省略している。また、右側の凹部231内にコイルスプリングSPを配置してもよい。さらに、左右両方の凹部231内にコイルスプリングSPを配置してもよい。
【0101】
このような形状のスライダー220の左右方向の大きさは、ケース10Aの幅方向の内壁間の距離と概ね同じであり、スライダー220の前後方向の大きさは、ケース10Aの前後方向の内壁間の距離よりも小さくされる。従って、スライダー220がケース10Aの空間内に配置されると、スライダー220の天壁部221及び底壁部223の側面がケース10Aの幅方向において内壁面に当接して、スライダー220はケース10Aに対して幅方向に動きが規制される。この状態において、ケース10Aのガイド溝113とスライダー220の貫通孔225とが互いに前後方向に並ぶ。つまり、貫通孔225は、コードCDをスライダー220内に挿通するための孔である。一方、スライダー220がケース10Aの空間内に配置された状態で、スライダー220とケース10Aの内壁面との間には、前後方向に隙間が生じ、スライダー220はケース10Aに対して前後方向に動くことができる。また、スライダー220がケース10Aの空間内に配置された状態で、スライダー220の後側壁部222の凹部231から突出するコイルスプリングSPがケース10Aの後方の内壁を押圧する。従って、スライダー220がケース10Aの空間内に配置された状態で、スライダー220は、前方側に位置し、ケース10A内において前方に押圧された状態となる。
【0102】
ここで、
図24を用いて、スライダー220の突起230について詳細に説明する。
図24に示されるように、制動装置1000を組み立てる際には、ケース10A内部の下方にスライダー220が位置するように配置し、両者が接近するように上下方向に相対移動させる。そして、ケース10Aの内部に設けられた溝118にスライダー220に設けられた突起230を通す。なお、
図24(a)において、可視性を高めるために溝118を強調して表している。そして、
図14に示すように、突起230が支持溝114まで到達するまでケース10Aとスライダー220を近づける。すると、スライダー220に設けられたコイルスプリングSPがケース10Aの後方の内壁と当接し、スライダー220を前方に付勢することにより、突起230が溝118よりも前方に位置することとなる。このため、ひとたびケース10Aにスライダー220を取り付けると、突起230が支持溝114から外れることを防止できる。なお、溝118は制動装置1000の組み立て時のみならず、分解時においても突起230を通す役割をする。この場合、コイルスプリングSPの付勢力に抗してスライダー220をケース10Aに対して相対的に後方に移動させ、突起230が溝118の位置まで到達したときに、スライダー220をケース10Aに対して相対的に下側に移動させればよい。
【0103】
このような構成とすることで、スライダー220をケース10A内部において浮き状態で支持することが可能となる。そのため、スライダー220と他の部品、例えば内歯付キャリア260等との接触を防止することができ、不要な抵抗力を低減又はゼロにすることができる。したがって、各部材の消耗を低減することが可能となる。
【0104】
2−1−4<アイドルローラ40、ローレット240及びピニオンギア50>
次に、
図12及び
図25を用いて、アイドルローラ40、ローレット240及びピニオンギア50について説明する。アイドルローラ40は、ローラ部42及び軸芯41で構成される。アイドルローラ40の詳細については第1実施形態で説明したので、その説明を省略する。
【0105】
ローレット240は、第1実施形態のローラ部32に相当する。そして、ローレット240の中心には軸芯31の一端が挿入されている。そして、軸芯31の他端には、ピニオンギア50が挿入されている。ローレット240は任意の材料で形成することができ、例えばステンレスを用いることが可能である。
【0106】
第1実施形態と同様、アイドルローラ40及びローレット240はスライダー220の内部に保持される。また、ピニオンギア50は、スライダー220の外部に保持される。ここで、
図19を用いてローレット240、スライダー220及びピニオンギア50の位置関係について説明する。
図19は、第2実施形態に係る制動装置1000の左側面から見て軸芯31の略中心を通る断面図の一部である。
図19に示されるように、制動装置1000の組み立て時において、ローレット240とピニオンギア50でスライダー220の底壁部223を挟み込むような構成となっている。また、第2実施形態では、ピニオンギア50とスライダー220の接触面積を低減すべく、ピニオンギア50に段差51が設けられる。これにより、軸芯31を介してローレット240及びピニオンギア50が一体回転するときに、ピニオンギア50とスライダー220との間の摺動抵抗を低減することができる。これにより、回転動作を滑らかにすることが可能となる。なお、抵抗を低減するために、第2実施形態では、ピニオンギア50の下側において、ワッシャー241(
図11,12参照)を軸芯31にかましている。
【0107】
2−1−5<内歯付キャリア260及び遊星歯車280>
次に、
図11及び
図25を用いて内歯付キャリア260及び遊星歯車280について説明する。第2実施形態では、内歯付キャリア260は、平面視において略ドーナツ形状である。内歯付キャリア260は、円柱部264から平面視において外側に突出するフランジ262を備える。
【0108】
円柱部264の内側の内周面には、ピニオンギア50と歯合する内歯車261が形成される。内歯車261は、第1実施形態における内周ギア61に相当する。そして、フランジ262には、鉛直方向において下向きに突出する支持軸263が形成される。支持軸263の個数は特に限定されないが、特に等間隔であることが好ましい。なお、第2実施形態では、一例として支持軸263が4つ設けられた構成としている。
【0109】
そして、支持軸263にはそれぞれ、遊星歯車280が回転可能に支持されている。遊星歯車280は、後述する太陽歯車323と、ケース10Aの内部に設けられた内周ギア115と互いに歯合する。そして、内歯車261の中心部を中心として公転することが可能である。したがって、ピニオンギア50の回転が内歯車261に伝達されることにより内歯付キャリア260が回転し、それにともない内歯付キャリア260のフランジ262に設けられた支持軸263に回転可能に支持された遊星歯車280が回転することで、ピニオンギア50に起因する回転を増速させることが可能となる。また、遊星歯車280には段差281が設けられている。かかる段差により、他の部材との接触を回避することが可能となる。
【0110】
2−1−6<太陽歯車付ウェイトホルダ320及びウェイト340>
次に、太陽歯車付ウェイトホルダ320及びウェイト340について、
図11及び
図25を用いて説明する。太陽歯車付ウェイトホルダ320は、リング状のリング部324の外方に向かって、凸部321及び凹部322が交互に並んで形成される。
図11に示されるように、リング部324の外側の外周面には、遊星歯車280と歯合する太陽歯車323が、回転軸が凸部321の延在方向と略垂直方向を向くように設けられる。そして、それぞれの凹部322には、ウェイト340が配置される。つまり、太陽歯車付ウェイトホルダ320は、制動装置1000の組み立て時において、凸部321を境としてそれぞれの凹部322内にウェイト340を保持する部材であるとも言える。なお、ウェイト340の数は任意であるが、回転時におけるバランスの観点から等間隔であることが好ましい。なお、第2実施形態では、一例として8つのウェイト340を用いている。したがって、凸部321及び凹部322もそれぞれ8つずつ設けられている。
【0111】
第2実施形態では、各ウェイト340には、ベース70側に突起341が設けられる。かかる突起341により、ベース70と当接する際における抵抗を低減することが可能となる。突起341の数は任意であるが、第2実施形態では、一例として4つの突起341を設けている。
【0112】
また、各ウェイト340に突起341を設ける代わりに、ベース70に溝を設けることにより、ウェイト340とベース70との抵抗を低減することが可能となる。例えば、
図13に示されるように、ベース70の底部に、周囲より高さの低い溝709(
図13のリング状のハッチング部分)を設ける。そして、その上にウェイト340を配置する。このとき、ウェイト340に突起341を設けなくとも、ベース70に溝709が設けられたことにより、ウェイト340とベース70との接触面積が低減することにより、ウェイト340とベース70との抵抗を低減することが可能となる。
【0113】
ウェイト340は、ピニオンギア50に起因する回転時において、遠心力により内歯車261の中心から遠ざかる方向に移動し、ケース10Aの内周壁と当接することにより、回転に対して遠心ブレーキとして抵抗力を付与するものである。したがって、ケース10Aの内周壁、太陽歯車付ウェイトホルダ320及びウェイト340により、第1実施形態の抵抗付与部RAと同等の作用を奏することが可能となる。つまり、第2実施形態に係る制動装置1000では、運動変換部DTに相当する機構と抵抗付与部RAに相当する機構が略垂直に位置するように設けられることとなる。
【0114】
なお、制動装置1000の組み立て時においては、内歯付キャリア260と太陽歯車付ウェイトホルダ320が、プレート300を介して組み立てられる。具体的には、内歯付キャリア260の円柱部264を太陽歯車付ウェイトホルダ320のリング部324に挿入するように組み立てる。したがって、円柱部264の直径は、リング部324の直径よりもわずかに小さく設計される。
【0115】
ここで、プレート300は、遊星歯車280の傾きを防止するとともに、遊星歯車280とウェイト340の干渉を防ぐ機能を有する。なお、ウェイト340は、制動装置1000全体の厚さを薄くするために、なるべく薄く形成されることが好ましい。さらに、プレート300は、薄く形成するため金属製とするのが好ましいが、技術的に可能である場合には、プレート300を樹脂形成してもよい。この場合、太陽歯車323と一体形成としてもよい。
【0116】
2−1−7<ベース70>
次に、
図11、
図12、
図15(b)及び
図25を用いて、ベース70について説明する。
図11及び
図12に示されるように、ベース70の略中央には、周囲より嵩高くなっており、下側が凹んでいる円柱部708が設けられる。そして、
図11及び
図15(b)に示されるように、円柱部708の上面に第1ベース溝706、第1ガイド壁706A、第2ベース溝707、第2ガイド壁707Aが設けられる。
【0117】
第1ベース溝706及び第1ガイド壁706Aはそれぞれ、ケース10Aに設けられた第1天壁溝16及び第1ガイド壁16Aに相当するものである。そして、軸芯31の下端が第1ベース溝706を挿通し、その縁に形成された第1ガイド壁706Aと当接する。同様に、第2ベース溝707及び第2ガイド壁707Aはそれぞれ、ケース10Aに設けられた第2天壁溝17及び第2ガイド壁17Aに相当するものである。そして、軸芯41の下端が第2ベース溝707を挿通し、その縁に形成された第2ガイド壁707Aと当接する。
【0118】
なお、円柱部708は必須ではないが、円柱部708を設ける等して下側をへこませる
ことにより、軸芯31及び軸芯41の下端が、制動装置1000を載置する載置面と接触することを防ぎ、軸芯31及び軸芯41の下端を適切に挿通することが可能となる。
【0119】
また、ベース70は、左右の側面の両端にそれぞれ2つの第1係合板部701Aが設けられる。そして、前方の側面の両端に2つの第2係合板部701Bが設けられ、後方の側面の略中央に1つの第2係合板部701Bが設けられる。第1係合板部701Aは、ケース10Aに設けられた第1係合溝111Aと係合するものである。また、第2係合板部701Bは、ケース10Aに設けられた第2係合溝111Bと係合するものである。これにより、ケース10Aとベース70が係合され、筐体を形成する。
【0120】
さらに、
図12、
図15(b)及び
図25等に示されるように、ベース70の底面の外側には、遮蔽装置のヘッドボックス(第1実施形態における筐体106に相当)内に制動装置1000を配置するときに利用する取付筒702が設けられる。例えば、ヘッドボックス内に設けられた軸等の部材に取付筒702をはめ込むことにより、制動装置1000をヘッドボックス内にて安定して配置させることが可能となる。
【0121】
2−2<組立構成>
次に、これら各部材を組み立てた状態について、
図14〜
図18を用いて説明する。
図14は、これらの部材を組み合わせて構成された制動装置1000の組立図である。
図14に示されるように、制動装置1000の外観は、ケース10A及びベース70が接続された筐体と、ケース10Aの上方から被せるようにして配置された整列部材200からなる。かかる組立は、
図11及び
図12に示されるように、各部材同士の中心軸を上下方向に重ねあわせた状態でなされる。具体的には、内歯付キャリア260と、ウェイト340を保持した太陽歯車付ウェイトホルダ320が、プレート300を介して組み立てられる。このとき、内歯付キャリア260に設けられた遊星歯車280と、太陽歯車付ウェイトホルダ320に設けられた太陽歯車323とが互いに歯合するようにする。
【0122】
そして、スライダー220の第1天壁溝226及び第1底壁溝228に軸芯31を水平方向に移動させながらスライドさせる。このとき、ローレット240はスライダー220の内部に、ピニオンギア50はスライダー220の外部に位置するようにされる。また、第2天壁溝227及び第2底壁溝229に軸芯41水平方向に移動させながらスライドさせる。このとき、ローラ部42がスライダー220の内部に位置するようにされる。そして、内歯付キャリア260に設けられた内歯車261とピニオンギア50が互いに歯合するように、スライダー220と内歯付キャリア260が互いに近づくように相対移動させる。
【0123】
その後、これらの部材の下側にベース70を配置し、
図24に示されるように、スライダー220の突起230がケース10Aの溝118を通るようにしてケース10Aを上方から被せる。このとき、スライダー220に設けられたコイルスプリングSPがケース10Aの内周壁と当接し、スライダー220が前方に付勢され、突起230が支持溝114から抜け落ちないことを確認する。そして、ケース10Aに設けられた第1係合溝111A及び第2係合溝111Bと、ベース70に設けられた第1係合板部701A及び第2係合板部701Bを互いに係合させ、ケース10Aとベース70を固定する。
【0124】
最後に、ケース10A及びベース70で構成される筐体の上方から、整列部材200を被せる。そして、整列部材200に設けられた爪部209を、ケース10Aに設けられた係合孔19と係合させ、整列部材200とケース10Aを固定する。
【0125】
このようにして組み立てられた制動装置1000が、
図14に示されるものである。そして、制動装置1000の組立が完了すると、1本目のコードCDが整列部材200の前方壁部205の外側であり第1前方溝201の上方に位置するように配置される。そして、2本目のコードCDが整列部材200の第1前方コード挿入部201Aを介して第1前方溝201に挿通される。そして、3本目のコードCDが第2前方コード挿入部202Aを介して第2前方溝202に挿通される。
【0126】
そして、これらのコードCDがケース10Aの前後に設けられたガイド溝113及びスライダー220の前後に設けられた貫通孔225に通される。
【0127】
そして、かかるコードCDのうち、1本目のコードCDが、整列部材200の後方壁部206の外側であり第1後方溝203の上方に位置するように通される。そして、2本目のコードCDが、整列部材200の後方壁部206に設けられた第1後方コード挿入部203Aを介して第1後方溝203から外部に通される。そして、3本目のコードCDが、第2後方コード挿入部204Aを介して第2後方溝204から外部に通される。これにより、
図14(a),(b)に示される状態となる。
【0128】
図14(c)は、制動装置1000の左側面図、つまり、
図14(a)の矢印X方向から見た側面図である。
図14(c)に示されるように、制動装置1000は、側面視において、上側からケース10A、整列部材200、ベース70が視認されることとなる。また、支持溝114により突起230が支持されていることが伺える。
【0129】
図15(a)に示されるように、制動装置1000は、その平面視において、中心から順にケース10A、整列部材200、ベース70の一部の順に視認できる。ここで、
図14(a),(b)及び
図15(a)に示されるように、軸芯31の上端が、スライダー220に設けられた第1天壁溝226からケース10Aに設けられた第1天壁溝16を挿通し、ケース10Aの外部に露出している。同様に、軸芯41の上端が、スライダー220に設けられた第2天壁溝227からケース10Aに設けられた第2天壁溝17を挿通し、ケース10Aの外部に露出している。
【0130】
そして、第1天壁溝16の縁に設けられた第1ガイド壁16Aが軸芯31と当接し、第2天壁溝17の縁に設けられた第2ガイド壁17Aが軸芯41と当接している。
【0131】
また、
図15(b)に示されるように、ベース70は、その底面視において、第1ベース溝706に挿通された軸芯31の下端と、第2ベース溝707に挿通された軸芯41の下端を視認することができる。なお、取付筒702が設けられる面において、円柱部708の上を面で覆うことにより、軸芯31及び軸芯41の下端が外部から覆われる構成としてもよい。
【0132】
2−2−2<組立状態における内部構造>
次に、
図16〜
図18を用いて、組立状態における内部構造について説明する。
図16は、
図14の状態から整列部材200及びケース10Aを取り外した状態における斜視図である。
図16に示されるように、スライダー220の上方に軸芯31及び軸芯41が突出している。また、軸芯31は、第1天壁溝226内においてスライダー220の幅方向に動きが規制される。同様に、軸芯41は、第2天壁溝227内においてスライダー220の幅方向に動きが規制される。なお、図示を省略しているコードCDは、スライダー220の貫通孔225に縦に整列された状態でスライダー220の前後方向に挿通される。
【0133】
図17は、
図16の状態からさらにスライダー220を取り外した状態における斜視図である。図示を省略したコードCDは、ローレット240及びローラ部42に挟着された状態で、制動装置1000の前後に挿通される。また、ピニオンギア50と内歯車261は互いに歯合している。したがって、コードCDに張力がかかったときに、コードCDとローレット240の間で摩擦力が発生し、それによりローレット240と一体となってピニオンギア50が回転すると、ピニオンギア50の回転が内歯車261に伝達される。その結果、内歯車261が自転することにより、内歯付キャリア260とともにそのフランジ262に設けられる支持軸263も公転する。それに伴い、支持軸263に回転可能に支持される遊星歯車280が自転しながら公転を開始する。
【0134】
図18は、
図17の状態からさらに内歯付キャリア260を取り外した状態における斜視図である。
図18に示されるように、遊星歯車280と太陽歯車323は互いに歯合している。したがって、遊星歯車280の回転が太陽歯車323に伝達され、太陽歯車付ウェイトホルダ320が自転を開始する。その結果、
図25に示されるように、太陽歯車付ウェイトホルダ320の凹部322に保持されたウェイト340が自転を開始する。そして、回転速度がある一定値を上回ると、遠心力によりウェイト340がケース10Aの内壁と当接する。これにより、ローレット240の回転に対して抵抗力が与えられる。
【0135】
次に、
図26及び
図27を用いて、組立状態における各部材間の相対位置についてさらに詳細に説明する。
図26は、
図14(c)のA−A線切断部断面図である。
図26に示されるように、軸芯31を中心とするピニオンギア50と、内歯付キャリア260に設けられる内歯車261とが互いに歯合している。また、内歯車261の回転は、内歯付キャリア260の支持軸263を介して遊星歯車280に伝達されるように構成される。そして、遊星歯車280は、太陽歯車付ウェイトホルダ320に設けられた太陽歯車323及びケース10Aの内部に設けられた内周ギア115と互いに歯合する。したがって、ピニオンギア50に起因する回転が加えられることにより、遊星歯車280は太陽歯車323と内周ギア115の間に形成される空間内を、内歯車261の中心部を中心として公転することが可能となる。
【0136】
図27は、
図15(a)のB−B線切断部断面図である。
図27に示されるように、第2実施形態では、B−B線切断部断面図は取付筒702を中心として略左右対称となっている。そして、軸芯31及び軸芯41がケース10Aの上端及びベース70の下端から突出している。なお、第2実施形態では、第1ガイド壁16A及び第2ガイド壁17Aの上端が、それぞれ軸芯31及び軸芯41の上端と略同じ高さとなっている。
【0137】
そして、ローレット240及びローラ部42がスライダー220の内部に位置している。さらに、ローレット240とともにスライダー220を挟んだ状態で、ピニオンギア50がスライダー220の外部に位置している。また、ピニオンギア50と内歯車261が互いに歯合している。
【0138】
そして、ケース10Aの上側から鍔部13にかけて、整列部材200で覆われている。また、ケース10Aはその下端においてベース70と係合している。そして、ベース70の上部には、ウェイト340が保持されている。ここで、第2実施形態では、ウェイト340を着脱式としているので、必要な制動力をウェイト340の数又は種類により調整することが可能となる。つまり、大きな制動力が求められる場合にはウェイト340の数を増やしたり、他のより密度の高いウェイトを太陽歯車付ウェイトホルダ320に保持すればよい。一方、小さな制動力で十分な場合には、ウェイト340の数を減らせばよい。なお、ウェイト340は、回転時における安定性の観点から、太陽歯車付ウェイトホルダ320に保持される面上において対称配置することが好ましい。なお、本実施形態では、ウェイト340に設けられた突起341とベース70の底面が当接することにより、回転時におけるウェイト340とベース70との間の抵抗力を低減している。
【0139】
2−3<動作>
次に、
図28を用いて第2実施形態に係る制動装置1000の動作について説明する。
図28(a)はコードCDに何ら張力が与えられない状態(定常状態)、
図28(b)はコードCDに張力が与えられ、ローレット240及びローラ部42でコードCDが挟着された状態(挟着状態)、
図28(c)は
図28(a)から
図28(b)へ状態変化する際における各部材の回転方向をまとめた図である。なお、
図28(a),(b)はともに、
図26と同様に、
図14(c)のA−A線切断部断面図である。ここで、説明の都合上、かかる断面図には現れないローラ部42の外周を軸芯41の周囲に、ローレット240の外周を軸芯31の周囲に重ねて表示した。なお、ローレット240の外周は厳密には円形ではないが、説明の簡略化のため、円形に近似して図示している。
【0140】
図28(a)に示されるように、定常状態において、上記のように、コイルスプリングSPは、ケース10Aの後方の内壁と当接し、スライダー220を前方に押圧する。したがって、スライダー220はケース10Aの前方に位置する。このため、スライダー220の第1天壁溝226及び第1底壁溝228により位置が規制されている軸芯31と、第2天壁溝227及び第2底壁溝229により位置が規制されている軸芯41と、がスライダー220とともに前方に移動する。さらに、スライダー220の上部に保持されるケース10Aに設けられた第1天壁溝16と第2天壁溝17は、前方に向かうにつれて互いに距離が小さくなっている。同様に、ベース70に設けられた第1ベース溝706及び第2ベース溝707は、前方に向かうにつれて距離が小さくなっている。したがって、軸芯41に回転可能に支持されるローラ部42と、軸芯31に回転可能に支持されるローレット240との距離も小さくなる。つまり、第1天壁溝16及び第1ベース溝706は、ローレット240の軸芯31が移動可能に嵌合し、ローレット240が溝に沿わない動きをすることを規制する規制溝として機能する。同様に、第2天壁溝17及び第2ベース溝707は、ローラ部42の軸芯41が移動可能に嵌合し、ローラ部42が溝に沿わない動きをすることを規制する規制溝として機能する。また、第1天壁溝16及び第1ベース溝706は、内歯付キャリア260の内周面の中心点と平面視において同心円上に形成されるため、軸芯31がそれぞれの溝内を移動しても、ピニオンギア50は内歯付キャリア260に設けられた内歯車261に歯合し続けることができる。
【0141】
このように、ローレット240とローラ部42との距離が小さくなると、ローレット240はローラ部42に押圧され、ローレット240とローラ部42でコードCDが狭持される。つまり、第2実施形態では、コイルスプリングSPは、ローレット240がローラ部42に押圧されるように、ローレット240を常時付勢する付勢部材としても機能する。
【0142】
そして、定常状態の制動装置1000において、コードCDに矢印D1の向き(前方)に張力を与えたとする。すると、コードCDとの間に生じる摩擦力により、ローレット240が反時計回りに、ローラ部42が時計回りに回転する。そして、ローレット240の回転により、同じ軸芯31を共有して固定されているピニオンギア50もローレット240と同じ向き(反時計周り)に回転(自転)する。この際、
図28(b)に示されるように、軸芯31及び軸芯41は、平面視において前方に移動し、ケース10Aの第1天壁溝16の挟着案内斜面16a及び第2天壁溝17の挟着案内斜面17aにそれぞれ案内されることで左右方向において互いに近接して、ローレット240とローラ部42によるコードCDの挟着力が強くなり、コードCDの移動に応じてローレット240が確実に回転するようになる。すると、ピニオンギア50は内歯車261と歯合しているので、ピニオンギア50の歯から与えられる力により、内歯車261が反時計周りに回転(自転)する。これにより、内歯車261とともに内歯付キャリア260も反時計周りに回転(自転)するので、内歯付キャリア260に設けられた遊星歯車280も同様に反時計周りに回転(公転)する。ここで、遊星歯車280は太陽歯車323及びケース10Aにより固定された内周ギア115と互いに歯合しているので、公転方向とは逆向き(時計回り)に自転しつつ、反時計周りに公転することとなる。したがって、遊星歯車280の内側で遊星歯車280と歯合する太陽歯車323は、遊星歯車280の自転と逆向き(反時計周り)に回転(自転)する。このとき、遊星歯車280により、太陽歯車323の回転は増速される。これにより、太陽歯車323とともに回転する太陽歯車付ウェイトホルダ320に保持されるウェイト340も回転を開始する。なお、すでに述べた通り、遊星歯車280の外側で遊星歯車280と歯合する内周ギア115は、ケース10Aとベース70が固定されているため、遊星歯車280の回転時においても回転しない。
【0143】
そして、
図28(b)に示されるように、ローレット240とローラ部42が限界まで近づく(挟着状態)と、ローレット240の自転は続くもののローレット240の内歯車261に沿った移動が停止する。このとき、ローレット240の自転に起因した他の部材の回転は継続される。すると、遠心力によりウェイト340がケース10Aの内周壁に当接することにより、回転に対して抵抗力が生じる。つまり、コードCDの移動速度が上昇することで回転速度が上昇し、これにより遠心力が上昇する。そして、遠心力が上昇することによりウェイト340がケース10Aの内周壁により強く当接することになり、抵抗力が上昇する。これにより、コードCDの移動速度(日射遮蔽部材の落下速度)を抑えることができる。ここで、コードCDに加えられる張力が略一定の場合(例えば、第1実施形態の
図10において、制動装置1000の前方側のコードCDに昇降可能に吊持される日射遮蔽部材が自由落下する場合)には、コードCDに加えられる張力とウェイト340とケース10Aの内周壁による抵抗力が釣り合うところで、コードCDの移動速度が略一定となる。したがって、制動装置1000は、コードCDの移動に対する回転ダンパとして機能し、日射遮蔽部材をゆっくりと降下させることが可能となる。
【0144】
以上説明した、定常状態から挟着状態までの挟着状態の変化について、各部材の回転方向(ピニオンギア50については、さらに平面視における前後方向及び締め付け方向も含む)をまとめたものが
図28(c)である。
【0145】
一方、コードCDに矢印D1と逆向き(後方)に張力を与えた場合には、ローレット240及びローラ部42が上記と逆向きに回転する。その結果、軸芯31及び軸芯41が第1天壁溝16の解除案内斜面16b及び第2天壁溝17の解除案内斜面17bにそれぞれ案内されることで、互いに離間するように移動する。すると、コードCDに対するローレット240の挟着力が弱まり、弱い力でコードCDを引っ張ることが可能となる。したがって、
図10に示されるように、ヘッドボックス内に制動装置1000を設ける場合には、
図28において前方にコードCDに張力が加わる向きを日射遮蔽部材の下降する向きとし、後方にコードCDに張力が加わる向きを日射遮蔽部材の上昇する向きとすると好適である。
【0146】
次に、
図29を用いて、定常状態及び挟着状態の状態変化の際におけるスライダー220の移動について説明する。
図29(a)が
図28(a)に、
図29(b)が
図28(b)にそれぞれ対応する。
【0147】
図29(a)の定常状態から
図29(b)の挟着状態に変化するとき、軸芯41とローラ部42、及び、軸芯31とローレット240は、コードCDとの摩擦力により図中の前方に移動する。このとき、軸芯41が第2天壁溝227及び第2底壁溝229と当接していることにより、軸芯41の前方への移動に伴って、第2天壁溝227及び第2底壁溝229に対して前方へ力が加わる。また、軸芯31が第1天壁溝226及び第1底壁溝228と当接していることにより、軸芯31の前方への移動に伴って、第1天壁溝226及び第1底壁溝228に対して前方へ力が加わる。したがって、軸芯31,41が前方にΔ移動すると、スライダー220も前方にΔ移動する。
【0148】
なお、第2実施形態では、ウェイト340が太陽歯車付ウェイトホルダ320に保持されることとしたが、ウェイト340の保持の方法はこれに限定されない。例えば、ウェイト340が内歯付キャリア260に保持されることとしてもよい。この場合、遊星歯車280、プレート300及び太陽歯車付ウェイトホルダ320は省略することができる。なお、遊星歯車280を省略することにより、太陽歯車323、太陽歯車付ウェイトホルダ320及びウェイト340の回転に対する増速効果は得られなくなる。
【0149】
以上説明したように、第2実施形態に係る制動装置1000は、コードと挟着体が一方向に相対移動するときコードを挟着体が挟着し、他方向へ相対移動するときコードが非屈曲状態で解除されるよう挟着状態が変化するよう構成された制動装置と言うことができる。ここで、コードが解除されるとは、コードの移動を許容する状態のことであり、コードと挟着体の接触・非接触を問わない。
【0150】
以上説明した通り、第2実施形態の制動装置1000は、コードの移動を他の部材の運動に変換する運動変換部を備え且つコードの移動を制動する制動装置であって、前記運動変換部は、前記コードを挟着する挟着体を備え、前記挟着体は、前記コードと前記挟着体が一方向に相対移動するとき前記コードを挟着し、前記コードと前記挟着体が他方向へ相対移動するとき前記コードが非屈曲状態で解除されるように挟着状態が変化するように構成される、制動装置であると言うことができる。
【0151】
さらに、制動装置1000は、前記コードが前記一方向に相対移動するときに、前記コードの移動に伴って抵抗力を発生させる抵抗付与部を備える。
【0152】
さらに、制動装置1000の挟着体は、前記コードに接触可能な位置に設けられ且つ予め定められた範囲を移動可能なローラと、前記ローラと前記コードを挟んで位置する挟着部材と、を備え、前記ローラは、前記コードと前記ローラが一方向に相対移動するときに第1位置に移動し、前記コードと前記ローラが他方向へ相対移動するときに第2位置に移動するように構成される。
【0153】
さらに、制動装置1000は、前記ローラが前記第1位置に位置するとき、前記コードを前記ローラが挟着し、前記ローラが前記第2位置に位置するとき、前記コードが非屈曲状態で解除されるように構成される。
【0154】
さらに、制動装置1000は、前記ローラが前記第2位置に位置するときに前記ローラと前記コードとの間に作用する摩擦力が、前記ローラが前記第1位置に位置するときに前記ローラと前記コードとの間に作用する摩擦力よりも小さくなるように前記ローラが移動するように構成される。
【0155】
さらに、制動装置1000は、前記ローラが前記第1位置に位置するときに前記コードの移動に起因する前記ローラの回転を前記抵抗付与部に出力し、前記ローラが前記第2位置に位置するときに前記コードの移動に起因する前記ローラの回転を前記抵抗付与部に出力しないように構成される。
【0156】
<作用・効果>
第2実施形態に係る制動装置1000により、以下のような作用・効果を得ることができる。
(1)コードCDの自由移動時において屈曲しない(非屈曲)ために、屈曲抵抗が小さくなり、よりスムーズにコードCDが移動することが可能になる。
(2)挟着体(ローレット240及びローラ部42)の変位により、挟着体とコードCDの間に作用する摩擦力を変化させることで、コードCDが非屈曲状態で解除される。
(3)挟着体(ローレット240及びローラ42部)の変位により、コードCDの移動に起因する回転を抵抗付与部RAに伝達するか否かが切り替わることで、コードCDが非屈曲状態で解除される。
(4)引き操作時において操作力を低減し、自動動作(自動降下)時に確実にコードCDを挟着し、意図しない落下を防止することができる。
(5)コードCDに前方へ張力が与えられる場合には、ローレット240及びローラ部42が互いに近接するように移動することにより、コードCDを強く挟着することができ、ローレット240を確実に回転させ、回転をピニオンギア50に伝えることができる。
(6)コードCDに後方へ張力が与え得られる場合には、ローレット240及びローラ部42が互いに離間するように移動することにより、コードCDへの挟着力を弱め、コードCDの自由移動を許可することができる。
(7)筐体(ケース10A及びベース70)に設けられた規制溝により、ローレット240及びローラ部42が意図しない向きに移動することを防止することができる。
(8)スライダー220を浮き状態で保持することにより、抵抗力を低減し、部材の消耗を抑えることができる。
(9)ケース10Aの内部に波形部116や段差117を設けたことにより、摩擦抵抗を低減することができる。
(10)ウェイト340に設けた突起341により、抵抗力を低減することができる。
(11)プレート300により遊星歯車280の傾きを防止するとともに、遊星歯車280とウェイト340の干渉を防ぐことができる。
(12)第1ガイド壁16A及び第2ガイド壁17Aにより、軸芯31及び軸芯41からの圧力でケース10Aが削れることを防止することが可能となる。
(13)ピニオンギア50に段差51を設けたことで、ピニオンギア50とスライダー220との間の摺動抵抗を低減することができる。
(14)ウェイト340を着脱式としているので、必要な制動力をウェイト340の数又は種類により調整することが可能となる。
(15)運動変換部DTに相当する機構と抵抗付与部RAに相当する機構が略垂直に位置するように配置されることにより、制動装置1000全体の平面視における面積を低減することが可能となる。
【0157】
3.第3実施形態
次に、
図30〜
図37を用いて、第3実施形態に係る制動装置4000を説明する。本実施形態の制動装置4000は、
図30に示すように、運動変換部DT及び抵抗付与部RAが軸芯31によって接続された構成となっている。以下、本実施形態の概略を説明する。
【0158】
まず、運動変換部DTについて、
図30、
図31及び
図32(b)の各図に示すように、挟着体の一対の挟着部材は、張力伝達ローラ30と、固定部材440に形成された斜面441とによって構成される。すなわち、本実施形態では、挟着部材は片方のみが移動可能に構成される。また、張力伝達ローラ30の回転は、
図30及び
図32に示すように、軸芯31を介して平ギア450、小ギア460及び大ギア461からなる増速ギア462、ウォームギア470に順次伝達される。そして、ウォームギア470の回転が抵抗付与部RAとしての遠心ブレーキ480に伝達されることで、張力伝達ローラ30に制動力が加わることになる。なお、平ギア450、増速ギア462、ウォームギア470及び遠心ブレーキ480は、固定部材440と隣接する位置において、内部空間Sを有する筐体490によって覆われている。
図30の紙面手前方向、
図31の下方向及び
図32(a),(b)の左方向が、上述した実施形態の前方向に対応する。
【0159】
本実施形態において、固定部材440は、
図30及び
図32(b)に示すように、略直方体の部材であり、例えば遮蔽装置のヘッドボックス等に固定される。固定部材440の上部には、
図32(b)に示すように斜面441が形成される。そして、斜面441の上面は、
図30に示すように、3本のコードCDを位置決めするため、コードCDの延在する方向に延びる3本の溝442a〜442cが形成される。
【0160】
一方、張力伝達ローラ30は、
図30に示すように、第2実施形態のものと同様に軸芯31とローレット240を備え、軸芯31を介して保持部材としてのスライダー420に保持される。
【0161】
スライダー420は、平行な一対の板状支持部421及びこれらを後方で接続する後壁423を備えた略コの字状をなし(
図31参照)、固定部材440の上面440aに斜面441を跨ぐように配置されており、固定部材440の上面440aに沿ってコードCDの延在する方向に平行移動が可能になっている。すなわち、本実施形態においては、固定部材440の上面440aがスライダー420をガイドするガイド部として機能する。一対の板状支持部421には、それぞれ軸芯31を回転可能に保持する貫通孔422が形成される。また、
図32(b)に示すように、スライダー420の後壁423に形成された保持溝423aと固定部材440の後方位置に固定された壁部443との間には、付勢部材としてのコイルスプリングSPが配置されており、スライダー420は前方(
図31の下方向、
図32(b)の左方向)に向かって付勢されている。
【0162】
また、スライダー420は、
図30及び
図32(b)に示すように、固定部材440の上方に形成される天壁444により上方側の位置規制がされており、天壁444には、下方に突出してスライダー420の後壁423と係合することでスライダー420が前方へ抜けることを防止する突起445が形成される。また、
図32(b)に示すように、天壁444には開口部444aが形成され、スライダー420の後壁423の当該開口部444aと対応する位置には、後壁423から上方へ突出する突出部423bが形成されており、スライダー420を固定部材440、壁部443及び天壁444によって形成される収容空間SSに収容された状態で、外部からスライダー420を操作してコードCDを張力伝達ローラ30と斜面441の間に通す等の操作を行うことができる。
【0163】
次に、
図30及び
図32(a)に示すように、張力伝達ローラ30の回転に伴って回転する軸芯31には、平ギア450が取り付けられている。軸芯31は、筐体490の固定部材440側の壁面491に形成される長孔491a(
図31及び
図35参照)を貫通するよう配置され、張力伝達ローラ30、軸芯31及び平ギア450は長孔491a(
図31及び
図35参照)の範囲内において、スライダー420の前後方向の移動に伴って前後方向に一体となって移動可能となっている(
図35参照)。平ギア450のギア歯450aは、これより径の小さい増速ギア462の小ギア460のギア歯460aと噛み合うことが可能となっている。また、小ギア460と大ギア461は、筐体490の固定部材440側の壁面491及びこれと対向する壁面492にそれぞれ形成される支持穴493,494に回転可能に支持される回転軸463を中心に、一体回転するよう構成される。大ギア461は、平ギア450と略同一の径を有し、ウォームギア470と常時噛み合うよう配置される。
【0164】
ウォームギア470は、増速ギア462の大ギア461の左右方向(
図30の左右方向)を軸とする回転を上下方向を軸とする回転に変換して中心軸471に伝達するよう構成される。中心軸471の一端は筐体490の下方支持部495に回転可能に支持され、中心軸471の他端は遠心ブレーキ480の円筒ケース481の上方支持部482に回転可能に支持される。また、中心軸471には、円筒ケース481内において遠心ブレーキ480の回転体483が相対回転不能に取り付けられる。
【0165】
遠心ブレーキ480は、
図33に示すように、円筒ケース481内において回転体483を備える。回転体483は、中心軸471に固定される中央部484と、中央部から径方向外側に延びる一対の腕部485と、当該腕部485の縁部から円周方向に延びる弾性変形部486と、遠心拡径部487と、を備え、中心軸471の回転に伴って回転するものである。そして、遠心ブレーキ480は、中心軸471の回転が遅い場合には、遠心拡径部487と円筒ケース481との間に隙間488があるため、中心軸471に加わる制動トルクは小さく、中心軸471の回転が早くなった場合に、遠心拡径部487に加わる遠心力が大きくなり、弾性変形部486が変形して遠心拡径部487の外周面487aが円筒ケース481の内周面481aに擦れることによって発生する制動トルクが大きくなる構成となっている。なお、制動トルクの大きさは、弾性変形部486の弾性力及び隙間488の大きさを変えることによって調整可能である。
【0166】
以上のような構成により、コードCDに張力が与えられない状態(定常状態)においては、ローレット240はスライダー420を介してコイルスプリングSPによってコードCDを斜面441の溝442a〜442cに近づくよう付勢される。その結果、張力伝達ローラ30(ローレット240)及び斜面441の溝442a〜442cがコードCDを狭着する状態となるとともに、
図35(a)に示すように、平ギア450が増速ギア462の小ギア460と噛み合って、張力伝達ローラ30の回転が抵抗付与部RA(遠心ブレーキ480)に伝達可能な状態(出力状態)となる。この状態でコードCDが前方(
図34の左方向)に移動すると、コードCDの移動がローレット240に伝達し、抵抗付与部RAによってコードCDに抵抗が与えられることになる。
【0167】
一方、コードCDが後方(
図34の右方向)に移動すると、
図34(b)に示すように、張力伝達ローラ30(ローレット240)は回転しつつもコードCDの移動に伴ってコードCDと同じ方向に移動し、これにより軸芯31を介してスライダー420もコイルスプリングSPの付勢力に抗して後方へ移動する。すると、
図35(b)に示すように、平ギア450が増速ギア462の小ギア460と噛み合わなくなって、張力伝達ローラ30の回転が抵抗付与部RA(遠心ブレーキ480)に伝達できない状態(解除状態)となる。さらに、斜面441は後方に向かうにつれて下方に傾斜しているため、張力伝達ローラ30と固定部材440の斜面441の溝442a〜442cとの間隔が広がり、コードCDの狭着が弱まって、張力伝達ローラ30を介した抵抗付与部のコードCDへの抵抗の付与がなくなる。このように、ギアの噛み合いがなくなる構成と、狭着体によるコードCDの狭着が弱まる構成の2つの構成によって、コードCDを他端方向へ移動させる場合にはコードCDに抵抗力がかからず、コードCDを容易に移動させることができる。
【0168】
つまり、制動装置4000は、張力伝達ローラ30が解除状態における位置(第2位置)に位置するときに張力伝達ローラ30とコードCDとの間に作用する摩擦力が、張力伝達ローラ30が出力状態における位置(第1位置)に位置するときに張力伝達ローラ30とコードCDとの間に作用する摩擦力よりも小さくなるように張力伝達ローラ30が移動する。
【0169】
また、制動装置4000は、張力伝達ローラ30が第1位置に位置するときにコードCDの移動に起因する張力伝達ローラ30の回転を抵抗付与部RAに出力し、張力伝達ローラ30が第2位置に位置するときにコードCDの移動に起因する張力伝達ローラ30の回転を抵抗付与部RAに出力しないように構成される。
【0170】
<第3実施形態の変形例1>
なお、狭着体の構成について、斜面441によって張力伝達ローラ30と対向する挟着部材を構成することに代えて、
図36に示すように、斜面441の代わりに固定部材440に回転可能に固定された固定ローラ446を用いることも可能である。この場合も、
図36(a)に示す狭着状態では、コードCDは狭着され、ギアも噛み合っていることから、コードCDの前方(左方向)への移動に対しては抵抗付与部RAへ回転が伝達してコードに制動力が加わる。一方、コードCDを後方に移動させた際には、
図36(b)に示すように、スライダー420が後方へ移動することで張力伝達ローラ30と固定ローラ446間の距離が広がって狭着力が弱まり、同時に、
図35(b)に示すように、ギアの噛み合いがなくなって張力伝達ローラ30の回転が抵抗付与部RAに伝達できない状態となる。従ってこの場合も、ギアの噛み合いがなくなる構成と、狭着体によるコードCDの狭着が弱まる構成の2つの構成を備えているといえる。
【0171】
つまり、第3実施形態の変形例1に係る制動装置4000は、張力伝達ローラ30が解除状態における位置(第2位置)に位置するときに張力伝達ローラ30とコードCDとの間に作用する摩擦力が、張力伝達ローラ30が出力状態における位置(第1位置)に位置するときに張力伝達ローラ30とコードCDとの間に作用する摩擦力よりも小さくなるように張力伝達ローラ30が移動する。
【0172】
また、第3実施形態の変形例1に係る制動装置4000は、張力伝達ローラ30が第1位置に位置するときにコードCDの移動に起因する張力伝達ローラ30の回転を抵抗付与部RAに出力し、張力伝達ローラ30が第2位置に位置するときにコードCDの移動に起因する張力伝達ローラ30の回転を抵抗付与部RAに出力しないように構成される。
【0173】
<第3実施形態の変形例2>
さらに、張力伝達ローラ30と対向する挟着部材として、
図37に示すように、前後方向に水平に設けられた同一形状の2つのローラ447,448に巻回されたベルト449を用いることも可能である。この形態の場合は、上述の例と異なり、
図37(a)に示すような定常状態又はコードCDが前方に引かれてスライダー420が前方にある状態であっても、
図37(b)に示すようなコードCDが後方に引かれてスライダー420が後方にある状態であっても、張力伝達ローラ30とベルト449の間の距離(一対の狭着部材間の距離)は同じであり、狭着体による狭着力は変化しない構成となっている。この形態の場合は、
図35(b)に示すように、ギアの噛み合いがなくなることによって、張力伝達ローラ30の回転が抵抗付与部RAに伝達できない状態となる。
【0174】
つまり、第3実施形態の変形例2に係る制動装置4000は、張力伝達ローラ30が第1位置に位置するときにコードCDの移動に起因する張力伝達ローラ30の回転を抵抗付与部RAに出力し、張力伝達ローラ30が第2位置に位置するときにコードCDの移動に起因する張力伝達ローラ30の回転を抵抗付与部RAに出力しないように構成される。
<作用・効果>
第3実施形態に係る制動装置4000により、以下のような作用・効果を得ることができる。
(1)コードCDの自由移動時において屈曲しない(非屈曲)ために、屈曲抵抗が小さくなり、よりスムーズにコードCDが移動することが可能になる。
(2)張力伝達ローラ30の変位により、張力伝達ローラ30とコードCDの間に作用する摩擦力を変化させることで、コードCDが非屈曲状態で解除される。
(3)張力伝達ローラ30の変位により、コードCDの移動に起因する回転を抵抗付与部にRA伝達するか否かが切り替わることで、コードCDが非屈曲状態で解除される。
(4)引き操作時において操作力を低減し、自動動作(自動降下)時に確実にコードCDを挟着し、意図しない落下を防止することができる。
【0175】
4.第4実施形態
次に、
図38〜
図40を用いて、本発明の第4実施形態に係る運動変換部について説明する。
図38に示されるように、第4実施形態では、ローレット240及びローラ部42が、それぞれの軸芯31及び軸芯41を介して連結される。ここで、かかる連結方法は任意であり、例えば、
図38(a)に示されるように、一対のプレート800を用いてもよい。ここで、第4実施形態では、プレート800は略矩形であり、例えば金属製のプレート800を用いることができる。また、プレート800の軸芯31及び軸芯41に対応する箇所には貫通孔801が設けられ、軸芯31及び軸芯41を貫通孔801に挿入することによりローレット240とローラ部42を連結することができる。なお、紐状部材900を用いる場合、
図39に示されるように、コードCDの移動時においてローレット240とローラ部42が逆向きに回転するため、紐状部材900をクロスする構成としている。ここで、
図39は、
図38(b)の部材がコードCDを挟着する状態を矢印Z方向から見た模式図である。
【0176】
また、
図38(b)に示されるように、プレート800に代えて、紐状部材900を用いてローレット240とローラ部42を連結してもよい。
【0177】
そして、
図40に示されるように、かかる部材は、ケース10Bの内部において、ローレット240とローラ部42の間にコードCDを挟むように設けられる。ここで、
図40においては、視認性の向上のため、
図38(b)における紐状部材900を利用する態様を用いて説明する。また、
図40の矢印gで示される方向に重力gが作用するものとする。説明の便宜上、矢印gの方向を下向きとし、矢印gと逆向きを上向きとする。
【0178】
また、ケース10Bには、軸芯31に対応する位置に第1側壁孔119Aが設けられる。第1側壁孔119Aは、前方に向けて傾斜する長円形である。なお、これらの形状は特に限定されず、適宜設計することができる。
【0179】
軸芯31は第1側壁孔119Aに沿って移動可能である。つまり、ローレット240は、コードCDに接触可能な位置に設けられ且つ鉛直方向に移動可能なローラである。ここで、第1側壁孔119Aには、挟着案内斜面119a、解除案内斜面119b、挟着側規制面119c及び解除側規制面119dにより内周面が形成される。
【0180】
また、ケース10Bの内部には、コードCDを挟んでローレット240と対向し且つローレット240よりも前方の位置に、支柱92が固定されている。
【0181】
まず、
図40(a)に示される状態から、コードCDに矢印D2方向へ張力を与えると、コードCDとの間に生じる摩擦力により、ローレット240が矢印D3の向きに第1側壁孔119Aに沿って下方に移動する。
図40(b)に示されるように、かかる位置を、鉛直成分を有する可動方向の下側の位置である第1位置とする。かかる状態においては、ローレット240と支柱92の鉛直方向における距離が小さいので、コードCDが屈曲し、挟着状態となる。つまり、支柱92は、ローレット240とコードCDを挟んで位置する挟着部材として機能する。また、ローラ部42は、ローレット240と連動して移動する補助ローラとして機能する。
【0182】
ここで、挟着状態において、軸芯31が可動範囲の前方限界まで到達すると、略平行移動していたローレット240が回転(図中における時計回り)を開始する。そして、第3実施形態と同様に、軸芯31の回転を、コードCDの移動に伴って抵抗力を発生させる抵抗付与部RAに出力することとしてもよい。このとき、コードCDが前方に移動するときには回転が抵抗付与部RAに伝達されるが、コードCDが後方に移動するときには回転が抵抗付与部RAに伝達されないように、ローレット240、又は、ローレット240と抵抗付与部RAの間にワンウェイクラッチを設けてもよい。ここで、抵抗付与部RAはケース10Bの内部又は外部に設けられてもよく、ローレット240内部に設けられてもよい。
【0183】
一方、コードCDに矢印D2と逆向きに張力を与えると、上記動作と逆向きの動作が生じることにより、ローレット240と支柱92の鉛直方向における距離が離間し、コードCDに対する挟着力が弱まることとなる。
【0184】
そして、
図40(a)に示されるように、軸芯31は、重力gに逆らい、第1側壁孔119Aの鉛直成分を有する可動方向(
図40における斜め方向)の上側の位置である第2位置に移動する。かかる状態を自由移動状態と言う。自由移動状態において、コードCDが非屈曲状態で解除される。そして、コードCDの自由移動を許可することができる。
【0185】
なお、軸芯31及びローレット240と、軸芯41及びローラ部42に変えて、回転しない支柱を用いることもできる。
【0186】
つまり、第4実施形態に係る部材を用いた装置は、コードの移動を他の部材の運動に変換する運動変換部を備えるダンパであって、運動変換部は、コードを挟着する挟着体を備え、挟着体は、コードと挟着体が一方向に相対移動するときコードを挟着し、コードと挟着体が他方向へ相対移動するときコードが非屈曲状態で解除されるように挟着状態が変化するように構成される、ダンパと言うことができる。ここで、コードが解除されるとは、コードの移動を許容する状態のことであり、コードと挟着体の接触・非接触を問わない。
【0187】
また、第4実施形態に係るダンパは、ダンパの接地面に対して鉛直成分を有する可動方向に移動可能に構成されたローラを備え、ローラが可動方向の下側の位置である第1位置に位置するときに、ローラと挟着部材とでコードを挟着し、ローラが可動方向の上側の位置である第2位置に位置するときに、コードが非屈曲状態で解除されるように構成される。
【0188】
なお、第1位置及び第2位置は絶対的に定義されるものではなく、鉛直方向において第1位置よりも相対的に高い位置を第2位置としてもよい。さらに、軸芯41及びローラ部42は、必要に応じて省略することができる。
【0189】
さらに、第4実施形態に係る部材を用いた装置は、ローレット240が第2位置に位置するときにローレット240とコードCDとの間に作用する摩擦力が、ローレット240が第1位置に位置するときにローレット240とコードCDとの間に作用する摩擦力よりも小さくなるようにローレット240が移動するように構成される。
【0190】
また、第3実施形態と同様に、軸芯31の回転を、コードCDの移動に伴って抵抗力を発生させる抵抗付与部RAに出力する場合、第4実施形態に係る部材を用いた装置は、ローレット240が第1位置に位置するときにコードCDの移動に起因するローレット240の回転を抵抗付与部RAに出力し、ローレット240が第2位置に位置するときにコードCDの移動に起因するローレット240の回転を抵抗付与部RAに出力しないように構成される。
【0191】
<作用・効果>
上記のような構成とすることで、以下の作用・効果を得ることができる。
(1)コードCDの自由移動時において屈曲しない(非屈曲)ために、屈曲抵抗が小さくなり、よりスムーズにコードCDが移動することが可能になる。
(2)ローレット240の変位により、ローレット240とコードCDの間に作用する摩擦力を変化させることで、コードCDが非屈曲状態で解除される。
(3)ローレット240の変位により、コードCDの移動に起因する回転を抵抗付与部RAに伝達するか否かが切り替わることで、コードCDが非屈曲状態で解除される。
(4)引き操作時において操作力を低減し、自動動作(自動降下)時に確実にコードCDを挟着し、意図しない落下を防止することができる。
【0192】
5.第5実施形態
次に、
図41を用いて、本発明の第5実施形態に係る他の運動変換部について説明する。
図41に示されるように、第5実施形態に係るケース10Cには、ローレット240の直径よりわずかに大きい収容空間93が形成される。ここで、収容空間93は、断面視において円弧形状と半直線形状を組み合わせた形状をなしている。したがって、ローレット240は収容空間93内で自由に移動することができる。また、収容空間93には、挟着案内斜面93a、及び解除側規制面93dが形成される。
【0193】
そして、ケース10Cの内部に軸芯31、ローレット240、支柱92、2つの出力軸95及び無端ベルト94が配置される。ローレット240は、自由移動状態においてコードCDとわずかに接触するように設けられる。
【0194】
ローレット240は、ローラ部42との間にコードCDを挟むように設けられる。そして、2つの出力軸95に無端ベルト94を張架する。無端ベルト94は、ローレット240の回転により抵抗力が作用し、無端ベルト94が回転可能なように構成される。又は、可能であれば、無端ベルト94の表面はローレット240及び出力軸95の表面と噛みあうような形状とされてもよい。また、出力軸95は、自身の回転をコードCDの移動に伴って抵抗力を発生させる抵抗付与部に出力するように構成される。出力軸95及び無端ベルト94は、無端ベルト94が収容空間93の半直線部分と略一直線となるように構成される。
【0195】
まず、
図41(a)に示される状態から、コードCDに矢印D4方向へ張力を与えると、コードCDとの間に生じる摩擦力により、ローレット240が矢印D5の向きに回転するとともに、収容空間93の半直線部分を経て無端ベルト94に接近する向きに移動する(第1位置)。
図41(b)に示されるように、かかる状態においては、ローレット240と支柱92の鉛直方向における距離が小さいので、コードCDが屈曲し、挟着状態となる。つまり、支柱92は、ローレット240とコードCDを挟んで位置する挟着部材として機能する。
【0196】
なお、挟着状態において、第3実施形態と同様に、出力軸95の回転を抵抗付与部RAに出力することとしてもよい。つまり、ローレット240と無端ベルト94の間に作用する摩擦力により、無端ベルト94が出力軸95に対して矢印D5と逆向き(反時計周り)に回転する。これにより、出力軸95も無端ベルト94と同じ方向(反時計周り)に回転(自転)する。かかる回転を抵抗付与部RAに出力するのである。かかる構成では、出力軸95のうちの一方が、第3実施形態における軸芯31と同様の機能(抵抗付与部RAに回転を伝達)を発揮する。このとき、コードCDが前方に移動するときには回転が抵抗付与部RAに伝達されるが、コードCDが後方に移動するときには回転が抵抗付与部RAに伝達されないように、ローレット240と抵抗付与部RAの間にワンウェイクラッチを設けてもよい。
【0197】
一方、コードCDに矢印D4と逆向きに張力を与えると、上記動作と逆向きの動作が生じることにより、ローレット240と支柱92の鉛直方向における距離が離間し、コードCDに対する挟着力が弱まることとなる。
【0198】
そして、
図41(a)に示されるように、軸芯31は、重力gに逆らい、無端ベルトから離間する位置である第2位置に移動する。かかる状態を自由移動状態と言う。自由移動状態において、コードCDが非屈曲状態で解除される。そして、コードCDの自由移動を許可することができる。
【0199】
なお、支柱92に変えて、軸芯及びローラ部を用いることもできる。
【0200】
つまり、第5実施形態に係る部材を用いた装置は、コードの移動を他の部材の運動に変換する運動変換部を備えるダンパであって、運動変換部は、コードを挟着する挟着体を備え、挟着体は、コードと挟着体が一方向に相対移動するときコードを挟着し、コードと挟着体が他方向へ相対移動するときコードが非屈曲状態で解除されるように挟着状態が変化するように構成される、ダンパと言うことができる。
【0201】
また、第5実施形態に係るダンパは、ダンパの接地面に対して鉛直成分を有する可動方向に移動可能に構成されたローラを備え、ローラが可動方向の下側の位置である第1位置に位置するときに、ローラと挟着部材とでコードを挟着し、ローラが可動方向の上側の位置である第2位置に位置するときに、コードが非屈曲状態で解除されるように構成される。ここで、コードが解除されるとは、コードの移動を許容する状態のことであり、コードと挟着部材の接触・非接触を問わない。
【0202】
さらに、第5実施形態に係る部材を用いた装置は、ローレット240が第2位置に位置するときにローレット240とコードCDとの間に作用する摩擦力が、ローレット240が第1位置に位置するときにローレット240とコードCDとの間に作用する摩擦力よりも小さくなるようにローレット240が移動するように構成される。
【0203】
また、第3実施形態と同様に、出力軸95の回転を、コードCDの移動に伴って抵抗力を発生させる抵抗付与部RAに出力する場合、第5実施形態に係る部材を用いた装置は、ローレット240が第1位置に位置するときにコードCDの移動に起因するローレット240の回転を抵抗付与部RAに出力し、ローレット240が第2位置に位置するときにコードCDの移動に起因するローレット240の回転を抵抗付与部RAに出力しないように構成される。
【0204】
<作用・効果>
上記のような構成とすることで、以下の作用・効果を得ることができる。
(1)コードCDの自由移動時において屈曲しない(非屈曲)ので、抵抗が少なくなり、よりスムーズにコードCDが移動することが可能になる。
(2)ローレット240の変位により、ローレット240とコードCDの間に作用する摩擦力を変化させることで、コードCDが非屈曲状態で解除される。
(3)ローレット240の変位により、コードCDの移動に起因する回転を抵抗付与部RAに伝達するか否かが切り替わることで、コードCDが非屈曲状態で解除される。
(4)引き操作時において操作力を低減し、自動動作(自動降下)時に確実にコードCDを挟着し、意図しない落下を防止することができる。
(5)ブレーキをかけるときにコードからの抵抗力を抵抗付与部に出力し、コードの自由移動を許可するときにコードからの抵抗力を抵抗付与部から切り離すことが可能となる。
【0205】
6.第6実施形態
次に、
図42を用いて、本発明の第6実施形態に係る運動変換部について説明する。第6実施形態は、第4実施形態を変形した構成である。そのため、以下では第4実施形態からの変更点についてのみ説明する。
図42に示されるように、第6実施形態では、重力gを利用して軸芯31及びローレット240が下方に降下する構成としており、重力gを付勢部材として利用していたと言うことができる。これに対し、第6実施形態では、
図42に示されるように、軸芯31は、連結部材170により固定軸160と連結される。ここで、連結部材170は、例えば
図38のプレート800を利用することができる。そして、連結部材170にばね150を取り付けている。これにより、固定軸160を中心として、連結部材170が矢印g方向に付勢されることにより、軸芯31及びローレット240を矢印g方向に付勢している。
【0206】
そして、
図42(a)に示される自由移動状態から、コードCDに矢印D6方向へ張力を与えると、コードCDとの間に生じる摩擦力により、軸芯31及びローレット240も矢印D6方向へ移動する。このとき、固定軸160を中心として連結部材170が時計回りに回動することにより、軸芯31及びローレット240が矢印g方向に移動する。これにより、
図42(b)に示される挟着状態へと移行する。
【0207】
なお、コードCDに矢印D6と逆方向へ張力を与えると、
図42(b)に示される挟着状態から
図42(a)に示される自由移動状態へと移行する。
【0208】
つまり、第6実施形態に係る部材を用いた装置は、ローレット240が第2位置に位置するときにローレット240とコードCDとの間に作用する摩擦力が、ローレット240が第1位置に位置するときにローレット240とコードCDとの間に作用する摩擦力よりも小さくなるようにローレット240が移動するように構成される。
【0209】
また、第6実施形態と同様に、軸芯31の回転を、コードCDの移動に伴って抵抗力を発生させる抵抗付与部RAに出力する場合、第6実施形態に係る部材を用いた装置は、ローレット240が第1位置に位置するときにコードCDの移動に起因するローレット240の回転を抵抗付与部RAに出力し、ローレット240が第2位置に位置するときにコードCDの移動に起因するローレット240の回転を抵抗付与部RAに出力しないように構成される。
【0210】
<作用・効果>
上記のような構成とすることで、以下の作用・効果を得ることができる。
(1)コードCDの自由移動時において屈曲しない(非屈曲)ために、屈曲抵抗が小さくなり、よりスムーズにコードCDが移動することが可能になる。
(2)ローレット240の変位により、ローレット240とコードCDの間に作用する摩擦力を変化させることで、コードCDが非屈曲状態で解除される。
(3)ローレット240の変位により、コードCDの移動に起因する回転を抵抗付与部RAに伝達するか否かが切り替わることで、コードCDが非屈曲状態で解除される。
(4)引き操作時において操作力を低減し、自動動作(自動降下)時に確実にコードCDを挟着し、意図しない落下を防止することができる。
【0211】
以上、本発明に係る種々の実施形態について説明したが、制動装置の取付位置については任意である。第1実施形態において
図10で示したように、ヘッドボックス内に配置することに代えて、
図43に示されるように、ねじ111等を用いて窓枠110に制動装置1000を固定するようにしてもよい。また、グリップ109の内部に制動装置1000を設けてもよい。さらに、昇降コード102の通過経路の任意の場所に制動装置1000を設けることとしてもよい。