【実施例】
【0032】
実施例の半導体装置について説明する。ここでは、まず、半導体装置の使用態様の例について
図5、6を用いて説明する。
図5は実施例の半導体装置が組み込まれる自動車の駆動系の例を模式的に示す図である。
図6は
図5のECUの構成を示すブロック図である。
【0033】
図5に示すように、自動車100の駆動系は、エンジン(ENGINE))101、クラッチ102、トランスミッション(TRANSMISSION)103、ディファレンシャルギア104a,104b、駆動輪105a,105b、車輪105c,105d、ソレノイドバルブ(SOLENOID VALVE)106、シャフト107a〜107d、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)1を有する。
【0034】
エンジン101は駆動力を発生する各種のエンジンを用いることができる。エンジン101は、発生させた駆動力を、クラッチ102を介してトランスミッション103に伝達する。トランスミッション103は、ディファレンシャルギア104aおよびシャフト107aを介して駆動輪105aに駆動力を伝達し、ディファレンシャルギア104aおよびシャフト107bを介して駆動輪105bに駆動力を伝達する。また、車輪105cは、シャフト107cを介してディファレンシャルギア104bと結合され、車輪105dは、シャフト107dを介してディファレンシャルギア104bと結合される。
【0035】
ECU1はソレノイドバルブ106を制御する装置である。
図6に示すように、ECU1は半導体装置10と半導体装置10を制御するマイクロコントローラ(MCU)20を有する。半導体装置10は駆動回路(DRIVE CIRCUIT)11、電流検出回路(CURRENT DETECTION CIRCUIT)12およびは駆動回路11を制御する制御部(CONTROL UNIT)13を有する。半導体装置10は、ソレノイドバルブ106のソレノイドSLN(
図7参照)に与える電流を制御することで、ソレノイドバルブ106の開閉を制御する。この例では、ソレノイドバルブ106の開閉によって、クラッチ102の位置を変動させることができる。つまり、半導体装置10は、ソレノイドバルブ106の開閉を制御することで、エンジン101からトランスミッション103への駆動力の伝達を制御することができる。マイクロコントローラ20はCPU(不図示)とメモリ(不図示)とを一つの半導体チップに備える半導体集積回路装置である。
【0036】
後述するように、ソレノイド電流を精度よく制御することにより、トランスミッション103がギアを切り替える際の振動を低減することができる。その結果、振動の少ない快適な乗り心地の自動車を実現することができる。
【0037】
次に、半導体装置10について
図7を用いて説明する。
図7は
図6の半導体装置の構成を示すブロック図である。なお、
図7にはソレノイドSLNも示されている。
【0038】
半導体装置10は、トランジスタMN1とトランジスタMN2とを有する駆動回路11と、電流検出回路12と、プリドライバ111,112と制御回路(CNTR)113とアナログ/デジタル変換器(ADC)114とフィルタ(Filter)115と加算回路116とを有する制御部13と、を一つの半導体チップに備える。例えば、半導体装置10は、シリコン基板や化合物半導体基板上に形成された電子回路として構成される。ここで、半導体装置10はソレノイドSLNをハイサイド駆動する。
【0039】
トランジスタMN1は、駆動回路11のローサイドドライバ(第1ドライブトランジスタ)であって、高耐圧のNチャネルMOSトランジスタにより構成されている。トランジスタMN2は、駆動回路11のハイサイドドライバ(第2ドライブトランジスタ)であって、高耐圧のNチャネルMOSトランジスタにより構成されている。
【0040】
より詳細には、トランジスタMN1では、ドレインが外部出力端子Tloに接続され、ソースが接地電圧端子Tgndに接続され、ゲートに制御部13からのパルス信号(VG1)が供給される。トランジスタMN2では、ドレインが入力電圧端子Tvinに接続され、ソースが外部出力端子Tloに接続され、ゲートに制御部13からのパルス信号(VG2)が供給される。なお、接地電圧端子Tgndには、接地電圧(GND)が供給され、入力電圧端子Tvinには、外部から入力電圧(Vin)が供給されている。また、外部出力端子TloはソレノイドSLNの一端に接続される。ソレノイドSLNの他端は接地電圧(GND)に接続されている。
【0041】
駆動回路11では、トランジスタMN1,MN2のオン/オフがデッドタイムを挟んで相補的に制御される。例えば、まず、トランジスタMN2がオンして導通状態になり、トランジスタMN1がオフして非導通状態になることにより、入力電圧端子TvinからトランジスタMN2および外部出力端子Tloを介してソレノイドSLNに向けて電流が流れる。このとき、ソレノイドSLNには、電流エネルギーが蓄えられる。その後、トランジスタMN2がオフし、トランジスタMN1がオンすることにより、入力電圧端子TvinからトランジスタMN2を介してソレノイドSLNに向けて流れていた電流が遮断される。ソレノイドSLNは、直前に流れていた電流の電流値を維持しようとして、蓄えた電流エネルギーをソレノイドSLNが接続された接地電圧端子に向けて放出する。それにより、接地電圧端子TgndからトランジスタMN1を介してソレノイドSLNに向けて電流が流れる。
【0042】
電流検出回路12は、ハイサイドドライバの電流検出回路(HCDC)12H、ローサイドドライバの電流検出回路(LCDC)12L、合成部12Sを備える。合成部12Sは電流検出回路12Hの検出電流と電流検出回路12Lの検出電流とを切り替えるスイッチ等を備える。電流検出回路12Lの詳細は後述する。
【0043】
制御部13は、プリドライバ111,112と、制御回路(CNTR)113と、アナログ/デジタル変換器(ADC)114と、フィルタ115と、加算回路116と、を備える。アナログ/デジタル変換器114は電流検出回路12で検出した電流に基づいた検出結果(電圧値)をデジタル検出信号に変換する。デジタル検出信号はフィルタ115で一周期(トランジスタMN1のオン/オフ)の電流検出結果を平均し、MCU20からの指示値(INVL)を加算回路116で増減して制御回路113に送る。
【0044】
制御回路113は、電流検出回路12の検出結果をモニタすることで駆動回路11のトランジスタMN1、MN2の電流をモニタする。そして、制御回路113は、モニタ結果に応じてトランジスタMN1、MN2をPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御することにより、プリドライバ111,112を介してトランジスタMN1、MN2を相補的にオン/オフし、トランジスタMN1、MN2の電流(ソレノイド電流(Isln))を目標値に収束するように制御する。
【0045】
なお、後述するように、電流検出回路12Lによってソレノイドドライバの電流を精度よく検出することによって、ソレノイド電流を精度よく制御することができる。
【0046】
次に、ハイサイド駆動のローサイドドライバの電流検出回路について
図8、9を用いて説明する。
図8は
図7のローサイドドライバの電流検出回路を示す回路図である。
図9は
図8の第一電流源および第二電流源の電流とソレノイド電流との関係を示す図である。
【0047】
図8に示すように、電流検出回路12Lは、トランジスタMN3,MN4,MP1,MP2と、第一オペアンプA1と、第一電流源CS1と、第二電流源CS2と、電流源制御回路(CSCNTR)CSCと、を備える。なお、
図8には、駆動回路11に設けられた構成要素の一部であるローサイド側のトランジスタMN1、ハイサイド側のトランジスタMN2およびソレノイドバルブ106のソレノイドSLNも示されている。また、
図8では、トランジスタMN1,MN2,MN3に形成される寄生ダイオードであるボディダイオードは省略されている。以下の実施例および変形例も同様である。
【0048】
電流検出回路12Lにおいて、トランジスタMN3は、トランジスタMN1と同じく高耐圧のNチャネルMOSトランジスタにより構成されるセンストランジスタである。例えばトランジスタMN3のトランジスタサイズはトランジスタMN1のトランジスタサイズの1/N(例えばN=1000)倍である。
【0049】
トランジスタMN3は、電源電圧(VDD)が供給される電源電圧端子Tvddと、トランジスタMN1のドレイン(端子Td)と、の間の電流経路上に設けられ、ゲートにパルス信号(VG1)が供給される。
【0050】
第一オペアンプA1は第一端子である反転入力端子Tinvと第二端子である非反転入力端子Tniを有し、トランジスタMN1のソース電圧(すなわち、接地電圧(GND))よりも高い電圧を供給する電圧供給回路OVLとトランジスタMN3のソース電圧との電位差を増幅する。なお、第一オペアンプA1は、低耐圧のトランジスタにより構成されている。
【0051】
ここで、トランジスタMN3のゲート−ソース間電圧およびドレイン−ソース間電圧がそれぞれトランジスタMN1のゲート−ソース間電圧およびドレイン−ソース間電圧と同じ値を示す。そのため、トランジスタMN3のドレイン−ソース間には、トランジスタMN1のドレイン−ソース間に流れる電流に比例した電流(本例では1/N(例えばN=1000)倍の電流)が精度良く流れる。
【0052】
第一オペアンプA1の出力電圧は、トランジスタMP1,MP2のゲートに供給される。トランジスタMP1は、低耐圧のPチャネルMOSトランジスタにより構成され、トランジスタMN3に直列に設けられている。トランジスタMP2は、低耐圧のPチャネルMOSトランジスタにより構成され、トランジスタMP1とは別の電流経路である電源電圧端子Tvddと第三端子である出力端子Toutとの間の電流経路上に設けられている。したがって、トランジスタMP2には、トランジスタMP1に流れる電流に比例する電流が流れる。つまり、トランジスタMP1,MP2はカレントミラー回路を構成している。このカレントミラー比は1/M倍である。
【0053】
上述したように、第一オペアンプA1の2つの入力端子のうち接地電圧端子Tgndに接続される非反転入力端子Tniに対して、接地電圧(GND)より高い電圧を供給する電圧供給回路OVLがさらに設けられている。電圧供給回路OVLは、トランジスタ(第一シフトトランジスタ)MN4および第一電流源CS1を有する。
【0054】
トランジスタMN4は、例えばトランジスタMN3と同じサイズの高耐圧のNチャネルMOSトランジスタにより構成されている。トランジスタMN4は、第一オペアンプA1の非反転入力端子Tniと、接地電圧端子Tgndと、の間に設けられ、ゲートに電源電圧(VDD)が供給されることで常にオンした状態となっている。つまり、トランジスタMN4は、抵抗素子として機能する。
【0055】
第一電流源CS1は、電源電圧端子Tvddと、第一オペアンプA1の非反転入力端子Tniと、の間に設けられ、第一オペアンプA1の非反転入力端子Tniに電流(Ish1)を供給する。それにより、第一オペアンプA1の非反転入力端子Tniには、接地電圧(GND)よりも高い電圧が供給される。
【0056】
ここで、第一オペアンプA1のオフセット電圧の影響により、本来であればトランジスタMN3のソース電圧がドレイン電圧よりも低くなるはずの場合がある。しかし、仮に電圧供給回路OVLが設けられていなければ、第一オペアンプA1の反転入力端子Tinvの電圧は、非反転入力端子Tniに供給される接地電圧(GND)よりも低いマイナスの電圧になることができないため、トランジスタMN3のソース電圧が想定されるよりも低くならず、その結果、オフセット電圧の影響を考慮した電流検出ができなくなってしまう。
【0057】
それに対し、電流検出回路12Lは、電圧供給回路OVLを用いて第一オペアンプA1の非反転入力端子Tniに接地電圧(GND)よりも高い電圧を供給している。それにより、電流検出回路12Lは、オフセット電圧の影響に応じて想定通りにトランジスタMN3のソース電圧をドレイン電圧よりも低くすることができるため、オフセット電圧を考慮した電流検出を行うことができる。
【0058】
上述したように、トランジスタMN3はトランジスタMN1に流れる電流を1/N(例えばN=1000)倍を検出する。検出されたセンス電流(Isns)はトランジスタMP1,MP2で折り返されて検出電流(Isig)として出力される。
【0059】
第一電流源CS1および第二電流源CS2は検出電流に意図的にオフセットを加える役割がある。第一電流源CS1の電流(Ish1)をトランジスタMN4に流すと第一オペアンプA1の仮想接地点の電圧が上昇するため、トランジスタMN3を流れる電流が増加し、正のオフセットが印可される。なお、このときの外部出力端子Tloの電圧は負である。
【0060】
第一電流源CS1の電流(Ish1)によって正のオフセットを印加している場合、ソレノイド電流(Isln)が流れないとき(Isln=0A)でも第一オペアンプA1の仮想接地が正の電圧となるので、正しく電流を検出することができる。
【0061】
第二電流源CS2の電流(Ish2)は検出電流(Isig)から差し引かれるため、負のオフセットが印加される。ソレノイド電流(Isln)の増加に従ってIsh1=0Aになるとオフセットが印可されなくなるので誤差を生じるが、第二電流源CS2の電流(Ish2)によって負のオフセットを印加することで誤差をキャンセルすることができる。
【0062】
図9に示すように、第一電流源CS1の電流量(Ish1)および第二電流源CS2の電流量(Ish2)はソレノイド電流(Isln)に応じて変化する。ソレノイド電流(Isln)が所定値よりも小さいときは、第一電流源CS1の電流量(Ish1)は電源電圧端子Tvddから反転入力端子Tinvに電流を流し、ソレノイド電流(Isln)が所定値以上のときは、第一電流源CS1は電流を流さない。ソレノイド電流(Isln)が所定値
以上のとき、第二電流源CS2は出力端子Toutから接地電圧端子Tgndに電流を流し、ソレノイド電流(Isln)が所定値
よりも小さいときは、第二電流源CS2は電流を流さない。言い換えると、ソレノイド電流(Isln)が所定値よりも小さいときは、第一電流源CS1の電流量(Ish1)は第二電流源CS2の電流量(Ish2)よりも大きく、ソレノイド電流(Isln)が所定値以上のときは、第二電流源CS2の電流量(Ish2)は第一電流源CS1の電流量(Ish1)よりも大きい。
電流源制御回路CSCはソレノイド電流(Isln)を簡易的に検出する回路であり、検出した電流に基づいて第一電流源CS1の電流(Ish1)および第二電流源CS2の電流(Ish2)を制御する。すなわち、電流源制御回路CSCは、ソレノイド電流(Isln)が所定値より小さいときは、ソレノイド電流(Isln)の増加とともに第一電流源CS1の電流量(Ish1)が減少するように制御する。また、電流源制御回路CSCは、ソレノイド電流(Isln)が所定値以上のときは、第一電流源CS1に電流を流さないように制御し、ソレノイド電流(Isln)が所定値より小さいときは、第二電流源CS2に電流を流さないように制御し、ソレノイド電流(Isln)が所定値以上のときは、ソレノイド電流(Isln)の増加とともに第二電流源CS2の電流が増加するように制御する。なお、電流源制御回路CSCの電流検出精度は電流検出回路12Lの電流検出精度と比べて低い。
【0063】
なお、第一電流源CS1の電流(Ish1)および第二電流源CS2の電流(Ish2)によって印加される意図的なオフセットが変動することにより第一オペアンプA1のゲインが変わるため、トランジスタMP1とトランジスタMP2のカレントミラー比を調整し所望のゲインとなるように設計する。
【0064】
次に、第一電流源CS1の電流(Ish1)、第二電流源CS2の電流(Ish2)、トランジスタMP1とトランジスタMP2のカレントミラー比の一例について説明する。
【0065】
電流検出回路12Lにおいて所望の入出力特性を得るには第一電流源CS1の電流(Ish1)、第二電流源CS2の電流(Ish2)、トランジスタMP1とトランジスタMP2のカレントミラー比を適切に設計する必要がある。上述の各電流は式(1)〜(4)の関係にある。
Isns=(I/N)Isln+Ish1 ・・・(1)
Ish1=K・max(Ish−αIsln,0) ・・・(2)
Ish2=max(αIsln−Ish,0) ・・・(3)
Isig=(Isns/M)−Ish2 ・・・(4)
ここで、IsnsはトランジスタMN3を流れる電流、αとKは適当な定数、MはトランジスタMP1とトランジスタMP2のカレントミラー比、NはローサイドドライバであるトランジスタMN2とセンストランジスタであるトランジスタMN3のセンス比、Ishは意図的なオフセットの値でソレノイド電流(Isln)が0Aの時に電流検出回路が出力する電流値(Isig)である。
【0066】
上記式(1)〜(4)より、下記の設計値が導出される。
Isig=(1/MoN)Isln+Ish ・・・(5)
K=Mo ・・・(6)
M=Mo/(1+αMoN) ・・・(7)
α=Ish/Isln0 ・・・(8)
ここで、Moはセンスアンプの電流利得、Isln0はIsh=αIslnとなるソレノイド電流である。
【0067】
電流検出回路12Lで印可した意図的なオフセットは後段で除く必要がある。意図的なオフセットを除く方法について
図10を用いて説明する。
図10は意図的なオフセットを除く回路を含むローサイドドライバの電流検出回路の回路図である。
【0068】
図10に示すように、電流検出回路12Lは
図9の電流検出回路12Lの第二電流源CS2に並列に定電流源CC0を追加した回路である。言い換えると、定電流源CC0は出力端子Toutと接地電圧端子Tgndとの間に設けられている。アナログ的に電流(Ish0)を差し引くことで検出電流(Isig)から意図的なオフセットを除くことができる。ここで、電流(Ish0)はIsln=0Aのときの電流(Ish1)である。
【0069】
次に、第一電流源CS1および第二電流源CS2の二つの電流源を使用する理由について第二比較例の電流検出回路を用いて説明する。
図11は第二比較例の電流検出回路を示す回路図である。
図12は
図11の電流検出回路の第一電流源の電流を示す図である。
図13は負電源を使用しなかった場合の第一電流源の特性を示す図であり、
図13(A)は第一電流源の電流を示す図であり、
図13(B)は電流検出誤差を示す図である。
【0070】
図11の第二比較例の電流検出回路12LSは
図8の実施例の電流検出回路12Lから第二電流源CS2を省いたものであるである。電流検出回路12LSを第一電流源CS1のみで構成しようとすると、
図12に示すように、第一電流源CS1を流れる電流(Ish1)は途中で負になる。これを実現するためには接地電圧端子Tgndから電流を引く必要があるので、負電源が必要である。また、正と負の両方の電流を回路的に実現するには、両符号に対応するためにカレントミラーを二つ備える必要がある。したがって、実質的には二つの電流源を備えていることになる。
【0071】
負電源を使用しなかった場合、
図13(A)に示すように、第一電流源CS1の電流(Ish1)は途中で0になる。このとき、ソレノイド電流(Isln)が大きいところで意図的なオフセットがゼロとなり電流検出値が折れ曲がるので、
図13(B)に示すように電流検出誤差(CDE)を生じる。
【0072】
実施例によれば、第一オペアンプA1にオフセットがある場合においてもIsln=0A付近の電流を検出することができる。また、第一電流源CS1の電流(Ish1)が一定の場合(
図2の第一比較例)はソレノイド電流(Isln)が大きいところにおいて非線形性誤差を生じるが、本実施例はソレノイド電流(Isln)が大きいところでIsh1=0Aなので非線形性誤差を生じない。特許文献1のような検出抵抗を用いる場合、検出抵抗に大電流を流す必要があるため、また、低い抵抗値を高い精度で実現する必要があるため、検出抵抗の面積が大きくなる。例えば、検出抵抗はドライブトランジスタと同程度の大きさになる。実施例では、検出抵抗を用いないため、一つの半導体チップに複数の半導体装置10を形成することもできる。
【0073】
<変形例>
以下、代表的な変形例について、幾つか例示する。以下の変形例の説明において、上述の実施例にて説明されているものと同様の構成および機能を有する部分に対しては、上述の実施例と同様の符号が用いられ得るものとする。そして、かかる部分の説明については、技術的に矛盾しない範囲内において、上述の実施例における説明が適宜援用され得るものとする。また、上述の実施例の一部、および、複数の変形例の全部または一部が、技術的に矛盾しない範囲内において、適宜、複合的に適用され得る。
【0074】
(第一変形例)
実施例では意図的なオフセットの除去はアナログ的に行っているが、別の例(第一変形例)について
図14を用いて説明する。
図14は第一変形例のローサイドドライバの電流検出回路を示す回路図である。なお、
図14には、制御部13に設けられた構成要素の一部であるアナログ/デジタル変換器(AD変換器)114も示されている。
【0075】
図7に示すように、検出電流をAD変換して電流検出値をデジタル値として用いているので、AD変換した後のデジタル値から差し引く方法によって意図的なオフセットを除去してもよい。
【0076】
図14に示すように、電流検出回路12LAは
図8の電流検出回路12LのトランジスタMP1(出力端子Tout)と接地電圧端子Tgndとの間に抵抗Routを備える。電流検出回路12LAは出力する検出電流(Isig)を抵抗Routによって電圧(Vout)に変換する。第一変形例の制御部13はAD変換器114とフィルタ115との間に加算回路117を有する。AD変換器114は電圧(Vout)をデジタル値に変換し、加算回路117はデジタル値から意図的なオフセットに相当する定数(CNST)を差し引いて、電流検出値を得る。
【0077】
(第二変形例)
電流源制御回路CSCの検出対象を変更した例(第二変形例)について
図15を用いて説明する。
図15は第二変形例のローサイドドライバの電流検出回路の回路図である。
【0078】
実施例では電流源制御回路CSCが検出する電流(検出対象)はソレノイド電流(Isln)であるが、第二変形例の電流検出回路12LBの電流源制御回路CSCの検出対象はローサイドドライバであるトランジスタMN1の電流(Ilsd)である。
【0079】
トランジスタMN1の電流(Ilsd)を検出する場合については、トランジスタMN1の電流(Ilsd)がソレノイド電流(Isln)とほぼ等しいので、第一電流源CS1の電流(Ish1)、第二電流源CS2の電流(Ish2)、トランジスタMP1とトランジスタMP2のカレントミラー比は、実施例と同様に上記式(1)〜(8)から求めることができる。
【0080】
(第三変形例)
電流源制御回路CSCの検出対象を変更した例(第三変形例)について
図16を用いて説明する。
図16は第三変形例のローサイドドライバの電流検出回路の回路図である。
【0081】
実施例では電流源制御回路CSCが検出する電流(検出対象)はソレノイド電流(Isln)であるが、第三変形例の電流検出回路12LCの電流源制御回路CSCの検出対象はセンストランジスタの電流(Isns)である。
【0082】
電流検出回路12LCにおいて第一電流源CS1の電流(Ish1)、第二電流源CS2の電流(Ish2)、トランジスタMP1とトランジスタMP2のカレントミラー比は実施例とは異なる。上述の各電流は式(11)〜(14)の関係にある。
Isns=(I/N)Isln+Ish1 ・・・(11)
Ish1=K・max(Ish−βIsns,0) ・・・(12)
Ish2=max(βIsns−Ish,0) ・・・(13)
Isig=(Isns/M)−Ish2 ・・・(14)
ここで、βとKは適当な定数、MはトランジスタMP1とトランジスタMP2のカレントミラー比、NはローサイドドライバのトランジスタMN2とトランジスタMN3のセンス比、Ishは意図的なオフセットの値でソレノイド電流(Isln)が0Aの時に電流検出回路が出力する電流値(Isig)である。
【0083】
上記式(11)〜(14)より、下記の設計値が導出される。
Isig=(1/MoN)IL+Ish ・・・(15)
K=Mo ・・・(16)
M=(1−β)Mo ・・・(17)
β=NIsh/Isln ・・・(18)
ここで、Moはセンスアンプの電流利得、IslnはIsh=βIsnsとなるソレノイド電流である。
(第四変形例)
実施例の第一電流源CS1および第二電流源CS2にMOSトランジスタを用いて具体的な回路として実現した例(第四変形例)について
図17〜19を用いて説明する。
図17は第四変形例のローサイドドライバの電流検出回路を示す回路図である。
図18は
図17のローサイドドライバの電流検出回路の第一電流源および第二電流源を示す回路図である。
図19は
図17のローサイドドライバの電流検出回路での各電流経路を流れる電流のソレノイド電流依存性を示す図であり、
図19(A)はセンス電流および検出電流を示す図であり、
図19(B)は第一レプリカ電流、第二レプリカ電流および定電流源の電流を示す図であり、
図19(C)は第一電流源の電流および第二電流源の電流を示す図である。
【0084】
第四変形例のローサイドドライバの電流検出回路12LDでは、電流源制御回路CSDはソレノイド電流(Isln)を直接検出するのではなく、第三変形例のようにソレノイド電流(Isln)のコピーであるセンス電流(Isns)を検出する。具体的にはセンス電流(Isns)をコピーして第一レプリカ電流(Irep1)および第二レプリカ電流(Irep2)として取り出している。第一電流源CS1の電流(Ish1)および第二電流源CS2の電流(Ish2)はカレントミラーによって第一レプリカ電流(Irep1)および第二レプリカ電流(Irep2)と定電流源CCの電流(Icc)の加減算を行うことにより生成されている。以下、詳細に説明する。
【0085】
トランジスタMP1,MP3は、何れも低耐圧のPチャネルMOSトランジスタにより構成され、トランジスタMN3に直列に設けられている。トランジスタMP2,MP4は、何れも低耐圧のPチャネルMOSトランジスタにより構成され、トランジスタMP1,MP3とは別の電流経路である電源電圧端子Tvddと出力端子Toutとの間の電流経路上に直列に設けられている。また、トランジスタMP3,MP4のそれぞれのゲートには、第一バイアス電圧(Vbi1)が供給される。さらに、トランジスタMP2のゲートは、トランジスタMP1のゲートおよび第一オペアンプA1の出力に接続されている。したがって、トランジスタMP2,MP4には、トランジスタMP1,MP3に流れる電流(Isns)に比例する電流(Isig)が流れる。つまり、トランジスタMP1〜MP4はカレントミラー回路を構成している。このカレントミラー比は1/M倍である。
【0086】
電流源制御回路CSDは、トランジスタMP5〜MP8を有する。トランジスタMP5,MP6は、何れも低耐圧のPチャネルMOSトランジスタにより構成され、トランジスタMP1,MP3とは別の電流経路である電源電圧端子Tvddと第一電流源CS1との間の電流経路上に直列に設けられている。また、トランジスタMP6のゲートには、第一バイアス電圧(Vbi1)が供給される。さらに、トランジスタMP5のゲートは、トランジスタMP1のゲートおよび第一オペアンプA1の出力に接続されている。したがって、トランジスタMP5,MP6には、トランジスタMP1,MP3に流れる電流(Isns)に比例する第一レプリカ電流(Irep1)が流れる。つまり、トランジスタMP1,MP3,MP5,MP6はカレントミラー回路を構成している。このカレントミラー比は1/ML倍である。
【0087】
トランジスタMP7,MP8は、低耐圧のPチャネルMOSトランジスタにより構成され、トランジスタMP1,MP3とは別の電流経路である電源電圧端子Tvddと第二電流源CS2との間の電流経路上に直列に設けられている。また、トランジスタMP8のゲートには、第一バイアス電圧(Vbi1)が供給される。さらに、トランジスタMP7のゲートは、トランジスタMP1のゲートおよび第一オペアンプA1の出力に接続されている。したがって、トランジスタMP7,MP8には、トランジスタMP1,MP3に流れる電流(Isense)に比例する第二レプリカ電流(Irep2)が流れる。つまり、トランジスタMP1,MP3,MP7,MP8はカレントミラー回路を構成している。このカレントミラー比は1/ML倍である。
【0088】
図18に示すように、第一電流源CS1はトランジスタMP9〜MP12,MN5〜MN8および定電流源CCを有する。トランジスタMP9,MP10は、何れも低耐圧のPチャネルMOSトランジスタにより構成され、定電流源CCに直列に設けられている。定電流源CCの一端は第二接地電圧端子Tgn2に接続されている。トランジスタMP11,MP12は、何れも低耐圧のPチャネルMOSトランジスタにより構成され、トランジスタMP9,MP10とは別の電流経路である電源電圧端子Tvddと第一電流源CS1の出力(第一オペアンプA1の非反転入力端子Tni)との間の電流経路上に直列に設けられている。また、トランジスタMP10,MP12のそれぞれのゲートには、第二バイアス電圧(Vbi2)が供給される。さらに、トランジスタMP11のゲートは、トランジスタMP9のゲートおよびトランジスタMP10のドレインに接続されている。したがって、トランジスタMP11には、トランジスタMP9,MP10に流れる定電流源CCの電流(Icc)に比例する電流が流れる。つまり、トランジスタMP9〜MP12はカレントミラー回路を構成している。このカレントミラー比は1倍であり、トランジスタMP11には定電流源CCの電流量と同等の電流(Icc)が流れる。
【0089】
トランジスタMN5,MN6は、何れも低耐圧のNチャネルMOSトランジスタにより構成され、トランジスタMP6に直列に設けられている。トランジスタMN7,MN8は、何れも低耐圧のNチャネルMOSトランジスタにより構成され、トランジスタMN5,MN6とは別の電流経路である第二接地電圧端子Tgn2とトランジスタMP11のドレインとの間の電流経路上に直列に設けられている。また、トランジスタMN6,MN8のそれぞれのゲートには、第三バイアス電圧(Vbi3)が供給される。さらに、トランジスタMN5のゲートは、トランジスタMN7のゲートおよびトランジスタMN6のドレインに接続されている。したがって、トランジスタMN7,MN8には、トランジスタMN5,MN6に流れる第一レプリカ電流(Irep1)に比例する電流が流れる。つまり、トランジスタMN5〜MN8はカレントミラー回路を構成している。このカレントミラー比は1倍であり、第一電流源CS1の電流(Ish1)は定電流源CCの電流(Icc)から第一レプリカ電流(Irep1)を差し引いた電流(Ish1=Icc−Irep1)となる。
【0090】
第二電流源CS2はトランジスタMP13,MP14,MN9〜MN16を有する。トランジスタMP13,MP14は、何れも低耐圧のPチャネルMOSトランジスタにより構成され、トランジスタMN10に直列に設けられている。また、トランジスタMP14のゲートには、第二バイアス電圧(Vbi2)が供給される。さらに、トランジスタMP13のゲートは、トランジスタMP9のゲートおよびトランジスタMP10のドレインに接続されている。したがって、トランジスタMP13,MP14には、トランジスタMP9,MP10に流れる電流(Icc)に比例する電流が流れる。つまり、トランジスタMP9、MP10,MP13,MP14はカレントミラー回路を構成している。このカレントミラー比は1倍であり、トランジスタMP13には定電流源CCの電流量と同等の電流(Icc)が流れる。
【0091】
トランジスタMN9,MN10は、何れも低耐圧のNチャネルMOSトランジスタにより構成され、トランジスタMP14に直列に設けられている。トランジスタMN11,MN12は、何れも低耐圧のNチャネルMOSトランジスタにより構成され、トランジスタMN9,MN10とは別の電流経路である第二接地電圧端子Tgn2とトランジスタMP8との間の電流経路上に直列に設けられている。また、トランジスタMN10,MN12のそれぞれのゲートには、第三バイアス電圧(Vbi3)が供給される。さらに、トランジスタMN11のゲートは、トランジスタMN9のゲートおよびトランジスタMN10のドレインに接続されている。したがって、トランジスタMN11,MN12には、トランジスタMN9,MN10に流れる電流(Icc)に比例する電流が流れる。つまり、トランジスタMN9〜MN12はカレントミラー回路を構成している。このカレントミラー比は1倍である、トランジスタMN10には定電流源CCの電流量と同等の電流(Icc)が流れる。
【0092】
トランジスタMN13,MN14は、何れも低耐圧のNチャネルMOSトランジスタにより構成され、トランジスタMP8に直列に設けられている。トランジスタMN15,MN16は、何れも低耐圧のNチャネルMOSトランジスタにより構成され、トランジスタMN13,MN14とは別の電流経路である第二接地電圧端子Tgn2と第三端子である端子Tcs2との間の電流経路上に直列に設けられている。また、トランジスタMN14,MN16のそれぞれのゲートには、第三バイアス電圧(Vbi3)が供給される。さらに、トランジスタMN15のゲートは、トランジスタMN13のゲートおよびトランジスタMN14のドレインに接続されている。したがって、トランジスタMN15,MN16には、トランジスタMN13,MN14に流れる電流(Irep2−Icc)に比例する電流が流れる。つまり、トランジスタMN13〜MN16はカレントミラー回路を構成している。このカレントミラー比は1倍である。第二電流源CS2の電流は第二レプリカ電流(Irep2)から定電流源CCの電流(Icc)を差し引いた電流(Ish2=Irep2−Icc)となる。
【0093】
図19に示すように、第四変形例では、カレントミラー回路において、センス電流(Isns)の1/ML倍のレプリカを第一レプリカ電流(Irep1)および第二レプリカ電流(Irep2)として生成し(
図19(B))、定電流源CCの電流(Icc)に加減算をすることで、ソレノイド電流(Isln)に応じて変動する第一電流源CS1の電流(Ish1)および第二電流源CS2の電流(Ish2)を生成する(
図19(C))。これにより、
図19(A)に示すように検出電流(Isig)は線形性を有する。なお、検出電流(Isig)はオフセットを有する。
【0094】
第四変形例の電流検出回路において所望の入出力特性を得るには第一電流源CS1の電流(Ish1)、第二電流源CS2の電流(Ish2)、トランジスタMP1とトランジスタMP2のカレントミラー比を適切に設定する必要がある。上述の各電流は式(21)〜(25)の関係にある。
Isns=(I/N)Isln+Ish1 ・・・(21)
Ish1=K・max(Ish−αIsln,0) ・・・(22)
Ish2=max(αIsln−Ish,0) ・・・(23)
Isig=(Isns/M)−Ish2 ・・・(24)
Irep=Irep1=Irep2
=(1/LM)Isns ・・・(25)
ここで、αとKは適当な定数、MはトランジスタMP1とトランジスタMP2のカレントミラー比、NはローサイドドライバのトランジスタMN2とトランジスタMN3のセンス比、Ishは意図的なオフセットの値でソレノイド電流(Isln)が0Aの時に電流検出回路が出力する電流値(Isig)である。
【0095】
上記式(21)〜(25)より、下記の設計値が導出される。
Isig=(1/MoN)Isln+Ish ・・・(26)
K=Mo ・・・(27)
L=Isln0/(MoN・Ish)+1 ・・・(28)
M=Mo/(1+αMoN) ・・・(29)
ここで、Moはセンスアンプの電流利得、Isln0はIsh=Irepとなるソレノイド電流である。
【0096】
第四変形例では、電流源制御回路CSDとメインの電流検出回路がセンストランジスタ(トランジスタMN3)、第一オペアンプA1、トランジスタMP1,MP2を共用しているため、面積および消費電流を削減することができる。
【0097】
(第五変形例)
図8の実施例の電流検出回路12LにおいてハイサイドドライバであるトランジスタMN2がオンのときはトランジスタMN3をオフにするが、このとき第一オペアンプA1の負荷条件はローサイドドライバであるトランジスタMN1がオンのときの状態と異なることになる。その結果、過渡応答により、トランジスタMN1がオンするときの電流検出回路の応答が遅くなってしまう可能性がある。これを改善する第五変形例のローサイドドライバの電流検出回路について
図20〜22を用いて説明する。
図20は第五変形例のローサイドドライバの電流検出回路を示す回路図である。
図21は
図20のローサイドドライバの電流検出回路におけるローサイドドライバがオンの場合の電流経路を示す図である。
図22は
図20のハイサイドドライバの電流検出回路におけるローサイドドライバがオンの場合の電流経路を示す図である。
【0098】
図20に示すように、第五変形例の電流検出回路12LEは、
図8の実施例の電流検出回路12Lに、トランジスタMN1、トランジスタMN3がオフの期間に電流を流すためのトランジスタ(スイッチトランジスタ)MN17をさらに備える。
【0099】
トランジスタMN17は、例えばトランジスタMN3と同じサイズの高耐圧のNチャネルMOSトランジスタにより構成されている。トランジスタMN17は、第一オペアンプA1の反転入力端子Tinvと接地電圧端子Tgndとの間に設けられている。トランジスタMN17のオン/オフは、パルス信号(VG1)の反転信号であるパルス信号(VG2)と同相の信号(VDMY)によって制御される。つまり、トランジスタMN17は、トランジスタMN2,MN3と相補的にオン/オフが制御される。なお、トランジスタMN17のオンのときの抵抗値は、トランジスタMN3のオンのときの抵抗値と同じ値を示す。電流検出回路12LEのその他の構成については、電流検出回路12Lと同様であるため、その説明を省略する。
【0100】
トランジスタMN1がオンのときは、
図21に示すように、トランジスタMN3もオンしてトランジスタMN3に電流が流れる。トランジスタMN2がオンのときは、
図22に示すように、トランジスタMN17もオンしてトランジスタMN17に電流が流れる。
【0101】
ここで、トランジスタMN3がオフしても、トランジスタMN17がオンするため、第一オペアンプA1に対する抵抗素子による負荷が一定に保たれる。すなわち、トランジスタMN17によってトランジスタMN1がオンのときとトランジスタMN2がオンのときの第一オペアンプA1の負荷条件を揃えることができる。その結果、トランジスタMN3のオン/オフを切り替えた後の第一オペアンプA1の整定時間を低減することができるので、高速動作を実現することができる。
【0102】
(第六変形例)
実施例ではトランジスタMP1,MP2によって電流を折り返しているため検出電流はカレントソース(PMOS出力)であるが、カレントシンク(NMOS出力)として構成してもよい。この構成例(第六変形例)について
図23を用いて説明する。
図23は第六変形例のローサイドドライバの電流検出回路を示す回路図である。
【0103】
第六変形例の電流検出回路12LFでは、第一オペアンプA1の出力電圧は、電流制御トランジスタであるトランジスタMN21のゲートに供給される。トランジスタMN21は、低耐圧のNチャネルMOSトランジスタにより構成され、出力端子Toutと端子Tdとの間の電流経路上においてトランジスタMN3に直列に設けられている。それにより、検出電流(Isig)はカレントシンクとして構成することができる。
【0104】
(第七変形例)
上記実施例、第一変形例乃至第六変形例ではローサイドドライバの電流検出回路について説明してきたが、ハイサイドドライバの電流検出回路の例(第七変形例)について
図24を用いて説明する。
図24は第七変形例のハイサイドドライバの電流検出回路を示す回路図である。
【0105】
第七変形例のハイサイドドライバの電流検出回路12HGは、
図23の第六変形例のローサイドドライバの電流検出回路12LFのトランジスタMN3,MN4,MN21のNチャネルMOSトランジスタをPMOSチャネルMOSトランジスタに入れ替え、第一オペアンプA1、第一電流源CS1、第二電流源CS2を構成するNチャネルMOSトランジスタとPMOSチャネルMOSトランジスタを入れ替えたものである。
【0106】
図24に示すように、電流検出回路12HGは、トランジスタMP21,MP23,MP24と、第二オペアンプA2と、第三電流源CS3と、第四電流源CS4と、電流源制御回路CSCと、を備える。なお、第七変形例の駆動回路11のハイサイドドライバはPチャネルMOSトランジスタMP22で構成されている。
【0107】
電流検出回路12HGにおいて、トランジスタMP23は、トランジスタMP22と同じく高耐圧のPチャネルMOSトランジスタにより構成されるセンストランジスタである。例えばトランジスタMP23のトランジスタサイズはトランジスタMP22のトランジスタサイズの1/N(例えばN=1000)倍である。
【0108】
トランジスタMP23は、第二オペアンプA2の反転入力端子Tinvと、トランジスタMP22のドレイン(端子Td)と、の間の電流経路上に設けられ、ゲートにパルス信号(VG22)が供給される。なお、パルス信号(VG22)はデッドタイムを除き、パルス信号(VG1)と同相の信号である。
【0109】
第二オペアンプA2は、トランジスタMP22のソース電圧(すなわち、入力電圧(Vin))よりも低い電圧を供給する電圧供給回路OVHとトランジスタMP23のソース電圧との電位差を増幅する。なお、第二オペアンプA2は、低耐圧のトランジスタにより構成されている。
【0110】
ここで、トランジスタMP23のゲート−ソース間電圧およびドレイン−ソース間電圧がそれぞれトランジスタMP22のゲート−ソース間電圧およびドレイン−ソース間電圧と同じ値を示す。そのため、トランジスタMP23のドレイン−ソース間には、トランジスタMP22のドレイン−ソース間に流れる電流に比例した電流(本例では1/N(例えばN=1000)倍の電流)が精度良く流れる。
【0111】
第二オペアンプA2の出力電圧は、電流制御トランジスタであるトランジスタMP21のゲートに供給される。トランジスタMP21は、低耐圧のPチャネルMOSトランジスタにより構成され、出力端子Toutと端子Tdとの間の電流経路上においてトランジスタMP23に直列に設けられている。
【0112】
上述したように、第二オペアンプA2の2つの入力端子のうち入力電圧端子Tvinに接続される一方の非反転入力端子Tniに対して、入力電圧(Vin)より低い電圧を供給する電圧供給回路OVHがさらに設けられている。電圧供給回路OVHは、トランジスタMP24および第一電流源CS1を有する。
【0113】
トランジスタMP24は、例えばトランジスタMP23と同じサイズの高耐圧のPチャネルMOSトランジスタにより構成されている。トランジスタMP24は、第二オペアンプA2の非反転入力端子Tniと、入力電圧端子Tvinと、の間に設けられ、ゲートに接地電圧(GND)が供給されることで常にオンした状態となっている。つまり、トランジスタMP24は、抵抗素子として機能する。
【0114】
第三電流源CS3は、入力電圧端子Tvinと、第二オペアンプA2の非反転入力端子Tniと、の間に設けられ、第二オペアンプA2の非反転入力端子Tniから電流(Ish2)を引き込む。それにより、第二オペアンプA2の非反転入力端子Tniには、入力電圧(Vin)よりも所定電圧低い電圧が供給される。
【0115】
ここで、第二オペアンプA2のオフセット電圧の影響により、本来であればトランジスタMP23のソース電圧がドレイン電圧よりも高くなるはずの場合がある。しかし、仮に電圧供給回路OVHが設けられていなければ、第二オペアンプA2の反転入力端子Tinvの電圧は、非反転入力端子Tniに供給される入力電圧(Vin)よりも高い電圧になることができないため、トランジスタMP23のソース電圧が想定されるよりも高くならず、その結果、オフセット電圧の影響を考慮した電流検出ができなくなってしまう。
【0116】
それに対し、電流検出回路12HGは、電圧供給回路OVLを用いて第一オペアンプA1の非反転入力端子Tniに入力電圧(Vin)よりも低い電圧を供給している。それにより、電流検出回路12HGは、オフセット電圧の影響に応じて想定通りにトランジスタMP23のソース電圧をドレイン電圧よりも高くすることができるため、オフセット電圧を考慮した電流検出を行うことができる。
【0117】
上述したように、トランジスタMP23はトランジスタMP22に流れる電流を1/N(例えばN=1000)倍を検出する。検出された電流(Isns)はトランジスタMP21によりカレントシンクとして検出電流(Isig)が出力される。
【0118】
第三電流源CS3および第四電流源CS4は検出電流に意図的にオフセットを加える役割がある。第三電流源CS3の電流(Ish3)をトランジスタMP24に流すと第二オペアンプA2の仮想基準点の電圧が下降するため、トランジスタMP23を流れる電流が減少増加し、負のオフセットが印可される。
【0119】
第三電流源CS3の電流(Ish3)によって負のオフセットを印加している場合、ソレノイド電流(Isln)が流れないとき(Isln=0A)でも第二オペアンプA2の仮想基準点が入力電圧(Vin)よりも低い電圧となるので、正しく電流を検出することができる。
【0120】
第四電流源CS4の電流(Ish4)は検出電流(Isig)に足し込むため、正のオフセットを印加する。ソレノイド電流(Isln)の増加に従ってIsh1=0Aになるとオフセットが印可されなくなるので誤差を生じるが、第四電流源CS4の電流(Ish4)によって正のオフセットを印加することで誤差をキャンセルすることができる。
【0121】
(第八変形例)
ハイサイド駆動とローサイド駆動の両方に対応した電流検出回路の例(第八変形例)について
図25〜27を用いて説明する。
図25は第八変形例のローサイド電流検出回路を示す回路図である。
図26は
図25のローサイド電流検出回路におけるハイサイド駆動状態の電流経路を示す図である。
図27は
図25のローサイド電流検出回路におけるローサイド駆動状態の電流経路を示す図である。
【0122】
図25に示すように、第八変形例の電流検出回路12LHは、
図8の実施例の電流検出回路12Lに、ローサイド駆動用のセンストランジスタであるトランジスタ(第二センストランジスタ)MN23と、ローサイド駆動用の電圧供給回路の一部を構成するトランジスタ(第二シフトトランジスタ)MN24,MN25およびトランジスタMN26と、をさらに備える。トランジスタMN3はハイサイド駆動のとき動作しオン可能となり、トランジスタMN23はローサイド駆動のとき動作しオン可能となる。電流検出回路12Lは、半導体装置10の第一モードであるハイサイド駆動状態(
図1(B))における電流検出と、第二モードであるローサイド駆動状態(
図1(C))における電流検出と、の両方が可能である。
【0123】
トランジスタMN23は、例えばトランジスタMN3と同じサイズの高耐圧のNチャネルMOSトランジスタにより構成されている。トランジスタMN23は、第一オペアンプA1の反転入力端子Tinvと接地電圧端子Tgndとの間に設けられている。トランジスタMN23はトランジスタMN3と接点Tsで電気的に接続される。トランジスタMN23のオン/オフは、パルス信号(VG1)と同相の信号(VLD)によって制御される。ただし、信号(VLD)はローサイド駆動の状態のときのみハイになる。なお、トランジスタMN3のオン/オフは、パルス信号(VG1)と同相の信号(VHD)によって制御される。ただし、信号(VHD)はハイサイド駆動の状態のときのみハイになる。
【0124】
トランジスタMN24,MN25は、例えばトランジスタMN4の2倍のゲート幅を持つ高耐圧のNチャネルMOSトランジスタにより構成されている。トランジスタMN24,MN25は、第一オペアンプA1の非反転入力端子TniとトランジスタMN1のドレインとの間に直列に電流経路を形成するように設けられ、ゲートにローサイド駆動の状態を示す信号(LSC)が供給される。トランジスタMN24とトランジスタMN25とを直列に接続することにより、トランジスタMN24,MN25のボディダイオードを介して電流が流れるのを防ぐことができる。また、トランジスタMN24,MN25を、トランジスタMN4の2倍のゲート幅を持つ高耐圧のNチャネルMOSトランジスタにより構成した場合には、トランジスタMN24,MN25との直列抵抗をトランジスタMN4の抵抗に等しくすることができる。
【0125】
トランジスタMN26は、例えばトランジスタMN4と同じサイズの高耐圧のNチャネルMOSトランジスタにより構成されている。トランジスタMN26は、トランジスタMN24のソースおよびトランジスタMN25のソースと、接地電圧端子Tgndと、の間に設けられ、ゲートにハイサイド駆動の状態を示す信号(HSC)が供給される。
【0126】
トランジスタMN4は、実施例と同様に、第一オペアンプA1の非反転入力端子Tniと接地電圧端子Tgndと、の間に設けられるが、ゲートにはハイサイド駆動の状態を示す信号(HSC)が供給される。
【0127】
図26に示すように、ハイサイド駆動の状態において、トランジスタMN1がオンのときは、トランジスタMN3およびトランジスタMN4がオンし、トランジスタMN23〜MN25はオフして、
図8の電流検出回路12Lと同様の接続関係となり、同様な動作を行う。なお、この状態では、トランジスタMN26がオンして、トランジスタMN24のソースおよびトランジスタMN25のソースは接地電圧(GND)になる。
【0128】
一方、ハイサイド駆動の状態において、トランジスタMN2がオンのときは、トランジスタMN4がオンし、トランジスタMN3およびトランジスタMN23〜MN25はオフする。
【0129】
図27に示すように、ローサイド駆動の状態において、トランジスタMN1がオンのときは、トランジスタMN23〜MN25がオンし、トランジスタMN3,MN4,MN26はオフする。これにより、第一オペアンプA1は、トランジスタMN1のドレイン電圧よりも高い電圧を供給する電圧供給回路OVLLとトランジスタMN23のドレイン電圧との電位差を増幅する。なお、電圧供給回路OVLLは第一電流源CS1とトランジスタMN24,MN25とで構成される。
【0130】
ここで、トランジスタMN23のゲート−ドレイン間電圧およびドレイン−ソース間電圧がそれぞれトランジスタMN1のゲート−ドレイン間電圧およびドレイン−ソース間電圧と同じ値を示す。そのため、トランジスタMN23のドレイン−ソース間には、トランジスタMN1のドレイン−ソース間に流れる電流に比例した電流(本例では1/N(例えばN=1000)倍の電流)が精度良く流れる。
【0131】
なお、ローサイド駆動状態において、トランジスタMN2がオンのときは、トランジスタM3,MN4,MN23〜MN26がオフする。
【0132】
本変形例では、オンするトランジスタを切り替えることで、ハイサイド駆動とローサイド駆動の両駆動での電流検出を行うことができる。
【0133】
なお、本変形例のハイサイド駆動に関するトランジスタMN3,MN4,MN26を取り除いてローサイド駆動のローサイド電流検出回路としてもよい。
【0134】
(第九変形例)
図25の第八変形例の電流検出回路12LHのハイサイド駆動およびローサイド駆動においてハイサイドドライバであるトランジスタMN2がオンのときはトランジスタMN3、MN23をオフにするが、このとき、実施例の電流検出回路12Lと同様に第一オペアンプA1の負荷条件はローサイドドライバであるトランジスタMN1がオンのときの状態と異なることになる。その結果、過渡応答により、トランジスタMN1がオンするときの電流検出回路の応答が遅くなってしまう可能性がある。これを改善する第九変形例のローサイド電流検出回路について
図28〜32を用いて説明する。
図28は第九変形例のローサイド電流検出回路を示す回路図である。
図29は
図28のローサイド電流検出回路におけるハイサイド駆動状態の電流経路を示す図である。
図30は
図28のローサイド電流検出回路におけるハイサイド駆動状態の電流経路を示す図である。
図31は
図28のローサイド電流検出回路におけるローサイド駆動状態の電流経路を示す図である。
図32は
図28のローサイド電流検出回路におけるローサイド駆動状態の電流経路を示す図である。
【0135】
図28に示すように、第九変形例の電流検出回路12LIは、
図25の第八変形例の電流検出回路12LHに、トランジスタMN1、トランジスタMN3、MN23がオフの期間に電流を流すためのトランジスタ(スイッチトランジスタ)MN17をさらに備える。
【0136】
トランジスタMN17は、例えばトランジスタMN3と同じサイズの高耐圧のNチャネルMOSトランジスタにより構成されている。トランジスタMN17は、第一オペアンプA1の反転入力端子Tinvと接地電圧端子Tgndとの間に設けられている。トランジスタMN17のオン/オフは、パルス信号(VG1)の反転信号であるパルス信号(VG2)と同相の信号(VDMY)によって制御される。つまり、トランジスタMN17は、トランジスタMN2,MN3,MN23と相補的にオン/オフが制御される。なお、トランジスタMN17のオンのときの抵抗値は、トランジスタMN3のオンのときの抵抗値と同じ値を示す。電流検出回路12LIのその他の構成については、電流検出回路12LHと同様であるため、その説明を省略する。
【0137】
図29に示すように、ハイサイド駆動状態においてトランジスタMN1がオンのときはトランジスタMN3に電流が流れ、
図30に示すように、ハイサイド駆動状態においてトランジスタMN2がオンのときはトランジスタMN17に電流が流れる。ここで、トランジスタMN3がオフしても、トランジスタMN17がオンするため、第一オペアンプA1に対する抵抗素子による負荷が一定に保たれる。すなわち、トランジスタMN17によってトランジスタMN1がオンのときとトランジスタMN2がオンのときの第一オペアンプA1の負荷条件を揃えることができる。その結果、トランジスタMN3のオン/オフを切り替えた後の第一オペアンプA1の整定時間を低減することができるので、高速動作を実現することができる。
【0138】
図31に示すように、ローサイド状態においてトランジスタMN1がオンのときはトランジスタMN23に電流が流れ、
図32に示すように、ローサイド状態においてトランジスタMN2がオンのときはトランジスタMN17に電流が流れる。ここで、トランジスタMN23がオフしても、トランジスタMN17がオンするため、第一オペアンプA1に対する抵抗素子による負荷が一定に保たれる。すなわち、トランジスタMN17によってトランジスタMN1がオンのときとトランジスタMN2がオンのときの第一オペアンプA1の負荷条件を揃えることができる。その結果、トランジスタMN23のオン/オフを切り替えた後の第一オペアンプA1の整定時間を低減することができるので、高速動作を実現することができる。
【0139】
なお、本変形例のハイサイド駆動に関するトランジスタMN3,MN4,MN26を取り除いてローサイド駆動のローサイド電流検出回路としてもよい。
【0140】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態、実施例および変形例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態、実施例および変形例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【0141】
例えば、実施例ではソレノイドドライバの電流検出回路について説明したが、これに限定されるものでなく、DC−DCコンバータやモータドライバ等のドライバの電流検出回路であってもよい。
【0142】
また、実施例では駆動回路をMOSトランジスタで構成する例について説明したが、これに限定されるものではなく、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)で構成してもよい。この場合、センストランジスタもIGBTで構成する。
【0143】
また、実施例では駆動回路を電流検出回路および制御部と同じ半導体チップで形成する例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば駆動回路は電流検出回路および制御部とは別の半導体チップで形成してもよいし、駆動回路とセンストランジスタを同じ半導体チップに形成し、センストランジスタを除く電流検出回路と制御部を同じ半導体チップに形成してもよい。
【0144】
実施例、第二変形例および第三変形例では、電流源制御回路CSCの検出対象は一つであるが、複数であってもよい。すなわち、ソレノイド電流(Isln)、ローサイドドライバの電流、センストランジスタの電流のうちの少なくとも一つであればよい。
【0145】
第一オペアンプA1、第二オペアンプA2は、低耐圧のトランジスタにより構成する例を説明したが、高耐圧のトランジスタにより構成してもよい。トランジスタMP1〜MP14、MP21は、低耐圧のPチャネルMOSトランジスタにより構成する例を説明したが、高耐圧のPチャネルMOSトランジスタにより構成してもよい。トランジスタMN5〜MN16、MN21は、低耐圧のNチャネルMOSトランジスタにより構成する例を説明したが、高耐圧のNチャネルMOSトランジスタにより構成してもよい。