(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6937762
(24)【登録日】2021年9月2日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】太陽電池用配線材および太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 31/05 20140101AFI20210909BHJP
【FI】
H01L31/04 570
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-540644(P2018-540644)
(86)(22)【出願日】2017年6月28日
(86)【国際出願番号】JP2017023790
(87)【国際公開番号】WO2018055863
(87)【国際公開日】20180329
【審査請求日】2020年6月24日
(31)【優先権主張番号】特願2016-182546(P2016-182546)
(32)【優先日】2016年9月20日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発/先端複合技術型シリコン太陽電池、高性能CIS太陽電池の技術開発」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100152571
【弁理士】
【氏名又は名称】新宅 将人
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】小泉 玄介
(72)【発明者】
【氏名】寺下 徹
【審査官】
山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開平8−312089(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/041506(WO,A1)
【文献】
特開平10−313126(JP,A)
【文献】
特開2013−33848(JP,A)
【文献】
特開2008−168339(JP,A)
【文献】
特公昭46−27284(JP,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0073165(US,A1)
【文献】
国際公開第2013/161030(WO,A1)
【文献】
特開2015−222763(JP,A)
【文献】
特開平10−93125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078、31/18−31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面および裏面を有する太陽電池の複数が配線材により電気的に接続された太陽電池ストリング;前記太陽電池ストリングの受光面側に配置される光透過性の受光面保護材;前記太陽電池ストリングの裏面に配置される裏面保護材;ならびに前記受光面保護材と前記裏面保護材との間に設けられ前記太陽電池ストリングを封止する封止材、を有する太陽電池モジュールであって、
前記太陽電池は、受光面に金属電極を有さず、裏面にのみ金属電極が設けられており、前記太陽電池の受光面には四角錐形状の凹凸構造が設けられており、
前記配線材は、第一主面、第二主面および側面を有し、第一主面の全面に凹凸構造が設けられ、かつ第一主面の全面に導電性黒色層が設けられており、
前記配線材の第一主面の凹凸構造は、三角柱形状または角錐形状の凹凸が規則的に並んだ構造であり、
前記導電性黒色層は、前記配線材の母材の表面に設けられたパラジウムを含むメッキ金属層であり、
前記太陽電池の裏面に設けられた金属電極が、前記配線材の第一主面と接続されている、
太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記配線材の第一主面の凹凸構造の高さが0.1〜500μmである、請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記配線材の第一主面の凹凸構造の高さが0.5〜20μmである、請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記配線材の側面にも前記導電性黒色層が設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記配線材の母材が銅である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記導電性黒色層がPd−Cu合金層である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
前記導電性黒色層が無電解メッキ層である、請求項6に記載の太陽電池モジュール。
【請求項8】
前記太陽電池の裏面に設けられた金属電極と前記配線材とを電気的に接続する導電性接続材料が、受光面から視認される領域に設けられていない、請求項1〜7のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項9】
前記太陽電池の裏面に設けられた金属電極と、前記配線材の第一主面とが、半田接続されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項10】
前記裏面保護材は黒色シートである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の太陽電池を接続するための配線材、および太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶シリコン基板や多結晶シリコン基板等の結晶半導体基板を用いた太陽電池は、1つの基板の面積が小さいため、実用に際しては、複数の太陽電池を電気的に接続してモジュール化を行い、出力を高めている。複数の太陽電池の電気的接続には、金属箔等からなる配線材が用いられ、太陽電池の受光面および裏面に設けられた電極に、半田や導電性接着剤等により配線材が接続される。受光面に電極を有さず裏面のみに電極が設けられた裏面接合型太陽電池では、隣接する太陽電池の裏面の電極同士が配線材により電気的に接続される。
【0003】
太陽電池は、受光面側から視認した場合は黒色を呈しているのに対して、配線材は金属光沢を有する。そのため、建物の屋根や壁面に太陽電池モジュールを設置した場合、配線材に照射された太陽光の反射光が視認され、意匠性が損なわれる。特許文献1では、配線材の受光面側に露出する部分を着色樹脂層で被覆することにより、配線材の金属光沢による意匠性の低下を抑制することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−93125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
太陽電池用配線材は、太陽電池の電極との接続部分が導電性である必要がある。配線材を絶縁性の樹脂層で被覆する場合は、太陽電池の電極との非接続部分を選択的に被覆し、電極との接続部分が被覆されないように樹脂層をパターニングする必要がある。また、配線材と太陽電池との接続時には、樹脂層により被覆されていない部分が太陽電池の電極と接続されるように、位置合わせが必要となる。そのため、配線材の製造コストの増加、配線材接続時の位置合わせのための工数の増加、配線材や太陽電池モジュールの歩留まりの低下等が生じやすい。
【0006】
上記に鑑み、本発明は、太陽電池の電極との接続が容易であり、かつ太陽電池モジュールの意匠性の向上に寄与する太陽電池用配線材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
太陽電池モジュールは、太陽電池ストリングと、太陽電池ストリングの受光面側に配置される透明の受光面保護材と、太陽電池ストリングの裏面に配置される裏面保護材と、受光面保護材と裏面保護材との間に設けられ太陽電池ストリングを封止する封止材とを有する。太陽電池ストリングは、受光面および裏面を有する太陽電池を複数備え、複数の太陽電池が配線材により電気的に接続されている。太陽電池の受光面には凹凸構造が設けられている。
【0008】
太陽電池を接続する配線材は、第一主面、第二主面および側面を有する導電性部材である。配線材は、銅箔等の金属材料からなる母材を備え、母材の表面に、合金層等が設けられている。本発明の配線材は、第一主面の全面に凹凸構造を有し、かつ第一主面の全面に導電性黒色層が設けられている。配線材の側面にも導電性黒色層が設けられていてもよい。
【0009】
導電性黒色層は、母材の表面に形成されたメッキ層であることが好ましい。導電性黒色層は、例えばパラジウムを含む金属層である。パラジウムを含む金属層は、例えば無電解メッキにより配線材の表面に形成される。
【0010】
太陽電池モジュールにおいては、配線材の第一主面が、太陽電池の裏面に設けられた金属電極と接続されている。すなわち、太陽電池モジュールにおいては、第一主面が受光面側、第二主面が裏面側となるように配線材が配置される。配線材と太陽電池の電極とは、半田、導電性フィルム、導電性ペースト等の導電性接続材料を介して接続される。
【0011】
配線材の第一主面の凹凸構造は、例えば三角柱状または角錐形状であり、凹凸が規則的に並んでいることが好ましい。太陽電池の受光面の凹凸構造は四角錐形状であることが好ましい。
【0012】
太陽電池は、いわゆる裏面接合型太陽電池でもよい。裏面接合型太陽電池は、受光面に金属電極を有さず、裏面にのみ金属電極を備える。太陽電池モジュールの裏面保護材が黒色シートであれば、太陽電池モジュールの全面を黒色系で統一できるため、意匠性が高められる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、太陽電池モジュールの意匠性を向上できる。また、本発明の配線材を用いることにより、簡素な製造工程で意匠性の高い太陽電池モジュールを形成できるため、生産効率を向上し、製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態にかかる太陽電池モジュールの模式的断面図である。
【
図3A】配線材の凹凸構造を示す概略斜視図である。
【
図3B】配線材の凹凸構造を示す概略斜視図である。
【
図3C】配線材の凹凸構造を示す概略斜視図である。
【
図3D】配線材の凹凸構造を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、一実施形態の太陽電池モジュール(以下、「モジュール」と記載する)の模式的断面図である。
図1に示すモジュール200は、複数の太陽電池101,102,103(以下、「セル」と記載する)が、配線材82,83を介して電気的に接続された太陽電池ストリングを備える。
【0016】
太陽電池ストリングの受光面側(
図1の上側)には、受光面保護材91が設けられ、裏面側(
図1の下側)には裏面保護材92が設けられている。モジュール200では、保護材91,92の間に封止材95が充填されることにより、太陽電池ストリングが封止されている。
【0017】
セルとしては、結晶シリコン太陽電池や、GaAs等のシリコン以外の半導体基板を備える太陽電池等、太陽電池間を配線材によりインターコネクトするタイプのものが用いられる。
図1に示すモジュール200では、裏面接合型太陽電池の裏面側の電極が配線材82,83により接続されている。
【0018】
裏面接合型太陽電池は、半導体基板の裏面側にp型半導体層およびn型半導体層を備え、p型半導体層上およびn型半導体層上のそれぞれに金属電極が設けられている。裏面接合型太陽電池は、半導体基板の受光面に金属電極を有さず、半導体基板で生成した光キャリア(正孔および電子)を、半導体基板の裏面側に設けられた金属電極により回収する。そのため、セルの裏面側に設けられた電極間を配線材により接続することにより、太陽電池ストリングが形成される。裏面接合型太陽電池は、受光面に金属電極を有していないため、受光面側から視認した際に、セルの全面が黒色系で統一されており、意匠性に優れる。
【0019】
半導体基板に取り込まれる光量を増大させ、変換効率を向上するために、セルの受光面には、凹凸構造が設けられている。凹凸の形状は、四角錐形状(ピラミッド形状)が好ましい。ピラミッド形状の凹凸構造は、例えば、単結晶シリコン基板の表面に異方性エッチング処理を施すことにより形成される。セルの受光面に設けられる凹凸の高さは、例えば、0.5〜10μm程度であり、好ましくは1〜5μm程度である。セルの裏面にも凹凸構造が設けられていてもよい。
【0020】
金属電極は、印刷やメッキ等の公知の方法により形成できる。例えば、Agペーストのスクリーン印刷により形成されたAg電極や、電解メッキにより形成された銅メッキ電極等が好ましく用いられる。
【0021】
図2は、セル101,102が配線材82を介して電気的に接続され、セル102,103が配線材83を介して電気的に接続された太陽電池ストリング120の概略斜視図である。配線材82の一方の端部822はセル101の裏面電極と接続され、配線材82の他方の端部823はセル102の裏面電極と接続されている。配線材83の一方の端部832はセル102の裏面電極と接続され、配線材83の他方の端部833はセル103の裏面電極と接続されている。太陽電池モジュールにおいて、配線材82,83の隣接する太陽電池間の隙間に位置する部分821,831は、受光面側に露出しており、外部から視認される部分である。
【0022】
隣接する2つのセルのうちの一方のセルのp側電極と他方のセルのn側電極とを配線材を介して接続することにより、複数の太陽電池が直列に接続される。隣接するセルのn側電極同士またはp側電極同士を接続することにより、セルを並列接続することもできる。
【0023】
本発明の太陽電池用配線材は、複数のセルの電気的接続に用いられる。配線材は、第一主面、第二主面および側面を有し、太陽電池ストリングでは、第一主面が受光面側、第二主面が裏面側となるように配置される。裏面接合型太陽電池のインターコネクションにおいては、配線材の第一主面が、セルの裏面電極と接続される。
【0024】
配線材の抵抗に起因する電流ロスを低減するために、配線材の材料は低抵抗率であることが好ましい。中でも、低コストであることから、銅を主成分とする金属材料が特に好ましい。
【0025】
配線材は、銅箔等の母材の第一主面上の全面に導電性黒色層が設けられている。第一主面の全面に導電性黒色層が設けられることにより、太陽電池の隙間に位置して受光面に露出する部分821,831での光反射が低減する。そのため、受光面側からモジュールを視認した場合に、配線材の露出部分とセルの色目が統一され、モジュールの意匠性が高められる。
【0026】
配線材の側面にも、第一主面と同様に導電性黒色層が設けられていてもよい。側面に導電性黒色層が設けられることにより、配線材の側面に照射された光の反射光が視認されることによる意匠性の低下を防止できる。太陽電池モジュールの使用環境において、配線材の第二主面は受光面側からは視認されないため、モジュールの意匠性には特段の影響を与えない。そのため、配線材の第二主面は、黒色層が設けられていてもよく、黒色層が設けられていなくてもよい。配線材の表面にメッキ等により導電性黒色層を形成する場合は、生産性等の観点から、配線材の第一主面、側面および第二主面の全面に導電性黒色層を設けてもよい。
【0027】
配線材の表面に設けられる導電性黒色層の材料としては、銅と、ニッケル、クロム亜鉛等を含む合金、金属酸化物、金属中にカーボンナノチューブやカーボン等を分散させたもの等が挙げられる。導電性黒色層として、パラジウムを含む金属層が設けられてもよい。パラジウムを含む金属層の材料としては、金属パラジウムおよびパラジウムを含む合金が挙げられる。パラジウムを含む合金としては、Pd−Cu合金等が挙げられる。パラジウムおよびパラジウム合金は、半田に対する濡れ性が高いため、配線材の第一主面の全面に導電性黒色層を形成した場合でも、セルと配線材との半田接続を容易に行い得るとの利点を有する。
【0028】
母材表面への導電性黒色層の形成方法は特に限定されず、スパッタ法、CVD法、真空蒸着法等のドライプロセス、金属ペースト材料の塗布等のウェットプロセスを適用可能である。導電性黒色層は、電解メッキまたは無電解メッキにより形成されたメッキ層でもよい。パラジウムを含む銅合金層は、無電解メッキにより形成可能である。
【0029】
配線材の第一主面には、全面に凹凸構造が設けられている。配線材の第一主面に凹凸構造が設けられることにより、太陽電池の隙間に位置して受光面に露出する部分821,831での光反射が低減するとともに、セルの受光面の凹凸構造と視感が近似するために、モジュールの意匠性が高められる。セルと配線材の視感を統一するために、セルの受光面の凹凸の形状と、配線材の第一主面の凹凸の形状は近似していることが好ましい。
【0030】
セルの受光面に四角錐形状の凹凸構造が設けられている場合、配線材の第一主面の凹凸構造は、
図3Aに示すような三角柱形状または
図3Bに示すような四角錐形状であることが好ましい。三角柱や角錐は、凸部の頂点が角形状であり、セルの受光面に設けられる四角錐形状の凹凸構造と視感が近似しているため、セルと配線材の視感が統一され、モジュールの意匠性が高められる。
【0031】
凹凸構造の凸部の並びは特に限定されない。凸部の形状が三角柱形状である場合、
図3Aに示すように、三角柱の延在方向が、配線材の延在方向(x方向)と直交していてもよく、
図3Cに示すように、三角柱の延在方向が、配線材の延在方向と平行でもよい。また、
図3Dに示すように、配線材の延在方向と直交でも平行でもない所定の角度をなす方向に三角柱が延在していてもよい。凸部の形状が角錐形状である場合、
図3Bに示すように凸部の頂点が正方格子状に配置されていてもよく、頂点が千鳥状に配置されていてもよい。
【0032】
配線材の第一主面に設けられる凹凸構造は、凸部の高さが0.1〜500μm程度であることが好ましい。配線材の凹凸高さが0.1μm以上であれば、平滑形状と視感の相違が生じ、セル表面と配線材との視感を近づけることができる。配線材の凹凸高さが500μm以下であれば、配線材の厚みの範囲内で凹凸を形成可能であり、配線材の厚みを過度に大きくする必要がない。そのため、配線材の柔軟性や取扱性を維持できる。配線材の凹凸構造の凸部の高さは、0.5〜20μmであることがより好ましい。配線材の凹凸高さがこの範囲であれば、配線材の凹凸とセルの凹凸大きさがさらに近接するため、両者の凹凸形状を極力近付けることによる意匠性の向上に寄与する。
【0033】
配線材表面への凹凸構造の形成方法は特に限定されない。例えば、プレス法等により、機械的に凹凸を形成してもよく、ウェットエッチングにより化学的に凹凸を形成してもよい。セルの視感と配線材の視感とを近似させてモジュールの意匠性を高めるためには、配線材の第一主面には、凹凸が規則的に並んだ規則的な凹凸構造が形成されていることが好ましい。ロール表面の凹凸形状を母材表面に転写する等の機械的手法により、配線材の表面に規則的な凹凸構造を形成できる。
【0034】
本発明においては、配線材82,83の受光面への露出部分821,831だけでなく、セルとの接続部分822,823,832,833においても、第一主面に導電性黒色層および凹凸構造が設けられている。光反射防止のために設けられる黒色層が導電性を有しているため、セルの電極と配線材との接触抵抗が小さく、発電ロスを低減できる。また、配線材のセルとの接続部分に凹凸構造が設けられることにより、半田や導電性接着剤等の導電性接続材料との接触面積が大きくなるため、アンカー効果により、配線材とセルとの接着強度が向上する傾向がある。
【0035】
配線材の第一主面の全面に導電性黒色層および凹凸構造を設ける場合、パターニング等を必要としないため、配線材を低コストで製造できる。また、セルと配線材とを接続する際に、厳密な位置合わせを必要としないため、太陽電池モジュールの生産性および歩留まりを向上できる。
【0036】
モジュールの作製においては、まず、複数のセルが配線材を介して互いに接続して、太陽電池ストリングを作製する。セルの電極と配線材とは、半田、導電性フィルム、導電性ペースト等の導電性接続材料を介して接続される。導電性接続部材は、金属光沢を有しているため、外部から導電性接続部材が視認されるとモジュールの意匠性の低下につながる場合がある。そのため、導電性接続部材は、モジュールの受光面から視認されない領域にのみ設けられ、受光面から視認される領域には導電性接続材料が設けらないことが好ましい。
【0037】
例えば、セルの受光面の電極と配線材との接続においては、配線材の配設領域からはみ出さないように導電性接続材料が設けられることが好ましい。セルの裏面側はモジュールの受光面からは視認されないため、セルの裏面側では、配線材の配設領域から導電性接続材料がはみ出していても特に問題はない。ただし、隣接するセル間の隙間に位置する部分821,831は受光面から視認されるため、この領域には導電性接続材料が設けられていないことが好ましい。
【0038】
複数のセルが配線材を介して接続された太陽電池ストリングが、封止材95を介して、受光面保護材91および裏面保護材92に挟持され、太陽電池モジュールが形成される。受光面保護材上に、受光面封止材、太陽電池ストリング、裏面封止材および裏面保護材を順に載置した積層体を所定条件で加熱することにより、封止材を硬化させることが好ましい。
【0039】
封止材95としては、オレフィン系エラストマーを主成分とするポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン、エチレン/α‐オレフィン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/酢酸ビニル/トリアリルイソシアヌレート(EVAT)、ポリビニルブチラート(PVB)、シリコン、ウレタン、アクリル、エポキシ等の透明樹脂を用いることが好ましい。受光面側と裏面側の封止材の材料は、同一でも異なっていてもよい。
【0040】
受光面保護材91は光透過性であり、ガラスや透明プラスチック等が用いられる。裏面保護材92は、光透過性、光吸収性および光反射性のいずれでもよい。セルおよび配線材との色を統一して、太陽電池モジュールの意匠性を高めるために、裏面保護材として光吸収性の黒色シートを用いてもよい。
【0041】
黒色シートとしては、例えば、黒色樹脂層を含むものが用いられる。黒色樹脂層は可視光吸収性であり、主に波長800nm以下の可視光を吸収する。黒色樹脂層の可視光透過率は10%以下が好ましい。黒色樹脂層としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂および顔料や染料等の色料を含有する樹脂組成物が好ましく用いられる。
【0042】
黒色樹脂層を含む裏面保護材を用いれば、裏面保護材とセルの外観色が近いため、離間して配置されたセル間の隙間が目立たず、意匠性の高いモジュールが得られる。後に詳述するように、本発明においては所定形状の配線材を用いることにより、配線材からの反射光がモジュールの受光面側から外部に射出されないため、配線材の金属色がほとんど視認されない。そのため、光吸収性の裏面保護材を用いることにより、全体が黒色系で統一された意匠性の高いモジュールが得られる。
【0043】
以上説明したように、本発明の配線材を用いることにより、太陽電池モジュールを受光面側から視認した場合に、全面を黒色系で統一できる。また、太陽電池の受光面だけでなく、配線材の表面にも凹凸構造が設けられていることにより、太陽電池と配線材の視感が統一され、配線材がより視認され難くなり、意匠性の高い太陽電池モジュールが得られる。
【0044】
図2では、セルの接続方向と直交する方向の略全長にわたって配線材が設けられた形態が示されているが、配線材の形状は
図2に示す形態に限定されない。例えば、
図4に示す太陽電池ストリング121のように、セルの接続方向に延在する帯状の配線材181,182,183により、隣接するセルの電極を接続してもよい。配線材の形状や本数等は、セルの電極構造等に応じて適宜に設計すればよい。
【0045】
本発明の配線材は、裏面接合型太陽電池だけでなく、両面電極型太陽電池のインターコネクションにも使用できる。両面接合型太陽電池のインターコネクションにおいては、
図5に示すように、隣接する2つのセル301,302の一方のセル301の受光面電極に配線材381の第二主面が接続され、他方のセル302の裏面電極に配線材381の第一主面が接続される。
【0046】
この形態では、隣接するセル間の隙間だけでなく、セルの受光面電極との接続部分においても配線材が受光面に露出している。配線材の全面に導電性黒色層が設けられ、かつ凹凸構造が設けられているため、配線材の第一主面のどの部分が受光面側に露出していても、太陽電池との視感を統一して、意匠性の高いモジュールが得られる。
【符号の説明】
【0047】
101〜103,301,302 太陽電池
81〜84,181〜184,381,382 配線材
120,121,320 太陽電池ストリング
91 受光面保護材
92 裏面保護材
95 封止材
200 太陽電池モジュール