特許第6937773号(P6937773)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6937773ポリエチレングリコール誘導体及びその用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6937773
(24)【登録日】2021年9月2日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】ポリエチレングリコール誘導体及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/333 20060101AFI20210909BHJP
   C07K 1/00 20060101ALI20210909BHJP
   C07K 14/76 20060101ALI20210909BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20210909BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20210909BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20210909BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20210909BHJP
   A61K 38/04 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
   C08G65/333ZNA
   C07K1/00
   C07K14/76
   C07K14/00
   A61K47/60
   A61K47/64
   A61K47/68
   A61K38/04
【請求項の数】32
【全頁数】56
(21)【出願番号】特願2018-547405(P2018-547405)
(86)(22)【出願日】2017年3月7日
(65)【公表番号】特表2019-515972(P2019-515972A)
(43)【公表日】2019年6月13日
(86)【国際出願番号】KR2017002469
(87)【国際公開番号】WO2017155288
(87)【国際公開日】20170914
【審査請求日】2020年3月5日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0027317
(32)【優先日】2016年3月7日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515022445
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】キム デジン
(72)【発明者】
【氏名】リー ジョンス
(72)【発明者】
【氏名】ペ ソンミン
(72)【発明者】
【氏名】クォン セチャン
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2002/087497(WO,A2)
【文献】 Janssen L. Vanderhooft et al.,Synthesis and Characterization of Novel Thiol-Reactive Poly(ethylene glycol)Cross-Linkers for Extracellular-Matrix-Mimetic Biomaterials,Biomacromolecules,Vol.8,2007年 月 日,pp.2883-2889
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/333
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で示される化合物、その立体異性質体、またはその薬学的に許容可能な塩:
【化1】
・・・(1)
(前記化学式(1)において、
1は、2,5−ジオキソピロリジニル、2,5−ジオキソピロリル、アルデヒド、マレイミド、C6−C20アリールジスルフィド、C5−C20ヘテロアリールジスルフィド、ビニルスルホン、チオール、スクシンイミド、及びこれらの誘導体からなる群から選択され、
1〜L3は、それぞれ独立して直鎖または分岐鎖C1−C6アルキレンであり、
2は、オルトピリジルジスルフィド(Orthopyridyl disulfide、OPSS)、チオール、またはハロゲンであり、
nは10〜2400の自然数である)。
【請求項2】
前記R2は、オルトピリジルジスルフィド、チオールまたはヨードである、請求項1に記載の化合物、その立体異性質体、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項3】
前記R1はアルデヒドである、請求項1に記載の化合物、その立体異性質体、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項4】
前記R1及びR2は、互いに異なる官能基を有する、請求項1に記載の化合物、その立体異性質体、またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項5】
前記化合物は、下記化学式(2)で示される、請求項1に記載の化合物、その立体異性質体、またはその薬学的に許容可能な塩:
CHO-(CH2)j-O-(CH2CH2O)n-(CH2)m-NH(CO)-(CH2)k-R2 ・・・(2)
(前記化学式(2)において、
nは10〜2400の自然数であり、
j、m及びkは、それぞれ独立して1〜6の自然数であり、
2は、オルトピリジルジスルフィド(Orthopyridyl disulfide, OPSS)、チオール、またはハロゲンである)。
【請求項6】
前記化合物は、下記化学式(6)〜(11)からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物、その立体異性質体、またはその薬学的に許容可能な塩:
【化2】
・・・(6)
【化3】
・・・(7)
【化4】
・・・(8)
【化5】
・・・(9)
【化6】
・・・(10)
【化7】
・・・(11)
(前記化学式(6)〜(11)において、nは10〜2400の自然数である)。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項によるポリエチレングリコール化合物と生理活性ポリペプチドを反応させ、ポリエチレングリコール化合物が付着した生理活性ポリペプチドを製造する工程を含む、
ポリエチレングリコール化合物が付着した生理活性ポリペプチドの製造方法。
【請求項8】
2に位置したオルトピリジルジスルフィド(Orthopyridyl disulfide、OPSS)、チオール、またはハロゲンが生理活性ポリペプチドのシステイン残基に位置したチオール基と反応する、請求項7に記載のポリエチレングリコール化合物が付着した生理活性ポリペプチドの製造方法。
【請求項9】
さらに、ポリエチレングリコール化合物が付着した生理活性ポリペプチドを精製する工程を含む、請求項7に記載のポリエチレングリコール化合物が付着した生理活性ポリペプチドの製造方法。
【請求項10】
前記生理活性ポリペプチドは、ホルモン、サイトカイン、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液因子、ワクチン、インスリン分泌ペプチド、ニューロペプチド(neuropeptide)、脳下垂体ホルモン、抗肥満ペプチド、抗ウイルスペプチド、生理活性を有する非天然型ペプチド誘導体、構造タンパク質、リガンドタンパク質及び受容体からなる群から選択される、請求項7に記載のポリエチレングリコール化合物が付着した生理活性ポリペプチドの製造方法。
【請求項11】
前記生理活性ポリペプチドは、グルカゴン、インスリン、ソマトスタチン、PYY(peptide YY)、NPY(neuropeptide Y)、GLP−1(Glucagon-like peptide-1)及びGLP−2(Glucagon-like peptide-2)のようなグルカゴン様ペプチド、エキセンジン−3(Exendin-3)、エキセンジン−4(Exendin-4)、オキシントモジュリン(Oxyntomodulin)、グルカゴン受容体、GLP−1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチド、繊維芽細胞成長因子(Fibroblast growth factor)、グレリン(Ghrelin)、アンジオテンシン、ブラジキニン、カルシトニン、副腎皮質刺激ホルモン(Corticotropin)、エレドイシン(Eledoisin)、ガストリン、レプチン、オキシトシン(Oxytocin)、バソプレシン(vasopressin)、黄体形成ホルモン、黄体刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、副甲状腺ホルモン、セクレチン(secretin)、セルモレリン(Sermorelin)、ヒト成長ホルモン(hGH)、成長ホルモン放出ペプチド、コロニー刺激因子(GCSF)類、インターフェロン(IFN)類、インターロイキン(Interleukin)類、プロラクチン放出ペプチド、オレキシン(Orexin)、甲状腺放出ペプチド、コレシストキニン(Cholecystokinin)、ガストリン阻害ペプチド、カルモジュリン、ガストリン放出ペプチド(Gastric releasing peptide)、モチリン(Motilin)、血管作動性腸管ペプチド(Vasoactive intestinal peptide)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(Atrial natriuretic peptide;ANP)、B型ナトリウム利尿ペプチド(B-type natriuretic peptide;BNP)、C型ナトリウム利尿ペプチド(C-type natriuretic peptide;CNP)、ニューロキニン(Neurokinin)A、ニューロメジン(Neuromedin)、レニン(Renin)、エンドセリン(Endothelin)、サラホトキシンペプチド(Sarafotoxin peptide)、カルソモルフィンペプチド(Carsomorphin peptide)、デモルフィン(Dermorphin)、ダイノルフィン(Dynorphin)、エンドルフィン(Endorphin)、エンケファリン(Enkepalin)、T細胞因子、腫瘍壊死因子、腫瘍壊死因子受容体、ウロキナーゼ受容体、腫瘍抑制因子、コラゲナーゼ阻害剤、チモポエチン(Thymopoietin)、チムリン(Thymulin)、チモペンチン(Thymopentin)、チモシン(Tymosin)、胸腺体液性因子(Thymic humoral factor)、アドレノメデュリン(Adrenomedullin)、アラトスタチン(Allatostatin)、アミロイドベータ−プロテイン断片(Amyloid beta-protein fragment)、抗菌性ペプチド、抗酸化剤ペプチド、ボンベシン(Bombesin)、オステオカルシン(Osteocalcin)、CARTペプチド、E−セレクチン(selectin)、ICAM−1、VCAM−1、ロイコカイン(Leucokine)、クリングル(Kringle)−5、ラミニン(Laminin)、インヒビン(Inhibin)、ガラニン(Galanin)、フィブロネクチン(Fibronectin)、パンクレアスタチン(Pancreastatin)及びフューゼオン(Fuzeon)、インターフェロン受容体、Gプロテイン関連受容体(Gprotein-coupled receptor)、インターロイキン受容体、酵素類、インターロイキン結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍抑制因子、転移成長因子、アルファ−1アンチトリプシン、アルブミン、α−ラクトアルブミン、アポリポタンパク質−E、赤血球生成因子、高糖鎖化赤血球生成因子、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモジュリン、血液因子VII、VIIa、VIII、IX、及びXIII、プラスミノーゲン活性因子、フィブリン結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C反応性タンパク質、レニン抑制剤、スーパーオキシドディスムターゼ、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンジオスタチン、アンジオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性因子、組織因子経路阻害剤、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子、リラキシン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体及び抗体断片、赤血球増殖因子、白血球増殖因子、アミリン及びそのアナログからなる群から選択される、
請求項7に記載のポリエチレングリコール化合物が付着した生理活性ポリペプチドの製造方法。
【請求項12】
(a)請求項1〜6のいずれか一項によるポリエチレングリコール化合物と生理活性ポリペプチドまたはキャリアタンパク質のいずれか一つを反応させて生理活性ポリペプチドまたはキャリアタンパク質が、一方の末端に付着し、他方の末端に反応基(reactive end group)を有する、ポリエチレングリコール化合物を製造する工程;及び
(b)前記(a)工程で製造された、生理活性ポリペプチドまたはキャリアタンパク質が、一方の末端に付着し、他方の末端に末端反応基を有する、ポリエチレングリコール化合物とキャリアタンパク質または生理活性ポリペプチドの他の一つを反応させて前記ポリエチレングリコール化合物の末端反応基にキャリアタンパク質または生理活性ポリペプチドを連結させて生理活性ポリペプチドとキャリアタンパク質が、ポリエチレングリコール化合物を通じて連結された、結合体を製造する工程を含む、
生理活性ポリペプチドとキャリアタンパク質がポリエチレングリコール化合物を通じて連結された、結合体の製造方法。
【請求項13】
前記生理活性ポリペプチドは、ホルモン、サイトカイン、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液因子、ワクチン、インスリン分泌ペプチド、ニューロペプチド(neuropeptide)、脳下垂体ホルモン、抗肥満ペプチド、抗ウイルスペプチド、生理活性を有する非天然型ペプチド誘導体、構造タンパク質、リガンドタンパク質及び受容体からなる群から選択される、
生理活性ポリペプチドとキャリアタンパク質が、ポリエチレングリコール化合物を通じて連結された、請求項12に記載の結合体の製造方法。
【請求項14】
前記(a)工程のポリエチレングリコール化合物は、下記化学式(1)の構造を有する、生理活性ポリペプチドとキャリアタンパク質が、ポリエチレングリコール化合物を通じて連結された、請求項12に記載の結合体の製造方法:
【化8】
・・・(1)
(前記化学式(1)において、
1はアルデヒド基であり、
1〜L3は、それぞれ独立して直鎖または分岐鎖C1−C6アルキレンであり、
2はオルトピリジルジスルフィド(Orthopyridyl disulfide、OPSS)、チオール、またはハロゲンであり、
nは10〜2400の自然数である)。
【請求項15】
(a)工程は、前記化学式(1)の構造を有するポリエチレングリコール化合物のR2を生理活性ポリペプチドのシステイン残基に位置したチオール基と反応させる、
生理活性ポリペプチドとキャリアタンパク質が、ポリエチレングリコール化合物を通じて連結された、請求項14に記載の結合体の製造方法。
【請求項16】
(b)工程は、ポリエチレングリコール化合物の末端アルデヒド基をキャリアタンパク質のアミン基と反応させる、
生理活性ポリペプチドとキャリアタンパク質がポリエチレングリコール化合物を通じて連結された、請求項15に記載の結合体の製造方法。
【請求項17】
前記製造方法は、さらに生理活性ポリペプチドとキャリアタンパク質がポリエチレングリコール化合物を通じて連結された結合体を精製する工程を含む、
生理活性ポリペプチドとキャリアタンパク質がポリエチレングリコール化合物を通じて連結された、請求項12に記載の結合体の製造方法。
【請求項18】
前記キャリアタンパク質は、アルブミン及びその断片、特定のアミノ酸配列の繰り返し単位の重合体、抗体、抗体断片、FcRn結合物質、フィブロネクチン、トランスフェリン(Transferrin)、サッカリド(saccharide)、またはエラスチンである、
生理活性ポリペプチドとキャリアタンパク質がポリエチレングリコール化合物を通じて連結された、請求項12に記載の結合体の製造方法。
【請求項19】
前記FcRn結合物質は、免疫グロブリンFc断片である、生理活性ポリペプチドとキャリアタンパク質がポリエチレングリコール化合物を通じて連結された、請求項18に記載の結合体の製造方法。
【請求項20】
請求項1〜6のいずれか一項の化合物が付着した、生理活性ポリペプチド。
【請求項21】
前記化合物が付着した、生理活性ポリペプチドは下記化学式(15)〜(17)のいずれか一つで示される構造を含む、請求項20に記載の生理活性ポリペプチド:
R1-L1-O-(CH2CH2O)n-L2-NH(CO)-L3-S-S-X ・・・(15)
R1-L1-O-(CH2CH2O)n-L2-NH(CO)-CH2-S-X ・・・(16)
X-NHCH2-L1-O-(CH2CH2O)n-L2-NH(CO)-L3-R2 ・・・(17)
(前記化学式(15)〜(17)において、
1は、2,5−ジオキソピロリジニル、2,5−ジオキソピロリル、アルデヒド、マレイミド、C6−C20アリールジスルフィド、C5−C20ヘテロアリールジスルフィド、ビニルスルホン、チオール、スクシンイミド、及びこれらの誘導体からなる群から選択され、
1〜L3は、それぞれ独立して直鎖または分岐鎖C1−C6アルキレンであり、
nは10〜2400の自然数であり、
2は、オルトピリジルジスルフィド(Orthopyridyl disulfide、OPSS)、チオール、またはハロゲンであり、
Xは、生理活性ポリペプチドの一部分である)。
【請求項22】
請求項1〜6のいずれか一項の化合物の両末端の反応基に、それぞれ生理活性ポリペプチド及びキャリアタンパク質が付着した、結合体。
【請求項23】
前記結合体は、下記化学式(18)または(19)で示される構造を有する、請求項22に記載の結合体:
Y-NHCH2-L1-O-(CH2CH2O)n-L2-NH(CO)-L3-S-S-X ・・・(18)
Y-NHCH2-L1-O-(CH2CH2O)n-L2-NH(CO)-CH2-S-X ・・・(19)
(前記化学式(18)及び(19)において、
1〜L3はそれぞれ独立して直鎖または分岐鎖C1−C6アルキレンであり、
nは10〜2400の自然数であり、
Xは生理活性ポリペプチドの一部分であり、
Yはキャリアタンパク質の一部分である)。
【請求項24】
前記キャリアタンパク質は、アルブミン及びその断片、特定のアミノ酸配列の繰り返し単位の重合体、抗体、抗体断片、FcRn結合物質、フィブロネクチン、トランスフェリン(Transferrin)、サッカリド(saccharide)、またはエラスチンである、請求項22に記載の結合体。
【請求項25】
前記FcRn結合物質は、免疫グロブリンFc断片である、請求項24に記載の結合体。
【請求項26】
(a)ポリエチレングリコールの一方の末端に2,5−ジオキソピロリジニル、2,5−ジオキソピロリル、アルデヒド、マレイミド、C6−C20アリールジスルフィド、C5−C20ヘテロアリールジスルフィド、ビニルスルホン、チオール、スクシンイミド、及びこれらの誘導体からなる群から選択されるR1を導入する工程;及び
(b)前記ポリエチレングリコールの他方の末端に−NH(CO)L3−R2構造を導入する工程を含み、ここで、R2は、オルトピリジルジスルフィド(Orthopyridyl disulfide, OPSS),チオール、またはハロゲンである、請求項1の化合物の製造方法。
【請求項27】
化学式(20)で示される化合物から化学式(21)で示される化合物を準備する第1の工程;
化学式(21)で示される化合物から化学式(22)で示される化合物を準備する第2の工程;及び
化学式(22)で示される化合物を酸溶液で処理して末端のジエトキシメチルをアルデヒドに転換する第3の工程を含む、請求項26に記載の製造方法:
【化9】
・・・(20)
(式中、n’はnまたはn+1であり、Msはメタンスルホニル基である
【化10】
・・・(21)
【化11】
・・・(22)
(式中、前記L1、L2、L3、n及びR2については、請求項1に記載された通りである)。
【請求項28】
前記第1の工程の化学式(20)で示される化合物は、下記化学式(23)で示される化合物をメタンスルホニルクロリドと反応させて準備する、請求項27に記載の製造方法:
【化12】

・・・(23)
【請求項29】
前記第1の工程は、化学式(20)で示される化合物をアンモニア水溶液及び塩化アンモニウムと反応させることにより行う、請求項27に記載の製造方法。
【請求項30】
前記第1の工程は、化学式(20)で示される化合物をヒドロキシアルキルテトラヒドロピラニルエーテルと反応させて化学式(24)で示される化合物を製造する第1−1工程;
化学式(24)で示される化合物をp−トルエンスルホン酸と反応させて末端のテトラヒドロピラニルオキシ基をヒドロキシ基に置換する第1−2工程;
以前の工程から得られた化合物をメタンスルホニルクロリドと反応させてヒドロキシ基をメタンスルホン酸基に転換する第1−3工程;及び
以前の工程から得られた化合物をアンモニア水溶液及び塩化アンモニウムと反応させる第1−4工程を含めて行う、請求項27に記載の製造方法:
【化13】
・・・(24)
(式中、OTHPはテトラヒドロピラニルオキシ基である)
【請求項31】
前記第2の工程は、化学式(21)で示される化合物を、下記化学式(25)で示される化合物と反応させて行う、請求項27に記載の製造方法:
【化14】
・・・(25)
(式中、OPSSはオルトピリジルジスルフィドである)
【請求項32】
前記第2の工程は、化学式(21)で示される化合物をクロロ(C2−C7アルカノイル)クロリドと反応させて中間体として下記化学式(26)で示される、末端にクロロ基を含む化合物を合成した後、硫化水素ナトリウムの存在または不在の下でハロゲン金属塩と反応させてクロロ基をチオールまたはハロゲンに転換して行う、請求項27に記載の製造方法:
【化15】
・・・(26)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレングリコール誘導体及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレングリコール(Polyethylene glycol、PEG)は、高い体内半減期を有し、抗原性を有さない物質であり、脂質やタンパク質など多様な生理活性物質と結合して薬剤学的に広く利用されており、それ自体としての薬学的用途として研究されている代表的な生体適合性物質である。
【0003】
特に、ポリエチレングリコールは、タンパク質治療剤と結合して血中半減期を増加させ、タンパク質治療剤の抗原性を減少させる効果を有しており、タンパク質治療剤の側面で広く使用されている。また、タンパク質にポリエチレングリコール分子を共有結合させたペグ化(PEGylation)は、タンパク質治療剤の安定性を向上させることが報告された(Cantin et al., Am. J. 27:659-665 (2002)(非特許文献1))。
【0004】
一方、このような薬剤を製造する過程において、タンパク質治療剤の活性を維持しながら、結合体の製造収率を高めるためには、精巧な製造技術を必要とする。これにより、ポリエチレングリコールを含むタンパク質治療剤を製造する方法と、このような製造に使用されるポリエチレングリコールに関する継続的な研究が進められてきた。
【0005】
本発明者らは、ポリエチレングリコールを用いた生理活性ポリペプチド結合体を製造するにおいて、二つ以上の反応基を有するポリエチレングリコールをリンカーとして使用した(大韓民国公開特許第10-2014-0018462号(特許文献1)。
【0006】
前記従来のポリエチレングリコールは、反応基としてアルデヒド基、スクシンイミジル基、マレイミド基(maleimide)、ビニルスルホン基(vinylsulfone)、ハロゲン化アセトアミン基、またはオルトピリジルジスルフィド基(Orthopyridyl disulfide、OPSS)などを有することが知られている。
【0007】
ただし、既存に使用されたポリエチレングリコールは、このそれぞれの末端に目的とする反応基が含まれても、その構造に応じた反応性の違いを有する不便さがあった。
【0008】
したがって、目的とする物質に結合する反応基を含みながらも、これら物質との反応がより容易な新たなポリエチレングリコール誘導体の開発が求められてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】大韓民国公開特許第10−2014−0018462号公報
【特許文献2】国際特許公開第WO97/34631号公報
【特許文献3】国際特許公開第96/32478号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Cantin et al.,Am.J.27:659−665(2002)
【非特許文献2】H.Neurath、R.L.Hill、The Proteins、Academic Press、New York、1979
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の一つの目的は、ポリエチレングリコール化合物、その立体異性質体、またはその薬学的に許容可能な塩を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、前記ポリエチレングリコール化合物と生理活性ポリペプチドを反応させてポリエチレングリコール化合物が付着した生理活性ポリペプチドを製造する工程を含む、ポリエチレングリコール化合物が付着した生理活性ポリペプチドの製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明のまた他の目的は、生理活性ポリペプチドとキャリアタンパク質が、ポリエチレングリコール化合物を通じて連結された、結合体の製造方法を提供することにある。
【0014】
本発明のまた他の目的は、前記ポリエチレングリコール化合物が付着した、生理活性ポリペプチドを提供することにある。
【0015】
本発明のまた他の目的は、前記ポリエチレングリコール化合物の両末端の反応基に、それぞれ生理活性ポリペプチド及びキャリアタンパク質が付着した、結合体を提供することにある。
【0016】
本発明のまた他の目的は、前記ポリエチレングリコール化合物の製造方法を提供することにある。
【0017】
本発明のまた他の目的は、生理活性ポリペプチドの生体内半減期を増加させるキャリアを生理活性ポリペプチドに連結させるための、前記ポリエチレングリコール化合物の用途を提供することにある。
【0018】
本発明のまた他の目的は、前記ポリエチレングリコール化合物が付着した、生理活性ポリペプチドまたは前記結合体を含む組成物を提供することにある。
【0019】
本発明のまた他の目的は、生理活性ポリペプチドの生体内半減期を増加させるキャリアを生理活性ポリペプチドに連結させるためのポリエチレングリコール化合物のリンカーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明を具現する一つの態様は、ポリエチレングリコール化合物、その立体異性質体、またはその薬学的に許容可能な塩である。
【0021】
一つの具体例としては、前記化合物は、下記化学式(1)で示される化合物であることを特徴とする:
【0022】
【化1】
・・・(1)
【0023】
前記化学式(1)において、
1は、2,5−ジオキソピロリジニル、2,5−ジオキソピロリル、アルデヒド、マレイミド、C6−C20アリールジスルフィド、C5−C20ヘテロアリールジスルフィド、ビニルスルホン、チオール、ハロゲン化アセトアミド、スクシンイミド、p−ニトロフェニルカーボネート、及びこれらの誘導体からなる群から選択され、
1〜L3は、それぞれ独立して直鎖または分岐鎖C1−C6アルキレンであり、
2は、オルトピリジルジスルフィド(Orthopyridyl disulfide、OPSS)、チオール、またはハロゲンであり、
nは10〜2400の自然数である。
【0024】
他の具体例として、前記R2は、オルトピリジルジスルフィド、チオール、またはヨードであることを特徴とする。
【0025】
他の具体例として、前記R1は、アルデヒドであることを特徴とする。
【0026】
他の具体例として、前記R1及びR2は、互いに異なる官能基を有することを特徴とする。
【0027】
他の具体例として、前記化合物は、下記化学式(2)で示されることを特徴とする:
【0028】
CHO-(CH2)j-O-(CH2CH2O)n-(CH2)m-NH(CO)-(CH2)k-R2・・・(2)
【0029】
前記化学式(2)において、
nは10〜2400の自然数であり、
j、m及びkは、それぞれ独立して1〜6の自然数であり、
2は、オルトピリジルジスルフィド(Orthopyridyl disulfide、OPSS)、チオール、またはハロゲンである。
【0030】
他の具体例として、前記化合物は、下記化学式(3)〜(11)からなる群から選択されることを特徴とする:
【0031】
【化2】
・・・(3)
【0032】
【化3】
・・・(4)
【0033】
【化4】
・・・(5)
【0034】
【化5】
・・・(6)
【0035】
【化6】
・・・(7)
【0036】
【化7】
・・・(8)
【0037】
【化8】
・・・(9)
【0038】
【化9】
・・・(10)
【0039】
【化10】
・・・(11)
【0040】
前記化学式(3)〜(11)において、nは10〜2400の自然数である。
【0041】
本発明を具現する他の一つの態様は、ポリエチレングリコール化合物と生理活性ポリペプチドを反応させてポリエチレングリコール化合物が付着した生理活性ポリペプチドを製造する工程を含む、ポリエチレングリコール化合物が付着した生理活性ポリペプチドの製造方法である。
【0042】
一つの具体例として、前記製造方法においてR2に位置したオルトピリジルジスルフィド(Orthopyridyl disulfide、OPSS)、チオール、またはハロゲンが生理活性ポリペプチドのシステイン残基に位置したチオール基と反応することを特徴とする。
【0043】
他の具体例として、前記製造方法は、さらにポリエチレングリコール化合物が付着した生理活性ポリペプチドを精製する工程を含むことを特徴とする。
【0044】
他の具体例として、前記生理活性ポリペプチドは、ホルモン、サイトカイン、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液因子、ワクチン、インスリン分泌ペプチド、ニューロペプチド(neuropeptide)、脳下垂体ホルモン、抗肥満ペプチド、抗ウイルスペプチド、生理活性を有する非天然型ペプチド誘導体、構造タンパク質、リガンドタンパク質及び受容体からなる群から選択されることを特徴とする。
【0045】
他の具体例として、前記生理活性ポリペプチドは、グルカゴン、インスリン、ソマトスタチン、PYY(peptide YY)、NPY(neuropeptide Y)、GLP−1(Glucagon-like peptide-1)及びGLP−2(Glucagon-like peptide-2)のようなグルカゴン様ペプチド、エキセンジン−3(Exendin-3)、エキセンジン−4(Exendin-4)、オキシントモジュリン(Oxyntomodulin)、グルカゴン受容体、GLP−1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチド、繊維芽細胞成長因子(Fibroblast growth factor)、グレリン(Ghrelin)、アンジオテンシン、ブラジキニン、カルシトニン、副腎皮質刺激ホルモン(Corticotropin)、エレドイシン(Eledoisin)、ガストリン、レプチン、オキシトシン(Oxytocin)、バソプレシン(vasopressin)、黄体形成ホルモン、黄体刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、副甲状腺ホルモン、セクレチン(secretin)、セルモレリン(Sermorelin)、ヒト成長ホルモン(hGH)、成長ホルモン放出ペプチド、コロニー刺激因子(GCSF)類、インターフェロン(IFN)類、インターロイキン(Interleukin)類、プロラクチン放出ペプチド、オレキシン(Orexin)、甲状腺放出ペプチド、コレシストキニン(Cholecystokinin)、ガストリン阻害ペプチド、カルモジュリン、ガストリン放出ペプチド(Gastric releasing peptide)、モチリン(Motilin)、血管作動性腸管ペプチド(Vasoactive intestinal peptide)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(Atrial natriuretic peptide;ANP)、B型ナトリウム利尿ペプチド(B-type natriuretic peptide;BNP)、C型ナトリウム利尿ペプチド(C-type natriuretic peptide;CNP)、ニューロキニン(Neurokinin)A、ニューロメジン(Neuromedin)、レニン(Renin)、エンドセリン(Endothelin)、サラホトキシンペプチド(Sarafotoxin peptide)、カルソモルフィンペプチド(Carsomorphin peptide)、デモルフィン(Dermorphin)、ダイノルフィン(Dynorphin)、エンドルフィン(Endorphin)、エンケファリン(Enkepalin)、T細胞因子、腫瘍壊死因子、腫瘍壊死因子受容体、ウロキナーゼ受容体、腫瘍抑制因子、コラゲナーゼ阻害剤、チモポエチン(Thymopoietin)、チムリン(Thymulin)、チモペンチン(Thymopentin)、チモシン(Tymosin)、胸腺体液性因子(Thymic humoral factor)、アドレノメデュリン(Adrenomedullin)、アラトスタチン(Allatostatin)、アミロイドβ−プロテイン断片(Amyloid beta-protein fragment)、抗菌性ペプチド、抗酸化剤ペプチド、ボンベシン(Bombesin)、オステオカルシン(Osteocalcin)、CARTペプチド、E−セレクチン(selectin)、ICAM−1、VCAM−1、ロイコカイン(Leucokine)、クリングル(Kringle)−5、ラミニン(Laminin)、インヒビン(Inhibin)、ガラニン(Galanin)、フィブロネクチン(Fibronectin)、パンクレアスタチン(Pancreastatin)及びフューゼオン(Fuzeon)、インターフェロン受容体、Gプロテイン関連受容体(Gprotein-coupled receptor)、インターロイキン受容体、酵素類、インターロイキン結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍抑制因子、転移成長因子、アルファ−1アンチトリプシン、アルブミン、α−ラクトアルブミン、アポリポタンパク質−E、赤血球生成因子、高糖鎖化赤血球生成因子、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモジュリン、血液因子VII、VIIa、VIII、IX、及びXIII、プラスミノーゲン活性因子、フィブリン結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C反応性タンパク質、レニン抑制剤、スーパーオキシドディスムターゼ、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンジオスタチン、アンジオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性因子、組織因子経路阻害剤、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子、リラキシン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体及び抗体断片、赤血球増殖因子、白血球増殖因子、アミリン及びそのアナログからなる群から選択されることを特徴とする。
【0046】
本発明を具現する他の一つの態様は、生理活性ポリペプチドとキャリアタンパク質が、ポリエチレングリコール化合物を通じて連結された、結合体の製造方法である。
【0047】
一つの具体例として、前記製造方法は、
(a)前記ポリエチレングリコール化合物と生理活性ポリペプチドまたはキャリアタンパク質のいずれか一つを反応させて生理活性ポリペプチドまたはキャリアタンパク質が、一方の末端に付着し、他方の末端に反応基(reactive end group)を有する、ポリエチレングリコール化合物を製造する工程;及び
(b)前記(a)工程で製造された、生理活性ポリペプチドまたはキャリアタンパク質が、一方の末端に付着し、他方の末端に末端反応基を有する、ポリエチレングリコール化合物とキャリアタンパク質または生理活性ポリペプチドの他の一つを反応させて前記ポリエチレングリコール化合物の末端反応基にキャリアタンパク質または生理活性ポリペプチドを連結させて生理活性ポリペプチドとキャリアタンパク質が、ポリエチレングリコール化合物を通じて連結された、結合体を製造する工程を含むことを特徴とする。
【0048】
他の具体例として、
(a)前記ポリエチレングリコール化合物と生理活性ポリペプチドを反応させて生理活性ポリペプチドが一方の末端に付着し、他方の末端に反応基(reactive end group)を有する、ポリエチレングリコール化合物を製造する工程;及び
(b)前記(a)工程で製造された、生理活性ポリペプチドが、一方の末端に付着し、他方の末端に末端反応基を有する、ポリエチレングリコール化合物とキャリアタンパク質を反応させて前記ポリエチレングリコール化合物の末端反応基にキャリアタンパク質を連結させる工程を含むことを特徴とする。
【0049】
他の具体例として、前記生理活性ポリペプチドは、ホルモン、サイトカイン、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液因子、ワクチン、インスリン分泌ペプチド、ニューロペプチド(neuropeptide)、脳下垂体ホルモン、抗肥満ペプチド、抗ウイルスペプチド、生理活性を有する非天然型ペプチド誘導体、構造タンパク質、リガンドタンパク質及び受容体からなる群から選択されることを特徴とする。
【0050】
他の具体例として、前記(a)工程のポリエチレングリコール化合物は、前記化学式(1)の構造を有することを特徴とする。
【0051】
他の具体例として、前記方法において、(a)工程は、前記化学式(1)の構造を有するポリエチレングリコール化合物のR2を生理活性ポリペプチドのシステイン残基に位置したチオール基と反応させることを特徴とする。
【0052】
他の具体例として、(b)工程は、ポリエチレングリコール化合物の末端アルデヒド基を、免疫グロブリンFc断片のアミン基と反応させることを特徴とする。
【0053】
他の具体例として、前記製造方法は、さらに生理活性ポリペプチドとキャリアタンパク質が、ポリエチレングリコール化合物を通じて連結された、結合体を精製する工程を含むことを特徴とする。
【0054】
他の具体例として、前記キャリアタンパク質は、アルブミン及びその断片、特定のアミノ酸配列の繰り返し単位の重合体、抗体、抗体断片、FcRn結合物質、フィブロネクチン、トランスフェリン(Transferrin)、サッカリド(saccharide)、またはエラスチンであることを特徴とする。
【0055】
他の具体例として、前記FcRn結合物質は、免疫グロブリンFc断片であることを特徴とする。
【0056】
本発明を具現する他の一つの態様は、前記ポリエチレングリコール化合物が付着した、生理活性ポリペプチドである。
【0057】
一つの具体例としては、前記化合物が付着した、生理活性ポリペプチドは、下記化学式(15)〜(17)のいずれか一つで示される構造を含むことを特徴とする:
【0058】
R1-L1-O-(CH2CH2O)n-L2-NH(CO)-L3-S-S-X ・・・(15)
【0059】
R1-L1-O-(CH2CH2O)n-L2-NH(CO)-CH2-S-X ・・・(16)
【0060】
X-NHCH2-L1-O-(CH2CH2O)n-L2-NH(CO)-L3-R2 ・・・(17)
【0061】
前記化学式(15)〜(17)において、
1は、2,5−ジオキソピロリジニル、2,5−ジオキソピロリル、アルデヒド、マレイミド、C6−C20アリールジスルフィド、C5−C20ヘテロアリールジスルフィド、ビニルスルホン、チオール、ハロゲン化アセトアミド、スクシンイミド、p−ニトロフェニルカーボネート、及びこれらの誘導体からなる群から選択され、
1〜L3は、それぞれ独立して直鎖または分岐鎖C1−C6アルキレンであり、
nは10〜2400の自然数であり、
2は、オルトピリジルジスルフィド(Orthopyridyl disulfide、OPSS)、チオール、またはハロゲンであり、
Xは、生理活性ポリペプチドの一部分である。
【0062】
本発明を具現する他の一つの態様は、前記ポリエチレングリコール化合物の両末端の反応基に、それぞれ生理活性ポリペプチド及びキャリアタンパク質が付着した、結合体である。
【0063】
一つの具体例として、前記結合体は、下記化学式(18)または(19)で示される構造を有する、結合体であることを特徴とする:
【0064】
Y-NHCH2-L1-O-(CH2CH2O)n-L2-NH(CO)-L3-S-S-X ・・・(18)
【0065】
Y-NHCH2-L1-O-(CH2CH2O)n-L2-NH(CO)-CH2-S-X ・・・(19)
【0066】
前記化学式(18)及び(19)において、
1〜L3は、それぞれ独立して直鎖または分岐鎖C1−C6アルキレンであり、
nは10〜2400の自然数であり、
Xは、生理活性ポリペプチドの一部分であり、
Yは、キャリアタンパク質の一部分である。
【0067】
他の具体例として、前記キャリアタンパク質はアルブミン及びその断片、特定のアミノ酸配列の繰り返し単位の重合体、抗体、抗体断片、FcRn結合物質、フィブロネクチン、トランスフェリン(Transferrin)、サッカリド(saccharide)、またはエラスチンであることを特徴とする。
【0068】
他の具体例として、前記FcRn結合物質は、免疫グロブリンFc断片であることを特徴とする。
【0069】
本発明を具現する他の一つの態様は、前記ポリエチレングリコール化合物の製造方法である。
【0070】
一つの具体例として、前記方法は、
(a)ポリエチレングリコールの一方の末端に2,5−ジオキソピロリジニル、2,5−ジオキソピロリル、アルデヒド、マレイミド、C6−C20アリールジスルフィド、C5−C20ヘテロアリールジスルフィド、ビニルスルホン、チオール、ハロゲン化アセトアミド、スクシンイミド、p−ニトロフェニルカーボネート、及びこれらの誘導体からなる群から選択されるR1を導入する工程;及び
(b)前記ポリエチレングリコールの他方の末端に−NH(CO)L3−R2構造を導入する工程を含み、ここで、R2はオルトピリジルジスルフィド(Orthopyridyl disulfide、OPSS)、チオール、またはハロゲンであることを特徴とする。
【0071】
他の具体例として、
化学式(20)で示される化合物から化学式(21)で示される化合物を準備する第1の工程;化学式(21)で示される化合物から化学式(22)で示される化合物を準備する第2の工程;及び化学式(22)で示される化合物を酸溶液で処理して末端のジエトキシメチルをアルデヒドに転換する第3の工程を含むことを特徴とする:
【0072】
【化11】
・・・(20)
【0073】
ここで、n’はnまたはn+1
【0074】
【化12】
・・・.(21)
【0075】
【化13】
・・・(22)
【0076】
ここで、前記L1、L2、L3、n及びR2については、前記で記述した通りである。
【0077】
他の具体例として、前記第1の工程の化学式(20)で示される化合物は、下記化学式(23)で示される化合物をメタンスルホニルクロリドと反応させて準備することを特徴とする:
【0078】
【化14】

・・・(23)
【0079】
他の具体例として、前記第1の工程は、化学式(20)で示される化合物をアンモニア水溶液及び塩化アンモニウムと反応させることにより行うことを特徴とする。
【0080】
他の具体例として、前記第1の工程は、化学式(20)で示される化合物をヒドロキシアルキルテトラヒドロピラニルエーテルと反応させて化学式(24)で示される化合物を製造する第1−1工程;
化学式(24)で示される化合物をp−トルエンスルホン酸と反応させて末端のテトラヒドロピラニルオキシ基をヒドロキシ基に置換する第1−2工程;
以前の工程から得られた化合物をメタンスルホニルクロリドと反応させてヒドロキシ基をメタンスルホン酸基に転換する第1−3工程;及び
以前の工程から得られた化合物をアンモニア水溶液及び塩化アンモニウムと反応させる第1−4工程を含めて行うことを特徴とする。
【0081】
【化15】
・・・(24)
【0082】
他の具体例として、前記第2の工程は、化学式(21)で示される化合物を下記化学式(25)で示される化合物と反応させて行うことを特徴とする:
【0083】
【化16】
・・・(25)
【0084】
他の具体例として、前記第2の工程は、化学式(21)で示される化合物をクロロ(C2−C7アルカノイル)クロリドと反応させて中間体として下記化学式(26)で示される、末端にクロロ基を含む化合物を合成した後、硫化水素ナトリウムの存在または不在の下でハロゲン金属塩と反応させてクロロ基をチオールまたはハロゲンに転換して行うことを特徴とする:
【0085】
【化17】
・・・(26)
【0086】
本発明を具現する他の一つの態様は、生理活性ポリペプチドの生体内半減期を増加させるキャリアを生理活性ポリペプチドに連結させるための、前記ポリエチレングリコール化合物の用途である。
【0087】
本発明を具現する他の一つの態様は、前記ポリエチレングリコール化合物が付着した、生理活性ポリペプチドまたは前記結合体を含む組成物である。
【0088】
本発明を具現する他の一つの態様は、ポリエチレングリコール化合物、その立体異性質体、またはその薬学的に許容可能な塩を含む、生理活性ポリペプチドの生体内半減期を増加させるキャリアを生理活性ポリペプチドに連結させるためのリンカーである。
【発明の効果】
【0089】
本発明のポリエチレングリコール誘導体は、その末端に目的とする反応基を含みながらも、それと連結しようとする目的物質(例えば、タンパク質)との反応性が容易であり、タンパク質結合体などの結合薬物に対する薬剤の製造分野において有用に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
図1a-1b】本発明の新規なポリエチレングリコール化合物の一例であり、1)アルデヒド基とオルトピリジルジスルフィド基を有する化合物の化学構造(リンカー1、4、7)、2)アルデヒド基とヨウ化アセトアミン基あるいはヨード基を有する化合物の化学構造(リンカー2、5、8)、及び3)アルデヒド基とスルフヒドリル基を有する化合物の化学構造(リンカー3、6、9)を示す。図1bにおいてリンカー10〜12は、比較群に該当する。
図2】リンカー1の製造後、核磁気共鳴法(NMR)で分析、確認した結果である。
図3】リンカー1の製造後、逆相クロマトグラフィーで分析した結果である。
図4】リンカー2の製造後、核磁気共鳴法(NMR)で分析、確認した結果である。
図5】リンカー2の製造後、逆相クロマトグラフィーで分析した結果である。
図6】リンカー3の製造後、核磁気共鳴法(NMR)で分析、確認した結果である。
図7】リンカー3の製造後、逆相クロマトグラフィーで分析した結果である。
図8】リンカー5の製造後、核磁気共鳴法(NMR)で分析、確認した結果である。
図9】リンカー5の製造後、逆相クロマトグラフィーで分析した結果である。
図10】リンカー5の製造後、分子量をMALDI−TOFで分析した結果である。
図11】リンカー7の製造後、逆相クロマトグラフィーで分析した結果である。
図12】リンカー8の製造後、核磁気共鳴法(NMR)で分析、確認した結果である。
図13】リンカー8の製造後、逆相クロマトグラフィーで分析した結果である。
図14】リンカー8の製造後、分子量をMALDI−TOFで分析した結果である。
図15】リンカー9の製造後、逆相クロマトグラフィーで分析した結果である。
図16】リンカー11の製造後、核磁気共鳴法(NMR)で分析、確認した結果である。
図17】リンカー11の製造後、逆相クロマトグラフィーで分析した結果である。
図18】本発明に係るポリエチレングリコール化合物のチオール反応性基(thiol reactive group)の反応性比較実験の結果を示す。
図19-21】本発明に係るポリエチレングリコール化合物をリンカーとして使用して製造した三重活性体−PEG−Fc結合体のSDS−PAGE分析の結果を示したものである。図19は本発明によるリンカー7を、図20はリンカー8を、図21はリンカー9を使用した場合におけるSDS−PAGE分析の結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0091】
本発明を具現する一つの態様は、ポリエチレングリコール化合物、その立体異性質体、またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0092】
これを具体的に説明すると次の通りである。一方、本願で開示されたそれぞれの説明及び実施形態は、それぞれの他の説明及び実施形態にも適用することができる。即ち、本願で開示された多様な要素のすべての組み合わせが本発明の範囲に属する。また、下記記述された具体的な叙述により本発明の範疇が限定されると見られない。
【0093】
本発明において、用語「ポリエチレングリコール化合物」とは、ポリエチレングリコール構造 [−(OCH2CH2n−]を含む化合物をいう。より具体的には、本発明において前記ポリエチレングリコール化合物は、2つ以上の末端反応基を含むことができる。
【0094】
この時、前記ポリエチレングリコール化合物に存在する2つ以上の末端反応基は、互いに同一または異なってもよい。より具体的には、互いに異なる種類の末端反応基に作用するヘテロ官能性(heterofunctional)リンカーであってもよい。例えば、前記化合物のいずれか一つの末端は、アミン基に作用性を有するのに対し、他方の末端は、チオール基に作用性を有することが挙げられる。しかし、特にこれに制限されるものではない。
【0095】
また、前記ポリエチレングリコール化合物は、生理活性ポリペプチドにキャリアを結合させるためのリンカーとして使用することができる。したがって、前記2つ以上の末端反応基を有するポリエチレングリコール化合物の一つの末端は生理活性ポリペプチドに、他方の末端はキャリアに連結されてもよい。
【0096】
一方、本発明において、前記ポリエチレングリコール化合物は、ポリエチレングリコール誘導体と混用して使用される。
【0097】
具体的な様態として、本発明に係るポリエチレングリコール化合物は、次のようにチオール反応基(thiol reactive group)とポリエチレングリコール構造との間に−NHCO−の構造を含むものであってもよい。
【0098】
具体的には、前記化合物は、下記化学式(1)で示される化合物であってもよい:
【0099】
【化18】
・・・(1)
【0100】
前記化学式(1)において、
1は、2,5−ジオキソピロリジニル、2,5−ジオキソピロリル、アルデヒド、マレイミド、C6−C20アリールジスルフィド、C5−C20ヘテロアリールジスルフィド、ビニルスルホン、チオール、ハロゲン化アセトアミド、スクシンイミド、p−ニトロフェニルカーボネート、及びこれらの誘導体からなる群から選択され、
1〜L3は、それぞれ独立して直鎖または分岐鎖C1−C6アルキレンであり、
2は、オルトピリジルジスルフィド(Orthopyridyl disulfide、OPSS)、チオール、またはハロゲンであり、
nは10〜2400の自然数である。
【0101】
前記化学式において、R2は、オルトピリジルジスルフィド、チオール、F、Br、Cl、またはIであってもよく、より具体的には、オルトピリジルジスルフィド、またはIであってもよいが、特にこれらに限定されるものではない。
【0102】
前記化学式において、R1はアルデヒドであってもよいが、特にこれに限定されない。
【0103】
前記化学式において、R1は、スクシンイミド誘導体であってもよく、その種類としてスクシンイミジルプロピオネート、ヒドロキシスクシンイミジル、スクシンイミジルカルボキシメチルまたはスクシンイミジルカーボネートが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0104】
また、前記化合物は、互いに異なる種類の末端反応基に作用するヘテロ官能性(heterofunctional)であってもよく、具体的には、R1及びR2は、互いに異なる官能基を有することができる。しかし、特にこれに制限されるものではない。
【0105】
具体的には、R1はアルデヒドであり、R2はオルトピリジルジスルフィド(Orthopyridyl disulfide、OPSS)、チオール、またはハロゲンであってもよいが、特にこれらに限定されるものではない。
【0106】
前記化合物において、L1〜L3は、それぞれ独立して直鎖または分岐鎖C1−C6アルキレン、より具体的にはC1−C4アルキレンであってもよいが、特にこれらに限定されるものではない。
【0107】
例えば、前記L1は、1、2、3、4、5、または6の自然数であってもよく、L2は、1、2、3、4、5、または6の自然数であってもよく、前記L3は、1、2、3、4、5、または6の自然数であってもよい。
【0108】
一つの例として、L2は2、4、または6であり、L1とL3は、1、2、3、4、5、または6であってもよい。
【0109】
前記化合物において、R1−L1−は、アルキルアルデヒドであってもよく、例えば、C2−C6アルキルアルデヒドであってもよく、具体的にプロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒドなどであってもよいが、特にこれに限定されない。
【0110】
また、特にこれに限定されないが、本発明のポリエチレングリコール化合物は、約100ダルトン〜約110,000ダルトンの分子量、具体的には約400〜約110,000ダルトンの分子量は、より具体的には、約1000〜100,000ダルトンの分子量、さらに具体的には約1000〜20,000ダルトンの分子量を有することができるが、特にこれに限定されるものではない。
【0111】
前記nは10〜2400の自然数であってもよく、より具体的には20〜460の自然数であってもよいが、特にこれに限定されない。
【0112】
具体的には、前記化合物は、下記化学式(2)で示されるものであってもよい:
【0113】
【化19】
【0114】
前記化学式(2)において、
nは10〜2400の自然数であり、
j、m及びkは、それぞれ独立して1〜6の自然数であり、
2は、オルトピリジルジスルフィド、チオール、またはハロゲンである。
【0115】
より具体的には、前記化学式(2)において、nは10〜2400の自然数、より具体的には20〜460の自然数であってもよいが、特にこれに限定されない。
【0116】
具体的な態様において、前記j、m及びkは、それぞれ独立して1〜6の自然数、具体的には1〜4の自然数であってもよい。
【0117】
例えば、前記jは1、2、3、4、5、または6の自然数であってもよく、mは1、2、3、4、5、または6の自然数であってもよく、kは1、2、3、4、5、または6の自然数であってもよい。
【0118】
一つの例として、jは2、3、4、5、または6であり、mは2、4、または6であり、kは1、2、3、4、5、または6であってもよい。
【0119】
また、前記R2は、オルトピリジルジスルフィド、チオール、またはハロゲン、具体的には、オルトピリジルジスルフィド、チオール、またはF、Br、Cl、またはIであってもよく、より具体的にはオルトピリジルジスルフィド、またはIであってもよいが、特にこれらに限定されるものではない。
【0120】
具体的には、前記化合物は、下記化学式6〜11からなる群から選択されるものであってもよい。
【0121】
【化20】
・・・(6)
【0122】
【化21】
・・・(7)
【0123】
【化22】
・・・(8)
【0124】
【化23】
・・・(9)
【0125】
【化24】
・・・(10)
【0126】
【化25】
・・・(11)
【0127】
前記化学式(6)〜(11)において、nは前記で定義した通りである。
【0128】
本願の実施例では、前記化学式(6)で示される化合物をリンカー#4と、前記化学式(7)で示される化合物をリンカー#5と、前記化学式(8)で示される化合物をリンカー#6と、前記化学式(9)で示される化合物をリンカー#7と、前記化学式(10)で示される化合物をリンカー#8と、前記化学式(11)で示される化合物をリンカー#9と命名した。
【0129】
本発明の一態様によると、前記化学式(1)に属する化合物が−NHCO−の構造を含まない前記化合物に比べてチオール基に対して高い反応性を示すことができることを確認したところ、前記化合物をチオール基を含む物質に付着するのに有用に使用することができる。
【0130】
一方、前記化合物は、具体的には下記化学式(3)〜(5)のいずれか一つの構造を有することができる:
【0131】
【化26】
・・・(3)
【0132】
【化27】
・・・(4)
【0133】
【化28】
・・・(5)
【0134】
ここで、nは、前記で定義した通りである。
【0135】
一方、前記化合物は、薬学的に許容可能な塩の形態で存在することができる。塩としては、薬学的に許容可能な遊離酸(free acid)により形成された酸付加塩が有用である。
【0136】
前記塩の種類は特に制限されない。ただし、個体、例えば、哺乳類に安全かつ効果的な形であることが望ましいが、特にこれに限定されるものではない。
【0137】
前記用語「薬学的に許容可能な」とは、医薬学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、またはアレルギー反応などを誘発せずに目的とする用途に効果的に使用可能な物質を意味する。
【0138】
本発明において、用語「薬学的に許容可能な塩」とは、薬学的に許容される無機酸、有機酸、または塩基から誘導された塩を含む。適切な酸の例としては、塩酸、臭素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン−p−スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などを挙げることができる。適切な塩基から誘導された塩は、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、及びアンモニウムなどを含むことができる。
【0139】
酸付加塩は、通常の方法、例えば、化合物を過量の酸水溶液に溶解させ、この塩を水混和性有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、アセトンまたはアセトニトリルを使用して沈殿させて製造することができる。同モル量の化合物及び水中の酸またはアルコール(例えば、グリコールモノメチルエーテル)を加熱し、次いで前記混合物を蒸発させて乾燥させるか、または析出された塩を吸引ろ過させることができる。
【0140】
また、塩基を使用して薬学的に許容可能な金属塩を作ることができる。アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩は、例えば、化合物を過量のアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物溶液中に溶解させ、非溶解化合物の塩をろ過した後、ろ液を蒸発、乾燥させて得ることができる。
【0141】
また、本発明の前記化合物及びその薬学的に許容可能な塩は、これから製造することができる可能な溶媒和物を含む概念である。
【0142】
本発明で使用される用語「溶媒和物」とは、本発明に係る化合物またはその塩が溶媒分子と複合体を形成したものをいう。
【0143】
併せて、本発明の化合物が、その置換基に非対称炭素中心を有する場合、RまたはS異性質体、ラセミ体、ジアステレオマーの混合物及び個々のジアステレオマーとして存在することができ、これらすべての異性質体及びこれらの混合物は、本発明の範疇に含まれる。
【0144】
本発明を具現する他の一つの態様は、ポリエチレングリコール化合物と生理活性ポリペプチドを反応させてポリエチレングリコール化合物が付着した生理活性ポリペプチドを製造する工程を含む、ポリエチレングリコール化合物が付着した生理活性ポリペプチドの製造方法を提供する。
【0145】
前記ポリエチレングリコール化合物については、先に説明した通りである。
【0146】
前記製造方法は、前記ポリエチレングリコール化合物の両末端に位置した反応基のいずれか一つを、生理活性ポリペプチドに連結させる工程を含むことができる。より具体的には、R1に位置した反応基を、生理活性ポリペプチドに連結させるか、R2に位置した反応基を、生理活性ポリペプチドに連結させることができるが、特にこれに限定されない。
【0147】
より具体的には、R2に位置したオルトピリジルジスルフィド、チオール、またはハロゲンが生理活性ポリペプチドのシステイン残基に位置したチオール基と反応することを含むことができるが、特にこれに限定されない。
【0148】
上述したポリエチレングリコール化合物と生理活性ポリペプチドとの間の反応は、ポリエチレングリコール化合物の反応基とポリエチレングリコールの混合物が連結される生理活性ポリペプチドの反応基の特性を考慮し、当業者が適切に決定することができる。
【0149】
例えば、クエン酸緩衝液またはHEPESのような適切な緩衝液とC1〜C6アルコールのような有機溶媒の存在下、前記反応が行われてもよいが、特にこれらに限定されるものではない。
【0150】
また、前記製造方法は、さらにポリエチレングリコール化合物が付着した生理活性ポリペプチドを精製する工程を含むことができる。
【0151】
このような精製には、当業界において公知となった方法を制限なく利用することができ、具体的には、クロマトグラフィーを利用することができるが、特にこれに限定されない。
【0152】
本発明において、用語「生理活性ポリペプチド」とは、生理活性を示すことができるペプチドあるいはタンパク質をすべて含む概念であり、好ましくは、対象体内で生理活性を示すようにする物質である。
【0153】
前記生理活性ポリペプチドは、ホルモン、サイトカイン、酵素、抗体、成長因子、転写調節因子、血液因子、ワクチン、インスリン分泌ペプチド、ニューロペプチド(neuropeptide)、脳下垂体ホルモン、抗肥満ペプチド、抗ウイルスペプチド、生理活性を有する非天然型ペプチド誘導体、構造タンパク質、リガンドタンパク質及び受容体からなる群から選択されることを特徴とする。
【0154】
前記生理活性ポリペプチドの例として、GLP−1受容体アゴニスト、レプチン(Leptin)受容体アゴニスト、DPP−IV阻害剤、Y5受容体アンタゴニスト、MCH(Melanin-concentrating hormone)受容体アンタゴニスト、Y2/3受容体アゴニスト、MC3/4受容体アゴニスト、胃/膵臓リパーゼ(gastric/pancreatic lipase)阻害剤、5HT2cアゴニスト、β3A受容体アゴニスト、アミリン(Amylin)受容体アゴニスト、グレリン(Ghrelin)アンタゴニスト、グレリン受容体アンタゴニストなどであってもよいが、特にこれに限定されない。
【0155】
また、生理活性ポリペプチドは、下記配列を含むアミノ酸配列を含むか、これにより必須で構成されるか、あるいはそれで構成されたペプチドであってもよい。前記ペプチドは、グルカゴン受容体、GLP−1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するものであってもよく、このようなペプチドを三重活性体と命名する。
【0156】
Xaa1-Xaa2-Xaa3-Gly-Thr-Phe-Xaa7-Ser-Asp-Xaa10-Ser-Xaa12-Xaa13-Xaa14-Xaa15-Xaa16-Xaa17-Xaa18-Xaa19-Xaa20-Xaa21-Phe-Xaa23-Xaa24-Trp-Leu-Xaa27-Xaa28-Xaa29-Xaa30-R1 (配列番号103)
【0157】
前記化学式において、
Xaa1はヒスチジン、4−イミダゾアセチル、またはチロシンであり、
Xaa2はグリシン、アルファ−メチル−グルタミン酸、またはAibであり、
Xaa3はグルタミン酸またはグルタミンであり、
Xaa7はトレオニンまたはイソロイシンであり、
Xaa10はロイシン、チロシン、リジン、システイン、またはバリンであり、
Xaa12はリジン、セリン、またはイソロイシンであり、
Xaa13はグルタミン、チロシン、アラニン、またはシステインであり、
Xaa14はロイシン、メチオニン、またはチロシンであり、
Xaa15はシステイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、またはロイシンであり、
Xaa16はグリシン、グルタミン酸、またはセリンであり、
Xaa17はグルタミン、アルギニン、イソロイシン、グルタミン酸、システイン、またはリジンであり、
Xaa18はアラニン、グルタミン、アルギニン、またはヒスチジンであり、
Xaa19はアラニン、グルタミン、システイン、またはバリンであり、
Xaa20はリジン、グルタミン、またはアルギニンであり、
Xaa21はグルタミン酸、グルタミン、ロイシン、システイン、またはアスパラギン酸であり、
Xaa23はイソロイシンまたはバリンであり、
Xaa24はアラニン、グルタミン、システイン、アスパラギン、アスパラギン酸、またはグルタミン酸であり、
Xaa27はバリン、ロイシン、リジン、またはメチオニンであり、
Xaa28はシステイン、リジン、アラニン、アスパラギン、またはアスパラギン酸であり、
Xaa29はシステイン、グリシン、グルタミン、トレオニン、グルタミン酸、またはヒスチジンであり、
Xaa30はシステイン、グリシン、リジン、またはヒスチジンであるか、不存在であり、
1はシステイン、GKKNDWKHNIT(配列番号104)、m−SSGAPPPS−n(配列番号105)、またはm−SSGQPPPS−n(配列番号106)であるか、不存在であり、
ここで、
mは−Cys−、−Pro−、または−Gly−Pro−であり、
nは−Cys−、−Gly−、−Ser−、または−His−Gly−であるか、不存在である。
【0158】
前記三重活性体の例として、配列番号:1〜102からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むペプチドが挙げられるが、特にこれに限定されない。
【0159】
また、前記生理活性ポリペプチドは、グルカゴン、インスリン、ソマトスタチン、PYY(peptide YY)、NPY(neuropeptide Y)、GLP−1(Glucagon-like peptide-1)及びGLP−2(Glucagon-like peptide-2)のようなグルカゴン様ペプチド、エキセンジン−3(Exendin-3)、エキセンジン−4(Exendin-4)、オキシントモジュリン(Oxyntomodulin)、グルカゴン受容体、GLP−1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチド、繊維芽細胞成長因子(Fibroblast growth factor)、グレリン(Ghrelin)、アンジオテンシン、ブラジキニン、カルシトニン、副腎皮質刺激ホルモン(Corticotropin)、エレドイシン(Eledoisin)、ガストリン、レプチン、オキシトシン(Oxytocin)、バソプレシン(vasopressin)、黄体形成ホルモン、黄体刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、副甲状腺ホルモン、セクレチン(secretin)、セルモレリン(Sermorelin)、ヒト成長ホルモン(hGH)、成長ホルモン放出ペプチド、コロニー刺激因子(GCSF)類、インターフェロン(IFN)類、インターロイキン(Interleukin)類、プロラクチン放出ペプチド、オレキシン(Orexin)、甲状腺放出ペプチド、コレシストキニン(Cholecystokinin)、ガストリン阻害ペプチド、カルモジュリン、ガストリン放出ペプチド(Gastric releasing peptide)、モチリン(Motilin)、血管作動性腸管ペプチド(Vasoactive intestinal peptide)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(Atrial natriuretic peptide;ANP)、B型ナトリウム利尿ペプチド(B-type natriuretic peptide;BNP)、C型ナトリウム利尿ペプチド(C-type natriuretic peptide;CNP)、ニューロキニン(Neurokinin)A、ニューロメジン(Neuromedin)、レニン(Renin)、エンドセリン(Endothelin)、サラホトキシンペプチド(Sarafotoxin peptide)、カルソモルフィンペプチド(Carsomorphin peptide)、デモルフィン(Dermorphin)、ダイノルフィン(Dynorphin)、エンドルフィン(Endorphin)、エンケファリン(Enkepalin)、T細胞因子、腫瘍壊死因子、腫瘍壊死因子受容体、ウロキナーゼ受容体、腫瘍抑制因子、コラゲナーゼ阻害剤、チモポエチン(Thymopoietin)、チムリン(Thymulin)、チモペンチン(Thymopentin)、チモシン(Tymosin)、胸腺体液性因子(Thymic humoral factor)、アドレノメデュリン(Adrenomedullin)、アラトスタチン(Allatostatin)、アミロイドβ−プロテイン断片(Amyloid beta-protein fragment)、抗菌性ペプチド、抗酸化剤ペプチド、ボンベシン(Bombesin)、オステオカルシン(Osteocalcin)、CARTペプチド、E−セレクチン(selectin)、ICAM−1、VCAM−1、ロイコカイン(Leucokine)、クリングル(Kringle)−5、ラミニン(Laminin)、インヒビン(Inhibin)、ガラニン(Galanin)、フィブロネクチン(Fibronectin)、パンクレアスタチン(Pancreastatin)及びフューゼオン(Fuzeon)、インターフェロン受容体、Gプロテイン関連受容体(Gprotein-coupled receptor)、インターロイキン受容体、酵素類、インターロイキン結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍抑制因子、転移成長因子、アルファ−1アンチトリプシン、アルブミン、α−ラクトアルブミン、アポリポタンパク質−E、赤血球生成因子、高糖鎖化赤血球生成因子、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモジュリン、血液因子VII、VIIa、VIII、IX、及びXIII、プラスミノーゲン活性因子、フィブリン結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C反応性タンパク質、レニン抑制剤、スーパーオキシドディスムターゼ、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンジオスタチン、アンジオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性因子、組織因子経路阻害剤、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子、リラキシン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体及び抗体断片、赤血球増殖因子、白血球増殖因子、アミリン及びそのアナログからなる群から選択されることができるが、特にこれに限定されるものではない。
【0160】
本発明を具現する他の一つの態様は、生理活性ポリペプチドとキャリアタンパク質が、ポリエチレングリコール化合物を通じて連結された、結合体の製造方法を提供する。
【0161】
前記生理活性ポリペプチド及びポリエチレングリコール化合物については、先に説明した通りである。
【0162】
具体的には、前記製造方法は、
(a)前記ポリエチレングリコール化合物と生理活性ポリペプチドまたはキャリアタンパク質のいずれか一つを反応させて生理活性ポリペプチドまたはキャリアタンパク質が、一方の末端に付着し、他方の末端に反応基(reactive end group)を有する、ポリエチレングリコール化合物を製造する工程;及び
(b)前記(a)工程で製造された、生理活性ポリペプチドまたはキャリアタンパク質が、一方の末端に付着し、他方の末端に末端反応基を有する、ポリエチレングリコール化合物とキャリアタンパク質または生理活性ポリペプチドの他の一つを反応させて前記ポリエチレングリコール化合物の末端反応基にキャリアタンパク質または生理活性ポリペプチドを連結させて生理活性ポリペプチドとキャリアタンパク質が、ポリエチレングリコール化合物を通じて連結された、結合体を製造する工程を含むものであってもよい。
【0163】
より具体的には、前記製造方法は、
(a)前記ポリエチレングリコール化合物と生理活性ポリペプチドを反応させて生理活性ポリペプチドが一方の末端に付着し、他方の末端に反応基(reactive end group)を有する、ポリエチレングリコール化合物を製造する工程;及び
(b)前記(a)工程で製造された、生理活性ポリペプチドが、一方の末端に付着し、他方の末端に末端反応基を有する、ポリエチレングリコール化合物とキャリアタンパク質とを反応させて前記ポリエチレングリコール化合物の末端反応基にキャリアタンパク質を連結させる工程を含むものであってもよい。
【0164】
具体的には、前記(a)工程のポリエチレングリコール化合物は、下記化学式(1)の構造を有することを特徴とする。
【0165】
【化29】
・・・(1)
【0166】
前記化学式(1)において、
1は、アルデヒド基であり、
1〜L3は、それぞれ独立して直鎖または分岐鎖C1−C6アルキレンであり、
2は、オルトピリジルジスルフィド(Orthopyridyl disulfide、OPSS)、チオール、またはハロゲンであり、
nは10〜2400の自然数である。
【0167】
特にこれに限定されないが、前記方法においてポリエチレングリコール化合物と生理活性ポリペプチドとの間の反応は、ポリエチレングリコール化合物のR2を生理活性ポリペプチドのシステイン残基に位置したチオール基との反応を含むことができ、ポリエチレングリコール化合物とキャリアタンパク質との間の反応はポリエチレングリコール化合物の末端アルデヒド基とキャリアタンパク質のアミン基との間の反応を含むことができる。
【0168】
具体的には、前記方法において、(a)工程は、前記化学式(1)の構造を有するポリエチレングリコール化合物のR2を生理活性ポリペプチドのシステイン残基に位置したチオール基と反応させ、(b)工程では、ポリエチレングリコール化合物の末端アルデヒド基をキャリアタンパク質のアミン基と反応させるものであってもよい。
【0169】
上述したポリエチレングリコール化合物と生理活性ポリペプチドまたはキャリアタンパク質との間の反応は、ポリエチレングリコール化合物の反応基とポリエチレングリコール化合物が連結される生理活性ポリペプチドまたはキャリアタンパク質の反応基の特性を考慮し、当業者が適切に決定することができる。
【0170】
例えば、ペグ化反応は、クエン酸緩衝液またはHEPESのような適切な緩衝液とC1〜C6アルコールのような有機溶媒の存在下で行われてもよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0171】
また、アルデヒド反応基は、低pHでアミノ末端に選択的に反応し、高pH、例えばpH9.0の条件では、リジン残基と共有結合を形成することができる。
【0172】
一方、前記キャリアタンパク質は、生理活性ポリペプチドの生体内半減期を増加させるために、前記ポリエチレングリコール化合物を通じて前記生理活性ポリペプチドに連結される物質であってもよい。
【0173】
前記キャリアタンパク質は、アルブミン及びその断片、特定のアミノ酸配列の繰り返し単位の重合体、抗体、抗体断片、FcRn結合物質、フィブロネクチン、トランスフェリン(Transferrin)、サッカリド(saccharide)、またはエラスチンであってもよく、前記FcRn結合物質は、免疫グロブリンFc断片であってもよいが、特にこれに限定されない。
【0174】
具体的な例として、前記ポリエチレングリコール化合物の末端アルデヒド基は、免疫グロブリンFc断片のアミン基、具体的には、N末端アミン基と反応するものであってもよいが、特にこれに限定されない。
【0175】
本発明において、「免疫グロブリンFc領域」とは、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖可変領域を除いた、重鎖不変領域2(CH2)及び/または重鎖不変領域3(CH3)の部分を含む部位を意味する。前記免疫グロブリンFc領域は、本発明の結合体の一部分をなす一構成であってもよい。
【0176】
このような免疫グロブリンFc領域は、重鎖不変領域にヒンジ(hinge)部分を含むことができるが、これに限定されるものではない。また、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然型と実質的に同等または向上した効果を有する限り、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖可変領域のみを除き、一部または全体の重鎖不変領域1(CH1)及び/または軽鎖不変領域1(CL1)を含む拡張されたFc領域であってもよい。また、CH2及び/またはCH3に対応する非常に長い、一部のアミノ酸配列が除去された領域であってもよい。
【0177】
例えば、本発明の免疫グロブリンFc領域は、1)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン、2)CH1ドメイン及びCH2ドメイン、3)CH1ドメイン及びCH3ドメイン、4)CH2ドメイン及びCH3ドメイン、5)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、及びCH4ドメイン中の1つまたは2つ以上のドメインと免疫グロブリンヒンジ領域(またはヒンジ領域の一部)との組み合わせ、6)重鎖不変領域の各ドメインと軽鎖不変領域の二量体であってもよい。しかし、これに制限されるものではない。
【0178】
また、1つの具体例として、前記免疫グロブリンFc領域は、二量体形(dimeric form)であってもよく、二量体形の一つのFc領域にXの一つの分子が共有結合的に連結することができ、この時、前記免疫グロブリンFcとXは、ポリエチレングリコール化合物によって互いに連結することができる。一方、二量体形の一つのFc領域にXの二分子が対称的に結合することも可能である。この時、前記免疫グロブリンFcとXは、ポリエチレングリコール化合物によって互いに連結することができる。しかし、前記記述された例に制限されるものではない。
【0179】
また、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然型アミノ酸配列だけでなく、その配列誘導体を含む。アミノ酸配列誘導体とは、天然アミノ酸配列中の一つ以上のアミノ酸残基が欠失、挿入、非保存的または保存的置換またはこれらの組み合わせによって異なる配列を有することを意味する。
【0180】
例えば、IgG Fcの場合、結合に重要であると知られている214〜238、297〜299、318〜322または327〜331番のアミノ酸残基が変形のために適した部位として使用することができる。
【0181】
また、ジスルフィド結合を形成する部位が除去されたり、天然型FcからN末端のいくつかのアミノ酸が除去され、又は天然型FcのN末端にメチオニン残基が付加されることもできるなど、多様な種類の誘導体が可能である。また、エフェクター機能をなくすために、補体結合部位、例えば、C1q結合部位が除去されてもよく、ADCC(antibody dependent cell mediated cytotoxicity)部位が除去されてもよい。このような免疫グロブリンFc領域の配列誘導体を製造する技術は、国際特許公開第WO97/34631号(特許文献2)、国際特許公開第96/32478号(特許文献3)などに開示されている。
【0182】
分子の活性を全体的に変更させないタンパク質及びペプチドにおけるアミノ酸の交換は、当該分野において公知となっている(H.Neurath、R.L.Hill、The Proteins、Academic Press、New York、1979(非特許文献2))。最も通常的に起こる交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、VaL/Ile、Asp/Glu、ThR/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、SeR/Asn、Ala/Val、SeR/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、糖化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)、アセチル化(acetylation)及びアミド化(amidation)などで修飾(modification)されてもよい。
【0183】
上述したFc誘導体は、本発明のFc領域と同等の生物学的活性を示し、Fc領域の熱、pHなどに対する構造的安定性を増大させたものであってもよい。
【0184】
また、このようなFc領域は、ヒト、ウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラットまたはモルモットなどの動物の生体内から分離した天然型から得られてもよく、形質転換された動物細胞または微生物から得られた組換え型またはその誘導体であってもよい。ここで、天然型から獲得する方法は、全体の免疫グロブリンをヒトまたは動物の生体から分離した後、タンパク質分解酵素を処理して取得する方法であってもよい。パパインを処理する場合には、Fab及びFcに切断され、ペプシンを処理する場合には、pF’c及びF(ab)2に切断される。これをサイズ排除クロマトグラフィー(size-exclusion chromatography)などを用いてFcまたはpF’cを分離することができる。さらに具体的な実施形態では、ヒト由来のFc領域を微生物から収得した組換え型免疫グロブリンFc領域である。
【0185】
また、免疫グロブリンFc領域は、天然型糖鎖、天然型に比べて増加した糖鎖、天然型に比べて減少した糖鎖または糖鎖が除去された形態であってもよい。このような免疫グロブリンFc糖鎖の増減または除去には、化学的方法、酵素学的方法及び微生物を利用した遺伝子工学的方法のような通常の方法を用いることができる。ここで、Fcから糖鎖が除去された免疫グロブリンFc領域は、補体(c1q)との結合力が著しく低下し、抗体依存性細胞毒性または補体依存性細胞毒性が減少または除去されるため、生体内で不要な免疫反応を誘発しない。このような点で、薬物のキャリアとしての本来の目的に、より合致する形態は、糖鎖が除去されたり非糖鎖化された免疫グロブリンFc領域であると言える。
【0186】
本発明において、「糖鎖の除去(Deglycosylation)」とは、酵素で糖を除去したFc領域をいい、非糖鎖化(Aglycosylation)は原核動物、より具体的な実施形態では、大腸菌から生産して糖鎖化されていないFc領域を意味する。
【0187】
一方、免疫グロブリンFc領域は、ヒトまたはウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物起源であってもよく、より具体的な実施形態ではヒト起源である。
【0188】
また、免疫グロブリンFc領域は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM由来またはこれらの組み合わせ(combination)またはこれらの混成(hybrid)によるFc領域であってもよい。より具体的な実施形態では、ヒトの血液に最も豊富なIgGまたはIgM由来であり、より具体的な実施形態では、リガンド結合タンパク質の半減期を向上させることが公知となったIgG由来である。さらに具体的な実施形態において、前記免疫グロブリンFc領域はIgG4 Fc領域であり、最も具体的な実施形態において前記免疫グロブリンFc領域は、ヒトIgG4由来の非糖鎖化されたFc領域であるが、これに限定されるものではない。
【0189】
一方、本発明において「組み合わせ(combination)」とは、二量体または多量体を形成するとき、同一起源短鎖免疫グロブリンFc領域を暗号化するポリペプチドが異なる起源の短鎖ポリペプチドと結合を形成することを意味する。即ち、IgG Fc、IgA Fc、IgM Fc、IgD Fc及びIgEのFc断片からなるグループから選択された2つ以上の断片から二量体または多量体の製造が可能である。
【0190】
また、前記製造方法は、さらに生理活性ポリペプチドとキャリアタンパク質が、ポリエチレングリコール化合物を通じて連結された、結合体を精製する工程を含むことができる。
【0191】
このような精製には、当業界において公知となった方法を制限なく利用することができ、具体的には、クロマトグラフィーを利用することができるが、特にこれに限定されない。
【0192】
本発明を具現する他の一つの態様は、前記ポリエチレングリコール化合物が付着した、生理活性ポリペプチドを提供する。
【0193】
前記ポリエチレングリコール化合物及び生理活性ポリペプチドについては、先に説明した通りである。
【0194】
一つの具体例として、前記化合物が付着した、生理活性ポリペプチドは、下記化学式(15)〜(17)のいずれか一つで示される構造を含むものであってもよい:
【0195】
R1-L1-O-(CH2CH2O)n-L2-NH(CO)-L3-S-S-X ・・・(15)
【0196】
R1-L1-O-(CH2CH2O)n-L2-NH(CO)-CH2-S-X ・・・(16)
【0197】
X-NHCH2-L1-O-(CH2CH2O)n-L2-NH(CO)-L3-R2 ・・・(17)
【0198】
前記化学式(15)〜(17)において、
1は、2,5−ジオキソピロリジニル、2,5−ジオキソピロリル、アルデヒド、マレイミド、C6−C20アリールジスルフィド、C5−C20ヘテロアリールジスルフィド、ビニルスルホン、チオール、ハロゲン化アセトアミド、スクシンイミド、p−ニトロフェニルカーボネート、及びこれらの誘導体からなる群から選択され、
1〜L3は、それぞれ独立して直鎖または分岐鎖C1−C6アルキレンであり、
nは10〜2400の自然数であり、
2は、オルトピリジルジスルフィド、チオール、またはハロゲンであり、
Xは、生理活性ポリペプチドの一部分に該当する。
【0199】
前記記述された変数の具体的な様態及び組み合わせについては、先に説明した内容がすべて適用される。
【0200】
前記化学式(15)において−S−S−Xは、Xに位置したチオール基がオルトピリジルジスルフィドまたはチオール基と反応して形成された連結構造であってもよく、化学式(16)において−CH2−S−Xは、Xに位置したチオール基がハロゲン、具体的にはIA(iodoacetamide)と反応して形成された連結構造であってもよく、化学式(17)においてX−NHCH2−は、Xに位置したアミン基がアルデヒド基と反応し、還元的アルキル化を通じて形成された連結構造であってもよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0201】
本発明を具現する他の一つの態様は、前記ポリエチレングリコール化合物の両末端の反応基に、それぞれ生理活性ポリペプチド及びキャリアタンパク質が付着した、結合体を提供する。
【0202】
前記ポリエチレングリコール化合物、生理活性ポリペプチド、及びキャリアタンパク質については、先に説明した通りである。
【0203】
一つの具体例として、前記結合体は、下記化学式(18)または(19)で示される構造を有する、結合体であることを特徴とする:
【0204】
Y-NHCH2-L1-O-(CH2CH2O)n-L2-NH(CO)-L3-S-S-X ・・・(18)
【0205】
Y-NHCH2-L1-O-(CH2CH2O)n-L2-NH(CO)-CH2-S-X ・・・(19)
【0206】
前記化学式(18)及び(19)において、
1〜L3は、それぞれ独立して直鎖または分岐鎖C1−C6アルキレンであり、
nは10〜2400の自然数であり、
Xは、生理活性ポリペプチドの一部分であり、
Yは、キャリアタンパク質の一部分である。
【0207】
本発明を具現する他の一つの態様は、前記ポリエチレングリコール化合物の製造方法を提供する。
【0208】
ポリエチレングリコール化合物については、先に説明した通りである。
【0209】
具体的には、前記方法は、
(a)ポリエチレングリコールの一方の末端に2,5−ジオキソピロリジニル、2,5−ジオキソピロリル、アルデヒド、マレイミド、C6−C20アリールジスルフィド、C5−C20ヘテロアリールジスルフィド、ビニルスルホン、チオール、ハロゲン化アセトアミド、スクシンイミド、p−ニトロフェニルカーボネート、及びこれらの誘導体からなる群から選択されるR1を導入する工程;及び
(b)前記ポリエチレングリコールの他方の末端に−NH(CO)L3−R2構造を導入する工程を含み、ここで、R2はオルトピリジルジスルフィド(Orthopyridyl disulfide、OPSS)、チオール、またはハロゲンである工程を含むことができる。
【0210】
非限定的な方法として、
前記方法は、
化学式(20)で示される化合物から化学式(21)で示される化合物を準備する第1の工程;
化学式(21)で示される化合物から化学式(22)で示される化合物を準備する第2の工程;及び
化学式(22)で示される化合物を酸溶液で処理して末端のジエトキシメチルをアルデヒドに転換する第3の工程を含むことができる:
【0211】
【化30】
・・・(20)
【0212】
ここで、n’はnまたはn+1
【0213】
【化31】
・・・(21)
【0214】
【化32】
・・・(22)
【0215】
ここで、前記L1、L2、L3、n及びR2については、前述した通りである。
【0216】
リンカー5(化学式(7))のように、L2が2であるポリエチレングリコール化合物を製造する場合には、前記n’はn+1であってもよい。
【0217】
前記方法において、前記第1の工程の化学式(20)で示される化合物は、下記化学式(23)で示される化合物をメタンスルホニルクロリドと反応させて準備するものであってもよい:
【0218】
【化33】

・・・(23)
【0219】
リンカー5(化学式(7))のように、L2が2であるポリエチレングリコール化合物を製造する場合などにおいて、第1の工程は、化学式(20)で示される化合物をアンモニア水溶液及び塩化アンモニウムと反応させることにより行うものであってもよい。
【0220】
一方、リンカー7〜9(化学式(9)〜(11))のように、L2が3以上であるポリエチレングリコール化合物を製造する場合などにおいて、
前記第1の工程は、化学式(20)で示される化合物をヒドロキシアルキルテトラヒドロピラニルエーテルと反応させて化学式(24)で示される化合物を製造する第1−1工程;
化学式(24)で示される化合物をp−トルエンスルホン酸と反応させて末端のテトラヒドロピラニルオキシ基をヒドロキシ基に置換する第1−2工程;
以前の工程から得られた化合物をメタンスルホニルクロリドと反応させてヒドロキシ基をメタンスルホン酸基に転換する第1−3工程;及び
以前の工程から得られた化合物をアンモニア水溶液及び塩化アンモニウムと反応させる第1−4工程を含めて行うことを特徴とする。
【0221】
【化34】
・・・(24)
【0222】
ここで、前記第1−1工程は、カリウムt−ペントキシドの存在下で行うことができる。
【0223】
また、R2にOPSSを反応基に導入した場合において、前記第2の工程は、化学式(21)で示される化合物を、下記化学式(25)で示される化合物と反応させて行うものであってもよい。
【0224】
【化35】
・・・(25)
【0225】
一方、R2に−Iまたは−SHを反応基に導入した場合において、前記第2の工程は、化学式(21)で示される化合物をクロロ(C2−C7アルカノイル)クロリドと反応させて中間体として下記化学式(26)で示される、末端にクロロ基を含む化合物を合成した後、硫化水素ナトリウムの存在または不在の下でハロゲン金属塩と反応させてクロロ基をチオールまたはハロゲンに転換して行うものであってもよい。
【0226】
【化36】
・・・(26)
【0227】
本発明を具現する他の一つの態様は、生理活性ポリペプチドの生体内半減期を増加させるキャリアを生理活性ポリペプチドに連結させるための、前記ポリエチレングリコール化合物の用途を提供する。
【0228】
前記生理活性ポリペプチド、キャリア、及びポリエチレングリコール化合物については、先に説明した通りである。
【0229】
本発明を具現する他の一つの態様は、前記ポリエチレングリコール化合物が付着した、生理活性ポリペプチドまたは前記結合体を含む組成物を提供する。
【0230】
前記生理活性ポリペプチド、結合体及びポリエチレングリコール化合物については、先に説明した通りである。
【0231】
前記組成物は薬学的組成物であってもよく、薬剤学的に許容可能な担体を含むことができる。
【0232】
薬剤学的に許容される担体は、経口投与時には、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを使用することができ、注射剤の場合には、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤、安定化剤などを混合して使用することができ、局所投与用の場合には、基剤、賦形剤、潤滑剤、保存剤などを使用することができる。本発明の薬学的組成物の剤形は、上述したような薬剤学的に許容される担体と混合して多様に製造することができる。例えば、経口投与の際には、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、サスペンション、シロップ、ウエハースなどの形態で製造することができ、注射剤の場合には、単位投薬アンプルまたは多数回投薬形態で製造することができる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、徐放性製剤などに剤形化することができる。
【0233】
一方、製剤化に適した担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシア、アルギン酸、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウムまたは鉱物油などが使用されてもよい。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、防腐剤などをさらに含むことができる。
【0234】
本発明を具現する他の一つの態様は、生理活性ポリペプチドの生体内半減期を増加させるキャリアを生理活性ポリペプチドに連結させるためのポリエチレングリコール化合物のリンカーを提供する。
【0235】
前記生理活性ポリペプチド、キャリア、及びポリエチレングリコール化合物については、先に説明した通りである。
【0236】
本発明の化合物は、下記反応式で示される一連の反応を通じて合成することができる。しかし、下記反応式は、本発明の化合物の例示的な製造方法に過ぎず、本発明の化合物の製造方法は、これに限定されず、当業界において公知となった方法を利用したり、適切に変更して行うことができる。
【0237】
[反応式]
【化37】
【0238】
<反応例1>化合物(2)の製造
反応容器に化合物(1)とジクロロメタンを投入する。反応温度を10℃以下に維持しながら、トリエチルアミンとメタンスルホニルクロリドを投入する。室温で3時間撹拌する。反応を完結した後、水とジクロロメタンを投入し、5分間攪拌する。有機層を抽出した後、水層に再びジクロロメタンを投入して追加抽出する。有機層を集めて蒸留水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、残ったろ液を減圧濃縮させる。濃縮液にジクロロメタンを添加して溶解させた後、メチルt−ブチルエーテルを20分間滴加する。生成された結晶をろ過し、メチルt−ブチルエーテルで洗浄した後、室温で窒素乾燥して目的化合物である化合物(2)を得る。
【0239】
<反応例2>化合物(3)の製造
反応容器にトルエンと化合物(10)を投入する。カリウムt−ペントキシドを投入した後、約50℃まで昇温させ、50℃で1時間撹拌する(activation溶液)。他の反応容器に化合物(2)とトルエンを投入する。室温に冷却させたactivation溶液を前記混合液に30℃で1時間滴加する。30℃で3時間攪拌させた後、反応溶液に水を添加して抽出する。層分離した後、水溶液層にジクロロメタンを添加して抽出する。水層に再びジクロロメタンを投入して追加抽出する。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、残ったろ液を減圧濃縮させる。濃縮液にジクロロメタンを添加して溶解させた後、メチルt−ブチルエーテルを20分間滴加する。生成された結晶をろ過し、メチルt−ブチルエーテルで洗浄した後、室温で窒素乾燥して目的化合物である化合物(3)を得る。
【0240】
<反応例3>化合物(4)の製造
反応容器に化合物(3)とエタノール、ジクロロメタンを投入する。p−トルエンスルホン酸(p-TsOH)を投入した後、室温で20時間撹拌する。水酸化ナトリウムを投入した後、溶媒を減圧濃縮させる。ジクロロメタンと水を投入し、5分間攪拌する。有機層を抽出した後、有機層を水で洗浄する。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、残ったろ液を減圧濃縮させる。濃縮液にジクロロメタンを添加して溶解させた後、メチルt−ブチルエーテルを20分間滴加する。生成された結晶をろ過し、メチルt−ブチルエーテルで洗浄した後、室温で窒素乾燥して目的化合物である化合物(4)を得る。
【0241】
<反応例4>化合物(5)の製造
反応容器に化合物(4)とジクロロメタンを投入する。反応温度を10℃以下に維持しながら、トリエチルアミンとメタンスルホニルクロリドを投入する。室温で3時間撹拌する。反応を完結した後、水とジクロロメタンを投入し、5分間攪拌する。有機層を抽出した後、水層に再びジクロロメタンを投入して追加抽出する。有機層を集めて蒸留水60mlで洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、残ったろ液を減圧濃縮させる。濃縮液にジクロロメタンを添加して溶解させた後、メチルt−ブチルエーテルを20分間滴加する。生成された結晶をろ過し、メチルt−ブチルエーテルで洗浄した後、室温で窒素乾燥して目的化合物である化合物(5)を得る。
【0242】
<反応例5>化合物(6)の製造
容器にジメチルホルムアミドと化合物(5)を投入する。30℃まで昇温させ、カリウムチオアセテートを投入した後、30℃で5時間撹拌する。室温に冷却させた後、ジクロロメタンと水を加えて抽出する。層分離した後、水層をジクロロメタンで再抽出する。層分離した後、抽出した有機層を集め、20%の塩化ナトリウム水溶液で洗浄する。層分離した後、有機層に硫酸ナトリウムを投入して30分間攪拌する。前記混合液をろ過した後、ろ過液を減圧濃縮させる。濃縮液にジクロロメタンを添加して溶解させた後、メチルt−ブチルエーテルを5分間滴加する。生成された結晶をろ過し、メチルt−ブチルエーテルで洗浄した後、室温で窒素乾燥して目的化合物である化合物(6)を得る。
【0243】
<反応例6>化合物(7)の製造
容器に水と化合物(6)を投入する。反応液がpH14になるように0.1Mの水酸化ナトリウム溶液を滴加する。室温で12hr攪拌した後、1Nの塩酸溶液を使用してpH6〜7に合わせる。中和させた後、ジクロロメタンを投入して抽出する。層分離した後、水層をジクロロメタンで再抽出する。層分離した後、抽出した有機層を集めて硫酸ナトリウムを投入し、30分間撹拌する。前記混合液をろ過した後、ろ過液を減圧濃縮させる。濃縮液にジクロロメタンを添加して溶解させた後、メチルt−ブチルエーテルを5分間滴加する。生成された結晶をろ過し、メチルt−ブチルエーテルで洗浄した後、室温で窒素乾燥して目的化合物である化合物(7)を得る。
【0244】
<反応例7>化合物(8)の製造
反応容器に化合物(7)とメタノールを投入する。化合物(11)を滴加した後、室温で3日間撹拌する。反応溶媒を減圧濃縮させる。濃縮液にジクロロメタンを添加して溶解させた後、メチルt−ブチルエーテルを20分間滴加する。生成された結晶をろ過し、メチルt−ブチルエーテルで洗浄した後、室温で窒素乾燥して目的化合物である化合物(8)を得る。
【0245】
<反応例8>化合物(9)の製造 [リンカー#1]
反応容器に化合物(8)と蒸留水を投入する。1NのHClを使用して反応溶液のpHを1に合わせた後、室温で1時間撹拌する。反応を完結した後、水とジクロロメタンを投入し、5分間攪拌する。5%の炭酸水素ナトリウムを使用してpH6に合わせた。ジクロロメタンを添加して抽出した後、有機層に硫酸ナトリウムを投入し、30分間攪拌する。前記混合液をろ過した後、ろ過液を減圧濃縮させる。濃縮液にジクロロメタン1mlを添加して溶解させた後、メチルt−ブチルエーテルを20分間滴加する。生成された結晶をろ過し、メチルt−ブチルエーテルで洗浄した後、室温で窒素乾燥して目的化合物である化合物(9)を得る。
【0246】
【化38】
【0247】
<反応例9>化合物(13)の製造
反応容器にトルエンと化合物(12)を投入する。カリウムt−ペントキシドを投入した後、約50℃まで昇温させ、50℃で1時間撹拌する(activation溶液)。他の反応容器に化合物(2)とトルエンを投入する。室温に冷却させたactivation溶液を前記混合液に30℃で1時間滴加する。30℃で3時間攪拌させた後、反応溶液に水を添加して抽出する。層分離した後、水溶液層にジクロロメタンを添加して抽出する。水層に再びジクロロメタンを投入して追加抽出する。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、残ったろ液を減圧濃縮させる。濃縮液にジクロロメタンを添加して溶解させた後、メチルt−ブチルエーテルを20分間滴加する。生成された結晶をろ過し、メチルt−ブチルエーテルで洗浄した後、室温で窒素乾燥して目的化合物である化合物(13)を得る。
【0248】
<反応例10>化合物(14)の製造
反応容器に化合物(13)とエタノールとジクロロメタンを投入する。p−TsOHを投入した後、室温で20時間撹拌する。水酸化ナトリウムを投入した後、溶媒を減圧濃縮させる。ジクロロメタンと水を投入し、5分間攪拌する。有機層を抽出した後、有機層を水で洗浄する。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、残ったろ液を減圧濃縮させる。濃縮液にジクロロメタンを添加して溶解させた後、メチルt−ブチルエーテルを20分間滴加する。生成された結晶をろ過し、メチルt−ブチルエーテルで洗浄した後、室温で窒素乾燥して目的化合物である化合物(14)を得る。
【0249】
<反応例11>化合物(15)の製造
反応容器に化合物(14)とジクロロメタンを投入する。反応温度を10℃以下に維持しながら、トリエチルアミンとメタンスルホニルクロリドを投入する。室温で3時間撹拌する。反応を完結した後、水とジクロロメタンを投入し、5分間攪拌する。有機層を抽出した後、水層に再びジクロロメタンを投入して追加抽出する。有機層を集めて蒸留水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、残ったろ液を減圧濃縮させる。濃縮液にジクロロメタンを添加して溶解させた後、メチルt−ブチルエーテルを20分間滴加する。生成された結晶をろ過し、メチルt−ブチルエーテルで洗浄した後、室温で窒素乾燥して目的化合物である化合物(15)を得る。
【0250】
<反応例12>化合物(16)の製造
反応容器にアセトンと化合物(15)を投入する。30℃まで昇温させ、ヨウ化カリウムを投入した後、約50℃まで昇温させ、50℃で15時間撹拌する。前記反応液を減圧濃縮させた後、ジクロロメタンと水で洗浄する。層分離した後、有機層を水で再度洗浄する。層分離した後、有機層に硫酸ナトリウムを投入し、30分間攪拌する。前記混合液をろ過した後、ろ過液を減圧濃縮させる。濃縮液にジクロロメタンを添加して溶解させた後、メチルt−ブチルエーテル30mlを5分間滴加する。生成された結晶をろ過し、メチルt−ブチルエーテルで洗浄した後、室温で窒素乾燥して目的化合物である化合物(16)を得る。
【0251】
<反応例13>化合物(17)の製造 [リンカー#2]
容器に水と化合物(16)を投入する。反応液がpH1.0になるように1Nの塩酸溶液を滴加する。室温で1時間攪拌した後、5%の炭酸水素ナトリウム溶液を使用してpH6〜7に合わせる。中和させた後、ジクロロメタンを投入して抽出する。層分離した後、水層をジクロロメタンで再抽出する。層分離した後、抽出した有機層を集めて硫酸ナトリウムを投入し、30分間撹拌する。前記混合液をろ過した後、ろ過液を減圧濃縮させる。濃縮液にジクロロメタンを添加して溶解させた後、メチルt−ブチルエーテルを5分間滴加する。生成された結晶をろ過し、メチルt−ブチルエーテルで洗浄した後、室温で窒素乾燥して目的化合物である化合物(17)を得る。
【0252】
【化39】
【0253】
<反応例14>化合物(18)の製造
容器にジメチルホルムアミドと化合物(15)を投入する。30℃まで昇温させ、カリウムチオアセテートを投入した後、30℃で5時間撹拌する。室温に冷却させた後、ジクロロメタンと水を加えて抽出する。層分離した後、水層をジクロロメタンで再抽出する。層分離した後、抽出した有機層を集め、20%の塩化ナトリウム水溶液で洗浄する。層分離した後、有機層に硫酸ナトリウムを投入して30分間攪拌する。前記混合液をろ過した後、ろ過液を減圧濃縮させる。濃縮液にジクロロメタンを添加して溶解させた後、メチルt−ブチルエーテルを5分間滴加する。生成された結晶をろ過し、メチルt−ブチルエーテルで洗浄した後、室温で窒素乾燥して目的化合物である化合物(18)を得る。
【0254】
<反応例15>化合物(19)の製造
容器に水と化合物(18)を投入する。反応液がpH14になるように0.1Mの水酸化ナトリウム溶液を滴加する。室温で12時間攪拌した後、1Nの塩酸溶液を使用してpH6〜7に合わせる。中和させた後、ジクロロメタンを投入して抽出する。層分離した後、水層をジクロロメタンで再抽出する。層分離した後、抽出した有機層を集めて硫酸ナトリウムを投入し、30分間撹拌する。前記混合液をろ過した後、ろ過液を減圧濃縮させる。濃縮液にジクロロメタンを添加して溶解させた後、メチルt−ブチルエーテルを5分間滴加する。生成された結晶をろ過し、メチルt−ブチルエーテルで洗浄した後、室温で窒素乾燥して目的化合物である化合物(19)を得る。
【0255】
<反応例16>化合物(20)の製造 [リンカー#3]
容器に水と化合物(19)を投入する。反応液がpH1.0になるように1Nの塩酸溶液を滴加する。室温で1時間攪拌した後、5%の炭酸水素ナトリウム溶液を使用してpH6〜7に合わせる。中和させた後、ジクロロメタンを投入して抽出する。層分離した後、水層をジクロロメタン5mlで再抽出する。層分離した後、抽出した有機層を集めて硫酸ナトリウムを投入し、30分間撹拌する。前記混合液をろ過した後、ろ過液を減圧濃縮させる。濃縮液にジクロロメタンを添加して溶解させた後、メチルt−ブチルエーテルを5分間滴加する。生成された結晶をろ過し、メチルt−ブチルエーテルで洗浄した後、室温で窒素乾燥して目的化合物である化合物(20)を得る。
【0256】
【化40】
【0257】
<反応例17>化合物(21)の製造
反応容器にアンモニア水溶液と塩化アンモニウムを投入する。化合物(5)を投入した後、室温で4日間撹拌する。ジクロロメタンを投入し、5分間攪拌する。有機層を抽出した後、水層に再びジクロロメタンを投入して追加抽出する。有機層を集めて蒸留水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、残ったろ液を減圧濃縮させる。濃縮液にジクロロメタンを添加して溶解させた後、メチルt−ブチルエーテルを20分間滴加する。生成された結晶をろ過し、メチルt−ブチルエーテルで洗浄した後、室温で窒素乾燥して目的化合物である化合物(21)を得る。
【0258】
<反応例18>化合物(22)の製造
反応容器に化合物(21)とジクロロメタンを投入する。トリエチルアミンとクロロアセチルクロリドを滴加した後、室温で16時間撹拌する。反応を完結した後、反応液を水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、残ったろ液を減圧濃縮させる。濃縮液にジクロロメタンを添加して溶解させた後、メチルt−ブチルエーテルを20分間滴加する。生成された結晶をろ過し、メチルt−ブチルエーテルで洗浄した後、室温で窒素乾燥して目的化合物である化合物(22)を得る。
【0259】
<反応例19>化合物(23)の製造
反応容器に化合物(22)とアセトンを投入する。KIを投入した後、55℃で6時間撹拌する。反応液を室温に冷やした後、反応溶媒を減圧濃縮させる。ジクロロメタンと水を投入し、5分間攪拌する。有機層を抽出した後、水層に再びジクロロメタンを投入して追加抽出する。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、残ったろ液を減圧濃縮させる。濃縮液にジクロロメタンを添加して溶解させた後、メチルt−ブチルエーテルを20分間滴加する。生成された結晶をろ過し、メチルt−ブチルエーテルで洗浄した後、室温で窒素乾燥して目的化合物である化合物(23)を得る。
【0260】
<反応例20>化合物(24)の製造 [リンカー#5]
反応容器に化合物(23)と蒸留水を投入する。1NのHClを使用して反応溶液のpHを1.0に合わせた後、室温で1時間撹拌する。反応を完結した後、水とジクロロメタンを投入し、5分間攪拌する。5%の炭酸水素ナトリウムを使用してpH6に合わせた。ジクロロメタンを添加して抽出した後、有機層に硫酸ナトリウムを投入し、30分間攪拌する。前記混合液をろ過した後、ろ過液を減圧濃縮させる。濃縮液にジクロロメタンを添加して溶解させた後、メチルt−ブチルエーテルを20分間滴加する。生成された結晶をろ過し、メチルt−ブチルエーテルで洗浄した後、室温で窒素乾燥して目的化合物である化合物(24)を得る。
【0261】
【化41】
【0262】
<反応例21>化合物(25)の製造
反応容器に化合物(5)とアセトンを投入する。KIを投入した後、55℃で20時間撹拌する。反応液を室温に冷やした後、反応溶媒を減圧濃縮させる。ジクロロメタンと水を投入し、5分間攪拌する。有機層を抽出した後、水層に再びジクロロメタンを投入して追加抽出する。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、残ったろ液を減圧濃縮させる。濃縮液にジクロロメタンを添加して溶解させた後、メチルt−ブチルエーテルを20分間滴加する。生成された結晶をろ過し、メチルt−ブチルエーテルで洗浄した後、室温で窒素乾燥して目的化合物である化合物(25)を得る。
【0263】
<反応例22>化合物(26)の製造 [リンカー#11]
反応容器に化合物(25)と蒸留水を投入する。1NのHClを使用して反応溶液のpHを1.0に合わせた後、室温で1時間撹拌する。反応を完結した後、水とジクロロメタンを投入し、5分間攪拌する。5%の炭酸水素ナトリウムを使用してpH6に合わせた。ジクロロメタンを添加して抽出した後、有機層に硫酸ナトリウムを投入し、30分間攪拌する。前記混合液をろ過した後、ろ過液を減圧濃縮させる。濃縮液にジクロロメタンを添加して溶解させた後、メチルt−ブチルエーテルを20分間滴加する。生成された結晶をろ過し、メチルt−ブチルエーテルで洗浄した後、室温で窒素乾燥して目的化合物である化合物(26)を得る。
【0264】
【化42】
【0265】
<反応例23>化合物(27)の製造
反応容器にアンモニア水溶液と塩化アンモニウムを投入する。化合物(5)を投入した後、室温で4日間撹拌する。ジクロロメタンを投入して有機層を抽出した後、水層に再びジクロロメタンを投入して追加抽出する。有機層を集めて蒸留水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、残ったろ液を減圧濃縮させる。濃縮液にジクロロメタンを添加して溶解させた後、メチルt−ブチルエーテルを20分間滴加する。生成された結晶をろ過し、メチルt−ブチルエーテルで洗浄した後、室温で窒素乾燥して目的化合物である化合物(27)を得る。
【0266】
<反応例24>化合物(28)の製造
反応容器に化合物(27)、化合物(30)、EDC(1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide)、HOBt(Hydroxybenzotriazole)、トリエチルアミン、ジメチルホルムアミドを投入する。室温で16時間撹拌する。ジクロロメタンと水を加えて抽出する。層分離した後、水層をジクロロメタンで再抽出する。層分離した後、抽出した有機層を集め、20%の塩化ナトリウム水溶液で洗浄する。層分離した後、有機層に硫酸ナトリウムを投入して攪拌する。前記混合液をろ過した後、ろ過液を減圧濃縮させる。濃縮液にジクロロメタンを添加して溶解させた後、メチルt−ブチルエーテルを5分間滴加する。生成された結晶をろ過し、メチルt−ブチルエーテルで洗浄した後、室温で窒素乾燥して目的化合物である化合物(28)を得る。
【0267】
<反応例25>化合物(29)の製造 [リンカー#7]
反応容器に化合物(28)と蒸留水を投入する。1NのHClを使用して反応溶液のpHを1に合わせた後、室温で1時間撹拌する。反応を完結した後、水とジクロロメタンを投入して攪拌する。5%の炭酸水素ナトリウムを使用してpH6に合わせる。ジクロロメタンを添加して抽出した後、有機層に硫酸ナトリウムを投入し、前記混合液をろ過した後、ろ過液を減圧濃縮させる。濃縮液にジクロロメタンを添加して溶解させた後、メチルt−ブチルエーテルを20分間滴加する。生成された結晶をろ過し、メチルt−ブチルエーテルで洗浄した後、室温で窒素乾燥して目的化合物である化合物(29)を得る。
【0268】
【化43】
【0269】
<反応例26>化合物(31)の製造
反応容器に化合物(27)とジクロロメタンを投入する。トリエチルアミンとクロロアセチルクロリドを滴加した後、室温で16時間撹拌する。反応を完結した後、反応液を水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、残ったろ液を減圧濃縮させる。濃縮液にジクロロメタンを添加して溶解させた後、メチルt−ブチルエーテルを20分間滴加する。生成された結晶をろ過し、メチルt−ブチルエーテルで洗浄した後、室温で窒素乾燥して目的化合物である化合物(31)を得る。
【0270】
<反応例27>化合物(32)の製造
反応容器に化合物(31)とアセトンを投入する。KIを投入した後、55℃で6時間撹拌する。反応液を室温に冷やした後、反応溶媒を減圧濃縮させる。ジクロロメタンと水を投入して有機層を抽出した後、水層に再びジクロロメタンを投入して追加抽出する。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、残ったろ液を減圧濃縮させる。濃縮液にジクロロメタンを添加して溶解させた後、メチルt−ブチルエーテルを20分間滴加する。生成された結晶をろ過し、メチルt−ブチルエーテルで洗浄した後、室温で窒素乾燥して目的化合物である化合物(32)を得る。
【0271】
<反応例28>化合物(33)の製造 [リンカー#8]
反応容器に化合物(32)と蒸留水を投入する。1NのHClを使用して反応溶液のpHを1に合わせた後、室温で1時間撹拌する。反応を完結した後、水とジクロロメタンを投入し、5分間攪拌する。5%の炭酸水素ナトリウムを使用してpH6に合わせる。ジクロロメタンを添加して抽出した後、有機層に硫酸ナトリウムを投入し、前記混合液をろ過した後、ろ過液を減圧濃縮させる。濃縮液にジクロロメタンを添加して溶解させた後、メチルt−ブチルエーテルを20分間滴加する。生成された結晶をろ過し、メチルt−ブチルエーテルで洗浄した後、室温で窒素乾燥して目的化合物である化合物(33)を得る。
【0272】
【化44】
【0273】
<反応例29>化合物(34)の製造
反応容器に化合物(31)とメタノールを投入する。KIとNaSHを投入した後、室温で6時間撹拌する。反応液を室温に冷やした後、反応溶媒を減圧濃縮させる。ジクロロメタンと水を投入して有機層を抽出した後、水層に再びジクロロメタンを投入して追加抽出する。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、残ったろ液を減圧濃縮させる。濃縮液にジクロロメタンを添加して溶解させた後、メチルt−ブチルエーテルを20分間滴加する。生成された結晶をろ過し、メチルt−ブチルエーテルで洗浄した後、室温で窒素乾燥して目的化合物である化合物(34)を得る。
【0274】
<実施例30>化合物(35)の製造 [リンカー#9]
反応容器に化合物(34)と蒸留水を投入する。1NのHClを使用して反応溶液のpHを1に合わせた後、室温で1時間撹拌する。反応を完結した後、水とジクロロメタンを投入し、5分間攪拌する。5%の炭酸水素ナトリウムを使用してpH6に合わせる。ジクロロメタンを添加して抽出した後、有機層に硫酸ナトリウムを投入し、前記混合液をろ過した後、ろ過液を減圧濃縮させる。濃縮液にジクロロメタンを添加して溶解させた後、メチルt−ブチルエーテルを20分間滴加する。生成された結晶をろ過し、メチルt−ブチルエーテルで洗浄した後、室温で窒素乾燥して目的化合物である化合物(35)を得る。
【0275】
以下、本発明の理解を助けるために実施例などを挙げて詳しく説明する。しかし、本発明に係る実施例は、種々の異なる形態に変形することができ、本発明の範囲が下記実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0276】
実施例1:ポリエチレングリコール誘導体の製造
本発明者は、目的とする反応基を両末端に導入したポリエチレングリコール誘導体を製造した。その製造方法は、反応例1〜25に示した通りである。
【0277】
代表的に、ポリエチレングリコール骨格(backbone)の一方の末端にプロピオニルアルデヒド基を付加した後、他方の末端にオルトピリジルジスルフィド(Orthopyridyl disulfide、OPSS)、ヨウ化アセトアミン(Iodoacetamide、IA)、ヨード基またはスルホンヒドリル(sulfhydryl group、SH-)を付加したヘテロ官能性(heterofunctional)PEGを製造する[図1]。
【0278】
それぞれの製造されたPEGの純度はNMRとRPC(reversed phase chromatography)分析法で分析した。
【0279】
代表的なポリエチレングリコール誘導体に関する具体的な内容は、次の通りである。
【0280】
(1)リンカー#1:pALD−PEG−オルトピリジルジスルフィド(orthopyridyl disulfide)
【0281】
【化45】
・・・(3)
【0282】
ここで、nは200〜300である。
【0283】
製造されたポリエチレングリコールリンカーの分子量は約10KDaであり、NMRを通じて構造を確認し、RPC分析の結果、約80%の純度を示した。
【0284】
1H−NMR(CDCl3, 400 MHz) δ 9.79(t, 1H, J= 2.0 Hz), 8.50(d, 1H, J= 5.6 Hz), 7.71−7.64(m, 2H), 7.09−6.70(m, 1H), 3.87−3.40(m, 908H), 2.82(t, 2H, J= 5.6 Hz), 2.68(t, 2H, J= 2.0Hz), 1.86−1.66(m, 4H)
【0285】
(2)リンカー#2:pALD−PEG−ヨード(iodide)
【0286】
【化46】
・・・(4)
【0287】
ここで、nは200〜300である。
【0288】
製造されたポリエチレングリコールリンカーの分子量は約10KDaであり、NMRを通じて構造を確認し、RPC分析の結果、約87%の純度を示した。
【0289】
1H−NMR(CDCl3, 400 MHz) δ 9.81(s, 1H), 3.84−3.47(m, 910H), 3.29(t, 2H, J= 6.8 Hz), 2.71−2.69(m, 2H), 2.10−2.06(m, 2H)
【0290】
(3)リンカー#3:pALD−PEG−スルフヒドリル基
【0291】
【化47】
・・・(5)
【0292】
ここで、nは200〜300である。
【0293】
製造されたポリエチレングリコールリンカーの分子量は約10KDaであり、NMRを通じて構造を確認し、RPC分析の結果、約76%の純度を示した。
【0294】
1H−NMR(CDCl3, 400 MHz) δ 9.79(s, 1H), 3.82−3.45(m, 910H), 2.74(t, 2H, J= 6.8 Hz), 2.69−2.67(m, 2H), 1.99−1.95(m, 2H)
【0295】
(4)リンカー#5:pALD−PEG−ヨード(iodide)
【0296】
【化48】
・・・(7)
【0297】
ここで、nは200〜300である。
【0298】
製造されたポリエチレングリコールリンカーの分子量は約10KDaであり、NMRを通じて構造を確認し、RPC分析の結果、約88%の純度を示した。
【0299】
1H−NMR(CDCl3, 400 MHz) δ 9.78(t, 1H, J= 1.6 Hz), 3.82−3.41(m, 912H), 2.67(t, 2H, J= 2.0 Hz)
【0300】
(5)リンカー#7:pALD−PEG−オルトピリジルジスルフィド (orthopyridyl disulfide)
【0301】
【化49】
・・・(9)
【0302】
ここで、nは200〜300である。
【0303】
製造されたポリエチレングリコールリンカーの分子量は約10KDaであり、RPC分析の結果、約81%の純度を示した。
【0304】
(6) リンカー#8:pALD−PEG−ヨード(iodide)
【0305】
【化50】
・・・(10)
【0306】
ここで、nは200〜300である。
【0307】
製造されたポリエチレングリコールリンカーの分子量は約10KDaであり、NMRを通じて構造を確認し、RPC分析の結果、約78%の純度を示した。
【0308】
1H−NMR(CDCl3, 400 MHz) δ 9.78(s, 1H), 3.82−3.41(m, 912H), 2.70(t, 2H, J= 2.0Hz), 1.44−1.24(m, 4H)
【0309】
(7) リンカー#9:pALD−PEG−スルフヒドリル基
【0310】
【化51】
・・・(11)
【0311】
ここで、nは200〜300である。
【0312】
製造されたポリエチレングリコールリンカーの分子量は約10 KDaであり、RPC分析の結果、約76%の純度を示した。
【0313】
(8) リンカー#11:pALD−PEG−ヨード(iodide)−比較例
【0314】
【化52】
・・・(13)
【0315】
ここで、nは200〜300である。
【0316】
製造されたポリエチレングリコールリンカーの分子量は約10KDaであり、NMRを通じて構造を確認し、RPC分析の結果、約89%の純度を示した。
【0317】
1H−NMR(CDCl3, 400 MHz) δ 9.79(t, 1H, J= 2.0 Hz), 3.82−3.41(m, 908H), 3.29−3.22(m, 2H), 2.69(t, 2H, J= 2.0Hz)
【0318】
実施例2:新規なポリエチレングリコール誘導体の反応性の比較
前記実施例1で製造したポリエチレングリコール誘導体を用いて生理活性ポリペプチドの連結体を製造するために、生理活性ペプチドの代表的な例としてGLP−1/Glucagon/GIP三重活性体(Triple Agonist)ペプチドを用いて連結体を製造した。該三重活性体ペプチドは、30個のアミノ酸からなり、システイン残基を含むペプチドに該当する。したがって、これを本発明に係るポリエチレングリコール誘導体のチオール反応基の反応性の比較に使用した。
【0319】
また、ポリエチレングリコール誘導体として、約10K(10,000Da)分子量を有するリンカー#2、3、5、8、9及び11を使用した。ここで、リンカー#3及び#9は、10K pALD−PEG−SH(両末端にそれぞれプロピオンアルデヒド基とスルフヒドリル基を一つずつ有しているPEG)に該当するが、リンカー#9は、リンカー#3とは異なり、チオール反応基の前にアミド構造を含む特性がある。また、リンカー#2、5、8及び11は、10K pALD−PEG−I(両末端にそれぞれプロピオンアルデヒド基とヨード基を一つずつ有しているPEG)に該当するが、リンカー#5及び8は、リンカー#2と11と異なり、チオール反応基の前にアミド構造を含む特性がある。
【0320】
ペプチド粉末を10mM HClに溶解させた後、10K pALD−PEG−Iと10K pALD−PEG−SHをペプチドのシステイン残基にペグ化させるために、ペプチド:PEGのモル比を1:3〜5に、反応濃度を3mg/mlにしてRTで約2時間反応させる。その時、反応は50mMのクエン酸ナトリウム(pH5.0)、または50mMのヘペス(HEPES)(pH7.5)、60%のイソプロパノール(IPA)で行われた。その後、SDS−PAGE分析を行った後、band integration方法で、各チオール反応基の反応性を比較した[図18]。反応性を確認した結果、チオール反応基の前にアミド構造を含む特性があるPEGの場合、反応性が優れていることが確認された。
【0321】
実施例3:新規なポリエチレングリコール誘導体を用いた生理活性ポリペプチドと免疫グロブリンFc結合体の製造
【0322】
前記実施例1で製造したポリエチレングリコール誘導体を用いて生理活性ポリペプチドと免疫グロブリンFc結合体を製造するために、実施例2に記載したペプチドを用いて結合体を製造した。
【0323】
まず、ポリエチレングリコール誘導体として、約10K(10,000Da)分子量を有するリンカー#7を使用した。ここで、リンカー#7は約10K pALD−PEG−OPSS(両末端にそれぞれプロピオンアルデヒド基(propionaldehyde)とオルトピリジルジスルフィド基(orthopyridyl disulfide)を一つずつ有しているPEG)に該当する。ペプチド粉末を10mM HClに溶解させた後、前記10K pALD−PEG−OPSSをペプチドのシステイン残基にペグ化させるために、ペプチド:PEGのモル比を1:1〜1:3に、反応濃度を1または3mg/mlにしてRTで約2時間反応させた。この時、反応は50mMのクエン酸ナトリウム(pH3.0〜5.0)または50mMのトリス(pH8.0)、60%のイソプロパノールで行われた。
【0324】
また、ポリエチレングリコール誘導体として、約10K(10,000Da)分子量を有するリンカー#8と9を使用した。ここで、リンカー#8は、約10K pALD−PEG−IA(両末端にそれぞれプロピオンアルデヒド基(propionaldehyde)とIA(iodoacetamide)を一つずつ有しているPEG)に該当し、リンカー#9は、約10K pALD−PEG−SH(両末端にそれぞれプロピオンアルデヒド基とスルフヒドリル基を一つずつ有しているPEG)に該当する。
【0325】
前記pALD−PEG−IA、そしてpALD−PEG−SHをリンカーとして使用した結合体を製造するために、前記実施例2とペグ化反応と同じ条件でペグ化反応を進行した後、反応液をクエン酸ナトリウム(pH3.0)、45%のEtOHを含むバッファーとKCl濃度勾配を利用したSP−HP(GE Healthcare、米国)カラムを使用して精製した。
【0326】
次に、それぞれの反応基で結合された後、前記精製されたモノペグ化された(mono−PEGylated)ペプチドと免疫グロブリンFcとのモル比が1:5になるようにし、全タンパク質の濃度を20mg/mlにして、4℃で15時間反応させた。この時、反応液は、100mMのリン酸化カリウム緩衝液(pH6.0)に20%のイソプロパノールと還元剤として20mMのシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加した。
【0327】
反応が終結した後、反応液は、ビス−トリス(Bis-Tris)(pH6.5)バッファーで塩化ナトリウム濃度勾配を利用してSource 15Q(GE Healthcare、米国)カラムに適用し、硫酸アンモニウムとトリス(pH7.5)の濃度勾配を利用してSource ISO(GE、米国)に適用し、三重活性体−10K PEG−免疫グロブリンFc結合体を精製した。製造された結合体試料の純度はSDS−PAGE分析法で確認し、三重活性体とPEGが結合された分子量を確認した。その後、三重活性体−PEG結合体と免疫グロブリンFcが結合された三重活性体−10K PEG−免疫グロブリンFc結合体の分子量を還元、非還元の条件で確認した。これに対する実験結果を図19〜21に示した[図19〜21]。
【0328】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施されることがあることを理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明の範囲は前記詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導かれるあらゆる変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈すべきである。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]