特許第6937787号(P6937787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6937787湿球温度の演算装置、湿球温度の演算方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6937787
(24)【登録日】2021年9月2日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】湿球温度の演算装置、湿球温度の演算方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/62 20060101AFI20210909BHJP
   G01W 1/11 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
   G01N25/62 F
   G01W1/11 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-25355(P2019-25355)
(22)【出願日】2019年2月15日
(65)【公開番号】特開2020-134230(P2020-134230A)
(43)【公開日】2020年8月31日
【審査請求日】2020年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】391019658
【氏名又は名称】株式会社中部プラントサービス
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 拓也
(72)【発明者】
【氏名】浅井 正治
(72)【発明者】
【氏名】大西 紀行
(72)【発明者】
【氏名】井ノ口 嘉朋
(72)【発明者】
【氏名】小島 久幸
【審査官】 佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−052686(JP,A)
【文献】 特開2010−266318(JP,A)
【文献】 特開2013−220236(JP,A)
【文献】 特開2010−009163(JP,A)
【文献】 特開昭62−153637(JP,A)
【文献】 WORBS, H.E.,“A friendly Microprocessor Approach to the Determination of the Thermodynamic Properties of Moist Air”,ASHRAE TRANSACTIONS,1984年,Vol.90, PART 1A,pp.46-57
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00−25/72
G01W 1/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各乾球温度Taに対する相対湿度xと乾湿温度差ΔTabの関係を示す1次近似式を用いて、乾球温度Taと相対湿度xの計測データから湿球温度Tbを演算する、演算装置であって、
各乾球温度Taに対する前記1次近似式の1次項Pと各乾球温度Taとの関係を示す1次近似直線Lpを用いて、乾球温度Taの計測値に対する前記1次近似式の1次項Pを演算し、
各乾球温度Taに対する前記1次近似式の定数項Qと各乾球温度Taとの関係を示す1次近似直線Lqを用いて、乾球温度Taの計測値に対する前記1次近似式の定数項Qを演算する、演算装置。
【請求項2】
各乾球温度Taに対する相対湿度xと乾湿温度差ΔTabの関係を示す1次近似式を用いて、乾球温度Taと相対湿度xの計測データから湿球温度Tbを演算する、演算装置であって、
乾球温度Taの計測値からその乾球温度Taに対する前記1次近似式の1次項Pを演算する第1演算部と、
乾球温度Taの計測値からその乾球温度Taに対する前記1次近似式の定数項Qを演算する第2演算部と、
相対湿度xの計測値と、前記第1演算部にて演算した1次項Pと、前記第2演算部にて演算した定数項Qとから乾湿温度差ΔTabを演算する第3演算部と、
乾球温度Taの計測値と、前記第3演算部にて演算した乾湿温度差ΔTabとから、湿球温度Tbを演算する第4演算部と、を含む、演算装置。
【請求項3】
各乾球温度Taに対する相対湿度xと乾湿温度差ΔTabの関係を示す1次近似式を用いて、乾球温度Taと相対湿度xの計測データから湿球温度Tbを演算する、演算方法であって、
各乾球温度Taに対する前記1次近似式の1次項Pと各乾球温度Taとの関係を示す1次近似直線Lpを用いて、乾球温度Taの計測値に対する前記1次近似式の1次項Pを演算し、
各乾球温度Taに対する前記1次近似式の定数項Qと各乾球温度Taとの関係を示す1次近似直線Lqを用いて、乾球温度Taの計測値に対する前記1次近似式の定数項Qを演算する、演算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿球温度を演算する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
湿球温度は、湿球温度計を用いて計測できる。しかし、湿球温度計は、感温部を常に濡れた状態とする必要があることから、取扱いに手間が掛かり、また高価である。下記特許文献1には、湿球温度の近似予測方法に関し、次の開示がある。湿球湿計公式を用い、相対湿度および気温を変数として湿球温度を数値計算し、最小二乗法を使った多項式近似により関数フィッティングさせて湿球温度の近似予測式を作成しておく。当該近似予測式に相対湿度および気温の実測値を代入することで、湿球温度を近似予測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−266318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の湿球温度の予測方法は、高次の多項近似式を用いている。そのため、計算が複雑であり、高度な演算機能が必要である。
【0005】
本発明は、1次近似式のみの簡単な演算で、湿球温度を演算することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
湿球温度の演算装置は、乾球温度Taと相対湿度xの計測データから、各乾球温度Taに対する相対湿度xと乾湿温度差ΔTの関係を示す1次近似式を用いて、湿球温度Tbを演算する。このようにすれば、1次近似式のみの簡単な演算で、湿球温度を演算することが出来る。
【0007】
演算装置は、各乾球温度Taに対する前記1次近似式の1次項Pと各乾球温度Taとの関係を示す1次近似直線Lpを用いて、乾球温度Taの計測値に対する前記1次近似式の1次項Pを演算し、各乾球温度Taに対する前記1次近似式の定数項Qと各乾球温度Taとの関係を示す1次近似直線Lqを用いて、乾球温度Taの計測値に対する前記1次近似式の定数項Qを演算してもよい。
【0008】
演算装置は、乾球温度Taの計測値からその乾球温度Taに対する前記1次近似式の1次項Pを演算する第1演算部と、乾球温度Taの計測値からその乾球温度Taに対する前記1次近似式の定数項Qを演算する第2演算部と、相対湿度xの計測値と、前記第1演算にて演算した1次項Pと、前記第2演算部にて演算した定数項Qとから乾湿温度差ΔTabを演算する第3演算部と、乾球温度Taの計測値と、前記第3演算部にて演算した乾湿温度差ΔTabとから、湿球温度Tbを演算する第4演算部と、を含んでもよい。
【0009】
本技術は、湿球温度の演算方法に適用することが出来る。
【発明の効果】
【0010】
1次近似式のみの簡単な演算で、湿球温度を演算することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】乾球温度に対する相対湿度と乾湿温度差の関係を示すグラフ
図2】1次近似した場合の湿球温度に対する1次項と定数項の図表
図3】乾球温度と1次項の関係、乾球温度と定数項の関係を示すグラフ
図4】演算装置のブロック図
図5】演算装置の他の実施形態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
1.湿球温度の演算原理
図1は、乾球温度Taに対する相対湿度xと乾湿温度差ΔTabの関係を示すグラフであり、横軸は相対湿度x[%]、縦軸は乾湿温度差ΔTab[℃]である。乾湿温度差ΔTabは、乾球温度(大気温度)Taから湿球温度Tbを引いた値である。
【0013】
ΔTab=Ta−Tb・・・・(1)式
【0014】
図1に示すL1〜L7は、各乾球温度5℃〜35℃について、相対湿度xと乾湿温度差ΔTabの関係を示す近似直線である。各近似直線L1〜L7は、以下の1次近似式で表すことができる。
【0015】
ΔTab=Px+Q・・・(2)式
Pは近似直線Lの1次項(直線の傾き)、Qは近似直線の定数項、xは相対湿度である。
【0016】
(1)式と(2)式より、湿球温度Tbは、以下の(3)式で算出することができる。
Tb=Ta−ΔTab=Ta−(Px+Q)・・・・・(3)式
【0017】
図2は、各乾球温度Taについて、1次近似式ΔTabの1次項Pと定数項Qをまとめた図表である。1次項Pは負の値であり、大きさ(絶対値)は、乾球温度Taが高い程、大きい。また、定数項Qは正の値であり、大きさ(絶対値)は、乾球温度Taが高い程、小さい。
【0018】
図3は、乾球温度Taと1次項Pの関係、乾球温度Taと定数項Qの関係を示すグラフであり、横軸は相対湿度x[%]、右縦軸は1次項P[℃/%]、左縦軸は定数項Q[℃]である。
【0019】
図3に示すLpは乾球温度Taと1次項Pの関係を示す1次近似直線であり、Lqは乾球温度Taと定数項Qの関係を示す1次近似直線である。(4)式は、1次近似直線Lpの数式、(5)式は1次近似直線Lqの数式である。
【0020】
P=−0.0034Ta−0.05・・・・(4)式
Q=0.3398Ta+4.9253・・・(5)式
Pは1次項、Qは定数項、Taは乾球温度を示す。
【0021】
図3に示す1次近似直線Lpを用いて、(2)式の1次項Pを求めることが出来る。また、図3に示す1次近似直線Lqを用いて、(2)式の定数項Qを求めることが出来る。
【0022】
尚、1次近似直線Lpの相関係数Rは、一例として0.9995、1次近似直線Lqの相関係数Rは、一例として0.9997であり、2つの近似直線Lp、Lqとも、相関性が非常に高い。
【0023】
以下、(3)式を用いた湿球温度Tbの計算例を示す。
【0024】
乾球温度Taが25℃、相対湿度xが54%の場合、(4)式と(5)式から、乾球温度Taに対応する1次項Pと定数項Qを求めることが出来る。
【0025】
P=−0.0034×25−0.05=−0.135
Q=0.3398×25+4.9253=13.4203
【0026】
そして、求めた1次項P、定数項Q、乾球温度Ta、相対湿度xを(3)式に代入することにより、湿球温度Tbを算出することが出来る。
Tb=25−(−0.135×54+13.4203)=18.8697℃
【0027】
尚、乾球温度Taが25℃、相対湿度xが54%の場合、乾湿計用湿度表を用いて算出した湿球温度Tbは19℃で、誤差率εは−0.69%と非常に小さい。
【0028】
ε=100×(Tb1−Tb2)/Tb2
Tb1は、図3に示す2つの1次近似直線Lp、Lqを利用して算出した湿球温度、Tb2は、乾湿計用湿度表を用いて算出した湿球温度である。
【0029】
2.湿球温度Tbの演算装置の説明
図4は、演算装置50のブロック図である。演算装置50は、第1演算部51と、第2演算部53と、第3演算部55と、第4演算部57とから構成されている。
【0030】
第1演算部51は、乾球温度計による乾球温度Taの計測値から1次項Pを演算する。第1演算部51は、例えば、比例器51aと、差分器51bと、シグナルジェネレータ51cとから構成することが出来る。比例器51aは、乾球温度Taに比例した出力をする。比例定数は、(4)の近似式の比例定数、つまり、−0.0034である。シグナルジェネレータ51cは定数を出力する。定数は、(4)の近似式の定数、つまり、0.05である。
【0031】
差分器51bは比例器51aの出力からシグナルジェネレータ51cの出力を減算し、その結果を1次項Pとして出力する。
【0032】
第2演算部53は、乾球温度計による乾球温度Taの計測値から定数項Qを演算する。第2演算部53は、例えば、比例器53aと、加算器53bと、シグナルジェネレータ53cとから構成することが出来る。
【0033】
比例器53aは、乾球温度Taに比例した出力をする。比例定数は、(5)の近似式の比例定数、つまり、0.3398である。シグナルジェネレータ53cは定数を出力する。定数は、(5)の近似式の定数、つまり、4.9253である。
【0034】
加算器53bは比例器53aの出力にシグナルジェネレータ53cの出力を加算し、その結果を定数項Qとして出力する。
【0035】
第3演算部55は、相対湿度計による相対湿度xの計測値と、第1演算部51にて演算した1次項Pと、第2演算部53にて演算した定数項Qとから乾湿温度差ΔTabを演算する。第3演算部55は、例えば、乗算器55aと、加算器55bと、から構成することが出来る。乗算器55aは、相対湿度xに第1演算部51にて演算した1次項Pを乗算して出力する。加算器55bは、乗算器55aの出力に第2演算部53にて演算した定数項Qを加算して乾湿温度差ΔTabを算出する。
【0036】
第4演算部57は、乾球温度Taの計測値と、第3演算部55にて演算した乾湿温度差ΔTabとから、湿球温度Tbを演算する。第4演算部57は、例えば、差分器により構成することが出来る。差分器57は、乾球温度計による乾球温度Taの計測値から、第3演算部55にて演算した乾湿温度差ΔTabを減算して、湿球温度Tbを算出する。
【0037】
3.効果説明
本実施形態によれば、乾球温度Taの計測値と相対湿度xの計測値から、演算で湿球温度Tbを求めることが出来る。そのため、高価でメンテナンスに手間が掛かる湿球温度計が不要である。
【0038】
また、1次近似式のみの簡単な演算で、湿球温度Tbを演算するので、演算装置50を、4則のみの回路(第1演算部51〜第4演算部57)で構成することが可能である。そのため、PLC(プログマブルロジックコントローラ)やDCS(分散型ディジタル制御装置)への適用が可能である。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0039】
(1)上記実施形態1では、乾球温度Taと相対湿度xの計測値から、図3の関係性を利用して、(2)式の1次項Pと定数項Qを求め、それを(3)式に代入して湿球温度Tbを演算したが、図1の関係性を利用して湿球温度を演算してもよい。
【0040】
(2)上記実施形態1では、演算装置50を、4つの演算部51〜57より構成した例を示した。演算装置150は、図5に示すように、CPU151とメモリ153とから構成し、ディジタル的な処理で、湿球温度Tbを演算してもよい。つまり、メモリ153に対して、図3に示す2つの1次近似直線Lp、Lqのデータを記憶しておくと共に、CPU151にて、2つの1次近似直線Lp、Lqから1次項P、定数項Qをそれぞれ求めて、湿球温度Tbを(3)式より求めるようにしてもよい。
【0041】
また、メモリ153に記憶しておくデータは、2つの1次近似直線Lp、Lqのデータに限らず、図1に示す1次近似直線L1〜L7であってもよい。この場合、乾球温度Taに対応する1次近似直線L1〜L7を参照して、相対湿度xのデータから湿球温度Tbを求めるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
50 演算装置
51 第1演算部
53 第2演算部
55 第3演算部
57 第4演算部
図1
図2
図3
図4
図5